(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20240304BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2023018259
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2018189663の分割
【原出願日】2018-10-05
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】中川 善統
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敦士
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068338(JP,A)
【文献】特開2017-148999(JP,A)
【文献】特開2011-068013(JP,A)
【文献】特開2006-159811(JP,A)
【文献】特開2011-068083(JP,A)
【文献】特開2010-046853(JP,A)
【文献】特開2006-103281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口と、前記吐出口と対応して設けられ、液体を吐出するために使用されるエネルギーを発生させるためのエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子と対向する位置にあり、該吐出口と連通し該吐出口から吐出する該インクを充填しておく圧力室、を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記圧力室を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
前記循環手段を制
御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合に前記循環手段に前記循環経路のインクの循環を行わせ、
前記制御手段は、前記記録動作に応じて行われた循環開始からの循環の経過時間が規定値に満たない場合に、前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間さらに前記循環経路のインクの循環を継続させ、その後循環を停止させ、
前記所定時間は3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記タンクから出たインクが前記記録ヘッドへ供給される過程でインクが流れる第1の流路と、
前記第1の流路を経て前記記録ヘッドに供給され、前記記録ヘッドの前記吐出口とは異なるインクの出口から前記記録ヘッドの外へ出た液体が流れる第2の流路と、
前記第1の流路、前記第2の流路を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
前記循環手段
を制
御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合に前記循環手段に前記循環経路のインクの循環を行わせ、
前記制御手段は、前記記録動作に応じて行われた循環開始からの循環の経過時間が規定値に満たない場合に、前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間さらに前記循環経路のインクの循環を継続させ、その後循環を停止させ、
前記所定時間は3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口と、前記吐出口と対応して設けられ、液体を吐出するために使用されるエネルギーを発生させるためのエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子と対向する位置にあり、該吐出口と連通し該吐出口から吐出する該インクを充填しておく圧力室、を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記圧力室を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間循環を行わせて循環を停止させる
制御をする制御手段と、
前記記録ヘッドの温度を調節する調節手段を備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合、前記温度の調節を開始し、前記記録動作が終了した場合、前記温度の調節を停止した後に、前記制御を行い、
前記所定時間は3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記タンクから出たインクが前記記録ヘッドへ供給される過程でインクが流れる第1の流路と、
前記第1の流路を経て前記記録ヘッドに供給され、前記記録ヘッドの前記吐出口とは異なるインクの出口から前記記録ヘッドの外へ出た液体が流れる第2の流路と、
前記第1の流路、前記第2の流路を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間循環を行わせて循環を停止させる制御をする制御手段と、
前記記録ヘッドの温度を調節する調節手段を備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合、前記温度の調節を開始し、前記記録動作が終了した場合、前記温度の調節を停止した後に、前記制御を行い、
前記所定時間は3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合に前記循環手段に前記循環経路のインクの循環を行わせることを特徴とする請求項
3または4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録動作が終了した後、継続して前記所定時間の前記循環経路のインクの循環を行わせることを特徴とする請求項
5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記記録動作に応じて行われた循環開始からの循環の経過時間が規定値に満たない場合に、前記循環手段に前記所定時間さらに循環を継続させることを特徴とする請求項
6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記規定値および前記所定時間は、前記インクジェット記録装置が設置されている環境に応じて設定されることを特徴とする請求項
1、2、および7のうちのいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記インクジェット記録装置が設置されている環境の温度および湿度のうちの少なくとも一方を取得可能に構成されており、
前記温度および湿度のうちの少なくとも一方に基づいて前記規定値および前記所定時間を設定することを特徴とする請求項
