(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】シュワネラ・アトランティカ由来蛋白質を発現する微生物、およびこれを利用したL-アミノ酸生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240304BHJP
C12P 13/08 20060101ALI20240304BHJP
C12P 13/10 20060101ALI20240304BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240304BHJP
C12N 15/77 20060101ALN20240304BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P13/08 A
C12P13/10 B
C12N15/31
C12N15/77 Z
(21)【出願番号】P 2022554350
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2021017793
(87)【国際公開番号】W WO2022124670
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171739
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12828P
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ヒュン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ム・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン,ヒョ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン・ウク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハン・ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ボラム
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ユンジュン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-507086(JP,A)
【文献】特開2005-237379(JP,A)
【文献】特開2005-278643(JP,A)
【文献】"A0A431WD72_9GAMM",[online], INTERNET,version 6,UniProtKB,2020年10月07日,ACCESSION: A0A431WD72,https://rest.uniprot.org/unisave/A0A431WD72?format=txt&version=6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のシュワネラ・アトランティカ(Shewanella atlantica)由来
のL-アミノ酸排出能を有する膜蛋白質
、またはこれと
90%以上の配列
同一性を有
し、シュワネラ属微生物由来のL-アミノ酸排出能を有する膜蛋白質を発現する、コリネバクテリウム属微生物。
【請求項2】
前記コリネバクテリウム属微生物は、前記膜蛋白質をコードするポリヌクレオチドが導入されたものである、請求項1に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドは、配列番号2またはこれと75%以上の配列
同一性を有する核酸配列で表現されるものである、請求項2に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項4】
前記膜蛋白質を発現しないコリネバクテリウム属微生物と比較して、L-アミノ酸生産能が増加された、請求項1~3のいずれか一項に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項5】
前記L-アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニンである、請求項4に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項6】
前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のコリネバクテリウム属微生物を含む、L-アミノ酸生産用組成物。
【請求項8】
前記L-アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載のコリネバクテリウム属微生物を培地で培養する工程、および
前記培養された微生物、培地、またはこれらの全てからL-アミノ酸を回収する工程を含む、L-アミノ酸の生産方法。
【請求項10】
前記L-アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニンである、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
外来蛋白質を発現する微生物およびこれを利用したL-アミノ酸生産方法が提供される。前記外来蛋白質を発現する微生物は、野生型と比較して、L-アミノ酸排出能および/または生産能が向上したものであり得る。
【背景技術】
【0002】
コリネバクテリウム(Corynebacterium)属微生物は、L-アミノ酸の生産に多く利用されているグラム陽性の微生物である。L-アミノ酸は、動物飼料、ヒトの医薬品および化粧品産業に使用されており、コリネバクテリウム菌株を利用した発酵により生成されている。
【0003】
コリネバクテリウム菌株を利用したL-アミノ酸の製造方法を改善するために、多くの試みが行われている。その中で組換えDNA技術を利用して特定の遺伝子を破壊させたり減衰発現させたりすることによってL-アミノ酸を生産するコリネバクテリウム菌株を改良しようとする研究が行われている。また、それぞれのL-アミノ酸生合成に関する遺伝子を増幅させてL-アミノ酸生成に及ぼす効果を研究し、L-アミノ酸生産コリネバクテリウム菌株を改良しようとする多くの研究が行われてきた。それにも拘らず、依然としてL-アミノ酸生産能が向上した菌株の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例は、外来蛋白質を発現する微生物を提供する。前記外来蛋白質は、前記微生物と異種微生物由来の蛋白質であり、本明細書で新たにリジン排出機能が明らかになった蛋白質であり得る。前記外来蛋白質を発現する微生物は、前記外来蛋白質を発現しない同種微生物と比較して、L-アミノ酸の排出能および/または生産能が向上したものであり得る。
