(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法、装置及び機器
(51)【国際特許分類】
F03B 15/04 20060101AFI20240304BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
F03B15/04 Z
F04D15/00 F
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074873
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】202210795138.X
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姚 ▲維▼▲為▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ 祖冰
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 瑞▲闊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 喜泉
(72)【発明者】
【氏名】谷 ▲ユウ▼君
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲海▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲楽▼▲穎▼
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第2550089(JP,B2)
【文献】特開昭62-017375(JP,A)
【文献】特公昭38-024273(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第111597687(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 15/04
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法であって、
可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ
の現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、
及び前記プロトタイプポンプに対応するモデルポン
プの定格運転パラメータを取得するステップ
であって、前記プロトタイプポンプは可変速揚水発電ユニットのポンプの実機であり、前記モデルポンプは前記プロトタイプポンプに基づいて構築されたモデルであり、前記現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータは現在の送電網が提供できる電力のリアルタイムパラメータを表すものであるステップと、
前記定格運転パラメータでの前記モデルポンプのモデル揚程を計算するステップと、
前記モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、前記モデル揚程での前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定するステップであって、揚程と流量との間の特性関係に基づき、前記モデル揚程に対応する各ガイドベーン開度の流量値を計算することと、効率と流量との間の特性関係に基づき、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値を決定することと、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づき、目標動作状態を決定すること
であって、前記目標動作状態は最大効率値に対応するガイドベーン開度値及び流量値であり、各ガイドベーン開度に対応する効率値を分析することにより、これらの中から最大効率値を決定し、前記最大効率値に基づいて対応するガイドベーン開度値及び流量値を決定することと、動作状態と入力パワーとの間の特性関係に基づいて、前記目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定し、前記最適な入力パワーを前記最適な運転パラメータとして決定することと、を含む、ステップと、
前記最適な運転パラメータを前記プロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換するステップ
であって、前記実際の運転パラメータは前記プロトタイプポンプの実際の運転中の運転パラメータであり、前記実際の運転パラメータは実際の運転回転数及び実際のガイドベーン開度を含み、前記モデルポンプと前記プロトタイプポンプとの間の相関性に基づいて、前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを前記プロトタイプポンプに対応する実際の運転パラメータに変換するステップと、
前記リアルタイムの電力パラメータ及び前記実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算するステップと、を含むことを特徴とする可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法。
【請求項2】
前記各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づき、前記目標動作状態を決定する前記ステップは、
前記各ガイドベーン開度に対応する効率値を比較し、最大効率値を決定するステップと、
前記最大効率値に対応する目標開度値及び目標流量値を取得するステップと、
前記目標開度値及び前記目標流量値を前記モデルポンプの目標動作状態として決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
動作状態と入力パワーとの間の特性関係に基づいて、前記目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定する前記ステップは、
流量と入力パワーとの間の特性関係に基づき、前記目標流量値に対応する最適な入力パワーを計算するステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記定格運転パラメータは定格回転数を含み、前記定格運転パラメータでの前記モデルポンプのモデル揚程を計算する前記ステップは、
前記プロトタイプポンプに対応するプロトタイプポンプの羽根車直径、実際の定格回転数とリアルタイムの揚程、及び前記モデルポンプに対応するモデルポンプの羽根車直径を取得するステップと、
前記プロトタイプポンプの羽根車直径と前記実際の定格回転数との第1積値、及び前記モデルポンプの羽根車直径と前記定格回転数との第2積値を計算するステップと、
前記第2積値と前記第1積値との第1比を計算するステップと、
前記第1比と前記リアルタイムの揚程との相関性に基づき、前記モデル揚程を算出するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最適な運転パラメータは最適な入力パワーを含み、前記実際の運転パラメータは実際の入力パワーを含み、前記最適な運転パラメータを現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換する前記ステップは、
