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特許7447324ロータリーエンコーダ、及びロータリーエンコーダシステム、並びにロータリーエンコーダを用いた回転角度検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ロータリーエンコーダ、及びロータリーエンコーダシステム、並びにロータリーエンコーダを用いた回転角度検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/244 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
G01D5/244 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023016888
(22)【出願日】2023-02-07
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310017828
【氏名又は名称】株式会社マグネスケール
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰彦
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-184555(JP,A)
【文献】特表2008-539407(JP,A)
【文献】特開平11-325972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物である回転体の回転軸に接続され、中心軸が前記回転軸に対して平行に設けられる被検出面としての円筒面を有し、該円筒面の周方向に、相対角度情報を示す相対角度トラックが形成されたロータリースケールと、
前記ロータリースケールの前記円筒面と間隔をあけて対向するように設けられ、前記円筒面に形成された相対角度トラックを検出して、該相対角度トラックに応じた検出信号であって、前記間隔の大きさに応じて変化する検出信号を出力するセンサヘッドと、
前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの回転角度を算出する第1の角度演算部と、を備えたロータリーエンコーダであって、
更に、前記センサヘッドからの検出信号に基づいて算出される各回転角度における、前記間隔の大きさに応じた角度誤差を記憶する角度誤差記憶部と、
前記角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、前記第1の角度演算部によって算出される回転角度を補正する角度補正部と、を備え
前記角度誤差記憶部に記憶される角度誤差は、前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係、並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差である、ロータリーエンコーダ。
【請求項2】
前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係、並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差を算出して前記角度誤差記憶部に格納する角度誤差演算部を、更に備えた請求項1記載のロータリーエンコーダ。
【請求項3】
前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係を記憶する誤差情報記憶部を更に備え、
前記角度誤差演算部は、前記誤差情報記憶部に記憶された前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係を参照して、前記角度誤差を算出するように構成された請求項2記載のロータリーエンコーダ。
【請求項4】
前記角度誤差演算部は、前記角度誤差記憶部に格納される角度誤差を、前記ロータリースケールの1回転毎に算出した新たな角度誤差で置き換えることによって、更新するように構成された請求項3記載のロータリーエンコーダ。
【請求項5】
前記ロータリースケールは、前記円筒面に、前記相対角度情報を示す相対角度トラックに隣接して、絶対角度情報を示す絶対角度トラックが形成され、
前記センサヘッドは、前記相対角度トラックに加えて、前記絶対角度トラックを検出して、該絶対角度トラックに応じた検出信号を出力するように構成されるとともに、
更に、前記センサヘッドから出力される前記絶対角度トラックに応じた検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの絶対角度位置を算出する第2の角度演算部を備えてなり、
前記角度補正部は、前記第2の角度演算部によって算出された絶対角度位置、及び前記第1の角度演算部によって算出された回転角度に基づいて絶対角度を算出するとともに、前記角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、前記第1の角度演算部によって算出される回転角度を補正した絶対角度情報を出力するように構成された請求項1から4の何れか1つに記載のロータリーエンコーダ。
【請求項6】
検出対象物である回転体の回転軸に接続され、中心軸が前記回転軸に対して平行に設けられる被検出面としての円筒面を有し、該円筒面の周方向に、相対角度情報を示す相対角度トラックが形成されたロータリースケール、
前記ロータリースケールの前記円筒面と間隔をあけて対向するように設けられ、前記円筒面に形成された相対角度トラックを検出して、該相対角度トラックに応じた検出信号であって、前記間隔の大きさに応じて変化する検出信号を出力するセンサヘッド、
並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの回転角度を算出する第1の角度演算部を備えたロータリーエンコーダと、
