(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】搬送装置およびスライダの位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240304BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
G01D5/12 Q
(21)【出願番号】P 2022539851
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020028982
(87)【国際公開番号】W WO2022024240
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】林 好典
(72)【発明者】
【氏名】古宇田 秀明
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055755(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/122693(WO,A1)
【文献】特開2006-170790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01D 5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダと、
前記スライダを所定の方向に沿って移動させる搬送部と、
前記所定の方向に沿って延びるように前記スライダに設けられ、前記スライダの位置を検出するための磁気スケールと、
前記搬送部に設けられ、前記磁気スケールの磁気を検出する磁気センサと、を備え、
前記磁気スケールは、前記所定の方向と直交する方向に沿って平行に配列された複数のトラックを含み、
前記複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されて
おり、
前記複数のトラックは、所定の磁気情報が曲線的かつ周期的に連続して繰り返し記録されるとともに、磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域と、前記磁気的安定領域の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域と、を各々含み、
前記複数のトラックのうち前記一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、前記他のトラックの前記磁気的不安定領域よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている、搬送装置。
【請求項2】
前記複数のトラックは、各々周期的に磁気が変化するように構成されており、
前記複数のトラックのうち前記一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、前記他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりも、1周期分以上トラックの端部とは反対側にずらして配置されている、請求項
1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記磁気センサは、前記所定の方向に沿って複数配置されており、
前記複数のトラックのうち前記一部のトラックの着磁開始位置から着磁終了位置までの距離は、隣接する前記磁気センサの距離よりも大きい、請求項1
または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記複数のトラックのうち1つのトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、前記複数のトラックのうちの他の複数のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記磁気スケールは、複数の前記スライダを区別するための識別情報を有する識別トラックと、前記スライダの位置を特定するための位置トラックと、を含み、
着磁開始位置および着磁終了位置がトラックの端部とは反対側にずらして配置されている前記一部のトラックは、前記識別トラックに含まれている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記磁気スケールは、所定の磁気情報が周期的に繰り返し記録されている第1トラックと、前記第1トラックの周期情報が記録されている第2トラックと、を含み、
前記第2トラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、前記第1トラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記磁気センサの検出結果に基づいて、前記スライダの位置を取得する制御部をさらに備え、
前記磁気センサは、前記所定の方向に沿って複数配置されており、
前記制御部は、一方の前記磁気センサにより前記磁気スケールの磁気を検出して前記スライダの位置を取得している場合に、前記磁気スケールの複数のトラックのうち全てのトラックの磁気情報が磁気的に安定した
前記磁気的安定領域の磁気を、前記一方の磁気センサに隣接する他方の前記磁気センサにより検出した場合に、前記他方の磁気センサの検出結果に基づいて前記スライダの位置を取得する制御を始めるように構成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記磁気センサによる磁気の検出の有無に基づいて、前記磁気スケールのトラックの磁気情報が磁気的に安定した前記磁気的安定領域であるか否かを判定するように構成されている、請求項
7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数のトラックのうち全てのトラックの磁気を検出した場合に、前記複数のトラックのうち前記他のトラックは前記磁気的安定領域であると判定するように構成されている、請求項
8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数のトラックのうち前記他のトラックが前記磁気的安定領域である場合に、前記他のトラックの磁気情報に基づいて、前記複数のトラックのうち前記一部のトラックが前記磁気的安定領域であるか否かを判定するように構成されている、請求項
8または
9に記載の搬送装置。
【請求項11】