前記第1積値と前記第2積値との第2比を計算するステップと、
前記第2比と前記最適な入力パワーとの相関性に基づき、前記最適な入力パワーに対応する前記実際の入力パワーを算出するステップと、を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記リアルタイムの電力パラメータはリアルタイムのパワーを含み、前記リアルタイムの電力パラメータ及び前記実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算する前記ステップは、
前記リアルタイムのパワーに対応するリアルタイムの効率値を取得するステップと、
前記リアルタイム効率値と前記リアルタイムのパワーとの積値を計算し、前記積値と前記実際の入力パワーとの比を計算するステップと、
前記実際の定格回転数と前記比との相関性に基づき、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプに対応する最適な回転数を算出するステップと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置であって、
可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ
の現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、
及び前記プロトタイプポンプに対応するモデルポン
プの定格運転パラメータを取得するための取得モジュール
であって、前記プロトタイプポンプは可変速揚水発電ユニットのポンプの実機であり、前記モデルポンプは前記プロトタイプポンプに基づいて構築されたモデルである取得モジュールと、
前記定格運転パラメータでの前記モデルポンプのモデル揚程を計算するための第1計算モジュールと、
前記モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、前記モデル揚程での前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定するための決定モジュールであって、揚程と流量との間の特性関係に基づき、前記モデル揚程に対応する各ガイドベーン開度の流量値を計算することと、効率と流量との間の特性関係に基づき、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値を決定することと、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づき、目標動作状態を決定すること
であって、前記目標動作状態は最大効率値に対応するガイドベーン開度値及び流量値であり、各ガイドベーン開度に対応する効率値を分析することにより、これらの中から最大効率値を決定し、前記最大効率値に基づいて対応するガイドベーン開度値及び流量値を決定することと、動作状態と入力パワーとの間の特性関係に基づいて、前記目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定し、前記最適な入力パワーを前記最適な運転パラメータとして決定することと、を含む、決定モジュールと、
前記最適な運転パラメータを前記プロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換するための変換モジュール
であって、前記実際の運転パラメータは前記プロトタイプポンプの実際の運転中の運転パラメータであり、前記実際の運転パラメータは実際の運転回転数及び実際のガイドベーン開度を含み、前記モデルポンプと前記プロトタイプポンプとの間の相関性に基づいて、前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを前記プロトタイプポンプに対応する実際の運転パラメータに変換する変換モジュールと、
前記リアルタイムの電力パラメータ及び前記実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算するための第2計算モジュールと、を備えることを特徴とする可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置。
【請求項8】
メモリ及びプロセッサを備え、前記メモリと前記プロセッサとは相互に通信可能に接続され、前記メモリにはコンピュータ命令が記憶されており、前記プロセッサは前記コンピュータ命令を実行することにより請求項1~6のいずれか1項に記載の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を実行することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
コンピュータに請求項1~6のいずれか1項に記載の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を実行させるためのコンピュータ命令が記憶されていることを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動制御の技術分野に関し、具体的には、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法、装置及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
揚水発電所は、通常、定速揚水発電ユニット及び可変速揚水発電ユニットを用いて水力発電を行う。定速揚水発電ユニットに比べて、可変速揚水発電ユニットは機械的角速度が電気角速度からデカップリングすることができ、系統連系の同期周波数を維持する前提下で、可変速揚水発電ユニットは機械的回転数及びガイドベーン開度を変えることにより、絶えず変化する運転環境に適応し、最適な動作状態をリアルタイムに追跡する目的を達成することができる。
【0003】
現在、よく用いられる最適な動作状態を追跡する方法は全特性曲線又は総合特性曲線をデータの基礎とし、全特性曲線又は総合特性曲線により可変速揚水発電ユニットの動的特性を分析することで、揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化を実現する。しかしながら、全特性曲線又は総合特性曲線はメーカーの秘密であり、メーカー以外の人が正確なデータを取得することは困難であるため、実際の運転環境に基づいてポンプの運転を最適化しにくく、それにより実際のニーズがある場合にユニットの最適な動作状態の追跡制御を実現することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明の実施例は、実際の運転環境に基づいてポンプの運転を最適化しにくく、それによりユニットの最適な動作状態の追跡制御を実現しくいという問題を解決するために、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法、装置及び機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様によれば、本発明の実施例は、可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、前記プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ及び前記モデルポンプの定格運転パラメータを取得するステップと、前記定格運転パラメータでの前記モデルポンプのモデル揚程を計算するステップと、前記モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、前記モデル揚程での前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定するステップと、前記最適な運転パラメータを前記プロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換するステップと、前記リアルタイムの電力パラメータ及び前記実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算するステップと、を含む可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を提供する。
