(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ドライアイス噴射装置
(51)【国際特許分類】
B08B 7/00 20060101AFI20240304BHJP
B05B 7/14 20060101ALI20240304BHJP
B05B 7/28 20060101ALI20240304BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20240304BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20240304BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B08B7/00
B05B7/14
B05B7/28
B24C1/00 A
B24C11/00 E
B24C5/04
(21)【出願番号】P 2023123026
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-07-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】森光 孝典
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-226290(JP,A)
【文献】特表2008-522813(JP,A)
【文献】国際公開第2005/084831(WO,A1)
【文献】特表2016-511135(JP,A)
【文献】特開昭63-266836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 7/00
B05B 7/14
B05B 7/28
B24C 1/00
B24C 11/00
B24C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化二酸化炭素が供給される液化二酸化炭素供給路と、
前記液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する
内径0.2~0.3mmの噴出孔と、
前記噴出孔から噴出される
-20℃(2.5MPa)~25℃(6MPa)の液化二酸化炭素を段階的に拡大する膨脹空間
であり、
1段目の内径aが2.4~4mm、長さがa×(0.2~1.0)であり、
2段目の内径bがa×(1.2~2.2)、長さがb×(0.2~1.0)であり、
最終段の内径cがb×(1.1~2.0)、長さがc×(0.5~5.2)であり、
全長が10~30mmである膨脹空間により膨張させてドライアイス粒子を生成するドライアイス生成管と
を有
し、
前記膨脹空間の1段目を通過する二酸化炭素ガスの平均流速が70~100m/secであるドライアイス噴射装置。
【請求項2】
前記膨脹空間の2段目を通過する二酸化炭素ガスの平均流速が20~40m/secである請求項
1記載のドライアイス噴射装置。
【請求項3】
前記膨脹空間の最終段を通過する二酸化炭素ガスの平均流速が6~20m/secである請求項
2記載のドライアイス噴射装置。
【請求項4】
前記ドライアイス粒子が接触する表面または全体が、熱伝導率0.5W/m・K以下の樹脂により形成されたものである請求項1から
3のいずれか1項に記載のドライアイス噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化二酸化炭素から生成したドライアイス粒子を噴射するドライアイス噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化二酸化炭素を利用してドライアイス粒子を生成し、圧縮されたガスと混合して対象物へ噴射し、対象物の表面から汚染物質を除去するドライアイス洗浄技術は以前から知られている。液化二酸化炭素を利用してドライアイス粒子を生成する方式には、一般的には液化二酸化炭素を圧入した圧力容器からオリフィスノズルや絞り弁を用いてドライアイス生成管へ噴出させる方法がある。液化二酸化炭素をドライアイス生成管に開放すると液体から気体に変化し、550倍に体積膨張する。気体はジュールトムソン効果で急激に冷却され、二酸化炭素ガスと固体(ドライアイス)へ変化する。
【0003】