1、2、および8のうちのいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、第一の温度よりも高い第二の温度の方が、前記第一の温度の場合よりも前記規定値および前記所定時間の少なくとも一方が長くなるように設定し、第一の湿度よりも低い第二の湿度の方が、前記第一の湿度の場合よりも前記規定値および前記所定時間の少なくとも一方が長くなるように設定することを特徴とする請求項
1、2、および9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記所定時間は25秒以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドに当接することで吐出口を保護するキャップユニットをさらに備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合、前記キャップユニットを前記記録ヘッドから離間させ、前記記録動作が終了した場合、前記キャップユニットを前記記録ヘッドに当接させるように構成されることを特徴とする請求項1から
11のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記記録ヘッドに当接することで吐出口を保護するキャップユニットをさらに備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合、前記キャップユニットを前記記録ヘッドから離間させ、前記記録動作が終了した場合、前記キャップユニットを前記記録ヘッドに当接させるように構成され、
前記制御手段は、前記規定値として、前記キャップユニットが移動する時間に応じた値を用いて前記制御を行うことを特徴とする請求項
1、2、7、および10のうちのいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記記録ヘッドの温度を調節する調節手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合、前記温度の調節を開始し、前記記録動作が終了した場合、前記温度の調節を停止した後に、前記制御を行うことを特徴とする請求項1
または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記制御手段は、特定のインクを循環する場合に、前記制御を行うことを特徴とする請求項1から
14のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記特定のインクは、ブラックインクであることを特徴とする請求項
15に記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口と、前記吐出口と対応して設けられ、液体を吐出するために使用されるエネルギーを発生させるためのエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子と対向する位置にあり、該吐出口と連通し該吐出口から吐出する該インクを充填しておく圧力室、を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記圧力室を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
を備えるインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記記録動作が行われる場合に前記循環手段に前記循環経路のインクの循環を行わせる工程と、
前記記録動作に応じて行われた循環開始からの循環の経過時間が規定値に満たない場合に、前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間
さらに前記循環経路のインクの循環を継続させ、その後循環を停止させる工程を含み、
前記所定時間は、3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項18】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記タンクから出たインクが前記記録ヘッドへ供給される過程でインクが流れる第1の流路と、
前記第1の流路を経て前記記録ヘッドに供給され、前記記録ヘッドの前記吐出口とは異なるインクの出口から前記記録ヘッドの外へ出た液体が流れる第2の流路と、
前記第1の流路、前記第2の流路を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
を備えるインクジェット記録装置の制御方法であ
って、
前記記録動作が行われる場合に前記循環手段に前記循環経路のインクの循環を行わせる工程と、
前記記録動作に応じて行われた循環開始からの循環の経過時間が規定値に満たない場合に、前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間
さらに前記循環経路のインクの循環を継続させ、その後循環を停止させる工程を含み、
前記所定時間は3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項19】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口と、前記吐出口と対応して設けられ、液体を吐出するために使用されるエネルギーを発生させるためのエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子と対向する位置にあり、該吐出口と連通し該吐出口から吐出する該インクを充填しておく圧力室、を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記圧力室を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
前記記録ヘッドの温度を調節する調節手段と、
を備えるインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間循環を行わせて循環を停止させる制御を行う工程を含み、
前記記録動作が行われる場合、前記温度の調節を開始し、前記記録動作が終了した場合、前記温度の調節を停止した後に、前記制御を行い、
前記所定時間は、3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項20】
インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、
前記タンクから出たインクが前記記録ヘッドへ供給される過程でインクが流れる第1の流路と、
前記第1の流路を経て前記記録ヘッドに供給され、前記記録ヘッドの前記吐出口とは異なるインクの出口から前記記録ヘッドの外へ出た液体が流れる第2の流路と、
前記第1の流路、前記第2の流路を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、
前記記録ヘッドの温度を調節する調節手段と、
