(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】炭素固定化支援システム、炭素固定化支援装置、及び車両
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/30 20230101AFI20240304BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20240304BHJP
C10B 57/00 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
G06Q10/30
B09B3/00
C10B57/00
(21)【出願番号】P 2023118393
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 康平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 康一
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ 慎也
(72)【発明者】
【氏名】北村 修平
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】下村 智彦
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-78913(JP,A)
【文献】特開2009-223386(JP,A)
【文献】特開2006-99285(JP,A)
【文献】特開2004-239533(JP,A)
【文献】特開2002-304462(JP,A)
【文献】特開2022-153140(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0147953(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113102457(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B09B 3/00
C10B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料を回収する車両と通信可能に構成された炭素固定化支援装置であって、
バイオマス原料を回収した位置情報と、回収した前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量に関する情報又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量に関する情報とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記車両から取得するエリア情報取得手段と、
取得した前記炭素固定化エリア情報を蓄積するエリア情報データベースと、
前記車両から位置情報又は前記車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両の位置情報又は前記車両識別情報から特定される対象エリアを特定し、特定した対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報を前記エリア情報データベースから取得して、前記車両に送信するエリア情報提供手段と
を備える炭素固定化支援装置。
【請求項2】
前記エリア情報データベースに蓄積された前記炭素固定化エリア情報に基づいてバイオマス原料の回収場所を示す回収エリアマップを作成するマップ作成手段を備え、
前記エリア情報提供手段は、前記エリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両の位置情報又は前記車両識別情報から特定される対象エリアに対応する回収エリアマップを前記車両に送信する請求項1に記載の炭素固定化支援装置。
【請求項3】
前記原料炭素量と前記バイオマス原料を回収するために前記車両から排出された排出炭素量とに基づいて生成された炭素固定化情報を取得する炭素情報取得手段と、
前記炭素情報取得手段によって取得された前記炭素固定化情報を蓄積する炭素情報データベースと
を備える請求項1に記載の炭素固定化支援装置。
【請求項4】
前記炭素情報データベースに蓄積された前記炭素固定化情報に基づいて炭素クレジットの認証機関に対して炭素クレジットの申請を行う炭素クレジット申請手段を備える請求項3に記載の炭素固定化支援装置。
【請求項5】
バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置と通信可能に構成されるとともに、バイオマス原料を回収する車両であって、
前記バイオマス原料の組成分析結果及び前記バイオマス原料の重量を取得する原料情報取得手段と、
前記組成分析結果及び前記重量を用いて、前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量を演算する原料炭素量演算手段と、
前記バイオマス原料を回収した位置情報と前記原料炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を生成するエリア情報生成手段と、
前記炭素固定化エリア情報を前記炭素固定化支援装置に送信する送信手段と
を備える車両。
【請求項6】
前記バイオマス原料からバイオ製品を製造するバイオ製品製造システムと、
製造された前記バイオ製品の組成分析結果及び前記バイオ製品の重量を取得する製品情報取得手段と、
前記製品情報取得手段によって取得された組成分析結果及び前記重量を用いて、前記バイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量を演算する製品炭素量演算手段と
を備え、
前記エリア情報生成手段は、前記バイオマス原料を回収した位置情報と、前記原料炭素量及び前記製品炭素量の少なくともいずれか一つとを関連付けた前記炭素固定化エリア情報を生成する請求項5に記載の車両。
【請求項7】
バイオマス原料の回収場所を探索し、又は、バイオマス原料を回収し、運搬するための飛行体が発着する発着ポートを有するとともに、前記飛行体と通信可能に構成された請求項5に記載の車両。
【請求項8】
前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品の組成分析結果に基づいて、前記バイオ製品が製品規格に適合しているか否かを判定する規格適合判定手段を備える請求項5に記載の車両。
【請求項9】
前記バイオマス原料を回収するために排出された排出炭素量を演算する排出炭素量演算手段と、
前記原料炭素量と前記排出炭素量とに基づいて炭素固定化情報を生成する炭素化情報生成手段と