【0005】
他の例は、前記外来蛋白質を発現する微生物を含むL-アミノ酸生産用組成物を提供する。
【0006】
他の例は、前記外来蛋白質を発現する微生物を培養する工程を含む、L-アミノ酸の生産方法を提供する。
【0007】
前記微生物は、コリネバクテリウム属微生物であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、コリネバクテリウム属微生物のL-アミノ酸生産能の増加を目的でL-アミノ酸の新規な排出蛋白質を探索し、導入することによって菌株を改良しようとした。L-リジンを代表的な例として説明すると、一般的にリジン生産能の増加のためには菌株が有するL-リジン収率を向上させたり、時間当たりL-リジン生産量(生産性)を増加させたりする方法がある。L-リジン排出蛋白質は、生合成を経て生成されたリジンを排出する膜蛋白質であり、この蛋白質の改良はリジン収率と生産性増加に重要である。しかし、コリネバクテリウム属微生物が保有しているL-リジン排出蛋白質(lysE、Ncgl1214)の発現量増加はL-リジン生産能を向上させるには限界がある。
【0009】
そこで、本明細書では、L-アミノ酸排出活性が高い新たな外来L-アミノ酸排出蛋白質を探索し、これをリジン生産菌株に導入させることによって、L-アミノ酸排出能および/または生産能が向上した、組換え菌株を提供する。
【0010】
本明細書において、新たな外来L-アミノ酸排出蛋白質の代表的な例としてシュワネラ・アトランティカ(Shewanella atlantica)由来の新規L-アミノ酸排出蛋白質およびこれをコードする遺伝子を発掘し、これをL-アミノ酸を生産する微生物に発現させた結果、前記遺伝子が発現しない微生物と比較してL-アミノ酸の排出能/生産能が顕著に向上することを確認した。
【0011】
一例は、外来蛋白質を発現する微生物を提供する。前記外来蛋白質は、前記微生物と異種微生物由来の蛋白質であり、本明細書で新たにリジン排出機能が明らかになった蛋白質であり得る。前記外来蛋白質を発現する微生物は、前記外来蛋白質を発現しない同種微生物と比較して、L-アミノ酸、例えば、L-リジンまたはL-アルギニンの排出能および/または生産能が向上したものであり得る。
【0012】
他の例は、前記外来蛋白質を発現する微生物を含むL-アミノ酸の生産用組成物を提供する。
【0013】
他の例は、前記外来蛋白質を発現する微生物を培養する工程を含む、L-アミノ酸の生産方法を提供する。
【0014】
前記微生物は、コリネバクテリウム属微生物であり得る。
【0015】
前記L-アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニンを含むことができる。
【0016】
以下、より詳細に説明する。
【0017】
本明細書において、前記外来蛋白質は、親菌株(変異前微生物)と異なる属に属する微生物または異なる種の微生物に由来する蛋白質であり得、例えば、コリネバクテリウム属に属する微生物以外の微生物に由来する蛋白質であり、本明細書で新たに明らかになったL-アミノ酸、例えば、L-リジンまたはL-アルギニンの排出能を有する蛋白質であり得る。一例で、前記外来蛋白質は、シュワネラ属微生物、例えばシュワネラ・アトランティカ(Shewanella atlantica)由来の膜蛋白質(例えば、配列番号1のアミノ酸配列で表現される);または前記蛋白質と60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の配列同一性または相同性を有する蛋白質(例えば膜蛋白質)であり得る。
【0018】
前記微生物は、1種以上の前記外来蛋白質を含むかまたは発現するものであり得る。前記外来蛋白質を発現する微生物は、前述した外来蛋白質をコードするポリヌクレオチドが導入された組換え微生物であり得る。一例において、前記配列番号1の蛋白質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2の核酸配列または配列番号2の核酸配列と60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の配列同一性または相同性を有する配列で表現され得る。
【0019】
前記外来蛋白質を発現する微生物は、L-アミノ酸排出能および/または生産能を有するL-アミノ酸生産微生物であり得る。
【0020】
本明細書において、用語「L-アミノ酸生産微生物」は、L-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物が前述したような外来蛋白質を発現するように変異されることによって前記微生物が増加されたL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する場合、および/またはL-アミノ酸排出能および/または生産能を有さない微生物が前記外来蛋白質を発現するように変異されることによって前記微生物がL-アミノ酸排出能および/または生産能を有するようになる場合を意味するために使用され得る。本明細書において「微生物」は、単細胞細菌を包括するもので、「細胞」と互換可能に使用され得る。本明細書において、前記外来蛋白質を発現するように変異される前の微生物を前記変異された微生物と区別するために、「親菌株(parent microorganism or parent strain)または宿主細胞(host cell)」と表現され得る。
【0021】
前記L-アミノ酸は、L-リジンまたはL-アルギニン、例えば、L-リジンであり得る。
【0022】
一例において、前記微生物は、L-アミノ酸排出能および/または生産能を有する全ての微生物から選択されたものであり得る。一例において、前記微生物、例えば、変異前の親菌株は、(1)自然にL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物、または(2)前記自然にL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物またはL-アミノ酸排出能および/または生産能がないか顕著に少ない菌株に変異が導入されてL-アミノ酸排出能および/または生産能を有するか、L-アミノ酸排出能および/または生産能が向上した微生物であり得る。
【0023】
