(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】チャック生爪、チャック生爪の成形方法、ワーク加工方法、および、ハイブリッド工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 31/10 20060101AFI20240304BHJP
B23B 31/16 20060101ALI20240304BHJP
B23B 15/00 20060101ALI20240304BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20240304BHJP
B23P 15/00 20060101ALI20240304BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20240304BHJP
B23K 26/342 20140101ALN20240304BHJP
【FI】
B23B31/10 F
B23B31/16 Z
B23B15/00 N
B23B3/30
B23P15/00 Z
B23P23/04
B23K26/342
(21)【出願番号】P 2023524443
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2022043875
【審査請求日】2023-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100196003
【氏名又は名称】石川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 遼
(72)【発明者】
【氏名】柴山 元
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄記
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-166606(JP,U)
【文献】特開昭61-146404(JP,A)
【文献】実開昭50-149978(JP,U)
【文献】特開2021-037605(JP,A)
【文献】特開2018-058196(JP,A)
【文献】特開2011-241444(JP,A)
【文献】特開2002-346814(JP,A)
【文献】特開平04-105805(JP,A)
【文献】特開昭52-150884(JP,A)
【文献】実開昭62-035704(JP,U)
【文献】実開昭61-085304(JP,U)
【文献】実開昭57-153402(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0198022(US,A1)
【文献】米国特許第05842704(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108856771(CN,A)
【文献】中国実用新案第210648563(CN,U)
【文献】特開昭49-038276(JP,A)
【文献】実開昭54-181085(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23B 31/00-33/00
B23P 5/00-17/06
B23P 23/00-25/00
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体の中心軸から離れる第1方向、および、前記中心軸に近づく第2方向に移動可能なように前記チャック本体によって支持されるチャック生爪であって、
ワークの第1面を保持可能な第1保持面と、
前記ワークの前記第1面と非同一の前記ワークの切削加工面を保持可能な第2保持面と
を具備し、
前記第1保持面の硬度は、前記第2保持面の硬度よりも高
く、
前記第1保持面および前記第2保持面の両方が、1つのチャック生爪に具備されている
チャック生爪。
【請求項2】
前記第2保持面は、切削加工面である
請求項1に記載のチャック生爪。
【請求項3】
前記第1保持面は、熱処理により形成された面である
請求項1または2に記載のチャック生爪。
【請求項4】
前記第1保持面は、金属積層面である
請求項1または2に記載のチャック生爪。
【請求項5】
前記チャック本体に取り付けられる基部を有し、
前記第2保持面は、前記チャック本体の前記中心軸に沿う方向において、前記第1保持面と前記基部との間に配置されている
請求項1または2に記載のチャック生爪。
【請求項6】
前記第1保持面は、前記ワークの外面を保持する面であり、
前記チャック本体の前記中心軸と前記第2保持面との間の距離は、前記チャック本体の前記中心軸と前記第1保持面との間の距離よりも小さい
請求項1または2に記載のチャック生爪。
【請求項7】
前記第1保持面は、前記ワークの内面を保持する面であり、
前記チャック本体の前記中心軸と前記第2保持面との間の距離は、前記チャック本体の前記中心軸と前記第1保持面との間の距離よりも大きい
請求項1または2に記載のチャック生爪。
【請求項8】
請求項1または2に記載のチャック生爪の成形方法であって、
前記チャック本体に原材ブロックを取り付ける工程と、
前記原材ブロックが前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記原材ブロックからチャック生爪を成形する工程と
を具備し、
前記原材ブロックから前記チャック生爪を成形する工程は、
前記原材ブロックを処理することにより、前記原材ブロックに前記第1保持面を形成することと、
前記原材ブロックを切削することにより、前記原材ブロックに前記第2保持面を形成することと
を含む
チャック生爪の成形方法。
【請求項9】
前記原材ブロックに前記第1保持面を形成することは、前記原材ブロックにレーザ光を照射すること、および、前記原材ブロックに、前記原材ブロックの硬度よりも高い硬度を有する金属材料を付加すること、のうちの少なくとも一方を含む
請求項8に記載のチャック生爪の成形方法。
【請求項10】
第2保持面
と、前記第2保持面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面
との両方が1つのチャック生爪に設けられた前記チャック生爪を準備する工程と、
第1ワーク保持装置のチャック本体の中心軸から離れる第1方向、および、前記中心軸に近づく第2方向に移動可能なように前記チャック本体によって支持された前記チャック生爪に、ワークを取り付ける工程と、
前記ワークの酸化表面が前記チャック生爪の前記第1保持面によって保持された状態で、前記ワークの第1部分を切削する工程と、
前記ワークの前記酸化表面が切削されることにより形成された切削加工面が前記チャック生爪の前記第2保持面に保持された状態で、前記ワークの第2部分を加工する工程と
を具備する
ワーク加工方法。
【請求項11】
前記ワークの前記第1部分を切削する工程の実行後、前記第1ワーク保持装置から第2ワーク保持装置に前記ワークを移載する工程と、
前記第2ワーク保持装置によって保持された前記ワークに前記切削加工面が形成されるよう、前記ワークの前記酸化表面を切削する工程と、
前記切削加工面が前記第2保持面によって保持されるよう、前記第2ワーク保持装置から前記第1ワーク保持装置に前記ワークを移載する工程と
を更に具備する
請求項10に記載のワーク加工方法。
【請求項12】
チャック本体に取り付けられた原材ブロックから、ワークの酸化表面を保持する第1保持面
と、前記ワークの切削加工面を保持する第2保持面
との両方が1つのチャック生爪に設けられた前記チャック生爪を成形する複数の加工装置と、
前記チャック生爪を介して前記ワークを保持する第1ワーク保持装置と、
前記複数の加工装置、および、前記第1ワーク保持装置を制御する制御装置と
を具備し、
前記第1ワーク保持装置は、
前記第1保持面および前記第2保持面を有する前記チャック生爪を支持する前記チャック本体と、
前記チャック生爪を、前記チャック本体の中心軸から離れる第1方向、または、前記中心軸に近づく第2方向に移動させる第1駆動装置と、
前記チャック本体を前記中心軸まわりに回転させる回転駆動装置と
を有し、
前記複数の加工装置は、
前記チャック本体に取り付けられた前記原材ブロックを切削することにより、前記原材ブロックに前記第2保持面を形成する第1加工装置と、
前記チャック本体に取り付けられた前記原材ブロックを処理することにより、前記原材ブロックに、前記第2保持面の硬度よりも高い硬度を有する前記第1保持面を形成する第2加工装置と
を含む
ハイブリッド工作機械。
【請求項13】
前記第1ワーク保持装置から前記ワークを受け取ることが可能、且つ、前記第1ワーク保持装置に前記ワークを受け渡すことが可能な第2ワーク保持装置を更に具備し、
前記第2ワーク保持装置は、
前記ワークを保持可能な爪を支持する第2チャック本体と、
前記第2チャック本体を、前記第2チャック本体の中心軸まわりに回転させる第2回転駆動装置と
を有する
請求項12に記載のハイブリッド工作機械。
【請求項14】
前記第2加工装置は、前記原材ブロックを熱処理するレーザ照射装置、および、前記原材ブロックに前記原材ブロックよりも高硬度な金属材料を付加する付加加工装置のうちの少なくとも一方を含む
請求項12または13に記載のハイブリッド工作機械。
【請求項15】
前記制御装置によって実行される生爪成形プログラム、および、前記制御装置によって実行されるワーク加工プログラムを記憶する記憶装置を更に具備し、
前記生爪成形プログラムを実行する前記制御装置から第1保持面形成指令を受信する前記第2加工装置は、前記チャック本体に取り付けられた前記原材ブロックに、前記原材ブロックのオリジナル表面の硬度よりも高い硬度を有する前記第1保持面を形成するように構成され、
前記ワーク加工プログラムを実行する前記制御装置から第1加工指令を受信する前記第1加工装置は、前記チャック生爪の前記第1保持面に保持された前記ワークを加工するように構成される
請求項14に記載のハイブリッド工作機械。
【請求項16】
前記切削加工面は、前記第1面が切削されることにより形成される面である
請求項1に記載のチャック生爪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック生爪、チャック生爪の成形方法、ワーク加工方法、および、ハイブリッド工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを保持する硬爪、および、ワークを保持する生爪が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、硬爪・生爪兼用スクロールチャックが開示されている。特許文献1に記載のスクロールチャックでは、硬爪に、台形V字溝および台形突起のうちの一方が形成され、生爪に、台形V字溝および台形突起のうちの他方が形成されている。また、特許文献1に記載のスクロールチャックでは、マスタージョーに硬爪が取り付けられ、硬爪に、台形V字溝および台形突起を介して、生爪が取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願昭58-145447号(実開昭60-53408号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、加工時間の短縮を可能にするチャック生爪、チャック生爪の成形方法、ワーク加工方法、および、ハイブリッド工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態におけるチャック生爪は、チャック本体の中心軸から離れる第1方向、および、当該中心軸に近づく第2方向に移動可能なようにチャック本体によって支持される爪である。チャック生爪は、ワークの第1面を保持可能な第1保持面と、前記ワークの切削加工面を保持可能な第2保持面と、を具備する。前記第1保持面の硬度は、前記第2保持面の硬度よりも高い。
【0007】
いくつかの実施形態におけるチャック生爪の成形方法は、前記チャック本体に原材ブロックを取り付ける工程と、前記原材ブロックが前記チャック本体に取り付けられた状態で、前記原材ブロックからチャック生爪を成形する工程と、を具備する。前記原材ブロックから前記チャック生爪を成形する工程は、前記原材ブロックを処理することにより、前記原材ブロックに前記第1保持面を形成することと、前記原材ブロックを切削することにより、前記原材ブロックに前記第2保持面を形成することと、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態におけるワーク加工方法は、第2保持面、および、前記第2保持面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面を有するチャック生爪を準備する工程と、第1ワーク保持装置のチャック本体の中心軸から離れる第1方向、および、前記中心軸に近づく第2方向に移動可能なように前記チャック本体によって支持された前記チャック生爪に、ワークを取り付ける工程と、前記ワークの酸化表面が前記チャック生爪の前記第1保持面によって保持された状態で、前記ワークの第1部分を切削する工程と、前記ワークの前記酸化表面が切削されることにより形成された切削加工面が前記チャック生爪の前記第2保持面に保持された状態で、前記ワークの第2部分を加工する工程と、を具備する。
【0009】
いくつかの実施形態におけるハイブリッド工作機械は、チャック本体に取り付けられた原材ブロックから、ワークの酸化表面を保持する第1保持面および前記ワークの切削加工面を保持する第2保持面を有するチャック生爪を成形する複数の加工装置と、前記チャック生爪を介して前記ワークを保持する第1ワーク保持装置と、前記複数の加工装置、および、前記第1ワーク保持装置を制御する制御装置と、を具備する。前記第1ワーク保持装置は、前記第1保持面および前記第2保持面を有する前記チャック生爪を支持する前記チャック本体と、前記チャック生爪を、前記チャック本体の中心軸から離れる第1方向、または、前記中心軸に近づく第2方向に移動させる第1駆動装置と、前記チャック本体を前記中心軸まわりに回転させる回転駆動装置と、を有する。前記複数の加工装置は、前記チャック本体に取り付けられた前記原材ブロックを切削することにより、前記原材ブロックに前記第2保持面を形成する第1加工装置と、前記チャック本体に取り付けられた前記原材ブロックを処理することにより、前記原材ブロックに、前記第2保持面の硬度よりも高い硬度を有する前記第1保持面を形成する第2加工装置と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、加工時間の短縮を可能にするチャック生爪、チャック生爪の成形方法、ワーク加工方法、および、ハイブリッド工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施形態におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態におけるチャック生爪を模式的に示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪を模式的に示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪を模式的に示す概略斜視図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第2変形例におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の第2変形例におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の第3変形例におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態の第4変形例におけるチャック生爪が、チャック本体に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図13】