を備えるインクジェット記録装置の制御方法であて、
前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間循環を行わせて循環を停止させる制御を行う工程を含み、
前記記録動作が行われる場合、前記温度の調節を開始し、前記記録動作が終了した場合、前記温度の調節を停止した後に、前記制御を行い、
前記所定時間は3秒以上であることを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する吐出口に連通している圧力室のインクを循環させるインク循環系を採用するインクジェット記録装置がある。特許文献1には、このようなインク循環系を採用する記録装置において、画像形成を開始する直前に、インクの循環を開始し、画像形成が終了した時に、インクの循環を停止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術のように、記録動作が行われている間、インクを循環し、記録動作が終了した場合に循環を停止するインクジェット記録装置においては、ジョブの内容に応じて循環時間が変わる。このため、例えば短時間で記録動作が終了するようなジョブが繰り返し入力される場合、短時間の循環動作が繰り返されることになる。短時間の循環動作が繰り返されると、1回の循環動作における循環が十分に行われず、吐出口周辺に生じる増粘インクを完全に流しきれないことがある。このため、短時間の循環動作が繰り返されると、吐出口周辺に生じる増粘インクが徐々に蓄積され、吐出が正常に行われない可能性がある。
【0005】
本発明は、吐出口周辺に生じる増粘インクが蓄積することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るインクジェット記録装置は、インクを収容するタンクから供給されるインクを吐出する吐出口と、前記吐出口と対応して設けられ、液体を吐出するために使用されるエネルギーを発生させるためのエネルギー発生素子と、前記エネルギー発生素子と対向する位置にあり、該吐出口と連通し該吐出口から吐出する該インクを充填しておく圧力室、を備え、前記吐出口からインクを吐出して記録動作を行う記録ヘッドと、前記圧力室を含む循環経路でインクを循環させる循環手段と、前記循環手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記記録動作が行われる場合に前記循環手段に前記循環経路のインクの循環を行わせ、前記制御手段は、前記記録動作に応じて行われた循環開始からの循環の経過時間が規定値に満たない場合に、前記記録動作が終了した後、前記循環手段に所定時間さらに前記循環経路のインクの循環を継続させ、その後循環を停止させ、前記所定時間は3秒以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出口周辺に生じる増粘インクが蓄積することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】記録装置がメンテナンス状態にあるときの図である。
【
図5】インク循環系の流路構成を説明する図である。
【
図7】増粘インクが生じる様子を説明する図である。
【
図8】記録動作が行われる場合のフローチャートである。
【
図12】記録動作が行われる場合のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状等は、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
<<実施形態1>>
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0011】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFによって自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0012】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0013】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0014】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0015】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。即ち、記録ヘッド8は、複数色のインクを吐出可能に構成されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、
図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
【0016】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0017】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。
【0018】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0019】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0020】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0021】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0022】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0023】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0024】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0025】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0026】
記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0027】
図4は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図4における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0028】
一方、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置から
図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0029】
<インク供給ユニット(循環系)>
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置1で採用するインク供給ユニット15を含む図である。