一具体例において、前記微生物は(1)自然にL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物、または(2)前記自然にL-アミノ酸排出能および/または生産能を有する微生物またはL-アミノ酸排出能および/または生産能がないか顕著に少ない親菌株に変異が導入されてL-アミノ酸排出能および/または生産能を有するか、L-アミノ酸排出能および/または生産能が向上した全てのコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物などからなる群より選択された1種以上であり得る。前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アムモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)などを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。より具体的には、前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)であり得る。
【0024】
一例において、前記外来蛋白質を発現する微生物は、前記外来蛋白質を発現するようにする変異が導入された微生物であり得る。このように、外来蛋白質を発現するように変異された微生物は、同種の非改変微生物と比較して、L-アミノ酸排出能および/または生産能が増加したものであり得る。前記非改変微生物は、前記外来蛋白質を発現しない微生物であって、前記外来蛋白質を発現するようにする変異が導入されない同種の微生物または前記変異が導入される前の微生物を意味し得る。
【0025】
本明細書において、「外来蛋白質を発現するようにする変異」は、親菌株に前述した外来蛋白質を発現するようにする全ての操作を意味し得る。一例において、外来蛋白質を発現するようにする変異は、前記外来蛋白質をコードするポリヌクレオチド、またはこれを含む組換えベクターを親菌株に導入するものであり得る。
【0026】
前記「外来蛋白質を発現するようにする変異が導入された微生物」または「外来蛋白質を発現するように変異された微生物」は、前記外来蛋白質をコードするポリヌクレオチド、またはこれを含む組換えベクターが導入された微生物であり得、非改変微生物と比較して、L-アミノ酸排出能および/または生産能が付与されたり増加させたりしたものであり得る。
【0027】
一例において、前記親菌株は、野生型であるか、L-アミノ酸の排出能および/または生産能が増加するように変異されたもの、例えば、野生型と比較してL-アミノ酸の生合成または代謝に関与する蛋白質活性が調節(増加(促進)または減少(抑制))されたものであり得るが、これに制限されるのではない。
【0028】
一具体例において、前記外来蛋白質が発現したL-アミノ酸生産微生物は、寄託番号KCCM12828Pであるものであり得る。
【0029】
本明細書において、ポリヌクレオチド(「遺伝子」と互換可能に使用され得る)またはポリペプチド(「蛋白質」と互換可能に使用され得る)が「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む、特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる、または特定の核酸配列またはアミノ酸配列で表現される」とは、同等な意味に互換可能な表現であり、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須で含むことを意味し得、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの本来の機能および/または目的とする機能を維持する範囲で前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列に変異(欠失、置換、改変、および/または付加)が加えられた「実質的に同等な配列」を含むもの(または前記変異を排除しないもの)と解釈され得る。
【0030】
一例において、本明細書で提供される核酸配列またはアミノ酸配列は、これらの本来の機能または目的とする機能を維持する範囲で通常の突然変異誘発法、例えば指向性進化法(direct evolution)および/または部位特異的突然変異法(site-directed mutagenesis)などにより改変されたものを含むことができる。本明細書において、異なって記載されない限り、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが「特定の核酸配列またはアミノ酸配列を含む、または前記配列からなる」とは、前記ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが(i)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列を必須で含むか、または(ii)前記特定の核酸配列またはアミノ酸配列と60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、または99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるか、これを必須で含み、本来の機能および/または目的とする機能を維持することを意味し得る。本明細書において、前記本来の機能は、リジン排出蛋白質機能(アミノ酸配列の場合)、または前記リジン排出蛋白質機能を有する蛋白質をコードする機能(核酸配列の場合)であり得、前記目的とする機能は、微生物のL-アミノ酸(例えば、L-リジン、L-アルギニン、またはこれらの組み合わせ)排出能および/または生産能を増加させたり付与したりする機能を意味し得る。
【0031】
本出願で用語「相同性(homology)」または「同一性(identity)」は、二つの与えられたアミノ酸配列または塩基配列と関連した程度を意味し、百分率で表示され得る。相同性および同一性の用語は、時々相互交換的に利用され得る。
【0032】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップペナルティが共に利用され得る。実質的に、相同性を有するか(homologous)または同一な(identical)配列は、一般的に配列全体または全体-長さの少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%により中間または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーションは、ポリヌクレオチドで一般コドンまたはコドン縮重を考慮したコドンを含有するポリヌクレオチドも含まれることが自明である。
【0033】