図13は、取付工程が実行された後の状態を模式的に示す概略断面図である。
【
図14】
図14は、切削工具によって原材ブロックが切削されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図15】
図15は、原材ブロックに第1保持面が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図16】
図16は、原材ブロックに第2保持面が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図17】
図17は、チャック生爪の成形方法の変形例において、切削工具によって原材ブロックが切削されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図18】
図18は、チャック生爪の成形方法の変形例において、原材ブロックに第1保持面が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図19】
図19は、第1保持面に凹凸が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図20】
図20は、チャック生爪の成形方法の変形例において、原材ブロックに第2保持面が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
【
図21】
図21は、第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法の一例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、チャック生爪にワークが取り付けられた後の様子を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、ワークがチャック生爪の第1保持面によって保持された状態で、ワークの第1部分が切削される様子を模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、第1ワーク保持装置から第2ワーク保持装置に、ワークが移載される様子を模式的に示す図である。
【
図25】
図25は、第1ワーク保持装置から第2ワーク保持装置に、ワークが移載される様子を模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、ワークが第2ワーク保持装置によって保持された状態で、ワークの酸化表面が切削される様子を模式的に示す図である。
【
図27】
図27は、第2ワーク保持装置から第1ワーク保持装置に、ワークが移載される様子を模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、ワークがチャック生爪の第2保持面によって保持された状態で、ワークの第2部分が加工される様子を模式的に示す図である。
【
図29】
図29は、第1の実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、ワーク加工方法の第1変形例において、ワークが加工される様子を模式的に示す図である。
【
図31】
図31は、ワークが研削工具によって研削される様子を模式的に示す図である。
【
図32】
図32は、ワーク加工方法の第2変形例において、ワークが加工される様子を模式的に示す図である。
【
図33】
図33は、ワーク加工方法の第3変形例において、ワークが加工される様子を模式的に示す図である。
【
図34】
図34は、ワーク加工方法の第4変形例において、ワークが加工される様子を模式的に示す図である。
【
図35】
図35は、第1の実施形態におけるワーク加工方法の他の一例を示すフローチャートである。
【
図36】
図36は、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械を模式的に示す概略斜視図である。
【
図37】
図37は、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械を模式的に示す概略斜視図である。
【
図38】
図38は、第1の実施形態の第1変形例におけるハイブリッド工作機械を模式的に示す概略斜視図である。
【
図39】
図39は、第1の実施形態の第1変形例におけるハイブリッド工作機械を模式的に示す概略斜視図である。
【
図40】
図40は、制御装置が、複数の制御対象機器に、制御指令を送信可能な様子を模式的に示す図である。
【
図41】
図41は、制御装置が、複数の制御対象機器に、制御指令を送信可能な様子を模式的に示す図である。
【
図42】
図42は、制御装置が、複数の制御対象機器に、制御指令を送信可能な様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態におけるチャック生爪1、チャック生爪の成形方法、ワーク加工方法、および、ハイブリッド工作機械2について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部位、部材については同一の符号を付し、同一の符号が付された部位、部材についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0013】
(方向の定義)
本明細書において、第1ワーク保持装置3のチャック本体31の中心軸である第1軸AXから離れる方向を「第1方向DR1」と定義する。また、第1ワーク保持装置3のチャック本体31の中心軸である第1軸AXに近づく方向を「第2方向DR2」と定義する。
【0014】
本明細書において、第1ワーク保持装置3のチャック本体31の中心軸に沿う方向であって、チャック本体31からチャック生爪1に向かう方向を「第3方向DR3」と定義する。また、第3方向DR3とは反対の方向を「第4方向DR4」と定義する。
【0015】
以下の説明において、第1ワーク保持装置3のチャック本体31の中心軸のことを「第1軸AX」と呼ぶ。また、第2ワーク保持装置4の第2チャック本体41の中心軸のことを「第2軸AT」と呼ぶ。
【0016】
(チャック生爪1)
図1乃至
図12を参照して、第1の実施形態におけるチャック生爪1について説明する。
図1乃至
図3は、第1の実施形態におけるチャック生爪1が、チャック本体31に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。なお、
図2には、ワーク9Aが、チャック生爪1の第1保持面11に保持された様子が示され、
図3には、ワーク9Aが、チャック生爪1の第2保持面12に保持された様子が示されている。
図4は、第1の実施形態におけるチャック生爪1を模式的に示す概略断面図である。
図5および
図6は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪1が、チャック本体31に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。なお、
図5には、ワーク9Bが、チャック生爪1の第1保持面11に保持された様子が示され、
図6には、ワーク9Bが、チャック生爪1の第2保持面12に保持された様子が示されている。
図7は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪1を模式的に示す概略断面図である。
図8は、第1の実施形態の第1変形例におけるチャック生爪1を模式的に示す概略斜視図である。
図9および
図10は、第1の実施形態の第2変形例におけるチャック生爪1が、チャック本体31に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。なお、
図9には、ワーク9Cが、チャック生爪1の第1保持面11に保持された様子が示され、
図10には、ワーク9Cが、チャック生爪1の第2保持面12に保持された様子が示されている。
図11は、第1の実施形態の第3変形例におけるチャック生爪1が、チャック本体31に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図12は、第1の実施形態の第4変形例におけるチャック生爪1が、チャック本体31に支持されている様子を模式的に示す概略断面図である。
【0017】
図1に例示されるように、第1の実施形態におけるチャック生爪1は、チャック本体31によって支持される部材である。より具体的には、チャック生爪1は、チャック本体31の中心軸である第1軸AXから離れる第1方向DR1、および、当該第1軸AXに近づく第2方向DR2に移動可能なようにチャック本体31によって支持される。
図1に記載の例において、第1方向DR1は、チャック本体31の中心軸から離れる放射方向に対応する。また、第2方向DR2は、第1方向DR1とは反対の方向である。
【0018】
図1および
図2に記載の例では、チャック本体31は、可動部32と、当該可動部32を移動可能に支持するベース部33とを有する。また、チャック生爪1は、チャック本体31の可動部32とともに、チャック本体31の中心軸である第1軸AXから離れる第1方向DR1に移動可能である。また、チャック生爪1は、チャック本体31の可動部32とともに、チャック本体31の中心軸である第1軸AXに近づく第2方向DR2に移動可能である。
【0019】
図2に例示されるように、チャック生爪1は、ワーク9Aの第1面91(例えば、ワーク9Aの酸化表面911)を保持可能な第1保持面11を有する。また、
図3に例示されるように、チャック生爪1は、ワーク9Aの切削加工面92を保持可能な第2保持面12を有する。第1保持面11の硬度は、第2保持面12の硬度よりも高い。
【0020】
チャック生爪1を構成する材料は、鋼であってもよいし、その他の材料であってもよい。第2保持面12が鋼によって形成されている場合には、第1保持面11は、第2保持面12を形成する鋼よりも、硬度が高い高硬度鋼(例えば、マルテンサイト相を含む鋼)によって形成されていてもよい。代替的に、第1保持面11は、第2保持面12を形成する鋼よりも、硬度が高い鋼以外の金属材料(例えば、チタン)によって形成されていてもよい。
【0021】
図2および
図3に記載の例では、チャック生爪1は、ワーク9Aの第1面91を保持するのに適した硬度を有する第1保持面11(より具体的には、相対的に高い硬度を有する第1保持面11)と、ワーク9Aの切削加工面92を保持するのに適した硬度を有する第2保持面12(より具体的には、相対的に低い硬度を有する第2保持面12)と、を有する。
【0022】
このため、ワーク9Aの第1面91がチャック生爪1によって保持された状態で行われる加工、および、ワーク9Aの切削加工面92がチャック生爪1によって保持された状態で行われる加工の両方が実行される際に、チャック本体31に支持された爪を交換する必要がない(より具体的には、チャック本体31に支持された爪を、硬爪から生爪に交換する必要がない。)。よって、第1の実施形態におけるチャック生爪1が用いられる場合、爪の交換時間が省かれることにより、ワーク9Aの加工に要する加工時間が短縮される。
【0023】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図12を参照して、第1の実施形態におけるチャック生爪1において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0024】
(第1保持面11)
図2に記載の例において、第1保持面11は、例えば、ワーク9Aの酸化表面911を保持する面である。ワーク9Aの酸化表面911は、細かな凹凸を有する。凹凸を有する酸化表面911と、第1保持面11との間のスリップを防止するため、当該酸化表面911は第1保持面11によって強い力で保持される必要がある。第1保持面11が、相対的に高い硬度を有する面である場合、酸化表面911に強い力で接触する第1保持面11が、酸化表面911によって傷つけられることが抑制される。よって、チャック生爪1の耐久性能が向上し、チャック生爪1の寿命を長くすることができる。
【0025】
図4に例示されるように、第1保持面11は、凹凸111を有していてもよい。より具体的には、第1保持面11は、スパイク状の突起、あるいは、溝111vを有していてもよい。第1保持面11が、凹凸111を有する場合、ワーク9Aの酸化表面911に対するグリップ性が向上する。代替的に、第1保持面11は、平滑面(換言すれば、凹凸を有さない面)であってもよい。
【0026】
図4に記載の例では、第1保持面11は、熱処理により形成された面である。より具体的には、第1保持面11は、焼き入れ加工によって形成された面11aである。当該焼き入れ加工は、例えば、チャック生爪1を構成する材料の表面にレーザ光を照射することにより行われる。チャック生爪1を構成する材料は、例えば、鋼である。
【0027】
代替的に、
図1に例示されるように、第1保持面11は、金属積層面11bであってもよい。金属積層面11bは、チャック生爪1の原材ブロックを構成する材料の表面に、当該原材ブロックを構成する材料よりも高硬度の金属材料Nを積層することにより形成される。
【0028】
(第2保持面12)
図3に記載の例において、第2保持面12は、ワーク9Aの切削加工面92を保持する面である。ワーク9Aの切削加工面92は、ワーク9Aの酸化表面911(
図2を参照。)と比較して、相対的に滑らかな面である。第2保持面12が、相対的に低い硬度を有する面である場合、ワーク9Aの切削加工面92が、第2保持面12によって傷つけられることが抑制される。
【0029】
図4に記載の例では、第2保持面12は、切削加工により形成された切削加工面122である。第2保持面12が切削加工により形成される場合、第2保持面12を滑らかな面にすることができる。この場合、第2保持面12によって保持されるワーク9Aの切削加工面92が、第2保持面12によって傷つけられることが更に効果的に抑制される。
図4に記載の例では、第2保持面12は、平滑面(換言すれば、溝、突起等を有さない面)である。
【0030】
図4に記載の例において、第1保持面11および第2保持面12は、一体的に成形された1つのブロック部品10上に配置されている。よって、
図4に記載の例では、第1保持面11が配置される部品と、第2保持面12が配置される部品とを、ボルト等の固定部材を介して連結する必要がない。
【0031】
(チャック生爪1の基部14)
図4に記載の例では、チャック生爪1は、チャック本体31に取り付けられる基部14を有する。基部14は、チャック本体31に形成された第2の凹凸部312に係合する第1の凹凸部142を有していてもよい。
図3に記載の例では、第2の凹凸部312に対する第1の凹凸部142の相対位置を調整することにより、チャック本体31の可動部32に対するチャック生爪1の取り付け位置を調整可能である。チャック生爪1は、ボルト等の固定部材を介して、チャック本体31に取り付けられる。
図4に記載の例では、チャック生爪1に、ボルト等の固定部材を受容可能な貫通穴部15が形成されている。
【0032】
(第1保持面11と、第2保持面12と、基部14との間の配置関係)
図3に記載の例では、第2保持面12は、第1軸AXに沿う方向において、第1保持面11と基部14との間に配置されている。
