(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】車両用ドア支持部材
(51)【国際特許分類】
E05F 15/622 20150101AFI20240304BHJP
F16F 15/03 20060101ALI20240304BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E05F15/622
F16F15/03 J
B60J5/10 B
(21)【出願番号】P 2023015286
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2019098432の分割
【原出願日】2019-05-27
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】山形 幹雄
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115404(JP,A)
【文献】特開2017-172180(JP,A)
【文献】特開2017-115403(JP,A)
【文献】特表2014-523497(JP,A)
【文献】国際公開第2018/141446(WO,A1)
【文献】特許第7252058(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
F16F 15/03
F16H 25/20
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体及びドアのうちの一方に接続される第1端部を有する筒状の収容部と、
前記収容部とは別体で、前記収容部
に対して前記第1端部とは反対側に同軸に
延びるように取り付けられた筒状のカバー部と、
前記車体及び前記ドアのうちの他方に接続される第2端部を有し、この第2端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、
前記可動部材内に一端側が配置され、前記収容部内に突出した他端に接続軸部を有するスピンドルと、
前記可動部材内に配置され、前記スピンドルに螺合し、前記可動部材に連結されたスピンドルナットと、
前記可動部材の内側に配置され、前記カバー部に対して前記可動部材を進出する向きへ付勢するコイルスプリングと、
前記収容部内に配置されて前記接続軸部に接続され、前記スピンドルに負荷を与える抵抗機構と
を備
え、
前記収容部内には、前記収容部の軸方向における前記抵抗機構の寸法よりも広い空間からなる配置部が形成され、
前記配置部には、前記抵抗機構を取り付ける取付部が設けられている、車両用ドア支持部材。
【請求項2】
前記収容部内に配置され、前記カバー部側に位置して前記接続軸部に接続される第1接続部と、前記収容部の前記
第1端部側に位置して前記抵抗機構に接続される第2接続部とを有し、前記第1接続部側の回転速度を前記第2接続部側の回転速度よりも遅くするギア機構を備え、
前記抵抗機構は、前記ギア機構を介して前記スピンドルに接続されている、請求項
1に記載の車両用ドア支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の車体とバックドアの間に配置され、車体に対してドアを開く向きに付勢し、ドアを開位置に保持する支持部材が開示されている。支持部材は、外筒と、外筒内に進退可能に収容された内筒とを有し、コイルスプリングとガススプリングによって、外筒に対して内筒が進出する向きに付勢されている。車体に対するドアの開閉時、ガススプリングは、ドアが急激に開閉することを防ぐ機能を兼ね備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガススプリングは、ガス(窒素ガス)とオイルの封入によって定められる負荷の微調整が困難である。また、ガスは温度や環境の変化に影響されるため、負荷を一定に維持することが困難である。よって、特許文献1の支持部材には改良の余地がある。
【0005】