任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するか否かは、例えば、Pearson et al (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444でのようなデフォルトパラメータを利用して「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定され得る。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)が使用されて決定され得る(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)), BLASTP, BLASTN, FASTA (Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994,および[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。 例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを利用して相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0034】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、 Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981) 2:482に公知されたとおり、例えば、Needleman et al. (1970), J Mol Biol. 48:443のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することによって決定され得る。要約すれば、GAPプログラムは、二つの配列のうち、より短いものにおける記号の全体数で、類似の配列された記号(つまり、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を割った値で定義することができる。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは(1)2進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含有する)および Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)により開示されたとおり、Gribskov et al(1986) Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティおよび各ギャップで各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);および(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0035】
また、任意の二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するか否かは、定義されたストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験により配列を比較することによって確認することができ、定義される適切なハイブリダイゼーション条件は当該技術範囲内であり、当業者によく知られた方法(例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989; F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York)で決定され得る。
【0036】
本明細書に記載された核酸配列は、コドンの縮重(degeneracy)により前記蛋白質(リジン排出蛋白質)を発現させようとする微生物で好まれるコドンを考慮して、コーディング領域から発現する蛋白質のアミノ酸配列および/または機能を変化させない範囲内でコーディング領域に多様な改変が行われ得る。
【0037】
一例において、本明細書に提供される特定の核酸配列を含むポリヌクレオチドは、前記特定の核酸配列またはこれと実質的に同等な核酸配列だけでなく、前記特定の核酸配列に相補的な核酸配列を含むポリヌクレオチド断片を含むと解釈され得る。具体的に、前記相補性を有するポリヌクレオチドは、目的に応じて当業者により適切に調節可能なTm値、例えば、55℃、60℃、63℃または65℃のTm値でハイブリダイズし、後述する条件で分析することができる:このような条件は、公知の文献に具体的に記載されている。例えば、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、98%以上、99.5%以上、または99.9%以上の高い相補性を有する遺伝子同士でハイブリダイズし、それより低い相補性を有する遺伝子同士はハイブリダイズしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーションの洗浄条件である60℃、1x SSC(saline-sodium citrate buffer)、および0.1%(w/v)SDS(Sodium Dodecyl Sulfate);60℃、0.1xSSC、および0.1%SDS;または68℃、0.1xSSC、および0.1%SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件などを列挙することができるが、これに制限されるのではない。ハイブリダイゼーションには二つのヌクレオチドが相補的配列を有することが要求されるか、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーにより塩基間のミスマッチ(mismatch)が許容され得る。前記用語「相補的」は、互いにハイブリダイゼーションが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するために使用され得る。例えば、DNAの場合、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。ポリヌクレオチドをハイブリダイズする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さおよび相補性程度に依存し、これは関連技術分野によく知られている(Sambrook et al., supra,9.50-9.51, 11.7-11.8参照)。
【0038】