一般的なドライアイス噴射装置は、二酸化炭素ガスとドライアイス粒子を、ノズル内部、もしくは外部で加速用ガスと混合して噴射する構造となっている(例えば、特許文献1~4参照。)。上記構造では、オリフィスノズルや絞り弁等を用いて液化二酸化炭素を噴射させるドライアイス生成管は、配管状の膨張空間となっており、ドライアイス粒子が生成される比率に応じた大きさとなっている。例えば、非特許文献1には、ドライアイス粒子は噴射されるガス中で中位径が約1μmになることが実測されており、円筒チャンバーを取付けると粒子が凝集し、中位径は100μmになると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-122805号公報
【文献】特開2019-72813号公報
【文献】特開2016-87745号公報
【文献】特開2003-145429号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】劉 奕宏、松坂 修二,ドライアイス粒子の形成と表面洗浄への応用,エアロゾル研究,日本エアロゾル学会,2013年,第28巻,第2号,ページp.155-162
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、対象物の表面から汚染物質を除去する際、ファンデルワールス力で付着する微粒子除去には上記従来のドライアイス噴射装置を用いてドライアイス粒子をガスで加速して衝突させることが効果的である。しかしながら、それ以上の強固な付着物(ガラスの乾燥シミや精密金型の付着樹脂など)の場合、強く凝集した硬質のドライアイス粒子でなければ剥離除去することは困難である。
【0007】
そのため、強固な付着物を剥離除去するには、プレス工程を施すことにより生成した粒子径100μm以上のペレット・ドライアイス粒子をガスで噴射させる必要があるが、その場合、この100μm以上の大きなペレット・ドライアイス粒子径以下の狭い隙間の洗浄は不可能である。
【0008】
そこで、本発明においては、粒子径の小さい硬質なドライアイス粒子を生成することが可能なドライアイス噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のドライアイス噴射装置は、液化二酸化炭素が供給される液化二酸化炭素供給路と、液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、噴出孔から噴出される液化二酸化炭素を段階的に拡大する膨脹空間により膨張させてドライアイス粒子を生成するドライアイス生成管とを有するものである。
【0010】
本発明のドライアイス噴射装置によれば、噴出孔から膨脹空間へ噴出された液化二酸化炭素は短時間で減圧されて液体から気体に変化するとともに、気体はジュールトムソン効果で急激に冷却され、気体(二酸化炭素ガス)と固体(平均粒子径1μm程度のドライアイス微粒子)へ変化する。このとき、膨脹空間の1段目の段差により乱流が発生し、その渦の力により平均粒子径1μm程度のドライアイス粒子を凝集させる。そして、膨脹空間の2段目以降の段差においても同様に乱流が発生し、その渦の力により段階的にドライアイス粒子を成長させることにより、平均粒子径10~20μmの硬質なドライアイス粒子が生成される。つまり、平滑で段差の無い膨張空間ではドライアイス微粒子が膨張空間内壁面にできる数μm厚の壁面境界層内で柔らかく凝集してしまうので、それを防ぐために一定の段差を設けて高速の乱流を壁面で作ることで壁面境界層を破壊し、ドライアイス粒子を渦力で強く凝集させる。
【0011】
ここで、膨脹空間の全長は10~30mmであることが望ましい。膨脹空間の全長が10mmより短い場合、ドライアイス粒子の平均粒子径が10μmより小さくなり、硬度が柔らかくなる。また、膨脹空間の全長が30mmより長い場合、ドライアイス粒子の平均粒子径が大きくなりすぎ、硬度が柔らかくなる。
【0012】
また、本発明のドライアイス噴射装置は、ドライアイス粒子が接触する表面または全体が、熱伝導率0.5W/m・K以下の樹脂により形成されたものであることが望ましい。これにより、ドライアイス粒子が接触する表面または全体が外部と断熱され、ドライアイス粒子の昇華を減らすことができる。
【発明の効果】
【0013】
(1)液化二酸化炭素が供給される液化二酸化炭素供給路と、液化二酸化炭素供給路から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔と、噴出孔から噴出される液化二酸化炭素を段階的に拡大する膨脹空間により膨張させてドライアイス粒子を生成するドライアイス生成管とを有することにより、平均粒子径10~20μmの硬質なドライアイス粒子を生成し、強固な付着物を除去することが可能となる。