図6を用いて本実施形態のインク循環系の流路構成を説明する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14から供給されたインクを記録ヘッド8(ヘッドユニット)へ供給する。
図6では、1色のインクについての構成を示しているが、実際にはこのような構成が、インク色ごとに用意されている。インク供給ユニット15は、基本的に
図2で示したインク供給制御部209によって制御される。以下、インク供給ユニット15の各構成について説明する。
【0030】
インクは、主にサブタンク151と記録ヘッド8との間を循環する。記録ヘッド8では、画像データに基づいてインクの吐出動作が行われ、吐出されなかったインクが再びサブタンク151に回収される。
【0031】
所定量のインクを収容するサブタンク151は、記録ヘッド8へインクを供給するための供給流路C2と、記録ヘッド8からインクを回収するための回収流路C4とに接続されている。すなわち、サブタンク151、供給流路C2、記録ヘッド8、および回収流路C4によってインクが循環する循環流路(循環経路)が構成される。また、サブタンク151は、空気が流れる流路C0に接続されている。
【0032】
サブタンク151には、複数の電極ピンで構成される液面検知手段151aが設けられている。インク供給制御部209は、これら複数のピン間の導通電流の有無を検知することによって、インク液面の高さ、即ちサブタンク151内のインク残量を把握することができる。減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)は、サブタンク151のタンク内部を減圧するための負圧発生源である。大気開放弁V0は、サブタンク151の内部を大気に連通させるか否かを切り替えるための弁である。
【0033】
メインタンク141は、サブタンク151へ供給されるインクを収容するタンクである。メインタンク141は可撓性部材で構成され、可撓性部材の容積変化によってサブタンク151へインクが充填される。メインタンク141は、記録装置本体に対して着脱可能な構成である。サブタンク151とメインタンク141とを接続するタンク接続流路C1の途中には、サブタンク151とメインタンク141の接続を切り替えるためのタンク供給弁V1が配されている。
【0034】
インク供給制御部209は、液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量より少なくなったことを検知すると、大気開放弁V0、供給弁V2、回収弁V4、およびヘッド交換弁V5を閉じる。またインク供給制御部209は、タンク供給弁V1を開く。この状態において、インク供給制御部209は減圧ポンプP0を作動させる。すると、サブタンク151の内部が負圧となりメインタンク141からサブタンク151へインクが供給される。液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量を超えたことを検知すると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ減圧ポンプP0を停止する。
【0035】
供給流路C2は、サブタンク151から記録ヘッド8へインクを供給するための流路であり、その途中には供給ポンプP1と供給弁V2とが配されている。記録動作中は、供給弁V2を開いた状態で供給ポンプP1を駆動することにより、記録ヘッド8へインクを供給しつつ循環経路においてインクを循環することができる。記録ヘッド8によって単位時間あたりに吐出されるインクの量は画像データに応じて変動する。供給ポンプP1の流量は、記録ヘッド8が単位時間あたりのインク消費量が最大となる吐出動作を行った場合にも対応できるように決定されている。
【0036】
リリーフ流路C3は、供給弁V2の上流側であって、供給ポンプP1の上流側と下流側とを接続する流路である。リリーフ流路C3の途中には差圧弁であるリリーフ弁V3が配される。リリーフ弁は、駆動機構によって開閉されるのではなく、ばね付勢されており、所定の圧に達すると弁が開くように構成されている。例えば、供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量が、記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2の単位時間あたりの流量(インクを引く量)との合計値よりも多い場合は、リリーフ弁V3は、自身に作用する圧力に応じて開放される。これにより、供給流路C2の一部とリリーフ流路C3とで構成される巡回流路が形成される。リリーフ流路C3の構成を設けることにより、記録ヘッド8に対するインク供給量が、記録ヘッド8でのインク消費量に応じて調整され、循環経路内の圧力を画像データによらず安定させることができる。
【0037】
回収流路C4は、記録ヘッド8からサブタンク151へインクを回収するための流路であり、その途中には回収ポンプP2と回収弁V4とが配されている。回収ポンプP2は、循環経路内にインクを循環させる際、負圧発生源となって記録ヘッド8よりインクを吸引する。回収ポンプP2の駆動により、記録ヘッド8内のIN流路80bとOUT流路80cの間に適切な圧力差が生じ、IN流路80bとOUT流路80cの間でインクを循環させることができる。
【0038】
回収弁V4は、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときの逆流を防止するための弁でもある。本実施形態の循環経路では、サブタンク151は記録ヘッド8よりも鉛直方向において上方に配置されている(
図1参照)。このため、供給ポンプP1や回収ポンプP2を駆動していないとき、サブタンク151と記録ヘッド8との水頭差によって、サブタンク151から記録ヘッド8へインクが逆流してしまうおそれがある。このような逆流を防止するため、本実施形態では回収流路C4に回収弁V4を設けている。
【0039】
なお、供給弁V2も、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときに、サブタンク151から記録ヘッド8へのインクの供給を防止するための弁としても機能する。
【0040】
ヘッド交換流路C5は、供給流路C2とサブタンク151の空気室(インクが収容されていない空間)とを接続する流路であり、その途中にはヘッド交換弁V5が配されている。ヘッド交換流路C5の一端は、供給流路C2における記録ヘッド8の上流に接続され、供給弁V2より下流側に接続される。ヘッド交換流路C5の他端は、サブタンク151の上方に接続してサブタンク151内部の空気室と連通する。ヘッド交換流路C5は、記録ヘッド8を交換する際や記録装置1を輸送する際など、使用中の記録ヘッド8からインクを引き抜くときに利用される。ヘッド交換弁V5は、記録ヘッド8にインクを充填するとき、および、記録ヘッド8からインクを回収するとき以外は閉じるように、インク供給制御部209によって制御される。