を備え、
前記送信手段は、前記炭素固定化情報を前記炭素固定化支援装置に送信する請求項5に記載の車両。
【請求項10】
前記炭素固定化情報は、前記原料炭素量から前記排出炭素量を減算した正味炭素量を含む請求項9に記載の車両。
【請求項11】
請求項1に記載の炭素固定化支援装置と請求項5に記載の車両とを備える炭素固定化支援システム。
【請求項12】
バイオマス原料を回収する車両と、バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置との間で情報を授受することにより炭素固定化を支援する炭素固定化支援方法であって、
前記車両は、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収した前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記炭素固定化支援装置に送信し、
前記炭素固定化支援装置は、前記炭素固定化エリア情報をエリア情報データベースに蓄積するとともに、前記車両から位置情報又は前記車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両の位置情報又は前記車両識別情報から対象エリアを特定し、特定した前記対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報を前記エリア情報データベースから取得して、前記車両に送信する炭素固定化支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭素固定化支援システム、炭素固定化支援装置、及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇化及びCO2排出による地球温暖化への対策として、従来、廃棄物として扱われていた木質バイオマスなどのバイオマスを資源化して有効利用することが提案されている。
例えば、製材所や木材市場では、バーク(木の樹皮)が大量に発生する。また、森林、公園、河川では、草刈りや剪定等により、大量の枝葉が発生する。これらを廃棄処理することなく回収してバイオ炭等のバイオ燃料を生成して資源化することで、廃棄処理のための費用を削減できるとともにCO2削減を図ることができる。
【0003】
ところで、こういった木材や枝葉などのバイオマス原料は、全国に広く点在している。したがって、このようなバイオマス原料を効率的に回収し、資源化することが望まれる。
例えば、特許文献1には、全国に散在する廃棄材業者から加工業者に対して廃棄材を安定的に供給し、加工業者において廃棄材を炭化物(例えば、木材炭化物粉粒)に加工することで、廃棄材の有効利用を実現する廃棄材のリサイクルシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される廃棄材のリサイクルシステムは、廃棄材業者と加工業者との間における廃棄材の安定的な供給を行うものであり、広く点在しているバイオマス原料を効率的に回収し、資源化することについては考慮されていない。
バイオマス原料の有効利用に際し、バイオマス原料を効率的に回収することは重要である。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、バイオマス原料の効率的な回収を支援することのできる炭素固定化支援システム、炭素固定化支援装置、及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、バイオマス原料を回収する車両と通信可能に構成された炭素固定化支援装置であって、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収した前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量に関する情報又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量に関する情報とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記車両から取得するエリア情報取得手段と、取得した前記炭素固定化エリア情報を蓄積するエリア情報データベースと、前記車両から位置情報又は前記車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両の位置情報又は前記車両識別情報から特定される対象エリアを特定し、特定した対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報を前記エリア情報データベースから取得して、前記車両に送信するエリア情報送信手段とを備える炭素固定化支援装置である。
【0008】
本開示の一態様は、バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置と通信可能に構成されるとともに、バイオマス原料を回収する車両であって、前記バイオマス原料の組成分析結果及び前記バイオマス原料の重量を取得する原料情報取得手段と、前記組成分析結果及び前記重量を用いて、前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量を演算する原料炭素量演算手段と、前記バイオマス原料を回収した位置情報と前記原料炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を生成するエリア情報生成手段と、前記炭素固定化エリア情報を前記炭素固定化支援装置に送信する送信手段とを備える車両である。
【0009】
本開示の一態様は、上記炭素固定化支援装置と上記車両とを備える炭素固定化支援システムである。
【0010】