【0014】
(2)ドライアイス粒子が接触する表面または全体が、熱伝導率0.5W/m・K以下の樹脂により形成されたものであることにより、ドライアイス粒子が接触する表面または全体が外部と断熱され、ドライアイス粒子の昇華を減らすことができるので、液化二酸化炭素から生成するドライアイス生成効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態におけるドライアイス噴射装置の要部を示す断面図である。
【
図2】
図1のドライアイス生成管の要部拡大断面図である。
【
図3】ノズルの噴射口におけるドライアイス粒子の粒径の分布を示したグラフである。
【
図4】剥離試験後のアルミ板表面の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態におけるドライアイス噴射装置の要部を示す断面図、
図2は
図1のドライアイス生成管の要部拡大断面図である。なお、本明細書中において、「~」で表される数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0017】
図1に示すように、ドライアイス噴射装置1は、液化二酸化炭素を供給する液化二酸化炭素供給管2と、加速用ガスを供給する加速用ガス供給管3と、ドライアイス粒子を生成するドライアイス生成管4と、加速用ガス供給管3を通じて供給される加速用ガスとドライアイス生成管4から流出するドライアイス粒子とが合流する合流部5Aを内部に有する合流部材5と、合流部5Aで加速用ガスと合流したドライアイス粒子を加速して超音速噴射するノズル6とを備える。
【0018】
液化二酸化炭素供給管2は、合流部材5の基端部に接続されている。液化二酸化炭素供給管2は液化二酸化炭素が供給される液化二酸化炭素供給路2Aを有する。液化二酸化炭素供給管2の先端部は合流部材5の合流部5A内に突出している。ドライアイス生成管4は、この合流部5A内に突出した液化二酸化炭素供給管2の先端部に設けられている。
【0019】
ドライアイス生成管4は、噴出孔7Aから噴出される液化二酸化炭素を段階的に拡大する膨脹空間8を有する。膨脹空間8は、第1~第3の膨脹空間8A,8B,8Cにより構成される。ドライアイス生成管4にはオリフィス部7が設けられている。オリフィス部7には、1つの噴出孔7Aと第1の膨脹空間8Aが形成されている。
【0020】
本実施形態においては噴出孔7Aの内径を0.2~0.3mmとしている。オリフィス部7は、液化二酸化炭素供給路2Aの下流端とドライアイス生成管4との境界に設けられている。噴出孔7Aは、液化二酸化炭素供給路2Aから供給される液化二酸化炭素を第1の膨脹空間8A内へ噴出する。本実施形態においては、第1の膨脹空間8A内へ噴出する液化二酸化炭素の温度および圧力を-20℃(2.5MPa)~25℃(6MPa)としている。
【0021】
ドライアイス生成管4は、噴出孔7Aから噴出された液化二酸化炭素を段階的に拡大する膨脹空間8、すなわち第1~第3の膨脹空間8A~8Cにより順次膨張させてドライアイス粒子を生成する。第1の膨脹空間8Aは、段階的に拡大する膨脹空間8の最初の段、すなわち1段目である。第1の膨脹空間8Aの内径aは2.4~4mm、長さeはa×(0.2~1.0)である。また、第1の膨脹空間8Aは、
図2に示すように、噴出孔7Aの出口に対して120~180°の開先7Bにより接続されている。
【0022】
第2の膨脹空間8Bは、段階的に拡大する膨脹空間8の2段目である。第2の膨脹空間8Bの内径bはa×(1.2~2.2)、長さfはb×(0.2~1.0)である。また、本実施形態においては、第2の膨脹空間8Bは第1の膨脹空間8Aとの接続部に開先を設けていないが、120~180°の開先を設けることもできる。なお、第1の膨脹空間8Aと第2の膨脹空間8Bとの接続部に開先を設けた場合、この開先は第1の膨脹空間8Aの長さeに含むものとする。
【0023】
第3の膨脹空間8Cは、段階的に拡大する膨脹空間8の3段目、すなわち最終段である。第3の膨脹空間8Cの内径cはb×(1.1~2.0)、長さgはc×(0.5~5.2)である。また、本実施形態においては、第3の膨脹空間8Cは第2の膨脹空間8Bとの接続部に開先を設けていないが、120~180°の開先を設けることもできる。なお、第2の膨脹空間8Bと第3の膨脹空間8Cとの接続部に開先を設けた場合、この開先は第2の膨脹空間8Bの長さfに含むものとする。