【0041】
次に、記録ヘッド8内の流路構成について説明する。供給流路C2より記録ヘッド8に供給されたインクは、フィルタ83を通過した後、第1の負圧制御ユニット81と、第2の負圧制御ユニット82とに供給される。第1の負圧制御ユニット81は、弱い負圧(大気圧との圧力差が小さい負圧)に制御圧力が設定されている。第2の負圧制御ユニット82は、強い負圧(大気圧との圧力差が大きい負圧)に制御圧力が設定されている。これら第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82における圧力は、回収ポンプP2の駆動により適正な範囲で生成される。
【0042】
インク吐出部80には、複数の吐出口が配列された記録素子基板80aが複数配置され、長尺の吐出口列が形成されている。第1の負圧制御ユニット81より供給されるインクを導くための共通供給流路80b(IN流路)と、第2の負圧制御ユニット82より供給されるインクを導くための共通回収流路80c(OUT流路)も、記録素子基板80aの配列方向に延在している。さらに個々の記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路が形成されている。このため、個々の記録素子基板80aにおいては、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出するような、インクの流れが生成される。個別供給流路と個別回収流路との経路中に、各吐出口に連通し、インクが充填される圧力室が設けられており、記録を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れが生じる。記録素子基板80aで吐出動作が行われると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口から吐出されることによって消費されるが、吐出されなかったインクは共通回収流路80cを経て回収流路C4へ移動する。
【0043】
図6(a)は記録素子基板80aの一部を拡大した平面模式図であり、
図6(b)は、
図6(a)の断面線VIb-VIbにおける断面模式図である。記録素子基板80aには、インクが充填される圧力室1005とインクを吐出する吐出口1006が設けられている。圧力室1005において、吐出口1006と対向する位置には記録素子1004が設けられている。また、記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路1008と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路1009とが吐出口1006毎に複数形成されている。
【0044】
上述した構成により、記録素子基板80aでは、相対的に負圧の弱い(圧力の絶対値が高い)共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い(圧力の絶対値が低い)共通回収流路80cへ流出するインクの流れが生成される。より詳しくは、共通供給流路80b→個別供給流路1008→圧力室1005→個別回収流路1009→共通回収流路80cの順にインクが流れる。記録素子1004によってインクが吐出されると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口1006から吐出されることによって記録ヘッド8の外部へ排出される。一方、吐出口1006から吐出されなかったインクは、共通回収流路80cを経て回収流路C4へ回収される。
【0045】
以上の構成のもと、記録動作を行うとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1とヘッド交換弁V5とを閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を開き、供給ポンプP1および回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151→供給流路C2→記録ヘッド8→回収流路C4→サブタンク151の循環経路が確立する。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量が記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量の合計値よりも多い場合は、供給流路C2からリリーフ流路C3にインクが流れ込む。これにより、供給流路C2から記録ヘッド8に流入するインクの流量が調整される。
【0046】
記録動作を行っていないとき、インク供給制御部209は、供給ポンプP1および回収ポンプP2を停止し、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を閉じる。これにより、記録ヘッド8内のインクの流れは止まり、サブタンク151と記録ヘッド8の水頭差による逆流も抑制される。また、大気開放弁V0を閉じることで、サブタンク151からのインク漏れやインクの蒸発が抑制される。
【0047】
<増粘インクの説明>
図7は、増粘インクが生じる様子を説明する図である。
図7は、
図6(b)と同様に、吐出口1006周辺の断面を示す図である。なお、
図6(b)とは上下が逆になっている点に留意されたい。
図7(a)は、比較例として、短時間の循環が繰り返される場合を説明する図である。
図7(b)は、本実施形態における処理の概要を説明する図である。
図7において、図の左から右に向けて時間軸が推移するものとする。
【0048】
まず、
図7(a)の比較例を用いて説明する。前述したように、本実施形態では、記録動作が行われる際にインクの循環が開始する。そして、記録動作が終了した場合、インクの循環が停止する。状態700は、インクの増粘が生じていない通常時の状態を示している。状態701は、記録動作が行われていない場合、即ち、インクの循環が停止している待機状態を示している。状態701においては、吐出口1006内のインクが、空気と接触する部分から徐々に増粘していく。これは、吐出口1006内のインク中の揮発成分が空気中に蒸発することにより、吐出口1006付近のインクの特性が変化するからである。
【0049】
その後、記録動作が行われると、インクの循環が開始される。インクが循環されると、圧力室1005および吐出口1006付近においてもインクの流れが生じる。このインクの流れによって、吐出口1006付近の増粘が生じ始めているインクが流路内に拡散されるので、吐出口1006付近に増粘したインクが蓄積されることを防止することができる。
【0050】
ここで、記録動作が短時間で終了する場合、インクの循環動作も記録時間に応じて短時間で終了する。状態702は、短時間の循環動作が行われた場合の吐出口1006付近の状態である。状態702に示すように、短時間の循環動作が行われた場合には、吐出口1006付近のインクの増粘を十分に解消できない。
【0051】
