(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】鋼管杭及び鋼管杭の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/32 20060101AFI20240304BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
E02D27/32 A
E02D27/32 Z
E02D27/52 A
(21)【出願番号】P 2023033828
(22)【出願日】2023-03-06
【審査請求日】2023-03-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中村 直志
(72)【発明者】
【氏名】堀越 健次
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-299551(JP,A)
【文献】特許第6914411(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/32
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の円筒部と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板であって、前記円筒部の両端部のうち一方の端部における内周面に設けられる第1止水板と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第2止水板であって、前記円筒部の両端部のうち他方の端部における内周面に設けられる第2止水板と、
を備え、水底に打設される鋼管杭であって、
前記第1止水板には、綱状部材と、係合部材と、が設けられ、
前記係合部材は、係合部を備え、
前記綱状部材は、前記係合部と係合し、
前記係合部は、前記第1止水板の面のうち、前記第1止水板が引っ張られる側の面に設けられ、
前記第1止水板は、前記円筒部の外部から前記綱状部材が引っ張られることで破壊可能である、
ことを特徴とする鋼管杭。
【請求項2】
鋼製の円筒部と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板であって、前記円筒部の両端部のうち一方の端部における内周面に設けられる第1止水板と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第2止水板であって、前記円筒部の両端部のうち他方の端部における内周面に設けられる第2止水板と、
を備え、水底に打設される鋼管杭であって、
前記第1止水板には、綱状部材と、係合部材と、が設けられ、
前記係合部材は、係合部と、凸部と、を備え、
前記凸部は、前記第1止水板を挟んで、前記第1止水板が引っ張られる側とは反対側に設けられ、
前記綱状部材は、前記係合部と係合し、
前記凸部は、前記円筒部の外部から前記係合部材が前記綱状部材で引っ張られることで、前記第1止水板に押し付けられ、前記第1止水板を破壊可能である、
ことを特徴とする鋼管杭。
【請求項3】
前記第1止水板は、前記
円筒部の両端のうち前記水底に近い方の端の側に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の鋼管杭。
【請求項4】
前記第2止水板は、ゴム製であり、且つ、所定圧力で壊れる、
ことを特徴とする請求項3に記載の鋼管杭。
【請求項5】
前記第2止水板は、前記円筒部の外部から引っ張られることで破壊可能である、
ことを特徴とする請求項4に記載の鋼管杭。
【請求項6】
前記円筒部の内周面に設けられ、且つ、前記第1止水板と前記第2止水板との間に設けられる第3止水板、
を更に備え、
前記第3止水板は、ゴム製であり、且つ、前記円筒部の外部から引っ張られることで破壊可能である、
ことを特徴とする請求項5に記載の鋼管杭。
【請求項7】
前記第2止水板は、前記第3止水板より低い圧力で壊れる、
ことを特徴とする請求項6に記載の鋼管杭。
【請求項8】
鋼製の円筒部と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板であって、前記円筒部の両端部のうち一方の端部における内周面に設けられる第1止水板と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第2止水板であって、前記円筒部の両端部のうち他方の端部における内周面に設けられる第2止水板と、
を備え、水底に打設される鋼管杭であって、
前記第1止水板は、前記円筒部に設けられた第1止水板押さえプレートと、前記円筒部に設けられた第1止水板受けプレートと、に挟まれ、
前記第1止水板は、破壊可能である、
ことを特徴とする鋼管杭。
【請求項9】
前記第1止水板押さえプレートは、環状であり、
前記第1止水板押さえプレートの内径は、前記円筒部の両端のうち水底に近い方の端に向かうにつれ、大きくなる、
ことを特徴とする請求項8に記載の鋼管杭。
【請求項10】
前記綱状部材は、作業船に据え付けられる牽引装置で牽引される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の鋼管杭。
【請求項11】
前記第1止水板は、ゴム製である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の鋼管杭。
【請求項12】
鋼製の円筒部と、
前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板であって、前記円筒部の内周面に設けられる第1止水板と、
凸部と、係合部と、を備え、前記第1止水板に設けられる係合部材と、
前記係合部と係合する綱状部材と、
を備え、水底に打設される鋼管杭の施工方法であって、
前記第1止水板は、ゴム製であり、且つ、前記係合部材が前記綱状部材で引っ張られることで、前記係合部材が備える前記凸部が、前記第1止水板に押し付けられることで破壊可能であり、
水上に横たわる前記鋼管杭の一端を吊り上げる吊り上げ工程と、
前記吊り上げ工程が実施されることで前記鋼管杭の他端が水に沈んだ状態で、前記綱状部材で前記係合部材を引っ張ることで前記第1止水板を破壊して前記鋼管杭に水を流入させる注水工程と、