【0024】
第1の膨脹空間8Aの内径aは、この第1の膨脹空間8Aを通過する二酸化炭素ガスの平均流速が70~100m/secとなるように設定されたものである。第2の膨脹空間8Bの内径bは、この第2の膨脹空間8Bを通過する二酸化炭素ガスの平均流速が20~40m/secとなるように設定されたものである。第3の膨脹空間8Cの内径cは、この第3の膨脹空間8Cを通過する二酸化炭素ガスの平均流量が6~20m/secとなるように設定されたものである。また、膨脹空間8の全長dは10~30mmとしている。
【0025】
上記構成のドライアイス生成管4では、噴出孔7Aから膨脹空間8へ噴出された液化二酸化炭素は短時間で減圧されて液体から気体に変化するとともに、気体はジュールトムソン効果で急激に冷却され、気体(二酸化炭素ガス)と固体(平均粒子径1μm程度のドライアイス微粒子)へ変化する。このとき、膨脹空間8の1段目の段差、すなわち噴出孔7Aの内径と第1の膨脹空間8Aの内径aとの段差により乱流が発生し、その渦の力により平均粒子径1μm程度のドライアイス粒子が凝集する。
【0026】
そして、膨脹空間8の2段目以降の段差、すなわち第1の膨脹空間8Aの内径aと第2の膨脹空間8Bの内径bとの段差および第2の膨脹空間8Bの内径bと第3の膨脹空間8cの内径cとの段差においても同様に乱流が発生し、その渦の力によりドライアイス粒子が成長する。これにより、ドライアイス生成管4では、平均粒子径10~20μmの硬質なドライアイス粒子が生成される。
【0027】
加速用ガス供給管3は、合流部材5の基端部側方に接続されている。加速用ガス供給管3は加速用ガスが供給される加速用ガス供給路3Aを有する。本実施形態においては、加速用ガスとして0.4~0.6MPaのドライエアを使用している。加速用ガス供給路3Aから合流部5Aへ供給された加速用ガスはドライアイス生成管4の周囲からノズル6の方向へ流れ、ドライアイス生成管4で生成されたドライアイス粒子と合流する。なお、加速用ガスとして、露点温度の低いガスを使用することができ、ドライエアの他、窒素ガスや炭酸ガスなどを使用しても良い。
【0028】
ノズル6は、合流部材5の先端部に接続されている。ノズル6は、流れ方向に流路断面積が縮小する縮小部6Aと、流路断面積が最も小さいスロート部6Bと、ラバル形状の拡張部6Cとを有する。縮小部6Aは、縮小角fで縮小する円錐状の流路である。縮小角αは10~30°としている。縮小部6Aの上流端の断面積は、合流部5Aの下流端の断面積と同じである。
【0029】
スロート部6Bは、縮小部6Aと拡張部6Cとの間で狭まった部分である。スロート部6Bの内径は3mmとしている。噴出孔7Aからスロート部6Bまでの距離Lは40~120mmとしている。拡張部6Cは、例えばFoelschの方法を用いて計算されたラバル形状である。噴射口6Dの内径Mは4.5mmとしている。合流部5Aで加速用ガスと合流したドライアイス粒子は、加速用ガスの流れに乗ってノズル6内の縮小部6Aからスロート部6Bおよび拡張部6Cを順に経ることにより超音速まで加速され、噴射口6Dに至る。
【0030】
上記構成のドライアイス噴射装置1では、液化二酸化炭素供給路2Aから供給される液化二酸化炭素が噴出孔7Aを通じてドライアイス生成管4の膨脹空間8内へ噴出され、この段階的に拡大する膨脹空間8内で断熱膨張することにより平均粒子径10~20μmの硬質のドライアイス粒子が形成され、ドライアイス生成管4から合流部5Aへ噴出される。
【0031】
このドライアイス生成管4から噴出されたドライアイス粒子は、加速用ガス供給路3Aから供給される加速用ガスと合流部5Aで合流し、加速用ガスの流れに乗る。このとき、本実施形態におけるドライアイス噴射装置1では、噴出孔7Aからスロート部6Bまでの距離が40~120mmであることから、ドライアイス粒子は合流部5Aおよび縮小部6Aの内部壁面に触れることなく混合されるので、凝集が成長することがなく、また壁面に熱が奪われることもなく、加速用ガスと混合されながらスロート部6Bに達し、ラバル形状の拡張部6Cで超音速となり、噴射口6Dから外部に均一な粒子密度で超音速噴射される。したがって、このドライアイス噴射装置1では、配管を加熱することなくスロート部6Bの閉塞を防止することが可能となり、ドライアイス粒子を均一な粒子密度で超音速噴射することができる。
