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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】ろ板式ろ過機
(51)【国際特許分類】
   B01D 25/12 20060101AFI20240304BHJP
【FI】
B01D25/12 K
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023572038
(86)(22)【出願日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2023027769
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2022136981
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年8月31日 三菱化工機株式会社が、Cライン用シュナイダフィルタ(SF)更新工事KOMにて、顧客であるサンケミカル株式会社に対し、発明者 杉内卓矢がろ板式ろ過機について公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉内 卓矢
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-224418(JP,A)
【文献】特表2015-516880(JP,A)
【文献】特開2012-024712(JP,A)
【文献】特許第2696666(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05;35/10-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在に設けられた複数のろ板を、ろ材を挟んで相互に押圧密着させてろ室を形成し、前記ろ室内部でろ過を行うろ板式のろ過機であって、
前記ろ材を挟んで配置される複数のろ板と、
前記ろ板間に形成されるろ室と、
被ろ過原液を前記ろ室に導入する原液導入路と、
前記ろ材にシール流体を供給して前記ろ材にシール圧力を加えることで、前記被ろ過原液及びろ液の前記ろ室内からろ室外への漏出を抑制する加圧シール手段と、
ろ室内圧力の変動に応じて前記シール圧力を自動で制御する制御手段と、を備える、ろ板式ろ過機。
【請求項2】
開閉自在に設けられた複数のろ板を、ろ材を挟んで相互に押圧密着させてろ室を形成し、前記ろ室内部でろ過を行うろ板式のろ過機であって、
前記ろ材を挟んで配置される複数のろ板と、
前記ろ板間に形成されるろ室と、
被ろ過原液を前記ろ室に導入する原液導入路と、
前記ろ材にシール圧力を加えることで、前記被ろ過原液及びろ液の前記ろ室内からろ室外への漏出を抑制する加圧シール手段と、
ろ室内圧力の変動に応じて前記シール圧力を自動で制御する制御手段と、を備え、
前記加圧シール手段は、弾性体から形成された加圧シール部本体を有し、
シール流体を供給して前記加圧シール部本体を弾性変形させることで前記ろ材に前記シール圧力を加える、ろ板式ろ過機。
【請求項3】
前記加圧シール手段は、複数の異なる方向から前記ろ材に前記シール流体を供給することで前記ろ材に前記シール圧力を加える、請求項に記載のろ板式ろ過機。
【請求項4】
前記制御手段は、前記被ろ過原液及びろ液の前記ろ室外への漏出を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する、請求項1~3の何れかに記載のろ板式ろ過機。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ろ材に供給される前記シール流体の前記ろ室内への侵入を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する、請求項1又は3に記載のろ板式ろ過機。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ろ室内圧力と前記シール圧力との差圧を所定の差圧値に保つように前記シール圧力を制御する、請求項1~3の何れかに記載のろ板式ろ過機。
【請求項7】
前記加圧シール手段は、前記原液導入路内の第一圧力を感知する第一圧力感知手段を有し、
前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力に基づいて推定されるろ室内圧力に基づいて前記シール圧力を制御する、請求項1に記載のろ板式ろ過機。
【請求項8】
前記加圧シール手段は、前記ろ材にシール流体を供給する流体供給路と、前記流体供給路内の第二圧力を感知する第二圧力感知手段と、を有し、
前記制御手段は、前記第一圧力感知手段が感知する前記原液導入路内の第一圧力に基づいて推定されるろ室内圧力と、前記第二圧力感知手段が感知する前記流体供給路内の第二圧力と、に基づいて前記シール圧力を制御する、請求項に記載のろ板式ろ過機。
【請求項9】
前記ろ室を複数備え、
前記原液導入路は、複数の前記ろ室の各々に前記被ろ過原液を導入する分岐導入路を有し、
前記第一圧力感知手段は、前記分岐導入路の分岐点より上流側の前記原液導入路内の第一圧力を感知し、
前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力に基づいて推定されるろ室内圧力に基づいて前記シール圧力を制御する、請求項に記載のろ板式ろ過機。
【請求項10】
前記加圧シール手段は、前記ろ材にシール流体を供給する流体供給路と、前記流体供給路内の第二圧力を感知する第二圧力感知手段と、を有し、
前記流体供給路は、複数の前記ろ室の各々に配置される複数の前記ろ材にシール流体を供給する分岐供給路を含み、
前記第二圧力感知手段は、前記分岐供給路の分岐点より上流側の前記流体供給路内の第二圧力を感知し、
前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力と前記流体供給路内の第二圧力とに基づいて前記シール圧力を制御する、請求項に記載のろ板式ろ過機。
【請求項11】
前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力と前記流体供給路内の第二圧力との差圧を所定の差圧値に保つように前記シール圧力を制御する、請求項又は10に記載のろ板式ろ過機。
【請求項12】
ろ材を挟んで配置される複数のろ板と、前記ろ板間に形成されるろ室を備えるろ板式ろ過機を用いて行うろ過方法であって、