【0033】
図3に記載の例では、第1保持面11および第2保持面12の各々は、第1軸AXに実質的に平行である。第1保持面11は、第1軸AXを中心線とする円弧状面であってもよい。また、第2保持面12は、第1軸AXを中心線とする円弧状面であってもよい。
【0034】
図3に記載の例では、チャック生爪1は、第1段差面16を有する。第1段差面16は、例えば、第1軸AXに対して実質的に垂直である。
図3に記載の例では、第1段差面16は、第1軸AXに沿う方向において、第1保持面11と第2保持面12との間に配置される。第1段差面16の内縁は、第1保持面11に接続されていてもよい。また、第1段差面16の外縁は、第2保持面12に接続されていてもよい。
【0035】
図3に記載の例では、チャック生爪1は、第2段差面17を有する。第2段差面17は、例えば、第1軸AXに対して実質的に垂直である。
図3に記載の例では、第2段差面17は、第1軸AXに沿う方向において、第2保持面12よりも基部14側に配置されている。
【0036】
ワーク9Aが第2保持面12によって保持されるとき、第2段差面17は、ワーク9Aの基端面(換言すれば、第4方向DR4側の端面)を位置決めする位置決め面として機能してもよい。他方、
図2に例示されるように、ワーク9Aが第1保持面11によって保持されるとき、第1段差面16は、ワーク9Aの基端面を位置決めする位置決め面として機能してもよい。
【0037】
図2に記載の例では、第1保持面11は、ワーク9Aの内面91n(より具体的には、ワーク9Aの内周面)を保持する面である。また、
図3に記載の例では、第2保持面12は、ワーク9Aの内面91nが切削されることにより形成された面91m(より具体的には、ワーク9Aの内周面が切削されることにより形成された面)を保持する面である。
【0038】
図3に記載の例では、第1軸AXと第2保持面12との間の距離L2は、第1軸AXと第1保持面11との間の距離L1よりも大きい。
【0039】
(チャック生爪の第1変形例)
チャック生爪1における第1保持面11および第2保持面12の配置は、
図2乃至
図4に記載の例に限定されない。
図5乃至
図8を参照して、チャック生爪1の第1変形例について説明する。
【0040】
図5に記載の例では、第2保持面12は、第1軸AXに沿う方向において、第1保持面11と基部14との間に配置されている。
図5に記載の例では、第1保持面11および第2保持面12の各々は、第1軸AXに実質的に平行である。
【0041】
図5に記載の例では、チャック生爪1は、第1段差面16を有する。第1段差面16は、例えば、第1軸AXに対して実質的に垂直である。
図5に記載の例では、第1段差面16は、第1軸AXに沿う方向において、第1保持面11と第2保持面12との間に配置される。第1段差面16の外縁は、第1保持面11に接続されていてもよい。また、第1段差面16の内縁は、第2保持面12に接続されていてもよい。
【0042】
図5に記載の例では、チャック生爪1は、第2段差面17を有する。第2段差面17は、例えば、第1軸AXに対して実質的に垂直である。
図5に記載の例では、第2段差面17は、第1軸AXに沿う方向において、第2保持面12よりも基部14側に配置されている。
【0043】
図5に例示されるように、ワーク9Bが第1保持面11によって保持されるとき、第1段差面16は、ワーク9Bの基端面(換言すれば、第4方向DR4側の端面)を位置決めする位置決め面として機能してもよい。他方、
図6に例示されるように、ワーク9Bが第2保持面12によって保持されるとき、第2段差面17は、ワーク9Bの基端面を位置決めする位置決め面として機能してもよい。
【0044】
図5に記載の例では、第1保持面11は、ワーク9Bの外面91u(より具体的には、ワーク9Bの外周面)を保持する面である。また、
図6に記載の例では、第2保持面12は、ワーク9Bの外面91uが切削されることにより形成された面91v(より具体的には、ワーク9Bの外周面が切削されることにより形成された面)を保持する面である。
【0045】
図6に記載の例では、第1軸AXと第2保持面12との間の距離L4は、第1軸AXと第1保持面11との間の距離L3よりも小さい。
【0046】
図8に例示されるように、第1保持面11は、第1の円弧状面115であってもよい。第1の円弧状面115の中心線は、第1軸AXと同軸であることが好ましい。
図8に例示されるように、第2保持面12は、第2の円弧状面125であってもよい。第2の円弧状面125の中心線は、第1軸AXと同軸であることが好ましい。
【0047】
(チャック生爪の第2変形例、チャック生爪の第3変形例)
図9および
図10を参照して、チャック生爪1の第2変形例について説明し、
図11を参照して、チャック生爪1の第3変形例について説明する。
【0048】
図9に記載の例では、第2保持面12は、第1保持面11に対向するように配置されている。
図9に記載の例では、第1保持面11および第2保持面12の各々は、第1軸AXに実質的に平行である。
【0049】
図9に記載の例では、チャック生爪1は、第1保持面11と第2保持面12とを連結する連結面18を有する。連結面18は、例えば、第1軸AXに対して実質的に垂直である。連結面18の外縁は、第1保持面11に接続されていてもよい。また、連結面18の内縁は、第2保持面12に接続されていてもよい。代替的に、
図11に例示されるように、連結面18の内縁が第1保持面11に接続され、連結面18の外縁が第2保持面12に接続されていてもよい。
【0050】
図9に例示されるように、ワーク9Cが第1保持面11によって保持されるとき、連結面18は、ワーク9Cの基端面(換言すれば、第4方向DR4側の端面)を位置決めする位置決め面として機能してもよい。また、
図10に例示されるように、ワーク9Cが第2保持面12によって保持されるとき、連結面18は、ワーク9Cの基端面を位置決めする位置決め面として機能してもよい。
【0051】
図9に記載の例では、第1保持面11は、ワーク9Cの外面91u(より具体的には、ワーク9Cの外周面)を保持する面である。また、
図10に記載の例では、第2保持面12は、ワーク9Cの内面91nが切削されることにより形成された面91m(より具体的には、ワーク9Cの内周面が切削されることにより形成された面)を保持する面である。
【0052】
代替的に、
図11に例示されるように、第1保持面11は、ワーク9Dの内面91n(より具体的には、ワーク9Dの内周面)を保持する面であってもよい。また、第2保持面12は、ワーク9Dの外面91uが切削されることにより形成された面(より具体的には、ワーク9Dの外周面が切削されることにより形成された面)を保持する面であってもよい。
【0053】
(チャック生爪の第4変形例)
図12を参照して、チャック生爪1の第4変形例について説明する。
図1乃至
図11に記載の例では、チャック生爪1が有する第1保持面11の数が1つであり、チャック生爪1が有する第2保持面12の数が1つである。代替的に、
図12に例示されるように、チャック生爪1は、複数の第1保持面11を有していてもよい。また、
図12に例示されるように、チャック生爪1は、複数の第2保持面12を有していてもよい。複数の第1保持面11の各々の硬度は、複数の第2保持面12の各々の硬度よりも高い。
図12に記載の例では、第1軸AXに沿う方向において、第1保持面11と第2保持面12とが交互に配置されている。
【0054】
(チャック生爪の成形方法)
図1乃至
図21を参照して、第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法について説明する。
図13は、取付工程が実行された後の状態を模式的に示す概略断面図である。
図14は、切削工具T1によって原材ブロックBLが切削されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図15は、原材ブロックBLに第1保持面11が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図16は、原材ブロックBLに第2保持面12が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図17は、チャック生爪の成形方法の変形例において、切削工具T1によって原材ブロックBLが切削されている様子を模式的に示す概略断面図である。
図18は、チャック生爪の成形方法の変形例において、原材ブロックBLに第1保持面11が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図19は、第1保持面11に凹凸111が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図20は、チャック生爪の成形方法の変形例において、原材ブロックBLに第2保持面12が形成される様子を模式的に示す概略断面図である。
図21は、第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法の一例を示すフローチャートである。
【0055】
第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法によって成形される生爪は、
図4に例示されるチャック生爪1であってもよいし、
図7に例示されるチャック生爪1であってもよいし、
図10乃至
図12のいずれかに例示されるチャック生爪1であってもよいし、その他のチャック生爪であってもよい。
【0056】
図13に例示されるように、第1ステップST1において、チャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に、チャック生爪1に成形されることとなる原材ブロックBLが取り付けられる。第1工程は、取付工程である。
【0057】
原材ブロックBLの形状は、成形後のチャック生爪1の形状に近似する形状であることが好ましい。原材ブロックBLを構成する材料は、鋼であってもよいし、その他の材料であってもよい。
図13に記載の例では、原材ブロックBLは、一体的に形成された1つのブロック部品10によって構成されている。
【0058】
図13に記載の例では、原材ブロックBLは、チャック本体31に取り付けられる基部14と、基部14によって支持され、第2保持面12が形成されることとなる中間部分10aと、中間部分10aによって支持され、第1保持面11が形成されることとなる先端部10bと、を有する。中間部分10aは、基部14よりも第3方向DR3側に配置され、先端部10bは、中間部分10aよりも第3方向DR3側に配置されている。
【0059】
取付工程は、ボルトBT等の固定部材を介して、原材ブロックBLをチャック本体31の可動部32に取り付けることを含んでいてもよい。また、取付工程は、原材ブロックBLの第1の凹凸部142を、チャック本体31の第2の凹凸部312に係合させることを含んでいてもよい。
【0060】
図14乃至
図16に例示されるように、第2ステップST2において、原材ブロックBLからチャック生爪1が成形される。第2ステップST2は、成形工程である。
図14乃至
図16に記載の例では、成形工程は、原材ブロックBLがチャック本体31に取り付けられた状態で実行される。成形工程は、複数のサブステップを含む。
【0061】
図14に例示されるように、サブステップST2-1において、切削工具T1によって、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLが切削される。サブステップST2-1は、加工前のワーク9の形状およびサイズに対応する切削面BL1が形成されるように、原材ブロックBLを切削することを含む。サブステップST2-1は、原材ブロックBLが取り付けられたチャック本体31が、第1軸AXまわりに回転している状態で実行されてもよい。
【0062】
サブステップST2-1は、切削工具T1によって原材ブロックBLを切削することにより、原材ブロックBLに切削面BL1を形成することを含む。
図15に例示されるように、切削面BL1は、凹凸(より具体的には、溝V)を有していてもよい。代替的に、切削面BL1は、凹凸を有さない平滑面であってもよい。
【0063】
図15に記載の例では、サブステップST2-2において、レーザ照射装置61等の第2加工装置60によって、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLに第1保持面11が形成される。サブステップST2-2は、原材ブロックBLの切削面BL1を処理することにより、原材ブロックBLに、原材ブロックBLのオリジナル表面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を形成することを含む。また、サブステップST2-2は、加工前のワーク9の形状およびサイズに対応する第1保持面11を形成することを含む。第1保持面11は、ワーク9の酸化表面911(必要であれば、
図5を参照。)を保持することが可能な面である。
【0064】
図15に記載の例では、サブステップST2-2において、レーザ照射装置61を用いて、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLに第1保持面11が形成される。より具体的には、サブステップST2-2は、レーザ照射装置61が、原材ブロックBLの切削面BL1に、レーザ光LBを照射することを含む。切削面BL1は、レーザ光LBによって加熱処理(より具体的には、焼き入れ処理)される。その結果、切削面BL1の硬度が増加し、切削面BL1は硬度の高い第1保持面11となる。
【0065】
なお、切削面BL1が凹凸を有する場合、第1保持面11も凹凸を有することとなる。
【0066】
サブステップST2-3において、第1保持面11の形成精度が、許容精度を満たすか否かが判定される。当該判定は、目視チェックにより行われてもよいし、任意のチェック装置を用いて行われてもよい。
【0067】
図21に記載の例において、第1保持面11の形成精度が、許容精度を満たしていないと判定されると(サブステップST2-3:No)、サブステップST2-4において、第1保持面11の形成精度が許容精度を満たすように、第1保持面11が成形される。より具体的には、第1保持面11の形成精度が許容精度を満たすように、第1保持面11が切削工具T1または研削工具によって加工される。第1保持面11の形成精度が、許容精度を満たしていると判定されると(サブステップST2-3:Yes)、サブステップST2-5に進む。なお、サブステップST2-3、および、サブステップST2-4は省略されてもよい。
【0068】
図16に例示されるように、サブステップST2-5において、切削工具T1によって、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLが切削される。サブステップST2-5は、粗加工後のワーク9の形状およびサイズに対応する第2保持面12が形成されるように(より具体的には、酸化表面911が除去された後のワーク9の形状およびサイズに対応する第2保持面12が形成されるように)、原材ブロックBLを切削することを含む。
【0069】
サブステップST2-5は、原材ブロックBLを切削することにより、原材ブロックBLに第2保持面12を形成することを含む。
図16に記載の例では、第2保持面12は、平滑面(換言すれば、溝、突起等を有さない面)である。サブステップST2-5は、原材ブロックBLが取り付けられたチャック本体31が、第1軸AXまわりに回転している状態で実行されてもよい。
【0070】