本開示の一態様は、バイオマス原料を回収する車両と、バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置との間で情報を授受することにより炭素固定化を支援する炭素固定化支援方法であって、前記車両は、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収した前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記炭素固定化支援装置に送信し、前記炭素固定化支援装置は、前記炭素固定化エリア情報をエリア情報データベースに蓄積するとともに、前記車両から位置情報又は前記車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両の位置情報又は前記車両識別情報から対象エリアを特定し、特定した前記対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報を前記エリア情報データベースから取得して、前記車両に送信する炭素固定化支援方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の炭素固定化支援システム、炭素固定化支援装置、及び車両によれば、バイオマス原料の効率的な回収を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る炭素固定化支援システムの構成を概略的に示したシステム構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る車両の概略構成を示した図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る炭化管理装置が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る炭素固定化支援装置が備える機能の一例を示した機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る炭素固定化支援システム、炭素固定化支援装置、及び車両の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る炭素固定化支援システム1の構成を概略的に示したシステム構成図である。
図1に示すように、ネットワーク8には、複数の車両10(具体的には、車両10に搭載される炭化管理装置20(
図3参照))と、炭素固定化支援装置50とが接続されている。
図1に示した例では、3台の車両10が図示されているが、車両10の接続台数はこれに限られない。各車両10と炭素固定化支援装置50とは、例えば、ネットワーク8を介して互いに通信が可能な構成とされている。
【0014】
図2は、本実施形態に係る車両10の概略構成を示した図である。車両10は、例えば、バイオマス原料の発生地を巡回し、バイオマス原料を回収する。更に、車両10は、回収したバイオマス原料からバイオ製品を製造するバイオ製品製造システム2を搭載している。バイオ製品の一例として、バイオ炭、バイオ燃料等が挙げられる。
また、車両10は、バイオ製品製造システム2にバイオマス原料を供給する原料搬送手段として、コンベヤ3を備えていてもよい。
【0015】
また、車両10は、クレーン4を備えていてもよい。クレーン4は、例えば、バイオ製品製造システム2にバイオマス原料を搬入するために用いられる。また、クレーン4は、バイオ製品製造システム2によって製造されたバイオ製品を搬出するために用いられる。例えば、クレーン4の先端には、ワイヤを介してカゴが連結されており、カゴにバイオマス原料やバイオ製品が収容されることにより、バイオマス原料の搬入、バイオ製品の搬出が行われる。
【0016】
また、車両10には、ドローン(飛行体)5の発着基地として機能するドローンポート(発着ポート:図示略)が設けられている。ドローンポートには、ドローン5を充電するためのドローン充電装置(図示略)が設けられている。
ドローン5は、例えば、バイオマス原料の回収作業を支援する装置として機能する。例えば、ドローン5は、バイオマス原料の回収場所を探索し、回収場所に関する情報を取得するために用いられる。また、ドローン5は、例えば、バイオ製品製造システム2によって製造されたバイオ製品(例えば、バイオ炭)を農地などに散布または漉き込む作業を支援する装置として機能してもよい。例えば、ドローン5は、バイオ炭を漉き込む土地を探索し、バイオ炭を漉き込む土地に関する情報を取得するために用いられてもよい。
【0017】
また、ドローン5は、バイオマス原料やバイオ製品を回収して運搬する回収装置を装備していてもよい。回収装置を装備することで、回収場所の情報収集だけでなく、バイオマス原料を回収して車両10に運搬したり、車両10からバイオ製品を農地などに運搬して散布することが可能となる。
回収装置は、公知の技術を用いればよい。例えば、ドローン5に固定されたウインチから繰り出された支持ワイヤの先端に運搬物を掴みこむ爪状の支持具が設けられており、支持具が開閉することにより、運搬物の回収や散布等を可能とする構成が挙げられる。
【0018】
バイオ製品製造システム2は、例えば、乾燥装置11、粉砕機12、熱分解炉13、及び燃焼室14を備えている。
乾燥装置11は、例えば、コンベヤ3から投入されたバイオマス原料を乾燥させる。バイオマス原料は、例えば、木材からなる木質バイオマス(生物資源)であり、樹木の伐採や造材のときに発生した枝、葉などの林地残材、製材工場などから発生する樹皮(バーク)、樹皮(バーク)や鋸屑等から生成される木質ペレット、木質チップ等である。
乾燥装置11として、例えば、ベルト上に載置されたバイオマス原料に高温のガスを接触させて乾燥させるベルト乾燥機を採用することが可能である。また、乾燥装置11として、ベルト乾燥機に代えて、ロータリーキルン式乾燥機、ディスク乾燥機等を採用することが可能である。乾燥装置11の加熱方式は間接加熱、直接加熱のいずれでもよい。
【0019】
粉砕機12は、乾燥後のバイオマス原料を適切な大きさに粉砕する。また、粉砕機12は、熱分解炉13で製造されたバイオ製品(例えば、バイオ炭、バイオ燃料等)を粉砕可能な構成とされている。
熱分解炉13は、例えば、バイオマス原料を熱分解してバイオ炭、バイオ燃料等のバイオ製品を生成する。熱分解炉13は、燃焼室14を備えている。燃焼室14は、燃料を燃焼させ、熱を発生させる。また、燃焼室14には、粉砕機12によって粉砕されたバイオマス原料の一部が燃料として投入されてもよい。熱分解炉13は、燃焼室14から供給される熱によってバイオマス原料を間接的に加熱し、熱分解やガス化反応を起こさせる。熱分解の進行により、バイオマス原料は熱分解ガスを発生しながら炭化される。生成されたバイオ燃料(例えば、バイオ炭等)は、例えば、所定の回収容器(図示略)に排出され、収容される。また、バイオ炭等のバイオ燃料は、上述したように、粉砕機12によって粉砕された後に、回収容器に収容されてもよい。
熱分解炉13の加熱方式は、間接加熱、直接加熱のいずれでもよい。熱分解炉13の一例として、間接加熱式ロータリーキルン、直接加熱式ロータリーキルン、流動床炉、スクリュー型炭化炉等が挙げられる。
【0020】
ここで、バイオ製品製造システム2の構成は一例であり、これに限られない。例えば、粉砕機12を省略したような構成としてもよい。また、バイオ製品製造システム2の運転制御については、公知の技術と適宜組み合わせることとしてもよい。例えば、上述したバイオ製品製造システム2の各種運転条件(例えば、乾燥温度、乾燥時間、粉砕の細かさ、熱分解の温度、時間、酸素濃度等)については、公知の技術を適宜採用することが可能である。
【0021】
また、
