(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】バルク音響共振器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20240305BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H3/02 B
(21)【出願番号】P 2019064788
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0056702
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0100330
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン スク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ムン チュル
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム、チャン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ギル、ジェ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ヒュン
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-049302(JP,A)
【文献】特開2012-124648(JP,A)
【文献】特開2001-251159(JP,A)
【文献】特開2018-037906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0317660(US,A1)
【文献】特開2010-045437(JP,A)
【文献】特開2005-033775(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される下部電極と、
前記下部電極の少なくとも一部を覆うように配置される圧電層と、
前記圧電層の少なくとも一部を覆うように配置される上部電極と、
前記上部電極を覆うように配置されるパッシベーション層と、を含み、
前記パッシベーション層には、前記下部電極、前記圧電層、及び前記上部電極がすべて重なるように配置される活性領域の外側に配置され、前記活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部
と、前記トリミング未進行部より薄いトリミング進行部と、活性領域の外側に配置され、前記トリミング未進行部と前記トリミング進行部とを連結する連結領域と、が備えられ、
前記連結領域の幅
は、0より大きく、1μm以下であ
り、
前記連結領域の厚さは、前記トリミング未進行部の厚さと前記トリミング進行部の厚さとの間である、バルク音響共振器。
【請求項2】
前記パッシベーション層は、前記活性領域上に配置される部分の厚さが均一に形成される、請求項1に記載のバルク音響共振器。
【請求項3】
前記連結領域は
、前記トリミング進行部から前記トリミング未進行部へと向かうにつれて厚さが増大する、請求項1または2に記載のバルク音響共振器。
【請求項4】
前記トリミング未進行部が、金属パッドと前記活性領域との間に形成される、請求項1から3の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項5】
前記パッシベーション層は、窒化シリコン(Si
3N
4)、酸化シリコン(SiO
2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)である、請求項1から4の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項6】
前記トリミング未進行部は前記活性領域を囲むように配置される、請求項1から5の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項7】
前記下部電極と前記圧電層の間に配置される挿入層をさらに含む、請求項1から6の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項8】
キャビティを囲むように配置されるエッチング防止部をさらに含む、請求項1から7の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項9】
前記エッチング防止部の外側に配置される犠牲層をさらに含む、請求項8に記載のバルク音響共振器。
【請求項10】
前記圧電層と前記上部電極の間には間隙が備えられ、
前記活性領域は前記間隙の先端まで拡張している、請求項1から9の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項11】
前記圧電層には、前記活性領域の外側に配置されるエッチング溝が形成される、請求項10に記載のバルク音響共振器。
【請求項12】
前記基板には、キャビティを形成するためのキャビティ形成溝が備えられる、請求項10または11に記載のバルク音響共振器。
【請求項13】
前記下部電極、前記圧電層、及び前記上部電極は曲面を形成する、請求項1から12の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項14】
前記下部電極は前記基板とともにキャビティを形成する、請求項13に記載のバルク音響共振器。
【請求項15】
前記基板には、溝内に埋め込まれて配置されるか、又は基板上に積層される反射層が備えられる、請求項1から7の何れか1つに記載のバルク音響共振器。
【請求項16】
前記反射層は、第1反射部材、及び前記第1反射部材上に配置される第2反射部材を備え、
前記第1反射部材及び第2反射部材は、一対からなるか、又は一対となって交互に配置される複数の一対からなる、請求項15に記載のバルク音響共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルク音響共振器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、バルク弾性波フィルタ(BAW filter)の製造時に、周波数調整のためのトリミング(trimming)工程は必要不可欠である。これは、トリミング(trimming)工程によりフィルタ(filter)を構成する特定の膜の厚さを調整することで周波数調整を行うことができるためである。かかる膜には、上部電極、下部電極、及び圧電体だけでなく、パッシベーション層(passivation layer)も含まれる。
【0003】
特に、パッシベーション層(passivation layer)の厚さを調整するためのトリミング(trimming)工程は、装置(device)の製造時にフィルタ(filter)の最終周波数特性を決定することができるためその重要度が高い。
【0004】
かかるパッシベーション層(passivation layer)に対してトリミング(trimming)工程を行うために、トリミング(trimming)が必要な領域と不要な領域を区別する必要がある。
【0005】