前記センサヘッドからの検出信号に基づいて算出される各回転角度における、前記間隔の大きさに応じた角度誤差を記憶する角度誤差記憶部と、
前記角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、前記ロータリーエンコーダの第1の角度演算部によって算出された回転角度を補正する角度補正部とから構成され
前記角度誤差記憶部に記憶される角度誤差は、前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係、並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差である、ロータリーエンコーダシステム。
【請求項7】
前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係、並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差を算出して前記角度誤差記憶部に格納する角度誤差演算部を、更に備えた請求項6記載のロータリーエンコーダシステム。
【請求項8】
前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係を記憶する誤差情報記憶部を更に備え、
前記角度誤差演算部は、前記誤差情報記憶部に記憶された前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係を参照して、前記角度誤差を算出するように構成された請求項7記載のロータリーエンコーダシステム。
【請求項9】
前記角度誤差演算部は、前記角度誤差記憶部に格納される角度誤差を、前記ロータリースケールの1回転毎に算出した新たな角度誤差で置き換えることによって、更新するように構成された請求項8記載のロータリーエンコーダシステム。
【請求項10】
前記ロータリーエンコーダは、
その前記ロータリースケールが、前記円筒面に、前記相対角度情報を示す相対角度トラックに隣接して形成された、絶対角度情報を示す絶対角度トラックを有し、
前記センサヘッドは、前記相対角度トラックに加えて、前記絶対角度トラックを検出して、該絶対角度トラックに応じた検出信号を出力するように構成されるとともに、
更に、前記センサヘッドから出力される前記絶対角度トラックに応じた検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの絶対角度位置を算出する第2の角度演算部を備えてなり、
前記角度補正部は、前記第2の角度演算部によって算出された絶対角度位置、及び前記第1の角度演算部によって算出された回転角度に基づいて絶対角度を算出するとともに、前記角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、前記第1の角度演算部によって算出される回転角度を補正した絶対角度情報を出力するように構成された請求項6から9の何れか1つに記載のロータリーエンコーダシステム。
【請求項11】
検出対象物である回転体の回転軸に接続され、中心軸が前記回転軸に対して平行に設けられる被検出面としての円筒面を有し、該円筒面の周方向に、相対角度情報を示す相対角度トラックが形成されたロータリースケールと、該ロータリースケールの前記円筒面と間隔をあけて対向するように設けられ、前記円筒面に形成された相対角度トラックを検出して、該相対角度トラックに応じた検出信号であって、前記間隔の大きさに応じて変化する検出信号を出力するセンサヘッドと、該センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの回転角度を算出する角度演算部とを備えたロータリーエンコーダを用いて、前記回転体の回転角度を検出する方法であって、
前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係、並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差を、予め算出する角度誤差算出工程と、
前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて算出される前記ロータリースケールの回転角度を、前記誤差算出工程で算出された対応する角度位置における角度誤差に基づいて補正する角度補正工程と、を備えた回転角度検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物である回転体の回転軸に接続されて、当該回転体の回転軸回りの回転角度を検出するロータリーエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記ロータリーエンコーダとして、例えば、被検出面としての円筒面の周方向に、目盛りとなる相対角度情報を示す相対角度トラックが形成されたロータリースケールと、このロータリースケールと対向するように設けられて、前記相対角度トラックを検出し、当該相対角度トラックに応じた検出信号を出力するセンサヘッドと、このセンサヘッドから出力された検出信号に基づいて、回転角度を算出する角度演算部とを備えたロータリーエンコーダが知られている。
【0003】
このような構成を備えたロータリーエンコーダは、そのロータリースケールを、検出対象物である回転体の回転軸に、これと同軸となるように連結した状態で使用され、ロータリースケールが回転体とともに回転することによって、当該回転体の回転角度を検出する。
【0004】
ところが、ロータリースケールを、回転体の回転軸に対して高精度に同軸となるように連結するのは困難であり、厳密には、ロータリースケールは回転体の回転軸に対して若干偏芯した状態で連結される。このため、ロータリースケールが1回転する間に、当該回転体の回転角度と検出信号波数の不一致が生じ、角度演算部によって算出される回転角度に誤差が含まれることになる。
【0005】