本発明は、定められた負荷を安定して付与でき、負荷の大きさの調整も容易な車両用ドア支持部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車体及びドアのうちの一方に接続される第1端部を有する筒状の収容部と、前記収容部とは別体で、前記収容部に対して前記第1端部とは反対側に同軸に延びるように取り付けられた筒状のカバー部と、前記車体及び前記ドアのうちの他方に接続される第2端部を有し、この第2端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、前記可動部材内に一端側が配置され、前記収容部内に突出した他端に接続軸部を有するスピンドルと、前記可動部材内に配置され、前記スピンドルに螺合し、前記可動部材に連結されたスピンドルナットと、前記可動部材の内側に配置され、前記カバー部に対して前記可動部材を進出する向きへ付勢するコイルスプリングと、前記収容部内に配置されて前記接続軸部に接続され、前記スピンドルに負荷を与える抵抗機構とを備え、前記収容部内には、前記収容部の軸方向における前記抵抗機構の寸法よりも広い空間からなる配置部が形成され、前記配置部には、前記抵抗機構を取り付ける取付部が設けられている、車両用ドア支持部材を提供する。
【0007】
この車両用ドア支持部材によれば、車体に対するドアの係止を解除すると、コイルスプリングの伸長によって可動部材を付勢することで、スピンドルナットを介してスピンドルが回転しつつ、カバー部に対して可動部材が進出する。そして、コイルスプリングの付勢力によって、車体に対してドアが開位置に保持される。一方、車体に対してドアを閉じる向きへ回転させると、可動部材がカバー部に向けて押圧されることで、コイルスプリングが収縮し、スピンドルナットを介してスピンドルが回転しつつ、カバー部に対して可動部材が後退する。そして、車体に対してドアが係止されることで、ドアが閉状態に保持される。また、ドアの開閉時、支持部材が備える抵抗機構によってスピンドルに負荷を与えることができる。よって、車体に対するドアの急激な開閉を防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用ドア支持装置では、ドアに定められた負荷を安定して付与でき、負荷の大きさの調整も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の車両用ドア支持装置を用いた車両を示す斜視図。
【
図5】磁気抵抗機構を構成する回転部材の分解斜視図。
【
図6】磁気抵抗機構を構成する固定部材とスペーサの断面斜視図。
【
図12】磁気抵抗機構を構成する回転部材の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用ドア支持装置(以下「ドア支持装置」という。)10を車両1に用いた状態を示す。この
図1を参照すると、ドア支持装置10は、円筒状に形成された一対の支持部材15Aを備え、これらが車体2とバックドア(以下「ドア」と言う。)3との間に配置されている。
図1において左側に位置する支持部材(第1支持部材)15A、及び
図1において右側に位置する支持部材(第2支持部材)15Aは、同一の構成を有し、ドア3の開閉に従って伸縮する従動式である。
【0012】
図2を併せて参照すると、支持部材15Aは、車体2に接続される接続端(第1接続端)20aを有する第1ハウジング20と、ドア3に接続される接続端(第2接続端)25aを有する第2ハウジング25を備える。第1ハウジング20をドア3に接続し、第2ハウジング25を車体2に接続してもよい。第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が進出することで、車体2に対してドア3が開位置に保持される。第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が後退することで、車体2に対してドア3を閉じることができる。
【0013】
(支持部材の基本構成)
図2に示すように、支持部材15Aは、第1ハウジング20、第2ハウジング25、伸縮機構30、及びギア機構44を備える。
【0014】
第1ハウジング20は、円筒状の収容部21と、収容部21に連なる円筒状のカバー部22とを備える。収容部21内には、ギア機構44と磁気抵抗機構50が収容される。
図2において右側に位置する収容部21の端部21aが接続端20aである。この接続端20aは、開口しており、軸端部材23Aによって閉塞されている。カバー部22は、収容部21の端部21aとは反対側の端部21bに螺合して連設されている。カバー部22の直径は、収容部21の直径と同一である。収容部21とカバー部22は一体構造であってもよい。
