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特許7447288再被覆可能なコーティング組成物及びそのような組成物で基材をコーティングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】再被覆可能なコーティング組成物及びそのような組成物で基材をコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240304BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240304BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240304BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20240304BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240304BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240304BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240304BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C09D7/20
C09D5/20
C09D133/00
C09D175/04
C09D167/00
C09D171/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022547144
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021051147
(87)【国際公開番号】W WO2021156052
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】20155073.8
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】シュタニフォード,ギーナ
(72)【発明者】
【氏名】ドップ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フェデラー,レア
(72)【発明者】
【氏名】ゼドラー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェストーフ,エルケ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/020524(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/121389(WO,A1)
【文献】特表2013-522405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
B29C 45/00 - 45/24
B29C 45/46 - 45/63
B29C 45/70 - 45/72
B29C 45/74 - 45/84
B29C 41/00 - 41/36
B29C 41/46 - 41/52
B29C 70/00 - 70/88
B05D 1/00 - 7/26
B29C 45/00 - 45/24
B29C 45/46 - 45/63
B29C 45/70 - 45/72
B29C 45/74 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
a) 少なくとも4質量%の総量の少なくとも1つの溶媒S、
b) 少なくとも1つの一般式(I)
-(C=O)-O-(AO)-H (I)
(式中、
は、6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表し、
rは、0又は1であり、そして
sは、0~30である)
の化合物、
c) 少なくとも1つのバインダーB、
d) 少なくとも1つの架橋剤CL、
e) スズカルボキシレート、ジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、亜鉛錯体、亜鉛カルボキシレート及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの架橋触媒CCAT、
f) 任意に少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン、及び
g) 任意に少なくとも1つの反応性希釈剤
を含むコーティング組成物であって、上記成分は該コーティング組成物の総質量に基づき、
ここで、該コーティング組成物において、少なくとも1つの一般式(II)
*-(CH-O-CH-CR-[(CH-OH](II)
(式中、
は、1~10個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であり、
nは、1~6であり、そして
mは、1~4である)
の構造単位を含むアルキルポリシロキサンが0質量%であり、且つ
前記少なくとも1つの溶媒Sは、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、アミド、メチラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、グリセロールホルマール、炭化水素及びこれらの混合物から成る群れから選ばれる、コーティング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの溶媒Sは、ブチルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ブトキシエタノールアセテート及びこれらの混合物から成る群れから選ばれる、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溶媒Sの総量は、少なくとも5.8質量%である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
一般式(I)の残基Rが、8~15個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基である、請求項1から3の何れか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
一般式(I)のAOが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表す、請求項1から4の何れか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
一般式(I)のsが、0又は2~28である、請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの一般式(I)の化合物が、0.1~10質量%の総量で、各場合とも前記コーティング組成物の総質量に基づいて存在する、請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバインダーBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、(iii)ポリエステル、(iv)ポリエーテル、(v)上記のポリマーのコポリマー、及び(vi)これらの混合物からなる群から選択される、請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのバインダーBが、
- 分岐ポリエステルポリオール及び/又はヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート又は
- ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及び直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオール
から選択される、請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのバインダーBが、固形分換算で40~95質量%の総量で、各場合とも前記コーティング組成物の総質量に基づいて存在する、請求項1からのいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの架橋剤CLが、アミノ樹脂、非ブロック化ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド及びこれらの混合物から選択される、請求項1から10のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの架橋剤CLが、5質量%~70質量%の総量で、各場合とも前記組成物の総質量に基づいて存在する、請求項1から11のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記架橋剤CLの官能基のNCO基の、前記少なくとも1つのバインダーB中に存在する相補的な反応性官能基の合計に対するモル比が、1.5:1~1:1.5である、請求項1から12のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
一般式(II)の残基Rが、2個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族炭化水素基であり、nが3であり、そしてmが1である、請求項1から13のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
コーティングされた構成要素を製造する方法であって、以下の工程、
(1) 請求項1から14のいずれか1つに記載の少なくとも1つのコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 構成要素を形成する少なくとも1つの組成物を、前記コーティングフィルムでコーティングされた前記型キャビティ内に適用して、前記構成要素を形成する組成物の適用前又は後に前記型ツールを閉じるか、又は少なくとも1つのプリフォームを、前記コーティングフィルムでコーティングされた前記型キャビティ内に挿入して、前記型ツールを閉じる、工程、
(4) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム、及び工程(3)で適用した組成物及び工程(3)で挿入したプリフォームを、一緒に硬化させる工程、
(5) コーティングされた構成要素を前記型キャビティから取り除く工程、及び
(6) 任意に、工程(1)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む方法。
【請求項16】
コーティングされた構成要素を製造するための方法であって、
(1) 請求項1から14のいずれか1つに記載の少なくとも1つのコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 基材を前記型ツールの前記型キャビティに挿入し、そして前記型ツールを部分的に閉じる工程、
(4) 少なくとも1つの組成物を、少なくとも部分的に開いた型キャビティ内に適用する工程、
(5) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム及び工程(4)で注入した組成物を一緒に硬化させる工程、
(6) コーティングされた構成要素を前記型キャビティから取り除く工程、及び
(7) 任意に、工程(4)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法によって得られたコーティングされた構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドコーティングプロセスでの使用に好適である再被覆可能なコーティング組成物、そのような組成物で基材をコーティングする方法、及び前記方法によって得られたコーティングされた基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体及びその部品の軽量化を可能にする材料が、特に燃料要件、ひいては二酸化炭素排出量を低減する目的で、継続的に必要とされている。さらに、材料は形状化が容易であり、それ故最大限に自由な設計が可能でなければならない。既に或る特定の軽量化が可能である従来技術の好適な基材は、例えば、アルミニウム及び高性能鋼である。ここ数年で、繊維強化複合材料又は繊維強化プラスチックなどの材料が、設計者の注目をますます集めている。このような材料は、特に自動車ルーフ、ボンネット、自動車ドア及び後部部品の領域における役割を果たす。
【0003】
しかしながら、強化複合材料は、通常、従来の塗装ラインを用いたコーティングができず、そしてコーティング後に優れた表面品質(以下、クラスA表面とも呼ぶ)を達成することは困難である。コーティングの表面品質に関連する課題は、強化複合材料の不規則な表面構造がコーティングの最も上の塗装層に伝播することに起因する。この伝播は、繊維強化材料中の繊維と周囲のプラスチックマトリックスの異なる熱膨張係数の存在によるものである。これは、車体の分野における目に見える構成要素に関して特に問題である。
【0004】
コーティング後の優れた表面品質を得るために、最新技術においては、複数のフィラー層、ベースコート層及びクリアコート層の適用と、これに伴う中間サンディング工程及び最終研磨工程を含む多層コーティングプロセスが使用されている。このプロセスは時間がかかるので、複数のコーティング層及び中間サンディング工程を、単一のコーティング層で置き換えることが望ましい。このコーティング層は、その表面に基材の不規則性が伝播するのを防ぐのに十分な厚さで適用でき、基材への優れた付着性を有し、且つ洗浄及び/又はサンディング工程を使用せずにさらなるコーティング組成物で再被覆できる。
【0005】
可変であり且つ高い層厚を製造することができる可能な方法は、オーバーモールドプロセス(注入式インモールドコーティングプロセス(injection-in-mold coating process))又は従来のインモールドコーティングプロセスである。従来のインモールドコーティングプロセスでは、型キャビティの表面をコーティング組成物でコーティングし、その後に、硬化していないか、又はまだ完全には硬化していないコーティング組成物上に基材を押し付ける、又は構成要素形成組成物、例えばポリマーフォーム材料を、硬化していないか、又はまだ完全には硬化していないコーティング組成物上に適用する。オーバーモールドプロセスにおいて、コーティング組成物は、基材と型表面との間の隙間に注入される。このようなオーバーモールドプロセスでは、コーティング組成物をフラッシュオフ又は乾燥させることが不可能なので、オーバーモールドプロセスでは、揮発性成分を含まないか又はほとんど含まないコーティング組成物を使用することしかできない。このような溶媒を含まないコーティング組成物は、通常、100%の固形分含量を有する。しかしながら実際には、そのような組成物は、非常に少量の揮発性有機溶媒を含有することもあり、この揮発性有機溶媒は通常、このような溶媒に溶解する添加剤を介して組成物中に導入される。従って、実際には、100%よりわずかに少ない、例えば少なくとも96%の固形分含量を含有するコーティング組成物が使用される。基材と型表面との間の隙間の幅は正確に制御することができるので、オーバーモールドプロセスで得られる層厚は、正確に定義することができる。
【0006】
コーティング組成物が型表面と接触しているあらゆるプロセスにおいて、コーティングされた基材を損傷なく型表面から取り除くことが要求される。このように損傷なく取り除くことは、外部離型剤を用いて型表面に適用し、その後に、基材又は構成要素形成組成物を型キャビティに挿入又は適用することにより、容易に行うことができる。しかしながら、このような外部離型剤は、基材又は成形された構成要素に付着し、そしてさらなるコーティング層の適用又は他の構成要素への接着結合に先立って、除去しなければならない。このような除去は、費用がかかり且つ不便な洗浄及び/又はサンディングプロセスを伴う。さらに、使用する型も継続的に洗浄しなければならない。外部型離型剤の使用に関連する更なる欠点には、離型剤と基材及び/又は構成要素形成組成物及び/又は型表面との間の適合性の欠如が頻繁に起こり、付着の問題が生じることが含まれる。さらに、外部離型剤を使用すると、プロセスのコスト及び複雑性が増大し、それ故、運転時間が増大する。
【0007】
従って、表面の不規則性を隠すのに好適な単一のコーティング層で成形プロセス中に基材を直接コーティングして、既にコーティングされた基材又は構成要素の再被覆後にクラスA表面が得られるようにすることが望ましい。さらに、得られたコーティングフィルムは、事前の洗浄及び/又はサンディング工程なしに、さらなるコーティング層を用いて再被覆可能であり、そして基材への優れた付着性だけでなく、得られたコーティングフィルム上に適用されたさらなるコーティング層に対する優れた層間付着性を提供すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって本発明の目的は、多種多様な基材、例えばプラスチック、繊維強化複合材料、ポリマーフォーム材料などをコーティングするのに好適なコーティング組成物を提供することであり、このコーティング組成物は、外部離型剤を使用することなく、通常は金属製の型キャビティからの損傷のない脱型を可能にすると同時に、成形された構成要素への傑出した付着をもたらす。さらに、生成されたコーティングフィルムは、クラスA表面を得るため、事前の洗浄及び/又はサンディング工程なしで、さらなるコーティングフィルム、例えばプライマー及び/又はベースコート及び/又はクリアコートフィルムで再被覆することができなければならない。さらに、得られたコーティングフィルムは、得られたコーティングフィルムの上に適用された更なるコーティングフィルムに対して高い層間付着性を有するべきである。最後に、コーティング組成物は、オーバーモールディング及びインモールドコーティングプロセスにおいて通常使用される条件下で、高い保存安定性を有するべきであり、急速に硬化可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、特許請求の範囲に記載された主題によって、及び以下の説明に記載するその主題の好ましい実施形態によって達成される。