【0006】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、モデルポンプの動作状態の特性により、プロトタイプポンプの実際の運転パラメータを決定し、その後、該実際の運転パラメータに基づいて現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを決定し、該目標運転パラメータに従って可変速揚水発電ユニットを制御して揚水運転を行う。該方法において、モデルポンプの動作状態の特性は公開されており、該データは正確に取得できるものであり、メーカーによるデータ制限を受けず、該動作状態の特性により実際の運転環境におけるポンプの運転パラメータを最適化することで、可変速揚水発電ユニットのポンプモードの最適な動作状態の追跡及び制御が実現される。
【0007】
第1態様によれば、第1態様の第1実施形態において、前記モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、前記モデル揚程での前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定する前記ステップは、揚程と流量との間の特性関係に基づき、前記モデル揚程に対応する各ガイドベーン開度の流量値を計算することと、効率と流量との間の特性関係に基づき、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値を決定することと、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づき、目標動作状態を決定することと、動作状態と入力パワーとの間の特性関係に基づいて、前記目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定し、前記最適な入力パワーを前記最適な運転パラメータとして決定することと、を含む。
【0008】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、揚程と流量との間の特性関係、効率と流量との間の特性関係及び動作状態と入力パワーとの間の特性関係により、モデルポンプの目標動作状態及び該目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定し、且つ該最適な入力パワーをシミュレートされた揚程でのモデルポンプの最適な運転パラメータとし、これにより、実機又はモデル試験を追加する必要がなくなり、試験コストが効果的に節約される。
【0009】
第1態様によれば、第1態様の第2実施形態において、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づき、前記目標動作状態を決定する前記ステップは、前記各ガイドベーン開度に対応する効率値を比較し、最大効率値を決定するステップと、前記最大効率値に対応する目標開度値及び目標流量値を取得するステップと、前記目標開度値及び前記目標流量値を前記モデルポンプの目標動作状態として決定するステップと、を含む。
【0010】
第1態様によれば、第1態様の第3実施形態において、動作状態と入力パワーとの間の特性関係に基づいて、前記目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定する前記ステップは、
流量と入力パワーとの間の特性関係に基づき、前記目標流量値に対応する最適な入力パワーを計算するステップを含む。
【0011】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、最大効率値に対応する目標開度値及び目標流量値を決定し、その後、流量と入力パワーとの間の特性関係により、目標流量値に対応する最適な入力パワーを決定し、これにより、複雑な試験操作が不要になり、モデルポンプの目標動作状態及び最適な入力パワーの取得方法が簡略化される。
【0012】
第1態様によれば、第1態様の第4実施形態において、前記定格運転パラメータは定格回転数を含み、前記定格運転パラメータでの前記モデルポンプのモデル揚程を計算する前記ステップは、前記プロトタイプポンプに対応するプロトタイプポンプの羽根車直径、実際の定格回転数とリアルタイムの揚程、及び前記モデルポンプに対応するモデルポンプの羽根車直径を取得するステップと、前記プロトタイプポンプの羽根車直径と前記実際の定格回転数との第1積値、及び前記モデルポンプの羽根車直径と前記定格回転数との第2積値を計算するステップと、前記第2積値と前記第1積値との第1比を計算するステップと、前記第1比と前記リアルタイムの揚程との相関性に基づき、前記モデル揚程を算出するステップと、を含む。
【0013】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、定格回転数、リアルタイムの揚程及びポンプの羽根車直径により、定格回転数でのモデルポンプのモデル揚程を算出し、モデル揚程の簡単な計算を実現して、後続の動作状態最適化の効率を向上させる。
【0014】
第1態様によれば、第1態様の第5実施形態において、前記最適な運転パラメータは最適な入力パワーを含み、前記実際の運転パラメータは実際の入力パワーを含み、前記最適な運転パラメータを現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換する前記ステップは、前記第1積値と前記第2積値との第2比を計算するステップと、前記第2比と前記最適な入力パワーとの相関性に基づき、前記最適な入力パワーに対応する前記実際の入力パワーを算出するステップと、を含む。
【0015】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、モデルポンプとプロトタイプポンプとの間の運転の相関性により、最適な入力パワーを実際の入力パワーに変換することで、プロトタイプポンプの実機に対して複数回の試験を行わずにプロトタイプポンプに対応する実際の入力効率を決定することができ、プロトタイプポンプの運転パラメータの取得効率を向上させて、後続のポンプの実際の運転状態の追跡及び制御を容易にする。
【0016】