なお、サブステップST2-5は、サブステップST2-1よりも前に実行されてもよいし、サブステップST2-1よりも後に実行されてもよいし、サブステップST2-1と並行して実行されてもよい。ただし、サブステップST2-2の実行により、原材ブロックBLが熱変形することを考慮すると、サブステップST2-5は、サブステップST2-1およびサブステップST2-2よりも後に実行されることが好ましい。
【0071】
(チャック生爪の成形方法の変形例)
図13、
図17乃至
図20を参照して、チャック生爪の成形方法の変形例について説明する。
図13に例示されるように、第1ステップST1において、チャック本体31(より具体的には、チャック本体31の可動部32)に、原材ブロックBLが取り付けられる。第1ステップST1は、取付工程である。取付工程については、説明済みであるため、取付工程についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0072】
図17乃至
図20に例示されるように、第2ステップST2において、原材ブロックBLからチャック生爪1が成形される。第2ステップST2は、成形工程である。
図17乃至
図20に記載の例では、成形工程は、原材ブロックBLがチャック本体31に取り付けられた状態で実行される。成形工程は、複数のサブステップを含む。
【0073】
図17に例示されるように、サブステップST2-1において、切削工具T1によって、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLが切削される。サブステップST2-1は、加工前のワーク9の形状およびサイズに概ね対応する切削面BL1が形成されるように、原材ブロックBLを切削することを含む。サブステップST2-1は、原材ブロックBLが取り付けられたチャック本体31が、第1軸AXまわりに回転している状態で実行されてもよい。
【0074】
サブステップST2-1は、切削工具T1によって原材ブロックBLを切削することにより、原材ブロックBLに切削面BL1を形成することを含む。切削面BL1は、凹凸を有さない平滑面であってもよい。代替的に、切削面BL1は、凹凸(より具体的には、溝)を有していてもよい。
【0075】
図18に記載の例では、サブステップST2-2において、付加加工装置66等の第2加工装置60によって、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLに第1保持面11が形成される。サブステップST2-2は、原材ブロックBLの切削面BL1を処理することにより、原材ブロックBLに、原材ブロックBLのオリジナル表面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を形成することを含む。また、サブステップST2-2は、加工前のワーク9の形状およびサイズに対応する第1保持面11を形成することを含む。第1保持面11は、ワーク9の酸化表面911(必要であれば、
図5を参照。)を保持することが可能な面である。
【0076】
図18に記載の例では、サブステップST2-2において、付加加工装置66を用いて、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLに第1保持面11が形成される。より具体的には、サブステップST2-2は、付加加工装置66が、原材ブロックBLの切削面BL1に、原材ブロックBLの硬度よりも高い硬度を有する金属材料Nを付加することを含む。
図18に記載の例では、付加加工装置66は、切削面BL1に向けて金属粉体Pを供給するとともに、切削面BL1に向けてレーザ光LBを照射する。その結果、レーザ光LBのエネルギによって加熱される金属粉体Pが融解し、融解金属が、切削面BL1に付着する。こうして、切削面BL1に硬度の高い金属材料Nが付着し、切削面BL1を覆うように硬度の高い第1保持面11が形成される。
【0077】
サブステップST2-2の実行後、第1保持面11に、凹凸111(より具体的には、溝111v)が形成されてもよい。
図19に記載の例では、切削工具T1が第1保持面11を切削することにより、第1保持面11に凹凸111(より具体的には、溝111v)が形成されている。
【0078】
サブステップST2-3において、第1保持面11の形成精度が、許容精度を満たすか否かが判定される。当該判定は、目視チェックにより行われてもよいし、任意のチェック装置を用いて行われてもよい。
【0079】
図21に記載の例において、第1保持面11の形成精度が、許容精度を満たしていないと判定されると(サブステップST2-3:No)、サブステップST2-4において、第1保持面11の形成精度が許容精度を満たすように、第1保持面11が成形される。より具体的には、第1保持面11の形成精度が許容精度を満たすように、第1保持面11が切削工具T1または研削工具によって加工される。第1保持面11の形成精度が、許容精度を満たしていると判定されると(サブステップST2-3:Yes)、サブステップST2-5に進む。なお、サブステップST2-3、および、サブステップST2-4は省略されてもよい。
【0080】
図20に例示されるように、サブステップST2-5において、切削工具T1によって、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLが切削される。サブステップST2-5は、粗加工後のワーク9の形状およびサイズに対応する第2保持面12が形成されるように(より具体的には、酸化表面911が除去された後のワーク9の形状およびサイズに対応する第2保持面12が形成されるように)、原材ブロックBLを切削することを含む。
【0081】
サブステップST2-5は、原材ブロックBLを切削することにより、原材ブロックBLに第2保持面12を形成することを含む。
図20に記載の例では、第2保持面12は、平滑面(換言すれば、溝、突起等を有さない面)である。サブステップST2-5は、原材ブロックBLが取り付けられたチャック本体31が、第1軸AXまわりに回転している状態で実行されてもよい。
【0082】
なお、サブステップST2-5は、サブステップST2-1よりも前に実行されてもよいし、サブステップST2-1よりも後に実行されてもよいし、サブステップST2-1と並行して実行されてもよい。ただし、サブステップST2-2の実行により、原材ブロックBLが熱変形することを考慮すると、サブステップST2-5は、サブステップST2-1およびサブステップST2-2よりも後に実行されることが好ましい。
【0083】
(ワーク加工方法)
図1乃至
図35を参照して、第1の実施形態におけるワーク加工方法について説明する。
図22は、チャック生爪1にワーク9が取り付けられた後の様子を模式的に示す図である。
図23は、ワーク9がチャック生爪1の第1保持面11によって保持された状態で、ワーク9の第1部分95が切削される様子を模式的に示す図である。
図24および
図25は、第1ワーク保持装置3から第2ワーク保持装置4に、ワーク9が移載される様子を模式的に示す図である。
図26は、ワーク9が第2ワーク保持装置4によって保持された状態で、ワーク9の酸化表面911が切削される様子を模式的に示す図である。
図27は、第2ワーク保持装置4から第1ワーク保持装置3に、ワーク9が移載される様子を模式的に示す図である。
図28は、ワーク9がチャック生爪1の第2保持面12によって保持された状態で、ワーク9の第2部分96が加工される様子を模式的に示す図である。
図29は、第1の実施形態におけるワーク加工方法の一例を示すフローチャートである。
図30は、ワーク加工方法の第1変形例において、ワーク9が加工される様子を模式的に示す図である。
図31は、ワーク9が研削工具T2によって研削される様子を模式的に示す図である。
図32は、ワーク加工方法の第2変形例において、ワーク9が加工される様子を模式的に示す図である。
図33は、ワーク加工方法の第3変形例において、ワーク9が加工される様子を模式的に示す図である。
図34は、ワーク加工方法の第4変形例において、ワーク9が加工される様子を模式的に示す図である。
図35は、第1の実施形態におけるワーク加工方法の他の一例を示すフローチャートである。
【0084】
図22に例示されるように、第1ステップST101において、第2保持面12、および、第2保持面12の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を有するチャック生爪1が準備される。第1ステップST1は、準備工程である。準備工程において準備されるチャック生爪1は、
図1乃至
図12を参照して説明された第1の実施形態におけるチャック生爪のいずれかであってもよいし、その他のチャック生爪であってもよい。また、準備工程において準備されるチャック生爪1は、第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法によって成形されたチャック生爪であってもよいし、その他のチャック生爪であってもよい。
【0085】
チャック生爪1は、第1ワーク保持装置3の第1軸AXから離れる第1方向DR1、および、当該第1軸AXに近づく第2方向DR2に移動可能なようにチャック本体31によって支持される。
図22に例示されるように、第2ステップST102において、チャック本体31によって支持されたチャック生爪1にワーク9が取り付けられる。第2ステップST102は、ワーク取付工程である。
【0086】
図23に例示されるように、第3ステップST103において、ワーク9の第1部分95が切削される。第3ステップST103は、第1の切削工程である。
図23に記載の例では、ワーク9の酸化表面911(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911a)がチャック生爪1の第1保持面11によって保持された状態で、ワーク9の第1部分95が切削される。
【0087】
第1の切削工程(第3ステップST103)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9の第1部分95に接触させることを含む。
【0088】
図23に記載の例では、第1の切削工程(第3ステップST103)で切削される第1部分95は、第1保持面11よりも第3方向DR3側に位置するワーク9の酸化表面911bを含む。よって、第1の切削工程の実行により、ワーク9の第3方向DR3側の酸化表面911bは、切削加工面92(より具体的には、第3方向DR3側の第1切削加工面92b)となる。
【0089】
酸化表面911には凹凸が存在するため、酸化表面911と第1保持面11との間にスリップが生じやすい。そこで、第3ステップST103の実行時に、第1保持面11からワーク9に、相対的に大きなグリップ力を付与する必要がある。第1保持面11は相対的に硬度が高い面であるため、当該第1保持面11は、相対的に大きなグリップ力を付与するのに好適である。また、第1保持面11は相対的に硬度が高い面であるため、第1保持面11と酸化表面911との間の接触に起因して、第1保持面11が傷つきにくい。第1保持面11は、溝等の凹凸111(必要であれば、
図4、
図7、
図16、
図20を参照。)を有していてもよい。第1保持面11が凹凸111を有する場合、ワーク9の酸化表面911に対するグリップ性が向上する。
【0090】
図24および
図25に例示されるように、第4ステップST104において、第1ワーク保持装置3から第2ワーク保持装置4にワーク9が移載される。第4ステップST104は、第1移載工程である。第1移載工程は、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4を用いて自動的に実行されてもよい。代替的に、第1移載工程の一部は、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4以外の移載装置(より具体的には、移載装置は、ガントリーローダ、後述の第1ヘッド52に取り付けられたワーク交換ハンド等である。)を用いて実行されてもよく、手動で実行されてもよい。
【0091】
図24に例示されるように、第1移載工程(第4ステップST104)は、チャック生爪1を、ワーク9の酸化表面911aから離間する方向に移動させることを含む。当該移動により、チャック生爪1の第1保持面11によるワーク9の保持が解除される。また、第1移載工程(第4ステップST104)は、第2ワーク保持装置4の爪42を、ワーク9の表面(より具体的には、第1切削加工面92b)に近づく方向に移動させることを含む。当該移動により、ワーク9の表面(より具体的には、第1切削加工面92b)が、爪42によって保持される。
【0092】
図26に例示されるように、第5ステップST105において、ワーク9の酸化表面911(より具体的には、第4方向DR4側の酸化表面911a)が切削される。第5ステップST105は、第2の切削工程である。第2の切削工程は、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9に切削加工面92が形成されるよう、ワーク9の酸化表面911を切削することを含む。より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911aが切削されることにより、第4方向DR4側の第2切削加工面92aが形成される。
【0093】
図26に記載の例では、第2の切削工程の実行時に、ワーク9の第3方向DR3側の第1切削加工面92bが、第2ワーク保持装置4の爪42によって保持されている。第1切削加工面92bが爪42によって傷つけられることを防止するため、当該爪42は、硬化処理されていない生爪42aであることが好ましい。
【0094】
図26に記載の例では、第2の切削工程(第5ステップST105)は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2チャック本体41の中心軸(以下、「第2軸AT」という。)まわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911a)に接触させることを含む。
【0095】
第2の切削工程(第5ステップST105)は、第4方向DR4側の酸化表面911aを除去する粗加工工程と、当該粗加工工程に続いて行われる仕上げ加工工程と、を含んでいてもよい。
【0096】
図27に例示されるように、第6ステップST106において、第2ワーク保持装置4から第1ワーク保持装置3にワーク9が移載される。第6ステップST106は、第2移載工程である。第2移載工程は、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4を用いて自動的に実行されてもよい。代替的に、第2移載工程の一部は、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4以外の移載装置(より具体的には、移載装置は、ガントリーローダ、後述の第1ヘッド52に取り付けられたワーク交換ハンド等である。)を用いて実行されてもよく、手動で実行されてもよい。
【0097】
第2移載工程(第6ステップST106)は、爪42を、ワーク9の表面から離間する方向に移動させることを含む。当該移動により、爪42によるワーク9の保持が解除される。
【0098】
図27に記載の例では、第2移載工程(第6ステップST106)は、切削加工面92(より具体的には、第2切削加工面92a)がチャック生爪1の第2保持面12によって保持されるよう、第2ワーク保持装置4から第1ワーク保持装置3にワーク9を移載することを含む。より具体的には、
