(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240304BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240304BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/12 Z
H04N1/00 L
H04N1/00 567H
B65H7/02
(21)【出願番号】P 2022557241
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038523
(87)【国際公開番号】W WO2022079770
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】堺 雅晃
【審査官】鈴木 圭一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061720(JP,A)
【文献】特開2002-142054(JP,A)
【文献】特開2020-058012(JP,A)
【文献】特開2007-335927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/00
B65H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
搬送される媒体を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像位置と前記搬送部の配置位置との位置関係に基づく、前記撮像部により媒体が撮像された入力画像内の低信頼領域を記憶する記憶部と、
前記入力画像からエッジ画素を検出するエッジ画素検出部と、
前記入力画像内で前記低信頼領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出する端部検出部と、
前記検出された端部に関する情報を出力する出力制御部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記記憶部は、搬送される媒体の先端又は後端が前記搬送部を通過する時に前記撮像部により撮像される領域を前記低信頼領域として記憶する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記撮像部は、搬送される媒体に押し上げられることによって上方向に移動可能に設けられ、
前記記憶部は、前記搬送部に挟持された媒体が前記撮像部又は前記撮像部と連動して移動する部材
の何れかに接触する時に前記撮像部により撮像される領域を前記低信頼領域として記憶する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
媒体を搬送する搬送部と、
単一の色を有する基準部材と、
前記基準部材と対向して配置され、且つ、搬送される媒体及び媒体の周辺を撮像する撮像部と、
前記撮像部により媒体及び媒体の周辺が撮像された入力画像から複数のエッジ画素を検出するエッジ画素検出部と、
前記エッジ画素検出部により検出された複数のエッジ画素の位置関係に基づいて、前記入力画像において前記基準部材が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出する変動領域検出部と、
前記入力画像内で前記変動領域検出部により検出された変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出する端部検出部と、
前記検出された端部に関する情報を出力する出力制御部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
前記エッジ画素検出部は、前記エッジ画素として、前記入力画像内で主走査方向の位置が相互に同一であり且つ副走査方向の距離が相互に所定範囲内である複数の画素の階調値に基づいて、副走査方向のエッジ画素のみを検出する、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記端部検出部により検出された媒体の主走査方向における端部に基づいて、媒体幅を検出する媒体幅検出部をさらに有する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体を撮像する撮像部と、記憶部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記撮像部の撮像位置と前記搬送部の配置位置との位置関係に基づく、前記撮像部により媒体が撮像された入力画像内の低信頼領域を前記記憶部に記憶し、
前記入力画像からエッジ画素を検出し、
前記入力画像内で前記低信頼領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、
前記検出された端部に関する情報を出力する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
媒体を搬送する搬送部と、単一の色を有する基準部材と、前記基準部材と対向して配置され、且つ、搬送される媒体及び媒体の周辺を撮像する撮像部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記撮像部により媒体及び媒体の周辺が撮像された入力画像から複数のエッジ画素を検出し、
前記検出された複数のエッジ画素の位置関係に基づいて、前記入力画像において前記基準部材が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出し、
前記入力画像内で前記検出された変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、
前記検出された端部に関する情報を出力する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体を撮像する撮像部と、記憶部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記撮像部の撮像位置と前記搬送部の配置位置との位置関係に基づく、前記撮像部により媒体が撮像された入力画像内の低信頼領域を前記記憶部に記憶し、
前記入力画像からエッジ画素を検出し、
前記入力画像内で前記低信頼領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、
前記検出された端部に関する情報を出力する、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項10】
媒体を搬送する搬送部と、単一の色を有する基準部材と、前記基準部材と対向して配置され、且つ、搬送される媒体及び媒体の周辺を撮像する撮像部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記撮像部により媒体及び媒体の周辺が撮像された入力画像から複数のエッジ画素を検出し、
前記検出された複数のエッジ画素の位置関係に基づいて、前記入力画像において前記基準部材が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出し、
前記入力画像内で前記検出された変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、
前記検出された端部に関する情報を出力する、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体搬送装置に関し、特に、搬送される媒体を撮像した画像から媒体の端部を検出する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原稿等の媒体の画像を読み取るスキャナ等の媒体搬送装置は、読み取った画像から媒体が含まれる領域を切り出すために、読み取った画像において媒体が含まれる領域を特定する機能を有している。そのために、媒体搬送装置は、媒体の端部を精度良く検出することが求められている。
【0003】
入力された画像の背景領域の明度の差に基づいて、原稿の厚さが一定でないか否かを判定し、厚さが一定でない原稿であれば、背景領域の明度に応じた閾値で画像を二値化して背景領域と原稿領域とを特定する画像処理装置が開示されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
媒体搬送装置では、画像から媒体の端部をより高精度に検出することが望まれている。
【0006】
媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムの目的は、画像から媒体の主走査方向における端部をより高精度に検出することを可能とすることにある。
【0007】
実施形態の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体を撮像する撮像部と、撮像部の撮像位置と搬送部の配置位置との位置関係に基づく、撮像部により媒体が撮像された入力画像内の低信頼領域を記憶する記憶部と、入力画像からエッジ画素を検出するエッジ画素検出部と、入力画像内で低信頼領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出する端部検出部と、検出された端部に関する情報を出力する出力制御部と、を有する。
【0008】
また、実施形態の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、単一の色を有する基準部材と、基準部材と対向して配置され、且つ、搬送される媒体及び媒体の周辺を撮像する撮像部と、撮像部により媒体及び媒体の周辺が撮像された入力画像から複数のエッジ画素を検出するエッジ画素検出部と、エッジ画素検出部により検出された複数のエッジ画素の位置関係に基づいて、入力画像において基準部材が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出する変動領域検出部と、入力画像内で変動領域検出部により検出された変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出する端部検出部と、検出された端部に関する情報を出力する出力制御部と、を有する。
【0009】
また、実施形態の一側面に係る制御方法は、媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体を撮像する撮像部と、記憶部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、撮像部の撮像位置と搬送部の配置位置との位置関係に基づく、撮像部により媒体が撮像された入力画像内の低信頼領域を記憶部に記憶し、入力画像からエッジ画素を検出し、入力画像内で低信頼領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、検出された端部に関する情報を出力する。
【0010】
また、実施形態の一側面に係る制御方法は、媒体を搬送する搬送部と、単一の色を有する基準部材と、基準部材と対向して配置され、且つ、搬送される媒体及び媒体の周辺を撮像する撮像部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、撮像部により媒体及び媒体の周辺が撮像された入力画像から複数のエッジ画素を検出し、検出された複数のエッジ画素の位置関係に基づいて、入力画像において基準部材が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出し、入力画像内で検出された変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、検出された端部に関する情報を出力する。
【0011】
また、実施形態の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体を撮像する撮像部と、記憶部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、撮像部の撮像位置と搬送部の配置位置との位置関係に基づく、撮像部により媒体が撮像された入力画像内の低信頼領域を記憶部に記憶し、入力画像からエッジ画素を検出し、入力画像内で低信頼領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、検出された端部に関する情報を出力することを媒体搬送装置に実行させる。