前記注水工程の後、前記鋼管杭を、前記第1止水板が壊された状態で、前記水底に打設する打設工程と、
を備えることを特徴とする鋼管杭の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭及び鋼管杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水上にジャケット構造体等を支持するために、水底に鋼管杭を打設することがある。
特許文献1では、杭を立て起こす際にクレーンに作用する荷重を制御することを目的として、クレーンによって杭の上端を持ち上げた状態で杭の下端の流入口を開放し、杭の内部に水を流入させる方法が開示されている。
特許文献2では、経済的に、かつ急速施工が可能な水中基礎として、メインコラムとメインコラム基部の外側に配置された複数のスカートコラムの内部にパイルを挿通して水底地盤中に貫入させ、コラムとパイルの隙間をグラウト材で結合し、コラム内に中詰コンクリートを充填した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6914411号公報
【文献】特開平6-146305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の杭の施工方法では、杭の立て起こしの最中に流入口を操作する必要があることから、作業性の向上に課題がある。また、施工する杭が大きいと、水上における杭の運搬性が低下する課題がある。水上の作業船に搭載されるクレーンの揚程や吊り上げ荷重が不足する課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、運搬性及び作業性を向上し、更に鋼管杭の施工に用いるクレーン等に求められる性能を抑えることができる鋼管杭及び鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る鋼管杭は、鋼製の円筒部と、前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板であって、前記円筒部の内周面に設けられる第1止水板と、を備え、水底に打設される鋼管杭であって、前記第1止水板は、所定条件で壊されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、鋼管杭は、円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板を備える。鋼管杭を、第1止水板によって鋼管杭の内部に水が流れ込むことを防止された状態とすることで、鋼管杭を水上に浮かべることができる。これにより、例えば、鋼管杭を水上に浮かべた状態のまま作業船等で引っ張ることで、水上で鋼管杭を運搬する際に必要な力を抑えることができる。
【0008】
第1止水板は、所定条件で壊される。これにより、第1止水板を壊すことで、円筒部の内部に水を流入させることができる。よって、杭に設けられた流入口を施工中に操作する方法と比較して、作業を容易にすることができる。
例えば、鋼管杭を施工現場まで運搬した後に、第1止水板を壊す。このことで、円筒部の内部に水が流入すると、円筒部の、水が流入した側の端部が水中に沈む。これにより、水上において鋼管杭を立てることができる。したがって、クレーン等を用いて鋼管杭の端部を吊り上げることで水上に鋼管杭を立てる場合と比較して、必要な吊り上げ力を小さくすることができる。よって、鋼管杭の施工に用いるクレーン等に求められる性能を抑えることができる。
【0009】
<2>本発明の態様2に係る鋼管杭は、態様1に係る鋼管杭において、前記第1止水板は、前記円筒部の外部から引っ張られることで壊されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、第1止水板は、円筒部の外部から引っ張られることで壊される。これにより、例えば、鋼管杭が水上に浮かべられた状態で、第1止水板に取り付けられたロープを作業船等によって引っ張ることで、第1止水板を壊すことができる。したがって、鋼管杭をクレーン等で吊り上げることなく、鋼管杭のいずれかの端部を水中に沈ませることで、鋼管杭を立てることができる。
【0011】
<3>本発明の態様3に係る鋼管杭は、態様1又は態様2に係る鋼管杭において、前記第1止水板は、所定圧力で壊れることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、第1止水板は、所定圧力で壊れる。これにより、例えば、鋼管杭が水上に浮かべられた状態で、鋼管杭における第1止水板が設けられた側と反対側の端部を、クレーン等で持ち上げる。すると、鋼管杭における第1止水板が設けられた側の端部が水中に沈む。このことで、第1止水板に水圧を付加することで、第1止水板を壊すことができる。したがって、クレーン等によって鋼管杭を吊り上げることのみによって鋼管杭を水上に立てる場合と比較して、クレーン等が鋼管杭を吊り上げる量や、吊り上げに必要な力を小さくすることができる。
【0013】
<4>本発明の態様4に係る鋼管杭は、態様1から態様3のいずれか1つに係る鋼管杭において、前記第1止水板には、綱状部材が設けられ、前記第1止水板は、前記綱状部材が引っ張られることで壊されることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、第1止水板には、綱状部材が設けられ、第1止水板は、綱状部材が引っ張られることで壊される。これにより、円筒部の外部から、容易に第1止水板を引っ張ることができる。よって、第1止水板を容易に壊すことができる。
【0015】
<5>本発明の態様5に係る鋼管杭は、態様4に係る鋼管杭において、前記第1止水板には、係合部材が設けられ、前記係合部材は、係合部を備え、前記綱状部材は、前記係合部と係合することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、第1止水板には、係合部材が設けられ、綱状部材は、係合部材と係合する。これにより、第1止水板を綱状部材によってより容易且つ確実に引っ張ることができる。
【0017】