前記ろ材にシール流体を供給することで前記ろ材にシール圧力を加える加圧シール工程と、被ろ過原液及びろ液の前記ろ室内からろ室外への漏出を抑制するように前記シール圧力を自動で制御する圧力制御工程と、を含む、ろ過方法。
【請求項13】
ろ材を挟んで配置される複数のろ板と、前記ろ板間に形成されるろ室を備えるろ板式ろ過機を用いて行うろ過方法であって、
前記ろ材にシール圧力を加える加圧シール工程と、被ろ過原液及びろ液の前記ろ室内からろ室外への漏出を抑制するように前記シール圧力を自動で制御する圧力制御工程と、を含み、
前記加圧シール工程は、シール流体を供給して弾性体を弾性変形させることで前記ろ材に前記シール圧力を加える、ろ過方法。
【請求項14】
前記加圧シール工程は、複数の異なる方向から前記ろ材に前記シール流体を供給することで前記ろ材に前記シール圧力を加える、請求項12に記載のろ過方法。
【請求項15】
前記圧力制御工程は、前記被ろ過原液及びろ液の前記ろ室外への漏出を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する、請求項12~14の何れかに記載のろ過方法。
【請求項16】
前記圧力制御工程は、前記ろ材に供給される前記シール流体の前記ろ室内への侵入を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する、請求項12又は14に記載のろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ板式ろ過機における、被ろ過原液(以下、「原液」という)及びろ液の漏出防止に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉自在に設けられた複数のろ板を、ろ材を挟んで相互に押圧密着させてろ室を形成し、ろ室内部でろ過を行うろ板式のろ過機が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記したような構成を含む多段水平ろ板式ろ過機等は、ろ過処理を自動的に繰り返すことができ、シュナイダー方式とも呼ばれている。
【0004】
また、上部ろ枠下面を下方のろ板の枠体上面にろ布を介して密着させて形成したろ過室にて、濃縮物を圧搾空気の圧力で圧搾ろ過する加圧ろ過装置の発明が存在する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-24712号公報
【文献】特許第2696666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したようなろ板式ろ過機は、ろ材を挟んで複数のろ板を相互に押圧密着させることでろ室を形成するため、構造上、ろ材とろ板の接触面においてろ室内からろ室外へと通じる隙間が生じうる。
【0007】
そうすると、ろ室に供給される原液は、その供給圧力により、上述した隙間を通じてろ室外へと漏出してしまうことがある。
【0008】
また、ろ材を通過するろ液は、ろ材で発生する毛細管現象により、ろ材内部を通じてろ室内からろ室外へと漏出してしまうことがある。
【0009】
上記したような事態を防ぐために、例えば、特許文献2では、ろ板及びろ枠のろ布を挟んで接触する対向部には一対のパッキングを固定し、シールする態様が示されている。
【0010】
しかしながら、実際にろ板式のろ過を行う場合、ろ室内の圧力が常時変動するため、パッキング等の通常のシール方法では、ろ室からの原液及びろ液の漏出を十分に抑制することが困難であった。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、ろ室からの原液及びろ液の漏出をより効果的に抑制することが可能な、利便性の高いろ板式ろ過機を提供すること、を解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明は、開閉自在に設けられた複数のろ板を、ろ材を挟んで相互に押圧密着させてろ室を形成し、前記ろ室内部でろ過を行うろ板式のろ過機であって、前記ろ材を挟んで配置される複数のろ板と、前記ろ板間に形成されるろ室と、被ろ過固体分を含む原液を前記ろ室に導入する原液導入路と、前記ろ材にシール圧力を加えることで前記ろ室内の前記原液及びろ液がろ室外へ漏れ出るのを抑制する加圧シール手段と、ろ室内圧力の変動に応じて前記シール圧力を自動で制御する制御手段と、を備える。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール手段は、前記ろ材にシール流体を供給することで前記ろ材にシール圧力を加える。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール手段は、複数の異なる方向から前記ろ材に前記シール流体を供給することで前記ろ材に前記シール圧力を加える。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール手段は、弾性体から形成された加圧シール部本体を有し、シール流体を供給して前記加圧シール部本体を変形させることで前記ろ材に前記シール圧力を加える。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記制御手段は、前記被ろ過原液及びろ液の前記ろ室外への漏出を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記制御手段は、前記ろ材に供給される前記シール流体の前記ろ室内への侵入を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記制御手段は、前記ろ室内圧力と前記シール圧力との差圧を所定の差圧値に保つように前記シール圧力を制御する。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール手段は、前記原液導入路内の第一圧力を感知する第一圧力感知手段を有し、前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力に基づいて推定されるろ室内圧力に基づいて前記シール圧力を制御する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール手段は、前記ろ材にシール流体を供給する流体供給路と、前記流体供給路内の第二圧力を感知する第二圧力感知手段と、を有し、前記制御手段は、前記第一圧力感知手段が感知する前記原液導入路内の第一圧力に基づいて推定されるろ室内圧力と、前記第二圧力感知手段が感知する前記流体供給路内の第二圧力と、に基づいて前記シール圧力を制御する。