図3に示すように、車両10には、バイオマス原料の重量を計測する重量計測装置(重量計測手段)31、バイオマス原料の組成分析を行う組成分析装置(組成分析手段)32が備えられている。組成分析装置32は、例えば、バイオマス原料の組成分析を行い、バイオマス原料に含有される炭素量、具体的には、バイオマス原料の単位重量当たりの炭素含有率を測定する。分析手法として、例えば、「JIS M 8812:2004(又は2006) 石炭類及びコークス類-工業分析方法」に基づく固定炭素比率、また「JIS M 8813:2004(または2006) 石炭類及びコークス類-元素分析方法」に記載される「リービッヒ改良法」等を用いることが可能である。
【0022】
更に、車両10には、バイオ製品の重量を計測する製品重量計測装置34、バイオ製品の組成分析を行う製品組成分析装置35が備えられていてもよい。製品組成分析装置35は、バイオ製品の組成分析を行い、バイオ製品に含有される炭素量、具体的には、バイオ製品の単位重量当たりの炭素含有率を測定する。分析手法として、例えば、「JIS M 8812:2004(または2006) 石炭類及びコークス類-工業分析方法」等を用いることが可能である。また、精錬度を測定することとしてもよい。精錬度とは、例えば、バイオ製品がバイオ炭の場合には、バイオ炭に電流を通した結果として測定される電気抵抗の度合いで決定される値であり、精錬計と呼ばれる機械を用いて計測される。ここで、精錬度が示す値は、炭化の度合いが高い、すなわち炭素の純度が高くバイオ炭の品質が良質である場合には、電気抵抗は低くなるため、精錬度としては低くなり、逆に炭化の度合いが低い、すなわち炭素の純度が低くバイオ炭の品質が劣る場合には、電気抵抗は高くなるため、精錬度としては高くなる。
【0023】
また、
図3に示すように、車両10には、例えば、バイオマス原料の回収からバイオ炭等のバイオ製品の製造までの一連の工程を管理するための炭化管理装置20が搭載されている。炭化管理装置20は、コンピュータであり、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)、外部インターフェース、通信インターフェースなどを備えている。後述する各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)が主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールされている形態や、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0024】
図3に示すように、炭化管理装置20は、通信部21及び位置情報取得部22を備えている。
通信部(送信手段・受信手段)21は、ネットワーク8等を介して外部装置と接続し、外部装置との間で情報の授受を行う。外部装置の一例として、炭素固定化支援装置50、ドローン5、他の車両10等が挙げられる。
位置情報取得部22は、車両10の位置を取得する。位置情報取得部22は、例えば、GPSなどであり、種々の公知のデバイスや技術を適宜採用すればよい。
【0025】
また、炭化管理装置20は、原料情報取得部23、原料炭素量演算部24、及びエリア情報生成部25を備えている。
原料情報取得部23は、重量計測装置31によって計測されたバイオマス原料の重量及び組成分析装置32による分析結果、具体的には、バイオマス原料の単位重量当たりの炭素含有率を取得する。
原料炭素量演算部24は、バイオマス原料の組成分析結果及び重量を用いて、バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量を演算する。具体的には、バイオマス原料の単位重量当たりの炭素含有率を重量に乗じることにより、バイオマス原料に含まれる炭素量を演算する。
エリア情報生成部25は、バイオマス原料を回収した位置情報と原料炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を生成する。エリア情報生成部25によって生成された炭素固定化エリア情報は、通信部21を介して炭素固定化支援装置50に送信される。
【0026】
また、炭化管理装置20は、排出炭素量演算部26と、炭素化情報生成部27とを備えている。
排出炭素量演算部26は、例えば、車両10に搭載されている車両制御装置36と通信し、バイオマス原料を回収するために排出された排出炭素量を演算する。例えば、排出炭素量は、燃料消費量(例えば、電気消費量、軽油消費量、ガソリン消費量)から演算することが可能である。排出炭素量演算部26は、例えば、燃料消費量を排出炭素量に換算するための換算式を有しており、換算式に燃料消費量を代入することで排出炭素量を演算する。また例えば、燃料消費量は車両に給油を行う際の給油量から求めることも可能であり、この給油量を排出炭素量演算部26に入力することによって排出炭素量を演算してもよい。
【0027】
炭素化情報生成部27は、原料炭素量演算部24によって演算された原料炭素量と排出炭素量演算部26によって演算された排出炭素量とを用いて炭素固定化情報を生成する。例えば、炭素化情報生成部27は、原料炭素量から排出炭素量を減算することにより正味炭素量を演算し、正味炭素量を炭素固定化情報として通信部21に出力する。
通信部21は、炭素固定化情報を炭素固定化支援装置50に送信する。
【0028】
また、炭化管理装置20は、製品情報取得部28と、製品炭素量演算部29と、規格適合判定部30とを備えていてもよい。
製品情報取得部28は、製品重量計測装置34によって計測されたバイオ製品の重量及び製品組成分析装置35による分析結果、具体的には、バイオ製品の単位重量当たりの炭素含有率を取得する。
製品炭素量演算部29は、バイオ製品の組成分析結果及び重量を用いて、バイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量を演算する。具体的には、バイオ製品の単位重量当たりの炭素含有率を重量に乗じることにより、バイオ製品に含まれる炭素量を演算する。
規格適合判定部30は、製品炭素量演算部29によって演算されたバイオ製品に含まれる炭素量が規格情報に適合しているか否かを判定する。例えば、規格適合判定部30は、製造されたバイオ製品(例えば、バイオ炭やバイオ燃料等)などがそれぞれ設けられた所定の規格を満たしているか否かを判定することにより、販売等が可能な品質を有しているか否かを判定する。
【0029】
次に、炭素固定化支援装置50について説明する。炭素固定化支援装置50は、車両10と通信可能に構成されており、車両10等と情報の授受を行うことにより、炭素固定化の支援を行う。