第1態様によれば、第1態様の第6実施形態において、前記リアルタイムの電力パラメータはリアルタイムのパワーを含み、前記リアルタイムの電力パラメータ及び前記実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算する前記ステップは、前記リアルタイムのパワーに対応するリアルタイムの効率値を取得するステップと、前記リアルタイム効率値と前記リアルタイムのパワーとの積値を計算し、前記積値と前記実際の入力パワーとの比を計算するステップと、前記実際の定格回転数と前記比との相関性に基づき、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプに対応する最適な回転数を算出するステップと、を含む。
【0017】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、実際の定格回転数、リアルタイムの効率及びリアルタイムのパワーの間の相関性により、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの最適な回転数を算出することができ、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの効率の最適化を実現して、最適な動作状態での可変速揚水発電ユニットのリアルタイムな追跡及びリアルタイムな制御を容易にする。
【0018】
第2態様によれば、本発明の実施例は、可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、前記プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ及び前記モデルポンプの定格運転パラメータを取得するための取得モジュールと、前記定格運転パラメータでの前記モデルポンプのモデル揚程を計算するための第1計算モジュールと、前記モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、前記モデル揚程での前記モデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定するための決定モジュールと、前記最適な運転パラメータを前記プロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換するための変換モジュールと、前記リアルタイムの電力パラメータ及び前記実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態での前記プロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算するための第2計算モジュールと、を備える可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置を提供する。
【0019】
第3態様によれば、本発明の実施例は、メモリ及びプロセッサを備え、前記メモリと前記プロセッサとは相互に通信可能に接続され、前記メモリにはコンピュータ命令が記憶されており、前記プロセッサは前記コンピュータ命令を実行することにより第1態様又は第1態様のいずれかに記載の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を実行する電子機器を提供する。
【0020】
第4態様によれば、本発明の実施例は、コンピュータに第1態様又は第1態様のいずれかに記載の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を実行させるためのコンピュータ命令が記憶されているコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例に係わる可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置、電子機器、コンピュータ可読記憶媒体の対応する有益な効果は、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を参照してもよく、繰り返し説明しない。
【0022】
本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の記述のために使用した図面を簡単に説明するが、明らかに、以下に記述する図面は本発明のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な労力をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施例の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法のフローチャートである。
【
図2】本実施例の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法の別のフローチャートである。
【
図3】本実施例の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法のさらに別のフローチャートである。
【
図4】本実施例の可変速揚水発電ユニットの制御システムの構造概略図である。
【
図5】本実施例のエネルギー特性曲線の概略図である。
【
図6】本実施例の可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置の構造ブロック図である。
【
図7】本発明の実施例に係わる電子機器のハードウェアの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例の図面を参照しながら本発明の技術的解決手段を明瞭で、完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労働を必要とせずに得られた全ての他の実施例は、本発明の特許範囲に属する。
【0025】
本発明の実施例によれば、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法の実施例が提供され、説明する必要があるものとして、図面のフローチャートに示されるステップは1セットのコンピュータ実行可能命令等のコンピュータシステムで実行されてもよく、且つ、フローチャートに論理的な順序が示されているが、場合によって、示され又は説明されたステップはここでの順序と異なる順序で実行されてもよい。
【0026】
本実施例では、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法が提供され、可変速揚水発電ユニットのコントローラ、サーバ等の電子機器に用いることができ、
図1は本発明の実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化のフローチャートであり、
図1に示すように、該プロセスは、ステップS11~ステップS15を含む。
【0027】
S11:可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ及びモデルポンプの定格運転パラメータを取得する。
【0028】
プロトタイプポンプは可変速揚水発電ユニットのポンプの実機であり、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータは現在の送電網が提供できる電力のリアルタイムパラメータを表すものであり、モデルポンプはプロトタイプポンプに基づいて構築されたモデルであり、プロトタイプポンプを表すものであり、定格運転パラメータはモデルポンプのシミュレーション運転パラメータであり、該定格運転パラメータはプロトタイプポンプの運転属性に応じて設定される。