状態710は、このような短時間の循環動作が繰り返し行われた後の吐出口1006付近の状態を示している。吐出口1006付近の増粘インクが蓄積し、その後、増粘インクが吐出口1006に固着してしまっている。状態711は、このようにインクが固着した状態で記録動作においてインクを吐出しようとしても、正常に吐出できない様子を示している。
【0052】
図7(b)は、本実施形態における処理を行った場合の吐出口1006付近の様子を示している。状態750は、状態700と同様に、インクの増粘が生じていない通常時の状態を示している。状態751は、状態701と同様に、インクの循環が停止している待機状態を示している。状態751においては、状態701と同様に、吐出口1006内のインクが増粘し始めている。
【0053】
状態752は、状態702と同様に、記録動作が短時間で終了する場合を示している。ただし、本実施形態では、記録動作が短時間で終了する場合、本来の循環時間(記録動作に対応して循環する時間)に加えて、所定の時間、循環動作を継続する処理を行う。このため、状態752に示すように、吐出口1006付近の増粘インクが流路内に拡散し、吐出口1006付近のインクの増粘が解消する。
【0054】
状態760は、短時間の循環動作に所定時間の循環動作を継続した動作が、繰り返し行われた後の吐出口1006付近の状態を示している。状態761においては、吐出口1006付近には増粘インクが蓄積していない。このため、状態761で記録動作を行う場合に、吐出口1006から正常にインクが吐出される。なお、本実施形態では、各色のインクに対して、所定時間の循環動作を継続した動作を行うものとする。
【0055】
<フローチャート>
図8は、本実施形態において記録動作が行われる場合のフローチャートを示す図である。
図8のフローチャートで示される一連の処理は、プリントコントローラ202が、ROM203に記憶されているプログラムコードをRAM204に展開し実行することにより行われる。あるいはまた、
図8におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電子回路等のハードウェアで実現してもよい。なお、各処理の説明における記号「S」は、当該フローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0056】
図8(a)は、全体の処理を示すフローチャートである。S810においてプリントコントローラ202は、記録指示を取得する。例えば、プリントコントローラ202は、メインコントローラ101から、印刷ジョブに応じた記録指示を受信することで、記録指示を取得する。
【0057】
S820においてプリントコントローラ202は、インク供給制御部209を制御して、インクの循環を開始する。また、プリントコントローラ202は、インクの循環開始時刻TsをRAM204に保持する。
【0058】
S830においてプリントコントローラ202は、画像処理コントローラ205、搬送制御部207、およびヘッドキャリッジ制御部208を制御して、記録動作を行う。例えば、印刷ジョブが、10枚の記録媒体への記録の指示を含む場合、10枚の記録媒体への記録動作がS830において行われる。印刷ジョブが、5枚の記録媒体への記録の指示を含む場合、5枚の記録媒体への記録動作がS830において行われる。記録動作が終了した場合、S840に処理が進む。
【0059】
S840においてプリントコントローラ202は、追加循環シーケンスを行う。追加循環シーケンスは、循環時間が短い場合に、追加的に循環を行う処理である。先に説明したように、S830における記録動作が行われている間、インクの循環動作は継続している。インクの循環時間は、記録動作の時間に応じて変わり得るものである。また、記録動作の時間は、ユーザから投入される印刷ジョブに応じて変わり得るものである。つまり、記録装置1側では、記録動作に対応する循環時間を画一的に決定することができない。このため、本実施形態では、後述するように、循環時間に応じて追加的に循環を継続する処理が行われる。
【0060】
図8(b)は、S840の追加循環シーケンスの詳細を説明するフローチャートである。S841においてプリントコントローラ202は、S820の循環開始時刻Tsからの経過時間Tcを取得する。経過時間Tcは、1回の記録動作(1つの印刷ジョブに応じて行われる記録動作)において行われた循環の経過時間を示している。つまり、経過時間Tcは、S830における記録動作の時間に対応する時間となる。プリントコントローラ202は、循環開始時刻Tsからの経過時間Tcが、規定値Tmin未満であるかを判定する。規定値Tmin未満である場合、S842に処理が進む。規定値Tmin以上である場合、S842をスキップして、S843に処理が進む。
【0061】
S842においてプリントコントローラ202は、循環を時間Tadd継続する。規定値Tminおよび循環を継続する時間(追加循環時間ともいう)Taddの値は、適宜設定することが可能である。一例としては、規定値Tminを5秒、追加循環時間Taddを4秒とすることができる。S842の処理により、記録動作が規定値Tminに満たない短時間である場合に、循環を時間Tadd分継続することになる。このため、
図7(b)の状態752に示すように吐出口1006付近のインクの増粘を解消することができる。その後、S843に処理が進む。
【0062】
S843においてプリントコントローラ202は、インク循環を停止する。そして、処理を終了する。循環開始時刻Tsからの経過時間Tcが規定値Tmin以上の場合には、吐出口1006付近のインクの増粘が十分に解消したものと推定されるので、追加的な循環継続動作は行われない。
【0063】
以上説明したように、本実施形態においては、記録動作時における1回の循環時間が所定時間に満たない場合、循環時間を継続する。これにより、増粘したインクが蓄積されてしまうことを抑制し、インクが固着して正常に吐出できないことを防止することができる。
【0064】
<変形例>
なお、実施形態1では、各色のインクに対して
図8に示す追加循環シーケンスの処理を行う形態を例に挙げて説明したが、これに限られない。特定のインクのみに追加循環シーケンスの処理を実施してもよい。例えば、顔料を多く含むインクは増粘しやすいことが知られている。顔料を多く含むインクとして、例えばブラックインクが用いられる。この場合、ブラックインクのみをS840の追加循環シーケンスの対象としてよい。
【0065】
一例として、記録装置1に、ブラックインクのみを循環させるモードと、ブラックインクを含む全色を循環させるモードとが備えられている形態を想定する。ブラックインクのみを循環させるモードは、
図8(a)のS810で取得した記録指示が、モノクロ印刷のジョブに基づく指示の場合に選択される。ブラックインクを含む全色を循環させるモードは、S810で取得した記録指示が、カラー印刷のジョブに基づく指示の場合に選択される。プリントコントローラ202は、ブラックインクのみを循環させるモードで動作している場合には、