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記ろ室を複数備え、前記原液導入路は、複数の前記ろ室の各々に前記原液を導入する分岐導入路を有し、前記第一圧力感知手段は、前記分岐導入路の分岐点より上流側の原液導入路内の第一圧力を感知し、前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力に基づいて推定されるろ室内圧力に基づいて前記シール圧力を制御する。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール手段は、前記ろ材にシール流体を供給する流体供給路と、前記流体供給路内の第二圧力を感知する第二圧力感知手段と、を有し、前記流体供給路は、複数の前記ろ室の各々に配置される複数の前記ろ材にシール流体を供給する分岐供給路を含み、前記第二圧力感知手段は、前記分岐供給路の分岐点より上流側の流体供給路内圧力を感知し、前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力と前記流体供給路内の第二圧力とに基づいて前記シール圧力を制御する。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記制御手段は、前記原液導入路内の第一圧力と前記流体供給路内の第二圧力との差圧を所定の差圧値に保つように前記シール圧力を制御する。
【0024】
また、本発明は、ろ材を挟んで配置される複数のろ板と、前記ろ板間に形成されるろ室を備えるろ板式ろ過機を用いて行うろ過方法であって、
前記ろ材にシール圧力を加える加圧シール工程と、前記ろ室に導入された被ろ過固体分を含む原液及びろ液の前記ろ室外への漏出を抑制するように前記シール圧力を自動で制御する圧力制御工程と、を含む。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール工程は、前記ろ材にシール流体を供給することで前記ろ材に前記シール圧力を加える。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール工程は、複数の異なる方向から前記ろ材に前記シール流体を供給することで前記ろ材に前記シール圧力を加える。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記加圧シール工程は、シール流体を供給して弾性体を変形させることで前記ろ材に前記シール圧力を加える。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記圧力制御工程は、前記原液及びろ液の前記ろ室外への漏出を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する。
【0029】
本発明の好ましい形態では、前記圧力制御工程は、前記ろ材に供給されるシール流体の前記ろ室内への侵入を抑制するように、前記シール圧力を自動で制御する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ろ室からの原液及びろ液の漏出をより効果的に抑制することが可能な、利便性の高いろ板式ろ過機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係るろ板式ろ過機を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るろ板式ろ過機内部の流体の流れ及び圧力を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るろ板式ろ過機のA-A’線矢視断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機のA-A’線矢視断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機の断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機の断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機内部の流体の流れ及び圧力を示す図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機の断面図である。
図9】水平ろ板式ろ過機の全体構成の一例を示す斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機のA-A’線矢視断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機のA-A’線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1図9を用いて本発明の実施形態に係るろ板式ろ過機について説明する。
【0033】
図9は水平ろ板式ろ過機の全体構成の一例を示す斜視図である。
【0034】
図9に例示する水平ろ板式ろ過機9は、上部ろ板92aと、複数の中間ろ板92b、92b、92bと、下部ろ板92cを有しており、これらの上部ろ板92aと、複数の中間ろ板92b、92b、92bと、下部ろ板92cが、上下動のガイドとなるガイドロッド(図示せず)に挿通されて上下方向に積層されている。
【0035】
また、上部ろ板92aと中間ろ板92b、中間ろ板92bと中間ろ板92b、中間ろ板92bと下部ろ板92cの間には図示しない空洞のろ過室(ろ室)が形成される。
【0036】
上部ろ板92aは、ろ過対象の被ろ過固体分を含む原液を受け入れる機能があり、下部ろ板92cは、ろ過後の液(ろ液)を回収する機能があり、中間ろ板92b、92b、92bは、それぞれ両方の機能を有している。これらをまとめてろ板スタック92と称する。
【0037】
さらに、このろ板スタック92の隣接した空間には、ろ材ラックfrが配置され、回転自在に複数のろ材ロール91A、91B、91C、91Dが配設されている。
【0038】
このろ材ロール91A、91B、91C、91Dにはろ材91a、91b、91c、91dがロール状に巻き取られており、ろ材91a、91b、91c、91dを各ろ板(中間ろ板92b、92b、92b、下部ろ板92c)の上面に、一方から他方へ供給する供給装置になっている。