図27に記載の例では、第2移載工程(第6ステップST106)は、チャック生爪1の第2保持面12を、ワーク9の第2切削加工面92aに近づく方向に移動させることを含む。当該移動により、ワーク9の第2切削加工面92aが、チャック生爪1の第2保持面12によって保持される。
【0099】
図28に記載の例では、第7ステップST107において、ワーク9の第2部分96が加工される。第7ステップST107は、ワーク加工工程である。ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の酸化表面(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面)が切削されることにより形成された切削加工面92(より具体的には、第2切削加工面92a)がチャック生爪1の第2保持面12に保持された状態で実行される。
【0100】
第2保持面12は相対的に硬度が低い面であるため、ワーク9の切削加工面92が、第2保持面12によって傷つけられることが抑制される。
【0101】
図28に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の第2部分96を切削することを含む。第1の切削工程(第3ステップST103)が、ワーク9の酸化表面を除去する粗加工工程であるのに対し、
図28に記載の例における切削工程は、仕上げ加工工程である。
【0102】
図28に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9の仕上げ加工対象面に接触させることを含む。
【0103】
第1の実施形態におけるワーク加工方法では、ワーク9の酸化表面911がチャック生爪1によって保持された状態で行われる加工(
図23を参照。)、および、ワーク9の切削加工面92がチャック生爪1によって保持された状態で行われる加工(
図28を参照。)の両方が実行される際に、チャック本体31に支持された爪を交換する必要がない(より具体的には、チャック本体31に支持された爪を、硬爪から生爪に交換する必要がない。)。よって、第1の実施形態におけるワーク加工方法では、爪の交換時間が省かれることにより、ワーク9の加工に要する加工時間が短縮される。
【0104】
また、第1の実施形態におけるワーク加工方法では、ワーク9の酸化表面911が、相対的に硬度の高い第1保持面11によって保持される(
図23を参照。)。よって、酸化表面911に強い力で接触する第1保持面11が、酸化表面911によって傷つけられることが抑制される。こうして、チャック生爪1の耐久性能が向上し、チャック生爪1の寿命を長くすることができる。
【0105】
更に、第1の実施形態におけるワーク加工方法では、ワーク9の切削加工面92が、相対的に硬度の低い第2保持面12によって保持される(
図28を参照。)。よって、ワーク9の切削加工面92が、第2保持面12によって傷つけられることが抑制される。
【0106】
ワーク9の加工終了後、ワーク9は、チャック生爪1から取り外される。当該チャック生爪1には、第2ワークが取り付けられてもよい。第2ワークの加工は、ワーク9の加工と同様の手順で実行される。
【0107】
ワーク9の加工終了後、チャック生爪1が痛んでいる場合、上述のチャック生爪の成形方法の少なくとも一部が再度実行されてもよい。例えば、傷んだチャック生爪1を原材ブロックとして、当該原材ブロックに、第1保持面11および第2保持面12のうちの少なくとも一方が再形成されてもよい。第1保持面11の再形成は、傷んだ第1保持面11を切削することと、切削により形成された面を熱処理すること(より具体的には、焼き入れ処理すること)と、を含んでいてもよい。代替的に、第1保持面11の再形成は、傷んだ第1保持面11を切削することと、切削により形成された面に金属材料を付加することと、を含んでいてもよい。また、第2保持面12の再形成は、傷んだ第2保持面12を切削することを含んでいてもよい。
【0108】
(ワーク加工方法の第1変形例)
図30を参照して、ワーク加工方法の第1変形例について説明する。ワーク加工方法の第1変形例における第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106は、上述の第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106と、それぞれ同様である。よって、ワーク加工方法の第1変形例において、第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0109】
図30(a)に例示されるように、第5ステップST105において、ワーク9の酸化表面911(より具体的には、第4方向DR4側の酸化表面911a)が切削される。第5ステップST105は、第2の切削工程である。第2の切削工程は、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9に切削加工面92が形成されるよう、ワーク9の酸化表面911を切削することを含む。より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911aが切削されることにより、第4方向DR4側の第2切削加工面92aが形成される。
【0110】
図30(a)に記載の例では、第2の切削工程の実行時に、ワーク9の第3方向DR3側の第1切削加工面92bが、第2ワーク保持装置4の爪42(より具体的には、生爪42a)によって保持されている。
図30(a)に記載の例では、第2の切削工程は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2軸ATまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9に接触させることを含む。
【0111】
第5ステップST105の実行後、第6ステップST106の実行前に、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9が研削工具T2によって研削されてもよい(研削工程)。
図30に記載の例では、第1加工装置50は、切削工具T1を用いてワーク9の酸化表面911aを切削することと、研削工具T2を用いてワーク9(より具体的には、ワーク9の第2切削加工面92a)を研削することとの両方を実行する。
【0112】
図30(b)に記載の例では、研削工程は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2軸ATまわりに回転している状態で、研削工具T2をワーク9に接触させることを含む。
【0113】
図30(d)に記載の例では、第7ステップST107において、ワーク9の第2部分96が加工される。第7ステップST107は、ワーク加工工程である。ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の酸化表面(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面)が切削および研削されることにより形成された切削加工面92(より具体的には、第2切削加工面92a)がチャック生爪1の第2保持面12に保持された状態で実行される。なお、本明細書において、切削後の研削によって形成された面は、切削加工面92の一態様であるとみなされる。
【0114】
図30(d)に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の第2部分96を研削することを含む。
【0115】
図30(d)に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、研削工具T2をワーク9の第2部分96に接触させることを含む。
【0116】
研削加工は、切削加工(より具体的には、旋削加工)と比較して、切込み量が小さい。よって、研削加工に際し、ワーク9は、相対的に硬度の低い第2保持面12によって、相対的に小さなグリップ力で保持されていれば十分である。
【0117】
研削工具T2による第2部分96の研削は、高精度で行われることが好ましい。
図31に例示されるように、ワーク9の中心軸AWが、第1軸AX(換言すれば、チャック本体31の回転軸)から偏心している場合を想定する。この場合、ワーク9が第1軸AXまわりに回転するとき、ワーク9は上下方向に振動する。よって、高精度に研削を行うために、第1軸AXとワーク9の中心軸AWとの間の偏心量と、チャック本体31の回転位相とに基づいて、研削工具T2が上下方向に移動されることが好ましい。なお、ワーク9の中心軸AWは、例えば、第2切削加工面92a(
図30(b)を参照。)をタッチセンサで計測し、計測結果をコンピュータが解析することによって求めることができる。
【0118】
(ワーク加工方法の第2変形例)
図32を参照して、ワーク加工方法の第2変形例について説明する。ワーク加工方法の第2変形例における第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106は、上述の第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106と、それぞれ同様である。よって、ワーク加工方法の第2変形例において、第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0119】
図32(a)に例示されるように、第5ステップST105において、ワーク9の酸化表面911(より具体的には、第4方向DR4側の酸化表面911a)が切削される。第5ステップST105は、第2の切削工程である。第2の切削工程は、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9に切削加工面92が形成されるよう、ワーク9の酸化表面911を切削することを含む。より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911aが切削されることにより、第4方向DR4側の第2切削加工面92aが形成される。
【0120】
図32(a)に記載の例では、第2の切削工程の実行時に、ワーク9の第3方向DR3側の第1切削加工面92bが、第2ワーク保持装置4の爪42(より具体的には、生爪42a)によって保持されている。
図32(a)に記載の例では、第2の切削工程は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2軸ATまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9に接触させることを含む。
【0121】
第4ステップST104あるいは第5ステップST105の実行後、第6ステップST106の実行前に、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9に内歯車96cが形成されてもよい。内歯車96cは、スカイビングカッターT3を用いて形成される。
図32に記載の例では、第1加工装置50は、切削工具T1を用いてワーク9の酸化表面911aを切削することと、スカイビングカッターT3を用いてワーク9をスカイビング加工することとの両方を実行する。
【0122】
図32(b)に記載の例において、スカイビング加工工程は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2軸ATまわりに回転している状態で、工具軸まわりに回転するスカイビングカッターT3をワーク9に接触させることを含む。
【0123】
図32(d)に記載の例では、第7ステップST107において、ワーク9の第2部分96が加工される。第7ステップST107は、ワーク加工工程である。ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の酸化表面(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面)が切削されることにより形成された切削加工面92(より具体的には、第2切削加工面92a)がチャック生爪1の第2保持面12に保持された状態で実行される。
【0124】
図32(d)に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の第2部分96(より具体的には、ワーク9の内歯車96c)に形成されたバリ96bを除去することを含む。バリ96bは、バリ取り工具T4を用いて除去される。
【0125】
図32(d)に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、バリ取り工具T4をワーク9のバリ96bに接触させることを含む。
【0126】
図32(d)に記載の例では、バリ取り工程の実行時に、ワーク9の切削加工面92は、相対的に硬度の低い第2保持面12によって保持されている。よって、バリ取り工程の実行時に、第2保持面12によって切削加工面92が傷つけられることが抑制される。
【0127】
(ワーク加工方法の第3変形例)
図33を参照して、ワーク加工方法の第3変形例について説明する。ワーク加工方法の第3変形例における第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106は、上述の第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106と、それぞれ同様である。よって、ワーク加工方法の第3変形例において、第1ステップST101乃至第4ステップST104、第6ステップST106についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0128】
図33(a)に例示されるように、第5ステップST105において、ワーク9の酸化表面911(より具体的には、第4方向DR4側の酸化表面911a)が切削される。第5ステップST105は、第2の切削工程である。第2の切削工程は、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9に切削加工面92が形成されるよう、ワーク9の酸化表面911を切削することを含む。より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911aが切削されることにより、第4方向DR4側の第2切削加工面92aが形成される。
【0129】
図33(a)に記載の例では、第2の切削工程の実行時に、ワーク9の第3方向DR3側の第1切削加工面92bが、第2ワーク保持装置4の爪42(より具体的には、生爪42a)によって保持されている。
図33(a)に記載の例では、第2の切削工程は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2軸ATまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9に接触させることを含む。
【0130】
第4ステップST104あるいは第5ステップST105の実行後、第6ステップST106の実行前に、第2ワーク保持装置4によって保持されたワーク9に内歯車、外歯車等の歯車96dが形成されてもよい。歯車96dは、歯切り工具T5(例えば、スカイビングカッター、ボブカッター等)を用いて形成される。より具体的には、内歯車がスカイビングカッターを用いて形成されてもよく、外歯車がボブカッターを用いて形成されてもよい。
図33に記載の例において、第1加工装置50は、切削工具T1を用いてワーク9の酸化表面911aを切削することと、歯切り工具T5を用いてワーク9に歯車96dを形成することとの両方を実行する。
【0131】