【0012】
また、実施形態の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送部と、単一の色を有する基準部材と、基準部材と対向して配置され、且つ、搬送される媒体及び媒体の周辺を撮像する撮像部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、撮像部により媒体及び媒体の周辺が撮像された入力画像から複数のエッジ画素を検出し、検出された複数のエッジ画素の位置関係に基づいて、入力画像において基準部材が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出し、入力画像内で検出された変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて、媒体の主走査方向における端部を検出し、検出された端部に関する情報を出力することを媒体搬送装置に実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本実施形態によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、画像から媒体の主走査方向における端部をより高精度に検出することが可能となる。
【0014】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【
図5】領域テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【
図6A】低信頼領域について説明するための模式図である。
【
図6B】低信頼領域について説明するための模式図である。
【
図7A】低信頼領域について説明するための模式図である。
【
図7B】低信頼領域について説明するための模式図である。
【
図8】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図9】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図10】入力画像1000の一例を示す模式図である。
【
図11】上端エッジ画素について説明するための模式図である。
【
図12】ヒストグラム1200について説明するための模式図である。
【
図13】左端エッジ画素等について説明するための模式図である。
【
図14】他の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図15】他の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図16】変動領域について説明するための模式図である。
【
図17】変動領域について説明するための模式図である。
【
図18】他の変動領域について説明するための模式図である。
【
図19】他の媒体搬送装置における処理回路250の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一側面に係る媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙、カード又はパスポート等である。カードは、例えばプラスチック製の樹脂カードである。特に、カードは、ISO(International Organization for Standardization)/IEC(International Electrotechnical Commission)7810で規定されるID(Identification)カードである。なお、カードは、他の種類のカードでもよい。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。
【0018】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0019】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、下側筐体101に係合している。載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0020】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0021】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0022】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ114、第2搬送ローラ115、第2媒体センサ116、第1撮像装置117a、第2撮像装置117b、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119等を有している。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。以下では、第1撮像装置117a及び第2撮像装置117bを総じて撮像装置117と称する場合がある。
【0023】
下側筐体101の上面は媒体の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は媒体の搬送路の上側ガイド107bを形成する。
図2において矢印A1は媒体の搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体の搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体の搬送方向A1の下流のことをいう。
【0024】
第1媒体センサ111は、給送ローラ112及びブレーキローラ113の上流側に配置される。第1媒体センサ111は、接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。
【0025】
給送ローラ112及びブレーキローラ113は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115より上流側に設けられる。給送ローラ112は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。ブレーキローラ113は、上側筐体102に設けられ、給送ローラ112と対向して配置される。
【0026】
第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115は、給送ローラ112及びブレーキローラ113より下流側に設けられる。第1搬送ローラ114は、下側筐体101に設けられる。第2搬送ローラ115は、上側筐体102に設けられ、第1搬送ローラ114と対向して配置される。
【0027】
第2媒体センサ116は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115より下流側且つ撮像装置117より上流側に配置される。第2媒体センサ116は、その位置に媒体が存在するか否かを検出する。第2媒体センサ116は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。第2媒体センサ116の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、第2媒体センサ116の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0028】
第1撮像装置117a及び第2撮像装置117bは、撮像部の一例である。第1撮像装置117aは、第1撮像センサ121aと、第1基準部材122aとを有する。第2撮像装置117bは、第2撮像センサ121bと、第2基準部材122bと、搬送ガイド123bとを有する。
【0029】
第1撮像センサ121aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサである。第1撮像センサ121aは、裏当てとして機能する第2基準部材122bと対向して配置される。また、第1撮像装置117aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置117aは、撮像位置P1において、一定間隔毎に、搬送される媒体の表面及び媒体の周辺を撮像してライン画像を順次生成し、出力する。即ち、ライン画像の垂直方向(副走査方向)の画素数は1であり、水平方向(主走査方向)の画素数は複数である。後述する処理回路により、所定数のライン画像が合成されて入力画像が生成される。即ち、入力画像は、撮像装置117により媒体が撮像された画像である。
【0030】
第1撮像センサ121aは、媒体が搬送されていない場合、第2基準部材122bを撮像する。第2基準部材122bの第1撮像センサ121aと対向する面は単一の色(例えば白色)を有している。媒体搬送装置100は、第2基準部材122bを撮像した画像信号に基づいてシェーディング等の画像の補正を行う。
【0031】
第2撮像センサ121bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサである。第2撮像センサ121bは、裏当てとして機能する第1基準部材122aと対向するように配置される。また、第2撮像装置117bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置117bは、撮像位置P2において、一定間隔毎に、搬送される媒体の裏面及び媒体の周辺を撮像してライン画像を順次生成し、出力する。後述する処理回路により、所定数のライン画像が合成されて入力画像が生成される。即ち、入力画像は、撮像装置117により媒体が撮像された画像である。
【0032】
第2撮像センサ121bは、媒体が搬送されていない場合、第1基準部材122aを撮像する。第1基準部材122aの第2撮像センサ121bと対向する面は単一の色(例えば白色)を有している。媒体搬送装置100は、第1基準部材122aを撮像した画像信号に基づいてシェーディング等の画像の補正を行う。
【0033】
搬送ガイド123bは、第2撮像装置117bと連動して移動する部材の一例である。搬送ガイド123bは、第2撮像装置117bと一体的に設けられる。搬送ガイド123bは、ひさし状の形状を有し、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115によって搬送された媒体を第1撮像装置117aと第2撮像装置117bの間に案内する。搬送ガイド123bの上面には、一端が上側筐体102に支持された不図示のばねの他端が取り付けられ、搬送ガイド123bは、そのばねにより第1撮像装置117a側に向かう方向に付勢されている。第2撮像装置117bは、媒体搬送方向と直交する高さ方向A8において上方向に移動可能に設けられている。一方、第1撮像装置117aは下側筐体101に固定されている。厚紙、カード又はパスポートのように、所定の厚さを有し且つ高い剛性を有する媒体が搬送された場合、搬送ガイド123bは、その媒体によって上方に移動し、第2撮像装置117bは、搬送ガイド123bの移動と連動して、上方に移動する。このように、第2撮像装置117bは、搬送される媒体に押し上げられることによって上方向に移動可能に設けられている。
【0034】
搬送ガイド123bは、第2撮像装置117bと別個の部材により形成される。なお、搬送ガイド123bは、第2撮像装置117bと一体の部材により形成されてもよい。また、第2撮像装置117bが固定され、第1撮像装置117aが高さ方向A8に移動可能に配置され、搬送ガイド123bが第1撮像装置117aと一体的に設けられてもよい。その場合、搬送ガイド123bは、搬送される媒体によって下方に移動し、第1撮像装置117aは、搬送ガイド123bの移動と連動して下方に移動する。また、搬送ガイド123bが省略され、第1撮像装置117a又は第2撮像装置117bが、搬送される媒体によって高さ方向A8に移動可能に設けられてもよい。