【0015】
第2ハウジング25は、カバー部22内に同軸に配置され、カバー部22に対して軸方向に相対的に移動可能な可動部材である。第2ハウジング25の外径は、第1ハウジング20の内径よりも小さい。
図2において左側に位置する第2ハウジング25の端部は接続端25aである。この接続端25aは、開口しており、軸端部材26によって閉塞されている。接続端25aを含む軸端部材26は、第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が後退した状態でも、第1ハウジング20(カバー部22)の先端20bから突出している。
【0016】
伸縮機構30は、第1ハウジング20に対して第2ハウジング25を進出させるコイルスプリング32と、第1ハウジング20に対する第2ハウジング25の移動(伸縮)をガイドするスピンドル34及び回転機構37とを備える。
【0017】
コイルスプリング32は、第1ハウジング20(カバー部22)に対して第2ハウジング25を進出する向きへ弾性的に付勢する。このコイルスプリング32は、第2ハウジング25内に収容され、圧縮された状態で第2ハウジング25と同軸に配置されている。
図2において右側に位置するコイルスプリング32の一端は、第1ハウジング20に当接しており、
図2において左側に位置するコイルスプリング32の他端は、第2ハウジング25に当接している。
【0018】
スピンドル34は、第2ハウジング25の軸線に沿って延びるように、第2ハウジング25内に収容されている。スピンドル34の基端34aは、第2ハウジング25から突出し、第1ハウジング20内でギア機構44に機械的に接続されてる。スピンドル34の基端34a側は、カバー部22内に配置された軸受35に回転可能に支持されている。
【0019】
回転機構37は、カバー部22に対する第2ハウジング25の相対移動によって、第2ハウジング25の軸線を中心としてスピンドル34を回転させる。この回転機構37は、スピンドルナット38、プッシュロッド39、及びガイド管40を備える。これらは、第2ハウジング25の径方向において、コイルスプリング32とスピンドル34の間に配置されている。より具体的には、コイルスプリング32の内側にガイド管40が配置され、ガイド管40の内側にプッシュロッド39が収容され、プッシュロッド39の一端にスピンドルナット38が固定されている。
【0020】
ギア機構44は、収容部21内の端部21b近傍に配置されている。このギア機構44は、第1ハウジング20の軸方向において、一端側から入力された回転速度を変速して他端側から出力する変速機構である。ギア機構44は、カバー部22側に配置された第1接続部45Aと、接続端20a側に配置された第2接続部45Bとを有する。これらは、第1ハウジング20の軸線上に位置する1個の太陽歯車46と、太陽歯車46の外周に配置された複数(例えば4個)の遊星歯車47とをそれぞれ備える。また、接続部45A,45Bは、複数の遊星歯車47の外側を取り囲むケース48Aを備える。ケース48Aの内周面には、遊星歯車47が噛み合う歯が形成されている。
【0021】
ギア機構44のギア比は、第1接続部45A側の回転速度が第2接続部45B側の回転速度よりも遅くなるように設定されている。つまり、第1接続部45Aに入力された回転を増速して第2接続部45Bに出力する一方、第2接続部45Bに入力された回転を減速して第1接続部45Aに出力する。第1接続部45Aの太陽歯車46には、スピンドル34の基端34aが機械的に接続される。第2接続部45Bの太陽歯車46には、磁気抵抗機構50が機械的に接続される。
【0022】
図2に示すように、車体2に対してドア3が閉じられている状態では、第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が後退している。この状態では、コイルスプリング32は圧縮され、スピンドルナット38はスピンドル34の基端34a付近に位置している。
【0023】
ドアラッチ装置(図示せず)の操作によって車体2に対するドア3の係止を解除すると、コイルスプリング32の弾性的な伸長によって、第2ハウジング25が進出する向きへ押圧(付勢)される。これにより、回転機構37を介してスピンドル34が回転しつつ、カバー部22に対して第2ハウジング25が進出する。そして、車体2に対してドア3が開位置まで回転すると、コイルスプリング32の付勢力によってドア3が保持される。