炭素固定化支援装置50は、コンピュータであり、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)、外部インターフェース、通信インターフェースなどを備えている。後述する各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)が主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールされている形態や、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0030】
図4は、炭素固定化支援装置50が備える機能の一例を示した機能構成図である。
図4に示すように、炭素固定化支援装置50は、例えば、通信部51、エリア情報取得部52、エリア情報データベース53、マップ作成部54、及びエリア情報提供部55を備えている。
【0031】
通信部51は、ネットワーク8等を介して外部装置と接続し、外部装置との間で情報の授受を行う。外部装置の一例として、複数の車両10、ドローン5等が挙げられる。
エリア情報取得部52は、各車両10から炭素固定化エリア情報を取得し、取得した炭素固定化エリア情報をエリア情報データベース53に格納する。
【0032】
エリア情報データベース53には、各車両10から受信した炭素固定化エリア情報が格納される。ここで、炭素固定化エリア情報とは、上述したように、例えば、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収したバイオマス原料に含まれる炭素量とを関連付けた情報である。これにより、エリア情報データベース53には、過去にバイオマス原料の回収が行われた場所の情報とその場所で回収されたバイオマス原料に含まれる炭素量の情報が蓄積されることとなる。
【0033】
マップ作成部54は、エリア情報データベース53に蓄積された炭素固定化エリア情報に基づいてバイオマス原料の回収場所を示す回収エリアマップを作成する。例えば、マップ作成部54は、地図上にバイオマス原料の回収場所をプロットすることにより回収エリアマップを作成する。また、回収エリアマップには、例えば、各回収場所に関連付けられてその回収場所で回収したバイオマス原料に含まれていた炭素量が示されている。例えば、炭素量は数値で示されてもよい。また、回収エリアマップは、エリア面積に対するバイオマス原料の炭素量の割合をヒートマップで示したマップであってもよい。
【0034】
エリア情報提供部55は、車両10からその車両の位置情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、車両10の位置情報に対応する対象エリアを特定する。例えば、エリア情報提供部55は、車両10の位置情報を中心とした所定範囲(例えば、半径2kmの範囲)を対象エリアとして特定する。
ここで、エリア情報送信要求には、車両10の位置情報に代えて、車両10を特定可能な車両識別情報が含まれていてもよい。この場合、車両識別情報と、車両10が担当する対象エリアとが関連付けられた情報を有しており、この情報に基づいて車両識別情報に対応する対象エリアを特定すればよい。
【0035】
続いて、エリア情報提供部55は、特定した対象エリアに対応する回収エリアマップを取得し、取得した回収エリアマップを車両10に送信する。これにより、回収エリアマップが、エリア情報送信要求の送信元である車両10に通信部51を介して送信される。
これにより、車両10の運転手は、受信した回収エリアマップに基づいて、効率的にバイオマス原料を回収することが可能となる。
【0036】
また、炭素固定化支援装置50は、炭素情報取得部56、炭素情報データベース57、及び炭素クレジット申請部58を備えている。
炭素情報取得部56は、車両10から炭素固定化情報を取得し、取得した炭素固定化情報を炭素情報データベース57に格納する。これにより、炭素情報データベース57には、各車両10から受信した炭素固定化情報が蓄積される。
炭素クレジット申請部58は、炭素情報データベース57に蓄積された炭素固定化情報に基づいて炭素クレジットの認証機関に対して炭素クレジットの申請を行う。
【0037】
次に、本実施形態に係る炭素固定化支援方法について説明する。
例えば、車両10は、バイオマス原料の回収を開始する場合に、位置情報取得部22によって取得された現在の位置情報とともにエリア情報送信要求を炭素固定化支援装置50に送信する。
炭素固定化支援装置50は、エリア情報送信要求を受信すると、エリア情報送信要求に含まれる位置情報に基づいて対象エリアを特定し、特定した対象エリアに該当する回収エリアマップを取得し、取得した回収エリアマップを、当該エリア情報送信要求の送信元である車両10に送信する。
【0038】
車両10は、回収エリアマップを受信すると、車載のディスプレイ等に回収エリアマップを表示する。車両10の運転手は、回収エリアマップを確認し、回収エリアマップに従って車両10を移動させることにより、バイオマス原料の回収に向かう。このとき、回収エリアマップには、各回収場所において回収が見込まれるバイオマス原料の炭素量が示されるので、炭素量の多い場所を優先的に回ることで、運転手は効率よくバイオマス原料の回収を行うことができる。なお、バイオマス原料の回収については、車両を回収場所まで移動させるのに加えて、ドローン5を飛ばすことにより、ドローン5を用いてバイオマス原料の回収や運搬を行うこととしてもよい。また、ドローン5は、周辺におけるバイオマス原料の回収場所を探索するために用いることも可能である。このように、ドローン5を用いて新たなバイオマス原料の回収場所を探索し、新たな回収場所においてバイオマス原料の回収が行われることにより、炭素固定化支援装置50によって管理される回収エリアマップを充実したものにすることが可能となる。
【0039】
回収場所においてバイオマス原料の回収が行われると、回収されたバイオマス原料の組成分析が組成分析装置32によって行われるとともに、重量計測装置31によって重量計測が行われる。そして、これらの分析結果及び計測重量に基づいて、バイオマス原料に含有される炭素量が演算される。
続いて、演算された炭素量と回収場所とが関連付けられた炭素固定化エリア情報が生成され、炭素固定化支援装置50に送信される。
【0040】
炭素固定化支援装置50は、炭素固定化エリア情報を受信すると、この情報をエリア情報データベース53に蓄積する。
そして、複数の車両10がバイオマス原料の各回収場所において、炭素固定化エリア情報を生成して、炭素固定化支援装置50に送信することで、エリア情報データベース53には新しい情報が随時蓄積され、これに伴い、回収エリアマップが随時更新されることとなる。
【0041】