図8(b)のS842において時間Taddだけ循環時間を継続すればよい。プリントコントローラ202は、ブラックインクを含む全色を循環させるモードで動作している場合、S842においては、ブラックインクのみを循環させるモードに切り替えて時間Taddだけ循環時間を継続すればよい。
【0066】
また、循環の制御を色ごとに個別に行う形態を採用してもよい。このような形態では、ブラックインクを少なくとも含む色のインクの循環が行われている場合に、S842ではブラックインクのみ循環時間を継続してもよい。
【0067】
なお、特定のインクのみ循環時間を継続する例として、増粘しやすいインクを例に挙げたが、これに限られない。例えば、吐出口の形状等の特性が他のインクの吐出口と比べて増粘しやすいような吐出口を用いて吐出されるインクの循環時間を継続してもよい。
【0068】
なお、循環時間を継続している間に、次の記録指示を取得する場合も想定される。このような場合、S840の追加循環シーケンスを終了してS810の処理から再度処理が行うことができる。この場合、S820では、前回の循環開始時刻Tsをクリアせずに、継続して使用すればよい。
【0069】
<<実施形態2>>
実施形態1では、規定値Tminおよび追加循環時間Taddが、予め定めた固定的な値である例を説明した。本実施形態では、規定値Tminおよび追加循環時間Taddが、記録装置1の設置環境に応じた可変的な値である例を説明する。
【0070】
本実施形態における記録装置1は、記録装置1が設定されている環境下における温度および湿度のうちの少なくとも一方を取得可能に構成されている。例えば、記録装置1は、温度計および湿度計を備えており、温度計および湿度計で検出された温度および湿度をプリントコントローラ202が取得する。あるいは、記録装置1は、他の装置から温度および湿度の情報を取得可能に構成されていてもよい。また、温度および湿度は、測定された値でなくてもよく、所定の方法で推定された値を用いてもよい。
【0071】
図9は、本実施形態においてプリントコントローラ202が参照するテーブル情報の一例を示す図である。
図9(a)は、規定値Tminに関するテーブル情報であり、
図9(b)は、追加循環時間Taddに関するテーブル情報である。プリントコントローラ202は、温度および湿度の少なくとも一方を取得し、取得した温湿度に対応する項目において規定されている値に、規定値Tminおよび追加循環時間Taddを設定する。例えば温度が20℃かつ湿度が65%の場合、規定値Tminは3秒に、追加循環時間は3秒に設定される。温度が36度かつ湿度が25%の場合、規定値Tminは7秒に、追加循環時間は5秒に設定される。なお、規定値Tminおよび追加循環時間Taddの温湿度に応じた値の設定は、所定のタイミングで適宜行うことができる。例えばプリントコントローラ202は、
図8のS840の追加循環シーケンスを開始する都度、設定値を変えても良いし、所定の時間ごとに温湿度を取得して規定値Tminおよび追加循環時間Taddの値を設定してもよい。
【0072】
なお、高温であるほど、あるいは低湿であるほど、インクの増粘は進行しやすい。このため、
図9に示すように、高温であるほど、あるいは低湿であるほど、規定値Tminおよび追加循環時間Taddの両方ともに長く設定することが好ましい。
【0073】
このように記録装置1の設置環境の情報を用いて規定値Tminおよび追加循環時間Taddを可変的な値とすることで、インクの増粘をより適切に抑制することができる。また、必要以上に循環をさせないことで電力消費を抑制できる。
【0074】
<<実施形態3>>
実施形態1および実施形態2においては、1回あたりの循環時間が所定時間に満たない場合、その循環時間を継続する形態を説明した。即ち、1回あたりの循環時間が所定時間に満たない短時間循環が繰り返されるような場合には、各循環において都度、循環時間を継続する形態を説明した。本実施形態では、短時間循環が繰り返される回数をカウントし、カウント値が所定値に達した場合に、循環時間を継続する形態を説明する。なお、本実施形態では、ある程度のインクの増粘の発生が予測されることから、追加循環時間としては、実施形態1で説明した時間よりも長い時間が設定されることが好ましい。
【0075】
図10は、本実施形態における追加循環シーケンスを説明するフローチャートである。
図10は、
図8(a)のS840における詳細な処理を示す図である。
【0076】
S1001においてプリントコントローラ202は、循環開始時刻Tsからの経過時間Tcを取得する。経過時間Tcは、実施形態1と同様に、1回の記録動作(1つの印刷ジョブに応じて行われる記録動作)において行われた循環の継続時間を示している。プリントコントローラ202は、循環開始時刻Tsからの経過時間Tcが、規定値Tmin2未満であるかを判定する。規定値Tmin2未満である場合、S1002に処理が進む。規定値Tmin2以上である場合、S1002をスキップして、S1003に処理が進む。規定値Tmin2は、例えば5秒である。
【0077】
S1002においてプリントコントローラ202は、短時間の記録回数を示すカウント値Nに1を加算する。そして、S1003に処理が進む。即ち、本実施形態では、循環開始時刻Tsからの経過時間Tcが、規定値Tmin2未満であった場合でも、直ちに循環を継続しない。
【0078】
S1003においてプリントコントローラ202は、カウント値Nが所定値Nth以上であるかを判定する。所定値Nthは、例えば10回である。カウント値Nが所定値Nth以上である場合、S1004に処理が進む。カウント値Nが所定値Nth以上でない場合、S1004をスキップして、S1005に処理が進む。
【0079】
S1004においてプリントコントローラ202は、循環を時間Tadd2分、継続する。追加循環時間Tadd2は、例えば25秒である。その後、処理はS1005に進む。
【0080】
S1005においてプリントコントローラ202は、インクの循環を停止する。以上説明した処理によれば、1回あたりの循環時間が所定時間に満たない短時間循環が繰り返し行われる場合であっても、短時間循環の回数が所定の回数に達した場合に、追加循環時間Tadd2分、循環が継続される。このため、インクの増粘を抑制することができる。
【0081】
なお、前述したように、記録動作に伴う循環時間は、記録指示に応じて変わり得るものであり、必ずしも短時間循環が繰り返されるわけではない。例えば、短時間循環が数回繰り返された後に、長時間の循環動作が行われる場合がある。このような場合には、その長時間の循環動作によってインクの増粘が解消される。従って、例えばプリントコントローラ202は、第二の時間以上の循環動作が行われた場合には、カウント値を、現在の値よりも少ない値に更新する、または、リセットする制御を行ってもよい。第二の時間は、例えば規定値Tmin2+追加循環時間Tadd2としてもよい。
【0082】
また、循環動作よりもさらに吐出口1006付近のインクの増粘を解消する効果が大きいクリーニング動作(例えば予備吐出など)が行われた場合には、プリントコントローラ202は、カウント値をリセットする制御を行ってもよい。