所定の方向に沿って移動するスライダに、前記所定の方向に沿って延びるように設けられ、前記スライダの位置を検出するための磁気スケールと、
前記スライダを前記所定の方向に沿って移動させる搬送部に設けられ、前記磁気スケールの磁気を検出する磁気センサと、を備え、
前記磁気スケールは、前記所定の方向と直交する方向に沿って平行に配列された複数のトラックを含み、
前記複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されて
おり、
前記複数のトラックは、所定の磁気情報が曲線的かつ周期的に連続して繰り返し記録されるとともに、磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域と、前記磁気的安定領域の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域と、を各々含み、
前記複数のトラックのうち前記一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、前記他のトラックの前記磁気的不安定領域よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている、スライダの位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送装置およびスライダの位置検出装置に関し、特に、スライダを備える搬送装置および搬送されるスライダの位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送されるスライダの位置検出装置が知られている。このような位置検出は、たとえば、特開2019-160991号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2019-160991号公報には、所定の方向に沿って移動するスライダに、所定の方向に沿って延びるように設けられ、スライダの位置を検出するための磁気スケールと、スライダを所定の方向に沿って移動させる搬送部に設けられ、磁気スケールの磁気を検出する磁気センサと、を備える位置検出装置(スライダの位置検出装置)が開示されている。この特開2019-160991号公報の位置検出装置では、磁気スケールは、平行に配列された複数(6つ)のトラックを含み、複数のトラックの各々は着磁装置により所定の方向に沿って磁気情報が着磁されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特開2019-160991号公報には記載されていないが、磁気スケールのトラックの両端部付近では、磁気情報が安定しない(磁気的に乱れがあり、安定していない)ため、磁気スケールの両端部付近の磁気情報の情報精度が高くないことが知られている。このため、特開2019-160991号公報に開示されているような従来の位置検出装置では、磁気スケールの両端部付近の情報精度が高くない磁気情報を用いることに起因して、スライダの位置を精度よく検出することができない場合がある。そこで、スライダの位置を精度よく検出することが可能な搬送装置およびスライダの位置検出装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、スライダの位置を精度よく検出することが可能な搬送装置およびスライダの位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による搬送装置は、スライダと、スライダを所定の方向に沿って移動させる搬送部と、所定の方向に沿って延びるようにスライダに設けられ、スライダの位置を検出するための磁気スケールと、搬送部に設けられ、磁気スケールの磁気を検出する磁気センサと、を備え、磁気スケールは、所定の方向と直交する方向に沿って平行に配列された複数のトラックを含み、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されており、複数のトラックは、所定の磁気情報が曲線的かつ周期的に連続して繰り返し記録されるとともに、磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域と、磁気的安定領域の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域と、を各々含み、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの磁気的不安定領域よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。
【0008】
この発明の第1の局面による搬送装置では、上記のように、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置を、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、磁気センサが磁気スケールの複数のトラックの全ての磁気を検出していない場合には、磁気スケールの端部付近であると判断することができるので、磁気スケールの端部付近において情報精度が高くない(磁気的に乱れがあり安定していない)磁気情報を検出して、スライダの位置検出に用いるのを抑制することができる。また、磁気センサが磁気スケールの複数のトラックの全ての磁気を検出した場合には、一部のトラックを除く他のトラックの磁気情報は磁気的に安定しているので、他のトラックの磁気情報を用いて、一部のトラックの磁気情報が磁気的に安定している位置であるか否かを判定することができる。これにより、スライダの位置検出を開始するタイミングを精度よく決定することができる。これらの結果、スライダの位置を精度よく検出することができる。
【0009】