図33(b)に記載の例において、歯切り工程は、爪42を介してワーク9を保持する第2チャック本体41が第2軸ATまわりに回転している状態で、工具軸まわりに回転する歯切り工具T5をワーク9に接触させることを含む。
【0132】
図33(d)に記載の例では、第7ステップST107において、ワーク9の第2部分96が加工される。第7ステップST107は、ワーク加工工程である。ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の酸化表面(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面)が切削されることにより形成された切削加工面92(より具体的には、第2切削加工面92a)がチャック生爪1の第2保持面12に保持された状態で実行される。
【0133】
図33(d)に記載の例では、ワーク加工工程(第7ステップST107)は、ワーク9の第2部分96に、穴96h、凹部等を形成することを含む。当該穴96h、凹部等は、例えば、ミル工具T6(例えば、ドリル)を用いて形成される。
【0134】
図33(d)に記載の例では、第7ステップST107の実行前に、歯切り工具T5によって、ワーク9に歯車96dが形成されている。第7ステップST107は、歯車96dの位相を検出することと、検出された位相に基づいて、ミル工具T6を用いて、所望の位置に、穴96h、凹部等を形成することとを含んでいてもよい。
【0135】
図33(d)に記載の例では、ミル加工工程の実行時に、ワーク9の切削加工面92は、相対的に硬度の低い第2保持面12によって保持されている。よって、ミル加工工程の実行時に、第2保持面12によって切削加工面92が傷つけられることが抑制される。
【0136】
(ワーク加工方法の第4変形例)
図24、
図25、
図27、
図30(c)、
図32(c)、および、
図33(c)に記載の例では、ワーク加工方法は、第1ワーク保持装置3と第2ワーク保持装置4との間でワーク9を移載する工程を含む。これに対し、ワーク加工方法の第4変形例では、第1ワーク保持装置3と第2ワーク保持装置4との間でワーク9を移載する工程が省略される。
【0137】
ワーク加工方法の第4変形例における第1ステップST101および第2ステップST102は、上述の第1ステップST101および第2ステップST102と、それぞれ同様である。よって、ワーク加工方法の第4変形例において、第1ステップST101および第2ステップST102についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0138】
図34(a)に例示されるように、第3ステップST103において、ワーク9の第1部分95(より具体的には、ワーク9の第3方向DR3側の酸化表面911b)が切削される。ワーク9の第1部分95が切削されることにより、切削加工面92が形成される。第3ステップST103は、第1の切削工程である。
【0139】
図34(a)に記載の例では、第1の切削工程において、ワーク9の酸化表面911(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の酸化表面911a)がチャック生爪1の第1保持面11によって保持された状態で、ワーク9の第1部分95が切削される。
【0140】
図34(a)に記載の例では、第1の切削工程(第3ステップST103)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9の第1部分95に接触させることを含む。
【0141】
なお、
図34(a)に例示されるように、第3ステップST103の実行時に、ワーク9の第3方向DR3側の端部は、芯押台48によって押圧されていてもよい。
【0142】
図34(b)に例示されるように、第4ステップST104’において、チャック生爪1によるワーク9の保持位置が変更される。第4ステップST104’は、保持位置変更工程である。
【0143】
図34(b)に記載の例では、保持位置変更工程(第4ステップST104’)は、(1)チャック生爪1をワーク9から離間する方向に移動させることと、(2)ワーク9を反転させることと、(3)チャック生爪1の第2保持面12をワーク9の切削加工面92に近づく方向に移動させることと、を含む。保持位置変更工程の実行により、ワーク9の切削加工面92が、チャック生爪1の第2保持面12によって保持される。
【0144】
図34(c)に記載の例では、第5ステップST105’において、ワーク9の第2部分96が加工される。第5ステップST105’は、ワーク加工工程である。ワーク加工工程(第5ステップST105’)は、ワーク9の酸化表面が切削されることにより形成された切削加工面92がチャック生爪1の第2保持面12に保持された状態で実行される。
【0145】
第2保持面12は相対的に硬度が低い面であるため、ワーク9の切削加工面92が、第2保持面12によって傷つけられることが抑制される。
【0146】
図34(c)に記載の例では、ワーク加工工程(第5ステップST105’)は、ワーク9の第2部分96を切削することを含む。
【0147】
図34(c)に記載の例では、ワーク加工工程(第5ステップST105’)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、切削工具T1をワーク9に接触させることを含む。
【0148】
代替的に、あるいは、付加的に、
図34(d)に例示されるように、ワーク加工工程(第5ステップST105’)は、第1ワーク保持装置3によって保持されたワーク9に内歯車、外歯車等の歯車96dを形成することを含んでいてもよい。歯車96dは、歯切り工具T5(例えば、スカイビングカッター、ボブカッター等)を用いて形成される。
図34(d)に記載の例では、ワーク加工工程(第5ステップST105’)は、チャック生爪1を介してワーク9を保持するチャック本体31が第1軸AXまわりに回転している状態で、工具軸まわりに回転する歯切り工具T5をワーク9に接触させることを含む。
【0149】
図23、
図34(a)に記載の例では、第3ステップST103において、ワーク9の外面がチャック生爪1の第1保持面11によって保持された状態で、ワーク9の第1部分95が切削される。代替的に、
図2あるいは
図11に示されるチャック生爪1が使用される場合には、第3ステップST103において、ワーク9の内面91nがチャック生爪1の第1保持面11によって保持された状態で、ワーク9の第1部分95が切削される。
【0150】
図28、
図30(d)、
図32(d)、
図33(d)、
図34(c)、
図34(d)に記載の例では、第7ステップST107(あるいは、第5ステップST105’)において、ワーク9の外面がチャック生爪1の第2保持面12によって保持された状態で、ワーク9の第2部分96が加工される。代替的に、
図3あるいは
図10に示されるチャック生爪1が使用される場合には、第7ステップST107(あるいは、第5ステップST105’)において、ワーク9の内面がチャック生爪1の第2保持面12によって保持された状態で、ワーク9の第2部分96が加工される。
【0151】
(ハイブリッド工作機械2)
図1乃至
図42を参照して、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2について説明する。
図36および
図37は、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2を模式的に示す概略斜視図である。
図38および
図39は、第1の実施形態の第1変形例におけるハイブリッド工作機械2を模式的に示す概略斜視図である。
図40乃至
図42は、制御装置7が、複数の制御対象機器に、制御指令を送信可能な様子を模式的に示す図である。
【0152】
図36に記載の例では、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2は、チャック生爪を成形する複数の加工装置5と、第1ワーク保持装置3と、複数の加工装置5および第1ワーク保持装置3を制御する制御装置7と、を具備する。
【0153】
複数の加工装置5は、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBL(
図36を参照。)から、チャック生爪1(
図37を参照。)を成形する。より具体的には、複数の加工装置5は、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBL(
図13を参照。)から、ワークの酸化表面を保持する第1保持面11およびワークの切削加工面を保持する第2保持面12を有するチャック生爪1(
図16または
図20を参照。)を成形する。
【0154】
図22に例示されるように、第1ワーク保持装置3は、チャック生爪1を介してワーク9を保持する。第1ワーク保持装置3は、チャック生爪1を支持するチャック本体31と、チャック生爪1を移動させる第1駆動装置34と、第1回転駆動装置36とを有する。
【0155】
第1駆動装置34は、第1軸AXから離れる第1方向DR1(より具体的には、第1軸AXから離れる放射方向)、または、第1軸AXに近づく第2方向DR2に、チャック生爪1を移動させる。
【0156】
第1回転駆動装置36は、チャック本体31を第1軸AXまわりに回転させる。第1回転駆動装置36は、チャック本体31、チャック本体31に支持されたチャック生爪1、および、チャック生爪1に保持されたワーク9を、一体的に、第1軸AXまわりに回転させる。
【0157】
図36に記載の例では、複数の加工装置5は、第1加工装置50と、第2加工装置60とを含む。
【0158】
第1加工装置50は、切削工具T1(
図16または
図20を参照。)を保持可能である。
図16または
図20に記載の例では、第1加工装置(より具体的には、第1加工装置50に保持された切削工具T1)は、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLを切削することにより、原材ブロックBLに第2保持面12を形成する。
【0159】
また、
図14または
図17に記載の例では、第1加工装置(より具体的には、第1加工装置50に保持された切削工具T1)は、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLを切削することにより、原材ブロックBLに、第1保持面11の基礎となる切削面BL1を形成する。
【0160】
図15または
図18に記載の例では、第2加工装置60は、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBL(より具体的には、上述の切削面BL1)を処理することにより、原材ブロックBLに、第2保持面12の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を形成する。
【0161】
図15に例示されるように、第2加工装置60は、原材ブロックBL(より具体的には、上述の切削面BL1)にレーザ光LBを照射することにより、第2保持面12の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11(換言すれば、焼き入れ処理された第1保持面11)を形成してもよい。
【0162】
代替的に、
図18に例示されるように、第2加工装置60は、原材ブロックBL(より具体的には、上述の切削面BL1)に、原材ブロックBLを構成する材料よりも高硬度の金属材料Nを付加することにより、第2保持面12の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を形成してもよい。
【0163】
第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2は、チャック生爪1を介してワーク9を保持する第1ワーク保持装置3と、当該チャック生爪1に第1保持面11および第2保持面12を形成する複数の加工装置5と、を有する。よって、チャック生爪1の成形と、ワーク9の加工とを、同一のハイブリッド工作機械2を用いて実行することができる。
【0164】
また、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2は、ワーク9の第1面91(より具体的には、酸化表面911)を保持するのに適した硬度を有する第1保持面11(より具体的には、相対的に高い硬度を有する第1保持面11)と、ワーク9の切削加工面92を保持するのに適した硬度を有する第2保持面12(より具体的には、相対的に低い硬度を有する第2保持面12)とを有するチャック生爪1を成形する。
【0165】
このため、ハイブリッド工作機械2が、ワーク9の第1面91がチャック生爪1によって保持された状態で行われる加工、および、ワーク9の切削加工面92がチャック生爪1によって保持された状態で行われる加工の両方を実行する際に、チャック本体31に支持された爪を交換する必要がない(より具体的には、チャック本体31に支持された爪を、硬爪から生爪に交換する必要がない。)。よって、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2を用いてワーク9の加工が行われる場合、爪の交換時間が省かれることにより、ワーク9の加工に要する加工時間が短縮される。
【0166】
(任意付加的な構成)
続いて、
図1乃至
図42を参照して、第1の実施形態におけるハイブリッド工作機械2において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0167】
(複数のチャック生爪)
図37に記載の例では、チャック本体31は、チャック生爪1、第2のチャック生爪1B、第3のチャック生爪1Cを支持する。付加的に、チャック本体31は、第4のチャック生爪を支持してもよい。第2のチャック生爪1Bの形状および構造は、チャック生爪1の形状および構造と同様であり、第3のチャック生爪1Cの形状および構造は、チャック生爪1の形状および構造と同様である。よって、第2のチャック生爪1B、第3のチャック生爪1Cについての繰り返しとなる説明は省略する。なお、第1の実施形態におけるチャック生爪1についての上述の説明、第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法についての上述の説明、および、第1の実施形態におけるワーク加工方法についての上述の説明において、「チャック生爪1」を「第2のチャック生爪1B」と読み替えることにより、第2のチャック生爪1Bについての説明とする。同様に、第1の実施形態におけるチャック生爪1についての上述の説明、第1の実施形態におけるチャック生爪の成形方法についての上述の説明、および、第1の実施形態におけるワーク加工方法についての上述の説明において、「チャック生爪1」を「第3のチャック生爪1C」と読み替えることにより、第3のチャック生爪1Cについての説明とする。
【0168】
当該読み替えにより、チャック生爪1の第1保持面11、第2のチャック生爪1Bの第1保持面11、および、第3のチャック生爪1Cの第1保持面11は、協働して、ワーク9の第1面91(より具体的には、酸化表面911)を保持することが把握される。また、当該読み替えにより、チャック生爪1の第2保持面12、第2のチャック生爪1Bの第2保持面12、および、第3のチャック生爪1Cの第2保持面12は、協働して、ワーク9の切削加工面92を保持することが把握される。また、チャック生爪1、第2のチャック生爪1B、および、第3のチャック生爪1Cの各々において、第1保持面11の硬度が、第2保持面12の硬度よりも高いことが把握される。