【0010】
従って、本発明の第1の主題は、以下の成分、
a) 少なくとも4質量%の総量の少なくとも1つの溶媒S、
b) 少なくとも1つの一般式(I)
-(C=O)-O-(AO)-H (I)
(式中、
は、6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表し、
rは、0又は1であり、そして
sは、0~30である)
の化合物、
c) 少なくとも1つのバインダーB、
d) 少なくとも1つの架橋剤CL、
e) スズカルボキシレート、ジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、亜鉛錯体、亜鉛カルボキシレート及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの架橋触媒CCAT、
f) 任意に少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン、及び
g) 任意に少なくとも1つの反応性希釈剤
を含むコーティング組成物であり、上記成分は該コーティング組成物の総質量に基づき、
ここで、該コーティング組成物において、少なくとも1つの一般式(II)
*-(CH-O-CH-CR-[(CH-OH](II)
(式中、
は、1~10個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であり、
nは、1~6であり、そして
mは、1~4である)
の構造単位を含むアルキルポリシロキサンが0質量%である。
【0011】
上記に特定したコーティング組成物は、以下に本発明のコーティング組成物とも呼ばれ、よって本発明の主題である。本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態は、以下の記載及び従属クレームからも明らかである。
【0012】
先行技術に照らして、少なくとも1つの一般式(I)の化合物を、少なくとも1つのバインダーB及び少なくとも1つの架橋剤CLと組み合わせて使用することにより、本発明の基礎となる主題を達成できることは、当業者にとって驚きであり、予測不可能であった。前記組み合わせを使用することにより、基材上に形成されたコーティング層の優れた付着性及び可撓性が得られると同時に、コーティングされた基材の型キャビティからの優れた脱型がもたらされる。驚くべきことに、優れた脱型は、バインダー/架橋剤系に関わらず、そしてインモールドコーティングの脱型を向上させることが知られている一般式(II)のアルキルポリシロキサンを使用することなく、達成される。よって本発明のコーティング組成物は非常に汎用性があり、そしてバインダー/架橋剤系を、基材だけでなく硬化したコーティング層の望ましい特性に適合させることができ、コーティングされた基材の型キャビティからの優れた脱型に悪影響を及ぼさない。本発明のコーティング組成物は、好ましくは液体コーティング組成物であるので、型キャビティの表面に容易に且つ均一に適用することができ、よって均一なコーティング層が得られる。本発明のコーティング組成物から得られたコーティング層は、従来の溶媒ベースの、又は水性顔料入りの、及び顔料なしのコーティング組成物を用いて、事前のサンディング及び/又は洗浄工程なしで、再被覆することができる。再被覆プロセスの後、多層コーティングを含む基材上のクラスA表面は、時間のかかる中間サンディング工程及び/又は最終研磨工程なしで達成される。本発明のコーティング組成物は、フラッシュオフして急速に硬化させることができるので、コーティングされた基材の製造中の短い処理サイクルが可能となる。さらに、本発明のコーティング組成物は、高い貯蔵安定性を有する。
【0013】
本発明のさらなる主題は、コーティングされた構成要素を製造する方法であって、該方法は、以下の工程、
(1) 少なくとも1つの本発明のコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 構成要素を形成する少なくとも1つの組成物を、コーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に適用して、構成要素を形成する組成物の適用前又は後に型ツールを閉じるか、又は少なくとも1つのプリフォームを、コーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に挿入して、型ツールを閉じる、工程、
(4) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム、及び工程(3)で適用した組成物又は工程(3)で挿入したプリフォームを、一緒に硬化させる工程、
(5) コーティングされた構成要素を型キャビティから取り除く工程、及び
(6) 任意に、工程(1)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む。
【0014】
本発明のなお別の主題は、コーティングされた構成要素を製造する方法であって、該方法は、以下の工程、
(1) 少なくとも1つの本発明のコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) コーティング対象の基材を型ツールの型キャビティ内に挿入して、型ツールを部分的に閉じる工程、
(4) 少なくとも1つの組成物を、型ツールの少なくとも部分的に開いた型キャビティ内に適用する工程、
(5) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム及び工程(4)で注入した組成物を一緒に硬化させる工程、
(6) コーティングされた構成要素を型キャビティから取り除く工程、及び
(7) 任意に、工程(4)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(5)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む。
【0015】
本発明の最後の主題は、本発明の方法により得られたコーティングである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
或る特定の特性変数を決定するために本発明の文脈において使用される測定方法は、実施例のセクションに見出すことができる。特に明記しない限り、これらの測定方法は、それぞれの特性変数を決定するために使用される。本発明の文脈において、公式の有効期間の表示なく公式の規格への言及がなされる場合、その言及は、暗黙のうちに、出願日に有効である当該規格の版への言及、又は、その時点で有効な版がない場合は、最新の有効な版への言及である。
【0017】
本発明の文脈において報告されるあらゆる膜厚は、乾燥膜厚として理解されるべきである。従ってこれは、各場合とも硬化した膜の厚さである。よってコーティング材料が特定の膜厚で適用されることが報告されている場合、これは、コーティング材料の適用を、硬化後に記載の膜厚になるように行うことを意味する。
【0018】
本発明の文脈において明らかにされるあらゆる温度は、基材又はコーティングされた基材が位置する空間の温度として理解されるべきである。従って、基材自体が当該温度を有することが要求されることを意味するものではない。
【0019】
本発明のコーティング組成物:
溶媒S(a):
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、23℃における液体コーティング組成物であり、従って、第1の必須成分として、少なくとも1つの溶媒Sを少なくとも4質量%の量で含む。少なくとも1つの溶媒Sは、好ましくは、有機溶媒、水又はこれらの混合物、好ましくは有機溶媒から選択される。
【0020】
従って特に好ましい本発明のコーティング組成物は、溶媒ベースのコーティング組成物であり、すなわちその組成物は、水及び/又はプロトン性溶媒を、コーティング組成物の総質量に基づいて5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、非常に好ましくは1質量%未満の総量で含む。
【0021】
好適な有機溶媒は、溶媒ベースのコーティング組成物に一般的に使用されるあらゆる溶媒であり、例えば、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso100又はHydrosol(登録商標)(APAL社製)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はメチルアミルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテート又はエチルエトキシプロピオネート、アミド、メチラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、グリセロールホルマール、炭化水素及びこれらの混合物である。好ましい有機溶媒はエステルであり、非常に好ましくはn-ブチルアセテート及び/又は1-メトキシプロピルアセテート及び/又は2-ブトキシエチルアセテートである。
【0022】
有機溶媒又は溶媒混合物は、好ましくは、溶媒に基づいて1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の水含量を有する。しかしながら、ここで使用される添加剤又は触媒の中には、プロトン性有機溶媒中で販売されているものがあり、従って、使用前に溶媒交換を行わない限り、いくつかの望ましくないプロトン性溶媒が導入されるのを避けられない場合がある。そのようなプロトン性溶媒の量が上記の限度に維持される場合、このような量は、一般的には無視することができる。望ましくない早期架橋が、例えば添加剤によって導入されたプロトン性溶媒の存在によって生じる場合には、そのような添加剤は、好ましくは、コーティング組成物の適用の直前にコーティング組成物中に導入される。別の可能性は、溶媒交換を行うことである。
【0023】
少なくとも1つの溶媒S、好ましくはエステル、非常に好ましくはn-ブチルアセテート及び/又は1-メトキシプロピルアセテート及び/又は2-ブトキシエチルアセテートは、好ましくは、4~50質量%、より好ましくは4~40質量%、さらにより好ましくは4~30質量%、非常に好ましくは4~20質量%の総量で、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づいて存在する。
【0024】
一般式(I)の化合物(b):
本発明の組成物は、第2の必須構成成分として、少なくとも1つの式(I):
-(C=O)-O-(AO)-H (I)
(式中、
は、6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表し、
rは、0又は1であり、そして
sは、0~30である)
の化合物を含む。
【0025】
残基Rは、好ましくは非環式残基であり、そしてより好ましくは8~15個の炭素原子、さらにより好ましくは10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基である。
【0026】
1つを超える基AOが存在する場合、前記基は同一又は異なっていてよく、そしてランダム、ブロック状又は勾配状の配列を有していてよい。好ましい基AOは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択されるアルキレンオキシド基である。
【0027】
少なくとも2つの異なる種類のAO基が存在する場合、エチレンオキシドの割合が、一般式(I)中に存在するあらゆる基AOの総モル量に基づいて、50モル%を超える、より好ましくは少なくとも70モル%、及び非常に好ましくは70~99モル%である場合が好ましい。上記の場合には、エチレンオキシドとは異なる基は、好ましくはプロピレンオキシド基である。
【0028】
r=0及びs>0の場合、一般式(I)の化合物は、アルコキシル化された脂肪アルコール、好ましくはエトキシル化された脂肪アルコールである。r=1及びs>0の場合、一般式(I)の化合物は、アルコキシル化された脂肪酸、好ましくはエトキシル化された脂肪酸である。
【0029】
特に好ましくは、一般式(I)のいくつかの又はあらゆる化合物について、sは2~28、好ましくは4~25、非常に好ましくは6~20である。特に好ましくは、残基Rは、この場合、10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。
【0030】
一般式(I)の化合物の混合物を使用することも可能であり、ここでは、少なくとも1つの化合物についてsが0であり、一方で少なくとも1つのさらなる化合物についてsが>0、好ましくは1~25又は2~24、より好ましくは4~22又は6~20、及び非常に好ましくは8~18である。
【0031】
特に好ましい一般式(I)の化合物において、残基Rは、10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であり、AOは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表し、rは0又は1であり、そしてsは0又は1~25である。
【0032】
さらに特に好ましい一般式(I)の化合物において、残基Rは、10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であり、AOは、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表し、そしてエチレンオキシドの割合は、基AOの総モル量中で少なくとも70モル%であり、r=0又は1、及びs=0又はs=6~20である。
【0033】
特に好ましいのは、s>0の前記アルコキシル化脂肪アルコールと、r=1及びs=0の脂肪酸から選択される少なくとも1つのさらなる種とを含む混合物である。
【0034】
一般式(I)の化合物の総質量は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.4~7質量%、さらにより好ましくは0.6~6質量%、非常に好ましくは0.8~4質量%であり、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づく。1つを超える式(I)の化合物を使用する場合、上記の量は、一般式(I)に該当するあらゆる化合物の総量に基づく。式(I)の化合物が特定の化合物(I-1)に限定される場合には、上記の量は特定の化合物(I-1)だけに基づくのではなく、代わりに一般式(I)に該当する化合物の総量に基づく。例えば、特定の化合物(I-1)が5質量%の量で使用される場合には、本発明の組成物中に存在する一般式(I)に該当するさらなる化合物は、多くても5質量%であってよい。
【0035】
バインダー(c):
本発明のコーティング組成物はフィルム形成組成物であり、よって第3の必須成分として、少なくとも1つのバインダーBを含む。用語「バインダー」は、本発明の意味において、且つDIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)と一致して、好ましくは、フィルム形成を担う本発明の組成物の不揮発性画分(そこに含まれる如何なる顔料及びフィラーも除く)を指し、より具体的には、フィルム形成を担うポリマー樹脂を指す。不揮発性画分は、実施例のセクションに記載の方法により決定される。
【0036】
驚くべきことに、硬化コーティング層の優れた脱型性だけでなく優れた品質、特に優れた付着性、再被覆性及び接着結合性は、バインダーBの性質に関わらず硬化した本発明のコーティング組成物で達成される。従って本発明の組成物は、任意の架橋性バインダーBを含有することができ、生成されたコーティングされた構成要素の脱型性又は本発明のコーティング組成物で生成したコーティング層の優れた特性に悪影響を及ぼさない。
【0037】
好適なバインダーBは、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性ポリウレタン、(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール、(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオール、(v)上記のポリマー中のコポリマー、及び(vi)これらの混合物、好ましくは(i)ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及び/又は(ii)ヒドロキシ官能性ポリウレタン及び/又は(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール及び/又は(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオールからなる群から選択される。用語「ポリ(メタ)アクリレート」は、ポリアクリレート及びポリメタクリレートの両方を指す。従ってポリ(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートから構成されていてよく、そしてさらなるエチレン性不飽和モノマー、例えばアルキル(メタ)アクリレート、スチレン又は(メタ)アクリル酸を含んでよい。