上記第1の局面による搬送装置では、複数のトラックは、磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域と、磁気的安定領域の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域と、を各々含み、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの磁気的不安定領域よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。これにより、トラックの端部とは反対側にずらして配置されている一部のトラックを含む複数のトラックの全ての磁気を検出した場合には、他のトラックは磁気的安定領域であるため、複数のトラックの全てを検出したことに基づいて、他のトラックからは情報精度が高い磁気情報を検出することができる。これにより、他のトラックの安定した磁気情報を用いて、一部のトラックの磁気情報が磁気的に安定している位置であるか否かを精度よく判定することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、複数のトラックは、各々周期的に磁気が変化するように構成されており、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりも、1周期分以上トラックの端部とは反対側にずらして配置されている。このように構成すれば、着磁開始または着磁終了から1周期分以上トラックの端部とは反対側にずらした位置では、磁気情報が磁気的に安定するため、トラックの端部とは反対側にずらして配置されている一部のトラックを含む複数のトラックの全ての磁気を検出した場合に、他のトラックを確実に磁気的安定領域にすることができる。
【0011】
上記第1の局面による搬送装置において、好ましくは、磁気センサは、所定の方向に沿って複数配置されており、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置から着磁終了位置までの距離は、隣接する磁気センサの距離よりも大きい。このように構成すれば、隣接する磁気センサのうちいずれかの磁気センサにより複数のトラックの全ての磁気を検出することができるので、スライダが複数の磁気センサを乗り継いで移動する場合に、スライダを全ての位置において精度よく検出することができる。
【0012】
上記第1の局面による搬送装置において、好ましくは、複数のトラックのうち1つのトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、複数のトラックのうちの他の複数のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。このように構成すれば、着磁開始位置および着磁終了位置をトラックの端部とは反対側にずらして配置するトラックを最小限にすることができるので、磁気スケールの端部から近い位置で磁気情報が安定する他の複数のトラックの数を多くすることができる。
【0013】
上記第1の局面による搬送装置において、好ましくは、磁気スケールは、複数のスライダを区別するための識別情報を有する識別トラックと、スライダの位置を特定するための位置トラックと、を含み、着磁開始位置および着磁終了位置がトラックの端部とは反対側にずらして配置されている一部のトラックは、識別トラックに含まれている。このように構成すれば、磁気センサが磁気スケールの複数のトラックの全ての磁気を検出した場合に、スライダの位置を特定する位置トラックの磁気情報は磁気的に安定しているので、位置トラックの安定した磁気情報を用いて、一部のトラックの磁気情報が磁気的に安定している位置であるか否かを精度よく判定することができる。
【0014】
上記第1の局面による搬送装置において、好ましくは、磁気スケールは、所定の磁気情報が周期的に繰り返し記録されている第1トラックと、第1トラックの周期情報が記録されている第2トラックと、を含み、第2トラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、第1トラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。このように構成すれば、精度よくスライダの位置を検出するために第2トラックよりも情報精度が必要な第1トラックを、磁気スケールの端部から近い位置で磁気情報が磁気的に安定するようにすることができる。
【0015】
上記第1の局面による搬送装置において、好ましくは、磁気センサの検出結果に基づいて、スライダの位置を取得する制御部をさらに備え、磁気センサは、所定の方向に沿って複数配置されており、制御部は、一方の磁気センサにより磁気スケールの磁気を検出してスライダの位置を取得している場合に、磁気スケールの複数のトラックのうち全てのトラックの磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域の磁気を、一方の磁気センサに隣接する他方の磁気センサにより検出した場合に、他方の磁気センサの検出結果に基づいてスライダの位置を取得する制御を始めるように構成されている。このように構成すれば、他方の磁気センサにより検出されるトラックの磁気情報が磁気的に安定した状態で、一方の磁気センサから他方の磁気センサに乗り継ぐことができる。
【0016】
この場合、好ましくは、制御部は、磁気センサによる磁気の検出の有無に基づいて、磁気スケールのトラックの磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域であるか否かを判定するように構成されている。このように構成すれば、磁気情報が安定しない場合でも磁気の検出の有無は判定することができるので、磁気スケールのトラックが磁気的安定領域であるか否かを精度よく判定することができる。
【0017】
上記磁気の検出の有無に基づいて磁気スケールのトラックの磁気情報が安定した磁気的安定領域であるか否かを判定する構成において、好ましくは、制御部は、複数のトラックのうち全てのトラックの磁気を検出した場合に、複数のトラックのうち他のトラックは磁気的安定領域であると判定するように構成されている。このように構成すれば、複数のトラックのうち一部のトラックよりも長い他のトラックが磁気的安定領域であることを精度よく判定することができる。
【0018】
上記磁気の検出の有無に基づいて磁気スケールのトラックの磁気情報が安定した磁気的安定領域であるか否かを判定する構成において、好ましくは、制御部は、複数のトラックのうち他のトラックが磁気的安定領域である場合に、他のトラックの磁気情報に基づいて、複数のトラックのうち一部のトラックが磁気的安定領域であるか否かを判定するように構成されている。このように構成すれば、先に磁気的安定領域となった他のトラックの磁気情報に基づいて、他のトラックよりも短い一部のトラックが磁気的安定領域になったことを精度よく判定することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面によるスライダの位置検出装置は、所定の方向に沿って移動するスライダに、所定の方向に沿って延びるように設けられ、スライダの位置を検出するための磁気スケールと、スライダを所定の方向に沿って移動させる搬送部に設けられ、磁気スケールの磁気を検出する磁気センサと、を備え、磁気スケールは、所定の方向と直交する方向に沿って平行に配列された複数のトラックを含み、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されており、複数のトラックは、所定の磁気情報が曲線的かつ周期的に連続して繰り返し記録されるとともに、磁気情報が磁気的に安定した磁気的安定領域と、磁気的安定領域の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域と、を各々含み、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置は、他のトラックの磁気的不安定領域よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。