【0024】
車体2に対してドア3が閉じる向きへ操作(回転)されると、カバー部22に向けて第2ハウジング25が押圧され、コイルスプリング32が付勢力に抗して収縮される。これにより、回転機構37を介してスピンドル34が回転しつつ、カバー部22に対して第2ハウジング25が後退する。そして、車体2に対してドア3が係止されることで、ドア3が閉状態に保持される。
【0025】
スピンドルナット38及びプッシュロッド39と、ガイド管40及び第1ハウジング20とは相対的に回転しないように係合されている。そのため、ドア3の開閉時、スピンドル34の回転運動は、スピンドルナット38のガイド管40に対する相対的な直線運動に変換される。これによりスピンドルナット38及びプッシュロッド39が軸方向に移動する。また、プッシュロッド39の移動によって、第2ハウジング25が第1ハウジング20に対して相対的に移動する。
【0026】
車体2に対するドア3の急激な開閉を防止するために、支持部材15Aの収容部21内には、ギア機構44の他にスピンドル34に負荷を与えるための磁気抵抗機構50が配置されている。
図8を参照すると、後述する支持部材15Bの収容部21内には、ギア機構44の他にスピンドル34を回転させるための電動モータ70が配置されている。収容部21の軸方向における磁気抵抗機構50の寸法と電動モータ70の寸法とは異なっている。これらを同一構造の収容部21内に配置するために、収容部21内には、電動モータ70を配置可能な空間からなる配置部21cが設けられている。
【0027】
図2に示すように、配置部21cは、収容部21内においてギア機構44と軸端部材23Aの間の円柱状の空間である。前述のように、収容部21の軸方向における配置部21cの寸法は、磁気抵抗機構50の寸法よりも大きい。よって、本実施形態の支持部材15Aには、ギア機構44と軸端部材23Aの間にスペーサ60が更に配置されている。
【0028】
(収容部内の概要)
図2及び
図3に示すように、支持部材15Aの配置部21cには、磁気抵抗機構50、スペーサ60、ギアボックス64A、ダンパ66A,66B、及びグロメット68Aが配置されている。
【0029】
図4から
図6を参照すると、磁気抵抗機構50は、スペーサ60(収容部21)内に回転可能に配置される回転部材52と、スペーサ60内に回転不可能に固定される固定部材57とを備える非接触式の抵抗手段である。
【0030】
図5に最も明瞭に示すように、回転部材52は、円筒状の芯材53と、芯材53の軸線に沿って配置された軸部材54と、芯材53の外周に固定された複数(本実施形態では8個)の磁石(パーマネントマグネット)55A,55Bとを備える。
【0031】
芯材53は樹脂製であり、その軸線に沿って貫通した貫通孔53aを備える。芯材53の軸方向の両端には円形状に窪む凹部53bが設けられている。
【0032】
軸部材54は、非磁性金属(例えばステンレス)製で、貫通孔53aの内面に圧接可能な直径の棒状の部材である。軸部材54の中間部分には、径方向外向きに突出し、凹部53bに配置されるフランジ部54aが設けられている。軸部材54の全長は芯材53の軸方向の寸法よりも長く、貫通孔53aを貫通した軸部材54の一部が芯材53の両端から突出する。一対の突出部分のうち一方は、第2接続部45Bに機械的に接続される第1軸部54bを構成する。一対の突出部分のうち他方は、スペーサ60に回転可能に支持される第2軸部54cを構成する。
【0033】
磁石55AはS極の磁力を発生させる部分であり、磁石55BはN極の磁力を発生させる部分である。これらは、扇形状に形成されて、芯材53の外面に周方向へ交互に配置され、全体として円筒状になっている。軸部材54の軸方向において、磁石55A,55Bの寸法は、芯材53の寸法と同一である。
【0034】
固定部材57は、軸部材54の軸線を中心として磁石55A,55B(回転部材52)を取り囲むことが可能な円筒部材である。つまり、固定部材57の内径は回転部材52の外径よりも大きく、これらの間には定められた間隔(例えば0.5mm)の隙間が形成されている。固定部材57の軸方向の寸法は、磁石55A,55Bの寸法よりも大きい。より具体的には、固定部材57の一端はスペーサ60の仕切壁60gに突き当たり、固定部材57の他端はギア機構44の端面に突き当たるように、固定部材57の軸方向の寸法が設定されている。これにより固定部材57は、仕切壁60gとギア機構44の間に挟持される。