<6>本発明の態様6に係る鋼管杭は、態様5に係る鋼管杭において、前記係合部材は、凸部を備え、前記凸部は、前記第1止水板を挟んで、前記第1止水板が引っ張られる側とは反対側に設けられ、前記凸部は、前記係合部材が前記綱状部材で引っ張られることで、前記第1止水板に押し付けられ、前記第1止水板を壊すことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、凸部は、係合部材が綱状部材で引っ張られることで、第1止水板に押し付けられ、第1止水板を壊す。これにより、更に第1止水板を容易に壊すことができる。
【0019】
<7>本発明の態様7に係る鋼管杭は、態様5又は態様6に係る鋼管杭において、前記係合部は、前記第1止水板の面のうち、前記第1止水板が引っ張られる側の面に設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、係合部は、第1止水板の面のうち、第1止水板が引っ張られる側の面に設けられている。これにより、綱状部材を係合部に係合しやすくすることができる。
【0021】
<8>本発明の態様8に係る鋼管杭は、態様1から態様7のいずれか1つに係る鋼管杭において、前記円筒部の内周面に設けられ、且つ、前記円筒部の両端のうち水底に遠い方の端の側に設けられる第2止水板を更に備え、前記第1止水板は、前記両端のうち前記水底に近い方の端の側に設けられることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、円筒部の内周面に設けられ、且つ、円筒部の両端のうち水底に遠い方の端の側に設けられる第2止水板を更に備える。これにより、第1止水板と第2止水板とによって、円筒部の内部に空気を密封することができる。よって、鋼管杭を水上に浮かべることができる。第1止水板は、円筒部の両端のうち水底に近い方の端の側に設けられる。これにより、第1止水板を壊すことで、円筒部の両端のうち水底に近い方の端の側から、円筒部の内部に水を流入させることができる。また、例えば、第1止水板を円筒部の端に設けることで、第1止水板を引っ張りやすくすることができる。
【0023】
<9>本発明の態様9に係る鋼管杭は、態様8に係る鋼管杭において、前記第2止水板は、ゴム製であり、且つ、所定圧力で壊れることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、第2止水板は、ゴム製であり、且つ、所定圧力で壊れる。例えば、鋼管杭を水上に立てる際、まず、第1止水板を壊すことで、鋼管杭の第1止水板が設けられた側の端部を沈ませる。このとき、第2止水板によって、円筒部の内部に空気を残すことで、鋼管杭の見かけの重さを軽くすることができる。よって、クレーン等による鋼管杭の吊り上げを容易にすることができる。また、鋼管杭を水上に立てた後に第2止水板を壊すことで、円筒部の内部から空気を取り除き、円筒部の内外の気圧を同じにすることができる。よって、水底に打設された後の鋼管杭を安定した状態とすることができる。
【0025】
<10>本発明の態様10に係る鋼管杭は、態様8又は態様9に係る鋼管杭において、前記第2止水板は、前記円筒部の外部から引っ張られることで壊されることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、第2止水板は、円筒部の外部から引っ張られることで壊される。これにより、例えば、水上に鋼管杭を立てた後、第2止水板を円筒部の外部から引っ張ることで壊すことができる。これにより、円筒部の内部から空気を取り除く作業を、鋼管杭が安定した状態で行うことができる。
【0027】
<11>本発明の態様11に係る鋼管杭は、態様8から態様10のいずれか1つに係る鋼管杭において、前記円筒部の内周面に設けられ、且つ、前記第1止水板と前記第2止水板との間に設けられる第3止水板、を更に備え、前記第3止水板は、ゴム製であり、且つ、前記円筒部の外部から引っ張られることで壊されることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、円筒部の内周面に設けられ、且つ、第1止水板と第2止水板との間に設けられる第3止水板を更に備え、第3止水板は、ゴム製であり、且つ、円筒部の外部から引っ張られることで壊される。これにより、円筒部の内部に水を流入させる作業を段階的に行うことができる。よって、鋼管杭の、第1止水板が設けられた側の端部が水中に沈む速度を遅くすることができる。よって、鋼管杭を水上に立てる作業をより安定して行うことができる。また、第3止水板が壊れる前の状態において、第3止水板と第2止水板との間に空気を残すことができる。したがって、第3止水板が壊れた後も、円筒部の内部に空気を確実に残すことができる。よって、鋼管杭を立てる際に、空気による浮力を利用しやすくすることができる。よって、より鋼管杭の見かけの重さを軽くすることができる。
【0029】
<12>本発明の態様12に係る鋼管杭は、態様11に係る鋼管杭において、前記第2止水板は、前記第3止水板より低い圧力で壊れることを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、第2止水板は、第3止水板より低い圧力で壊れる。つまり、第3止水板の強度は、第2止水板の強度よりも高い。これにより、第3止水板を、鋼管杭の第1止水板が設けられた側の端部が水中に沈む際に、円筒部の内部に流入した水や、円筒部の内部に流入した水によって圧縮された空気によって付加される圧力に対して、十分な強度とすることができる。
【0031】
<13>本発明の態様13に係る鋼管杭は、態様4から態様12のいずれか1つに係る鋼管杭において、前記綱状部材は、作業船に据え付けられる牽引装置で牽引されることを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、綱状部材は、作業船に据え付けられる牽引装置で牽引される。これにより、第1止水板をより大きな力で引っ張ることを容易に行うことができる。
【0033】
<14>本発明の態様14に係る鋼管杭は、態様1から態様13のいずれか1つに係る鋼管杭において、前記第1止水板は、前記円筒部に設けられた第1止水板押さえプレートと、前記円筒部に設けられた第1止水板受けプレートと、に挟まれることを特徴とする。
【0034】