前記ポリヌクレオチドまたはベクターの導入は、公知の形質転換方法を当業者が適切に選択して行われ得る。本明細書において、用語「形質転換」は、標的蛋白質(外来蛋白質)をコードするポリヌクレオチドやこれを含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードする蛋白質が発現することができるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現さえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するかまたは染色体外に位置するかに関係なくこれらの全てを含むことができる。また、前記ポリヌクレオチドは、標的蛋白質をコーディングするDNAおよび/またはRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、その導入される形態は制限がない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、独自的に発現するのに必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入され得る。前記発現カセットは、通常前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位および/または翻訳終結信号などの発現調節要素を含むことができる。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクターの形態であり得る。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されているものであってもよい。前記で用語「作動可能に連結」されたものとは、発現調節要素が目的蛋白質(外来蛋白質)をコードするポリヌクレオチドの転写調節(例、転写開始)を行うことができるように発現調節要素(例、プロモーター)とポリヌクレオチドが機能的に連結されていることを意味し得る。作動可能な連結は、当業系における公知の遺伝子組換え技術を利用して行うことができ、例えば、通常の部位-特異的DNA切断および連結により行われ得るが、これに制限されない。
【0039】
前記ポリヌクレオチドを宿主細胞に形質転換する方法は、核酸を細胞(微生物)内に導入する如何なる方法でも遂行可能であり、宿主細胞により当該分野における公知の形質転換技術を適切に選択して行うことができる。前記公知の形質転換方法として電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)沈澱法、塩化カルシウム(CaCl2)沈澱法、マイクロインジェクション法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)沈澱法(polyethylene glycol-mediated uptake)、DEAE-デキストラン法、陽イオンリポゾーム法、リポフェクション(lipofection)、酢酸リチウム-DMSO法などが例示され得るが、これに制限されるのではない。
【0040】
前記ポリヌクレオチドの宿主細胞遺伝体(染色体)内導入(挿入)は、公知の方法を当業者が適切に選択して行うことができ、例えば、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼシステム(RNA-guided endonuclease system;例えば、(a)RNA-ガイドエンドヌクレアーゼ(例、Cas9蛋白質など)、それをコードする遺伝子、または前記遺伝子を含むベクター;および(b)ガイドRNA(例、single guide RNA(sgRNA)など)、それをコードするDNA、または前記DNAを含むベクターを含む混合物(例えば、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼ蛋白質とガイドRNAの混合物など)、複合体(例えば、リボ核酸融合蛋白質(RNP)、組換えベクター(例えば、RNA-ガイドエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子およびガイドRNAをコードするDNAを共に含むベクターなど)などからなる群より選択された一つ以上)を使用して行うことができるが、これに制限されるのではない。
【0041】
本明細書において、用語「ベクター」は、適した宿主内で目的蛋白質を発現させることができるように適した調節配列に作動可能に連結された前記目的蛋白質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始できるプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、および/または転写および/または解読の終結を調節する配列を含むことができる。ベクターは、適当な宿主微生物内に形質転換された後、宿主細胞のゲノム(遺伝体)と関係なく発現したり、宿主細胞のゲノム内に統合され得る。
【0042】
本明細書で使用可能なベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されず、通常使用される全てのベクターの中で選択され得る。通常使用されるベクターの例としては、天然状態または組換えられた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージなどが挙げられる。例えば、前記ベクターとして、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、およびCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系およびpET系などを使用することができる。具体的にはpDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを例示することができるが、これに制限されない。
【0043】
本明細書で使用可能なベクターは、公知の発現ベクターおよび/またはポリヌクレオチドの宿主細胞染色体内挿入用ベクターであり得る。前記ポリヌクレオチドの宿主細胞染色体内挿入は、当業界に知られた任意の方法、例えば、相同組換えまたはCRISPRシステムにより行われ得るが、これに限定されない。前記ベクターは、前記染色体内挿入の有無を確認するための選別マーカ(selection marker)を追加的に含むことができる。前記選別マーカは、ベクターに形質転換された細胞を選別、つまり、前記ポリヌクレオチドの挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面蛋白質の発現のような選択可能表現型を付与した遺伝子の中で選択して使用することができる。選択剤(selective agent)が処理された環境では選別マーカを発現する細胞だけが生存したり他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0044】