また、車両10では、回収場所に移動するために車両10から排出された排出炭素量が演算される。そして、バイオマス原料の炭素量から排出炭素量が減算されることにより、正味炭素量が演算され、炭素固定化情報として炭素固定化支援装置50に送信される。
炭素固定化支援装置50は、炭素固定化情報を受信すると、これを炭素情報データベース57に蓄積する。そして、所定のタイミングにおいて、炭素情報データベース57に格納されている炭素固定化情報に基づいて炭素クレジットの申請が認証期間に対して行われる。申請のタイミングは、炭素固定化情報を受信する度に行うこととしてもよいし、所定の時間間隔(例えば、1日毎、1か月毎、数か月毎など)でまとめて行うこととしてもよい。
【0042】
また、車両10では、バイオ製品製造システム2が作動することにより、回収したバイオマス原料からバイオ製品が製造され、バイオ製品の組成分析が製品組成分析装置35によって行われるとともに、製品重量計測装置34によって重量計測が行われる。そして、これらの分析結果及び計測重量に基づいて、バイオ製品に含有される炭素量が演算される。続いて、炭素量等の含有成分がバイオ製品の品質を判定するための製品規格を満たしているか否かが判定される。このように、バイオ製品に含まれる成分量などに基づいて、バイオ製品が一定の品質を満たしているか否かを判定することにより、バイオ製品の品質を一定以上に保つことができ、安定した品質のバイオ製品をユーザに提供することが可能となる。
【0043】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、バイオマス原料を回収する車両10と、炭素固定化を支援する炭素固定化支援装置50とがネットワーク8を介して通信可能な構成とされている。そして、車両10は、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収したバイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を炭素固定化支援装置50に送信する。炭素固定化支援装置50は、各車両から受信した炭素固定化エリア情報をエリア情報データベース53に蓄積する。
これにより、バイオマス原料の回収場所について多くのデータを蓄積し、管理することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態によれば、炭素固定化支援装置50は、車両10から位置情報又は車両10を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、これらの情報から対象エリアを特定し、特定した対象エリアに対応する回収エリアマップを車両10に送信する。これにより、車両10の現在位置周辺に存在するバイオマス原料の回収場所を車両10に通知することが可能となる。この結果、バイオマス原料の効率的な回収を支援することができる。更に、炭素固定化エリア情報には、回収場所の位置情報だけでなく、その回収場所で回収したバイオマス原料に含まれる炭素量の情報が関連付けられているので、炭素量を多く回収できる回収場所を特定することができ、回収効率を更に向上させることが可能となる。
【0045】
以上、本開示に係る炭素固定化支援システム1、炭素固定化支援装置50、及び車両10について実施形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。開示の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
例えば、上述した実施形態におけるバイオ製品製造システム2の構成は一例であり、これに限られない。例えば、粉砕機12を省略したような構成としてもよい。また、粉砕機12に代えて断裁機を用いることとしてもよい。
【0047】
例えば、上述した実施形態において、炭素固定化エリア情報は、バイオマス原料を回収した位置情報と原料炭素量とを関連付けた情報としたが、これに限られない。例えば、炭素固定化エリア情報は、原料炭素量に加えて、又は、代えて、製品炭素量が関連付けられた情報としてもよい。また、炭素固定化エリア情報には、その回収場所で回収されたバイオマス原料の単位重量当たりの炭素量、その回収場所で回収されたバイオマス原料の積算量、その回収場所で回収されたバイオマス原料から製造されたバイオ製品の単位重量当たりの炭素量、又は、回収場所で回収されたバイオマス原料から製造されたバイオ製品の積算量等の少なくとも一つを含んでいてもよい。
また、炭素固定化エリア情報に基づいて作成される回収エリアマップについては、例えば、これらの情報が数値でそれぞれ示されてもよいし、数値に対応した色別や濃淡で表示されるヒートマップとして示されてもよい。
【0048】
また、炭素固定化支援システム1は、バイオ製品(例えば、バイオ炭)を散布または漉き込む土地についても、バイオマス原料の回収場所と同様の手法によって管理してもよい。例えば、車両10(又はドローン5)が農地等に対してバイオ炭の散布または漉き込みを行った場合、その散布または漉き込みの場所と散布または漉き込んだバイオ製品の重量とを関連付けた情報を炭素固定化支援装置50に送信し、この情報を炭素固定化支援装置50が統括的に管理することとしてもよい。
【0049】
また、炭素固定化支援装置50には、国土交通省による土地分類調査・土地利用図、農林水産省によるeMAFF農地ナビ、及び国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構による日本土壌インベントリ等の公開情報から、適切な地目や土壌分類の情報を取得し、これらの情報に基づいて炭素固定化(バイオ製品の散布または漉き込み)を行う土地情報が蓄積された土地データベースを有していてもよい。そして、車両10からバイオ製品の散布または漉き込みについてのエリア情報送信要求を受信した場合に、土地データベースから現在位置に近い土地情報を車両10に送信することとしてもよい。これにより、バイオ製品の利用についても効率的に行うことが可能となる。また、車両10から炭素固定化支援装置50に対して、バイオ製品の組成成分の分析結果を送信することとすれば、バイオ製品の成分に適した土地情報を提供することも可能となる。
【0050】
また、炭素固定化支援システム1は、車両10の運行情報、バイオ製品製造システム2の運転情報、バイオ製品の組成成分分析結果、副生物の蓄積・堆積状況、部品交換頻度、腐食や摩耗による減肉の程度などからバイオ製品製造システム2の残寿命を予測し、予測した残寿命に基づいて、メンテナンスの内容や時期を提案する機能を更に有していてもよい。
【0051】
以上説明した一実施形態に記載の炭素固定化支援システム、炭素固定化支援装置、及び車両は、例えば以下のように把握される。
【0052】