【0038】
特に好適なバインダーBは、
- 分岐ポリエステルポリオール及び/又はヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート又は
- ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及び直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオール
から選択される。
【0039】
用語「脂肪族ポリカーボネートポリオール」はここで、非環状又は環状の、飽和又は不飽和の残基のみを含有するポリカーボネートポリオールを指し、すなわち前記ポリオールは、如何なる芳香族残基も含有しない。しかしながら、脂肪族ポリカーボネートポリオールは、それに応じて、ヘテロ原子、例えば、酸素又は窒素を含有してよい。
【0040】
分岐ポリエステルポリオールは、好ましくは、DIN53240-2:2007-11に準拠して決定して、5~25%、より好ましくは10~20%、非常に好ましくは12~18%のヒドロキシ含有量を有する。分岐ポリエステルポリオールは、好ましくは、かなり少量の酸官能基のみを含有する。よって分岐ポリエステルポリオールの酸価は、DIN EN ISO2114:2002-06に準拠して決定して、好ましくは固形分換算で0~6mgKOH/g、より好ましくは固形分換算で1~3mgKOH/gである。分岐ポリエステルポリオールは、好ましくは、DIN EN ISO3219:1994-10、手順A.3に準拠して決定して、1,000~4,000mPa*s、より好ましくは1,300~3,000mPa*s、非常に好ましくは1,600~2,200mPa*sの23℃での粘度を有する。好適な分岐ポリエステルポリオールは、例えばCovestro Deutschland AG社が販売するDesmophen(登録商標)VP LS2249/1の商品名で、市販されている。
【0041】
本発明のコーティング組成物がバインダーBとして分岐ポリエステルポリオールを含有する場合、前記分岐ポリエステルポリオールは、好ましくは、1~65質量%、より好ましくは2~55質量%、非常に好ましくは3~5質量%又は35~45質量%の総量(固形分含量)で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する。
【0042】
好適なヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、DIN53240-2:2007-11、手順Aに準拠して決定して、50~200mgKOH/g、好ましくは90~160mgKOH/g、より具体的には110~130mgKOH/g又は135~145mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。本発明のコーティング組成物は、好ましくは有機ベースのコーティング組成物であるので、ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートの酸価は、好ましくはかなり低い。よって好ましいヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、DIN EN ISO2114:2002-06に準拠して決定して、固形分換算で0~15mgKOH/g、より好ましくは固形分換算で1~10mgKOH/g、非常に好ましくは固形分換算で1~4mgKOH/g又は固形分換算で6~9mgKOH/gの酸価を有する。さらに、好ましいヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、ポリスチレンを内部標準として用いるゲル浸透クロマトグラフィーで決定して、800~5,000g/モル、より好ましくは1,000~4,000g/モル、非常に好ましくは1,100~2,400g/モル又は1,700~3,000g/モルの数平均分子量Mを有する。好適なヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、例えばBASF SE社が販売するAcrylique TSA Uno及びAcrylique 3,5 seachage rapidの商品名で、市販されている。
【0043】
本発明のコーティング組成物がバインダーBとしてヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートを含有する場合、前記ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、1~75質量%、好ましくは55~65質量%の総量(固形分含量)で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する。
【0044】
直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールは、好ましくは、DIN53240-2:2007-11に準拠して決定して、0.1~10%、より好ましくは0.5~5%、非常に好ましくは1~3%のヒドロキシ含有量を有する。さらに、直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールは、好ましくは、DIN EN ISO2114:2002-06に準拠して決定して、固形分換算で0~6mgKOH/g、より好ましくは固形分換算で0.05~0.5mgKOH/gの酸価を有する。直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールの23℃における粘度は、DIN EN ISO3219:1994-10、手順A.3に準拠して決定して、好ましくは5,000~40,000mPa*s、より好ましくは10,000~30,000mPa*s、非常に好ましくは13,00~20,000mPa*sである。
【0045】
本発明のコーティング組成物がバインダーBとして直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールを含有する場合、前記直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールは、好ましくは、10~40質量%、より好ましくは12~30質量%、非常に好ましくは18~25質量%の総量(固形分含量)で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する。
【0046】
少なくとも1つのバインダーBは、好ましくは、固形分換算で40~95質量%、好ましくは固形分換算で45~90質量%、より好ましくは固形分換算で50~85質量%、非常に好ましくは固形分換算で60~80質量%の総量で、各場合とも組成物の総質量に基づいて存在する。バインダーが分散体又は溶液中に存在する場合、上記の総量は、各場合とも分散体又は溶液の固形分含量を用いて計算される。上記の量のバインダーBを用いることにより、高い脱型性に悪影響を与えることなく、優れた品質、特に付着性、再被覆性及び接着結合性を有するコーティング層を形成することができる。
【0047】
架橋剤CL(d):
第4の必須成分として、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの架橋剤CLを含む。前記架橋剤CLは、少なくとも1つのバインダーBに存在する相補的な反応性官能基と架橋反応を行うことができる少なくとも1つの反応性官能基を含む。少なくとも1つのバインダーBは、好ましくはヒドロキシル基の形態で反応性官能基を含有するので、このようなヒドロキシル基と架橋反応を行うことができる好ましい反応性官能基は、イソシアネート基、アミノ基又はカルボジイミド基である。
【0048】
少なくとも1つの架橋剤CLは、好ましくは、アミノ樹脂、非ブロック化ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド及びこれらの混合物、好ましくはポリイソシアネートから選択される。
【0049】
非ブロック化ポリイソシアネート、すなわち少なくとも2つの遊離イソシアネート基を含有する化合物を使用することが特に好ましい。
【0050】
この文脈において、ポリイソシアネートが、DIN EN ISO11909:2007-05又はASTMD5155-2014に準拠して決定して、10~50質量%、好ましくは15~40質量%、非常に好ましくは20~25質量%又は28~35質量%のNCO含有量を有する場合が特に好ましい。
【0051】
ポリイソシアネートは、好ましくはジイソシアネートのオリゴマー、好ましくはトリマー又はテトラマーを含む。特に好ましいのは、ジイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、アロファネート及び/又はビウレットを含むことである。特に好ましくは、ポリイソシアネートは、脂肪族及び/又は脂環式、非常に好ましくは脂肪族のポリイソシアネートを含む。前記オリゴマー、より具体的には前記トリマー又はテトラマーのジイソシアネートベースとして役立つのは、非常に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートであり、そして特に好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートのみである。
【0052】
本発明の文脈において特に好ましく使用されるのは、少なくとも1つのイソシアヌレート環又は少なくとも1つのイミノオキサジアジンジオン環を含むポリイソシアネートである。
【0053】
得られた硬化コーティング層の硬度、可撓性及び弾性は、適切な架橋剤CLを選択することによって影響を与えることができる。イミノオキサジアジンジオン構造を含有するポリイソシアネートの使用は、特に、高い硬度を有するコーティング層をもたらし、これによって、基材構造が、硬化したコーティング表面まで伝播して不要なうねりを引き起こすのを防ぐ。このようなポリイソシアネートは、例えばCovestro社からDesmodur N3900の名称で入手可能である。同様の結果は、イソシアヌレート構造を含有するポリイソシアネート(例えばCovestro社からDesmodur N3800の名称で入手可能)を用いて達成され、この場合、コーティング層は、イミノオキサジアジンジオン構造を含有するポリイソシアネートを用いた場合に得られるコーティング層よりも可撓性がある。
【0054】
代替の実施形態によれば、互いに異なる2つのポリイソシアネートP1及びP2が架橋剤CLとして存在してよく、第1のポリイソシアネートP1は少なくとも1つのイソシアヌレート環を含み、そして第2のポリイソシアネートP2はポリマーメチレンジフェニルジイソシアネートである。
【0055】
組成物は、好ましくは、少なくとも1つの架橋剤CL、好ましくはポリイソシアネートを、5質量%~70質量%、より好ましくは10~65質量%、より具体的には15~60質量%の総量で、各場合とも組成物の総質量に基づいて含む。異なる架橋剤CLの混合物が使用される場合、前述の量は、本発明のコーティング組成物中に存在するあらゆる架橋剤CLの合計を指す。
【0056】
さらに、本発明のコーティング組成物が、架橋剤CLの官能基の、少なくとも1つのバインダーB中に存在する相補的な反応性官能基の合計に対する、特定のモル比を含む場合が好ましい。これにより、硬化条件下において本発明の組成物の十分な架橋が保証される。従って、架橋剤CLの官能基、より具体的にはポリイソシアネートのNCO基の、少なくとも1つのバインダーB中に存在する相補的な反応性官能基、より具体的にはヒドロキシル基の合計に対するモル比は、1.5:1~1:1.5、好ましくは1.2:1~1:1.2、より具体的には1:1である場合が有利である。
【0057】
アルキルポリシロキサン
本発明のコーティング組成物は、前述の少なくとも1つの一般式(II)の構造単位を含む如何なるアルキルポリシロキサンも含有しない。
【0058】
特に好ましくは、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの一般式(II)の構造単位を含有する如何なるアルキルポリシロキサンも含まず、ここで、前記一般式(II)の残基Rは、2個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族炭化水素基であり、nは3であり、そしてmは1である。このようなアルキルポリシロキサンは、例えば、Siltech Corporation社からSilmer(登録商標)OHT Di-10、Silmer(登録商標)OHT Di-50又はSilmer(登録商標)OHT Di-100の商品名で市販されており、そして各末端が2個の第1級ヒドロキシル基を有する分岐アルキル基で官能化されたシリコーンポリマーである。
【0059】
驚くべきことに、本発明のコーティング組成物を用いると、型ツールからのコーティングされた物体の脱型を改善することが知られている前記アルキルポリシロキサンがなくても、優れた脱型性を達成することができる。
【0060】
架橋触媒CCAT:
さらに、組成物は、少なくとも1つの架橋触媒CCATを含む。前記架橋触媒CCATは、主として、架橋剤CLの官能基と、少なくとも1つのバインダーBの相補的な反応性官能基及び任意に少なくとも1つの反応性希釈剤との間の反応を触媒するのに役立つ。
【0061】
少なくとも1つの架橋触媒CCATは、スズカルボキシレート、スズメルカプチド、ジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、亜鉛錯体、亜鉛カルボキシレート及びこれらの混合物から、より好ましくはスズカルボキシレートから、非常に好ましくはジオクチルスズジラウレートから選択される。
【0062】
特に好ましくは、スズカルボキシレート、好ましくはジオクチルスズジラウレートのスズ含有量は、スズカルボキシレートの総質量に基づいて10~25%、より好ましくは12~20%である。
【0063】
金属カルボキシレート、より好ましくはスズカルボキシレートは、好ましくは、カルボキシレートの親カルボン酸、すなわちHOOC(C2n+1)と組み合わせて安定化された形態で使用するのが好ましく、式中、nは上記の定義を有する。
【0064】
好適なスズメルカプチドは、ジアルキルスズジメルカプチド、好ましくは一般式(IV)
[(C2m+1)]Sn[S(C2n+1)] (VI)
のジアルキルスズジメルカプチドであり、
式中、m=1~10、好ましくはm=4~8、及びn=6~16、好ましくはn=8~14、非常に好ましくはn=10~12である。特に好ましいジアルキルスズジメルカプチドは、ジメチルスズジラウリルメルカプチドである。
【0065】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの架橋触媒CCATを、コーティング組成物の総質量に基づいて、0.1~5質量%、好ましくは0.2~3質量%、非常に好ましくは0.2~0.8質量%の総量で含んでよい。
【0066】
本発明のコーティング組成物のさらなる成分:
本発明のコーティング組成物は、前述の必須成分とは別に、以下に記載するさらなる成分を含むことができる。
【0067】
ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン:
本発明の組成物は、少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンをさらに含んでよい。本発明による用語「ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン」は、末端で及び/又は主鎖においてポリエーテル基で修飾されたアルキルポリシロキサンを表す。これらのポリエーテル基は、アルキルポリシロキサンのケイ素原子に直接及び/又はアルキル基を介して、結合してよい。ポリエーテル基は、好ましくは、アルキルポリシロキサンのケイ素原子に直接結合している。存在する好ましいポリエーテル基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド基である。
【0068】
このようなポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンの使用は、土砂のような環境の影響による硬化コーティング層の汚れを減少させる。
【0069】
好ましくは、ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンは、少なくとも1つの構造単位(R(OR)SiO1/2及び少なくとも1つの構造単位(RSiO2/2を含み、式中、Rは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシド基であり、より具体的には、エチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基及びブチレンオキシド基の混合物であり、そしてRは、C~C10アルキル基であり、より具体的には、メチル基である。
【0070】
この文脈において、ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、シロキサン対エチレンオキシド基対プロピレンオキシド基対ブチレンオキシド基のモル比を、6:21:15:1~67:22:16:1で有する場合が好ましい。
【0071】
この文脈においてさらに、ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンは、構造単位(R(OR)SiO1/2対構造単位(RSiO2/2のモル比を、1:10~1:15、より具体的には1:10~1:13で有する場合が好ましい。ここでR及びRは、上述の定義を有する。