他の例は、前記外来蛋白質、それをコードするポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを微生物に導入(形質転換)させる工程を含む、前記微生物のL-アミノ酸排出能および/または生産能増加方法または前記微生物にL-アミノ酸排出能および/または生産能付与方法を提供する。
【0045】
前記外来蛋白質、ポリヌクレオチド、および微生物は前述したとおりである。
【0046】
他の例は、前記L-アミノ酸生産微生物を培地で培養する工程を含む、L-アミノ酸の生産方法を提供する。前記方法は、前記培養する工程以降に、前記培養した微生物、培地、またはこれらの全てからL-アミノ酸を回収する工程を追加的に含むことができる。
【0047】
前記方法において、前記微生物を培養する工程は、特にこれに制限されないが、公知の回分式培養方法、連続式培養方法、流加格式培養方法などにより行うことができる。この時、培養条件は、特にこれに制限されないが、塩基性化合物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例:リン酸または硫酸)を使用して適正pH(例えば、pH5~9、具体的にはpH6~8、最も具体的にはpH6.8)を調節することができ、酸素または酸素-含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持することができる。培養温度は20~45℃、または25~40℃を維持することができ、約10~160時間培養することができるが、これに制限されるのではない。前記培養により生産されたL-アミノ酸は培地中に分泌されたり細胞内に残留することができる。
【0048】
前記培養に使用可能な培地は、炭素供給源として糖および炭水化物(例:グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセス、デンプンおよびセルロース)、油脂および脂肪(例:大豆油、ヒマワリ種子油、ピーナッツ油およびココナッツ油)、脂肪酸(例:パルミチン酸、ステアリン酸およびリノレン酸)、アルコール(例:グリセロールおよびエタノール)、有機酸(例:酢酸)などからなる群より選択された1種以上を個別的に使用したりまたは2種以上を混合したりして使用することができるが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素-含有有機化合物(例:ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、とうもろこし浸漬液、大豆粕粉および尿素)、無機化合物(例:硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウム)などからなる群より選択された1種以上を個別的に使用したりまたは2種以上を混合したりして使用することができるが、これに制限されない。リン供給源としてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などからなる群より選択された1種以上を個別的に使用したりまたは2種以上を混合して使用することができるが、これに制限されない。また、前記培地は、その他金属塩(例:硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸、および/またはビタミンなどのような必須成長-促進物質を含むことができる。
【0049】
前記L-アミノ酸を回収する工程は、培養方法により当該分野に公知の適した方法を利用して培地、培養液、または微生物から目的とするアミノ酸を収集するものであり得る。例えば、前記回収する工程は、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化、HPLCなどから選択された一つ以上の方法で行うことができる。前記L-アミノ酸を回収する方法は、前記回収する工程の前、同時、または後に、精製工程を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0050】
本明細書では、微生物のL-アミノ酸の排出能および/または生産能を増加させる技術が提供され、このために、新たにL-アミノ酸の排出能が明らかになった外来蛋白質、および前記外来蛋白質を微生物に導入することによって、親菌株に比べてL-アミノ酸の生産性を向上させることができる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするのでない。下記に記載された実施例は、発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形可能であることは当業者に自明である。
【実施例】
【0052】
実施例1:L-リジン排出遺伝子の探索および選別
コリネバクテリウム属微生物が内在的に保有するL-リジン排出体(lysE、Ncgl1214)と比較してL-リジン排出活性が高い排出体を探索するために、NCBI CDD(Common Domain Database)を利用したRPS-BLAST探索とKEGG Protein Databaseを利用したBLAST探索を行った。L-リジンを排出できる膜蛋白質として考慮される候補蛋白質を選定した。
【0053】
【0054】
実施例2:外来膜蛋白質遺伝子導入ベクターの作製
前記実施例1で選定されたシュワネラ・アトランティカ(Shewanella atlantica、Sat)由来の膜蛋白質は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。米国国立衛生研究所ジェンバンク(NIH GenBank)から前記膜蛋白質をコーディングする遺伝子および周辺核酸配列に対する情報(登録番号NZ_RXNV01000002.1)を獲得した。当該遺伝子配列に基づいてDNA合成を行った(Cosmo genetech、Korea)。遺伝子を増幅させるために、合成されたDNAを鋳型として配列番号3と4のプライマー(表2)を利用してPCR(SolgTM Pfu-X DNA polymerase)を行った(表3)。その結果、609bpの遺伝子(配列番号2)を含む639bpの遺伝子断片を得た。
【0055】
【0056】
【0057】