【0035】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置117a及び第2撮像装置117bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。以下では、第1撮像センサ121a及び第2撮像センサ121bを総じて撮像センサ121と称する場合がある。また、第1基準部材122a及び第2基準部材122bを総じて基準部材122と称する場合がある。
【0036】
第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119は、撮像装置117より下流側に設けられる。第3搬送ローラ118は、下側筐体101に設けられる。第4搬送ローラ119は、上側筐体102に設けられ、第3搬送ローラ118と対向して配置される。
【0037】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ112が
図2の矢印A2の方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体搬送方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ113は、媒体搬送時、矢印A3の方向に回転する。給送ローラ112及びブレーキローラ113の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ112と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。
【0038】
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115がそれぞれ矢印A4及び矢印A5の方向に回転することによって、第1撮像装置117aと第2撮像装置117bの間に送り込まれる。撮像装置117により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119がそれぞれ矢印A6及び矢印A7の方向に回転することによって排出台104上に排出される。給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ114、第2搬送ローラ115、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119は、搬送部の一例であり、媒体を搬送する。
【0039】
図3は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0040】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ131、インタフェース装置132、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0041】
モータ131は、1つ又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ114、第2搬送ローラ115、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119を回転させて媒体を搬送させる。
【0042】
インタフェース装置132は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置132の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0043】
記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0044】
また、記憶装置140には、データとして、入力画像内の低信頼領域を示す領域テーブルが格納される。低信頼領域は、入力画像内で副走査方向において基準部材122が撮像された画素の階調値が変動する可能性が高い領域である。処理回路150は、入力画像から媒体の主走査方向における端部を検出する際に、低信頼領域から検出されたエッジ画素を使用せずに端部を検出する。領域テーブルの詳細については後述する。記憶装置140は、記憶部の一例である。
【0045】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、処理回路150に代えて、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0046】
処理回路150は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、第2媒体センサ116、撮像装置117、モータ131、インタフェース装置132及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ131の駆動制御、撮像装置117の撮像制御等を行い、画像を取得し、インタフェース装置132を介して不図示の情報処理装置に送信する。また、処理回路150は、撮像装置117により撮像された画像に基づいて媒体の端部を検出する。
【0047】
図4は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0048】
図4に示すように、記憶装置140には、設定プログラム141、制御プログラム142、画像取得プログラム143、エッジ画素検出プログラム144、端部検出プログラム145、媒体幅検出プログラム146、出力制御プログラム147及び変動領域検出プログラム148等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路150は、設定部151、制御部152、画像取得部153、エッジ画素検出部154、端部検出部155、媒体幅検出部156、出力制御部157及び変動領域検出部158として機能する。
【0049】
図5は、領域テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【0050】
図5に示すように、領域テーブルには、撮像装置117と搬送部の組合せ毎に低信頼領域が記憶される。低信頼領域が設定される撮像装置117には、第1撮像装置117a及び第2撮像装置117bが含まれる。低信頼領域が設定される搬送部には、給送ローラ112とブレーキローラ113のペア、第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115のペア、及び、第3搬送ローラ118と第4搬送ローラ119のペアが含まれる。低信頼領域は、撮像装置117の撮像位置と搬送部の配置位置との位置関係に基づいて設定される。低信頼領域として、各搬送部に挟持された媒体が搬送ガイド123bと接触する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域が設定される。なお、搬送ガイド132が省略されている場合には、低信頼領域として、各搬送部に挟持された媒体が第2撮像装置117bと接触する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域が設定される。または、低信頼領域として、搬送される媒体の先端又は後端が各搬送部を通過する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域が設定される。
【0051】
【0052】
図6Aは、給送ローラ112及びブレーキローラ113に挟持された媒体が第2撮像装置117bと接触する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域について説明するための模式図である。
【0053】
図6Aに示すように、高さ方向A8において、給送ローラ112とブレーキローラ113のニップ位置N1は、第1撮像装置117aの撮像面(搬送面)より上側に配置される。所定の厚さを有し且つ高い剛性を有する媒体Mが搬送される場合、搬送される媒体Mは、給送ローラ112及びブレーキローラ113に挟持され、先端が第1撮像装置117aの撮像面に沿って移動するように搬送される。即ち、媒体Mは、先端が下側に傾くように搬送される。そのため、媒体Mは特定のタイミングで第2撮像装置117b(搬送ガイド123b)の上流側の端部に接触し、第2撮像装置117bは媒体Mに押し上げられて上方向に移動する。第2撮像装置117bが上方向に移動した場合、第1撮像装置117aと第2撮像装置117bの間の距離が増大する。したがって、入力画像内で、このタイミングの前後に第1撮像センサ121aにより第2基準部材122bが撮像された画素の階調値、及び、このタイミングの前後に第2撮像センサ121bにより第1基準部材122aが撮像された画素の階調値が変動する。
【0054】
設定部151は、先端が第1撮像装置117aの撮像面に当接し且つ給送ローラ112及びブレーキローラ113に挟持された媒体が第2撮像装置117bの上流側の端部に接触する時に各撮像装置117により撮像される領域を低信頼領域として設定する。設定部151は、給送ローラ112及びブレーキローラ113のニップ位置N1と、第2撮像装置117bの上流側の端部とを通過する直線が第1撮像装置117aの撮像面と当接する位置を媒体の先端位置として設定する。設定部151は、入力画像内で垂直方向(副走査方向)において媒体の先端が含まれる位置に対して、設定した先端位置に対する各撮像装置117の撮像位置P1、P2の相対位置に対応する位置を低信頼位置として設定する。そして、設定部151は、入力画像内で垂直方向において、設定した低信頼位置を中心とする所定範囲(例えば5画素)の領域を低信頼領域として設定する。なお、媒体の搬送速度又は媒体搬送路の部材によっては、第2撮像装置117bは、上方向に移動した後、バウンド(振動)し、入力画像内で基準部材122の階調値が変動する期間が長くなる可能性がある。所定範囲は、媒体の搬送速度又は媒体搬送路の部材等の影響を考慮して設定される。
【0055】
これにより、媒体搬送装置100は、入力画像内で背景の階調値が変動する領域を媒体のエッジとして誤って検出することを抑制できる。
【0056】
図6Bは、搬送される媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113を通過する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域について説明するための模式図である。
【0057】
図6Bに示すように、媒体Mの後端が給送ローラ112とブレーキローラ113のニップ位置N1を通過した時、媒体Mは、給送ローラ112とブレーキローラ113から離間した衝撃で振動する。そのため、媒体Mによって押し上げられていた第2撮像装置117bは、媒体Mと連動して振動する。第2撮像装置117bが振動した場合、第1撮像装置117aと第2撮像装置117bの間の距離が変化する。したがって、入力画像内で、このタイミングの前後に第1撮像センサ121aにより第2基準部材122bが撮像された画素の階調値、及び、このタイミングの前後に第2撮像センサ121bにより第1基準部材122aが撮像された画素の階調値が変動する。
【0058】
設定部151は、搬送される媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113を通過する時に各撮像装置117により撮像される領域を低信頼領域として設定する。設定部151は、給送ローラ112及びブレーキローラ113のニップ位置N1に対して、ISO/IEC7810で規定されるIDカードの長辺サイズ分(又は短辺サイズ分)だけ下流側の位置を媒体の先端位置として設定する。設定部151は、入力画像内で垂直方向において媒体の先端が含まれる位置に対して、設定した先端位置に対する各撮像装置117の撮像位置P1、P2の相対位置に対応する位置を低信頼位置として設定する。そして、設定部151は、入力画像内で垂直方向において、設定した低信頼位置を中心とする所定範囲の領域を低信頼領域として設定する。これにより、媒体搬送装置100は、入力画像内で背景の階調値が変動する領域を媒体のエッジとして誤って検出することを抑制できる。
【0059】
図7Aは、搬送される媒体の先端が第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119を通過する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域について説明するための模式図である。
【0060】