【0072】
少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンは、好ましくは、23℃でDIN51423-2:2010-02に準拠して決定して、1.4~1.6、より好ましくは1.42~1.46の屈折率を有する。高い屈折率に起因して、前記ポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンは透明であり、従って透明な硬化コーティング層をもたらすべきである本発明のコーティング組成物に使用することができる。
【0073】
少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンは、好ましくは、23℃でDIN53015:2001-02に準拠して決定して、300~1,500mPa*s、より好ましくは400~1,000mPa*s、非常に好ましくは500~900mPa*sの粘度を有する。
【0074】
組成物は、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づいて、0~15質量%、好ましくは1~12質量%、非常に好ましくは1.5~10質量%のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン、より具体的には上記特定のポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンを含んでよい。このような化合物が存在しないことから本発明のコーティング組成物の粘着性を低下させることができ、従って、脱型特性が改善される。
【0075】
反応性希釈剤:
反応性希釈剤という用語は、ポリマー材料の形成中に少なくとも1つのバインダーB及び少なくとも1つの架橋剤CLの重合反応に関与することができる低質量モノマーを指す。このようなモノマー化合物の質量平均分子量Mは、好ましくは、ポリスチレンを内部標準として用いるGPCにより決定して、1,500g/モル未満、及びより好ましくは900g/モル未満である。
【0076】
好ましくは、少なくとも1つの反応性希釈剤は、ヒドロキシ基含有化合物、より好ましくはポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド、非常に好ましくはポリプロピレンオキシドから選択される。
【0077】
少なくとも1つの反応性希釈剤は、好ましくは、ポリスチレンを内部標準として用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、500~1,500g/モル、より好ましくは600~1,200g/モル、非常に好ましくは800~1,000g/モルの質量平均分子量Mを有する。
【0078】
さらに、少なくとも1つの反応性希釈剤は、好ましくは、DIN51562:1999-01に準拠して決定して、100~400mm/s(cst)、より好ましくは140~200mm/s(cst)、非常に好ましくは170~200mm/s(cst)の20℃における動粘度を有する。
【0079】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの反応性希釈剤を、0~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、非常に好ましくは0.3~1質量%の総量で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて含んでよい。
【0080】
顔料/フィラー:
組成物は、少なくとも1つの顔料及び/又は少なくとも1つのフィラーをさらに含んでよい。好適な顔料は、例えば、あらゆる有機及び無機着色顔料、効果顔料、そして水性及び溶媒ベースのコーティング組成物に一般的に使用されるこれらの混合物である。このような色顔料及び効果顔料は当業者に知られており、例えば、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998年、第176頁及び第451頁に記載されている。「着色顔料」及び「色顔料」という用語は、「視覚効果顔料」及び「効果顔料」という用語と同様に、交換可能である。
【0081】
顔料及び/又はフィラーの使用は、着色コーティング層を得なければならない場合に有利である。驚くべきことに、本発明の組成物における顔料及び/又はフィラーの使用は、硬化コーティング層の脱型性、付着性及び再被覆性に悪影響を及ぼさない。よって、製造直後に所望の色を既に有するコーティング層を得ることが可能であるので、所望の色を得るためにさらにコーティング層を適用する必要がない。
【0082】
無機着色顔料の例には、(i)白色顔料、例えば二酸化チタン、白色亜鉛、着色酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、(ii)黒色顔料、例えば酸化鉄ブラック、鉄マンガンブラック、スピネルブラック、カーボンブラック、(iii)色顔料、例えばウルトラマリングリーン、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、マンガンバイオレット、酸化鉄レッド、モリブデートレッド、ウルトラマリンレッド、酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネル及びコランダム相、酸化鉄イエロー、ビスマスバナデート、(iv)フィラー顔料、例えば、二酸化ケイ素、石英粉、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、天然雲母、天然及び沈殿チョーク、硫酸バリウム及び(vi)これらの混合物が含まれる。
【0083】
好適な有機着色顔料は、(i)モノアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントオレンジ5、36及び67、C.I.ピグメントオレンジ5、36及び67、C.I.ピグメントレッド3、48:2、48:3、48:4、52:2、63、112及び170、及びC.I.ピグメントイエロー3、74、151及び183;(ii)ジアゾ顔料、例えばC.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、及びC.I.ピグメントイエロー83;(iii)アントラキノン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー147及び177、及びC.I.ピグメントバイオレット31;(iv)ベンズイミダゾール顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ64;(v)キナクリドン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ48及び49、C.I.ピグメントレッド122、202及び206、及びC.I.ピグメントバイオレット19;(vi)キノフタロン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー138;(vii)ジケトピロロピロール顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ71及び73、及びC.I.ピグメントレッド、254、255、264及び270;(viii)ジオキサジン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット23及び37;(ix)インダントロン顔料、例えばC.I.ピグメントブルー60;(x)イソインドリン顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー139及び185;(xi)イソインドリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ61及びC.I.ピグメントイエロー109及び110;(xii)金属錯体顔料、例えばC.I.ピグメントイエロー153;(xiii)ペリノン顔料、例えばC.I.ピグメントオレンジ43;(xiv)ペリレン顔料、例えばC.I.ピグメントブラック32、C.I.ピグメントレッド149、178及び179、及びC.I.ピグメントバイオレット29;(xv)フタロシアニン顔料、例えばC.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16、及びC.I.ピグメントグリーン7及び36;(xvi)アニリンブラック、例えばC.I.ピグメントブラック1;(xvii)アゾメチン顔料;及び(xviii)これらの混合物から選択される。
【0084】
効果顔料の例には、(i)板状金属効果顔料、例えば板状アルミニウム顔料、金ブロンズ、炎色ブロンズ、酸化鉄-アルミニウム顔料;(ii)真珠光沢顔料、例えば金属酸化雲母顔料、(iii)板状グラファイト顔料;(iv)板状酸化鉄顔料;(v)PVDフィルムからの多層効果顔料;(vi)液晶ポリマー顔料;及び(vii)これらの混合物が含まれる。
【0085】
少なくとも1つの顔料及び/又は少なくとも1つのフィラーは、好ましくは、組成物の総質量に基づいて、0.1質量%~10質量%の総量で存在する。
【0086】
添加剤:
本発明の組成物は、湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー補助剤、流動制御剤、UV吸収剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでよい。
【0087】
少なくとも1つの添加剤は、好ましくは、組成物の総質量に基づいて、0.1質量%~10質量%の総量で存在する。
【0088】
本発明の組成物中に存在する特定のバインダーB及び架橋剤CLに応じて、前記組成物は1成分系として構成されるか、又は少なくとも2つの(多成分系)成分を混合することによって得ることができる。好ましくは、本発明のコーティング組成物は、少なくとも2つの別個の成分を含む多成分系として構成され、すなわち、少なくとも1つのバインダーB及び少なくとも1つの架橋剤CLは互いに対して反応性であり、従って、望ましくない早期反応を防止するために、適用前に互いに別々に貯蔵しなければならない。一般に、バインダー成分及び架橋剤成分は、適用の直前にのみ混合してよい。「適用の直前」という用語は、当業者には周知である。実際の適用前に成分を混合することによってすぐに使用できるコーティング組成物が調製される期間は、コーティング適用のポットライフに依存する。
【0089】
よって、本発明のコーティング組成物を調製するための好ましい多成分系(つまり、キット・オブ・パーツ(kit-of-parts))は、
A) 少なくとも1つの溶媒S、少なくとも1つの一般式(I)の化合物、少なくとも1つのバインダーB、及び少なくとも1つの架橋触媒CCATを含む少なくとも1つのベースワニス成分、及び
B) 少なくとも1つの架橋剤CLを含む少なくとも1つの硬化剤成分
を含む。
本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの一般式(II)の構造単位を含む如何なるアルキルポリシロキサンも含まないので、多成分系のあらゆる成分も同様に、前記アルキルポリシロキサンを含まない。ベースワニス成分A)及び硬化剤成分B)の成分については、前述の本発明のコーティング組成物を参照されたい。
【0090】
前述のように、キット・オブ・パーツの成分A)及びB)は、別々に貯蔵され、そして適用の直前にのみ組み合わされる。
【0091】
少なくとも1つのベースワニスは、少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン及び/又は少なくとも1つの反応性希釈剤及び/又は少なくとも1つの顔料及び/又はフィラー及び/又は少なくとも1つの添加剤をさらに含んでよい。
【0092】
キット・オブ・パーツは、さらなる成分も含むことができ、例えば、少なくとも1つの溶媒及び任意に少なくとも1つのレオロジー補助剤を含む希釈成分C)を含み、本発明のコーティング組成物の粘度を変更する。少なくとも1つの溶媒は、ベースワニス中の溶媒Sと同一であるか、又は異なってよい。異なる溶媒を使用する場合には、混合時の望ましくない相分離、凝集又は沈殿を防ぐために、前記溶媒は、好ましくは、ベースワニス中の溶媒Sと相溶性である。特に好ましくは、溶媒は、ベースワニス中の溶媒Sと同一である。
【0093】
成分A)及びB)は、好ましくは、1.5:1~1:1.5、より好ましくは1.2:1~1:1.2、非常に好ましくは1:1の比で混合する。上記の混合比の使用により、本発明のキット・オブ・パーツから調製されたコーティング組成物の十分な架橋が保証され、高い付着性、及び優れた脱型性も得られる。
【0094】
混合は手動で、適量の第1の成分A)を容器に導入し、対応する量の第2の成分B)及び任意のさらなる成分と混合することにより行ってよい。しかしながら、2つ以上の成分の混合は、自動混合システムによって自動的に行うこともできる。このような自動混合システムは、混合ユニット、より具体的にはスタティックミキサー、及びバインダーを含有する第1の成分A)及び架橋剤を含有する第2の成分B)を供給するための少なくとも2つの装置、より具体的にはギアポンプ及び/又は圧力弁を含むことができる。スタティックミキサーは、市販のらせんミキサーであってよく、これは、噴霧器の約50~100cm前方の材料供給ライン中に設置される。好ましくは、2つの成分を十分に混合するために12~18個の混合要素(各要素は長さ1cm、直径6~8mm)を使用する。材料供給ラインの詰まりを防ぐために、らせんミキサーだけでなく、下流のホースライン及び噴霧器にも、7~17分毎に第1の成分が勢いよく流れるように混合ユニットがプログラムされていると、好ましい。組成物がロボットによって適用される場合、この勢いよく流す操作は、ロボットヘッドが予め規定された静止位置にあるときに行われる。ホースラインの長さに応じて、約50~200mlがキャッチ容器に廃棄される。この手順の好ましい代替は、混合された離型剤組成物の半連続的な搬送である。組成物を定期的に(7~17分毎に、同様にキャッチ容器中に)強制的に出す場合、廃棄材料の量を最小(約10~50ml)にすることが可能である。さらに、勢いよく流される、ミキサーから噴霧器までのホースライン及び噴霧器に提供してもよい。この勢いよく流す操作は、特にシステムの長時間のダウンタイム後又はシフトの終了時に行うことが、機器の長寿命及び組成物の継続した品質を確実とするために好ましい。
【0095】
手動混合の場合及び自動混合のための成分の供給の場合の両方で、別個の成分は、好ましくはそれぞれ15~70℃、より好ましくは15~40℃、より具体的には20~30℃の温度を有する。
【0096】
本発明の方法:
インモールドコーティング法:
本発明はさらに、コーティングされた構成要素を製造する方法に関し、該方法は、
(1) 少なくとも1つの本発明のコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 構成要素を形成する少なくとも1つの組成物を、コーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に適用して、構成要素を形成する組成物の適用前又は後に型ツールを閉じるか、又は少なくとも1つのプリフォームを、コーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に挿入して、型ツールを閉じる、工程、
(4) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム、及び工程(3)で適用した組成物又は工程(2)の後に得られたコーティングフィルム及び工程(3)で挿入されたプリフォームを、一緒に硬化させる工程、
(5) コーティングされた構成要素を型キャビティから取り除く工程、及び
(6) 任意に、工程(1)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む。
【0097】
本発明による構成要素とは、他の構成要素と結合したときに組立体を形成する個々の部品を意味する。例えば、構成要素が自動車の車体の一部である場合、これは他の車体構成要素と組み合わせることができ、車体を形成する。しかしながら一般に、構成要素として機能できるものとしての材料の目的とは独立して、本発明は一般に、コーティングされた構成要素の製造に関するものであり、従って、上記の意味の構成要素に限定されない。このことから、以下で構成要素のコーティングに言及する場合、これは一般に、「構成要素」機能のない材料のコーティングも包含する。換言すれば、このような材料は、製造後に組立品を製造するための構成要素として必ずしも使用される必要はない。
【0098】
本発明によるコーティングされた構成要素とは、その表面の少なくとも1つに少なくとも1つのコーティング層を有する構成要素を意味する。コーティング層は、構成要素の少なくとも1つの表面上に、前記構成要素の製造中に本発明の組成物を架橋することによって得られる。よってコーティング層は、本発明の架橋組成物を指す。
【0099】
工程1:
本発明のインモールドコーティング方法の工程(1)において、前述の本発明のコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する。「型キャビティの表面」という用語は、本発明によれば、本発明のコーティング組成物と、さらに構成要素形成組成物又はコーティングされた構成要素の製造中に使用されるプリフォームと接触する、型部品の表面を指す。
【0100】