【0039】
また、このろ板スタック92の隣接した空間には、ろ材エキストラクタfeが配置されている。
ろ材の交換時には、ろ材91a、91b、91c、91dが排出ロール装置erにより各ろ板(中間ろ板92b、92b、92b、下部ろ板92c)の上面から引き出され、機外に排出される。
【0040】
以下、水平ろ板式ろ過機9の動作について説明する。
まず、積層した各ろ板(上部ろ板92a、中間ろ板92b、92b、92b、下部ろ板92c)を上方の加圧ジャッキpjにより押圧することで各ろ室を密閉状態とする。密閉状態となった各ろ室のろ材91a、91b、91c、91d上に原液導入路93を通じて原液が供給され、ろ過処理が開始される。
【0041】
ろ過処理が進み、次第にろ材91a、91b、91c、91dのろ過抵抗が増加してろ過困難になると、原液の供給は停止され、加圧ジャッキpjによる加圧状態は解除される。
【0042】
そして、上部ろ板92aと、複数の中間ろ板92b、92b、92bと、が上方に引き上げられ、上部ろ板92aと中間ろ板92b、中間ろ板92bと中間ろ板92b、中間ろ板92bと下部ろ板92cの間に隙間を作り、ろ材91a、91b、91c、91dの締付状態が開放される。
【0043】
このとき、ろ材エキストラクタfeが、締付状態から開放されたろ材91a、91b、91c、91dを移動させることにより、上部ろ板92aと中間ろ板92b、中間ろ板92bと中間ろ板92b、中間ろ板92bと下部ろ板92cの間に配置されるろ材91a、91b、91c、91dを、使用済部分から未使用部分に交換する。
【0044】
なお、水平ろ板式ろ過機9は設置面積を小さくする目的で、一段当たりのろ過面積を適当なサイズに設け、多段に構成して全体のろ過面積を大きくして所要のろ過能力を実現しているが、基本的構成及び作用効果は単段でも同様である。
【0045】
<実施形態1>
図1は、本発明の一実施形態に係るろ板式ろ過機X1の構造を示す断面図である。図1に示すように、ろ板式ろ過機X1は、ろ材1と、複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)と、ろ室Cと、原液導入路3と、加圧シール手段4と、制御手段5と、を備える。なお、上部ろ板2aと下部ろ板2bでろ材1を挟んで組付けてろ室Cが形成される。
【0046】
ろ材1は、ろ室C内外を連通する形で複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)に挟まれる。
【0047】
上部ろ板2a、下部ろ板2bは、ろ材1を上下から挟んでろ室Cを形成する。
【0048】
原液導入路3は、上部ろ板2aからろ室C内に通じる。なお、原液導入路3の配管と上部ろ板2aとは、図1中の吹き出しに示す拡大図のように接続されている。これは、その他の配管とろ板との接続についても同様である。
【0049】
加圧シール手段4は、第一圧力感知手段41と、第二圧力感知手段42と、流体供給路43と、圧力調節手段44と、を有している。
【0050】
第一圧力感知手段41は、圧力センサ等が好適に用いられ、後述するように原液導入路3内の第一圧力P1を感知するように、原液導入路3に設けられている。
【0051】
第二圧力感知手段42は、圧力センサ等が好適に用いられ、後述するように流体供給路43の供給路本体431(後述)内の第二圧力P2を感知するように、流体供給路43に設けられている。
【0052】
流体供給路43は、供給路本体431と、シール流路(押圧路)432と、を含む。
シール流路(押圧路)432は、ろ室Cの周囲を囲むように形成されている(詳細は後述)。
【0053】
圧力調節手段44は、流体供給路43内に流入する流体の流量を調節する調節弁等が好適に用いられ、後述するように流体供給路43内の第二圧力P2を調節可能である。
【0054】
制御手段5は、第一圧力感知手段41、第二圧力感知手段42、及び圧力調節手段44と、少なくとも有線又は無線の信号伝達手段で接続されている。制御手段5は、第一圧力感知手段41及び第二圧力感知手段42から圧力感知信号を受け取り、この信号に基づいて、圧力調節手段44に信号を送り、圧力調節手段44を自動制御する。
【0055】
図3は、図1が示すろ板式ろ過機X1のA-A’線矢視断面図である。シール流路(押圧路)432は、図1に示すように、複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)がろ材1を挟んだ際に、ろ材1に接するように上部ろ板2aの下面に形成され、且つ図3に示すように、ろ室Cの周囲を囲むように形成されている。
【0056】
即ち、供給路本体431を通じて供給されるシール流体が、流体供給路43のシール流路(押圧路)432を通じて、ろ材1におけるろ室Cの外周に位置する部分に行きわたるようになっており、その結果、ろ材1の当該部分にシール圧力がかかる。
【0057】
なお、図3においては、供給路本体431を一つとしているが、本発明はこれに限定されず、図4に示すように、シール流体SFがシール流路(押圧路)432内でより偏りなく行きわたるよう、第一供給路本体431(1)とは異なる方向から追加の第二供給路本体431(2)を設けても良い。即ち、加圧シール手段4は、複数の異なる方向からろ材にシール流体SFを供給することでろ材にシール圧力を偏りなく加えることができる。
【0058】
なお、この追加の供給路本体431は一つまたは複数(二以上)含む態様であってもよい。
例えば、追加の供給路本体431が一つ設けられた図4に示すような態様の他にも、追加の供給路本体431が二つあるいは三つ設けられた図10図11に示すような態様であってもよい。
【0059】
また、この場合、複数の供給路本体431は、シール流路(押圧路)432の外周に沿って等間隔に設けられ、シール流体SFを均等に供給することが好ましい。
【0060】
以降、本明細書中で説明される実施形態1~4においては、特に断りのない限り、上部ろ板2a、中間ろ板2b‐1、2b‐2、2b‐3は、上記と同様の流体供給路43(中間ろ板2b‐1、2b‐2、2b‐3の場合、分岐供給路431a、431b、431c、431d)が設けられていることをここで述べておく。
【0061】
図2は、本発明の一実施形態に係るろ板式ろ過機X1内の流体の流れを示す断面図である。
なお、原液をL1、ろ液をL2、シール流体をSFとして、各流体の流れを、それぞれに対応する矢印にて示している。