【0020】
この発明の第2の局面によるスライダの位置検出装置では、上記のように、複数のトラックのうち一部のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置を、他のトラックの着磁開始位置および着磁終了位置よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、磁気センサが磁気スケールの複数のトラックの全ての磁気を検出していない場合には、磁気スケールの端部付近であると判断することができるので、磁気スケールの端部付近において情報精度が高くない(安定していない)磁気情報を検出して、スライダの位置検出に用いるのを抑制することができる。また、磁気センサが磁気スケールの複数のトラックの全ての磁気を検出した場合には、一部のトラックを除く他のトラックの磁気情報は磁気的に安定しているので、他のトラックの磁気情報を用いて、一部のトラックの磁気情報が磁気的に安定している位置であるか否かを判定することができる。これにより、スライダの位置検出を開始するタイミングを精度よく決定することができる。これらの結果、スライダの位置を精度よく検出することが可能なスライダの位置検出装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、スライダの位置を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による搬送装置を示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による搬送装置の搬送部およびスライダを示した断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による搬送装置の磁気スケールを示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態による搬送装置の磁気スケールの端部付近を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態による搬送装置の磁気スケールと複数の磁気センサとの関係を示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態による搬送装置の磁気スケールの磁気パターンの一例を示した図である。
【
図7】本発明の一実施形態による搬送装置の制御部による位置検出開始処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態による搬送装置100の構成について説明する。
【0025】
(搬送装置の構成)
本実施形態による搬送装置100は、搬送部1、2に沿ってスライダ30に載置された搬送対象物を搬送するように構成されている。また、搬送装置100により搬送される搬送対象物は、複数の搬送位置において作業が行われる。搬送対象物は、ロボットや作業者により作業が行われる。
【0026】
搬送装置100は、
図1に示すように、搬送部1と、搬送部2と、乗継搬送部3と、乗継搬送部4と、スライダ30と、を備えている。また、搬送装置100は、制御部40を備えている。
【0027】
搬送部1は、複数の搬送モジュール10を含んでいる。搬送部2は、複数の搬送モジュール10を含んでいる。複数の搬送モジュール10は、互いに直列的に接続されて、スライダ30の搬送路が形成されている。スライダ30は、搬送部1および2をX方向に搬送され、乗継搬送部3および4により、搬送部1(2)から搬送部2(1)にY方向に搬送される。つまり、スライダ30は、搬送部1、乗継搬送部3、搬送部2、乗継搬送部4の順に搬送されて循環して用いられる。
【0028】
搬送モジュール10は、
図2に示すように、リニアモータ固定子11と、磁気センサ12と、ガイドレール13と、カバー14とを含んでいる。
【0029】
乗継搬送部3および4は、
図1に示すように、スライダ30をX方向に搬送する搬送機構20と、搬送機構20をY方向に移動させる移動機構とを含んでいる。搬送機構20は、リニアモータ固定子11と、磁気センサ12とを有している。移動機構は、ガイドレールと、ボールねじ機構とを有している。
【0030】
スライダ30は、
図2に示すように、スライダ本体31と、リニアモータ可動子32と、ガイドブロック33と、磁気スケール34とを含んでいる。スライダ30は、複数設けられている。また、複数のスライダ30は、搬送部1、2、乗継搬送部3および4上を、各々独立して移動するように構成されている。
【0031】
搬送部1および2は、スライダ30を所定の方向(X方向)に沿って移動させるように構成されている。また、搬送部1および2は、略平行に設けられている。搬送部1は、スライダ30をX2方向に搬送し、搬送部2は、スライダ30をX1方向に搬送する。搬送部1および2は、架台上に固定的に設けられている。つまり、搬送部1および2のリニアモータ固定子11およびガイドレール13は、固定的に設けられている。
【0032】
乗継搬送部3は、搬送部1および2のX2方向側に隣接した位置に配置されている。また、乗継搬送部4は、搬送部1および2のX1方向側に隣接した位置に配置されている。
【0033】
リニアモータ固定子11は、電磁石を含み、電磁石に駆動電力(電流)が供給されることにより、スライダ30を移動させる。リニアモータ固定子11は、搬送方向(X方向)に沿って配置されている。また、
図2に示すように、リニアモータ固定子11の電磁石は、芯がY方向に沿って延びるように配置されている。
【0034】