図7Aに示すように、媒体Mの先端は、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119を通過する時、第3搬送ローラ118又は第4搬送ローラ119に衝突して、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119のニップ位置N3に案内される。媒体Mが第3搬送ローラ118又は第4搬送ローラ119に衝突した衝撃で振動するため、媒体Mによって押し上げられていた第2撮像装置117bは、媒体Mと連動して振動する。
【0061】
設定部151は、搬送される媒体の先端が第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119を通過する時に各撮像装置117により撮像される領域を低信頼領域として設定する。設定部151は、第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119のニップ位置N3を媒体の先端位置に設定する。設定部151は、入力画像内で垂直方向において媒体の先端が含まれる位置に対して、設定した先端位置に対する各撮像装置117の撮像位置P1、P2の相対位置に対応する位置を低信頼位置として設定する。そして、設定部151は、入力画像内で垂直方向において、設定した低信頼位置を中心とする所定範囲の領域を低信頼領域として設定する。これにより、媒体搬送装置100は、入力画像内で背景の階調値が変動する領域を媒体のエッジとして誤って検出することを抑制できる。
【0062】
図7Bは、搬送される媒体の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115を通過する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域について説明するための模式図である。
【0063】
図7Bに示すように、媒体Mの後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115のニップ位置N2を通過した時、媒体Mは、第1搬送ローラ114と第2搬送ローラ115から離間した衝撃で振動する。そのため、媒体Mによって押し上げられていた第2撮像装置117bは、媒体Mと連動して振動する。
【0064】
設定部151は、搬送される媒体の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115を通過する時に各撮像装置117により撮像される領域を低信頼領域として設定する。設定部151は、第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115のニップ位置N2に対して、ISO/IEC7810で規定されるIDカードの長辺サイズ分(又は短辺サイズ分)だけ下流側の位置を媒体の先端位置に設定する。設定部151は、入力画像内で垂直方向において媒体の先端が含まれる位置に対して、設定した先端位置に対する各撮像装置117の撮像位置P1、P2の相対位置に対応する位置を低信頼位置として設定する。そして、設定部151は、入力画像内で垂直方向において、設定した低信頼位置を中心とする所定範囲の領域を低信頼領域として設定する。これにより、媒体搬送装置100は、入力画像内で背景の階調値が変動する領域を媒体のエッジとして誤って検出することを抑制できる。
【0065】
なお、設定部151は、上記した全ての領域を低信頼領域として設定する必要がなく、少なくとも一つの領域を低信頼領域として設定すればよい。特に、
図6Aで説明した、媒体が第2撮像装置117bと接触する時に撮像される領域では、背景の階調値の変動量が小さい。そのため、設定部151は、その領域を低信頼領域として設定しなくてもよい。
【0066】
図8及び
図9は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0067】
以下、
図8及び
図9に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
図8及び
図9に示す動作のフローは、定期的に実行される。
【0068】
最初に、制御部152は、利用者により操作装置105を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0069】
次に、制御部152は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。
【0070】
載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部152は、ステップS101へ処理を戻し、操作装置105から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0071】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部152は、モータ131を駆動して給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1~第4搬送ローラ114、115、118及び119を回転させて、媒体を搬送させる(ステップS103)。
【0072】
次に、画像取得部153は、搬送された媒体を撮像装置117に撮像させて、ライン画像を取得する(ステップS104)。なお、画像取得部153は、第2媒体センサ116から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過したか否かを判定し、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過した時に撮像装置117に撮像を開始させてもよい。画像取得部153は、第2媒体センサ116から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過したと判定する。
【0073】
次に、画像取得部153は、端部検出部155により、媒体の先端の主走査方向における端部が検出済みであるか否かを判定する(ステップS105)。媒体の先端の主走査方向における端部は、後述するステップS110において検出される。媒体の先端の主走査方向における端部が検出済みである場合、画像取得部153は、処理をステップS112に移行する。
【0074】
一方、媒体の先端の主走査方向における端部が未検出である場合、画像取得部153は、撮像装置117から所定数のライン画像を取得したか否かを判定する(ステップS106)。所定数は、媒体の先端の主走査方向における端部が確実に含まれると考えられる1又は複数の値(例えば100)に予め設定される。所定数は、媒体全体が含まれる値に設定されてもよい。媒体搬送装置100は、所定数が大きい程、確実に端部を検出することができ、所定数が小さい程、早期に端部を検出することができる。所定数のライン画像をまだ取得していない場合、画像取得部153は、処理をステップS104に戻し、ステップS104~S106の処理を繰り返す。
【0075】
一方、所定数のライン画像を取得した場合、画像取得部153は、所定数のライン画像を合成して入力画像を生成する(ステップS107)。即ち、入力画像は、撮像装置117により媒体が撮像されて、画像取得部153により生成された画像である。なお、撮像装置117が所定数のライン画像を合成して入力画像を生成し、画像取得部153は撮像装置117から入力画像を取得してもよい。
【0076】
図10は、入力画像1000の一例を示す模式図である。
【0077】
図10に示す入力画像1000には、媒体1001が含まれており、さらに基準部材122が背景1002として含まれている。背景1002には、縦筋ノイズ1003、1004、突発ノイズ1005、1006、及び、横筋ノイズ1007、1008、1009が含まれている。縦筋ノイズ1003、1004は、撮像装置117の撮像面(ガラス面)上に付着した紙粉、埃、のり等の異物、又は、ラインセンサの感度ムラ等により発生するノイズである。突発ノイズは、撮像装置117内で撮像素子から出力された電気信号を増幅する際に発生するノイズ、又は、部品毎の特性の違いに起因して発生するノイズ等である。横筋ノイズは、第2撮像装置117bが高さ方向A8に移動することにより発生するノイズである。
【0078】
横筋ノイズ1007は、媒体1001の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113を通過する時に発生したノイズである。横筋ノイズ1008は、媒体1001の先端が第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119を通過する時に発生したノイズである。横筋ノイズ1009は、媒体1001の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115を通過する時に発生したノイズである。
図10に示す例では、給送ローラ112及びブレーキローラ113に挟持された媒体が第2撮像装置117bと接触する時に撮像された領域では、階調値の変動量が十分小さく、横筋ノイズは発生していない。
【0079】
次に、エッジ画素検出部154は、記憶装置140から領域テーブルを読み出し、低信頼領域を特定する(ステップS108)。
図10を用いて説明する例では、低信頼領域として、媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113を通過する時、媒体の先端が第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119を通過する時、及び、媒体の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115を通過する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域が設定されているものとする。一方、搬送部に挟持された媒体が第2撮像装置117bと接触する時に、入力画像内で各撮像装置117に撮像される領域は、低信頼領域として設定されていないものとする。
【0080】
次に、エッジ画素検出部154は、入力画像から複数の副走査方向のエッジ画素を検出する(ステップS109)。エッジ画素検出部154は、入力画像内で主走査方向の位置が相互に同一であり且つ副走査方向の距離が相互に所定範囲内である複数の画素の階調値に基づいて、副走査方向のエッジ画素を検出する。
【0081】
エッジ画素検出部154は、入力画像内で、垂直方向(副走査方向)に延伸する垂直ライン毎に、上側から順に、各垂直ライン内の各画素の垂直方向の両隣の画素の階調値の差の絶対値(以下、隣接差分値と称する)を算出する。エッジ画素検出部154は、各垂直ライン内で隣接差分値が階調閾値を越える画素をエッジ画素として検出する。エッジ画素検出部154は、各垂直ライン内で最初に検出されたエッジ画素、即ち最も上側に位置する画素を上端エッジ画素とし、副走査方向のエッジ画素として検出する。階調値は、輝度値又は色値(R値、G値又はB値)等である。階調閾値は、例えば、人が画像上の輝度の違いを目視により判別可能な輝度値の差(例えば20)に設定される。
【0082】
なお、エッジ画素検出部154は、入力画像内の各画素から垂直方向に所定距離だけ離れた二つの画素の階調値の差の絶対値を隣接差分値として算出してもよい。また、エッジ画素検出部154は、入力画像内の各画素の階調値を閾値と比較することによりエッジ画素を検出してもよい。例えば、エッジ画素検出部154は、特定の画素の階調値が閾値未満であり、その特定の画素に対して垂直方向に隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素の階調値が閾値以上である場合、その特定の画素をエッジ画素として検出する。
【0083】
また、エッジ画素検出部154は、入力画像内の全ての画素について副走査方向のエッジ画素を検出するのでなく、入力画像内で主走査方向における一定間隔(例えば4画素)毎に副走査方向のエッジ画素を検出してもよい。エッジ画素検出部154は、入力画像内の垂直ラインの中から、一定間隔毎に、副走査方向のエッジ画素を検出する対象ラインを抽出し、抽出した対象ラインについて、副走査方向のエッジ画素を検出する。これにより、エッジ画素検出部154は、媒体の端部の検出に要する時間を低減させ、媒体読取処理の処理時間及び処理負荷を低減させることが可能となる。