図6に最も明瞭に示すように、軸部材54を中心とした固定部材57の回転を規制するために、固定部材57の一端には切欠部57aが設けられ、この切欠部57aにスペーサ60の凸部60iが係止されている。
【0035】
固定部材57は、磁石55A,55Bの磁力によって磁化され易く、消磁し易い磁性材料(例えばアルニコ磁石(Al-Ni-Co磁石))によって形成されている。
図7に示すように、固定部材57において、磁石55A(S極)に対向する部分58AはN極に磁化され、磁石55B(N極)に対向する部分58BはS極に磁化される。つまり、固定部材57には、N極に磁化された部分58AとS極に磁化された部分58Bとが、周方向へ交互に形成される。
【0036】
回転部材52が回転する向きにおいて、磁石55A(S極)の前側にはS極に磁化された部分58Bが形成され、磁石55B(N極)の前側にはN極に磁化された部分58Aが形成されている。同じ極性の磁石55A,55Bと磁化部分58B,58Aは反発しあうため、回転部材52の回転の抵抗になる。よって、ギア機構44を介してスピンドル34に負荷を与えることができる。
【0037】
磁気抵抗機構50による磁気抵抗は、ドア3を開く際に回転機構37を介してスピンドル34を回転させるコイルスプリング32の付勢力、及びドア3を閉じる際に回転機構37を介してスピンドル34を回転させるドア3の押圧力よりも小さい。よって、ドア3の開閉時には、磁気抵抗機構50による抵抗に抗してスピンドル34は回転し、ギア機構44を介して回転部材52が従動回転する。磁気抵抗機構50による磁気抵抗は、磁石55A,55Bの着磁力及び磁石55A,55Bの軸方向の寸法(全長)の変更等によって調整(設定)される。
【0038】
回転部材52の回転により磁石55A,55Bの回転角度位置が変わることで、N極に磁化された部分58Aの内側に磁石55B(N極)が位置すると、磁化部分58Aは消磁され、新たにS極に磁化された部分58Bになる。また、S極に磁化された部分58Bの内側に磁石55A(S極)が位置すると、磁化部分58Bは消磁され、新たにN極に磁化された部分58Aになる。つまり、固定部材57の内面側は、内側に位置する磁石55A,55Bに応じて、磁化と消磁が繰り返される。よって、スピンドル34に対して定められた負荷を安定して付与し続けることができる。
【0039】
図2及び
図6に示すように、スペーサ60は、ギア機構44を支持する第1端60aと、ダンパ66B及びグロメット68Aを介して軸端部材23Aを支持する第2端60bとを備える円筒状の部材である。スペーサ60の内径は固定部材57の外径と概ね同一であり、スペーサ60の外径は収容部21の内径よりも小さい。スペーサ60の第1端60aには、ケース48Aの外周面に形成された位置決め凹部48aに嵌められる位置決め凸部60cが、周方向に間隔をあけて複数突設されている。第1端60a側に位置するスペーサ60の外面には、ギアボックス64Aに係止するための係止爪60dが突設されている。第2端60b側に位置するスペーサ60の外面には、第1端60a側に向けたダンパ66Bの移動を規制する環状の段部60eが突設されている。
【0040】
スペーサ60の第1端60a側には、磁気抵抗機構50を取り付けるための取付部60fが設けられている。スペーサ60の内部には仕切壁60gが設けられており、この仕切壁60gと第1端60aの間が取付部60fを構成する。仕切壁60gの中央には、軸部材54の第2軸部54cを回転可能に支持する軸受部60hが設けられている。軸受部60hは、第2端60bに向けて窪む凹部からなり、軸部材54の軸方向と径方向の移動を規制する。また、取付部60fには、仕切壁60gの外周部から第1端60aに向けて突出し、固定部材57の切欠部57aに係止する凸部60iが設けられている、
図2及び