【0029】
技術者は、可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプの属性情報を電子機器に入力し、プロトタイプポンプの属性情報に基づいてそれに対応するモデルポンプを構築すると同時に、プロトタイプポンプの運転特性に基づいてモデルポンプの定格運転パラメータを設定することができる。したがって、電子機器は技術者の操作に応答し、可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプの属性パラメータ、プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ、及びモデルポンプの定格運転パラメータを取得することができる。また、電子機器はプロトタイプポンプが所属する送電網の電力パラメータを検出し、電力センサ等の電力検出機器により送電網が現在提供できるリアルタイムの電力パラメータを収集することができる。
【0030】
S12:定格運転パラメータでのモデルポンプのモデル揚程を計算する。
【0031】
モデル揚程とはモデルポンプの有効圧力水頭であり、すなわち、単位質量の流体がモデルポンプを通過することによって取得できるエネルギーの正味増加値である。モデル揚程はモデルポンプの回転数又は羽根車直径に関連し、電子機器は類似理論又は類似法則に従って、異なる回転数及び異なる直径の羽根車でのモデルポンプのモデル揚程を計算することができる。モデル揚程の計算方式は下記実施例において詳細に説明される。
【0032】
S13:モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、モデル揚程でのモデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定する。
【0033】
動作状態の特性は、
図5に示すように、水力特性に基づいて構築されたモデルポンプのエネルギー特性曲線群である。該動作状態の特性はポンプの出荷検収及び引き渡し試験の時にメーカーにより与えられ、すなわち該動作状態の特性は公開されている。最適な運転パラメータは、最適な動作状態にある時のモデルポンプの運転パラメータ、すなわち、モデル揚程でのモデルポンプに対応する最適な運転パラメータを表すものである。
【0034】
電子機器は、モデル揚程を算出した後に、エネルギー特性曲線群に従って、モデル揚程でのモデルポンプの各ガイドベーン開度の流量値及び各ガイドベーン開度に対応する効率値を決定し、次に、各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づいてモデルポンプの目標動作状態を決定し、その後、動作状態の特性に基づいて該目標動作状態に対応する最適な運転パラメータを決定する。
【0035】
S14:最適な運転パラメータをプロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換する。
【0036】
実際の運転パラメータはプロトタイプポンプの実際の運転中の運転パラメータであり、該実際の運転パラメータは実際の運転回転数及び実際のガイドベーン開度等を含む。電子機器はモデルポンプとプロトタイプポンプとの間の相関性に基づいて、モデルポンプに対応する最適な運転パラメータをプロトタイプポンプに対応する実際の運転パラメータに変換することができる。
【0037】
S15:リアルタイムの電力パラメータ及び実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算する。
【0038】
目標運転パラメータは現在の動作状態でプロトタイプポンプが最適な効率を実現する最適な運転パラメータである。プロトタイプポンプの実際の運転パラメータを得た後に、電子機器は、プロトタイプポンプが所属する送電網のリアルタイムの電力パラメータを検出し、リアルタイムの電力パラメータの実際の運転パラメータへの影響と合わせて、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを算出することができる。
【0039】
図4に示される可変速揚水発電ユニットのコントローラを例とし、該コントローラは最適動作状態追跡ユニット及び制御ユニットを含む。制御ユニットは励磁システム及び速度調節システムを含み、最適動作状態追跡ユニットは現在の運転環境(運転水頭、スケジューリングパワー命令等)に基づいて、ユニットのプロトタイプポンプの、主に最適な回転数及び最適な開度等を含む目標運転パラメータをリアルタイムで算出し、その後、目標運転パラメータを制御ユニット(励磁システム及び速度調節システム)の参照として入力し、これにより、制御ユニットは該目標運転パラメータに従ってポンプの運転状態を調整する。
【0040】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、モデルポンプの動作状態の特性により、プロトタイプポンプの実際の運転パラメータを決定し、その後、該実際の運転パラメータに基づいて現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを決定し、該目標運転パラメータに従って可変速揚水発電ユニットを制御して揚水運転を行う。該方法において、モデルポンプの動作状態の特性は公開されており、該データは正確に取得できるものであり、メーカーによるデータ制限を受けず、該動作状態の特性により実際の運転環境におけるポンプの運転パラメータを最適化することで、可変速揚水発電ユニットのポンプモードの最適な動作状態の追跡及び制御が実現される。
【0041】
本実施例では、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法が提供され、可変速揚水発電ユニットのコントローラ、サーバ等の電子機器に用いることができ、
図2は本発明の実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化のフローチャートであり、
図2に示すように、該プロセスは、ステップS21~ステップS25を含む。
【0042】
S21:可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ及びモデルポンプの定格運転パラメータを取得する。詳細な説明は上記実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0043】
S22:定格運転パラメータでのモデルポンプのモデル揚程を計算する。詳細な説明は上記実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0044】
S23:モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、モデル揚程でのモデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定する。
【0045】
具体的には、上記ステップS23は、ステップS231~ステップS234を含んでもよい。
【0046】
S231:揚程と流量との間の特性関係に基づき、モデル揚程に対応する各ガイドベーン開度の流量値を計算する。
【0047】