本開示の第1態様に係る炭素固定化支援装置(50)は、バイオマス原料を回収する車両(10)と通信可能に構成された炭素固定化支援装置(50)であって、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収した前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量に関する情報又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量に関する情報とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記車両から取得するエリア情報取得手段(52)と、取得した前記炭素固定化エリア情報を蓄積するエリア情報データベース(53)と、前記車両から位置情報又は前記車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両の位置情報又は前記車両識別情報から特定される対象エリアを特定し、特定した対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報を前記エリア情報データベースから取得して、前記車両に送信するエリア情報提供手段(55)とを備える。
【0053】
上記態様によれば、バイオマス原料を回収した位置情報と、その回収場所において回収したバイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量に関する情報とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記車両から取得し、取得した炭素固定化エリア情報を蓄積するエリア情報データベースとを備えている。これにより、車両から受信した炭素固定化エリア情報を統括的に管理することが可能となる。これにより、バイオマス原料の回収場所について多くのデータを蓄積することが可能となる。
更に、車両から位置情報又は該車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、車両の位置情報又は車両識別情報から特定される対象エリアを特定し、特定した対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報をエリア情報データベースから取得して、車両に送信する。これにより、車両の現在位置周辺に存在するバイオマス原料の回収場所を通知することが可能となる。これにより、バイオマス原料の効率的な回収を支援することができる。更に、炭素固定化エリア情報には、回収場所の位置情報だけでなく、その回収場所で回収したバイオマス原料に含まれる炭素量又はそれらバイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量の情報が関連付けられているので、炭素量を多く回収できる回収場所を特定することができ、回収効率を更に向上させることが可能となる。
【0054】
本開示の第2態様に係る炭素固定化支援装置(50)は、第1態様において、前記エリア情報データベース(53)に蓄積された前記炭素固定化エリア情報に基づいてバイオマス原料の回収場所を示す回収エリアマップを作成するマップ作成手段(54)を備え、前記エリア情報提供手段(55)は、前記エリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両(10)の位置情報又は前記車両識別情報から特定される対象エリアに対応する回収エリアマップを前記車両(10)に送信する。
【0055】
上記態様によれば、炭素固定化エリア情報に基づいて回収場所と炭素量の情報とが関連付けられた回収エリアマップが作成され、この回収エリアマップが車両に送信される。このように、地図上にバイオマス原料の回収場所が示された情報が送信されるので、車両を目的の回収場所まで容易に移動させることが可能となる。
【0056】
本開示の第3態様に係る炭素固定化支援装置(50)は、第1又は第2態様において、前記原料炭素量と前記バイオマス原料を回収するために前記車両(10)から排出された排出炭素量とに基づいて生成された炭素固定化情報を取得する炭素情報取得手段(56)と、前記炭素情報取得手段(56)によって取得された前記炭素固定化情報を蓄積する炭素情報データベース(57)とを備える。
【0057】
上記態様によれば、各車両が回収したバイオマス原料に含まれる原料炭素量と、それらバイオマス原料を回収するために排出した排出炭素量とに基づいて生成された炭素固定化情報を統括的に管理することが可能となる。
【0058】
本開示の第4態様に係る炭素固定化支援装置(50)は、第3態様において、前記炭素情報データベース(57)に蓄積された前記炭素固定化情報に基づいて炭素クレジットの認証機関に対して炭素クレジットの申請を行う炭素クレジット申請手段(58)を備える。
【0059】
上記態様によれば、炭素クレジットの認証機関に対して炭素クレジットの申請が行われることとなる。これにより、炭素クレジットの申請作業の労力や時間を削減することが可能となる。
【0060】
本開示の第5態様に係る車両(10)は、バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置(50)と通信可能に構成されるとともに、バイオマス原料を回収する車両(10)であって、前記バイオマス原料の組成分析結果及び前記バイオマス原料の重量を取得する原料情報取得手段(23)と、前記組成分析結果及び前記重量を用いて、前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量を演算する原料炭素量演算手段(24)と、前記バイオマス原料を回収した位置情報と前記原料炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を生成するエリア情報生成手段(25)と、前記炭素固定化エリア情報を前記炭素固定化支援装置(50)に送信する送信手段(21)とを備える。
【0061】
上記態様によれば、回収したバイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量と、それらのバイオマス原料を回収した位置情報とを関連付けた炭素固定化エリア情報を炭素固定化支援装置に送信する。これにより、炭素固定化支援装置は、どこの回収場所でどの程度の炭素量が回収されたのかを管理することが可能となる。
【0062】
本開示の第6態様に係る車両(10)は、第5態様において、前記バイオマス原料からバイオ製品を製造するバイオ製品製造システム(2)と、製造された前記バイオ製品の組成分析結果及び前記バイオ製品の重量を取得する製品情報取得手段(28)と、前記製品情報取得手段(28)によって取得された組成分析結果及び前記重量を用いて、前記バイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量を演算する製品炭素量演算手段(29)とを備え、前記エリア情報生成手段(25)は、前記バイオマス原料を回収した位置情報と、前記原料炭素量及び前記製品炭素量の少なくともいずれか一つを関連付けた前記炭素固定化エリア情報を生成する。