この発明によれば、第1止水板は、円筒部に設けられた第1止水板押さえプレートと、円筒部に設けられた第1止水板受けプレートと、に挟まれる。これにより、第1止水板を円筒部の内周面に確実に固定することができる。したがって、第1止水板をより強く引っ張ることができる。よって、より第1止水板を壊しやすくすることができる。
【0035】
<15>本発明の態様15に係る鋼管杭は、態様14に係る鋼管杭において、前記第1止水板押さえプレートは、環状であり、前記第1止水板押さえプレートの内径は、前記円筒部の両端のうち水底に近い方の端に向かうにつれ、大きくなる、ことを特徴とする。
【0036】
この発明によれば、第1止水板押さえプレートは、環状であり、第1止水板押さえプレートの内径は、円筒部の両端のうち水底に近い方の端に向かうにつれ、大きくなる。よって、円筒部の第1止水板が設けられた側の端部から水が流入した時、第1止水板押さえプレートが水流の抵抗となることを抑えることができる。また、例えば、鋼管杭を水底に打設する時、第1止水板押さえプレートが抵抗となることを抑えることもできる。
【0037】
<16>本発明の態様16に係る鋼管杭は、態様1から態様15のいずれか1つに係る鋼管杭において、前記第1止水板は、ゴム製であることを特徴とする。
【0038】
この発明によれば、第1止水板は、ゴム製である。これにより、第1止水板を壊しやすくすることができる。
【0039】
<17>本発明の態様17に係る鋼管杭の施工方法は、鋼製の円筒部と、前記円筒部の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板であって、前記円筒部の内周面に設けられる第1止水板と、を備え、水底に打設される鋼管杭の施工方法であって、前記第1止水板は、ゴム製であり、且つ、所定条件で壊され、水上に横たわる前記鋼管杭の一端を吊り上げる吊り上げ工程と、前記吊り上げ工程が実施されることで前記鋼管杭の他端が水に沈んだ状態で、前記第1止水板が壊されることで前記鋼管杭に水を流入させる注水工程と、前記注水工程の後、前記鋼管杭を、前記第1止水板が壊された状態で、前記水底に打設する打設工程と、を備えることを特徴とする。
【0040】
この発明によれば、吊り上げ工程と、注水工程と、を備える。吊り上げ工程によって鋼管杭の他端を水に沈ませることで、鋼管杭の見かけの重さを軽くすることができる。注水工程によって鋼管杭に水を流入させることで、水上に鋼管杭を立てやすくすることができる。よって、鋼管杭を立てる際に必要な鋼管杭の吊り上げ量を少なくすることができる。これにより、鋼管杭を打設する作業をより容易にすることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、運搬性及び作業性を向上し、更に鋼管杭の施工に用いるクレーン等に求められる性能を抑えることができる鋼管杭及び鋼管杭の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】
図1に示す鋼管杭が立てられる途中の状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す鋼管杭が立てられた状態を示す図である。
【
図10】
図9に示す第2鋼管杭が立てられる途中の状態を示す図である。
【
図11】
図9に示す第2鋼管杭が立てられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る鋼管杭100を説明する。本実施形態に係る鋼管杭100は、例えば、下端が水底に打設される。鋼管杭100は、例えば、上端にジャケット構造体のレグが接続される。これにより、鋼管杭100は、水上に配置されるジャケット構造体等を支持する。なお、鋼管杭100の上端には、風車タワーやトランジションピース等の円筒型の構造体が取り付けられても良い。
【0044】
図1に示すように、鋼管杭100は、円筒部10と、第1止水板20と、第2止水板30と、を備える。
円筒部10は、鋼製である。円筒部10の外径は、例えば、2.5m~15.0mである。円筒部10の長さは、例えば、30m~120mである。円筒部10の板厚は、例えば、直径と板厚との比(d/t)が、30~150の範囲内となる厚さである。
【0045】
第1止水板20は、円筒部10の内周面に設けられる。第1止水板20は、円筒部10の長手方向の両端のうち、水底に近い方の端の側に設けられる。つまり、第1止水板20は、円筒部10を立てた時、下側になる端の側に設けられる。
第1止水板20は、円筒部10の内部に水Wが流れ込むことを防止可能である。これにより、例えば、鋼管杭100を立てる時、浮力を利用して鋼管杭100の見かけの重さを軽くする。
第1止水板20は、樹脂製である。例えば、第1止水板20には、ゴムや、プラスチックが好適に用いられる。本実施形態において、第1止水板20は、ゴム製である。
【0046】
第1止水板20は、
図2に示すように、円筒部10に設けられた第1止水板受けプレート21と、円筒部10に設けられた第1止水板押さえプレート22と、に挟まれることで、円筒部10の内周面に固定される。
第1止水板受けプレート21は、環状である。
図2に示すように、第1止水板受けプレート21は、第1止水板20よりも円筒部10の長手方向における第1止水板20が設けられた側の端から遠い側に配置される。第1止水板受けプレート21は、例えば、円筒部10の内周面に溶接により固定される。第1止水板20は、上述のように設けられた第1止水板受けプレート21に当接する。このことで、円筒部10の内周面において、第1止水板20が、第1止水板受けプレート21よりも奥側に移動しないようにする。
【0047】
第1止水板押さえプレート22は、環状である。
図2に示すように、第1止水板押さえプレート22は、第1止水板20よりも円筒部10の長手方向における第1止水板受けプレート21が設けられた側の端に近い側に配置される。第1止水板押さえプレート22は、例えば、
図2に示すように、第1止水板受けプレート21にボルトBとナットNとで固定される。このとき、第1止水板20は、第1止水板押さえプレート22と、第1止水板受けプレート21と、の間に挟まれる。このことで、第1止水板20は、円筒部10の内周面に固定される。
【0048】