磁気センサ12は、搬送部1および2に設けられている。また、磁気センサ12は、磁気スケール34の磁気を検出するように構成されている。具体的には、磁気センサ12は、スライダ30に設けられた磁気スケール34とY方向に対向するように設けられている。磁気センサ12は、磁気スケール34の磁気を検知して、スライダ30の位置を検知するように構成されている。磁気センサ12により検知したスライダ30の位置は、スライダ30の移動のフィードバック制御に用いられる。
【0035】
また、磁気センサ12は、
図5に示すように、搬送方向(X方向)に沿って間隔を置いて複数配置されている。また、磁気センサ12は、検出した磁気に対応する信号を制御部40に送信するように構成されている。
【0036】
ガイドレール13は、スライダ30の搬送方向(X方向)に沿って延びるように配置されている。ガイドレール13は、Y方向に沿って平行に一対設けられている。ガイドレール13は、X方向に隣接する搬送モジュール10間において、スライダ30が乗継可能に位置合わせされて配置されている。ガイドレール13には、スライダ30のガイドブロック33がX方向に移動可能に係合している。
【0037】
カバー14は、リニアモータ固定子11、磁気センサ12およびガイドレール13の上方を覆うように設けられている。つまり、カバー14は、スライダ30がない場合でも、リニアモータ固定子11、磁気センサ12およびガイドレール13の上方が露出しないように設けられている。
【0038】
スライダ本体31は、搬送対象物が載置されるように構成されている。また、スライダ本体31は、搬送方向(X方向)から見て、搬送部1および2のカバー14を囲むように設けられている。スライダ本体31には、リニアモータ可動子32と、ガイドブロック33と、磁気スケール34とが取り付けられている。
【0039】
リニアモータ可動子32は、リニアモータ固定子11をY方向において挟み込むように設けられている。リニアモータ可動子32は、搬送方向(X方向)に沿って配列された複数の永久磁石を含んでいる。
【0040】
ガイドブロック33は、ガイドレール13に沿って移動可能に設けられている。ガイドブロック33は、移動方向に沿って移動して循環する複数のボールを有している。
【0041】
磁気スケール34は、所定の方向(X方向)に沿って延びるようにスライダ30に設けられている。また、磁気スケール34は、スライダ30の位置(搬送位置)を検出するために設けられている。また、磁気スケール34は、搬送方向(X方向)に沿って所定のパターンに着磁されている。また、
図5に示すように、位置検出装置200は、磁気スケール34と、磁気スケール34の磁気を検出する磁気センサ12を含んでいる。なお、位置検出装置200は、請求の範囲の「スライダの位置検出装置」の一例である。
【0042】
磁気スケール34は、スケール材を所定のパターンにより磁化することにより形成されている。スケール材は、磁石材料(たとえば、金属マグネット、プラスチックマグネットまたはゴムマグネットなど)により形成されている。スケール材は、全体的に同一の素材および品質により形成されており、着磁により磁場の有無、周期の幅、磁場の強さが管理されている。また、スケール材への着磁は、剛体である背板に組付けられた状態で行われる。
【0043】
ここで、本実施形態では、
図3に示すように、磁気スケール34は、所定の方向(X方向)と直交する方向(Z方向)に沿って平行に配列された複数のトラック34a、34b、34c、34d、34eおよび34fを含んでいる。また、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3は、他のトラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりもトラックの端部とは反対側にずらして(トラックの中央側にずらして)配置されている。つまり、着磁開始位置P2は、着磁開始位置P1よりもX2方向側にずらして配置されている。また、着磁終了位置P3は、着磁終了位置P4よりもX1方向側にずらして配置されている。
【0044】
具体的には、
図4に示すように、複数のトラック34a~34fは、磁気情報が安定した磁気的安定領域341と、磁気的安定領域341の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域342と、を各々含んでいる。つまり、着磁されている端部付近(磁気的不安定領域342)は、磁気的に乱れが生じている。このため、複数のトラック間で位相差が一定ではなくなる。
【0045】
また、複数のトラック34a~34fは、各々周期的に磁気が変化するように構成されている。また、磁気スケール34は、複数のスライダ30を区別するための識別情報を有する識別トラック(トラック34a~34c)と、スライダ30の位置を特定するための位置トラック(34d~34f)と、を含んでいる。つまり、トラック34a~34cの磁気情報を検出することにより、複数のスライダ30のうちいずれのスライダ30なのかを特定することが可能である。また、トラック34d~34fの磁気情報を取得することにより、磁気センサ12に対して、特定されたスライダ30がどこに位置しているのかを特定することが可能である。
【0046】
識別トラックは、
図6に示すように、マスターであるトラック34bを基礎に、ノニアス(副尺)のトラック34cおよびセグメントのトラック34aを異なる周期(ピッチ)で一定の位相差を示す磁気周期を持つように構成されている。
【0047】
磁気スケール34は、所定の磁気情報が周期的に繰り返し記録されているトラック34bおよび34cと、トラック34bおよび34cの周期情報が記録されているトラック34aと、を含んでいる。つまり、マスターのトラック34bおよびノニアスのトラック34cは、所定の磁気情報が周期的に繰り返し記録されている。また、セグメントのトラック34aは、トラック34bおよび34cがどの周期にあるかを特定する情報が記録されている。
【0048】
また、本実施形態では、
図3および
図4に示すように、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3は、他のトラック34b~34fの磁気的不安定領域342よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。具体的には、磁気的不安定領域342は、端部からD1の距離だけ存在する。また、磁気的不安定領域342の内側は、磁気的安定領域341となる。トラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3は、トラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりもD2(>D1)の距離だけ内側に配置されている。