図3に示すように、ギアボックス64Aは、ギア機構44を収容する一端開口の筒状容器である。ギアボックス64Aの軸方向の寸法は、ギア機構44の第1接続部45Aからスペーサ60の第1端60aまで、外周を覆うことが可能な大きさである。カバー部22側に位置するギアボックス64Aの閉塞端には、スピンドル34を貫通させる貫通孔64aが設けられている。スペーサ60側に位置するギアボックス64Aの開口端には、軸方向に延びるスリット64bが、周方向に間隔をあけて複数設けられている。これらのスリット64bによって、弾性的に変形が可能な複数の舌片64cが形成されている。そのうちの所定の舌片64cには、係止爪60dが係止する係止孔64dが設けられている。
【0041】
ダンパ66A,66Bはゴム製であり、収容部21内に配置した部品に対する衝撃及び振動を緩衝する。そのうち、ダンパ66Aはギアボックス64Aのカバー部22側の端に配置され、ダンパ66Bはスペーサ60の接続端20a側の端に配置されている。ダンパ66A,66Bの最大外径は収容部21の内径と同一に形成され、一体化したギア機構44、磁気抵抗機構50及びスペーサ60を、収容部21に対して非接触状態に保持する。
【0042】
グロメット68Aは、収容部21内のスペーサ60(ダンパ66B)と軸端部材23Aの間に配置され、収容部21と軸端部材23Aの間からの浸水を防止する。グロメット68Aは、収容部21の内面に圧接される環状のシール片68aを備える。
【0043】
このように構成した支持部材15Aでは、ドア3の開閉によりスピンドル34が回転すると、ギア機構44を介して磁気抵抗機構50の回転部材52が回転する。これにより、前述のように回転部材52(磁石55A,55B)と固定部材(磁性体)57との間に生じる磁気抵抗によって、ギア機構44を介してスピンドル34に負荷を与え、スピンドル34の回転速度を低減できる。よって、第1ハウジング20に対する第2ハウジング25の急激な進退を防止できるため、車体2に対するドア3の急激な開閉を防止できる。
【0044】
また、磁気抵抗機構50の第1軸部54bをギア機構44の第2接続部45Bに接続しているため、第1軸部54bを第1接続部45Aに接続した場合と比較して、スピンドル34に多くの負荷を与えることができる。具体的には、ギア機構44は、第1接続部45Aの回転速度を第2接続部45Bの回転速度よりも遅くする構成である。よって、ギア機構44のギア比に応じて、回転部材52の回転数はスピンドル34の回転数よりも多くなる。例えば、ギア機構44のギア比が16倍の場合、スピンドル34が1回転する間に回転部材52は16回転する。これに対して、スピンドル34を磁気抵抗機構50に接続し、磁気抵抗機構50を第1接続部45Aに接続した場合、スピンドル34の回転数と回転部材52の回転数とは同じになる。回転部材52が1回転する間に生じる磁気抵抗は同じである。そのため、第2接続部45Bに磁気抵抗機構50を接続した場合、第1接続部45Aに磁気抵抗機構50を接続した場合よりも、ギア機構44のギア比に応じてスピンドル34に多くの負荷を与えることができる。よって、車体2に対するドア3の急激な開閉を効果的に防止できる。
【0045】
ガススプリングと比較して、非接触式の磁気抵抗機構50は温度や環境の変化に影響を受け難い。しかも、磁気抵抗機構50の磁気抵抗の大きさは、磁石55A,55Bの着磁力及び磁石55A,55Bの軸方向の寸法(全長)の変更等によって、容易に調整できる。よって、スピンドル34に対して定められた負荷を安定して付与できる。
【0046】
収容部21は、磁気抵抗機構50の軸方向の寸法よりも広い空間からなる配置部21cを備え、この配置部21cにスペーサ60が配置されているため、収容部21内にギア機構44をガタツキなく収容できる。また、スペーサ60に磁気抵抗機構50の取付部60fを設けているため、磁気抵抗機構50よりも大きな空間からなる配置部21cであっても、磁気抵抗機構50を確実に取り付けることができる。
【0047】
(第2実施形態)
図8及び
図9は第2実施形態のドア支持装置10に用いる支持部材15Bを示す。第2実施形態のドア支持装置10には、
図1において左側に第1実施形態と同一の支持部材(第1支持部材)15Aが用いられ、
図1において右側に
図8に示す支持部材(第2支持部材)15Bが用いられている。
図8を参照すると、支持部材15Bは、電動モータ70を備え、ドア3の開閉による従動だけでなく、電動モータ70の駆動によって伸縮が可能な電動式である。従動式の支持部材15Aと電動式の支持部材15Bとを用いた第2実施形態のドア支持装置10は、ドア3の自動開閉が可能なドア開閉装置を構成する。