本発明のコーティング組成物は、離型剤及びコーティング剤として使用され、成形された構成要素の脱型を容易にし、そして同時に製造プロセス中に成形された構成要素のコーティングを実現する。成形された構成要素のコーティングにより、後コーティング工程が不要となる。さらに、離型剤をコーティング組成物に組み込むことにより、外部離型剤の使用を回避することができる。この外部離型剤は、その後に適用されるコーティング層の構成要素への付着を妨げるので、適用前に追加の洗浄工程が必要である。成形された構成要素を損傷なく脱型することを容易にし、前記構成要素のあらゆる表面をコーティングするために、本発明の組成物は、好ましくは、型キャビティに面する型部品のあらゆる表面に適用する。しかし、表面の特定の領域のみをコーティングするか、又は型部品のいくつかの表面のうちの1つのみをコーティングすることも、同様に可能である。
【0101】
型ツールは、好ましくは三次元の型ツールであり、型を開閉するため互いに対して動かすことができる少なくとも2つの型部品によって形成される三次元内部キャビティを有する。従って型の内部キャビティは、3つの寸法、すなわち長さ、幅及び深さを有する。型は、単一のキャビティ又は複数のキャビティを有することができる。複数キャビティの型においては、各キャビティが同一であって同じ部品を形成することができ、又は特有であって1回のサイクルの間に複数の様々な形状を形成することもできる。
【0102】
工程(1)で使用される組成物は、型キャビティの少なくとも1つの表面の少なくとも一部に、手動で、一般に知られている液体コーティング組成物のための適用ギア、例えばスプレーガンを用いるか、又は適用ロボットによって、適用することができる。経済性の観点から、適用ロボットの使用が好ましい。ロボットは型部品の形状に合わせてプログラムされ、そして組成物を圧縮空気で自律的に型部品の内面に適用する。
【0103】
組成物が適用ロボットによって適用される場合、本発明によれば、適用ロボットの展開を伴う組成物の適用中に、0.05~1.5mm、好ましくは0.08~1mm、より具体的には0.1~0.8mmの直径を有するノズルを使用する場合が好ましい。上述の直径を有するノズルを使用することにより、型キャビティの表面(複数可)が所望量の組成物で濡れることが保証される。
【0104】
型キャビティは、好ましくは、工程(1)における表面温度が20~100℃、好ましくは40~80℃、非常に好ましくは60~70℃である。よって型ツールを、好ましくは、工程(1)における組成物の適用前に予熱する。型キャビティの加熱は、熱の供給によって又は照射、例えばIR放射によって、行うことができる。好ましくは、型ツール及び/又は型キャビティは、IR放射によって加熱する。型キャビティを予熱する場合、型キャビティは予熱中に開閉することができる。予熱中に型キャビティが閉じている場合は、組成物を適用する前に型キャビティを開く必要がある。
【0105】
工程(2):
インモールドコーティングプロセスの工程(2)において、工程(1)で適用した組成物からフィルムを形成する。コーティングフィルムの形成は、好ましくは、適用したコーティング組成物をフラッシュオフすることによって行う。これは、組成物中に存在する溶媒の、通常は周囲温度よりも高い温度、例えば40~140℃での能動的又は受動的蒸発を意味する。組成物は、適用直後及びフラッシュオフの開始時にまだ流動性であるので、フラッシュオフ段階の間に、均一で滑らかなコーティングフィルムを形成することができる。しかし、フラッシュ後にコーティング組成物から得られた層は、まだ使用可能な状態ではない。例えば、それが実際に、もはや流動性ではなく、まだ軟らかいか粘着性であるときは、部分的に乾燥したのみの場合がある。特に、コーティング組成物から得られた層は、下記のようにまだ架橋されていない。
【0106】
特に好ましくは、コーティングフィルムは工程(2)において、好ましくは40~80℃、非常に好ましくは60~70℃の温度で、1~60秒、好ましくは5~30秒の持続時間で形成される。工程(1)の組成物の適用前に型キャビティが既に加熱されていない場合、これを工程(2)で加熱してコーティングフィルムを得る。型キャビティの加熱は、工程(1)に関連して前述したように行うことができる。工程(1)で適用したコーティング組成物の短いフラッシュオフ時間によって短いプロセス時間の実現が可能となり、よって効率的且つ経済的な製造プロセスが可能となる。さらに、コーティング組成物は、短いサイクル時間が不可欠なプロセス、例えば、丸テーブルのプロセスを用いる靴底の製造で、使用することができる。
【0107】
工程(3):
本発明のインモールドコーティングプロセスの工程(3)の第1の変形態様によれば、工程(2)で得られたコーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に、構成要素形成組成物を適用する。
【0108】
工程(3)で適用される構成要素形成組成物は、好ましくは、(i)ポリマーフォーム材料、より具体的にはポリウレタンフォーム材料、ポリスチレンフォーム材料、ポリエステルフォーム材料、ブタジエンスチレンブロックコポリマーフォーム材料及びアミノプラストフォーム材料から、非常に好ましくはポリウレタンフォーム材料から選択されるポリマーフォーム材料、(ii)プラスチック材料、より具体的には、エポキシド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン及びアクリロニトリルブタジエンスチレンから、非常に好ましくはエポキシド及び/又はポリウレタン及び/又はポリカーボネートから選択されるプラスチック材料、から選択される。
【0109】
ポリマーフォーム材料は、本発明の文脈において、熱硬化性物、熱可塑性プラスチック、エラストマー、又は熱弾性物であり、これらから発泡プロセスによってポリマーフォームを製造することができる。これらの化学的な基礎の観点では、可能性のあるポリマーフォーム材料には、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、又はポリオレフィン、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレンビニルアセテート、及び記載したポリマーのコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。製造されるポリマーフォームには、とりわけ、エラストマーフォーム、より具体的には可撓性フォームが含まれるが、熱硬化性フォーム、より具体的には硬質フォーム、及び一体フォームも含まれる。フォームは、連続気泡フォーム、独立気泡フォーム、又は混合セルフォームであってよい。
【0110】
発泡プロセスによるポリマーフォームの製造は、プロセス工程(4)に関連して記載したように、適用したフォーム材料を硬化(すなわち発泡)させることによって達成される。発泡プロセスは既知であり、従って簡単な説明のみとする。各場合とも基本原理は、発泡剤及び/又は、プラスチック中の溶液又は対応するプラスチック溶融物中の、及び対応するポリマープラスチックの製造における架橋反応により形成される気体が放出され、これによって、それまでは比較的高密度であったポリマープラスチックの発泡が起こることである。例えば、低沸点の炭化水素が発泡剤として使用される場合、これは高温で蒸発し、発泡に至る。二酸化炭素又は窒素のようなガスもまた、発泡剤として、高圧でポリマー溶融物に導入され、及び/又はその中に溶解することができる。その後の圧力低下の結果として、溶融物は、発泡剤ガスの漏出中に発泡する。
【0111】
特に好ましいポリマーフォーム材料は、ポリウレタンフォーム材料である。これらは慣用的に、1つ以上のポリオール及び1つ以上のポリイソシアネートから製造される。フォームを形成するためにポリオール成分に添加される発泡剤は、通常、水であり、これがポリイソシアネートの一部と反応して二酸化炭素を形成するので、反応には発泡が伴う。軟質~弾性のフォーム、特に可撓性のあるフォームは、長鎖ポリオールを用いて得られる。短鎖ポリオールを使用すると、高度に架橋された構造が形成され、一般的に硬質のフォームが形成される。ポリウレタンフォーム材料の製造に用いられるポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリエーテルポリオールを含み、よって前記ポリオールの群から選択されることが好ましい。
【0112】
繊維が、ポリマーフォーム材料に混合されてもよい。このような材料を発泡させると、その製品は繊維強化フォームとして知られる。硬質フォームを製造する際には、繊維が好ましく用いられる。
【0113】
プラスチック材料は、本発明の文脈において、熱硬化性物、熱可塑性プラスチック、エラストマー、又は熱弾性物であり、これらから2つの反応性成分間の架橋反応によってプラスチック材料を製造することができる。
【0114】
適用は、原則として既知の装置によって行ってよい。特に好ましくは、組成物は、プロセス工程(3)において自動的に適用される。適用は、組成物を閉鎖型に注入することによって、又は組成物を開放型キャビティにスプレーして型ツールを閉じることによって、行ってよい。組成物は、1段階又は複数段階で型内に適用することができる。複数の工程における組成物の適用は、好ましくは、型ツールが複数の型キャビティを含む場合に行われる。その場合、組成物を第1段階において第1の型キャビティ内に注入し、そして第2段階において第2の型キャビティ内に注入する。
【0115】
本発明のプロセスの工程(3)の第2の変形例によれば、プリフォームを開放型キャビティに挿入し、その後、型ツールを閉鎖する。
【0116】
特に好ましいプリフォームは、1つ以上の繊維の層からなり、前記繊維は、任意に、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされている。繊維は、好ましくは繊維複合体の形態で存在し、特に織物、スクリム、編布、リボン、不織布及び/又はマットの形態で存在する。好適な繊維には、強化材料を調製するために一般的に使用されるあらゆる繊維、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維及びこれらの混合物が含まれる。
【0117】
好適なポリマー材料には、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ビニルエステル樹脂、及びホルムアルデヒドフェノール樹脂が含まれる。
【0118】
特に好ましくは、本発明のプロセスの工程(3)において使用される少なくとも1つのプリフォームは、好ましくはガラス繊維からなり、前記繊維は、任意に、ポリエステル又はポリウレタンから選択されるポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされている。プリフォームの繊維がポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされている場合、前記プリフォームを好ましくは乾燥させ、その後工程(3)において型キャビティ内に挿入して、これらプリフォームを取り扱いやすくする。しかしながら、ポリマー材料は完全には硬化させず、硬化した本発明のコーティング材料を前記プリフォームの表面上に十分に付着させて、後述する硬化プロセス中のプリフォームの形状化を可能とする。
【0119】
工程(4):
本発明のインモールドコーティング方法の工程(4)において、工程(1)及び(3)で適用した組成物、又は工程(1)で適用した組成物と工程(3)で挿入したプリフォームとを、一緒に硬化させる。これは、これらの組成物及びポリマー材料の使用可能な状態への変換を指し、前記硬化させた組成物及びポリマー材料を含む構成要素が、意図されたとおりに使用及び輸送できる状態を意味する。従って、硬化させた組成物及びポリマー材料は、特にもはや軟らかくも粘着性でもなく、代わりにそれぞれ固体コーティングフィルム、固体ポリマー材料又は固体構成要素へと調整されている。以下に後述する架橋条件にさらに暴露しても、フィルム又は材料又は構成要素は、その特性(例えば硬度又は付着性)の実質的な変化をもはや示さない。よって硬化は、前述のフラッシュオフと比べて、より高い温度及び/又はより長い硬化時間で行う。
【0120】
工程(1)及び(3)で適用される組成物の場合、硬化は化学的硬化によって行い、そして熱化学的硬化及び化学線による化学的硬化を含む。本発明の文脈において、「熱化学的に硬化可能」及び「熱化学的硬化」という用語はそれぞれ、バインダーB、架橋剤CL、及び任意に反応性希釈剤の官能基の化学反応によって開始される組成物の架橋(硬化した組成物の形成)を意味し、ここで、この化学反応のエネルギー活性化は、熱エネルギーによって行われる。「化学線による化学的硬化」という用語は、電磁放射線、例えば電子ビーム、NIR又はUV放射線の使用による組成物の硬化を指す。化学的に硬化可能であると標識された組成物の硬化においては、無論、常に何らかの物理的硬化が、ポリマー鎖の干渉に対して存在する。物理的硬化が主要な割合を占めることさえある。それにもかかわらず、この種の組成物は、それが化学的に硬化可能な少なくとも比例的にフィルム形成構成要素を含む場合、化学的に硬化可能であると称される。プリフォームの繊維がポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされている場合、硬化は、好ましくは、物理的硬化によって、又はより高温で非ブロック化することができるブロック化架橋剤を用いた化学的硬化によって、行われる。
【0121】
好ましくは、工程(4)における一緒の硬化は、40~250℃、非常に好ましくは60~70℃又は180~220℃の温度で、40秒~10分、より好ましくは1~2分の持続時間で行う。
【0122】
工程(4)における一緒の硬化は、不活性雰囲気下、好ましくは不活性ガス下又は真空下で行ってよい。これらの条件は、好ましくは、高い硬化温度、例えば180~220℃を使用して、組成物及びポリマー材料と空気中に含有される酸素との望ましくない副反応を防止する場合に使用される。
【0123】
工程(5):
工程(4)の後に得られたコーティングされた構成要素を、工程(5)において型ツールの型キャビティから取り除く。コーティングされた構成要素は、手動で又は自動で取り除くことができる。いずれの場合も、少なくとも1つの型部品を他の型部品に対して動かした後にコーティングされた構成要素を取り除くことによって、取り除きを容易にすることができる。
【0124】
任意の工程(6):
コーティングされた構成要素は、所望であれば、サンディング操作なしで、及び任意に簡単な洗浄後に、さらなるコーティング材料、例えば1つ以上のベースコート材料及び/又は1つ以上のクリアコート材料で直接コーティングして、1つ以上のベースコートフィルム及び/又は1つ以上のクリアコートフィルムを形成してよい。好ましくは、本発明によりコーティングされた構成要素にプライマー-サーフェイサーコートは適用しない。その代わりに、ベースコートフィルム及び/又はトップコートフィルム、より具体的にはクリアコートフィルムを、直接適用する。使用可能なベースコート及びトップコート材料、特にクリアコート材料は、原則として、OEM仕上げ又は再仕上げにおいて従来から使用されているあらゆるベースコート及びクリアコート材料それぞれである。このようなベースコート及びクリアコート材料は、例えば、BASF Coatings GmbH社から入手可能であり、良好であることが証明されているクリアコート材料は、特に、EverGloss製品ラインからのものである。
【0125】
本発明のコーティング組成物について述べたことは、本発明のインモールドコーティングプロセスのさらなる好ましい実施形態に関して準用される。
【0126】
オーバーモールドプロセス:
本発明はさらに、コーティングされた構成要素を製造するためのオーバーモールド方法に関し、該方法は、
(1) 少なくとも1つの本発明のコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) コーティング対象の基材を型キャビティ内に挿入して、型ツールを部分的に閉じる工程、
(4) 少なくとも1つの組成物を、少なくとも部分的に開いた型キャビティ内に適用する工程、
(5) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム及び工程(4)で注入した組成物を一緒に硬化させる工程、
(6) コーティングされた構成要素を型キャビティから取り除く工程、及び
(7) 任意に、工程(4)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む。
【0127】
「構成要素」及び「コーティングされた構成要素」という用語に関して、本発明のインモールドコーティングプロセスに関連して列挙した定義を参照されたい。
【0128】
本発明の手段によるコーティング対象の基材は、工程(3)において型キャビティ内に挿入することができ、且つ工程(4)において組成物でコーティングすることができる少なくとも1つの表面を有する材料を意味すると理解される。工程(3)において使用することができる好適な基材は、例えば、金属基材、プラスチック基材、金属及びプラスチック部分を含む基材、又は繊維を含有するプラスチック基材である。硬質基材を使用する場合、これらの基材は、好ましくは、型キャビティの内部形状に対応するように予め形成される。
【0129】
工程1:
本発明のオーバーモールド方法の工程(1)において、前述の本発明のコーティング組成物を、本発明のインモールドコーティング方法の工程(1)に記載した型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する。型キャビティは、好ましくは、工程(1)における表面温度が20~100℃、好ましくは40~80℃、非常に好ましくは60~70℃である。
【0130】
工程(2):