【0049】
また、磁気スケール34は、たとえば、予め最大1/4周期分検出が遅れることを想定した上で、スライダ30の識別および位置を確定する位置(トラック34d~34f(位置トラック)による座標)が設定されている。これにより、スケール毎の確定タイミングのばらつきを抑制することが可能である。
【0050】
また、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3は、他のトラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりも、1周期分以上トラックの端部とは反対側にずらして配置されている。つまり、着磁開始位置P1およびP2(着磁終了位置P3およびP4)の間の距離D2は、トラック34b~34fのうち最も長い周期の1周期分よりも大きい。
【0051】
ここで、磁気スケール34の素材の状態にかかわらず、連続した着磁において、端部1波長(1周期)分の周期の部分は、他の周期(内側の周期)の部分と異なる環境下に置かれる。つまり、内側の周期では隣接する周期の磁気的な影響を受けた上で所定の磁気特性を示す。しかし、端部の1周期分では、外側に磁気の周期がないため、内側の周期とはバランスが異なる。このため、着磁設定上同じ着磁を行った場合でも微妙に異なる磁場分布となる。そこで、6つのトラック34a~34fがそろい、位置検出のトリガーとなる位置を、着磁開始位置P1(着磁終了位置P4)である端部から1波長(1周期)分以上内側にすることにより、他のトラック34b~34fの磁気特性を安定させることが可能である。
【0052】
また、
図5に示すように、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2から着磁終了位置P3までの距離は、隣接する磁気センサ12の距離よりも大きい。これにより、隣接する磁気センサ12の内いずれかの磁気センサ12が制御状態にある中でトラック34a~34fのすべての磁気を検出し、制御部40が制御を開始することができる。その結果、スライダ30が複数の磁気センサ12を乗り継いで移動する場合に、スライダ30のすべての位置において精度よく位置を検出することが可能である。また、スライダ30が無制御状態に陥ることもなくなる。つまり、スライダ30が複数の磁気センサ12を跨いで移動する際に、前の磁気センサ12の検出結果に基づいてフィードバック制御している状態にあるうちに、次の磁気センサ12がトラック34aの磁気的安定領域341に到達することにより、複数の磁気センサ12間での制御の引継ぎを、フィードバック制御している状態で、かつ、磁気的安定領域341内で行うことが可能である。
【0053】
また、複数のトラック34a~34fのうち1つのトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3は、複数のトラック34a~34fのうちの他の複数のトラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置されている。つまり、1つのトラック34aのみ短くなっている。
【0054】
制御部40は、搬送装置100の各部を制御するように構成されている。制御部40は、リニアモータ固定子11に供給する電力を制御して、スライダ30の移動を制御する。また、制御部40は、乗継搬送部3および4の移動機構21の駆動を制御して、搬送機構20の移動を制御する。制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、メモリなどを含んでいる。
【0055】
ここで、制御部40は、磁気センサ12の検出結果に基づいて、スライダ30の位置を取得するように構成されている。また、制御部40は、一方の磁気センサ12により磁気スケールの磁気を検出してスライダ30の位置を取得している場合に、磁気スケール34の複数のトラック34a~34fのうち全てのトラックの磁気情報が安定した磁気的安定領域341の磁気を、一方の磁気センサ12に隣接する他方の磁気センサ12により検出した場合に、他方の磁気センサ12の検出結果に基づいてスライダ30の位置を取得する制御を始めるように構成されている。
【0056】
具体的には、制御部40は、磁気センサ12による磁気の検出の有無に基づいて、磁気スケール34のトラック34a~34fの磁気情報が安定した磁気的安定領域341であるか否かを判定するように構成されている。
【0057】
また、制御部40は、複数のトラック34a~34fのうち全てのトラックの磁気を検出した場合に、複数のトラック34a~34fのうち他のトラック34b~34fは磁気的安定領域341であると判定するように構成されている。
【0058】
また、制御部40は、複数のトラック34a~34fのうち他のトラック34b~34fが磁気的安定領域341である場合に、他のトラック34b~34fの磁気情報に基づいて、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aが磁気的安定領域341であるか否かを判定するように構成されている。
【0059】
(位置検出開始処理)
図7を参照して、搬送装置100の制御部40による磁気センサ12の乗り継ぎ時の位置検出開始処理について説明する。なお、この処理は、スライダ30が移動して、磁気スケール34が隣接する2つの磁気センサ12に跨って配置された場合に、スライダ30の識別および位置を取得するための磁気を検出する磁気センサ12を乗り継ぐ(切り替える)際の処理である。
【0060】
図7のステップS1において、制御部40は、乗継先の磁気センサ12により5つのトラック34b~34fの磁気を検出したか否かを判断する。5つのトラック34b~34fの磁気が検出されるまで、ステップS1の判断が繰り返される。
【0061】
5つのトラック34b~34fの磁気が検出されると、ステップS2において、制御部40は、全てのトラック34a~34fの磁気を検出したか否かを判断する。つまり、検出しているトラック34b~34fに加えて、識別トラックのセグメントのトラック34aの磁気をさらに検出したか否かが判断される。全てのトラック34a~34fの磁気が検出されるまで、ステップS2の判断が繰り返される。
【0062】
全てのトラック34a~34fの磁気が検出されると、ステップS3において、位置トラック(トラック34d~34f)に基づいて、磁気スケール34(スライダ30)の位置が所定範囲内に移動したか否かが判断される。