【0062】
図2に示すように、原液L1は、原液導入路3を通じてろ室Cに導入され、ろ材1を通過してろ過される。
【0063】
ろ過によって得られるろ液L2は、排出路3bを通じてろ室C外に排出される。
【0064】
シール流体SFは、供給路本体431を通じて、シール流路(押圧路)432に供給される流体である。シール流路(押圧路)432にシール流体SFが供給されることにより、ろ材1のシール箇所が潰れ、ろ材1と上部ろ板2aが接触する面に生じる僅かな隙間(原液L1の漏出経路)と、ろ材1内部(ろ液L2の漏出経路)と、ろ材1と下部ろ板2bが接触する面に生じる僅かな隙間(ろ液L2の漏出経路)とが塞がれるため、原液L1及びろ液L2の漏出が抑制される。
【0065】
なお、シール流体SFとしては、例えば窒素が好適に用いられるが、圧縮空気やその他の不活性ガスが用いられてもよい。また、シール流体SFの供給源は、例えばガスボンベ等のシールガス供給手段が想定される。
【0066】
上記した各流体の流れによって、原液導入路3、供給路本体431、ろ室C、シール流路(押圧路)432の各内部に圧力がかかる。本明細書では、原液導入路3内にかかる圧力を第一圧力P1、供給路本体431内にかかる圧力を第二圧力P2、ろ室C内にかかる圧力をろ室内圧力P3、シール流路(押圧路)432内にかかる圧力をシール圧力P4と定義する。
【0067】
本発明の目的は、ろ室内圧力P3と、シール圧力P4とのバランスをとることでろ室C内からの原液及びろ液の漏出を防止することである。
よって、ろ室内圧力P3とシール圧力P4とが直接計測されることが理想的であるが、ろ室内圧力P3とシール圧力P4は、位置的に計測が困難である。このため、計測が比較的容易な第一圧力P1及び第二圧力P2を計測し、これらに基づいてろ室内圧力P3とシール圧力P4の関係を推定する。
【0068】
具体的に、制御手段5は、第一圧力感知手段41が感知した第一圧力P1に基づいて、ろ室Cのろ室内圧力P3を推定する。
なお、ここでの「推定」は、感知された第一圧力P1をそのままろ室Cのろ室内圧力P3とみなすこと、及び、感知された第一圧力P1に所定の演算処理を施すことでろ室Cのろ室内圧力P3を算定すること、を含む。
【0069】
続いて、制御手段5は、推定されたろ室Cのろ室内圧力P3と、第二圧力感知手段42が感知した流体供給路43内の第二圧力P2を基に、圧力調節手段44を自動で操作する。なお、第二圧力P2は、本実施形態の構造上はシール圧力P4と同じ値とみなすこともできるし、また、第二圧力P2に所定の演算処理を施すことでシール圧力P4を算定することもできる。
【0070】
制御手段5は、第二圧力P2について、第二圧力感知手段42を介して常時監視しており、ろ室内圧力P3と第二圧力P2の差圧が所定の差圧値となるように、圧力調節手段44の操作量を常時調節する。
【0071】
この結果、原液導入路3内の第一圧力P1から推定されるろ室内圧力P3と、流体供給路43内の第二圧力P2から推定されるシール圧力P4と、のバランスが自動的に調節される。この調節により、ろ材1と上部ろ板2aとの接触面に生じる隙間を通じた原液L1の漏出、及び、毛細管現象に起因するろ材1内部を通じたろ液L2の漏出をより効果的に抑制することができる。
【0072】
なお、制御手段5としては、工業機器用の制御盤や、コンピュータ装置等、上記の機能を実現可能なものであれば、その形態は問わない。
【0073】
<実施形態2>
図5は、本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機X2の断面図である。
【0074】
図5に示すように、ろ板式ろ過機X2は、複数のろ材1a、1b、1c、1dと、複数のろ板(上部ろ板2a、中間ろ板2b‐1、2b‐2、2b‐3、下部ろ板2bと、複数のろ室C1、C2、C3、C4と、原液導入路3と、加圧シール手段4と、制御手段5と、を備える。以下、ろ板式ろ過機X1の説明と重複する説明については適宜省略し、ろ板式ろ過機X2の特徴部分に限り説明する。
【0075】
原液導入路3は、上部ろ板2a、中間ろ板2b‐1、2b‐2、2b‐3から各ろ室C1、C2、C3、C4に通じている分岐導入路31a、31b、31c、31dを有し、原液L1を各ろ室C1、C2、C3、C4に導入することができる。
本明細書では、原液L1によって各ろ室C1、C2、C3、C4内にかかる圧力をろ室内圧力P3a、P3b、P3c、P3dとそれぞれ定義する。
【0076】
流体供給路43は、上部ろ板2a、中間ろ板2b‐1、2b‐2、2b‐3から各ろ室C1、C2、C3、C4に通じている分岐供給路431a、431b、431c、431d及びシール流路(押圧路)432a、432b、432c、432dを含む。
本明細書では、シール流体SFによって各シール流路(押圧路)432a、432b、432c、432d内にかかる圧力をシール圧力P4a、P4b、P4c、P4dとそれぞれ定義する。
【0077】
分岐供給路431a、431b、431c、431dを通じてシール流路(押圧路)432a、432b、432c、432dの各々にシール流体SFが供給されることで、シール圧力P4a、P4b、P4c、P4dにより複数のろ材1a、1b、1c、1dのシール箇所が潰れ、原液L1の漏出経路とろ液L2の漏出経路が塞がれるため、原液及びろ液の漏出が抑制される。
【0078】
第一圧力感知手段41は、圧力センサ等が好適に用いられ、分岐導入路31a、31b、31c、31dの分岐点B1より上流側の原液導入路3内の第一圧力P1を感知し、制御手段5へ圧力感知信号を送信可能である。
【0079】
第二圧力感知手段42は、圧力センサ等が好適に用いられ、分岐供給路431a、431b、431c、431dの分岐点B2より上流側の流体供給路43内の第二圧力P2を感知し、制御手段5へ圧力感知信号を送信可能である。
【0080】
制御手段5は、第一圧力感知手段41によって感知された原液導入路3内の第一圧力P1と、第二圧力感知手段42によって感知された流体供給路43内の第二圧力P2と、に基づいてシール圧力P4a、P4b、P4c、P4dを制御する。
【0081】
ここで、本実施形態の構造上、第一圧力感知手段41によって感知された原液導入路3内の第一圧力P1は、複数のろ室C1、C2、C3、C4の各々のろ室内圧力P3a、P3b、P3c、P3dと推定することができ、第二圧力感知手段42によって感知された流体供給路43内の第二圧力P2は、複数の分岐供給路431a、431b、431c、431dの各々の内部圧力(即ち、シール圧力P4a、P4b、P4c、P4d)と推定することができる。