オーバーモールドプロセスの工程(2)において、本発明のインモールドコーティング工程の工程(2)で記載したように、工程(1)で適用した組成物からフィルムを形成する。特に好ましくは、コーティングフィルムは工程(2)において、好ましくは40~80℃、非常に好ましくは60~70℃の温度で、1~60秒、好ましくは5~30秒の持続時間で形成される。
【0131】
工程(3):
本発明のオーバーモールドプロセスの工程(3)において、工程(2)で形成されたコーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に基材を挿入し、そして型ツールを部分的に閉じて、工程(4)において注入された組成物から得られた材料層が所望の厚さを有するようにする。従って前記材料層の厚さは、型ツールが部分的にのみ閉じられたときに形成されるキャビティによって規定される。型パーツの部分的な閉鎖は、手動で又は自動で実行できる。
【0132】
基材は、金属基材、プラスチック基材、プラスチック及び金属部分を含有する基材、及び1つ以上の繊維の層からなる基材から選択することができ、ここで、前記繊維は、任意に、ポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされている。好適な金属基材は、アルミニウム基材、銅基材、亜鉛基材、マグネシウム基材、及びこれらの金属の合金からなる基材、及び鋼構成要素から選択される。「プラスチック基材」という用語は、ポリマー材料からなる基材に関するものであり、すなわち、前記基材は如何なる繊維も含まない。プラスチック基材に好適なポリマー材料は、(i)極性プラスチック、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド及びこれらのプラスチックのブレンド、(ii)合成樹脂、例えばポリウレタンRIM、SMC、BMC、ABS、及び(iii)ゴム含量の高いポリエチレン及びポリプロピレンタイプのポリオレフィン基材、例えばPP-EPDM、及び表面活性化ポリオレフィン基材から選択される。1つ以上の繊維の層からなり、前記繊維が任意にポリマー材料で少なくとも部分的にコーティングされている好適な基材は、本発明のインモールドコーティングプロセスの工程(3)に関連して前述したプリフォームである。
【0133】
工程(4):
本発明のオーバーモールド方法の工程(4)において、工程(3)で形成されたキャビティ内に組成物を注入する。この組成物は、ポリマー材料、ポリマー材料を形成する化学的に硬化可能な組成物、又は本発明のインモールドコーティングプロセスの工程(3)に関連して前述した発泡材料であってよい。さらに、材料は、本発明のコーティング組成物、又は本発明のキット・オブ・パーツから調製されたコーティング組成物を包含することもできる。
【0134】
原則として、オーバーモールドプロセスに関して当業者に知られているあらゆる材料を、本発明のプロセスのこの段階で使用することができる。
【0135】
工程(5):
本発明のオーバーモールド方法の工程(5)において、工程(1)で適用した組成物と、工程(4)で注入した材料とを一緒に硬化させる。好ましくは、工程(5)における一緒の硬化は、60~250℃、好ましくは60~80℃又は180~220℃の温度で、0.5~24時間、より好ましくは0.5~10分の持続時間で行う。
【0136】
工程(5)における一緒の硬化は、不活性雰囲気下、好ましくは不活性ガス下又は真空下で行ってよい。これらの条件は、好ましくは、高い硬化温度、例えば180~220℃を使用して、硬化させる材料と空気中に含有される酸素との望ましくない副反応を防止する場合に使用される。
【0137】
工程(6):
工程(5)の後に得られたコーティングされた構成要素を、工程(6)において型ツールの型キャビティから取り除く。コーティングされた構成要素は、手動で又は自動で取り除くことができる。いずれの場合も、少なくとも1つの型部品を他の型部品に対して動かした後にコーティングされた構成要素を取り除くことによって、取り除きを容易にすることができる。
【0138】
任意の工程(7):
コーティングされた構成要素は、所望であれば、サンディング操作なしで、及び任意に簡単な洗浄後に、本発明のインモールドコーティングプロセスの工程(6)に関連して記載したように、さらなるコーティング材料で直接コーティングしてもよい。
【0139】
本発明のコーティング組成物及び本発明のインモールドコーティングプロセスについて述べたことは、本発明のオーバーモールドプロセスのさらに好ましい実施形態に関して準用される。
【0140】
本発明のコーティングされた構成要素:
本発明のインモールドコーティングプロセス又は本発明のオーバーモールドプロセスの結果は、本発明のコーティング組成物から得られたコーティング層でコーティングされた構成要素である。
【0141】
コーティングされた構成要素は、多数の領域で使用してよい。例には、自動車又は航空機の内部又は外部部品、より具体的にはシートクッション又は泥フラップ、ステアリングホイール、敷居トリム又はフェンダートリムとしての部品が含まれる。
【0142】
本発明のコーティング組成物、本発明のキット・オブ・パーツ及び本発明の方法について述べたことは、本発明のコーティングされた構成要素のさらに好ましい実施形態に関しても準用される。
【0143】
本発明を、特に以下の実施形態によって記載する:
実施形態1:以下の成分、
a) 少なくとも4質量%の総量の少なくとも1つの溶媒S、
b) 少なくとも1つの一般式(I)
-(C=O)-O-(AO)-H (I)
(式中、
は、6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表し、
rは、0又は1であり、そして
sは、0~30である)
の化合物、
c) 少なくとも1つのバインダーB、
d) 少なくとも1つの架橋剤CL、
e) スズカルボキシレート、ジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、亜鉛錯体、亜鉛カルボキシレート及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの架橋触媒CCAT、
f) 任意に少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサン、及び
g) 任意に少なくとも1つの反応性希釈剤
を含むコーティング組成物であって、上記成分は該コーティング組成物の総質量に基づき、
ここで、該コーティング組成物において、少なくとも1つの一般式(II)
*-(CH-O-CH-CR-[(CH-OH](II)
(式中、
は、1~10個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であり、
nは、1~6であり、そして
mは、1~4である)
の構造単位を含むアルキルポリシロキサンが0質量%である、コーティング組成物。
【0144】
実施形態2:少なくとも1つの溶媒Sが、有機溶媒、水又はこれらの混合物、好ましくは有機溶媒から選択される、実施形態1に記載のコーティング組成物。
【0145】
実施形態3:有機溶媒が、ケトン、エステル、アミド、メチラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、グリセロールホルマール、炭化水素及びこれらの混合物から選択され、好ましくはエステル、非常に好ましくはn-ブチルアセテート及び/又は1-メトキシプロピルアセテート及び/又は2-ブトキシエチルアセテートである、実施形態2に記載のコーティング組成物。
【0146】
実施形態4:少なくとも1つの溶媒S、好ましくはエステル、非常に好ましくはn-ブチルアセテート及び/又は1-メトキシプロピルアセテート及び/又は2-ブトキシエチルアセテートが、4~50質量%、より好ましくは4~40質量%、さらにより好ましくは4~30質量%、非常に好ましくは4~20質量%の総量で、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づいて存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0147】
実施形態5:一般式(I)の残基Rが、8~15個の炭素原子、好ましくは10~24個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0148】
実施形態6:一般式(I)のAOが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基を表す、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0149】
実施形態7:エチレンオキシドの量が、各場合とも一般式(I)に存在するあらゆるAO基の総モル量に基づいて、少なくとも70モル%、好ましくは70~99モル%である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0150】
実施形態8:一般式(I)のsが、0又は2~28、好ましくは4~25、非常に好ましくは6~20である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0151】
実施形態9:コーティング組成物が、少なくとも1つの式(Ia)
-O-(AO)-H (Ia)
の化合物、及び少なくとも1つの式(Ib)
1’-(C=O)-OH (Ib)
の化合物を含み、
式中、
R1は、6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の、脂肪族炭化水素基、好ましくは、12~22個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の、脂肪族炭化水素基であり、
R1’は、6~30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の、脂肪族炭化水素基、好ましくは、21個の炭素原子を有する不飽和の、脂肪族炭化水素基であり、
AOは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群から選択される1つ以上のアルキレンオキシド基、好ましくはエチレンオキシドを表し、
sは、2~28、好ましくは6~20である、
先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0152】
実施形態10:少なくとも1つの一般式(I)の化合物が、0.1~10質量%、より好ましくは0.4~7質量%、さらにより好ましくは0.6~6質量%、非常に好ましくは0.8~4質量%の総量で、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づいて存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0153】
実施形態11:少なくとも1つのバインダーBが、(i)ポリ(メタ)アクリレート、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性ポリ(メタ)アクリレート、(ii)ポリウレタン、より具体的にはヒドロキシ官能性及び/又はカルボキシレート官能性及び/又はアミン官能性ポリウレタン、(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール、(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオール、(v)上記のポリマーのコポリマー、及び(vi)これらの混合物、好ましくは(i)ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及び/又は(ii)ヒドロキシ官能性ポリウレタン及び/又は(iii)ポリエステル、より具体的にはポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール及び/又は(iv)ポリエーテル、より具体的にはポリエーテルポリオールからなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0154】
実施形態12:少なくとも1つのバインダーBが、
- 分岐ポリエステルポリオール及び/又はヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート又は
- ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート及び直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオール
から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0155】
実施形態13:分岐ポリエステルポリオールが、DIN53240-2:2007-11に準拠して決定して、5~25%、好ましくは10~20%、非常に好ましくは12~18%のヒドロキシ含有量を有し、及び/又はDIN EN ISO2114:2002-06に準拠して決定して、固形分換算で0~6mgKOH/g、好ましくは固形分換算で1~3mgKOH/gの酸価を有し、及び/又はDIN EN ISO3219:1994-10、手順A.3に準拠して決定して、1,000~4,000mPa*s、好ましくは1,300~3,000mPa*s、非常に好ましくは1,600~2,200mPa*sの23℃での粘度を有する、実施形態12に記載のコーティング組成物。
【0156】
実施形態14:分岐ポリエステルポリオールが、1~65質量%、好ましくは2~55質量%、非常に好ましくは3~5質量%又は35~45質量%の総量(固形分含量)で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する、実施形態12又は13に記載のコーティング組成物。
【0157】
実施形態15:ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、DIN53240-2:2007-11、手順Aに準拠して決定して、50~200mgKOH/g、好ましくは90~160mgKOH/g、より具体的には110~130mgKOH/g又は135~145mgKOH/gのヒドロキシル価を有し、及び/又はDIN EN ISO2114:2002-06に準拠して決定して、固形分換算で0~15mgKOH/g、より好ましくは固形分換算で1~10mgKOH/g、非常に好ましくは固形分換算で1~4mgKOH/g又は固形分換算で6~9mgKOH/gの酸価を有し、及び/又はポリスチレンを内部標準として用いるゲル浸透クロマトグラフィーで決定して、800~5,000g/モル、好ましくは1,000~4,000g/モル、非常に好ましくは1,100~2,400g/モル又は1,700~3,000g/モルの数平均分子量Mを有する、実施形態12から14のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0158】
実施形態16:ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレートが、1~75質量%、好ましくは55~65質量%の総量(固形分含量)で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する、実施形態12から15のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0159】
実施形態17:直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールが、DIN53240-2:2007-11に準拠して決定して、0.1~10%、好ましくは0.5~5%、非常に好ましくは1~3%のヒドロキシ含有量を有し、及び/又はDIN EN ISO2114:2002-06に準拠して決定して、固形分換算で0~6mgKOH/g、好ましくは固形分換算で0.05~0.5mgKOH/gの酸価を有し、及び/又はDIN EN ISO3219:1994-10、手順A.3に準拠して決定して、5,000~40,000mPa*s、好ましくは10,000~30,000mPa*s、非常に好ましくは13,00~20,000mPa*sの23℃における粘度を有する、実施形態12から16のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0160】
実施形態18:直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオールが、10~40質量%、好ましくは12~30質量%、非常に好ましくは18~25質量%の総量(固形分含量)で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する、実施形態12から17のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0161】
実施形態19:少なくとも1つのバインダーBが、固形分換算で40~95質量%、好ましくは固形分換算で45~90質量%、より好ましくは固形分換算で50~85質量%、非常に好ましくは固形分換算で60~80質量%の総量で、各場合とも組成物の総質量に基づいて存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0162】
実施形態20:少なくとも1つの架橋剤CLが、アミノ樹脂、非ブロック化ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド及びこれらの混合物、好ましくはポリイソシアネート、非常に好ましくは非ブロック化ポリイソシアネートから選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0163】