つまり、位置トラック(トラック34d~34f)の磁気情報に基づいて、短いトラック34aも磁気的安定領域になったか否かが判断される。磁気スケール34(スライダ30)の位置が所定範囲内に移動されるまで、ステップS3の判断が繰り返される。
【0063】
磁気スケール34(スライダ30)の位置が所定範囲内に移動されると、ステップS4において、識別トラック(トラック34a~34c)の磁気を検出して、スライダ30のIDを確定する。そして、ステップS5において、乗り継ぎ後の磁気センサ12に基づくスライダ30の位置検出が開始される。この場合、乗り継ぎ前の磁気センサ12に基づくスライダ30の位置検出が終了される。つまり、スライダ30の位置検出に用いる磁気センサ12が切り替えられる。その後、位置検出開始処理が終了される。
【0064】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態では、上記のように、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3を、他のトラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、磁気センサ12が磁気スケール34の複数のトラック34a~34fの全ての磁気を検出していない場合には、磁気スケール34の端部付近であると判断することができるので、磁気スケール34の端部付近において情報精度が高くない(安定していない)磁気情報を検出して、スライダ30の位置検出に用いるのを抑制することができる。また、磁気センサ12が磁気スケール34の複数のトラック34a~34fの全ての磁気を検出した場合には、一部のトラック34aを除く他のトラック34b~34fの磁気情報は磁気的に安定しているので、他のトラック34b~34fの安定した磁気情報を用いて、一部のトラック34aの磁気情報が磁気的に安定している位置であるか否かを判定することができる。これにより、スライダ30の位置検出を開始するタイミングを精度よく決定することができる。これらの結果、スライダ30の位置を精度よく検出することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、複数のトラック34a~34fは、磁気情報が安定した磁気的安定領域341と、磁気的安定領域341の両端の外側に配置されて磁気情報が磁気的に不安定な磁気的不安定領域342と、を各々含み、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3を、他のトラック34b~34fの磁気的不安定領域342よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、トラックの端部とは反対側にずらして配置されている一部のトラック34aを含む複数のトラック34a~34fの全ての磁気を検出した場合には、他のトラック34b~34fは磁気的安定領域341であるため、複数のトラック34a~34fの全てを検出したことに基づいて、他のトラック34b~34fからは情報精度が高い磁気情報を検出することができる。これにより、他のトラック34b~34fの安定した磁気情報を用いて、一部のトラック34aの磁気情報が安定している位置であるか否かを精度よく判定することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、複数のトラック34a~34fは、各々周期的に磁気が変化するように構成されており、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3を、他のトラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりも、1周期分以上トラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、着磁開始または着磁終了から1周期分以上トラックの端部とは反対側にずらした位置では、磁気情報が安定するため、トラックの端部とは反対側にずらして配置されている一部のトラック34aを含む複数のトラック34a~34fの全ての磁気を検出した場合に、他のトラック34b~34fを確実に磁気的安定領域341にすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、磁気センサ12は、所定の方向に沿って複数配置されており、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aの着磁開始位置P2から着磁終了位置P3までの距離を、隣接する磁気センサ12の距離よりも大きくする。これにより、隣接する磁気センサ12のうちいずれかの磁気センサ12により複数のトラック34a~34fの全ての磁気を検出することができるので、スライダ30が複数の磁気センサ12を乗り継いで移動する場合に、スライダ30を全ての位置において精度よく検出することができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、複数のトラック34a~34fのうち1つのトラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3は、複数のトラック34a~34fのうちの他の複数のトラック34b~34fの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、着磁開始位置および着磁終了位置をトラックの端部とは反対側にずらして配置するトラックを最小限にすることができるので、磁気スケール34の端部から近い位置で磁気情報が安定する他の複数のトラック34b~34fの数を多くすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、磁気スケール34は、複数のスライダ30を区別するための識別情報を有する識別トラックと、スライダの位置を特定するための位置トラックと、を含み、着磁開始位置および着磁終了位置がトラックの端部とは反対側にずらして配置されている一部のトラック34aは、識別トラックに含まれている。