【0169】
(第1ワーク保持装置3)
図2、
図5、
図9、
図11、
図12に記載の例では、第1ワーク保持装置3は、チャック本体31と、第1駆動装置34とを有する。チャック本体31は、チャック生爪1が固定される可動部32と、当該可動部32を移動可能に支持するベース部33と、を有していてもよい。この場合、第1駆動装置34は、チャック生爪1および可動部32を、ベース部33に対して、第1方向DR1または第2方向DR2に相対移動させることができる。
【0170】
第1駆動装置34は、チャック生爪1、第2のチャック生爪1B、および、第3のチャック生爪1Cを、同時に、第1軸AXから離れる方向(あるいは、第1軸AXに近づく方向)に移動させることが好ましい。
【0171】
図36に例示されるように、ハイブリッド工作機械2は、第1ワーク保持装置3を、第1軸AXに平行な方向に移動させる第1移動装置81(より具体的には、Z軸サーボモータ)を有していてもよい。
【0172】
(第2ワーク保持装置4)
図36に記載の例では、ハイブリッド工作機械2は、第2ワーク保持装置4を備える。
【0173】
第2ワーク保持装置4は、第1ワーク保持装置3からワーク9を受け取ることが可能である。また、第2ワーク保持装置4は、第1ワーク保持装置3にワーク9を受け渡すことが可能である。なお、第1ワーク保持装置3からのワークの受け取り、および、第1ワーク保持装置3へのワークの受け渡しの各々は、機械的に自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0174】
図26に例示されるように、第2ワーク保持装置4は、第2チャック本体41と、第2駆動装置44と、第2回転駆動装置46と、を有する。第2チャック本体41は、ワーク9を保持可能な爪42(より具体的には、生爪42a)を支持する。
【0175】
第2駆動装置44は、爪42(より具体的には、生爪42a)を、第2軸ATから離れる方向に移動させることが可能であり、爪42(より具体的には、生爪42a)を、第2軸ATに近づく方向に移動させることが可能である。
【0176】
第2回転駆動装置46は、第2チャック本体41を、第2チャック本体41の中心軸(換言すれば、第2軸AT)まわりに回転させる。なお、第2チャック本体41の中心軸である第2軸ATは、チャック本体31の中心軸である第1軸AXと同軸であるか、あるいは、当該第1軸AXと平行である。
【0177】
図26に例示されるように、ハイブリッド工作機械2は、第2ワーク保持装置4を、第2チャック本体41の中心軸に平行な方向に移動させる第2移動装置82(より具体的には、Z軸サーボモータ)を有していてもよい。
【0178】
ハイブリッド工作機械2が、第2ワーク保持装置4を有する場合、ハイブリッド工作機械2を用いて、
図22乃至
図33を参照して説明されたワーク加工方法を実行することができる。
【0179】
(第1加工装置50)
図36に記載の例では、第1加工装置50は、切削工具T1等の工具Tを保持する第1ヘッド52と、第1ヘッド52を移動させる第1ヘッド移動装置55とを有する。
【0180】
第1ヘッド移動装置55は、第1ヘッド52を、三次元的に移動させることが可能な装置であってもよい。
図36に記載の例では、第1ヘッド移動装置55は、第1ヘッド52を鉛直軸に平行な方向に移動させる第1モータ55a(より具体的には、X軸サーボモータ)と、第1ヘッド52を第1軸AXに平行な方向に移動させる第2モータ55b(より具体的には、Z軸サーボモータ)と、第1ヘッド52を、鉛直軸および上述の第1軸AXの両方に垂直な方向に移動させる第3モータ55c(より具体的には、Y軸サーボモータ)とを有する。
【0181】
第1加工装置50は、工具Tを工具軸まわりに回転させる回転駆動装置57を有していてもよい。
【0182】
(第2加工装置60)
図36に記載の例では、第2加工装置60は、原材ブロックBLを熱処理するレーザ照射装置61を含む。
図15に記載の例では、レーザ照射装置61が、原材ブロックBL(より具体的には、原材ブロックBLの切削面BL1)にレーザ光LBを照射することにより、原材ブロックBLに、原材ブロックBLのオリジナル表面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11が形成される。
【0183】
図36に記載の例では、第2加工装置60は、レーザ光を放出する第2ヘッド62と、第2ヘッド62を移動させる第2ヘッド移動装置64とを有する。
【0184】
第2ヘッド移動装置64は、第2ヘッド62を、二次元的に移動させることが可能な装置であってもよいし、三次元的に移動させることが可能な装置であってもよい。
図36に記載の例では、第2ヘッド移動装置64は、第2ヘッド62を鉛直軸に平行な方向に移動させる第4モータ64a(より具体的には、X軸サーボモータ)と、第2ヘッド62を第1軸AXに平行な方向に移動させる第5モータ64b(より具体的には、Z軸サーボモータ)とを有する。第2ヘッド移動装置64は、第2ヘッド62を、水平面に平行な軸まわりに傾動させる第6モータ64cを有していてもよい。
【0185】
図15に記載の例では、レーザ照射装置61は、チャック生爪1の成形に用いられる。付加的に、レーザ照射装置61は、ワーク9の加工に用いられてもよい。
【0186】
図38に例示されるように、第2加工装置60は、レーザ照射装置61に代えて(あるいは、レーザ照射装置61に加えて)、付加加工装置66を含んでいてもよい。付加加工装置66は、原材ブロックBLに原材ブロックBLよりも高硬度な金属材料を付加する。
【0187】
図18に記載の例では、付加加工装置66は、レーザ光LBを放出するレーザヘッド67と、レーザヘッド67から放出されるレーザ光LBに向けて金属粉体Pを放出するノズル68とを有する。
図18に記載の例では、付加加工装置66は、原材ブロックBL(より具体的には、原材ブロックBLの切削面BL1)に向けて金属粉体Pを供給するとともに、原材ブロックBL(より具体的には、原材ブロックBLの切削面BL1)に向けてレーザ光LBを照射する。その結果、レーザ光LBのエネルギによって加熱される金属粉体Pが融解し、融解金属が、原材ブロックBL(より具体的には、原材ブロックBLの切削面BL1)に付着する。こうして、原材ブロックBL(より具体的には、原材ブロックBLの切削面BL1)に、第2保持面12の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11が形成される。
【0188】
図38に記載の例では、付加加工装置66は、レーザヘッド67およびノズル68を移動させる第3ヘッド移動装置69を有する。
【0189】
第3ヘッド移動装置69は、レーザヘッド67およびノズル68を、二次元的に移動させることが可能な装置であってもよいし、三次元的に移動させることが可能な装置であってもよい。
図38に記載の例では、第3ヘッド移動装置69は、レーザヘッド67およびノズル68を鉛直軸に平行な方向に移動させる第7モータ69a(より具体的には、X軸サーボモータ)と、レーザヘッド67およびノズル68を第1軸AXに平行な方向に移動させる第8モータ69b(より具体的には、Z軸サーボモータ)とを有する。第3ヘッド移動装置69は、レーザヘッド67およびノズル68を、水平面に平行な軸まわりに傾動させる第9モータ69cを有していてもよい。
【0190】
(ベース80)
図36に記載の例では、ハイブリッド工作機械2は、ベース80を備える。ベース80は、第1ワーク保持装置3、第1加工装置50、および、第2加工装置60を支持する。付加的に、ベース80は、第2ワーク保持装置4を支持してもよい。
【0191】
(制御装置7)
図36に記載の例では、ハイブリッド工作機械2は、制御装置7を備える。制御装置7は、1つのコンピュータによって構成されていてもよく、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。
【0192】
図40に例示されるように、制御装置7は、プロセッサ71と、記憶装置72(より具体的には、メモリ)と、通信回路73と、入力装置74(例えば、タッチパネル付きディスプレイ742)と、を備える。プロセッサ71と、記憶装置72と、通信回路73と、入力装置74とは、バス75を介して互いに接続されている。チャック生爪1の成形およびワーク9の加工に必要なデータ(例えば、チャック生爪1またはワーク9の形状データ、チャック生爪1またはワーク9の加工位置データ等)は、入力装置74を介して制御装置7に入力されてもよいし、他のコンピュータから通信回路73を介して制御装置7に入力されてもよい。なお、入力装置74は、タッチパネル付きディスプレイ742に限定されない。例えば、制御装置7は、ボタン、スイッチ、レバー、ポインティングデバイス、キーボード等の入力装置74と、当該入力装置74に入力されたデータ、あるいは、その他の情報を表示するディスプレイと、を備えていてもよい。
【0193】
プロセッサ71は、制御装置7に入力されたデータに基づいて、記憶装置72に記憶された加工プログラム722を実行することにより、制御信号を生成する。また、通信回路73は、当該制御信号を、制御対象機器(例えば、第1ワーク保持装置3、第2ワーク保持装置4、複数の加工装置5、第1ワーク保持装置3を移動させる第1移動装置81、および/または、第2ワーク保持装置4を移動させる第2移動装置82)に送信する。こうして、プロセッサ71が加工プログラム722を実行することにより、制御装置7は、制御対象機器を制御することができる。
【0194】
加工プログラム722は、生爪成形プログラム722a、および、ワーク加工プログラム722bを含んでいてもよい。より具体的には、記憶装置72は、制御装置7によって実行される生爪成形プログラム722a、および、制御装置7によって実行されるワーク加工プログラム722bを記憶していてもよい。
【0195】
(第1保持面形成モード)
図40または
図41に記載の例において、制御装置7は、生爪成形プログラム722aを実行することにより、第1保持面形成モードを実行可能である。第1保持面形成モードは、第2加工装置60を用いて、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLに、原材ブロックBLのオリジナル表面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を形成することを含むモードである。第1保持面形成モードについてより詳細に説明する。
【0196】
制御装置7は、第1ワーク保持装置3の第1回転駆動装置36に、生爪成形プログラム722aを実行することにより生成される第1回転指令R1を送信する。また、制御装置7は、第1加工装置50に、生爪成形プログラム722aを実行することにより生成される第1切削指令J1を送信する。第1回転指令R1を受信する第1回転駆動装置36は、チャック本体31およびチャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLを第1軸AXまわりに回転させる。また、第1切削指令J1を受信する第1加工装置50は、切削工具T1を用いて、第1軸AXまわりに回転する原材ブロックBLに切削面BL1を形成する。なお、原材ブロックBLのオリジナル表面そのものを処理することにより、第1保持面11が形成される場合には、切削面BL1を形成するプロセスは省略されてもよい。
【0197】
制御装置7は、第2加工装置60に、生爪成形プログラム722aを実行することに生成される第1保持面形成指令F1を送信する。第1保持面形成指令F1を受信する第2加工装置60は、原材ブロックBL(より具体的には、切削面BL1)を処理することにより、原材ブロックBLのオリジナル表面の硬度よりも高い硬度を有する第1保持面11を形成する。
【0198】
図40に例示されるように、第2加工装置60がレーザ照射装置61を含む場合には、第1保持面形成指令F1を受信するレーザ照射装置61は、原材ブロックBL(より具体的には、切削面BL1)にレーザ光LBを照射する(
図15を参照。)。原材ブロックBL(より具体的には、切削面BL1)は、レーザ光LBによって加熱処理(より具体的には、焼き入れ処理)され、その結果、切削面BL1の硬度が増加し、原材ブロックBL(より具体的には、切削面BL1)から相対的に硬度が高い第1保持面11が形成される。
【0199】
図41に例示されるように、第2加工装置60が付加加工装置66を含む場合には、第1保持面形成指令F1を受信する付加加工装置66は、原材ブロックBL(より具体的には、切削面BL1)に、原材ブロックBLよりも高硬度な金属材料Nを付加する(
図18を参照。)。
【0200】
なお、第2加工装置60を用いて原材ブロックBLに第1保持面11が形成される際に、第1ワーク保持装置3の第1回転駆動装置36は、連続的または間歇的に、チャック本体31およびチャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLを第1軸AXまわりに回転させてもよい。
【0201】
(第2保持面形成モード)
図42に記載の例において、制御装置7は、生爪成形プログラム722aを実行することにより、第2保持面形成モードを実行可能である。第2保持面形成モードは、第1加工装置50を用いて、チャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLに第2保持面12を形成するモードである。第2保持面形成モードについてより詳細に説明する。
【0202】
制御装置7は、第1ワーク保持装置3の第1回転駆動装置36に、生爪成形プログラム722aを実行することにより生成される第2回転指令R2を送信する。また、制御装置7は、第1加工装置50に、生爪成形プログラム722aを実行することにより生成される第2切削指令J2を送信する。第2回転指令R2を受信する第1回転駆動装置36は、チャック本体31およびチャック本体31に取り付けられた原材ブロックBLを第1軸AXまわりに回転させる。第2切削指令J2を受信する第1加工装置50は、切削工具T1を用いて、第1軸AXまわりに回転する原材ブロックBLに第2保持面12を形成する。
【0203】
(第1加工モード)
図23に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより、第1加工モードを実行可能である。第1加工モードは、第1加工装置50を用いて、チャック生爪1の第1保持面11に保持されたワーク9を加工するモードである。
図23に記載の例では、第1加工モードは、ワーク9の酸化表面911がチャック生爪1の第1保持面11によって保持された状態で実行されている。第1加工モードについてより詳細に説明する。
【0204】
図23に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第1加工指令C1を第1加工装置50に送信する。第1加工指令C1を受信する第1加工装置50は、チャック生爪1の第1保持面11に保持されたワーク9を加工する。
【0205】
より具体的には、制御装置7は、第1ワーク保持装置3の第1回転駆動装置36に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される回転指令(より具体的には、第3回転指令R3)を送信する。また、制御装置7は、第1加工装置50に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第1加工指令C1を送信する。回転指令(より具体的には、第3回転指令R3)を受信する第1回転駆動装置36は、チャック本体31、チャック本体31に保持されたチャック生爪1、および、チャック生爪1の第1保持面11に保持されたワーク9を第1軸AXまわりに回転させる。第1加工指令C1を受信する第1加工装置50は、切削工具T1を用いて、第1軸AXまわりに回転するワーク9の第1部分95(より具体的には、ワーク9の第3方向DR3側の酸化表面911b)を切削する。こうして、ワーク9に切削加工面92(より具体的には、第1切削加工面92b)が形成される。