また、ロータリースケールは、その検出面たる円筒面が変形することがあり、このような変形によっても、当該回転体の回転角度と検出信号波数の不一致が生じることになるため、角度演算部によって算出される回転角度に誤差が含まれることになる。
【0006】
そこで、従来、下記特許文献1に開示されるように、例えば、2つセンサヘッドを用い、これらを、ロータリースケールに対して、その回転方向における位相が0°と180°となる回転角度位置にそれぞれ配設し、各センサヘッドから出力される検出信号に基づいて算出される回転角度を平均することで、ロータリースケールの偏芯に起因した1次誤差成分を軽減させる手法が提案されている。また、この特許文献1に開示された手法では、6つのセンサヘッドを用いることにより、32次までの誤差成分を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6386368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1に開示される手法では、検出精度が向上するというメリットがある反面、使用するセンサヘッドの組数によって、補正できる誤差の次数が決定されるため、測定精度をより向上させるには、より多くのセンサヘッドを用いる必要があり、このため、その構造が複雑になり、また、ロータリーエンコーダの製造コストが上昇するというデメリットがある。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、使用するセンサヘッドの増加を招くことなく、ロータリースケールの偏芯や変形によって生じる検出誤差を補正することが可能なロータリーエンコーダ、及びロータリーエンコーダシステム、並びにロータリーエンコーダを用いた回転角度検出方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、
検出対象物である回転体の回転軸に接続され、中心軸が前記回転軸に対して平行に設けられる被検出面としての円筒面を有し、該円筒面の周方向に、相対角度情報を示す相対角度トラックが形成されたロータリースケールと、
前記ロータリースケールの前記円筒面と間隔をあけて対向するように設けられ、前記円筒面に形成された相対角度トラックを検出して、該相対角度トラックに応じた検出信号であって、前記間隔の大きさに応じて変化する検出信号を出力するセンサヘッドと、
前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの回転角度を算出する第1の角度演算部と、を備えたロータリーエンコーダであって、
更に、前記センサヘッドからの検出信号に基づいて算出される各回転角度における、前記間隔の大きさに応じた角度誤差を記憶する角度誤差記憶部と、
前記角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、前記第1の角度演算部によって算出される回転角度を補正する角度補正部と、を備えたロータリーエンコーダに係る。
【0011】
この態様(第1の態様)のロータリーエンコーダは、そのロータリースケールが、検出対象物である回転体の回転軸に連結された状態で使用され、ロータリースケールが回転体とともに回転することにより、ロータリースケールの円筒面と対向したセンサヘッドから、相対角度トラックに応じ、且つ円筒面との間隔の大きさに応じて変化する検出信号が連続的に出力される。
【0012】
そして、センサヘッドから連続して出力される検出信号は第1の角度演算部により処理され、この検出信号に基づいて、ロータリースケールの回転角度、即ち、回転体の回転角度が順次算出され、算出された回転角度が一次角度情報として当該第1の角度演算部から出力される。ついで、第1の角度演算部から連続して出力される一次角度情報は角度補正部によって処理され、当該角度補正部は、角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差を参照して、第1の角度演算部から入力された回転角度に応じた角度誤差を認識し、認識した角度誤差に基づいて、第1の角度演算部から連続して入力される回転角度を順次補正する。
【0013】
このように、このロータリーエンコーダによれば、ロータリースケールとセンサヘッドとの間隔の大きさに応じた角度誤差を補正することができるので、ロータリースケールが回転体の回転軸に対して偏芯や変形した状態で連結される、或いは、ロータリースケールの検出面たる円筒面が経時的に偏芯や変形することによって、ロータリースケールが1回転する間に、ロータリースケールとセンサヘッドとの間の隙間が変動する状態となっても、ロータリースケール、即ち検査対象の回転体の回転角度を予定された高精度で検出することができる。
【0014】
また、このロータリーエンコーダによれば、従来のようにセンサヘッドの数を増やすことなく、回転角度を高精度で検出することができるので、その構造が複雑になることもなく、また、その製造コストが大きく増加するのを防ぐことができる。
【0015】
上記第1の態様のロータリーエンコーダにおいて、更に、ロータリースケールとセンサヘッドとの間の間隔(隙間)の大きさとセンサヘッドから出力される検出信号の大きさとの相関関係、並びにセンサヘッドから出力される検出信号に基づいて、この該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差を算出して角度誤差記憶部に格納する角度誤差演算部を設けた態様(第2の態様)としてもよい。
【0016】
或いは、この第2の態様のロータリーエンコーダにおいて、更に、前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係を記憶する誤差情報記憶部を設け、前記角度誤差演算部は、前記誤差情報記憶部に記憶された前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係を参照して、前記角度誤差を算出するように構成された態様(第3の態様)としてもよい。
【0017】