【0083】
<変形例>
図10のフローチャートにおいてはS1002の処理において、カウント値Nに加算する値が、固定値「1」である例を説明したが、これに限られない。カウント値Nを更新する値は、マイナスの値であってもよいし、固定値ではなく可変値であってもよい。循環開始時刻Tsからの経過時間Tc(即ち、記録動作に伴う循環時間)に応じて重みを加えた値で、加算または減算をしてカウント値Nを更新してもよい。例えば、経過時間Tc(循環時間)が短いほど、カウント値Nを大きい値で加算し、経過時間Tc(循環時間)が長いほど、カウント値Nを大きい値で減算してもよい。
【0084】
また、実施形態2で説明したように、温湿度に応じてカウント値に加減算する値を変更してもよい。
図11は、本実施形態で用いるテーブル情報の一例を示す図である。
図11は、経過時間Tc(循環時間)と温度とに応じた加減算値の例を示している。
図11に示すように、経過時間Tcが長い場合、経過時間Tcが短い場合と比べて加算値が少なくなっていたり、減算値が大きくなっていたりする。変形例においてプリントコントローラ202は、S1002の処理を、
図11のテーブル情報を参照して得た値を用いてカウント値Nを更新する処理に置き換えればよい。なお、カウント値がマイナスになった場合には、「0」とし、実質的にリセットされたものとして扱えばよい。なお、
図11は、経過時間Tc(循環時間)と温度とに応じた加減算値の例であるが、経過時間Tc(循環時間)と温度と湿度とに応じた加減算値をテーブル情報として保持して用いてもよい。
【0085】
<<実施形態4>>
本実施形態は、記録動作終了後にキャップユニット10によって記録ヘッド8をキャップする動作に所定の時間以上を要する形態を説明する。先に説明したように、記録装置1は、待機時においてはキャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aに当接して吐出口面8aをキャップユニット10が保護している状態である。そして、記録が開始される場合、キャップユニット10が吐出口面8aから離間し(キャップオープンと呼ぶ)、吐出口面8aからインクが吐出されることになる。そして、記録が終了すると、キャップユニット10が吐出口面8aに当接して吐出口面8aをキャップする(キャップクローズと呼ぶ)。
【0086】
本実施形態では、このキャップクローズの動作に、例えば5秒要するものとする。つまり、キャップクローズ動作に、実施形態1で説明したような追加循環時間Taddに相当する時間を要する形態であるものとする。また、本実施形態では、キャップクローズ動作が開始されると、途中で中断することなく、キャップクローズがされるものとする。このような場合、一旦キャップクローズ動作が開始すると、キャップクローズ動作が完了するまでの所定時間の間、記録動作を開始すること(すなわち、キャップオープンすること)ができない。したがって、キャップクローズ動作に要する所定時間に合わせて循環時間を継続することで、循環継続に伴う追加的な時間を発生させずに、インクの増粘を抑制することができる。
【0087】
図12は、本実施形態のフローチャートを示す図である。S1210においてプリントコントローラ202は、記録指示を取得する。S1220においてプリントコントローラ202は、キャップオープン動作を行う。また、S1230においてプリントコントローラ202は、インク循環を開始する。S1220とS1230とは、並行して処理が行われる。
【0088】
S1240においてプリントコントローラ202は、記録ヘッド8の温度調節を開始する。本実施形態の記録素子基板80aには、記録素子1004とは別にサブヒータ(不図示)が備えられている。そして、記録時に吐出口1006からインクが安定的に吐出されるように、記録ヘッド8、または、記録ヘッド8内のインクをサブヒータによって加熱することで、記録ヘッド8内のインクの温度を調節する処理が行われる。
【0089】
S1250においてプリントコントローラ202は、記録動作を行う。記録動作が完了するとS1260においてプリントコントローラ202は、記録ヘッド8の温度調節を停止する。なお、循環を停止した状態で記録ヘッド8の温度調節を行うと、吐出口1006からの水分蒸発が促進されてしまい、インクの増粘が加速してしまう。このため、記録ヘッド8の温度調節を行う形態の場合には、この後で行われる追加循環シーケンスよりも先に記録ヘッド8の温度調節を停止する。
【0090】
S1260の処理に続いて、S1270においてプリントコントローラ202は、キャップクローズ動作を行う。また、S1260の処理に続いて、S1270と並行して、プリントコントローラ202は、追加循環シーケンスを行う。
【0091】
S1270の追加循環シーケンスは、例えば
図8(b)で説明した処理と同様の処理が行われる。なお、本実施形態では、規定値Tminを非常に大きい値、例えば9999秒に設定し、追加循環時間Taddを5秒に設定しているものとする。つまり、S841の判定の結果、S842に処理が進むように構成されている。追加循環時間Taddは、キャップクローズ動作に要する時間に相当する。または、追加循環時間Taddは、キャップクローズ動作に要する時間よりも少なくてもよい。
【0092】
このような処理および設定によれば、キャップクローズ動作の時間に対応して循環時間が継続されることになる。このため、循環継続に伴う追加的な時間を発生させずに、インクの増粘を抑制することができる。また、キャップクローズ動作中に生じるわずかな増粘の蓄積も抑制することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、規定値Tminを非常に大きい値に設定しているので、S841における規定値Tminの判定処理を行わずに、即ち、循環時間に関わらず、追加循環シーケンスを行ってもよい。このような構成は、循環停止中に、吐出が正常に行われない状態になりやすいインクを使用する場合、または、キャップクローズ動作に時間を要する場合などに、特に有効である。
【0094】
なお、本実施形態では、キャップオープン動作およびキャップクローズ動作と、記録ヘッド8の温度調節との両方の処理を行う形態を例に挙げて説明したが、いずれか一方の処理を行う形態を採用してもよい。
【0095】
<<その他の実施形態>>
上記で説明した各実施形態と、他の実施形態または変形例とを組み合わせた形態を採用してもよい。例えば、実施形態3で説明した
図10のフローチャートの処理は、特定のインクのみに対して行われてもよい。また、特定のインクについて実施形態1で説明した処理を行い、他のインクについては実施形態3で説明した処理を行ってもよいし、その逆の構成としてもよい。また、実施形態4で説明した追加循環シーケンスは、特定のインクについてのみ行われてもよく、他のインクについては実施形態1から実施形態3で説明した処理が行われてもよい。
【符号の説明】
【0096】
8 記録ヘッド
202 プリントコントローラ
1006 吐出口
1005 圧力室