実施形態21:ポリイソシアネートが、DIN EN ISO11909:2007-05又はASTM D5155-2014に準拠して決定して、10~50質量%、好ましくは15~40質量%、非常に好ましくは20~25質量%又は28~35質量%のNCO含有量を有する、実施形態20に記載のコーティング組成物。
【0164】
実施形態22:ポリイソシアネートが、少なくとも1つのイソシアヌレート環又は少なくとも1つのイミノオキサジアジンジオン環を含む、実施形態20又は21に記載のコーティング組成物。
【0165】
実施形態23:2つの異なるポリイソシアネートP1及びP2を含み、ポリイソシアネートP1が少なくとも1つのイミノオキサジアジンジオン環を含み、そしてポリイソシアネートP2がポリマーメチレンジフェニルジイソシアネートである、実施形態20から22のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0166】
実施形態24:少なくとも1つの架橋剤CL、好ましくはポリイソシアネートが、5質量%~70質量%、好ましくは10~65質量%、より具体的には15~60質量%の総量で、各場合とも組成物の総質量に基づいて存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0167】
実施形態25:架橋剤CLの官能基の、より具体的にはポリイソシアネートのNCO基の、少なくとも1つのバインダーB中に存在する相補的な反応性官能基、より具体的にはヒドロキシル基の合計に対するモル比が、1.5:1~1:1.5、好ましくは1.2:1~1:1.2、より具体的には1:1である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0168】
実施形態26:少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、少なくとも1つの構造単位(R(OR)SiO1/2及び少なくとも1つの構造単位(RSiO2/2を含み、式中、Rは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシド基、より具体的には、エチレンオキシド基及びプロピレンオキシド基及びブチレンオキシド基の混合物であり、そしてRは、C~C10アルキル基、より具体的にはメチル基である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0169】
実施形態27:少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、シロキサン対エチレンオキシド基対プロピレンオキシド基対ブチレンオキシド基のモル比を、6:21:15:1~67:22:16:1で有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0170】
実施形態28:少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、構造単位(R(OR)SiO1/2対構造単位(RSiO2/2のモル比を、1:10~1:15、より具体的には1:10~1:13で有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0171】
実施形態29:少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、23℃でDIN51423-2:2010-02に準拠して決定して、1.4~1.6、好ましくは1.42~1.46の屈折率を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0172】
実施形態30:少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、23℃でDIN53015:2001-02に準拠して決定して、300~1,500mPa*s、好ましくは400~1,000mPa*s、非常に好ましくは500~900mPa*sの粘度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0173】
実施形態31:少なくとも1つのポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンが、0~15質量%、好ましくは1~12質量%、非常に好ましくは1.5~10質量%の総量で、各場合ともコーティング組成物の総質量に基づいて存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0174】
実施形態32:少なくとも1つの反応性希釈剤が、ヒドロキシ基含有化合物、好ましくはポリエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシド、非常に好ましくはポリプロピレンオキシドから選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0175】
実施形態33:少なくとも1つの反応性希釈剤が、ポリスチレンを内部標準として用いるゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、500~1,500g/モル、好ましくは600~1,200g/モル、非常に好ましくは800~1,000g/モルの質量平均分子量Mを有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0176】
実施形態34:少なくとも1つの反応性希釈剤が、DIN51562:1999-01に準拠して決定して、100~400mm/s(cst)、好ましくは140~200mm/s(cst)、非常に好ましくは170~200mm/s(cst)の20℃における動粘度を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0177】
実施形態35:少なくとも1つの反応性希釈剤が、0~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、非常に好ましくは0.3~1質量%の総量で、各場合ともコーティング組成物の総量に基づいて存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0178】
実施形態36:一般式(II)の残基Rが、2個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族炭化水素基であり、nが3であり、そしてmが1である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0179】
実施形態37:少なくとも1つの架橋触媒CCATが、スズカルボキシレートから、非常に好ましくはジオクチルスズジラウレートから選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0180】
実施形態38:スズカルボキシレート、好ましくはジオクチルスズジラウレートが、スズカルボキシレートの総質量に基づいて10~25%、好ましくは12~20%のスズ含有量を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0181】
実施形態39:少なくとも1つの架橋触媒CCATが、コーティング組成物の総質量に基づいて、0.1~5質量%、好ましくは0.2~3質量%、非常に好ましくは0.2~0.8質量%の総量で存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0182】
実施形態40:コーティング組成物が少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0183】
実施形態41:少なくとも1つの顔料及び/又はフィラーが、コーティング組成物の総質量に基づいて、0.1~10質量%の総量で存在する、実施形態40に記載のコーティング組成物。
【0184】
実施形態42:コーティング組成物が、好ましくは湿潤剤及び/又は分散剤、レオロジー補助剤、流動制御剤、UV吸収剤、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のコーティング組成物。
【0185】
実施形態43:少なくとも1つの添加剤が、コーティング組成物の総質量に基づいて、0.1~10質量%の総量で存在する、実施形態42に記載のコーティング組成物。
【0186】
実施形態44:コーティングされた構成要素を製造する方法であって、以下の工程、
(1) 実施形態1から43のいずれか1つに記載の少なくとも1つのコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 構成要素を形成する少なくとも1つの組成物を、コーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に適用して、構成要素を形成する組成物の適用前又は後に型ツールを閉じるか、又は少なくとも1つのプリフォームを、コーティングフィルムでコーティングされた型キャビティ内に挿入して、型ツールを閉じる、工程、
(4) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム、及び工程(3)で適用した組成物及び工程(3)で挿入したプリフォームを、一緒に硬化させる工程、
(5) コーティングされた構成要素を型キャビティから取り除く工程、及び
(6) 任意に、工程(1)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む方法。
【0187】
実施形態45:型キャビティが工程(1)において、20~100℃、好ましくは40~80℃、非常に好ましくは60~70℃の表面温度を有する、実施形態44に記載の方法。
【0188】
実施形態46:工程(2)において、40~80℃、より好ましくは60~70℃の温度で、1~60秒、好ましくは5~30秒の持続時間でコーティングフィルムが形成される、実施形態44又は45に記載の方法。
【0189】
実施形態47:構成要素を形成する組成物が、(i)ポリマーフォーム材料、より具体的にはポリウレタンフォーム材料、ポリスチレンフォーム材料、ポリエステルフォーム材料、ブタジエンスチレンブロックコポリマーフォーム材料及びアミノプラストフォーム材料から、非常に好ましくはポリウレタンフォーム材料から選択されるポリマーフォーム材料、又は(ii)プラスチック材料、より具体的には、エポキシド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン及びアクリロニトリルブタジエンスチレンから、非常に好ましくはエポキシド及び/又はポリウレタン及び/又はポリカーボネートから選択されるプラスチック材料、から選択される、実施形態44から46のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態48:少なくとも1つのプリフォームが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、及びこれらの混合物から選択される繊維、好ましくはガラス繊維の1つ以上の層からなり、前記プリフォームは、任意に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びホルムアルデヒドフェノール樹脂から選択されるポリマー材料、好ましくはポリエステル又はポリウレタンで任意に浸漬又はコーティングされる、実施形態44から46のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態49:工程(4)における一緒の硬化を、40~250℃、非常に好ましくは60~70℃又は180~220℃の温度で、40秒~10分、好ましくは1~2分の持続時間で行う、実施形態44から48のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態50:工程(4)における一緒の硬化を、不活性雰囲気下、好ましくは不活性ガス下又は真空下で行う、実施形態44から49のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態51:コーティングされた構成要素を製造するための方法であって、
(1) 実施形態1から43のいずれか1つに記載の少なくとも1つのコーティング組成物を、型ツールの型キャビティの少なくとも1つの表面に適用する工程、
(2) 工程(1)で適用したコーティング組成物からコーティングフィルムを形成する工程、
(3) 基材を型ツールの型キャビティに挿入し、そして型ツールを部分的に閉じる工程、
(4) 少なくとも1つの組成物を、少なくとも部分的に開いた型キャビティ内に適用する工程、
(5) 工程(2)の後に得られたコーティングフィルム及び工程(4)で注入した組成物を一緒に硬化させる工程、
(6) コーティングされた構成要素を型キャビティから取り除く工程、及び
(7) 任意に、工程(4)で適用したコーティング組成物とは異なる少なくとも1つのさらなる顔料入り又は顔料なしのコーティング組成物を、工程(4)の後に得られた硬化コーティングフィルムに適用し、前記少なくとも1つのさらなるコーティングフィルム組成物からフィルムを形成し、そして前記少なくとも1つのさらなるコーティング組成物を硬化させる工程
を含む方法。
【0194】
実施形態52:少なくとも1つの基材が、金属基材、プラスチック基材、金属及びプラスチック部分を含む基材、及び1つ以上の繊維の層からなる基材から選択され、前記繊維が任意に少なくとも部分的にポリマー材料でコーティングされている、実施形態51に記載の方法。
【0195】
実施形態53:工程(5)における硬化を、60~250℃、好ましくは60~80℃又は180~220℃の温度で、0.5~24時間、好ましくは0.5~10分の持続時間で行う、実施形態51又は52に記載の方法。
【0196】
実施形態54:工程(5)における硬化を、空気を排除して、好ましくは不活性ガスの使用又は真空の適用によって行う、実施形態51から53のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態55:実施形態44から54のいずれか1つに記載の方法によって得られたコーティングされた構成要素。
【0198】
実施形態56:自動車又は飛行機の内部又は外部部品である、実施形態55に記載のコーティングされた構成要素。
【実施例
【0199】
これより本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に決して限定されるものではない。さらに、実施例における「部」、「%」及び「比」という用語は、特に指示がない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」及び「質量比」を意味する。
【0200】
1. 決定方法:
1.1 固形分含量(固体、不揮発性画分)
不揮発性画分は、ASTM D2369(日付:2015年)に準拠して決定した。この手順において、あらかじめ乾燥させておいたアルミニウム皿に2gの試料を量り取り、その試料を乾燥キャビネット中110℃で60分間乾燥させ、デシケーター内で冷却してから、再秤量した。導入した試料の総量に対する残留物は、不揮発性画分に相当する。
【0201】
1.2 鋼及びアルミニウムパネルからのコーティングフィルム除去の決定
硬化直後に、温かいコーティングフィルムを一点でメスを用いて剥離し、それぞれのパネルから手で除去した。コーティングフィルムが破壊されずに完全に除去された場合、評価は「良(OK)」である。除去中にコーティングフィルムが破壊された、又は部分的にしか除去できなかった場合、評価は「不良(not OK)」である。
【0202】
1.3 金属型からのコーティングされた構成要素の脱型の決定
コーティングされた構成要素は、如何なるツールもなく手動で型キャビティから取り除いた。コーティングされた構成要素を如何なる視覚的な損傷もなく容易且つ完全に取り除くことができた場合、評価は「良」である。そうでない場合、評価は「不良」である。
【0203】
1.4 酸価の決定
酸価は、DIN EN ISO2114(日付:2002年6月)に準拠し、「方法A」を用いて決定した。酸価は、DIN EN ISO2114に特定された条件下で、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)に対応する。報告する酸価はここで、DIN規格に規定の合計酸価に相当し、そして固形分含量に基づく。
【0204】
1.5 OH価の決定
OH価は、DIN53240-2:2007-11に準拠して決定した。OH基を、過剰の無水酢酸を用いるアセチル化によって反応させた。その後過剰の無水酢酸を、水の添加によって分割して酢酸を形成し、そして全酢酸をエタノール性KOHで逆滴定した。OH価は、mgで表すKOHの量を示し、これは試料1gのアセチル化で結合した酢酸の量と同等である。OH価は、試料の固形分含量に基づく。
【0205】
1.6 数平均分子量及び質量平均分子量の決定
数平均分子量(M)は、DIN55672-1(2016年3月)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。この方法は、数平均分子量の他に、質量平均分子量(M)及び多分散性d(質量平均分子量(M)の数平均分子量(M)に対する比)の決定にも使用することができる。テトラヒドロフランを溶離剤として使用した。決定は、ポリスチレン標準に対して実施した。カラム材料は、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーからなっていた。