また、上記第3の態様のロータリーエンコーダにおいて、前記角度誤差演算部は、前記角度誤差記憶部に格納される角度誤差を、前記ロータリースケールの1回転毎に算出した新たな角度誤差で置き換えることによって、更新するように構成されていてもよい。この態様(第4の態様)によれば、角度補正部において、第1の角度演算部から出力される回転角度を、最新の角度誤差を用いて補正することができるので、ロータリースケール(検査対象の回転体)の回転角度を経時的な精度劣化を伴うことなく高精度に検出することができる。
【0018】
また、上記第1から第4の態様のロータリーエンコーダにおいて、
前記ロータリースケールは、前記円筒面に、前記相対角度情報を示す相対角度トラックに隣接して、絶対角度情報を示す絶対角度トラックが形成され、
前記センサヘッドは、前記相対角度トラックに加えて、前記絶対角度トラックを検出して、該絶対角度トラックに応じた検出信号を出力するように構成されるとともに、
更に、前記センサヘッドから出力される前記絶対角度トラックに応じた検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの絶対角度位置を算出する第2の角度演算部を備えてなり、
前記角度補正部は、前記角度誤差記憶部に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、前記第1の角度演算部によって算出される回転角度を補正するとともに、補正した回転角度、及び前記第2の角度演算部により算出された絶対角度に基づいて、絶対角度情報を出力するように構成された態様を採ることができる。この態様(第5の態様)のロータリーエンコーダによれば、ロータリースケール(検出対象の回転体)の絶対角度を高精度に検出することができる。
【0019】
また、上記第1から第4の態様では、前記角度誤差記憶部、角度補正部、角度誤差演算部及び誤差情報記憶部を、前記ロータリースケール、センサヘッド及び第1の角度演算部とともに、ロータリーエンコーダとして一体的に設けたが、このような構成ではなく、ロータリースケール、センサヘッド及び第1の角度演算部からロータリーエンコーダを構成し、前記角度誤差記憶部、角度補正部、角度誤差演算部及び誤差情報記憶部をロータリーエンコーダとは別体に設けて、これらをシステム(ロータリーエンコーダシステム)として構成してもよい。同様に、第5の態様において、ロータリースケール、センサヘッド、第1の角度演算部及び第2の角度演算部からロータリーエンコーダを構成し、前記角度誤差記憶部、角度補正部、角度誤差演算部及び誤差情報記憶部をロータリーエンコーダとは別体に設けて、これらをシステム(ロータリーエンコーダシステム)として構成してもよい。これらの態様によれば、既設のロータリーエンコーダを用いてシステムを構築することができ、既設のロータリーエンコーダを用いて高精度な角度検出を実現することができる。
【0020】
また、本発明は、検出対象物である回転体の回転軸に接続され、中心軸が前記回転軸に対して平行に設けられる被検出面としての円筒面を有し、該円筒面の周方向に、相対角度情報を示す相対角度トラックが形成されたロータリースケールと、該ロータリースケールの前記円筒面と間隔をあけて対向するように設けられ、前記円筒面に形成された相対角度トラックを検出して、該相対角度トラックに応じた検出信号であって、前記間隔の大きさに応じて変化する検出信号を出力するセンサヘッドと、該センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、前記ロータリースケールの回転角度を算出する角度演算部とを備えたロータリーエンコーダを用いて、前記回転体の回転角度を検出する方法であって、
前記間隔の大きさと前記検出信号の大きさとの相関関係、並びに前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて、該検出信号から算出される各回転角度における前記間隔の大きさに応じた角度誤差を、予め算出する誤差算出工程と、
前記センサヘッドから出力される検出信号に基づいて算出される前記ロータリースケールの回転角度を、前記誤差算出工程で算出された対応する角度位置における角度誤差に基づいて補正する補正工程と、を備えた回転角度検出方法に係る。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るロータリーエンコーダによれば、ロータリースケールとセンサヘッドとの間隔の大きさに応じた角度誤差を補正することができるので、ロータリースケールが回転体の回転軸に対して偏芯や変形した状態で連結される、或いは、ロータリースケールの検出面たる円筒面が経時的に偏芯や変形することによって、ロータリースケールが1回転する間に、ロータリースケールとセンサヘッドとの間の隙間が変動する状態となっても、ロータリースケール、即ち検査対象の回転体の回転角度を予定された高精度で検出することができる。
【0022】
また、このロータリーエンコーダによれば、従来のようにセンサヘッドの数を増やすことなく、回転角度を高精度で検出することができるので、その構造が複雑になることはなく、また、その製造コストが大きく増加するのを防ぐことができ、ひいては、消費エネルギーが増大するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係るロータリーエンコーダの主要な構成を示したブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るロータリーエンコーダのセンサヘッドとロータリースケールとの関係を示した説明図である。
図3】第1の実施形態に係るロータリーエンコーダのセンサヘッドとロータリースケールとの関係を示した説明図である。
図4】センサヘッドとロータリースケールとのギャップと、センサヘッドからの出力信号の関係を示した説明図である。
図5】センサヘッドから出力される検出信号の一例を示した説明図である。