揚程と流量との間の特性関係は、
図5に示すように、揚程Hと流量Qとの間のデータ特性曲線群、すなわちH~Qデータ特性曲線群である。電子機器はモデル揚程H
mを取得した後に、H~Qデータ特性曲線群に従ってH
mに対応する各ガイドベーン開度a
01、a
02、…、a
0nに対応する流量値Q
m1、Q
m2、…、Q
mnを決定することができる。
【0048】
S232:効率と流量との間の特性関係に基づき、各ガイドベーン開度に対応する効率値を決定する。
【0049】
効率と流量との間の特性関係は、
図5に示すように、効率ηと流量Qとの間のデータ特性曲線群、すなわちη~Qデータ特性曲線群である。電子機器はη~Qデータ特性曲線群に従って各流量値Q
m1、Q
m2、…、Q
mnに対応する効率値η
1、η
2、…、η
n、すなわち各ガイドベーン開度に対応する効率値を決定する。
【0050】
S233:各ガイドベーン開度に対応する効率値に基づき、目標動作状態を決定する。
【0051】
目標動作状態は最大効率値に対応するガイドベーン開度値及び流量値である。電子機器は各ガイドベーン開度に対応する効率値を分析することにより、これらの中から最大効率値を決定し、その後、最大効率値に基づいて対応するガイドベーン開度値及び流量値を決定する。
【0052】
具体的には、上記ステップS223は、下記のステップ(1)~(3)を含んでもよい。
【0053】
(1)各ガイドベーン開度に対応する効率値を比較し、最大効率値を決定する。
【0054】
電子機器は、得た各ガイドベーン開度に対応する効率値η1、η2、…、ηnを比較し、最大効率値ηmaxを決定する。
【0055】
(2)最大効率値に対応する目標開度値及び目標流量値を取得する。
【0056】
電子機器はη~Qデータ特性曲線群に従って最大効率値ηmaxに対応する目標流量値Qm.optを決定することができ、それと同時に、最大効率値ηmaxに対応する目標開度値a0.optを決定することができる。
【0057】
(3)目標開度値及び目標流量値をモデルポンプの目標動作状態として決定する。
【0058】
電子機器は目標開度値a0.opt及び目標流量値Qm.optを記憶し、目標開度値a0.opt及び目標流量値Qm.optをモデルポンプの目標動作状態にする。
【0059】
S234:動作状態と入力パワーとの間の特性関係に基づいて、目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定し、最適な入力パワーを最適な運転パラメータとして決定する。
【0060】
動作状態と入力パワーとの間の特性関係は入力パワーと動作状態との間のデータ特性曲線群であり、たとえば、ガイドベーン開度と入力パワーとの間のデータ特性曲線群、流量と入力パワーとの間のデータ特性曲線群等である。電子機器は目標動作状態を取得した後に、入力パワーと動作状態との間のデータ特性曲線群に従って目標流量値又は目標開度値に対応する入力パワーを決定し、該入力パワーを目標動作状態に対応する最適な入力パワーPmとして、該目標動作状態に対応する最適な入力パワーPmをモデル揚程でのモデルポンプの最適な運転パラメータとすることができる。
【0061】
選択的に、上記ステップS224は、流量と入力パワーとの間の特性関係に基づき、目標流量値に対応する最適な入力パワーを計算するステップを含んでもよい。
【0062】
流量と入力パワーとの間の特性関係は、
図5に示すように、入力パワーPと流量との間のデータ特性曲線群、すなわちP~Qデータ特性曲線群である。電子機器は目標流量値Q
m.optを取得した後に、P~Qデータ特性曲線群に従って目標流量値Q
m.optに対応する入力パワーを決定し、該入力パワーを目標動作状態に対応する最適な入力パワーP
mとすることができる。
【0063】
S24:最適な運転パラメータをプロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換する。詳細な説明は上記実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0064】
S25:リアルタイムの電力パラメータ及び実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算する。詳細な説明は上記実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0065】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、揚程と流量との間の特性関係、効率と流量との間の特性関係及び動作状態と入力パワーとの間の特性関係により、モデルポンプの目標動作状態及び該目標動作状態に対応する最適な入力パワーを決定し、且つ該最適な入力パワーをモデル揚程でのモデルポンプの最適な運転パラメータとし、これにより、実機又はモデル試験を追加する必要がなくなり、試験コストが効果的に節約される。最大効率値に対応する目標開度値及び目標流量値を決定し、その後、流量と入力パワーとの間の特性関係により、目標流量値に対応する最適な入力パワーを決定し、これにより、複雑な試験操作が不要になり、モデルポンプの目標動作状態及び最適な入力パワーの取得方法が簡略化される。
【0066】
本実施例では、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法が提供され、可変速揚水発電ユニットのコントローラ、サーバ等の電子機器に用いることができ、
図3は本発明の実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化のフローチャートであり、
図3に示すように、該プロセスは、ステップS31~ステップS35を含む。
【0067】
S31:可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ及びモデルポンプの定格運転パラメータを取得する。詳細な説明は上記実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0068】
S32:定格運転パラメータでのモデルポンプのモデル揚程を計算する。
【0069】
具体的には、定格運転パラメータは定格回転数を含み、したがって、上記ステップS32は、ステップS321~ステップS324を含んでもよい。
【0070】
S321:プロトタイプポンプに対応するプロトタイプポンプの羽根車直径、実際の定格回転数とリアルタイムの揚程、及びモデルポンプに対応するモデルポンプの羽根車直径を取得する。
【0071】
プロトタイプポンプの羽根車直径はプロトタイプポンプの実際の羽根車直径であり、実際の定格回転数はプロトタイプポンプの実際の運転中の定格回転数であり、リアルタイムの揚程はプロトタイプポンプのリアルタイムな運転中の揚程であり、モデルポンプの羽根車直径はモデルポンプの羽根車直径である。
【0072】
具体的には、電子機器はプロトタイプポンプの属性情報に基づいてプロトタイプポンプに対応するプロトタイプポンプの羽根車直径及び実際の定格回転数を決定し、且つプロトタイプポンプのリアルタイムの運転状態を収集することによりそのリアルタイムの揚程を決定することができる。また、電子機器はモデルポンプの規則パラメータを分析することによりモデルポンプに対応する羽根車直径を決定することができる。
【0073】