【0048】
図8に示すように、支持部材15Bは、第1ハウジング20、第2ハウジング25、伸縮機構30、及びギア機構44を備える。
図2を併せて参照すると、これらは、従動式の支持部材15Aにも用いられる共通部品である。つまり、従動式の支持部材15Aと電動式の支持部材15Bの基本構成は同一である。但し、ギア機構44には、ケース48Aと異なるケース48Bが用いられる。
【0049】
図8及び
図9に示すように、支持部材15Bの収容部21には、支持部材15Aと同様の配置部21cが形成されている。この配置部21cには、電動モータ70の他に、クランプ71、ギアボックス64B、ダンパ66A,66B、及びグロメット68Bが配置されている。そのうち、ダンパ66A,66Bは、従動式の支持部材15Aと共通の部品である。
【0050】
電動モータ70は、正転及び逆転が可能な駆動手段であり、車両1のECU(Electronic Control Unit)に電気的に接続されている。電動モータ70は、モータケースの軸方向の一端から突出した出力軸70aを備える。出力軸70aは、ギア機構44の第2接続部45Bに機械的に接続されている。
【0051】
クランプ71は金属製で、電動モータ70をギア機構44に連結するために設けられている。クランプ71は円環状の基板部71aを備え、この基板部71aが電動モータ70の出力軸70a側の端面にネジ72によって固定される。基板部71aの外周には、軸方向に突出して径方向に弾性的な変形が可能な弾性片71bが、周方向に間隔をあけて複数(8個)設けられている。これらには、ギア機構44のケース48Bに設けられた係止爪48bが係止する係止孔71cと、ケース48Bの位置決め凸部48cに嵌まる位置決め溝71dとが、交互に設けられている。クランプ71をネジ止めした電動モータ70をギア機構44の第2接続部45B側に配置し、ケース48Bの外側にクランプ71を嵌め込むことで、電動モータ70とギア機構44を一体化できる。
【0052】
ギアボックス64Bの軸方向の寸法は、ギアボックス64Aの軸方向の寸法よりも短い。具体的には、ギアボックス64Bの軸方向の寸法は、ギア機構44の第1接続部45Aからケース48Bの中間部分まで、外周を覆うことが可能な大きさである。ギアボックス64Bは、ギアボックス64Aと同様に貫通孔64a、スリット64b、舌片64c及び係止孔64dを備えるが、係止孔64dにはケース48Bに設けられた係止爪48dが係止する点でギアボックス64Aと相違する。
【0053】
ダンパ66Aはギアボックス64Bに配置され、ダンパ66Bは電動モータ70の接続端20a側の端に配置されている。ダンパ66A,66Bは、一体化したギア機構44及び電動モータ70を、収容部21に対して非接触状態に保持する。
【0054】
グロメット68Bは、電動モータ70に接続されたリード線を水密に導出する筒状の導出部68bを備える点で、グロメット68Aと相違する。なお、支持部材15Bに用いられる軸端部材23Bは、導出部68bに対応する孔(図示せず)を備える点で、支持部材15Aに用いられる軸端部材23Aと相違する。
【0055】
このように構成した支持部材15Bの電動モータ70は、ECUの指令によって駆動される。電動モータ70が開駆動されると、ギア機構44によって減速されてスピンドル34が正転し、回転機構37を介して第2ハウジング25が第1ハウジング20に対して進出する。電動モータ70が閉駆動されると、ギア機構44によって減速されてスピンドル34が逆転し、回転機構37を介して第2ハウジング25が第1ハウジング20に対して後退する。その結果、車体2に対してドア3が開閉する。
【0056】
ドアラッチ装置の操作によってドア3の係止が解除された場合、又は開位置のドア3が手動で閉じられる場合、支持部材15Aと同様に、ドア3の開閉によりスピンドル34が回転し、ギア機構44を介して電動モータ70が従動回転する。これにより、電動モータ70が回転抵抗になり、ギア機構44を介してスピンドル34に負荷を与え、スピンドル34の回転速度を低減できる。よって、第1ハウジング20に対する第2ハウジング25の急激な進退を防止できるため、車体2に対するドア3の急激な開閉を防止できる。
【0057】