図6】センサヘッドとロータリースケールとのギャップの変動によって生じる角度誤差を説明するための説明図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るロータリーエンコーダの主要な構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
1.第1の実施形態
まず、図1に示した第1の実施形態について説明する。図1に示すように、本例のロータリーエンコーダ1は、ロータリースケール2、センサヘッド3、第1の角度演算部である相対角度演算部4、誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6、角度誤差記憶部7及び角度補正部8を備えている。尚、本例のロータリーエンコーダ1は、磁気式のロータリーエンコーダである。
【0026】
また、本例において、前記相対角度演算部4、角度誤差演算部6及び角度補正部8はロジック回路などの電子回路から構成され、また、前記誤差情報記憶部5及び角度誤差記憶部7は記憶回路などの電子回路から構成され、これら相対角度演算部4、角度誤差演算部6、角度補正部8、角度誤差記憶部7及び誤差情報記憶部5は、前記センサヘッド3を含めて一つの電子ディバイスとして構築されている。
【0027】
前記ロータリースケール2は、被検出面としての円筒状をした外周面(円筒面)2aを有する円筒体であって、当該外周面2aの中心軸に沿った方向における中央部には、その周方向に、相対角度情報を示す目盛りとしての相対角度トラック2bが形成されている。この相対角度トラック2bは、図2に示すように、等角度ピッチで交互に連続的に記録されたS極とN極の磁場から構成される。このロータリースケール2は、使用に際し、その中心軸2cが、検出対象物である回転体の回転軸に対して同軸となるように連結される。
【0028】
図1に示すように、前記センサヘッド3は、ロータリースケール2の接線方向に対して平行に配設され、ロータリースケール2の相対的な回転角度情報を検出信号として出力する。このセンサヘッド3は、図2に示すように、前記相対角度トラック2bと対向するようにこれに沿って等間隔に順次配設された複数(本例では4個)の磁気センサ3a-3d、並びに磁気センサ3a,3cからの出力信号の差分を取り且つこれを増幅して出力する差動増幅器3e、及び磁気センサ3b,3dからの出力信号の差分を取り且つこれを増幅して出力する差動増幅器3fを備えている。
【0029】
磁気センサ3a-3dは、磁界の変化を検出する磁気抵抗素子であり、相対角度トラック2bが回転することによって生じる磁界の変動(サイン曲線を描く変動)を電気信号(電圧信号)に変換して、検出信号として出力する。そして、磁気センサ3a,3cからの出力された電圧信号は、差動増幅器3eによりそのDC成分がキャンセルされ、また、磁気センサ3b,3eからの出力された電圧信号は、差動増幅器3fによりそのDC成分がキャンセルされて、図5に示すようなsin/cos信号である電圧信号(検出信号)として、それぞれ差動増幅器3e,3fから出力される。尚、一般的に、差動増幅器3eから出力される検出信号はA相、差動増幅器3fから出力される検出信号はB相と称される。
【0030】
前記相対角度演算部4は、差動増幅器3e,3fから出力されるA相及びB相の電圧信号を処理して、ロータリースケール2の回転方向を認識するとともに、A相及びB相の電圧信号を用いて相対的な回転角度を算出し、また、例えば、予め定められた角度位置(例えば、回転を開始した角度位置)を原点としたロータリースケール2の現在の回転角度を算出して、算出した回転角度を角度補正部8に出力する。
【0031】
前記誤差情報記憶部5は、前記センサヘッド3、正確には前記磁気センサ3a-3dとロータリースケール2の外周面2aとの間の間隔(ギャップ)の大きさと、センサヘッド3、正確には前記差動増幅器3e,3fから出力される検出信号の大きさ(図5における最大値と最小値との差分)との相関関係をデータテーブルの形式で記憶する。
【0032】
図3に示すように、ロータリースケール2は、その外周面2aが経時的に偏芯や変形することがあり、この場合には、前記センサヘッド3とロータリースケール2の外周面2aとの間の間隔(ギャップ)が、ロータリースケール2が1回転する間に変動する状態となる。或いは、ロータリースケール2が検出対象の回転体の回転軸に対して偏芯や変形した状態で連結される場合にも、ロータリースケール2が1回転する間に前記ギャップが変動する状態となる。
【0033】
そして、ロータリースケール2が1回転する間に前記ギャップが変動する状態になると、前記センサヘッド3から出力される検出信号(角度情報)に角度誤差が含まれることになる。この角度誤差が生じる原理については後述する。また、前記センサヘッド3とロータリースケール2とのギャップと、センサヘッド3から出力される検出信号(出力信号)の大きさとの関係は、例えば、図4に示すような関係を有しており、センサヘッド3から出力される検出信号は、センサヘッド3とロータリースケール2とのギャップに応じて、図5に示すように変動する。即ち、ギャップが大きくなると検出信号の大きさが小さくなり、逆に、ギャップが小さくなると検出信号の大きさが大きくなる。したがって、センサヘッド3から出力される検出信号の大きさからギャップの大きさを推定することができる。
【0034】
このような相関関係は、例えば、予め実験的に取得することができる。そして、得られた相関データを基に、補間処理によって不足のデータを補うことで、所定の分解能を有する相関データを得ることができる。或いは、得られた相関データを基に、出力信号の大きさとギャップとの関係を示す関数式を求め、この関数式を用いて所定の分解能を有する相関データを算出することができる。そして、このようにして取得された相関データが前記誤差情報記憶部5に格納される。
【0035】