図2に示すように、第1止水板押さえプレート22の内径は、円筒部10の両端のうち水底に近い方の端に向かうにつれ、大きくなる。つまり、第1止水板押さえプレート22の内径は、円筒部10の長手方向において、第1止水板押さえプレート22が設けられた側の端に向かうにつれ、小さくなる。このことで、円筒部10の内部に水Wが流れ込む時、第1止水板押さえプレート22に水Wが衝突して水Wの流れが妨げられることを抑える。また、第1止水板押さえプレート22をこのような形状とすることで、鋼管杭100を海底に打設するとき、第1止水板押さえプレート22に作用する抵抗力を減らす。
【0049】
第1止水板20は、所定条件で壊される。つまり、第1止水板20は、所定条件を満たすことで、不可逆的に破断する。このことで、円筒部10の内部に水Wを流入させる。例えば、鋼管杭100を水Wの上に立てる時に、第1止水板20を壊して円筒部10の内部に水Wを流入させる。これにより、
図3に示すように、円筒部10の端部を沈ませる。このことで、
図4に示すように鋼管杭100を水Wの上に立てる時、円筒部10をクレーン等で吊り上げる量を少なくする。本実施形態において、第1止水板20が壊される所定条件は、以下の2態様を備える。
【0050】
第1止水板20が壊される所定条件の第1態様として、第1止水板20は、円筒部10の外部から引っ張られることで壊される。この態様を執る場合、第1止水板20には、
図2に示すように、綱状部材23と、係合部材24と、が設けられる。
綱状部材23は、第1止水板20を引っ張る為に設けられる。つまり、第1止水板20は、綱状部材23が引っ張られることで壊される。綱状部材23には、例えば、ロープやチェーンが用いられる。綱状部材23は、一方の端部が第1止水板20に設けられた係合部材24に取付けられる。この状態で、綱状部材23の他方の端部を引っ張ることで、第1止水板20を引っ張る。綱状部材23は、例えば、水Wの上において、不図示の作業船に据え付けられる牽引装置で牽引されることで引っ張られる。綱状部材23は、綱状部材23の他方の端部が繋がれた作業船が、鋼管杭100から離れる方向に移動することで引っ張られてもよい。
【0051】
係合部材24は、
図2に示すように、第1止水板20の中央に設けられる。係合部材24は、
図5に示すように、中心軸24aと、係合部24bと、凸部24cと、を備える。
中心軸24aには、係合部24b及び凸部24cが取付けられる部位である。中心軸24aは、第1止水板20の中心に設けられた穴に挿通される。
係合部24bは、
図2及び
図5に示すように、第1止水板20の面のうち、第1止水板20が引っ張られる側の面に設けられる。係合部24bは、例えば、環状の部材である。係合部24bは、
図2及び
図5に示すように、中心軸24aの一方の端部に設けられる。綱状部材23は、係合部24bと係合することで、係合部材24に取付けられる。
【0052】
凸部24cは、
図2及び
図5に示すように、第1止水板20を挟んで、第1止水板20が引っ張られる側とは反対側に設けられる。凸部24cは、
図2及び
図5に示すように、中心軸24aの他方の端部に設けられる。凸部24cは、第1止水板20を壊す為に設けられる。
凸部24cは、本実施形態において、下記の4例のうちのいずれかを適宜選択して用いられる。
【0053】
凸部24cの第1例は、
図5に示すように、円筒状の部材の端部に凹凸を設けることで形成される。
凸部24cの第2例は、
図6に示すように、円筒状の部材を前記円筒状の軸方向に対して斜めに切断した形状とすることで形成される。
【0054】
凸部24cの第3例は、
図7に示すように、四角形状の部材が、前記四角形状の辺の1つが中心軸24aに沿うようにして中心軸24aに取り付けられ、前記四角形状の頂点のうち、係合部24bに近い側に位置し、かつ中心軸24aに接している頂点が、係合部24bに近い側に位置し、かつ中心軸24aに接していない頂点よりも、より係合部24bに近い位置にあることで形成される。
【0055】
凸部24cの第3例は、
図8に示すように、四角形状の部材が、前記四角形状の辺の1つが中心軸24aに沿うようにして中心軸24aに取り付けられ、前記四角形状の頂点のうち、係合部24bに近い側に位置し、かつ中心軸24aに接していない頂点が、係合部24bに近い側に位置し、かつ中心軸24aに接している頂点よりも、より係合部24bに近い位置にあることで形成される。
【0056】
凸部24cは、係合部材24が綱状部材23で引っ張られることで、第1止水板20に押し付けられる。このことで、凸部24cは、第1止水板20を突き破るようにして壊す。このため、凸部24cの先端は、表面積が小さいことが好ましい。これにより、第1止水板20に付加される圧力を高くすることが好ましい。
【0057】
第1止水板20が壊される所定条件の第2態様として、第1止水板20は、所定圧力で壊れる。所定圧力は、例えば、以下のようにして第1止水板20に付加される。
すなわち、
図1に示すように、鋼管杭100が水Wの上に浮かべられた状態から、円筒部10を立てた時に上側になる端部を不図示のクレーン等で吊り上げると、
図2に示すように、円筒部10の第1止水板20が設けられた側の端部が水Wの上に沈む。これにより、第1止水板20に対して水圧が付加される。この時の水圧が所定値に達することで、第1止水板20が壊れる。この態様を執る場合、第1止水板20の強度は、第1止水板20に付加される水圧を適宜計算の上設定されることが好ましい。
本実施形態では、上述の所定条件の第1態様又は第2態様によって、第1止水板20を壊す。これにより、円筒部10の内部に水Wを流入させることで、鋼管杭100を水Wの上に立て易くする。
【0058】
第2止水板30は、円筒部10の内周面に設けられる。第2止水板30は、円筒部10の長手方向の両端のうち、水底に遠い方の端の側に設けられる。つまり、第2止水板30は、円筒部10を立てた時、上側になる端の側に設けられる。
第2止水板30は、円筒部10の内部に水Wが流れ込むことを防止可能である。これにより、第1止水板20と第2止水板30とによって、円筒部10の内部を密封する。このことで、例えば、鋼管杭100を水Wの上に浮かべることができるようにする。
第2止水板30は、樹脂製である。例えば、第2止水板30には、ゴムや、プラスチックが好適に用いられる。本実施形態において、第2止水板30は、ゴム製である。