【0063】
上記態様によれば、車両にはバイオ製品を製造するバイオ製品製造システムが搭載されているので、バイオマス原料の回収場所又は移動中において、バイオ製品を製造することが可能となる。これにより、バイオ製品を効率的に製造することが可能となる。また、炭素固定化エリア情報には、原料炭素量及び製品炭素量の少なくともいずれか一つが含まれるので、炭素固定化支援装置は、どの回収場所においてどの程度の炭素量を固定化できたのかを把握することが可能となる。
【0064】
本開示の第7態様に係る車両(10)は、第5態様又は第6態様において、バイオマス原料の回収場所を探索し、又は、バイオマス原料を回収し、運搬するための飛行体(5)が発着する発着ポートを有するとともに、前記飛行体(5)と通信可能に構成されている。
【0065】
上記態様によれば、車両のいる位置から飛行体を飛行させることにより、車両を移動させることなく、その周辺地域のバイオマス原料の発生状況等の情報を収集することが可能となる。これにより、バイオマス原料の回収場所の情報を効率的に収集することが可能となり、バイオマス原料そのものも効率的に回収することが可能となる。
【0066】
本開示の第8態様に係る車両(10)は、第5態様から第7態様のいずれかにおいて、前記バイオマス原料から製造された前記バイオ製品の組成分析結果に基づいて、前記バイオ製品が製品規格に適合しているか否かを判定する規格適合判定手段(30)を備える。
【0067】
上記態様によれば、バイオ製品の組成分析を行い、この組成分析結果に基づいてバイオ製品が製品規格に適合しているか否かを判定するので、一定以上の品質を維持することが可能となる。
【0068】
本開示の第9態様に係る車両(10)は、第5態様から第8態様のいずれかにおいて、前記バイオマス原料を回収するために排出された排出炭素量を演算する排出炭素量演算部(26)と、前記原料炭素量と前記排出炭素量とに基づいて炭素固定化情報を生成する炭素化情報生成手段(27)とを備え、前記送信手段(21)は、前記炭素固定化情報を前記炭素固定化支援装置(50)に送信する。
【0069】
上記態様によれば、原料炭素量と前記排出炭素量とに基づいて生成された炭素固定化情報を炭素固定化支援装置に通知することが可能となる。
【0070】
本開示の第10態様に係る車両(10)は、第9態様において、前記炭素固定化情報は、前記原料炭素量から前記排出炭素量を減算した正味炭素量を含む。
【0071】
上記態様によれば、原料炭素量から排出炭素量を減算することにより正味炭素量が演算されるので、より正確な炭素固定化の情報を取得することが可能となる。
【0072】
本開示の第11態様に係る炭素固定化支援システム(1)は、第1態様から第4態様のいずれかに係る炭素固定化支援装置(50)と、第5態様から第10態様のいずれかに係る車両(10)とを備える。
【0073】
本開示の第12態様に係る炭素固定化支援方法は、バイオマス原料を回収する車両(10)と、バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置(50)との間で情報を授受することにより炭素固定化を支援する炭素固定化支援方法であって、前記車両(10)は、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収した前記バイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量又は回収した前記バイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を前記炭素固定化支援装置(50)に送信し、前記炭素固定化支援装置(50)は、前記炭素固定化エリア情報をエリア情報データベース(53)に蓄積するとともに、前記車両(10)から位置情報又は前記車両を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、前記車両(10)の位置情報又は前記車両識別情報から対象エリアを特定し、特定した前記対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報を前記エリア情報データベース(53)から取得して、前記車両(10)に送信する。
【符号の説明】
【0074】
1 :炭素固定化支援システム
2 :バイオ製品製造システム
5 :ドローン(飛行体)
8 :ネットワーク
10 :車両
20 :炭化管理装置
21 :通信部(送信手段)
22 :位置情報取得部
23 :原料情報取得部(原料情報取得手段)
24 :原料炭素量演算部(原料炭素量演算手段)
25 :エリア情報生成部(エリア情報生成手段)
26 :排出炭素量演算部(排出炭素量演算手段)
27 :炭素化情報生成部(炭素化情報生成手段)
28 :製品情報取得部(製品情報取得手段)
29 :製品炭素量演算部(製品炭素量演算手段)
30 :規格適合判定部(規格適合判定手段)
31 :重量計測装置
32 :組成分析装置
34 :製品重量計測装置
35 :製品組成分析装置
36 :車両制御装置
50 :炭素固定化支援装置
51 :通信部
52 :エリア情報取得部(エリア情報取得手段)
53 :エリア情報データベース
54 :マップ作成部(マップ作成手段)
55 :エリア情報提供部(エリア情報提供手段)
56 :炭素情報取得部(炭素情報取得手段)
57 :炭素情報データベース
58 :炭素クレジット申請部(炭素クレジット申請手段)
【要約】
【課題】バイオマス原料の効率的な回収を支援すること。
【解決手段】炭素固定化支援システム1は、バイオマス原料を回収する車両10と、バイオマス原料の回収場所を管理する炭素固定化支援装置50とを備えている。車両10は、バイオマス原料を回収した位置情報と、回収したバイオマス原料に含まれる炭素量である原料炭素量又は回収したバイオマス原料から製造されたバイオ製品に含まれる炭素量である製品炭素量とを関連付けた炭素固定化エリア情報を炭素固定化支援装置50に送信する。炭素固定化支援装置50は、炭素固定化エリア情報をエリア情報データベースに蓄積するとともに、車両10から位置情報又は車両10を特定可能な車両識別情報を含むエリア情報送信要求を受信した場合に、車両10の位置情報又は車両識別情報から対象エリアを特定し、特定した対象エリアに対応する炭素固定化エリア情報をエリア情報データベースから取得して、車両10に送信する。
【選択図】
図1