【0084】
エッジ画素検出部154は、入力画像内で最も上側で検出された副走査方向のエッジ画素の位置を媒体の先端が含まれる位置として特定し、特定した位置を基準にして、低信頼領域として設定された領域を特定する。エッジ画素検出部154は、特定した低信頼領域からは副走査方向のエッジ画素を検出せず、入力画像内で低信頼領域を含まない領域のみから副走査方向のエッジ画素を検出する。
【0085】
なお、エッジ画素検出部154は、媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113を通過する時に入力画像内で各撮像装置117に撮像される低信頼領域を、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて特定してもよい。その場合、エッジ画素検出部154は、第1媒体センサ111から定期的に第1媒体信号を取得する。エッジ画素検出部154は、第1媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化した時に媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113のニップ位置の直前に位置すると判定する。エッジ画素検出部154は、媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113のニップ位置の直前に位置すると判定してから一定時間内に各撮像装置117に撮像された入力画像内の領域を低信頼領域として特定する。
【0086】
同様に、エッジ画素検出部154は、媒体の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115を通過する時に入力画像内で各撮像装置117に撮像される低信頼領域を、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて特定してもよい。エッジ画素検出部154は、媒体の後端が給送ローラ112及びブレーキローラ113のニップ位置の直前に位置すると判定してから、所定の媒体移動量に相当する所定時間が経過した時に、媒体の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の直前に位置すると判定する。エッジ画素検出部154は、媒体の後端が第1搬送ローラ114及び第2搬送ローラ115の直前に位置すると判定してから一定時間内に各撮像装置117に撮像された入力画像内の領域を低信頼領域として特定する。
【0087】
図11は、上端エッジ画素について説明するための模式図である。
【0088】
図11には、
図10に示した入力画像1000が示される。
図11において、垂直方向に延伸する点線は対象ラインとして抽出された垂直ラインを示す。
図11に示す例では、画素T1~T14が上端エッジ画素として検出されている。上端エッジ画素T1、T2は、それぞれ突発ノイズ1005、1006に対応する画素である。上端エッジ画素T3は、媒体の左辺に対応する画素である。上端エッジ画素T4~T14は、媒体の上辺に対応する画素である。
図11に示すように、各縦筋ノイズ1003、1004は垂直方向に延伸し且つ各縦筋ノイズ1003、1004内の各画素の階調値は一定範囲内であるため、各縦筋ノイズ1003、1004に対応する画素は上端エッジ画素として検出されない。なお、読取途中(媒体搬送途中)に発生又は消滅した縦筋ノイズは、その端部で階調値の変化を有するため、突発ノイズ1005、1006と同様に検出される。このような読取途中(媒体搬送途中)に発生又は消滅した縦筋ノイズは、後述処理において突発ノイズ1005、1006と同様に処理され、媒体の端部として誤って検出されない。また、各横筋ノイズ1007、1008、1009の周辺は低信頼領域として設定されているため、各横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する画素は上端エッジ画素として検出されない。
【0089】
次に、端部検出部155は、入力画像内で低信頼領域を含まない領域から検出された副走査方向のエッジ画素に基づいて、媒体の先端の主走査方向における端部を検出する(ステップS110)。端部検出部155は、エッジ画素検出部154により検出された複数の副走査方向のエッジ画素の間の位置関係に基づいて、媒体の先端の主走査方向における端部を検出する。
【0090】
例えば、端部検出部155は、複数の副走査方向のエッジ画素の間の位置関係として、主走査方向における一定範囲内における副走査方向のエッジ画素の数又は割合、即ち主走査方向における一定範囲内における副走査方向のエッジ画素の密度を算出する。端部検出部155は、垂直ラインから抽出された対象ライン毎に、各対象ラインから一定範囲内に位置する対象ラインの中で、副走査方向のエッジ画素が検出された対象ラインの数又は割合を算出する。一定範囲は、数又は割合の算出対象が2以上の所定数(例えば5)となるように設定される。端部検出部155は、算出した数が閾値(例えば3)以上である対象ライン、又は、算出した割合が閾値(例えば0.6)以上である対象ラインが相互に隣接して連続する対象ライン群を抽出する。
【0091】
端部検出部155は、抽出した対象ライン群の内、含まれる対象ラインの数が最も多い対象ライン群の主走査方向の範囲を、主走査方向における媒体の先端範囲として検出する。なお、端部検出部155は、検出した範囲から所定のマージンだけ縮小させた範囲、又は、検出した範囲を所定のマージンだけ拡大させた範囲を主走査方向における媒体の先端範囲として検出してもよい。端部検出部155は、主走査方向における媒体の先端範囲として検出した対象ライン群の両端の位置を、媒体の先端の主走査方向における端部として検出する。
【0092】
図11に示す例では、上端エッジ画素T3を含む対象ラインから、上端エッジ画素T14を含む対象ラインまでの範囲が媒体の先端範囲として検出される。そして、上端エッジ画素T3を含む対象ラインと、上端エッジ画素T14を含む対象ラインとが媒体の先端の主走査方向における端部として検出される。即ち、縦筋ノイズ1003、1004に対応する画素は、上端エッジ画素として検出されないため、媒体の先端範囲に含まれない。また、突発ノイズ1005、1006に対応する上端エッジ画素T1、T2を含む対象ラインは離散的に位置するため、媒体の先端範囲に含まれない。また、横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する画素は、上端エッジ画素として検出されないため、媒体の先端範囲に含まれない。また仮に、媒体の先端に対応する対象ラインの内の一部の対象ラインで背景と媒体の階調値の差が小さく、上端エッジ画素が検出されなかった場合でも、その周囲の対象ラインで上端エッジ画素が検出された場合、その一部の対象ラインも媒体の先端範囲に含まれる。
【0093】
端部検出部155は、一定範囲内における副走査方向のエッジ画素の数又は割合を用いることにより、ノイズの影響、及び、上端エッジ画素の検出漏れの影響を低減させて、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。特に、横筋ノイズは、副走査方向のエッジ画素として検出されるため、副走査方向のエッジ画素を利用して媒体の先端範囲を利用する際に、媒体の先端範囲を誤って検出する要因となる。端部検出部155は、横筋ノイズが発生する領域を、上端エッジ画素を検出する領域から除外することにより、上端エッジ画素を利用して、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。
【0094】
なお、端部検出部155は、複数の副走査方向のエッジ画素の間の位置関係として、主走査方向において連続して検出された副走査方向のエッジ画素を検出してもよい。その場合、端部検出部155は、主走査方向において連続して検出された副走査方向のエッジ画素の数(連続数)を算出する。端部検出部155は、副走査方向のエッジ画素が検出された対象ラインが相互に隣接して所定数(例えば3つ)以上連続する対象ライン群を抽出する。
【0095】
端部検出部155は、抽出した対象ライン群の内、含まれる対象ラインの数が最も多い対象ライン群の主走査方向の範囲を、主走査方向における媒体の先端範囲として検出する。なお、端部検出部155は、検出した範囲から所定のマージンだけ縮小させた範囲、又は、検出した範囲を所定のマージンだけ拡大させた範囲を主走査方向における媒体の先端範囲として検出してもよい。端部検出部155は、主走査方向における媒体の先端範囲として検出した対象ライン群の両端の位置を、媒体の先端の主走査方向における端部として検出する。
【0096】
図11に示す例では、上端エッジ画素T3を含む対象ラインから、上端エッジ画素T14を含む対象ラインまでの範囲が媒体の先端範囲として検出される。そして、上端エッジ画素T3を含む対象ラインと、上端エッジ画素T14を含む対象ラインとが媒体の先端の主走査方向における端部として検出される。即ち、縦筋ノイズ1003、1004に対応する画素は、上端エッジ画素として検出されないため、媒体の先端範囲に含まれない。また、突発ノイズ1005、1006に対応する上端エッジ画素T1、T2を含む対象ラインは離散的に位置するため、媒体の先端範囲に含まれない。また、横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する画素は、上端エッジ画素として検出されないため、媒体の先端範囲に含まれない。
【0097】
この場合、仮に、媒体の先端に対応する対象ラインの内の一部の対象ラインで上端エッジ画素が検出されなかった場合、媒体の先端範囲が正しく検出されない。しかしながら、副走査方向のエッジ画素の連続数は、一定範囲内における副走査方向のエッジ画素の数又は割合より、短時間に算出される。したがって、端部検出部155は、主走査方向において連続して検出された副走査方向のエッジ画素に基づくことにより、ノイズの影響を低減させつつ、媒体の先端範囲及びその端部をより短時間且つ低負荷に検出することができる。特に、端部検出部155は、横筋ノイズが発生する領域を、上端エッジ画素を検出する領域から除外することにより、上端エッジ画素を利用して、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。
【0098】
また、端部検出部155は、複数の副走査方向のエッジ画素の間の位置関係として、副走査方向の位置の近似性を算出してもよい。例えば、端部検出部155は、副走査方向の位置の近似性として、複数の副走査方向のエッジ画素の間の副走査方向における距離を算出する。端部検出部155は、副走査方向のエッジ画素が検出された対象ラインが主走査方向において相互に第1距離内に位置し且つ各対象ラインで検出された副走査方向のエッジ画素が副走査方向において第2距離内に位置する対象ライン群を抽出する。第1距離は、例えば相互に隣接する対象ライン間の距離の所定倍(例えば2倍)に設定される。第2距離は、例えば相互に隣接する対象ライン間の距離の所定倍(例えば2倍)に設定される。
【0099】
端部検出部155は、抽出した対象ライン群の内、含まれる対象ラインの数が最も多い対象ライン群の主走査方向の範囲を、主走査方向における媒体の先端範囲として検出する。なお、端部検出部155は、検出した範囲から所定のマージンだけ縮小させた範囲、又は、検出した範囲を所定のマージンだけ拡大させた範囲を主走査方向における媒体の先端範囲として検出してもよい。端部検出部155は、主走査方向における媒体の先端範囲として検出した対象ライン群の両端の位置を、媒体の先端の主走査方向における端部として検出する。
【0100】
図11に示す例では、上端エッジ画素T4を含む対象ラインから、上端エッジ画素T14を含む対象ラインまでの範囲が媒体の先端範囲として検出される。即ち、縦筋ノイズ1003、1004に対応する画素は、上端エッジ画素として検出されないため、媒体の先端範囲に含まれない。また、突発ノイズ1005、1006に対応する上端エッジ画素T1、T2を含む対象ラインは離散的に位置するため、媒体の先端範囲に含まれない。また、横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する画素は、上端エッジ画素として検出されないため、媒体の先端範囲に含まれない。また、媒体1001の左辺に対応する上端エッジ画素T3は、副走査方向において近傍に位置する上端エッジ画素T4、T5に対して、主走査方向において離間しているため、上端エッジ画素T3を含む対象ラインは媒体の先端範囲に含まれない。