【0059】
第2止水板30は、円筒部10に設けられた不図示の第2止水板受けプレートと、第2止水板押さえプレートと、に挟まれることで、円筒部10の内周面に固定される。第2止水板受けプレート及び第2止水板押さえプレートは、それぞれ第1止水板受けプレート21及び第1止水板押さえプレート22に対応する構成である。
【0060】
第2止水板30は、所定条件で壊される。つまり、第2止水板30は、所定条件を満たすことで、不可逆的に破断する。このことで、例えば、上述のように第1止水板20を壊して円筒部10の内部に水Wを流入させることで
図4に示すように鋼管杭100を水Wの上に立てた後、第2止水板30を壊して円筒部10の内部に残った空気を抜く。このことで、円筒部10の内外の気圧を同じにする。本実施形態において、第2止水板30が壊される所定条件は、以下の2態様を備える。
【0061】
第2止水板30が壊される所定条件の第1態様として、第2止水板30は、円筒部10の外部から引っ張られることで壊される。この場合、第2止水板30には、上述した綱状部材23と、係合部材24と、が設けられる。第2止水板30に設けられた綱状部材23は、鋼管杭100が立てられた後、クレーン等によって引っ張られる点で、第1止水板20が壊される所定条件の第1態様と相違する。
【0062】
第2止水板30が壊される所定条件の第2態様として、第2止水板30は、所定圧力で壊れる。所定圧力は、例えば、以下のようにして第2止水板30に付加される。
すなわち、鋼管杭100が立てられる途中に、第1止水板20が壊され、円筒部10の内部に水Wが流入すると、円筒部10の内部の気圧が上昇する。これにより、第2止水板30に気圧が付加される。この時の気圧が所定値に達することで、第2止水板30が壊れる。この態様を執る場合、第2止水板30の強度は、第2止水板30に付加される気圧を適宜計算の上設定されることが好ましい。
本実施形態では、上述の所定条件の第1態様又は第2態様によって、第2止水板30を壊す。これにより、円筒部10の内外の気圧を同じにして、水底に打設された後の鋼管杭100を安定した状態とする。
【0063】
(鋼管杭100の施工方法)
次に、本実施形態に係る鋼管杭100の施工方法について説明する。鋼管杭100の施工方法は、吊り上げ工程と、注水工程と、打設工程と、を備える。なお、この工程は、鋼管杭100の打設場所まで、作業船によって鋼管杭100を運搬した後に行われる。鋼管杭100の運搬は、例えば、鋼管杭100を水Wの上に浮かべた状態で、作業船によって曳航することで行われる。
吊り上げ工程は、水Wの上に横たわる鋼管杭100の一端を吊り上げる工程である。吊り上げ工程は、例えば、不図示の作業船に設けられたクレーン等によって行われる。これにより、鋼管杭100の他端が水Wの中に沈む。
【0064】
注水工程は、
図3に示すように、吊り上げ工程が実施されることで鋼管杭100の他端が水Wに沈んだ状態で、第1止水板20が壊されることで鋼管杭100に水Wを流入させる工程である。上述のように、第1止水板20は、所定条件で壊される。すなわち、例えば、綱状部材23によって第1止水板20を引っ張ることで壊す。あるいは、第1止水板20に付加される水圧が所定値に達することで、第1止水板20が壊れる。これにより、円筒部10の内部に水Wを流入させる。これにより、
図4に示すように、鋼管杭100が水Wの上に立てられる。
鋼管杭100が水Wの上に立った後、第2止水板30は、上述の所定条件によって壊される。すなわち、例えば、綱状部材23によって第2止水板30を引っ張ることで壊す。あるいは、第2止水板30に付加される気圧が所定値に達することで、第2止水板30が壊れる。これにより、円筒部10の内外の気圧を同じにする。
【0065】
打設工程は、注水工程の後、鋼管杭100を、第1止水板20が壊された状態で、水底に打設する工程である。打設工程は、例えば、不図示の油圧ハンマーによって鋼管杭100を水底に打ち込むことで行われる。油圧ハンマーは、例えば、IQIP社製のS-2000、IQ2、IQ4等が用いられる。
上記各工程により、鋼管杭100は水底に打設される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼管杭100によれば、鋼管杭100は、円筒部10の内部に水Wが流れ込むことを防止可能な第1止水板20を備える。鋼管杭100を、第1止水板20によって鋼管杭100の内部に水Wが流れ込むことを防止された状態とすることで、鋼管杭100を水Wの上に浮かべることができる。これにより、例えば、鋼管杭100を水Wの上に浮かべた状態のまま作業船等で引っ張ることで、水Wの上で鋼管杭100を運搬する際に必要な力を抑えることができる。
【0067】
第1止水板20は、所定条件で壊される。これにより、第1止水板20を壊すことで、円筒部10の内部に水Wを流入させることができる。よって、杭に設けられた流入口を施工中に操作する方法と比較して、作業を容易にすることができる。
例えば、鋼管杭100を施工現場まで運搬した後に、第1止水板20を壊す。このことで、円筒部10の内部に水Wが流入すると、円筒部10の、水Wが流入した側の端部が水Wの中に沈む。これにより、水Wの上において鋼管杭100を立てることができる。したがって、クレーン等を用いて鋼管杭100の端部を吊り上げることで水Wの上に鋼管杭100を立てる場合と比較して、必要な吊り上げ力を小さくすることができる。よって、鋼管杭100の施工に用いるクレーン等に求められる性能を抑えることができる。
【0068】
また、第1止水板20は、円筒部10の外部から引っ張られることで壊される。これにより、例えば、鋼管杭100が水Wの上に浮かべられた状態で、第1止水板20に取り付けられたロープを作業船等によって引っ張ることで、第1止水板20を壊すことができる。したがって、鋼管杭100をクレーン等で吊り上げることなく、鋼管杭100のいずれかの端部を水Wの中に沈ませることで、鋼管杭100を立てることができる。
【0069】