【0082】
よって、第一圧力感知手段41によって感知された原液導入路3内の第一圧力P1と、第二圧力感知手段42によって感知された流体供給路43内の第二圧力P2と、に基づいてシール圧力P4a、P4b、P4c、P4dを制御することは、ろ室内圧力P3a、P3b、P3c、P3dと、シール圧力P4a、P4b、P4c、P4dに基づいてシール圧力P4a、P4b、P4c、P4dを制御することであり、これにより、ろ過機全体として、各ろ室で発生しうる毛細管現象に起因するろ材1を通じたろ液の漏出及びシール流体の過供給を最小化することができる。
【0083】
また、第一圧力感知手段41によって感知された原液導入路3内の第一圧力P1と、第二圧力感知手段42によって感知された流体供給路43内の第二圧力P2と、の差圧を所定の差圧値に保つことにより、各ろ室で発生しうる毛細管現象に起因するろ材1を通じたろ液の漏出及びシール流体の過供給を最小化する制御をより頑健に行うことができる。
【0084】
したがって、第一圧力感知手段41は、分岐点B1より上流側の原液導入路3内の第一圧力P1を感知し、第二圧力感知手段42は、分岐点B2より上流側の流体供給路43内の第二圧力P2を感知するため、複数のろ室C1、C2、C3、C4の各々、及び複数の分岐供給路431a、431b、431c、431dの各々にそれぞれセンサを設ける必要が無い上、構造的に各部での原液及びろ液の漏出/シール流体の過供給を最小化することができる。
【0085】
<実施形態3>
図6は、本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機X3の断面図である。
【0086】
図6に示すように、ろ板式ろ過機X3は、ろ材1と、複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)と、ろ室Cと、原液導入路3と、加圧シール手段4と、制御手段5と、を備える。以下、ろ板式ろ過機X1の説明と重複する説明については適宜省略し、ろ板式ろ過機X3の特徴部分に限り説明する。
【0087】
加圧シール手段4は、弾性体から形成された加圧シール部本体45を有しており、加圧シール部本体45の端部は、上部ろ板2aのシール流路(押圧路)432内に固定されている。または、加圧シール部本体45として、弾性材料をチューブ状に形成したものを用いてもよい。
【0088】
即ち、図7に示すように、流体供給路43から供給されるシール流体SFは、弾性変形する加圧シール部本体45を、図中下方向に撓ませ、これにより加圧シール部本体45が、ろ材1と接する部分にシール圧力P4を加えてろ材1が押しつぶされてシールすることができる。
【0089】
即ち、加圧シール手段4は、加圧シール部本体45にシール流体SFを供給して加圧シール部本体45を変形させることで、ろ材1にシール圧力を加えることができる。
【0090】
なお、本実施形態の場合、シール流体SFと原液L1及びろ液L2とが接触しないため、シール流体SFとして窒素や圧縮空気、不活性ガス等の気体以外にも、加圧油等の液体を用いることが可能である。
【0091】
ここで、制御手段5は、第一圧力感知手段41によって感知された原液導入路3内の第一圧力P1と、第二圧力感知手段42によって感知された流体供給路43内の第二圧力P2とに基づいて、シール圧力P4を制御する。
具体的に、制御手段5は、第一圧力感知手段41によって感知された原液導入路3内の第一圧力P1と、第二圧力感知手段42によって感知された流体供給路43内の第二圧力P2と、の差圧を所定の差圧値に保つようにしてシール圧力P4を制御する。
【0092】
このようにすることで、原液導入路3内の第一圧力P1から推定されるろ室内圧力P3と、流体供給路43内の第二圧力P2から推定されるシール圧力P4と、のバランスが自動的に調節されて、ろ室Cからの原液及びろ液の漏出をより効果的且つ精度よく抑制することができる。
【0093】
なお、上記したような実施形態3の構成は、実施形態2と組み合わせ、ろ室Cを多段に設けることも可能である。
【0094】
<実施形態4>
図8(ア)、図8(イ)は、本発明の他の実施形態に係るろ板式ろ過機X4の断面図である。
【0095】
図8(ア)、図8(イ)に示すように、ろ板式ろ過機X4は、ろ材1と、複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)と、ろ室Cと、原液導入路3と、加圧シール手段4と、制御手段5と、を備える。以下、ろ板式ろ過機X1の説明と重複する説明については適宜省略し、ろ板式ろ過機X4の特徴部分に限り説明する。
【0096】
制御手段5は、原液導入路3と通じた原液室51と、流体供給路43と通じた流体室52と、圧力伝達手段53と、を有し、原液室51と流体室52は、弾性体から形成された圧力伝達手段53によって間を仕切られつつ、連結されている。
即ち、原液室51と流体室52の間で、原液L1と、シール流体SFとが行き来する、又は、混合することはないが、原液導入路3内の第一圧力P1、流体供給路43内の第二圧力P2が互いに伝達されるようになっている。
【0097】
図8(ア)に示すように、原液導入路3内の第一圧力P1、ひいてはろ室内圧力P3が流体供給路43内の第二圧力P2、ひいてはシール圧力P4よりも大きいときには、圧力伝達手段53が流体室52側に変形する。
【0098】
そうすると、流体室52及び流体供給路43を含むシール流体SF側の空間体積が縮小するため、流体流量が一定であれば、これに応じて流体供給路43内の第二圧力P2、ひいてはシール圧力P4が増加する。
【0099】
図8(イ)に示すように、原液導入路3内の第一圧力P1、ひいてはろ室内圧力P3が流体供給路43内の第二圧力P2、ひいてはシール圧力P4よりも小さいときには、圧力伝達手段53が原液室51側に変形する。
【0100】
そうすると、流体室52及び流体供給路43を含むシール流体側の空間体積が膨張するため、流体流量が一定であれば、これに応じて流体供給路43内の第二圧力P2、ひいてはシール圧力P4が減少する。
【0101】
したがって、上記のような構成の制御手段5であっても、原液導入路3内の第一圧力P1、ひいてはろ室内圧力P3の変動に基づいて、流体供給路43内の第二圧力P2、ひいてはシール圧力P4を自動で制御することが可能である。
【0102】