これにより、磁気センサ12が磁気スケール34の複数のトラック34a~34fの全ての磁気を検出した場合に、スライダ30の位置を特定する位置トラックの磁気情報は磁気的に安定しているので、位置トラックの安定した磁気情報を用いて、一部のトラック34aの磁気情報が磁気的に安定している位置であるか否かを精度よく判定することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、磁気スケール34は、所定の磁気情報が周期的に繰り返し記録されているトラック34bおよび34cと、トラック34bおよび34cの周期情報が記録されているトラック34aと、を含み、トラック34aの着磁開始位置P2および着磁終了位置P3を、トラック34bおよび34cの着磁開始位置P1および着磁終了位置P4よりもトラックの端部とは反対側にずらして配置する。これにより、精度よくスライダ30の位置を検出するためにトラック34aよりも情報精度が必要なトラック34bおよび34cを、磁気スケール34の端部から近い位置で磁気情報が安定するようにすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、磁気センサ12の検出結果に基づいて、スライダ30の位置を取得する制御部40を設け、制御部40を、一方の磁気センサ12により磁気スケールの磁気を検出してスライダ30の位置を取得している場合に、磁気スケール34の複数のトラック34a~34fのうち全てのトラックの磁気情報が安定した磁気的安定領域341の磁気を、一方の磁気センサ12に隣接する他方の磁気センサ12により検出した場合に、他方の磁気センサ12の検出結果に基づいてスライダ30の位置を取得する制御を始めるように構成する。これにより、他方の磁気センサ12により検出されるトラック34a~34fの磁気情報が磁気的に安定した状態で、一方の磁気センサ12から他方の磁気センサ12に乗り継ぐことができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、磁気センサ12による磁気の検出の有無に基づいて、磁気スケール34のトラック34a~34fの磁気情報が安定した磁気的安定領域341であるか否かを判定するように構成する。これにより、磁気情報が安定しない場合でも磁気の検出の有無は判定することができるので、磁気スケール34のトラック34a~34fが磁気的安定領域341であるか否かを精度よく判定することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、複数のトラック34a~34fのうち全てのトラックの磁気を検出した場合に、複数のトラック34a~34fのうち他のトラック34b~34fは磁気的安定領域341であると判定するように構成する。これにより、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aよりも長い他のトラック34b~34fが磁気的安定領域341であることを精度よく判定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、制御部40を、複数のトラック34a~34fのうち他のトラック34b~34fが磁気的安定領域341である場合に、他のトラック34b~34fの磁気情報に基づいて、複数のトラック34a~34fのうち一部のトラック34aが磁気的安定領域341であるか否かを判定するように構成する。これにより、先に磁気的安定領域341となった他のトラック34b~34fの磁気情報に基づいて、他のトラック34b~34fよりも短い一部のトラック34aが磁気的安定領域341になったことを精度よく判定することができる。
【0076】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0077】
たとえば、上記実施形態では、磁気スケールが6つのトラックを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁気スケールは、6つ以外の複数のトラックを含んでいてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、磁気スケールの複数のトラックのうち1つのトラックが他のトラックよりも着磁開始位置および着磁終了位置がトラックの端部とは反対側にずらして配置されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁気スケールの複数のトラックのうち2以上のトラックが他のトラックよりも着磁開始位置および着磁終了位置がトラックの端部とは反対側にずらして配置されていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、磁気スケールの複数のトラックのうち3つのトラックがスライダを区別するための識別トラックであり、残りの3つのトラックがスライダの位置を特定するための位置トラックである構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、識別トラックを3つ以外の複数設けてもよいし、位置トラックを3つ以外の複数設けてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、搬送部はスライダをリニアモータにより移動させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、搬送部がスライダをボールねじ機構や、回転ベルト機構などにより移動させる構成でもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、磁気スケールは、上下方向に立てて配置されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁気スケールは、水平方向に寝かして配置されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、搬送部が直線状に延びるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、搬送部が湾曲していてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部による制御処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部による制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1、2 搬送部
12 磁気センサ
30 スライダ
34 磁気スケール
34a トラック(識別トラック、第2トラック)
34b、34c トラック(識別トラック、第1トラック)
34d、34e、34f トラック(位置トラック)
40 制御部
100 搬送装置
200 位置検出装置(スライダの位置検出装置)
341 磁気的安定領域
342 磁気的不安定領域