【0032】
図3はノズル6の噴射口6Dにおけるドライアイス粒子の粒子径Dの分布を示したグラフである。
図3に示されるように、ドライアイス粒子の粒子径Dは40μm以下が多く、10~20μmがほとんどであった。
【0033】
なお、ドライアイス粒子が接触する噴出孔7A、開先7B、膨脹空間8、合流部5A、縮小部6A、スロート部6Bおよび拡張部6Cの表面あるいはオリフィス部7、ドライアイス生成管4、合流部材5およびノズル6の全体を熱伝導率0.5W/m・K以下のフッ素系樹脂やPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などの表面が平滑で熱伝導率が低い樹脂により形成されたものとすることが望ましい。これにより、外部と断熱され、ドライアイス粒子の昇華を減らすことができるので、液化二酸化炭素から生成するドライアイス生成効率が向上する。
【0034】
また、これらの樹脂は導電性とすることで、静電気の発生が防止され、ドライアイス粒子への静電気の影響を防ぐことができるので、液化二酸化炭素から生成するドライアイス生成効率が向上する。
【0035】
なお、本実施形態においては、段階的に拡大する膨脹空間8を第1~第3の膨脹空間8A~8Cの3段構成としているが、2段としたり、4段以上としたりすることも可能である。また、本実施形態においては、第1の膨脹空間8Aをオリフィス部7に設けた構成としているが、オリフィス部7とは別構成とすることも可能である。
【実施例】
【0036】
上記実施形態におけるドライアイス噴射装置1を用いてドライアイス粒子による付着物の剥離試験を行った。剥離試験は、ALP-KZ αクロゾメスプレー(トラスコ中山)をアルミ板に塗布し、ドライアイス生成管の形状を変えて行った。
【0037】
第1の膨脹空間8A内へ噴出する液化二酸化炭素の温度は19.3℃、圧力は5.6MPaとした。加速用ガスの圧力は0.6MPa、流量は650L/min(圧力下露点-62℃)とした。また、噴射口6Dからアルミ板までの距離は5mm、送り速度は5mm/secとした。
【0038】
表1にドライアイス生成管のa,b,c,e,f,gの各寸法と試験結果を示した。噴出孔7Aの内径は全てφ0.25mmである。なお、番号(2)のドライアイス生成管には第1の膨脹空間8Aが無い。また、
図4は剥離試験後のアルミ板表面の様子を示す写真である。
【0039】
【0040】
図4に示されるとおり、番号(1)、(3)、(5)については下地のアルミ板がはっきりと露出しており、付着物を剥離することができていることが確認できた。アルミ板に塗布したALP-KZ αクロゾメスプレー(トラスコ中山)には合成樹脂・グラファイトが成分に配合されているため塗装膜が固く、ドライアイス粒子の硬度差がはっきりと見られた。同じ液化二酸化炭素消費量およびエア噴射流量でもドライアイス粒子が柔らかいものであればこの塗装膜は剥離除去できていない。なお、番号(4)、(6)、(7)についてはマジックインキ(寺西化学工業株式会社)により形成された塗膜の除去は可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のドライアイス噴射装置は、液化二酸化炭素から生成したドライアイス粒子を圧縮されたガスと混合して対象物へ噴射し、対象物の表面から汚染物質を除去するドライアイス洗浄装置に有用であり、特に、平均粒子径10~20μmの硬質なドライアイス粒子を生成し、強固な付着物を除去することが可能なドライアイス噴射装置として好適である。
【符号の説明】
【0042】
1 ドライアイス噴射装置
2 液化二酸化炭素供給管
2A 液化二酸化炭素供給路
3 加速用ガス供給管
3A 加速用ガス供給路
4 ドライアイス生成管
5 合流部材
5A 合流部
6 ノズル
6A 縮小部
6B スロート部
6C 拡張部
6D 噴射口
7 オリフィス部
7A 噴出孔
7B 開先
8,8A,8B,8C 膨脹空間
【要約】
【課題】粒子径の小さい硬質なドライアイス粒子を生成することが可能なドライアイス噴射装置の提供。
【解決手段】液化二酸化炭素が供給される液化二酸化炭素供給路2と、液化二酸化炭素供給路2から供給される液化二酸化炭素を噴出する噴出孔7Aと、噴出孔7Aから噴出される液化二酸化炭素を段階的に拡大する膨脹空間8により膨張させてドライアイス粒子を生成するドライアイス生成管4とを有するドライアイス噴射装置1である。
【選択図】
図1