前記角度誤差演算部6は、前処理として、センサヘッド3によって検出されるロータリースケール2の各角度位置における、当該センサヘッド3とロータリースケール2との間のギャップに応じた角度誤差を算出し、算出した角度誤差を角度誤差記憶部7に格納する処理を行う。そして、角度誤差記憶部7には、ロータリースケール2の各角度位置に対応した角度誤差がデータテーブルの形式で格納される。
【0036】
ここで、前記センサヘッド3とロータリースケール2との間のギャップの変動がセンサヘッド3から出力される角度情報に影響を与えるその原理について説明する。
【0037】
図6に示すように、回転角度の原点を0°として、ロータリースケール2の外周をn分割した角度位置をθ[rad](i=1,2,・・・,n)とすると、回転角度θと回転角度θi-1との間のロータリースケール2の外周面2aの弧長(周長)ΔLは、以下の数式1によって算出することができる。
(数式1)
ΔL=(r+Δr)×Δθ
但し、i=1のときΔθ=θ、i≧2のときΔθ=θ-θi-1であり、
θ>θi-1、θ=2πである。
また、rは、ロータリースケール2が真円である場合の半径であり(図6において、真円を二点鎖線で示している)、Δrは、回転角度θのときのロータリースケール2の半径方向の変形量であり、ギャップの変化量である。
【0038】
上記数式1から分かるように、ロータリースケール2の外周面2aの周長ΔLは、ロータリースケール2が真円であるときに比べて、その変形量ΔrによってΔr×Δθだけ変動し、この変動分だけセンサヘッド3によって検出される前記相対角度トラック2bの長さが変動するため、センサヘッド3から出力される検出信号に角度誤差が含まれることになるのである。
【0039】
今、ロータリースケール2から出力される検出信号に基づいて、前記相対角度演算部4によって算出される回転角度をθとし、この回転角度θに含まれる角度誤差をdとすると、角度誤差d[rad]は、以下の数式2によって算出することができる。
(数式2)
但し、k=1,2,・・・,n
ここで、ΔLは上記数式1によって算出することができる。
また、
は、原点である回転角度位置が0°から回転角度θまでのロータリースケール2の周長を意味し、
はロータリースケール2の1周分の周長を意味する。
したがって、
は、前記相対角度演算部4によって算出される回転角度θおける、ロータリースケール2の真の回転角度に対応する。
よって、上記数式2によって、相対角度演算部4により算出される回転角度θに含まれる角度誤差dを算出することができる。
【0040】
前記角度誤差演算部6は、上記の前処理として、ロータリースケール2を1回転させることによって前記センサヘッド3から出力される検出信号に基づいて、ロータリースケール2の回転角度θを算出するとともに、前記誤差情報記憶部5に格納された相関データを参照して、センサヘッド3から出力される検出信号に応じたギャップ量を認識した後、認識されたギャップ量に基づいて、ギャップの変化量Δrを算出しながら、順次、数式1及び数式2を用いて回転角度θに含まれる角度誤差dを算出して、回転角度θと角度誤差dとを相互に関連付けてデータテーブルの形式で角度誤差記憶部7に格納する。
【0041】
前記角度補正部8は、前記相対角度演算部4によって算出され、出力される回転角度θを受信し、受信した回転角度θに基づいて前記角度誤差記憶部7を参照して、回転角度θに対応する角度誤差dを認識し、認識した角度誤差dで回転角度θを補正し、補正した回転角度θciを順次出力する。
【0042】
以上のように構成された本例のロータリーエンコーダ1によれば、前記ロータリースケール2が、検出対象物である回転体の回転軸に連結された状態で使用される。そして、まず、前処理として、回転体及びロータリースケール2を1回転させることにより、センサヘッド3から出力される検出信号に基づいて、角度誤差演算部6により、ロータリースケール2の回転角度θが算出されるとともに、誤差情報記憶部5に格納された相関データに基づいて、センサヘッド3から出力される検出信号に応じたギャップ量が認識される。そして、認識されたギャップ量に基づいて、ギャップの変化量Δrが算出され、数式1及び数式2を用いて回転角度θに対応する角度誤差dが算出され、算出された回転角度θ及び角度誤差dが相互に関連付けられてデータテーブルの形式で角度誤差記憶部7に格納される。
【0043】
この後、検出対象物である回転体が予定された使用状態で回転すると、ロータリースケール2の回転に応じてセンサヘッド3から検出信号が出力され、出力された検出信号に基づいて、相対角度演算部4により、回転体、即ちロータリースケール2の回転角度θが順次算出され、角度補正部8により、角度誤差記憶部7が参照されて、回転角度θに対応する角度誤差dが認識され、認識された角度誤差dにより回転角度θが補正され、補正された回転角度θciが角度補正部8から出力される。
【0044】
尚、本例では、このロータリーエンコーダ1の通常の使用状態において、前記角度誤差演算部6は、引き続き、センサヘッド3から出力される検出信号に基づいて、ロータリースケール2の回転角度θを算出するとともに、誤差情報記憶部5に格納された相関データに基づいて、センサヘッド3から出力される検出信号に応じたギャップ量を認識しながら、ギャップの変化量Δrに応じた角度誤差dを算出し、ロータリースケール2が1回転する度に、角度誤差記憶部7に格納される角度誤差dを新たに算出された角度誤差dで置き換えて更新するように構成されている。
【0045】
以上詳述したように、本例のロータリーエンコーダ1によれば、ロータリースケール2とセンサヘッド3との間隔(ギャップ量)の大きさに応じて生じる角度誤差dを補正することができるので、ロータリースケール2が回転体の回転軸に対して偏芯や変形した状態で連結される、或いは、ロータリースケール2の検出面たる外周面(円筒面)2aが経時的に偏芯や変形することによって、ロータリースケール2が1回転する間に、ロータリースケール2とセンサヘッド3との間の隙間が変動する状態になっても、ロータリースケール2、即ち検査対象の回転体の回転角度を予定された高精度で検出することができる。
【0046】