S322:プロトタイプポンプの羽根車直径と実際の定格回転数との第1積値、及びモデルポンプの羽根車直径と定格回転数との第2積値を計算する。
【0074】
プロトタイプポンプの羽根車直径がD、モデルポンプの羽根車直径がDm、実際の定格回転数がn、定格回転数がnmであると、プロトタイプポンプの羽根車直径と実際の定格回転数との第1積値はD*nであり、モデルポンプの羽根車直径と定格回転数との第2積値はDm*nmである。
【0075】
S323:第2積値と第1積値との第1比を計算する。
【0076】
第1積値D*n及び第2積値D
m*n
mを得た後に、第2積値D
m*n
mと第1積値D*nとの第1比である
を引き続き計算することができる。
【0077】
S324:第1比とリアルタイムの揚程との相関性に基づき、モデル揚程を算出する。
【0078】
揚程は回転数又は羽根車直径の2乗に比例するため、第1比とリアルタイムの揚程との相関性に基づいて、モデル揚程H
mの計算式として、
を得ることができる。
【0079】
ここで、Dはプロトタイプポンプに対応するプロトタイプポンプの羽根車直径、Dmはモデルポンプに対応するモデルポンプの羽根車直径、nはプロトタイプポンプに対応する実際の定格回転数、nmはモデルポンプに対応する定格回転数、Hはプロトタイプポンプの現在のリアルタイムの揚程である。
【0080】
S33:モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、モデル揚程でのモデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定する。詳細な説明は上記実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0081】
S34:最適な運転パラメータをプロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換する。
【0082】
具体的には、最適な運転パラメータは最適な入力パワーを含み、実際の運転パラメータは実際の入力パワーを含み、したがって、上記ステップS34は、ステップS341と、ステップS342と、を含んでもよい。
【0083】
S341:第1積値と第2積値との第2比を計算する。
【0084】
第1積値D*n及び第2積値D
m*n
mを得た後に、電子機器は第1積値D*nと第2積値D
m*n
mとの第2比である
をさらに計算する。
【0085】
S342:第2比と最適な入力パワーとの相関性に基づき、最適な入力パワーに対応する実際の入力パワーを算出する。
【0086】
実際の入力パワーは第2比の3乗又は羽根車直径の2乗に比例するため、第2比と最適な入力パワーとの相関性に基づいて、実際の入力パワーPの計算式として
を得る。
【0087】
ここで、Dはプロトタイプポンプに対応するプロトタイプポンプの羽根車直径、Dmはモデルポンプに対応するモデルポンプの羽根車直径、nはプロトタイプポンプに対応する実際の定格回転数、nmはモデルポンプに対応する定格回転数、Pmは最適な入力パワーである。
【0088】
S35:リアルタイムの電力パラメータ及び実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算する。
【0089】
具体的には、リアルタイムの電力パラメータはリアルタイムのパワーを含み、したがって、上記ステップS35は、ステップS351~ステップS353を含んでもよい
【0090】
S351:リアルタイムのパワーに対応するリアルタイムの効率値を取得する。
【0091】
電子機器は送電網のリアルタイムのパワーPeを収集した後に、P~Qデータ特性曲線群及びη~Qデータ特性曲線と組み合わせて、リアルタイムのパワーPeに対応するリアルタイムの効率値ηeを決定することができる。
【0092】
S352:リアルタイムの効率値とリアルタイムのパワーとの積値を計算し、該積値と実際の入力パワーとの比を計算する。
【0093】
リアルタイムの効率値η
e及びリアルタイムのパワーP
eを得た後に、電子機器はリアルタイムの効率値η
eとリアルタイムのパワーP
eとの積値P
e*η
eを計算し、且つ積値P
e*η
eと実際の入力パワーPとの比である
をさらに計算する。
【0094】
S353:実際の定格回転数と該比との相関性に基づき、現在の動作状態でのプロトタイプポンプに対応する最適な回転数を算出する。
【0095】
最適な回転数は実際の定格回転数の3乗又は比
に比例するため、比
と実際の定格回転数との相関性に基づいて、最適な回転数n
optの計算式
を得ることができる。
【0096】
ここで、Peはリアルタイムのパワー、ηeはリアルタイムの効率値、nはプロトタイプポンプに対応する実際の定格回転数、Pは実際の入力パワーである。
【0097】
電子機器は上記計算式に従ってプロトタイプポンプの最適な回転数を計算することができ、可変速揚水発電ユニットの効率がポンプの最適な回転数に関連するため、プロトタイプポンプの最適な回転数を得ると、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の効率の最適化が実現され、可変速揚水発電ユニットが出力する最大効率が得られる。
【0098】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法は、定格回転数、リアルタイムの揚程及びポンプの羽根車直径により、定格回転数でのモデルポンプのモデル揚程を算出し、モデル揚程の簡単な計算を実現して、後続の動作状態最適化の効率を向上させる。モデルポンプとプロトタイプポンプとの間の運転の相関性により、最適な入力パワーを実際の入力パワーに変換することで、プロトタイプポンプの実機に対して複数回の試験を行わずにプロトタイプポンプに対応する実際の入力効率を決定することができ、プロトタイプポンプの運転パラメータの取得効率を向上させて、後続のポンプの実際の運転状態の追跡及び制御を容易にする。実際の定格回転数、リアルタイムの効率及びリアルタイムのパワーの間の相関性により、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの最適な回転数を算出することができ、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの効率の最適化を実現して、最適な動作状態での可変速揚水発電ユニットのリアルタイムな追跡及びリアルタイムな制御を容易にする。
【0099】
本実施例では、可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置がさらに提供され、該装置は上記実施例及び好ましい実施形態を実現することに用いられ、説明された内容は繰り返し説明されない。以下で用いられる「モジュール」という用語は、所定の機能を実現するソフトウェア及び/又はハードウェアの組合せであり得る。以下の実施例に説明される装置は好ましくはソフトウェアで実装されるが、ハードウェア、又はソフトウェアとハードウェアとの組合せの実装も可能であって、かつ想定されている。
【0100】
本実施例は、
図6に示すように、取得モジュール41と、第1計算モジュール42と、決定モジュール43と、変換モジュール44と、第2計算モジュール45と、を備える可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置を提供する。
【0101】