【0206】
1.7 クロスハッチ付着性の決定
パネル又は構成要素上に形成されたコーティングフィルムのクロスハッチ付着特性は、DIN EN ISO2409:2013-06に準拠して測定した。規定のツールを使用して、直角格子パターンをコーティングフィルムに切り込み、基材まで貫通させた。その後、接着ストリップを取り付けてパターンに押し付け、次いで制御された速度で取り外した。接着ストリップを取り外した後、切断されたコーティングフィルムがまだ基材に完全に付着している場合、評価は「良」である。それ以外の場合、評価は「不良」である。
【0207】
1.8 蒸気ジェット付着性の決定
蒸気ジェット付着性は、DIN55662:2009-12に準拠して決定した。規定のツールを使用して、直角格子パターンをコーティングフィルムに切り込み、基材まで貫通させた。その後、切断された基材を、所定の温度及び圧力を有する蒸気ジェットで処理した。蒸気ジェットによる処理中に切断されたコーティングフィルムが除去されなければ、評価は「良」である。それ以外の場合、評価は「不良」である。
【0208】
1.9 再被覆特性の決定
形成されたコーティング層の再被覆特性は、以下の基準の1つ又は複数により決定した:
- 市販の導電性プライマー及び/又はベースコート組成物及び/又はクリアコート組成物で再被覆した後に得られた多層コーティングの視覚的印象、
- 1.7項及び1.8項によって測定した、基材上に形成されたコーティングフィルムに対するプライマー及び/又はベースコート及び/又はクリアコートフィルムの付着性、
- 1.7項及び1.8項によって決定した、基材上の多層コーティングの付着性。
【0209】
複数の基準が使用された場合、各基準が「良」と評価されていれば、総合評価は「良」とした。コーティングフィルム上に、流れ欠陥、くぼみ又は他の負の視覚的欠陥が検出されなければ、視覚的印象は「良」と評価した。それ以外の場合、評価は「不良」とした。付着性の等級については、上記の1.7項及び1.8項を参照されたい。
【0210】
1.10 コーティング組成物の硬化挙動の決定
調製されたコーティング組成物の硬化挙動、すなわち、化学的架橋を誘導するのに必要な温度(以下、「オンセット温度」と称する)、及び規定の温度でコーティング組成物の完全な架橋を達成するのに必要な時間(以下、「オフセット時間」と称する)を、動的機械分析(DMA)によって以下のように決定した。
【0211】
「オンセット温度」の決定:
調製された液体コーティング組成物を、DMA装置内に固定された可撓性キャリア材料上に適用した。その後、液体コーティング組成物を含むキャリア材料(以後、試料と称する)を、一定の周波数及び振幅で正弦波振動に励起し、その一方で試料温度は23℃~200℃に上昇した。コーティング組成物の架橋が始まると、試料の強度、それ故振動に必要な力が急激に増加した。この振動の増加が生じる温度は、「オンセット温度」に対応する。
【0212】
「オフセット時間」の決定:
調製された液体コーティング組成物を、DMA装置内に固定された可撓性キャリア材料上に適用した。その後、液体コーティング組成物を含むキャリア材料(以後、試料と称する)を、一定の周波数及び振幅で正弦波振動に励起し、その一方で試料温度は80℃まで急激に上昇した。コーティング組成物の架橋開始により、振動に必要な力は、プラトーに達するまで増加した。このプラトーに達するまでの時間は「オフセット時間」に対応する。
【0213】
2. コーティング組成物の調製
記載した製剤の構成成分及びその量に関して、構成成分について選択された特定の主な名称に関わらず、市販製品についての如何なる参照も、その市販製品そのものを指すことに留意すべきである。
【0214】
本発明のコーティング組成物C-I1~C-I6及び比較例のコーティング組成物C-C1~C5は、表1に示す成分を均一なコーティング組成物が得られるまで混合することによって得られた。
【0215】
【表1】
【0216】
1) 分岐短鎖ポリエステルポリオール;OH含有量=15.5%、酸価=固形分換算で2mgKOH/g、23℃での粘度=1,900±200mPa*s(Covestro AG社、ドイツ)、
2) ヒドロキシ官能性ポリアクリレート;OH価=固形分換算で115~125mgKOH/g、酸価=固形分換算で3mgKOH/g、M≒1,200~2,200g/モル、M≒3,500~5,300(BASE SE社)、
3) ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート;OH価=固形分換算で140mgKOH/g、酸価=固形分換算で8mgKOH/g、M≒1,800~2,800g/モル、M≒5,200~7,200(BASE SE社)、
4) 直鎖脂肪族ポリカーボネートポリオール;OH含有量=1.7%、酸価=固形分換算で0.1mgKOH/g、OH価=固形分換算で56.1mgKOH/g(Covestro AG Deutschland社)、
5) ポリプロピレングリコール;M≒900g/モル、20℃での動粘度≒180mm/s(cst)(BASF SE社)、
6) ポリエーテル修飾メチルポリシロキサン;23℃でのn=1.445~1.449、23℃での粘度=600~800mPa*s(Borchers GmbH社)、
7) (a)R=12~22個の炭素原子を有する飽和及び不飽和炭化水素基の混合物、r=0、AO=主なエチレンオキシド単位といくつかのプロピレンオキシド単位との混合物(Mn≒650g/モル);及び(b)R=21個の炭素原子を有する不飽和炭化水素基、s=0、からなる一般式(I)の化合物の混合物(MuenchChemie International GmbH社)
8) ジオクチルスズジラウレート、スズ含有量=15.5~17.0%(TIB Chemicals社製)、
9) ビスマスネオデカノエート、ビスマス含有量=23%(King Industries社製)
10) メチレンジフェニルジイソシアネート;NCO含有量=31.5Gew.-%、25℃における粘度=210mPa*s(BASF SE社)、
11) イミノオキサジアジンジオン型のヘキサメチレンジイソシアネートトリマー;NCO含有量=23.5質量%(Covestro AG Deutschland社)
【0217】
3. コーティング組成物からのコーティングフィルムの調製
3.1 金属基材/型上のコーティングフィルムの調製
2項によって調製したコーティング組成物C-I1~C-I4及びC-C1のそれぞれを、ドクターブレードを用いて金属基材又は金属型にそれぞれ適用し、80℃で約10分間硬化させて、コーティングフィルムCC-I1~CC-I6及びCC-C1を形成した。
【0218】
3.2 コーティングされた構成要素の調製
本発明のコーティング組成物C-I5及びC-I6のそれぞれを、手動で空気圧によって(1.2~2バールで、ノズル1.2~1.4)板形態の型ツール(型ツールは金属合金からなり、板の寸法=300mm×200mm×10mm、非構造化)の型キャビティのあらゆる表面上に、65℃の型温度で適用した。適用した各組成物を10~25秒間フラッシュオフした後、型キャビティを部分的に閉じ、そして構成要素形成組成物をプライマーコーティング組成物(JU71-7S55 Combiblock Schiefergrau、ベースワニス対硬化剤の質量比=100:15、BASF Coatings GmbH社提供)でコーティングし、23℃で10分間フラッシュオフして、その後80℃で20分間硬化させた。得られた硬化プライマー層の乾燥膜厚は、10~14μmであった。
【0219】
その後、市販のベースコート材料(JW07-92TH Coba VWL C9X ディープブラック、BASF Coatings GmbH社提供)を、得られる乾燥膜厚が15μmとなるように適用した。ベースコート材料を23℃で10分間フラッシュし、80℃で10分間硬化させた。
【0220】
ベースコート材料が硬化した後、市販のクリアコート材料(JF71-0312 Evergloss905、BASF Coatings GmbH社提供)を、得られる乾燥膜厚が40μmとなるように適用した。クリアコート層を23℃で10分間フラッシュし、続いて80℃で30分間硬化させた。
【0221】
4.2 再被覆された構成要素の調製
再被覆された構成要素の調製は、3.2項の後に得られたコーティングされた構成要素を用いて、4.1項に記載したように実施した。
【0222】
5. 結果
5.1 コーティング組成物C-I1~C-I4及びC-C2~C-C5の硬化挙動
硬化触媒CCATとしてスズカルボキシレートを含む本発明のコーティング組成物C-I1~C-I4、及び硬化触媒CCATとしてビスマスカルボキシレートを含む比較例のコーティング組成物C-C2~C-C5の硬化挙動を、上記1.10項に記載したように、オンセット温度及び80℃でのオフセット時間の決定によって比較した。得られた結果を表2に示す。
【0223】
【表2】
【0224】
オンセット温度は硬化反応の開始を示し、その一方で80℃でのオフセット時間は、この温度で完全に硬化したコーティングフィルムを得るのに必要な時間を示す。硬化触媒CCATとしてスズカルボキシレートを含む本発明のコーティング組成物C-I1~C-I4は、硬化触媒CCATとしてビスマスカルボキシレートを含む比較例のコーティング組成物C-C2~C-C4よりも、有意に低いオンセット温度及び80℃でのオフセット時間を示した。よってスズカルボキシレート硬化触媒を使用すると、80℃での硬化反応が著しくより速くなるので、硬化温度を下げると同時に、硬化時間を許容範囲内に維持することができる。従って、本発明のコーティング組成物は、感熱性基材と組み合わせて使用することができる。さらに、本発明のコーティング組成物は、比較例のコーティング組成物と比較して、本発明のコーティング組成物の完全な硬化を達成するのに必要な硬化時間がより短いため、製造中のサイクル時間をより速くすることができる。
【0225】
5.2 鋼及びアルミニウムパネルからのコーティングフィルムの除去
鋼及びアルミニウムパネルから3.1項によって調製したコーティングフィルムの除去を、前述のように行った。得られた結果を表3に示す。
【0226】
【表3】
【0227】
本発明のコーティング組成物C-I1~C-I4から形成されたコーティングフィルムは、依然として高温のときに、鋼及びアルミニウムの両方のパネルから如何なる損傷もなく容易且つ完全に除去することができた。基材から高温のコーティングフィルムを除去することは、工業的成形プロセスにおける本発明のコーティング組成物の使用に不可欠である。対照的に、一般式(I)の化合物を含有しないコーティング組成物から得られた比較例のコーティングフィルムCC-C1は、コーティングフィルムの破壊なしで基材から除去することはできなかった。このように、バインダー及び架橋剤を含む溶媒ベースのコーティング系において少なくとも1つの一般式(I)の化合物を使用すると、前記コーティング系から得られたコーティングフィルムの除去/脱型特性が改善された。さらに、優れた除去特性は、コーティング組成物に使用されたバインダー/硬化剤系に関わらず達成された。よって、本発明は、硬化した本発明のコーティング組成物から得られる除去/脱型特性に悪影響を及ぼすことなく、バインダー/硬化剤系を必要な用途に適合させることを可能にする。
【0228】
5.3 金属製型キャビティからのコーティングされた構成要素の脱型
3.2項によって調製したコーティングされた構成要素の型キャビティからの脱型は、前述のように実施した。本発明のコーティング組成物C-I5及びC-I6から形成されたコーティングフィルムでコーティングされた構成要素は、視覚的な損傷なく、手で容易且つ完全に型キャビティから除去することができた。よってコーティングされた構成要素の脱型特性を「良」と評価した。コーティングされた構成要素のこの優れた脱型は、再被覆の前に除去しなければならない外部離型剤を使用せずに達成された。さらに、短いフラッシュオフ時間は、優れた脱型特性を達成するのに十分であり、よって短い処理時間を必要とする工業プロセスに適した本発明のコーティング組成物を提供する。さらに、コーティング組成物に使用されるバインダー/硬化剤系に関わらず、優れた脱型が達成される。よって本発明は、硬化した本発明のコーティング組成物から得られた脱型特性に悪影響を及ぼすことなく、バインダー/硬化剤系を必要な用途に適合させることを可能にする。
【0229】
5.4 鋼及びアルミニウム基材、及びコーティングされた構成要素のコーティングフィルムのクロスハッチ付着性
本発明のコーティング組成物C-I1及びC-I2、及び比較例のコーティング組成物C-C1から得られたコーティングフィルムの、鋼及びアルミニウムパネル上のクロスハッチ付着性を、前述のように決定した。さらに、構成要素上に組成物C-I5及びC-I6それぞれから形成されたコーティングフィルムCC-I5及びCC-I6のクロスハッチ付着性、及びCC-I5又はCC-I6と、上にある導電性プライマー及び/又はベースコート及び/又はクリアコートとの間の層間付着性を決定した。最後に、多層コーティング(すなわち、コーティングフィルムCC-I5又はCC-I6及び導電性プライマー及び/又はベースコート及び/又はクリアコート)のクロスハッチ付着性を決定した。結果を表4及び5に示す。
【0230】
【表4】
【0231】
【表5】
【0232】
結果から、基材からのコーティングフィルムCC-I1及びCC-I2の除去/脱型を容易にする一般式(I)の化合物の使用は、一般式(I)の前記化合物がかなり高濃度であっても、一般式(I)の化合物を含有しない比較例のコーティングフィルム(CC-C1)と比較して、基材への前記コーティングフィルムの付着性に悪影響を及ぼさないことが示された。さらに、一般式(I)の前記化合物の使用は、層間付着又は少なくとも1つのさらなるコーティング層で再被覆されたコーティングされた構成要素の多層コーティングの付着にも影響しない。よって本発明のコーティング組成物は、構成要素上のコーティングフィルムの付着に悪影響を及ぼすことなく、型キャビティから容易に脱型し、中間サンディング及び/又は洗浄なしで再被覆することができるコーティングされた構成要素を提供するのに、特に適している。
【0233】
5.5 コーティングされた構成要素の蒸気ジェット付着性
組成物C-I5及びC-I6からそれぞれ形成されたコーティングフィルムCC-I5及びCC-I6の構成要素上の蒸気ジェット付着性、及びCC-I5又はCC-I6と、上にある導電性プライマー及び/又はベースコート及び/又はクリアコートとの間の層間付着性を決定した。さらに、多層コーティング(すなわち、コーティングフィルムCC-I5又はCC-I6及び導電性プライマー及び/又はベースコート及び/又はクリアコート)の蒸気ジェット付着性を決定した。結果を表6に示す。
【0234】
【表6】
【0235】
結果から、型キャビティからのコーティングされた構成要素の脱型を容易にするコーティングフィルムCC-I5及びCC-I6における一般式(I)の化合物の使用は、構成要素上の前記コーティングフィルムの付着性に悪影響を及ぼさないことが示された。さらに、一般式(I)の前記化合物の使用は、層間付着又は少なくとも1つのさらなるコーティング層で再被覆されたコーティングされた構成要素の多層コーティングの付着にも影響しない。よって本発明のコーティング組成物は、構成要素上のコーティングフィルムの付着に悪影響を及ぼすことなく、型キャビティから容易に脱型し、中間サンディング及び/又は洗浄なしで再被覆することができるコーティングされた構成要素を提供するのに、特に適している。
【0236】
5.6 コーティングフィルム及びコーティングされた構成要素の再被覆
本発明のコーティング組成物C-I1、C-I3及びC-I4から得られたコーティングフィルム、及びコーティング組成物C-I5及びC-I6から得られたコーティングされた構成要素を、少なくとも1つの導電性プライマー及び/又はベースコート組成物及び/又は前述のクリアコート組成物で、中間のサンディング及び/又は洗浄工程なしに再被覆した。結果を表7に示す。
【0237】
【表7】
【0238】
鋼及びアルミニウム基材上だけでなく、構成要素上の形成されたあらゆるコーティングフィルムは、得られた多層コーティングの外観に悪影響を及ぼすことなく、少なくとも1つのさらなる市販のコーティング組成物を用いて、事前のサンディング及び/又は洗浄工程なしにコーティングすることができた。このように、コーティングフィルムの除去/コーティングされた構成要素の脱型を容易にする一般式(I)の化合物の使用は、得られたコーティング層の再被覆特性に悪影響を与えない。驚くべきことに、バインダー/硬化剤系、及び一般式(I)の成分の濃度に関わらず、優れた再被覆特性が得られた。
【0239】
6.結論
一般式(I)の化合物を、任意にポリエーテル修飾アルキルポリシロキサンの存在下で、少なくとも1つのバインダー及び少なくとも硬化剤を含むコーティング組成物中に使用すると、付着性、特にクロスハッチ及び蒸気ジェット付着性、及び硬化コーティングフィルムの再被覆特性に悪影響を及ぼすことなく、優れた脱型特性が得られた。使用したバインダー/硬化剤系又は顔料/フィラーに関わらず、優れた脱型、付着性及び再被覆特性が得られることから、本発明のコーティング組成物は、バインダー/硬化剤系の適応又は特定のニーズに対する着色に関して高度に汎用性がある。さらに、本発明のコーティング組成物には、低い硬化温度、短いフラッシュオフ及び硬化時間が必要であり、それ故本発明のコーティング組成物は、短いサイクル時間を必要とするプロセス及び感熱性基材のコーティングに適したものとなる。要約すると、本発明のコーティング組成物により、外部離型剤を使用せずにコーティングされた構成要素を製造することが可能になり、従って本発明のコーティング組成物は、インモールドコーティングプロセスに非常に適している。