コリネバクテリウム・グルタミクム由来のgapAプロモーターを確保するために、コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032のゲノムDNAを鋳型とし、配列番号5と6のプライマー(表2)を利用してPCR(SolgTM Pfu-X DNA polymerase)を行った(表3)。増幅されたgapAプロモーター部位と前記得られたシュワネラ・アトランティカ由来遺伝子断片およびNdeI制限酵素で切断されたベクターpDZTn(韓国登録特許第10-1126041号)をギブソンアセンブリー(DG Gibson et al., NATURE METHODS, VOL.6 NO.5, MAY 2009, NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix)方法を利用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25mg/l)が含まれているLB固体培地に塗抹した。目的とした遺伝子とpDZTnが連結されたベクターに形質転換されたコロニーを選別するために配列番号7と8(表2)のプライマーでPCRを行った。選別されたコロニーから通常知られたプラスミド抽出法を利用してプラスミドを獲得し、このプラスミドをpDZTn-PgapA-Satと命名した。
【0058】
実施例3:外来膜蛋白質導入菌株の作製
作製されたpDZTn-PgapA-Satベクターを利用してL-リジンを生産するコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016P菌株(大韓民国登録特許第10-0159812号)を電気穿孔法(Appl. Microbiol. Biotechnol.(1999)52:541-545)で形質転換した後、2次交差過程を経てトランスポゾン遺伝子の間にPgapA-Satが挿入された菌株を獲得した。当該遺伝子が挿入された位置を含む隣接部位を増幅できる配列番号9と配列番号10のプライマー(表4)を利用してPCRおよび塩基配列分析を行い、当該遺伝的操作を確認した。このように得た菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016P::PgapA-Satと命名した。
【0059】
【0060】
実施例4:外来膜蛋白質が導入されたKCCM11016P菌株でL-アミノ酸生産能の比較
KCCM11016P::PgapA-Sat菌株と対照群KCCM11016Pを以下のような方法で培養して、菌体量、糖消耗能、アミノ酸生産能を比較した。
まず、種培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。生産培地24mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種して37℃で42時間、200rpmで振とう培養した。培養終了後、HPLCによりL-アミノ酸の生産量を測定した。前記実験は3回繰り返し、培養結果(平均値)は表5に示した。
【0061】
<種培地(pH7.0)>
ブドウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KH2PO4 4g、K2HPO4 8g、MgSO4・7H2O 0.5g、ビオチン0.1mg、チアミンHCl 1mg、カルシウム-パントテン酸22mg、ニコチンアミド2mg(蒸溜水1リットル基準)
【0062】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖45g、(NH4)2SO4 15g、大豆蛋白質10g、糖蜜10g、KH2PO4 0.55g、MgSO4・7H2O 0.6g、ビオチン0.9mg、チアミン塩酸塩4.5mg、カルシウム-パントテン酸4.5mg、ニコチンアミド30mg、MnSO4 9mg、FeSO4 9mg、ZnSO4 0.45mg、CuSO4 0.45mg、CaCO3 30g(蒸溜水1リットル基準)。
【0063】
【0064】
KCCM11016P::PgapA-Sat菌株(Corynebacterium glutamicum CM03-1486)は、2020年10月29日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に国際寄託してKCCM12828Pで寄託番号が付与された。
【0065】
実施例5:外来膜蛋白質が導入されたKCCM10770P菌株でL-アミノ酸生産能の比較
前記実施例3に記述した方法を利用してコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM10770P(大韓民国登録特許第10-0924065号)菌株のゲノム上のトランスポゾン位置にPgapA-Sat遺伝子が挿入された菌株を獲得した。このように得た菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM10770P::PgapA-Satと命名した。
【0066】
KCCM10770P::PgapA-Sat菌株と対照群KCCM10770Pを培養して、菌体量、糖消耗能、アミノ酸生産能を比較した。前記実験は3回繰り返し、培養結果(平均値)は表6に示した。
【0067】
【0068】
表6に示すように、KCCM10770P::PgapA-Sat菌株は、対照菌株であるKCCM10770Pと比較して増加されたアミノ酸生産能を示した。
【0069】
実施例6:外来膜蛋白質が導入されたCJ3P菌株でL-アミノ酸生産能の比較
野生株に3種の変異[pyc(P458S)、hom(V59A)、lysC(T311I)]を導入してL-リジン生産能を有するようになったコリネバクテリウム・グルタミクムCJ3P(US 9556463 B2)菌株のゲノム上のトランスポゾン位置に前記実施例3に記述した方法を利用してPgapA-Sat遺伝子が挿入された菌株を獲得した。このように得た菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムCJ3P::PgapA-Satと命名した。
【0070】
CJ3P::PgapA-Sat菌株と対照群CJ3Pを培養して、菌体量、糖消耗能、アミノ酸生産能を比較した(実施例4参照)。前記実験は3回繰り返し、培養結果(平均値)は表7に示した。
【0071】
【0072】
表7に示すように、CJ3P::PgapA-Sat菌株は、対照菌株であるCJ3Pと比較して増加されたアミノ酸生産能を示した。
【0073】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者は、本出願がその技術的な思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。これと関連して、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。本出願の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導き出される全ての変更または改変された形態が本出願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【配列表】