【0101】
また仮に、主走査方向において媒体の近傍に突発ノイズが発生した場合でも、副走査方向においてその突発ノイズが媒体の先端と離間していれば、その突発ノイズは媒体の先端範囲に含まれない。端部検出部155は、副走査方向のエッジ画素の間の副走査方向における距離を用いることにより、ノイズの影響、及び、媒体の側辺の影響を低減させて、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。特に、端部検出部155は、横筋ノイズが発生する領域を、上端エッジ画素を検出する領域から除外することにより、上端エッジ画素を利用して、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。
【0102】
また、端部検出部155は、副走査方向の位置の近似性として、複数の主走査方向のライン毎の副走査方向のエッジ画素の頻度を算出してもよい。端部検出部155は、主走査方向のライン毎に、その主走査方向のライン上で副走査方向のエッジ画素が検出された数を算出する。端部検出部155は、各主走査方向のラインの副走査方向の位置を階級とし、各主走査方向のラインについて算出された数を頻度とするヒストグラムを生成する。端部検出部155は、生成したヒストグラムにおいて、頻度が頻度閾値以上である階級範囲内で、副走査方向のエッジ画素が検出された対象ラインを対象ライン群として抽出する。頻度閾値は、予め所定の値(例えば3)に設定される。なお、頻度閾値は、生成したヒストグラムに応じて動的に設定されてもよい。その場合、頻度閾値は、例えば最大頻度の1/2等に設定される。
【0103】
端部検出部155は、抽出した対象ライン群の主走査方向の範囲を、主走査方向における媒体の先端範囲として検出する。なお、端部検出部155は、検出した範囲から所定のマージンだけ縮小させた範囲、又は、検出した範囲を所定のマージンだけ拡大させた範囲を主走査方向における媒体の先端範囲として検出してもよい。端部検出部155は、主走査方向における媒体の先端範囲として検出した対象ライン群の両端の位置を、媒体の先端の主走査方向における端部として検出する。
【0104】
図12は、端部検出部155により生成されるヒストグラム1200について説明するための模式図である。
【0105】
図12には、
図10に示した入力画像1000から生成されたヒストグラム1200が示される。
図12において、縦軸は各主走査方向のラインの副走査方向の位置(階級)を示し、横軸は各主走査方向のラインについて算出された数(頻度)を示す。
図12に示す例では、副走査方向において、媒体の上辺に対応する上端エッジ画素T4~T14が存在する範囲で頻度が高くなっている。一方、突発ノイズ1005、1006に対応する上端エッジ画素T1、T2、及び、媒体の左辺に対応する上端エッジ画素T3が存在する位置では頻度が低くなっている。
【0106】
したがって、
図11に示す例では、上端エッジ画素T4を含む対象ラインから、上端エッジ画素T14を含む対象ラインまでの範囲が媒体の先端範囲として検出される。即ち、突発ノイズ1005、1006に対応する上端エッジ画素T1、T2を含む対象ライン、及び、媒体1001の左辺に対応する上端エッジ画素T3を含む対象ラインは媒体の先端範囲に含まれない。端部検出部155は、主走査方向のライン毎の副走査方向のエッジ画素の頻度を用いることにより、ノイズの影響、及び、媒体の側辺の影響を低減させて、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。特に、端部検出部155は、横筋ノイズが発生する領域を、上端エッジ画素を検出する領域から除外することにより、上端エッジ画素を利用して、媒体の先端範囲及びその端部を高精度に検出することができる。
【0107】
次に、媒体幅検出部156は、端部検出部155により検出された媒体の先端の主走査方向における端部に基づいて、媒体幅を検出する(ステップS111)。媒体幅検出部156は、例えば媒体の先端の主走査方向における両方の端部の間のユークリッド距離を媒体幅として検出する。媒体幅検出部156は、以下の式(1)に従って、媒体の先端の主走査方向における両方の端部の間のユークリッド距離Wを算出する。
【数1】
ここで、(x
1、y
1)は、入力画像において主走査方向をx軸、副走査方向をy軸とした座標系における媒体の先端の主走査方向における一方の端部の座標であり、(x
2、y
2)は、その座標系における媒体の先端の主走査方向における他方の端部の座標である。なお、媒体搬送装置100は、各端部の座標とユークリッド距離との間の関係を示すテーブルを予め記憶しておき、媒体幅検出部156は、そのテーブルを参照してユークリッド距離を取得してもよい。
【0108】
なお、媒体幅検出部156は、媒体の先端の主走査方向における両方の端部の間の主走査方向における距離を媒体幅として検出してもよい。その場合、媒体幅検出部156は、以下の式(2)に従って、媒体の先端の主走査方向における両方の端部の間の主走査方向における距離Wを算出する。
【数2】
【0109】
次に、画像取得部153は、媒体全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS112)。画像取得部153は、例えば、第2媒体センサ116から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の後端が第2媒体センサ116の位置を通過したか否かを判定する。画像取得部153は、第2媒体センサ116から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体センサ116の位置を通過したと判定する。画像取得部153は、媒体の後端が第2媒体センサ116の位置を通過してから所定時間が経過した時に媒体の後端が撮像装置117の撮像位置を通過し、媒体全体が撮像されたと判定する。なお、画像取得部153は、予め定められた数のライン画像を撮像装置117から取得したときに、搬送された媒体の全体が撮像されたと判定してもよい。
【0110】
まだ搬送された媒体の全体が撮像されていない場合、画像取得部153は、処理をステップS104へ戻し、ステップS104~S112の処理を繰り返す。
【0111】
一方、搬送された媒体の全体が撮像された場合、画像取得部153は、取得した全てのライン画像を結合することにより、読取画像を生成する(ステップS113)。なお、入力画像に含まれるライン数(所定数)が、媒体全体が含まれる値に設定されている場合、画像取得部153は、入力画像を読取画像として使用してもよい。
【0112】
次に、エッジ画素検出部154は、読取画像から複数の主走査方向のエッジ画素を検出する(ステップS114)。エッジ画素検出部154は、読取画像内で副走査方向の位置が相互に同一であり且つ主走査方向の距離が相互に所定範囲内である複数の画素の階調値に基づいて、主走査方向のエッジ画素を検出する。また、エッジ画素検出部154は、主走査方向において、端部検出部155により検出された媒体の先端の主走査方向における二つの端部から所定距離の範囲内で、主走査方向のエッジ画素を検出する。
【0113】
端部検出部155は、読取画像内で、水平方向(主走査方向)に延伸する水平ライン毎に、端部検出部155により検出された媒体の先端の左端から所定距離の範囲内で、左側から順に、各水平ライン内の各画素の水平方向の隣接差分値を算出する。端部検出部155は、各水平ライン内で隣接差分値が階調閾値を越える画素をエッジ画素として検出する。端部検出部155は、各水平ライン内で、最初に検出されたエッジ画素、即ち端部検出部155により検出された媒体の先端の左端から所定距離の範囲内で最も左側に位置する画素を左端エッジ画素とする。同様に、端部検出部155は、端部検出部155により検出された媒体の先端の右端から所定距離の範囲内で、右側から順に、エッジ画素を検出する。端部検出部155は、各水平ライン内で最初に検出されたエッジ画素、即ち端部検出部155により検出された媒体の先端の右端から所定距離の範囲内で最も右側に位置する画素を右端エッジ画素とする。端部検出部155は、左端エッジ画素及び右端エッジ画素を主走査方向のエッジ画素として検出する。
【0114】
なお、端部検出部155は、読取画像内の各画素から水平方向に所定距離だけ離れた二つの画素の階調値の差の絶対値を隣接差分値として算出してもよい。また、端部検出部155は、読取画像内の各画素の階調値を閾値と比較することによりエッジ画素を検出してもよい。例えば、端部検出部155は、特定の画素の階調値が閾値未満であり、その特定の画素に対して水平方向に隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素の階調値が閾値以上である場合、その特定の画素をエッジ画素として検出する。
【0115】
また、端部検出部155は、読取画像内の全ての画素について主走査方向のエッジ画素を検出するのでなく、読取画像内で副走査方向における一定間隔(例えば4画素)毎に主走査方向のエッジ画素を検出してもよい。端部検出部155は、読取画像内の水平ラインの中から、一定間隔毎に、主走査方向のエッジ画素を検出する対象ラインを抽出し、抽出した対象ラインについて、主走査方向のエッジ画素を検出する。これにより、端部検出部155は、媒体の端部の検出に要する時間を低減させることが可能となり、媒体読取処理の処理時間及び処理負荷を低減させることが可能となる。
【0116】
また、エッジ画素検出部154は、副走査方向のエッジ画素を検出する場合と同様に、低信頼領域からは主走査方向のエッジ画素を検出せず、入力画像内で低信頼領域を含まない領域のみから主走査方向のエッジ画素を検出する。
【0117】
図13は、左端エッジ画素及び右端エッジ画素について説明するための模式図である。
【0118】
図13には、
図10に示した入力画像1000が示される。
図10において、水平方向に延伸する点線は対象ラインとして抽出された水平ラインを示す。
図13に示す例では、画素L1~L11が左端エッジ画素として検出され、画素R1~R11が右端エッジ画素として検出されている。左端エッジ画素L1~L11は、それぞれ媒体の左辺に対応する画素である。右端エッジ画素R1~R11は、それぞれ媒体の右辺に対応する画素である。各エッジ画素は、端部検出部155により検出された媒体の先端の各端部T3、T14から主走査方向の所定距離の範囲内で検出されている。そのため、縦筋ノイズ1003、1004及び突発ノイズ1005、1006の影響を受けることなく、媒体の側辺に対応するエッジ画素が良好に検出されている。また、各横筋ノイズ1007、1008、1009の周辺は低信頼領域として設定されている。そのため、各横筋ノイズ1007、1008、1009の影響を受けることなく、媒体の側辺に対応するエッジ画素が良好に検出されている。
【0119】
次に、端部検出部155は、主走査方向のエッジ画素に基づいて、媒体の側辺を媒体の主走査方向の端部として検出する(ステップS115)。端部検出部155は、最小二乗法を用いて、各左端エッジ画素を通過する直線を媒体の左辺として検出し、各右端エッジ画素を通過する直線を媒体の右辺として検出する。なお、端部検出部155は、ハフ変換を用いて、各エッジ画素を通過する直線を媒体の側辺として検出してもよい。
【0120】
次に、端部検出部155は、媒体の後端の主走査方向における端部を検出する(ステップS116)。エッジ画素検出部154は、ステップS109の処理と同様にして、入力画像又は読取画像内でエッジ画素を検出し、各垂直ライン内で最も下側に位置するエッジ画素を下端エッジ画素(副走査方向のエッジ画素)として検出する。端部検出部155は、ステップS110の処理と同様にして、下端エッジ画素に基づいて、媒体の後端の主走査方向における端部を検出する。
【0121】
次に、出力制御部157は、読取画像から媒体の領域を切り出した切り出し画像を生成する(ステップS117)。出力制御部157は、最小二乗法又はハフ変換を用いて、上端エッジ画素を通過する直線を媒体の上辺として検出し、下端エッジ画素を通過する直線を媒体の下辺として検出する。出力制御部157は、検出した上辺及び下辺と、端部検出部155により検出された媒体の二つの側辺とで囲まれた領域を媒体の領域として検出する。出力制御部157は、検出した媒体の領域を切り出して切り出し画像を生成する。