なお、分岐点B3よりも下流側の、上部ろ板2aに通じた原液導入路3において、減圧弁RVを設ける、又は、分岐点B4よりも下流側の、上部ろ板2aに通じた流体供給路43において、加圧ポンプBPを設けるなどにより、ろ室内圧力P3とシール圧力P4の間に一定の差圧を生じさせることが可能である。
【0103】
また、上記したような実施形態4の構成は、実施形態2と組み合わせ、ろ室Cを多段に設けることも可能である。その場合、分岐点B3は分岐点B1よりも上流側に、分岐点B4は分岐点B2よりも上流側に、それぞれ設けられることが好ましい。
【0104】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、制御手段5が、ろ室内圧力P3(又はP3a、P3b、P3c、P3d)の変動に応じて、ろ室C(又はC1、C2、C3、C4)内の原液L1及びろ液L2がろ室C(又はC1、C2、C3、C4)外へ漏れ出るのを抑制するようにシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を自動で制御するため、原液L1及びろ液L2の漏出をより効果的に抑制することが可能である。
【0105】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、加圧シール手段4が、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール流体SFを供給することでろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を加えるため、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)と各ろ板との接触部における原液L1又はろ液L2の漏出経路、及び、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)内部におけるろ液L2の漏出経路がシール流体SFによってシールされ、原液L1及びろ液L2の漏出をより効果的に抑制することが可能である。
【0106】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、加圧シール手段4は、複数の異なる方向からろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール流体SFを供給することでろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を加えるため、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を偏りなく加え、原液L1及びろ液L2の漏出をより効果的に抑制することが可能である。
【0107】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、制御手段5が、原液L1及びろ液L2のろ室C(又はC1、C2、C3、C4)外への漏出を抑制するようにシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を自動で制御するため、原液L1及びろ液L2の漏出のみならず、シール流体SFの過供給を抑制することができる。
【0108】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、制御手段が、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)に供給されるシール流体SFのろ室C(又はC1、C2、C3、C4)内への侵入を抑制するように、シール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を自動で制御するため、原液L1及びろ液L2の漏出のみならず、ろ室C(又はC1、C2、C3、C4)へのシール流体SFの侵入に起因するろ過精度の低下、ろ過機品質の低下を防ぐことができる。
【0109】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、制御手段5が、ろ室内圧力P3(又はP3a、P3b、P3c、P3d)とシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)との差圧を所定の差圧値に保つようにシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を制御するため、大きな圧力変動に対しても頑健な制御を行うことができる。
【0110】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、制御手段が、原液導入路3内の第一圧力P1に基づいて推定されるろ室内圧力P3(又はP3a、P3b、P3c、P3d)に基づいてシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を制御するため、ろ室C(又はC1、C2、C3、C4)内に感知手段を設ける必要が無く、各ろ板の構成を簡易なものにすることができる。
【0111】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4によれば、制御手段が、第一圧力感知手段41が感知する原液導入路3内の第一圧力P1に基づいて推定されるろ室内圧力P3(又はP3a、P3b、P3c、P3d)と、第二圧力感知手段42が感知する流体供給路43内の第二圧力P2と、に基づいてシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を制御するため、第一圧力P1と第二圧力P2と、を利用して、より精度の高いシール圧力制御を行い、漏出抑制効果を更に高めることができる。
【0112】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4を用いた方法によれば、圧力制御工程が、ろ室内圧力P3(又はP3a、P3b、P3c、P3d)の変動に応じて、被ろ過原液及びろ液のろ室C(又はC1、C2、C3、C4)外への漏出を抑制するようにシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を自動で制御するため、原液L1及びろ液L2の漏出をより効果的に抑制することが可能となる。