従動式の支持部材15Aと電動式の支持部材15Bとは、共通の第1ハウジング20、第2ハウジング25、ギア機構44、スピンドル34、回転機構37、及びコイルスプリング32を備えている。そして、第1ハウジング20の配置部21cには、磁気抵抗機構50と電動モータ70を選択的に配置できる。つまり、磁気抵抗機構50及び電動モータ62のいずれを用いるかによって、ドア3の支持のみが可能な従動式及びドア3の自動開閉が可能な電動式のいずれかに設定できる。
【0058】
従動式の支持部材15Aと電動式の支持部材15Bの基本構成部品は共通しているため、異なる部品を用いる場合と比較して、製造コストを低減できる。しかも、2個の支持部材のうち、一方を従動式の支持部材15Aとし、他方を電動式の支持部材15Bとした場合、これらの基本構成部品は共通しているため、ドア3を開閉制御する際のバランス調整が容易である。
【0059】
より具体的には、支持部材15A,15Bは、同じコイルスプリング32を内蔵した共通の第2ハウジング25を備え、支持部材15A,15Bの両方でほぼ同じ荷重でドア3を保持できるため、ドア3の変形を防止できる。しかも、従動式支持部材15Aの磁気抵抗機構50による抵抗を、電動式支持部材15Bのモータ70のコギングトルクによる抵抗と同等に設定することにより、支持部材15A,15Bの両方でほぼ同じ荷重でドア3を保持できるため、ドア3の変形を効果的に防止できる。
【0060】
なお、本発明の車両用ドア支持装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、
図10に示すように、磁気抵抗機構50を構成する磁石55Aと磁石55Bは、6個であってもよく、その数は必要に応じて変更可能である。但し、磁石55Aと磁石55Bの数は、2以上の偶数とすることが好ましい。また、磁石55Aと磁石55Bは、芯材53の周方向に間隔をあけて配置してもよい。
【0062】
引き続いて
図10に示すように、磁気抵抗機構50の固定部材57は、外面を多角形状(図示では六角形状)としてもよく、その外面形状は必要に応じて変更が可能である。また、芯材53の外面形状と磁石55A,55Bの内面形状も、必要に応じて変更が可能である。
【0063】
固定部材57は、全体を磁性材料(磁性体)によって形成したが、少なくとも外周部は非磁性材料(非磁性体)によって形成してもよい。また、磁気抵抗機構50には電磁石を用いてもよい。
【0064】
図11に示すように、磁気抵抗機構50は、固定部材57が磁石55A,55Bを含み、回転部材52が磁性体を含むようにしてもよい。
【0065】
図12に示すように、回転部材52は、インサート成形によって芯材53、軸部材54、及び磁石55A,55Bを一体に設けた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
2 車体
3 ドア
10 車両用ドア支持装置
15A 支持部材(第1支持部材及び第2支持部材)
15B 支持部材(第2支持部材)
20 第1ハウジング
20a 接続端(第1接続端)
20b 先端
21 収容部
21a 端部
21b 端部
21c 配置部
22 カバー部
23A,23B 軸端部材
25 第2ハウジング(可動部材)
25a 接続端(第2接続端)
26 軸端部材
30 伸縮機構
32 コイルスプリング
34 スピンドル
34a 基端
35 軸受
37 回転機構
38 スピンドルナット
39 プッシュロッド
40 ガイド管
44 ギア機構
45A 第1接続部
45B 第2接続部
46 太陽歯車
47 遊星歯車
48A,48B ケース
48a 位置決め凹部
48b 係止爪
48c 位置決め凸部
48d 係止爪
50 磁気抵抗機構
52 回転部材
53 芯材
53a 貫通孔
53b 凹部
54 軸部材
54a フランジ部
54b 第1軸部
54c 第2軸部
55A,55B 磁石
57 固定部材
57a 切欠部
58A,58B 磁化された部分
60 スペーサ
60a 第1端
60b 第2端
60c 位置決め凸部
60d 係止爪
60e 段部
60f 取付部
60g 仕切壁
60h 軸受部
60i 凸部
64A,64B ギアボックス
64a 貫通孔
64b スリット
64c 舌片
64d 係止孔
66A,66B ダンパ
68A,68B グロメット
68a シール片
68b 導出部
70 電動モータ
70a 出力軸
71 クランプ
71a 基板部
71b 弾性片
71c 係止孔
71d 位置決め溝
72 ネジ