【0122】
次に、出力制御部157は、生成した切り出し画像をインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより出力する(ステップS118)。出力制御部157は、生成した切り出し画像を表示装置106に表示することにより出力してもよい。切り出し画像における媒体の側辺は、端部検出部155により検出された媒体の主走査方向の端部であり、切り出し画像は、端部検出部155により検出された端部に関する情報の一例である。なお、出力制御部157は、切り出し画像を生成せずに読取画像を情報処理装置に送信し、読取画像内で端部検出部155により検出された媒体の主走査方向の端部の位置を示す座標を、端部に関する情報として情報処理装置に送信してもよい。その場合、情報処理装置が、受信した座標に基づいて読取画像から切り出し画像を生成する。
【0123】
また、出力制御部157は、ステップS110において、端部検出部155により検出された媒体の先端の端部に基づいて、媒体がカードであるか用紙であるかを判定してもよい。その場合、出力制御部157は、媒体の先端の端部間の距離が閾値以下である場合、媒体がカードであると判定し、媒体の先端の端部間の距離が閾値より大きい場合、媒体が用紙であると判定する。閾値は、例えばISO/IEC7810で規定されるカードの長手方向のサイズにマージンを加えた値に設定される。出力制御部157は、媒体がカードであるか用紙であるかを示す情報を、媒体の端部に関する情報として情報処理装置に送信する。この場合、情報処理装置は、媒体がカードであるか用紙であるかに応じて、受信した画像を分類する。また、出力制御部157は、不図示の超音波センサから出力される超音波信号に基づいて、搬送される媒体の重送が発生したか否かを定期的に判定し、媒体の重送が発生した場合に、媒体の搬送を停止させてもよい。その場合、出力制御部157は、媒体がカードであるときは、媒体の重送が発生していないと判定してもよい。これにより、出力制御部157は、カードが搬送された時に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0124】
また、出力制御部157は、端部検出部155により検出された媒体の主走査方向の端部に基づいて媒体のサイズを検出し、検出した媒体のサイズに応じて第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119の回転速度(媒体の排出速度)を変更してもよい。その場合、出力制御部157は、媒体の主走査方向の端部間の距離を媒体のサイズとして検出する。そして、出力制御部157は、ステップS112において媒体全体が撮像されたと判定された場合、検出した媒体のサイズに応じて第3搬送ローラ118及び第4搬送ローラ119の回転速度を変更するようにモータ131の回転速度を変更する。出力制御部157は、媒体のサイズが小さい程、回転速度が低く(遅く)なり、媒体のサイズが大きい程、回転速度が高く(速く)なるように、モータ131の回転速度を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、サイズが小さい媒体が勢いよく排出されて、排出台104上で媒体が散らばってしまうことを抑制でき、排出台104における媒体の整列性を向上させることができる。
【0125】
また、出力制御部157は、ステップS110において、端部検出部155により検出された媒体の先端の端部に基づいて、媒体のスキューが発生したか否かを判定してもよい。その場合、媒体搬送装置100は、媒体のスキューが発生したとみなされる、媒体の先端の端部の位置の範囲と、媒体の先端の傾き(主走査方向に対する角度)の範囲とが設定されたテーブルを予め記憶装置140に記憶しておく。出力制御部157は、端部検出部155により検出された媒体の先端の二つの端部を通過する直線の傾きを算出する。出力制御部157は、端部検出部155により検出された媒体の先端の二つの端部と、算出した傾きとが、予め設定された範囲に含まれるか否かにより、媒体のスキューが発生したか否かを判定する。出力制御部157は、媒体のスキューが発生したと判定した場合、モータ131を停止して媒体の搬送を停止させ、媒体の搬送異常が発生したことを示す情報を、媒体の端部に関する情報として出力し、利用者に通知する。
【0126】
次に、制御部152は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS119)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部152は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S119の処理を繰り返す。
【0127】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部152は、モータ131を停止し(ステップS120)、一連のステップを終了する。
【0128】
なお、ステップS111の処理は省略されてもよい。また、ステップS114~S117の処理が省略され、ステップS118において、出力制御部157は読取画像を出力してもよい。また、ステップS109において、エッジ画素検出部154は、入力画像内の全領域から副走査方向のエッジ画素を検出してもよい。その場合、ステップS110において、端部検出部155は、入力画像内でエッジ画素検出部154により検出されたエッジ画素の内、低信頼領域を含まない領域から検出された副走査方向のエッジ画素のみに基づいて、媒体の先端の主走査方向における端部を検出する。同様に、ステップS114において、エッジ画素検出部154は、入力画像内の全領域から主走査方向のエッジ画素を検出してもよい。その場合、ステップS115において、端部検出部155は、入力画像内でエッジ画素検出部154により検出されたエッジ画素の内、低信頼領域を含まない領域から検出された主走査方向のエッジ画素のみに基づいて、媒体の主走査方向の端部を検出する。
【0129】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、入力画像内で、剛性の高いカード等の媒体が搬送された場合に基準部材122の階調値が変化する低信頼領域におけるエッジ画素を使用せずに、媒体の主走査方向における端部を検出する。これにより、媒体搬送装置100は、第2撮像装置117bの高さ方向A8の移動によって発生するノイズの影響を除去して、画像から媒体の主走査方向における端部をより高精度に検出することが可能となった。
【0130】
特に、媒体搬送装置100は、媒体読取中に撮像装置117に対して異物が付着又は剥離した場合のように、事前に取得していた基準画像を用いて画像内の異物を除去できない場合でも、縦筋ノイズによる影響を低減させることが可能となった。
【0131】
また、媒体搬送装置100は、所定数のライン画像を含む入力画像に基づいて、媒体全体が撮像される前に媒体の先端の主走査方向における端部を検出するため、早期に(リアルタイムに)媒体の先端の主走査方向における端部を検出することが可能となった。
【0132】
図14及び
図15は、他の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図14及び
図15に示すフローチャートは、
図8及び
図9に示したフローチャートの代わりに実行される。
図14及び
図15のステップS201~S207、S211~S213、S218~S221の処理は、
図8及び
図9のステップS101~S107、S111~S113、S117~S120の処理と同様であるため、詳細な説明を省略する。以下では、ステップS208~S210、S214~S217についてのみ説明する。
【0133】
ステップS208において、エッジ画素検出部154は、
図7のステップS109の処理と同様にして、入力画像から複数の副走査方向のエッジ画素を検出する(ステップS208)。但し、エッジ画素検出部154は、入力画像内の全領域から副走査方向のエッジ画素を検出する。
【0134】
次に、変動領域検出部158は、入力画像において基準部材122が含まれる領域内で周辺画素に対して階調値が変動している変動領域を検出する(ステップS209)。変動領域検出部158は、エッジ画素検出部154により検出された複数の副走査方向のエッジ画素の位置関係に基づいて、変動領域を検出する。
【0135】
例えば、変動領域検出部158は、入力画像内の水平ライン毎に、最も左側で副走査方向のエッジ画素として検出された画素を左端エッジ画素として検出し、最も右側で副走査方向のエッジ画素として検出された画素を右端エッジ画素として検出する。変動領域検出部158は、各水平ラインの左端エッジ画素及び右端エッジ画素に対する、副走査方向の下方においてその水平ラインに隣接する又は所定距離内の水平ラインの左端エッジ画素及び右端エッジ画素の位置の変動値を算出する。変動領域検出部158は、対応する二つのエッジ画素の主走査方向の位置の差を、その二つのエッジ画素の副走査方向の位置の差で除算した除算値を各エッジ画素の位置の変動値として算出する。
【0136】
変動領域検出部158は、最も上側に位置する水平ラインから下側に向けて各水平ラインを走査し、最初に左端エッジ画素又は右端エッジ画素の何れかの変動値の大きさが変動閾値以上となった水平ラインの位置を媒体の先端位置として検出する。変動領域検出部158は、先端位置として検出した水平ラインから下側に向けて各水平ラインをさらに走査する。変動領域検出部158は、左端エッジ画素又は右端エッジ画素の何れかの変動値の大きさが一旦変動閾値未満となってから再度変動閾値以上となった水平ライン又はその水平ラインより所定のマージンだけ上側の水平ラインより下側の領域を変動領域として検出する。
【0137】
図16は、変動領域について説明するための模式図である。
【0138】
図16のグラフ1600は、入力画像1000内の左端エッジ画素と右端エッジ画素の位置を示すグラフである。グラフ1600において、縦軸は入力画像内の副走査方向の位置を示し、横軸は入力画像内の主走査方向の位置を示す。グラフ1600において、実線1601は左端エッジ画素の位置を示し、点線1602は右端エッジ画素の位置を示す。実線1601内の領域1603は媒体1001の左辺に対応している。領域1604は横筋ノイズ1007に対応している。点線1602内の領域1605は媒体1001の上辺に対応している。領域1606は媒体1001の右辺に対応している。領域1607は横筋ノイズ1007に対応している。
【0139】
図16のグラフ1620は、入力画像1000内の左端エッジ画素と右端エッジ画素の位置の変化を示すグラフである。グラフ1620において、縦軸は入力画像内の副走査方向の位置を示し、横軸は変動値を示す。グラフ1620において、実線1621は左端エッジ画素についての変動値を示し、点線1622は右端エッジ画素についての変動値を示す。実線1621内の領域1623~1624は、実線1601内の領域1603~1604に対応し、点線1622内の領域1625~1627は、点線1602内の領域1605~1607に対応している。
【0140】
グラフ1620において変動値を上端から見ていくと、まず、媒体1001の上辺に対応する右端エッジ画素の領域1625において変動値の絶対値は大きくなっている。その後、媒体1001の左辺に対応する左端エッジ画素の領域1623及び媒体1001の右辺に対応する右端エッジ画素の領域1626において変動値の絶対値は小さくなっている。そして、横筋ノイズ1007に対応する左端エッジ画素の領域1624及び右端エッジ画素の領域1627において変動値の絶対値は再度大きくなっている。そのため、副走査方向において領域1624又は領域1627より下側の領域、即ち横筋ノイズ1007より下側の領域が変動領域として検出される。
【0141】
次に、端部検出部155は、入力画像内で変動領域検出部158により検出された変動領域を含まない領域から検出された副走査方向のエッジ画素に基づいて、媒体の先端の主走査方向における端部を検出する(ステップS210)。端部検出部155は、ステップS110の処理と同様にして、媒体の先端の主走査方向における端部を検出する。