また、第1止水板20は、所定圧力で壊れる。これにより、例えば、鋼管杭100が水Wの上に浮かべられた状態で、鋼管杭100における第1止水板20が設けられた側と反対側の端部を、クレーン等で持ち上げる。すると、鋼管杭100における第1止水板20が設けられた側の端部が水Wの中に沈む。このことで、第1止水板20に水圧を付加することで、第1止水板20を壊すことができる。したがって、クレーン等によって鋼管杭100を吊り上げることのみによって鋼管杭100を水Wの上に立てる場合と比較して、クレーン等が鋼管杭100を吊り上げる量や、吊り上げに必要な力を小さくすることができる。
【0070】
また、第1止水板20には、綱状部材23が設けられ、第1止水板20は、綱状部材23が引っ張られることで壊される。これにより、円筒部10の外部から、容易に第1止水板20を引っ張ることができる。よって、第1止水板20を容易に壊すことができる。
【0071】
また、第1止水板20には、係合部材24が設けられ、綱状部材23は、係合部材24と係合する。これにより、第1止水板20を綱状部材23によってより容易且つ確実に引っ張ることができる。
【0072】
また、凸部24cは、係合部材24が綱状部材23で引っ張られることで、第1止水板20に押し付けられ、第1止水板20を壊す。これにより、更に第1止水板20を容易に壊すことができる。
【0073】
また、係合部24bは、第1止水板20の面のうち、第1止水板20が引っ張られる側の面に設けられている。これにより、綱状部材23を係合部24bに係合しやすくすることができる。
【0074】
また、円筒部10の内周面に設けられ、且つ、円筒部10の両端のうち水底に遠い方の端の側に設けられる第2止水板30を更に備える。これにより、第1止水板20と第2止水板30とによって、円筒部10の内部に空気を密封することができる。よって、鋼管杭100を水Wの上に浮かべることができる。第1止水板20は、円筒部10の両端のうち水底に近い方の端の側に設けられる。これにより、第1止水板20を壊すことで、円筒部10の両端のうち水底に近い方の端の側から、円筒部10の内部に水Wを流入させることができる。また、例えば、第1止水板20を円筒部10の端に設けることで、第1止水板20を引っ張りやすくすることができる。
【0075】
また、第2止水板30は、ゴム製であり、且つ、所定圧力で壊れる。例えば、鋼管杭100を水Wの上に立てる際、まず、第1止水板20を壊すことで、鋼管杭100の第1止水板20が設けられた側の端部を沈ませる。このとき、第2止水板30によって、円筒部10の内部に空気を残すことで、鋼管杭100の見かけの重さを軽くすることができる。よって、クレーン等による鋼管杭100の吊り上げを容易にすることができる。また、鋼管杭100を水Wの上に立てた後に第2止水板30を壊すことで、円筒部10の内部から空気を取り除き、円筒部10の内外の気圧を同じにすることができる。よって、水底に打設された後の鋼管杭100を安定した状態とすることができる。
【0076】
また、第2止水板30は、円筒部10の外部から引っ張られることで壊される。これにより、例えば、水Wの上に鋼管杭100を立てた後、第2止水板30を円筒部10の外部から引っ張ることで壊すことができる。これにより、円筒部10の内部から空気を取り除く作業を、鋼管杭100が安定した状態で行うことができる。
【0077】
また、綱状部材23は、作業船に据え付けられる牽引装置で牽引される。これにより、第1止水板20をより大きな力で引っ張ることを容易に行うことができる。
【0078】
また、第1止水板20は、円筒部10に設けられた第1止水板押さえプレート22と、円筒部10に設けられた第1止水板受けプレート21と、に挟まれる。これにより、第1止水板20を円筒部10の内周面に確実に固定することができる。したがって、第1止水板20をより強く引っ張ることができる。よって、より第1止水板20を壊しやすくすることができる。
【0079】
また、第1止水板押さえプレート22は、環状であり、第1止水板押さえプレート22の内径は、円筒部10の両端のうち水底に近い方の端に向かうにつれ、大きくなる。よって、円筒部10の第1止水板20が設けられた側の端部から水Wが流入した時、第1止水板押さえプレート22が水流の抵抗となることを抑えることができる。また、例えば、鋼管杭100を水底に打設する時、第1止水板押さえプレート22が抵抗となることを抑えることもできる。
【0080】
また、第1止水板20は、ゴム製である。これにより、第1止水板20を壊しやすくすることができる。
【0081】
また、吊り上げ工程と、注水工程と、を備える。吊り上げ工程によって鋼管杭100の他端を水Wに沈ませることで、鋼管杭100の見かけの重さを軽くすることができる。注水工程によって鋼管杭100に水Wを流入させることで、水Wの上に鋼管杭100を立てやすくすることができる。よって、鋼管杭100を立てる際に必要な鋼管杭100の吊り上げ量を少なくすることができる。これにより、鋼管杭100を打設する作業をより容易にすることができる。
【0082】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の第2鋼管杭200を、
図9、
図10、
図11を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0083】
第2鋼管杭200は、
図9に示すように、上述の鋼管杭100が備える各構成に加えて、第3止水板40を更に備える点で、鋼管杭100と異なる。
第3止水板40は、円筒部10の内周面に設けられる。第3止水板40は、第1止水板20と第2止水板30との間に設けられる。
第3止水板40は、樹脂製である。例えば、第3止水板40には、ゴムや、プラスチックが好適に用いられる。本実施形態において、第3止水板40は、ゴム製である。
【0084】
第3止水板40は、円筒部10に設けられた不図示の第3止水板受けプレートと、第3止水板押さえプレートと、に挟まれることで、円筒部10の内周面に固定される。第3止水板受けプレート及び第3止水板押さえプレートは、それぞれ上述の第1止水板受けプレート21及び第1止水板押さえプレート22に対応する構成である。なお、第3止水板受けプレートは、円筒部10を立てた時、第3止水板40の上側になる側に設けられることが好ましい。第3止水板押さえプレートは、円筒部10を立てた時、第3止水板40の下側になる側に設けられることが好ましい。
【0085】