前記取得モジュール41は、可変速揚水発電ユニットに対応するプロトタイプポンプ、現在の動作状態のリアルタイムの電力パラメータ、プロトタイプポンプに対応するモデルポンプ及びモデルポンプの定格運転パラメータを取得することに用いられる。詳細な説明は上記方法実施例に対応する関連する説明を参照し、ここでは繰り返し説明しない。
【0102】
前記第1計算モジュール42は、定格運転パラメータでのモデルポンプのモデル揚程を計算することに用いられる。
【0103】
前記決定モジュール43は、モデル揚程に対応する動作状態の特性に基づき、モデル揚程でのモデルポンプに対応する最適な運転パラメータを決定することに用いられる。
【0104】
前記変換モジュール44は、最適な運転パラメータをプロトタイプポンプの実際の運転パラメータに変換することに用いられる。
【0105】
前記第2計算モジュール45は、リアルタイムの電力パラメータ及び実際の運転パラメータに基づいて、現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを計算することに用いられる。
【0106】
本実施例に係る可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置は、モデルポンプの動作状態の特性により、プロトタイプポンプの実際の運転パラメータを決定し、その後、該実際の運転パラメータに基づいて現在の動作状態でのプロトタイプポンプの目標運転パラメータを決定し、該目標運転パラメータに従って可変速揚水発電ユニットを制御して揚水運転を行う。該装置は公開されているモデルポンプの動作状態の特性に基づいて実際の運転環境におけるポンプの運転パラメータを最適化することができ、メーカーによるデータ制限を受けず、可変速揚水発電ユニットの最適な動作状態の追跡及び制御が実現される。
【0107】
本実施例における可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置は機能ユニットの形態で具現化され、ここでのユニットは、ASIC回路、1つ又は複数のソフトウェア又は固定プログラムを実行するプロセッサ及びメモリ、及び/又は上記機能を提供できるその他のデバイスである。
【0108】
上記各モジュールのさらなる機能の説明は上記対応する実施例と同じであり、ここでは繰り返し説明しない。
【0109】
本発明の実施例は、上記
図6に示される可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化装置を有する電子機器をさらに提供する。
【0110】
図7を参照して、
図7は本発明の実施例に係わる電子機器のハードウェアの構造概略図であり、
図7に示すように、該機器は、中央プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)等の少なくとも1つのプロセッサ501と、少なくとも1つの通信インタフェース503と、メモリ504と、少なくとも1つの通信バス502とを含んでもよい。通信バス502はこれらの構成要素の間の接続通信を実現することに用いられる。通信インタフェース503はディスプレイ(Display)、キーボード(Keyboard)を含んでもよく、選択可能に、通信インタフェース503は標準的な有線インタフェース、無線インタフェースをさらに含んでもよい。メモリ504は高速ランダムアクセスメモリ(RAM:Ramdom Access Memory)であってもよく、少なくとも1つのディスクメモリ等の不揮発性メモリ(non-volatile memory)であってもよい。選択可能に、メモリ504は、上記プロセッサ501から離れて配置された少なくとも1つの記憶装置であってもよい。プロセッサ501は、
図5に記載の装置を参照してもよく、メモリ504にはアプリケーションプログラムが記憶され、かつプロセッサ501はメモリ504に記憶されるプログラムコードを呼び出して、上記いずれかの方法を実行する。
【0111】
通信バス502はペリフェラル・コンポーネント・インターコネクト(PCI:peripheral component interconnect)バス又は拡張業界標準構造(EISA:extended industry standard architecture)バス等であってもよい。通信バス502はアドレスバス、データバス、制御バス等に分けることができる。図示の便宜上、
図7では一本の線のみが示されているが、一本のバス又は1種類のバスのみを有することを表すわけではない。
【0112】
メモリ504は揮発性メモリ(volatile memory)、たとえばランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)を含んでもよく、不揮発性メモリ(non-volatile memory)、たとえばフラッシュメモリ(flash memory)、ハードディスク(HDD:hard disk drive)、又はソリッドステートドライブ(solid state drive、SSD)を含んでもよく、メモリ504はまた上記種類のメモリの組み合わせを含んでもよい。
【0113】
プロセッサ501は、中央プロセッサ(CPU:central processing unit、ネットワークプロセッサ(NP:network processor)又はCPUとNPの組み合わせであってもよい。
【0114】
プロセッサ501はさらにハードウェアチップを含んでもよい。上記ハードウェアチップは特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)、プログラマブルロジックデバイス(PLD:programmable logic device)又はその組み合わせであってもよい。上記PLDは複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)、汎用アレイロジック(GAL:generi carray logic)又はその任意の組み合わせであってもよい。
【0115】
選択可能に、メモリ504はさらにプロクラム命令を記憶することに用いられる。プロセッサ501はプログラム命令を呼び出して、本願の
図1及び実施例3に示される可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を実現することができる。
【0116】
本発明の実施例はコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、コンピュータ可読記憶媒体にはコンピュータ実行可能命令が記憶され、該コンピュータ実行可能命令は上記方法実施例のいずれかにおける可変速揚水発電ユニットのポンプの動作状態の最適化方法を実行することができる。記憶媒体は磁気ディスク、光ディスク、読み出し専用メモリ(ROM:Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)又はソリッドステートドライブ(SSD:Solid-StateDrive)等であってもよく、記憶媒体はまた上記種類のメモリの組み合わせを含んでもよい。
【0117】
図面を参照しながら本発明の実施例を説明したが、当業者は本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに様々な変更や変形を行うことができ、このような変更や変形はいずれも添付の特許請求の範囲に定められる範囲に属する。