また、このロータリーエンコーダ1によれば、従来のようにセンサヘッドの数を増やすことなく、回転角度を高精度で検出することができるので、その構造が複雑になることもなく、また、その製造コストが大きく増加するのを防ぐことができる。
【0047】
また、このロータリーエンコーダ1の通常の使用状態において、前記角度誤差演算部6により、引き続き、ギャップの変化量Δrに応じた角度誤差dを算出し、ロータリースケール2が1回転する度に、角度誤差記憶部7に格納される角度誤差dを新たに算出された角度誤差dで更新しているので、温度変化や回転数の変化によって生じるロータリースケール2の応力変形などにより、角度誤差dが逐次的に変化する場合でも、当該角度誤差dを正確に補正することができる。
【0048】
2.第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態に係るロータリーエンコーダについて、図7を参照しながら説明する。図7に示すように、このロータリーエンコーダ10は、ロータリースケール12、センサヘッド13、相対角度演算部4、誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6、角度誤差記憶部7、第2の角度演算部である絶対角度演算部14及び角度補正部18を備えている。尚、相対角度演算部4、誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6及び角度誤差記憶部7は、第1の実施形態に係るロータリーエンコーダ1のものと同じ構成であるので、同じ符号を付してその詳しい説明は省略する。このロータリーエンコーダ10も上述したロータリーエンコーダ1と同様、磁気式のロータリーエンコーダである。
【0049】
また、この例においても、前記相対角度演算部4、角度誤差演算部6、絶対角度演算部14及び角度補正部18はロジック回路などの電子回路から構成され、また、前記誤差情報記憶部5及び角度誤差記憶部7は記憶回路などの電子回路から構成され、これら相対角度演算部4、角度誤差演算部6、絶対角度演算部14、角度補正部18、角度誤差記憶部7及び誤差情報記憶部5は、前記センサヘッド3を含めて一つの電子ディバイスとして構築されている。
【0050】
前記ロータリースケール12は、上述のロータリースケール2と同様に、被検出面としての円筒状をした外周面(円筒面)12aを有する円筒体であって、当該外周面12aの中心軸に沿った方向における中央部付近に、その周方向に、上述した相対角度情報を示す目盛りとしての相対角度トラック2bが形成されている。尚、この相対角度トラック2bは上述した第1の実施形態のものと同じ構成である。また、ロータリースケール12には、相対角度トラック2bに平行して、その近傍に、ロータリースケール12の絶対角度を示す原点トラック、またはMコード等のパターンを記録したアブソリュートトラックである磁気情報としての絶対角度トラック12cが形成(記録)されている。図7において、符号12dはロータリースケール12の中心軸である。
【0051】
前記センサヘッド13は、ロータリースケール12の接線方向に対して平行に配設され、ロータリースケール12の相対的な回転角度情報、及び絶対的な回転角度情報を検出信号として出力する。具体的には図示していないが、センサヘッド13は、上述した第1の実施形態におけるセンサヘッド3と同様に、図2に示すような、相対角度トラック2bと対向するようにこれに沿って等間隔に順次配設された複数(本例では4個)の磁気センサ3a-3d、並びに磁気センサ3a,3cからの出力信号の差分を取り且つこれを増幅して出力する差動増幅器3e、及び磁気センサ3b,3dからの出力信号の差分を取り且つこれを増幅して出力する差動増幅器3fを備えている。
【0052】
また、前記センサヘッド13は、前記絶対角度トラック12cと対向するようにこれに沿って配設された磁気センサを備え、原点信号、または絶対角度情報となるMコード等のパターン信号を出力する。
【0053】
前記絶対角度演算部14は、センサヘッド13の絶対角度トラック12cに対向した磁気センサによって検出された信号を基に、原点となる回転角度、または絶対的な回転角度を認識して角度補正部18に送信する。
【0054】
前記角度補正部18は、絶対角度演算部14から送信される原点となる回転角度、及び前記相対角度演算部4から送信される相対的な回転角度に基づいてロータリースケールの一次的な絶対回転角度を算出するとともに、前記角度誤差記憶部7を参照して、相対回転角度θにおけるギャップ変化量Δrに応じた角度誤差dを認識し、認識した角度誤差dを用いて、ロータリースケール12の絶対回転角度を補正し、補正した絶対回転角度を出力する。
【0055】
以上のように、このロータリーエンコーダ10によれば、ロータリースケール12とセンサヘッド13との間隔(ギャップ量)の大きさに応じ生じる角度誤差dを補正することができるので、ロータリースケール12が回転体の回転軸に対して偏芯や変形した状態で連結される、或いは、ロータリースケール12の検出面たる外周面(円筒面)12aが経時的に偏芯や変形することによって、ロータリースケール12が1回転する間に、ロータリースケール12とセンサヘッド13との間の隙間が変動する状態になっても、ロータリースケール12、即ち検査対象の回転体の絶対回転角度を予定された高精度で検出することができる。
【0056】
そして、このようなロータリーエンコーダ10では、ロータリースケール12の製造時に偏芯や変形が存在する状態で目盛りが記録される場合にも、製造時の絶対角度情報に対するギャップ情報を事前に記録し、使用時の絶対角度情報に対するギャップ情報から製造時とのギャップの変化量を求め、それをΔrとして角度誤差dを算出することで、偏芯や変形によって生じる誤差を正確に補正することができる。
【0057】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものでは無い。
【0058】