第3止水板40は、所定条件で壊される。つまり、第3止水板40は、所定条件を満たすことで、不可逆的に破断する。このことで、例えば、第1止水板20と第2止水板30のみが円筒部10に設けられた場合と比較して、円筒部10の内部に水Wを流入させる作業を段階的に行うことができるようにする。本実施形態において、第3止水板40が壊される所定条件は、以下の2態様を備える。
【0086】
第3止水板40が壊される所定条件の第1態様として、第3止水板40は、円筒部10の外部から引っ張られることで壊される。この場合、第3止水板40には、上述した綱状部材23と、係合部材24と、が設けられる。第3止水板40に設けられた綱状部材23は、作業船又は作業船に設けられた牽引装置によって、鋼管杭100が立てられる途中の段階において引っ張られる点で、第1止水板20が壊される所定条件の第1態様と相違する。
【0087】
第3止水板40が壊される所定条件の第2態様として、第3止水板40は、所定圧力で壊れる。所定圧力は、例えば、以下のようにして第3止水板40に付加される。
すなわち、鋼管杭100が立てられる途中に、第1止水板20が壊され、円筒部10の内部に水Wが流入すると、円筒部10の内部の気圧が上昇する。これにより、第3止水板40に気圧が付加される。この時の気圧が所定値に達することで、第3止水板40が壊れる。この態様を執る場合、第3止水板40の強度は、第3止水板40に付加される気圧を適宜計算の上設定されることが好ましい。
【0088】
なお、本実施形態において、第2止水板30は、第3止水板40より低い圧力で壊れる。つまり、第3止水板40の強度は、第2止水板30よりも高い。
本実施形態では、上述の所定条件の第1態様又は第2態様によって、第3止水板40を壊す。これにより、円筒部10の内部への水Wの流入を段階的に行うようにして、鋼管杭100を水Wの上に立てる作業をより安定して行えるようにする。
【0089】
(第2鋼管杭200の施工方法)
次に、本実施形態に係る第2鋼管杭200の施工方法について説明する。第2鋼管杭200の施工方法は、鋼管杭100の施工方法における注水工程において、第3止水板40を壊す工程を更に含む点で、鋼管杭100の施工方法と相違する。
上述のように、第3止水板40は、所定条件で壊される。すなわち、例えば、
図10に示すように、第1止水板20が壊れて、円筒部10の内部に水Wが流入した後、綱状部材23によって第3止水板40を引っ張ることで壊す。あるいは、円筒部10の内部に水Wが流入することで第3止水板40に付加される空気圧が所定値に達することで、第3止水板40が壊れる。これにより、
図10及び
図11に示すように、円筒部10の内部に段階的に水Wを流入させる。
【0090】
第2止水板30は、第3止水板40が壊れた後に、所定条件で壊される。つまり、第3止水板40を備える第2鋼管杭200を立てる際は、注水工程において、第1止水板20、第3止水板40、第2止水板30の順番に壊される。
その後、上述の打設工程によって、第2鋼管杭200を水底に打設する。
上記各工程により、第2鋼管杭200は水底に打設される。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係る第2鋼管杭200によれば、円筒部10の内周面に設けられ、且つ、第1止水板20と第2止水板30との間に設けられる第3止水板40を更に備え、第3止水板40は、ゴム製であり、且つ、円筒部10の外部から引っ張られることで壊される。これにより、円筒部10の内部に水Wを流入させる作業を段階的に行うことができる。よって、鋼管杭100の、第1止水板20が設けられた側の端部が水Wの中に沈む速度を遅くすることができる。よって、鋼管杭100を水Wの上に立てる作業をより安定して行うことができる。また、第3止水板40が壊れる前の状態において、第3止水板40と第2止水板30との間に空気を残すことができる。したがって、第3止水板40が壊れた後も、円筒部10の内部に空気を確実に残すことができる。よって、鋼管杭100を立てる際に、空気による浮力を利用しやすくすることができる。よって、より鋼管杭100の見かけの重さを軽くすることができる。
【0092】
また、第2止水板30は、第3止水板40より低い圧力で壊れる。つまり、第3止水板40の強度は、第2止水板30の強度よりも高い。これにより、第3止水板40を、鋼管杭100の第1止水板20が設けられた側の端部が水Wの中に沈む際に、円筒部10の内部に流入した水Wや、円筒部10の内部に流入した水Wによって圧縮された空気によって付加される圧力に対して、十分な強度とすることができる。
【0093】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1止水板20と作業船とをロープで繋いだ状態で、鋼管杭100におけるロープが繋がれていない側の端部をクレーン等で持ち上げることで、鋼管杭100におけるロープが繋がれた第1止水板20の設けられた側の端部を沈ませる。このことで、ロープに張力を発生させることで、第1止水板20を壊してもよい。
【0094】
また、第3止水板40は、第2止水板30より低い圧力で壊れてもよい。これにより、鋼管杭100の第1止水板20が設けられた側の端部が水Wの中に沈む際に、円筒部10の内部に流入した水Wや、円筒部10の内部に流入した水Wによって圧縮された空気によって第3止水板40に付加される圧力によって、第3止水板40を壊しやすくしてもよい。
【0095】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 円筒部
20 第1止水板
21 第1止水板受けプレート
22 第1止水板押さえプレート
23 綱状部材
24 係合部材
24a 中心軸
24b 係合部
24c 凸部
30 第2止水板
40 第3止水板
100 鋼管杭
200 第2鋼管杭
B ボルト
N ナット
【要約】
【課題】運搬性及び作業性を向上し、更に鋼管杭の施工に用いるクレーン等に求められる性能を抑えることができる鋼管杭及び鋼管杭の施工方法を提供する。
【解決手段】鋼製の円筒部10と、円筒部10の内部に水が流れ込むことを防止可能な第1止水板20であって、円筒部10の内周面に設けられる第1止水板20と、を備え、水底に打設される鋼管杭100であって、第1止水板20は、所定条件で壊されることを特徴とする。
【選択図】
図1