【0113】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4を用いた方法によれば、加圧シール工程が、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール流体SFを供給することでろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を加えるため、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)と各ろ板との接触部における原液L1又はろ液L2の漏出経路、及び、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)内部におけるろ液L2の漏出経路がシール流体SFによってシールされ、原液L1及びろ液L2の漏出をより効果的に抑制することが可能である。
【0114】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4を用いた方法によれば、加圧シール工程は、複数の異なる方向からろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール流体SFを供給することでろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を加えるため、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)にシール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を偏りなく加え、原液L1及びろ液L2の漏出をより効果的に抑制することが可能である。
【0115】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4を用いた方法によれば、圧力制御工程が、被ろ過原液L1及びろ液L2のろ室C(又はC1、C2、C3、C4)外への漏出を抑制するように、シール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を自動で制御するため、原液L1及びろ液L2の漏出のみならず、シール流体SFの過供給を抑制することができる。
【0116】
本発明の実施形態1~4に係るろ板式ろ過機X1~X4を用いた方法によれば、圧力制御工程が、ろ材1(又は1a、1b、1c、1d)に供給されるシール流体のろ室C(又はC1、C2、C3、C4)内への侵入を抑制するように、シール圧力P4(又はP4a、P4b、P4c、P4d)を自動で制御するため、原液L1及びろ液L2の漏出のみならず、ろ室C(又はC1、C2、C3、C4)へのシール流体SFの侵入に起因するろ過精度の低下、ろ過品質の低下を防ぐことができる。
【0117】
本発明の実施形態2に係るろ板式ろ過機X2によれば、第一圧力感知手段41が、分岐導入路31a、31b、31c、31dの分岐点B1より上流側の原液導入路3内の第一圧力P1を感知するため、ろ室を複数にすることで装置の処理能力を向上しつつも、必要な感知手段の数は少なく済むため、構成が簡単になる。
【0118】
本発明の実施形態2に係るろ板式ろ過機X2によれば、第二圧力感知手段42が、分岐供給路431a、431b、431c、431dの分岐点B2より上流側の流体供給路内の第二圧力P2を感知するため、ろ室を複数にすることで装置の処理能力を向上しつつも、必要な感知手段の数は少なく済むため、構成が簡単になる。
また、31a、31b、31c、31dの分岐点B1より上流側の原液導入路3内の第一圧力P1と、431a、431b、431c、431dの分岐点B2より上流側の流体供給路43内の第二圧力P2とに基づいてシール圧力P4a、P4b、P4c、P4dを制御することで、ろ過機全体として、各ろ室で発生しうる原液L1及びろ液L2の漏出並びにシール流体SFの過供給を最小化することができる。
【0119】
本発明の実施形態2に係るろ板式ろ過機X2によれば、制御手段が、原液導入路3内の第一圧力P1と流体供給路43内の第二圧力P2との差圧を所定の差圧値に保つようにシール圧力P4a、P4b、P4c、P4dを制御するため、各ろ室で発生しうる原液L1及びろ液L2の漏出並びにシール流体SFの過供給を最小化するようなシール圧力制御を頑健に行うことができる。
【0120】
本発明の実施形態3に係るろ板式ろ過機X3によれば、加圧シール手段4は、弾性体から形成された加圧シール部本体45を有し、シール流体SFを供給して加圧シール部本体45を変形させることでろ材1にシール圧力P4を加えるため、シール流体SFと原液L1及びろ液L2とが接触せず、シール流体SFとして窒素や圧縮空気、不活性ガス等の気体以外にも、加圧油等の液体を用いることが可能である。
【0121】
本発明の実施形態3に係るろ板式ろ過機X3を用いた方法によれば、シール流体SFを供給して弾性体を変形させることでろ材1にシール圧力P4を加えるため、シール流体SFと原液L1及びろ液L2とが接触せず、シール流体SFとして窒素や圧縮空気、不活性ガス等の気体以外にも、加圧油等の液体を用いることが可能である。
【0122】
以上、本発明に係る実施形態1~4について説明したが、上述の実施形態において示した各構成や機能は、あくまでも一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0123】
1、1a、1b、1c、1d ろ材
2a 上部ろ板
2b‐1、2b‐2、2b‐3 中間ろ板
2b 下部ろ板
3 原液導入路
31a、31b、31c、31d 分岐導入路
4 加圧シール手段
41 第一圧力感知手段
42 第二圧力感知手段
43 流体供給路
431a、431b、431c、431d 分岐供給路
44 圧力調節手段
5 制御手段
9 水平ろ板式ろ過機
C、C1、C2、C3、C4 ろ室
【要約】
ろ材を通じた被ろ過原液及びろ液の漏出をより効果的に抑制することが可能な、利便性の高いろ板式ろ過機を提供する。
ろ材1を挟んで配置される複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)と、複数のろ板(上部ろ板2a、下部ろ板2b)間に形成されるろ室Cと、被ろ過原液L1をろ室Cに導入する原液導入路3と、ろ材1にシール圧力を加えることでろ室C内の被ろ過原液及びろ液がろ室C外へ漏れ出るのを抑制する加圧シール手段4と、ろ室C内圧力の変動に応じてシール圧力を自動で制御する制御手段5と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11