例えば、上述した第1の実施形態では、前記センサヘッド3、相対角度演算部4、角度誤差演算部6、角度補正部8、角度誤差記憶部7及び誤差情報記憶部5を一つの電子ディバイスとして構築したが、このような構成に限られるものではない。例えば、前記センサヘッド3及び相対角度演算部4を一つの電子ディバイスから構成し、前記誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6、角度誤差記憶部7及び角度補正部8を別の一つの電子ディバイスから構成してもよい。或いは、前記誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6、角度誤差記憶部7及び角度補正部8をCPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成してもよい。この場合、角度誤差演算部6及び角度補正部8は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、誤差情報記憶部5及び角度誤差記憶部7はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。これらの場合、ロータリースケール2、センサヘッド3及び相対角度演算部4がロータリーエンコーダとして観念され、このロータリーエンコーダ、並びに角度誤差演算部6、角度補正部8、角度誤差記憶部7及び誤差情報記憶部5を含めて、ロータリーエンコーダシステムと観念することができる。
【0059】
同様に、上述した第2の実施形態では、前記センサヘッド13、相対角度演算部4、角度誤差演算部6、絶対角度演算部14、角度補正部18、角度誤差記憶部7及び誤差情報記憶部5を一つの電子ディバイスとして構築したが、このような構成に限られるものではない。前記センサヘッド13、絶対角度演算部14及び相対角度演算部4を一つの電子ディバイスから構成し、前記誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6、角度誤差記憶部7及び角度補正部18を別の一つの電子ディバイスから構成してもよい。或いは、前記誤差情報記憶部5、角度誤差演算部6、角度誤差記憶部7及び角度補正部18をCPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成してもよい。この場合、角度誤差演算部6及び角度補正部18は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、誤差情報記憶部5及び角度誤差記憶部7はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。これらの場合、ロータリースケール12、センサヘッド13、絶対角度演算部14及び相対角度演算部4がロータリーエンコーダとして観念され、このロータリーエンコーダ、並びに角度誤差演算部6、角度補正部18、角度誤差記憶部7及び誤差情報記憶部5を含めて、ロータリーエンコーダシステムと観念することができる。
【0060】
また、上述した各実施形態において、誤差情報記憶部5を省略することができる。この場合、前記角度誤差演算部6は、予め取得されたセンサヘッド3,13からの出力信号の大きさとギャップとの関係を示す関数式を用いて、センサヘッド3,13によって検出されるロータリースケール2,12の各回転角度における、当該センサヘッド3,13とロータリースケール2,12との間のギャップの変化量に応じた角度誤差を算出し、算出した角度誤差を角度誤差記憶部7に格納するように構成される。
【0061】
更に、上述した各実施形態において、誤差情報記憶部5及び角度誤差演算部6を省略することができる。角度誤差演算部6における処理と同様の処理によって、例えば、センサヘッド3、13からの出力信号の大きさとギャップとの相関関係、或いは相関関係を示す関数式を用いて、センサヘッド3、13によって検出されるロータリースケール2,12の各回転角度における、当該センサヘッド3,13とロータリースケール2,12との間のギャップの変化量に応じた角度誤差を算出し、算出した角度誤差を角度誤差記憶部7に格納する。
【0062】
また、上述した各実施形態では、磁気式のロータリーエンコーダとしたが、これに限られるものでは無く、本発明は、光学式や静電容量方式、電磁誘導方式など、ギャップに応じて信号出力が変化する各種検出形式のロータリーエンコーダに適用することができ、これらにおいて具現化することができる。
【0063】
繰り返しになるが、上述した実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 ロータリーエンコーダ
2 ロータリースケール
3 センサヘッド
4 相対角度演算部
5 誤差情報記憶部
6 角度誤差演算部
7 角度誤差記憶部
8 角度補正部
10 ロータリーエンコーダ
12 ロータリースケール
13 センサヘッド
14 絶対角度演算部
18 角度補正部
【要約】
【課題】センサヘッドの増加を招くことなく、ロータリースケールの偏芯や変形によって生じる検出誤差を補正することが可能なロータリーエンコーダを提供する。
【解決手段】被検出面としての円筒面2aを有し、その周方向に相対角度トラック2bが形成されたロータリースケール2と、円筒面2aと間隔をあけて設けられ、相対角度トラック2bを検出して検出信号を出力するセンサヘッド3と、センサヘッド3から出力される検出信号に基づいて、ロータリースケール2の回転角度を算出する第1の角度演算部4とを備える。また、ロータリーエンコーダ1は、センサヘッド3からの検出信号に基づいて算出される各回転角度における、間隔の大きさに応じた角度誤差を記憶する角度誤差記憶部7と、角度誤差記憶部7に記憶された各回転角度における角度誤差に基づいて、第1の角度演算部4によって算出される回転角度を補正する角度補正部8とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7