【0142】
また、ステップS214において、エッジ画素検出部154は、
図8のステップS114の処理と同様にして、読取画像から複数の主走査方向のエッジ画素を検出する(ステップS214)。但し、エッジ画素検出部154は、読取画像内の全領域から主走査方向のエッジ画素を検出する。
【0143】
次に、変動領域検出部158は、エッジ画素検出部154により検出された複数の主走査方向のエッジ画素の位置関係に基づいて、変動領域を検出する(ステップS215)。
【0144】
変動領域検出部158は、ステップS214で検出された各水平ラインの左端エッジ画素及び右端エッジ画素を用いて、変動領域を検出する。変動領域検出部158は、各水平ラインの左端エッジ画素及び右端エッジ画素に対する、副走査方向の下方においてその水平ラインに隣接する又は所定距離内の水平ラインの左端エッジ画素及び右端エッジ画素の位置の変動値を算出する。変動領域検出部158は、対応する二つのエッジ画素の主走査方向の位置の差を、その二つのエッジ画素の副走査方向の位置の差で除算した除算値を各エッジ画素の位置の変動値として算出する。
【0145】
変動領域検出部158は、ステップS210で検出した媒体の先端位置の水平ラインから下側に向けて各水平ラインを走査する。変動領域検出部158は、副走査方向において、左端エッジ画素又は右端エッジ画素の内の何れかの変動値の大きさが変動閾値以上となる領域、又は、その領域を所定のマージンだけ拡大させた領域を変動領域として検出する。
【0146】
図17は、変動領域について説明するための模式図である。
【0147】
図17のグラフ1700は、入力画像1000内の左端エッジ画素と右端エッジ画素の位置を示すグラフである。グラフ1700において、縦軸は入力画像内の副走査方向の位置を示し、横軸は入力画像内の主走査方向の位置を示す。グラフ1700において、実線1701は左端エッジ画素の位置を示し、点線1702は右端エッジ画素の位置を示す。実線1701内の領域1703は縦筋ノイズ1003に対応している。領域1704は突発ノイズ1005及び横筋ノイズ1007に対応している。領域1705は横筋ノイズ1008に対応している。領域1706は突発ノイズ1006に対応している。領域1707は横筋ノイズ1009に対応している。点線1702内の領域1708は縦筋ノイズ1004に対応している。領域1709は横筋ノイズ1007に対応している。領域1710は横筋ノイズ1008に対応している。領域1711は横筋ノイズ1009に対応している。
【0148】
図17のグラフ1720は、入力画像1000内の左端エッジ画素と右端エッジ画素の位置の変化を示すグラフである。グラフ1720において、縦軸は入力画像内の副走査方向の位置を示し、横軸は変動値を示す。グラフ1720において、実線1721は左端エッジ画素についての変動値を示し、点線1722は右端エッジ画素についての変動値を示す。実線1721内の領域1723~1727は、実線1701内の領域1703~1707に対応し、点線1722内の領域1728~1731は、点線1702内の領域1708~1711に対応している。
【0149】
グラフ1720において変動値を媒体の先端位置から下側に見ていくと、横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する領域、及び、突発ノイズ1005、1006に対応する領域において変動値の絶対値が大きくなっている。そのため、副走査方向において横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する領域、及び、突発ノイズ1005、1006に対応する領域が変動領域として検出される。
【0150】
図18は、他の変動領域について説明するための模式図である。
【0151】
図18のグラフ1800は、入力画像1000において縦筋ノイズ1003、1004が存在しない場合の、左端エッジ画素と右端エッジ画素の位置を示すグラフである。グラフ1800において、縦軸は入力画像内の副走査方向の位置を示し、横軸は入力画像内の主走査方向の位置を示す。グラフ1800において、実線1801は左端エッジ画素の位置を示し、点線1802は右端エッジ画素の位置を示す。実線1801内の領域1803は媒体1001の左辺に対応している。領域1804は突発ノイズ1005及び横筋ノイズ1007に対応している。領域1805は横筋ノイズ1008に対応している。領域1806は突発ノイズ1006に対応している。領域1807は横筋ノイズ1009に対応している。領域1808は媒体1001の下辺に対応している。点線1802内の領域1809は媒体1001の上辺に対応している。領域1810は媒体1001の右辺に対応している。領域1811は横筋ノイズ1007に対応している。領域1812は横筋ノイズ1008に対応している。領域1813は横筋ノイズ1009に対応している。
【0152】
図18のグラフ1820は、入力画像1000内の左端エッジ画素と右端エッジ画素の位置の変化を示すグラフである。グラフ1820において、縦軸は入力画像内の副走査方向の位置を示し、横軸は変動値を示す。グラフ1820において、実線1821は左端エッジ画素についての変動値を示し、点線1822は右端エッジ画素についての変動値を示す。実線1821内の領域1823~1728は、実線1801内の領域1803~1808に対応し、点線1822内の領域1829~1833は、点線1802内の領域1809~1813に対応している。
【0153】
グラフ1820において変動値を媒体の先端位置から下側に見ていくと、横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する領域、及び、突発ノイズ1005、1006に対応する領域において変動値の絶対値が大きくなっている。そのため、副走査方向において横筋ノイズ1007、1008、1009に対応する領域、及び、突発ノイズ1005、1006に対応する領域が変動領域として検出される。
【0154】
次に、端部検出部155は、読取画像内で変動領域検出部158により検出された変動領域を含まない領域から検出された主走査方向のエッジ画素に基づいて、媒体の側辺を媒体の主走査方向の端部として検出する(ステップS216)。この場合、エッジ画素検出部154は、ステップS114の処理と同様にして、改めて、読取画像から複数の主走査方向のエッジ画素を検出する。即ち、エッジ画素検出部154は、主走査方向において、端部検出部155により検出された媒体の先端の主走査方向における二つの端部から所定距離内の領域内で、主走査方向のエッジ画素を検出する。そして、端部検出部155は、ステップS115の処理と同様にして、媒体の主走査方向の端部を検出する。
【0155】
次に、端部検出部155は、読取画像内で変動領域検出部158により検出された変動領域を含まない領域から検出された副走査方向のエッジ画素に基づいて、媒体の後端の主走査方向における端部を検出する(ステップS217)。
【0156】
エッジ画素検出部154は、ステップS208の処理と同様にして、入力画像又は読取画像内でエッジ画素を検出し、各垂直ライン内で最も下側に位置する画素を下端エッジ画素(副走査方向のエッジ画素)として検出する。また、端部検出部155は、ステップS209の処理と同様にして、下端エッジ画素に基づいて、媒体の後端の主走査方向における端部を検出する。変動領域検出部158は、最も下側に位置する水平ラインから上側に向けて各水平ラインを走査し、最初に左端エッジ画素又は右端エッジ画素の何れかの変動値の大きさが変動閾値以上となった水平ラインの位置を媒体の後端位置として検出する。変動領域検出部158は、後端位置として検出した水平ラインから上側に向けて各水平ラインをさらに走査する。変動領域検出部158は、左端エッジ画素又は右端エッジ画素の何れかの変動値の大きさが一旦変動閾値未満となってから再度変動閾値以上となった水平ライン又はその水平ラインより所定のマージンだけ下側の水平ラインより上側の領域を変動領域として検出する。
【0157】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、動的に変動領域を検出し、変動領域におけるエッジ画素を使用せずに、媒体の主走査方向における端部を検出する場合も、画像から媒体の主走査方向における端部をより高精度に検出することが可能となった。
【0158】
特に、媒体搬送装置100は、エッジ画素を使用しない領域を予め設定しておかずに、自動的に検出することにより、媒体のサイズ又は種類等によらず、画像から媒体の端部を検出することが可能となった。
【0159】
図19は、さらに他の実施形態に係る画像読取装置における処理回路250の概略構成を示す図である。処理回路250は、媒体搬送装置100の処理回路150の代わりに使用され、媒体読取処理を実行する。処理回路250は、設定回路251、制御回路252、画像取得回路253、エッジ画素検出回路254、端部検出回路255、媒体幅検出回路256、出力制御回路257及び変動領域検出回路258等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0160】
設定回路251は、設定部の一例であり、設定部151と同様の機能を有する。設定回路251は、低信頼領域を設定し、記憶装置140に記憶する。
【0161】
制御回路252は、制御部の一例であり、制御部152と同様の機能を有する。制御回路252は、操作装置105から操作信号を、第1媒体センサ111から媒体検出信号を受信し、受信した各信号に応じてモータ131を駆動し、媒体の搬送を制御する。
【0162】
画像取得回路253は、画像取得部の一例であり、画像取得部153と同様の機能を有する。画像取得回路253は、第2媒体センサ116から第2媒体信号を受信し、撮像装置117からライン画像を受信して入力画像を生成し、ライン画像及び入力画像を記憶装置140に記憶する。
【0163】
エッジ画素検出回路254は、エッジ画素検出部の一例であり、エッジ画素検出部154と同様の機能を有する。エッジ画素検出回路254は、記憶装置140から入力画像を読み出し、入力画像からエッジ画素を検出し、検出結果を記憶装置140に記憶する。
【0164】
端部検出回路255は、端部検出部の一例であり、端部検出部155と同様の機能を有する。端部検出回路255は、記憶装置140から入力画像、エッジ画素の検出結果及び低信頼領域の設定情報又は変動領域の検出結果を読み出す。端部検出回路255は、入力画像内で低信頼領域又は変動領域を含まない領域から検出されたエッジ画素に基づいて媒体の主走査方向における端部を検出し、検出結果を記憶装置140に記憶する。
【0165】
媒体幅検出回路256は、媒体幅検出部の一例であり、媒体幅検出部156と同様の機能を有する。媒体幅検出回路256は、記憶装置140から媒体の主走査方向における端部の検出結果を読み出し、媒体の主走査方向における端部に基づいて、媒体幅を検出し、検出結果を記憶装置140に記憶する。
【0166】
出力制御回路257は、出力制御部の一例であり、出力制御部157と同様の機能を有する。出力制御回路257は、記憶装置140からライン画像を読み出して読出画像を生成する。また、出力制御回路257は、媒体の主走査方向における端部の検出結果を読み出し、媒体の主走査方向における端部に基づいて切り出し画像を生成し、インタフェース装置132を介して不図示の情報処理装置へ送信する。
【0167】
変動領域検出回路258は、変動領域検出部の一例であり、変動領域検出部158と同様の機能を有する。変動領域検出回路258は、記憶装置140から入力画像及びエッジ画素の検出結果を読み出し、複数のエッジ画素の位置関係に基づいて変動領域を検出し、検出結果を記憶装置140に記憶する。
【0168】
以上詳述したように、画像読取装置は、処理回路250を用いる場合においても、画像から媒体の主走査方向における端部をより高精度に検出することが可能となった。
【符号の説明】
【0169】
100 媒体搬送装置
112 給送ローラ
113 ブレーキローラ
114 第1搬送ローラ
115 第2搬送ローラ
117 撮像装置
122 基準部材
118 第3搬送ローラ
119 第4搬送ローラ
140 記憶装置
154 エッジ画素検出部
155 端部検出部
156 媒体幅検出部
157 出力制御部
158 変動領域検出部