【0206】
(第2加工モード)
図28に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより、第2加工モードを実行可能である。第2加工モードは、第1加工装置50を用いて、チャック生爪1の第2保持面12に保持されたワーク9を加工するモードである。
図28に記載の例では、第2加工モードは、ワーク9の切削加工面92がチャック生爪1の第2保持面12によって保持された状態で実行されている。第2加工モードについてより詳細に説明する。
【0207】
図28に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第2加工指令C2を第1加工装置50に送信する。第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、チャック生爪1の第2保持面12に保持されたワーク9を加工する。
【0208】
より具体的には、制御装置7は、第1ワーク保持装置3の第1回転駆動装置36に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される回転指令(より具体的には、第4回転指令R4)を送信する。また、制御装置7は、第1加工装置50に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第2加工指令C2を送信する。回転指令(より具体的には、第4回転指令R4)を受信する第1回転駆動装置36は、チャック本体31、チャック本体31に保持されたチャック生爪1、および、チャック生爪1の第2保持面12に保持されたワーク9を第1軸AXまわりに回転させる。第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、切削工具T1等の工具Tを用いて、第1軸AXまわりに回転するワーク9を加工する。
【0209】
図28に記載の例では、第1加工装置50は、切削工具T1を保持している。この場合、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、切削工具T1を用いて、第1軸AXまわりに回転するワーク9を切削する。
【0210】
代替的に、あるいは、付加的に、
図30(d)に例示されるように、第1加工装置50は、研削工具T2を保持していてもよい。この場合、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、研削工具T2を用いて、第1軸AXまわりに回転するワーク9を研削する。
【0211】
代替的に、あるいは、付加的に、
図32(d)に例示されるように、第1加工装置50は、バリ取り工具T4を保持していてもよい。この場合、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、バリ取り工具T4を用いて、第1軸AXまわりに回転するワーク9からバリ96bを除去する。
【0212】
代替的に、あるいは、付加的に、
図33(d)に例示されるように、第1加工装置50は、ミル工具T6を保持していてもよい。この場合、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、ミル工具T6を用いて、ワーク9をミル加工する。なお、ミル加工は、ワーク9の第1軸AXまわりの回転が停止された状態で実行される。
【0213】
代替的に、あるいは、付加的に、
図34(d)に例示されるように、第1加工装置50は、歯切り工具T5を保持していてもよい。この場合、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50は、歯切り工具T5を用いて、第1軸AXまわりに回転するワーク9に歯車96dを形成する。より具体的には、回転指令を受信する第1回転駆動装置36がワーク9を第1軸AXまわりに回転させ、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50が歯切り工具T5を工具軸まわりに回転させ、且つ、第2加工指令C2を受信する第1加工装置50が歯切り工具T5をワーク9に接触させる。その結果、第1軸AXまわりに回転するワーク9と、工具軸まわりに回転する歯切り工具T5との接触により、ワーク9に歯車96dが形成される。
【0214】
ハイブリッド工作機械2が、第2ワーク保持装置4を有する場合には、制御装置7は、第1加工モードの実行後、第2加工モードの実行前に、後述の第1移載モード、後述の第3加工モード、および、後述の第2移載モードを実行してもよい。
【0215】
(第1移載モード)
図24および
図25に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより、第1移載モードを実行可能である。第1移載モードは、第1ワーク保持装置3から第2ワーク保持装置4にワーク9を移載するモードである。第1移載モードについてより詳細に説明する。
【0216】
図24に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第1移動指令M1を、第1移動装置81および第2移動装置82のうちの少なくとも一方の移動装置に送信する。第1移動指令M1を受信する移動装置は、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4のうちの一方を、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4のうちの他方に近づく方向に移動させる。
【0217】
図24に記載の例において、制御装置7は、第2駆動装置44に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第1保持指令H1を送信する。第1保持指令H1を受信する第2駆動装置44は、爪42(より具体的には、生爪42a)を、ワーク9(より具体的には、ワーク9の第1切削加工面92b)に近づく方向に移動させる。こうして、ワーク9(より具体的には、ワーク9の第1切削加工面92b)が、第2ワーク保持装置4の爪42によって保持される。
【0218】
図24に記載の例において、制御装置7は、第1駆動装置34に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第1保持解除指令E1を送信する。第1保持解除指令E1を受信する第1駆動装置34は、チャック生爪1を、ワーク9(より具体的には、ワーク9の酸化表面911)から離れる方向に移動させる。こうして、第1ワーク保持装置3によるワーク9の保持が解除される。
【0219】
図24および
図25に記載の例では、第1ワーク保持装置3から第2ワーク保持装置4へのワーク9の移載工程が、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4を用いて自動的に実行される。代替的に、当該移載工程の少なくとも一部が、手動で行われてもよい。
【0220】
(第3加工モード)
図26に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより、第3加工モードを実行可能である。第3加工モードは、第1加工装置50を用いて、第2ワーク保持装置4の爪42(より具体的には、生爪42a)に保持されたワーク9を加工するモードである。第3加工モードについてより詳細に説明する。
【0221】
図26に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第3加工指令C3を第1加工装置50に送信する。第3加工指令C3を受信する第1加工装置50は、第2ワーク保持装置4に保持されたワーク9を加工する。
【0222】
より具体的には、制御装置7は、第2ワーク保持装置4の第2回転駆動装置46に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される回転指令(より具体的には、第5回転指令R5)を送信する。また、制御装置7は、第1加工装置50に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第3加工指令C3を送信する。回転指令(より具体的には、第5回転指令R5)を受信する第2回転駆動装置46は、第2チャック本体41、第2チャック本体41に保持された爪42、および、爪42に保持されたワーク9を第2軸ATまわりに回転させる。第3加工指令C3を受信する第1加工装置50は、切削工具T1を用いて、第2軸ATまわりに回転するワーク9の第3部分97(より具体的には、ワーク9の酸化表面911)を切削する。こうして、ワーク9に切削加工面92(より具体的には、第4方向DR4側の第2切削加工面92a)が形成される。
【0223】
付加的に、
図30(b)に例示されるように、制御装置7が第3加工モードを実行することにより、ワーク9(例えば、ワークの切削加工面92)が研削されてもよい。より具体的には、第5回転指令R5を受信する第2回転駆動装置46がワーク9を第2軸ATまわりに回転させ、制御装置7から第3加工指令C3を受信する第1加工装置50が、研削工具T2を用いて、第2軸ATまわりに回転するワーク9を研削してもよい。
【0224】
代替的に、あるいは、付加的に、
図32(b)に例示されるように、制御装置が第3加工モードを実行することにより、ワーク9に内歯車96cが形成されてもよい。より具体的には、第5回転指令R5を受信する第2回転駆動装置46がワーク9を第2軸ATまわりに回転させ、第3加工指令C3を受信する第1加工装置50がスカイビングカッターT3を工具軸まわりに回転させ、且つ、第3加工指令C3を受信する第1加工装置50がスカイビングカッターT3をワーク9の内周面に接触させてもよい。
【0225】
(第2移載モード)
図27に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより、第2移載モードを実行可能である。第2移載モードは、第2ワーク保持装置4から第1ワーク保持装置3にワーク9を移載するモードである。第2移載モードについてより詳細に説明する。
【0226】
図27に記載の例において、制御装置7は、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第2移動指令M2を、第1移動装置81および第2移動装置82のうちの少なくとも一方の移動装置に送信する。第2移動指令M2を受信する移動装置は、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4のうちの一方を、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4のうちの他方に近づく方向に移動させる。
【0227】
図27に記載の例において、制御装置7は、第1駆動装置34に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第2保持指令H2を送信する。第2保持指令H2を受信する第1駆動装置34は、チャック生爪1の第2保持面12を、ワーク9の切削加工面92(より具体的には、ワーク9の第4方向DR4側の第2切削加工面92a)に近づく方向に移動させる。こうして、ワーク9の切削加工面92が、チャック生爪1の第2保持面12によって保持される。
【0228】
図27に記載の例において、制御装置7は、第2駆動装置44に、ワーク加工プログラム722bを実行することにより生成される第2保持解除指令E2を送信する。第2保持解除指令E2を受信する第2駆動装置44は、爪42(より具体的には、生爪42a)を、ワーク9から離れる方向に移動させる。こうして、第2ワーク保持装置4によるワーク9の保持が解除される。
【0229】
図27に記載の例では、第1ワーク保持装置3から第2ワーク保持装置4へのワーク9の移載工程が、第1ワーク保持装置3および第2ワーク保持装置4を用いて自動的に実行される。代替的に、当該移載工程の少なくとも一部が、手動で行われてもよい。
【0230】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態または他の変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態または各変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0231】
1…チャック生爪、1B…第2のチャック生爪、1C…第3のチャック生爪、2…ハイブリッド工作機械、3…第1ワーク保持装置、4…第2ワーク保持装置、5…加工装置、7…制御装置、9、9A、9B、9C、9D…ワーク、10…ブロック部品、10a…中間部分、10b…先端部、11…第1保持面、11a…焼き入れ加工によって形成された面、11b…金属積層面、12…第2保持面、14…基部、15…貫通穴部、16…第1段差面、17…第2段差面、18…連結面、31…チャック本体、32…可動部、33…ベース部、34…第1駆動装置、36…第1回転駆動装置、41…第2チャック本体、42…爪、42a…生爪、44…第2駆動装置、46…第2回転駆動装置、48…芯押台、50…第1加工装置、52…第1ヘッド、55…第1ヘッド移動装置、55a…第1モータ、55b…第2モータ、55c…第3モータ、57…回転駆動装置、60…第2加工装置、61…レーザ照射装置、62…第2ヘッド、64…第2ヘッド移動装置、64a…第4モータ、64b…第5モータ、64c…第6モータ、66…付加加工装置、67…レーザヘッド、68…ノズル、69…第3ヘッド移動装置、69a…第7モータ、69b…第8モータ、69c…第9モータ、71…プロセッサ、72…記憶装置、73…通信回路、74…入力装置、75…バス、80…ベース、81…第1移動装置、82…第2移動装置、91…ワークの第1面、91m…ワークの内面が切削されることにより形成された面、91n…ワークの内面、91u…ワークの外面、91v…ワークの外面が切削されることにより形成された面、92…切削加工面、92a…第2切削加工面、92b…第1切削加工面、95…第1部分、96…第2部分、96b…バリ、96c…内歯車、96d…歯車、96h…穴、97…第3部分、111…凹凸、111v…溝、115…第1の円弧状面、122…切削加工面、125…第2の円弧状面、142…第1の凹凸部、312…第2の凹凸部、722…加工プログラム、722a…生爪成形プログラム、722b…ワーク加工プログラム、742…タッチパネル付きディスプレイ、911、911a、911b…酸化表面、AT…第2軸、AW…ワークの中心軸、AX…第1軸、BL…原材ブロック、BL1…原材ブロックの切削面、BT…ボルト、LB…レーザ光、N…金属材料、P…金属粉体、T…工具、T1…切削工具、T2…研削工具、T3…スカイビングカッター、T4…バリ取り工具、T5…歯切り工具、T6…ミル工具、V…溝
【要約】
チャック生爪は、チャック本体の中心軸から離れる第1方向、および、当該中心軸に近づく第2方向に移動可能なようにチャック本体によって支持される爪である。チャック生爪は、ワークの第1面を保持可能な第1保持面と、ワークの切削加工面を保持可能な第2保持面と、を具備する。第1保持面の硬度は、第2保持面の硬度よりも高い。