つまり、この際のトリミング(trimming)工程の精度、再現性、さらには、フィルタ(filter)の性能にまで影響するため、さらに向上したトリミング技術の開発が必要となる。
【0006】
従来技術では、トリミング用のマスクとしてステンシルマスク(stencil mask)を用いた。ステンシルマスク(stencil mask)技術の場合には、製造コストが高いという欠点に加えて、様々な工程上のリスク(risk)がある。
【0007】
つまり、装置(device)とステンシルマスクの間の整列精度及び再現性の低下や、装置(device)とステンシルマスクの間の間隙が原因で生じるイオンビーム影効果(ion beam shadow effect)、さらに、トリミングが必要な層以外の層の露出に起因するイオンビーム経路の影響などによって工程実現の精度、再現性、及び設計自由度の面で不利となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パッシベーション層の厚さ勾配が広い領域に渡って形成されることによって生じる異常なノッチの発生を抑制することができるバルク音響共振器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によるバルク音響共振器は、基板と、上記基板とともにキャビティを形成するメンブレン層と、上記メンブレン層上に配置される下部電極と、上記下部電極の少なくとも一部を覆うように配置される圧電層と、上記圧電層の少なくとも一部を覆うように配置される上部電極と、上記上部電極を覆うように配置されるパッシベーション層と、を含み、上記パッシベーション層には、上記下部電極、上記圧電層、及び上記上部電極がすべて重なるように配置される活性領域の外側に配置され、上記活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部が備えられることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、パッシベーション層の厚さ勾配が広い領域に渡って形成されることによって生じる異常なノッチの発生を抑制することができるという効果を奏するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図である。
【
図3】従来技術によるバルク音響共振器で製造されるフィルタの特性を示すグラフである。
【
図4】本発明によるバルク音響共振器で製造されるフィルタの特性を示すグラフである。
【
図5】従来技術及び本発明によるバルク音響共振器の特性を示すグラフである。
【
図6】本発明によるバルク音響共振器の製造方法におけるトリミング工程を説明するための説明図である。
【
図7】従来技術によるバルク音響共振器の製造方法におけるトリミング工程を説明するための説明図である。
【
図8】トリミング工程後の
図7のY部を示す拡大図である。
【
図9】本発明の第2実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図である。
【
図12】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図10に対応する領域を示す拡大図である。
【
図13】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図11に対応する領域を示す拡大図である。
【
図14】本発明の第3実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図である。
【
図17】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図15に対応する領域を示す拡大図である。
【
図18】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図16に対応する領域を示す拡大図である。
【
図19】本発明の第4実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図である。
【
図22】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図20に対応する領域を示す拡大図である。
【
図23】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図21に対応する領域を示す拡大図である。
【
図24】本発明の第5実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図である。
【
図27】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図25に対応する領域を示す拡大図である。
【
図28】従来技術によるトリミング工程によってトリミングが行われる場合における
図26に対応する領域を示す拡大図である。
【
図29】PRトリミング用のマスクの積層時に、パッシベーション層と金属パッドの境界線からPRトリミング用のマスクの先端までの離隔距離を説明するための説明図である。
【
図30】PRトリミング用のマスクの積層時に、パッシベーション層と金属パッドの境界線からPRトリミング用のマスクの先端までの離隔距離によるトリミング後の共振器内のパッシベーション層の厚さ偏差を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図であり、
図2は
図1のX部を示す拡大図である。
【0015】
図1及び
図2を参照すると、本発明の第1実施形態によるバルク音響共振器100は、一例として、基板110、犠牲層120、エッチング防止部130、メンブレン層140、下部電極150、圧電層160、上部電極170、挿入層180、パッシベーション層190、及び金属パッド195を含んで構成されることができる。
【0016】
基板110はシリコン基板であることができる。例えば、基板110としては、シリコンウエハが用いられるか、又はSOI(Silicon On Insulator)型の基板が用いられることができる。
【0017】
基板110の上面には絶縁層112が形成されることができ、かかる絶縁層112は、上部に配置される構成と基板110を電気的に絶縁させることができる。また、絶縁層112は、製造過程においてキャビティCを形成する場合、エッチングガスによって基板110がエッチングされることを防止する役割を果たす。
【0018】
この場合、絶縁層112は、二酸化ケイ素(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、及び窒化アルミニウム(AlN)のうち少なくとも一つで形成されることができ、化学気相蒸着(Chemical vapor deposition)、RFマグネトロンスパッタリング(RF Magnetron Sputtering)、及び蒸発(Evaporation)のいずれかの工程を経て形成されることができる。
【0019】
犠牲層120は絶縁層112上に形成され、犠牲層120の内側にはキャビティC及びエッチング防止部130が配置されることができる。キャビティCは、製造時に犠牲層120の一部を除去することによって形成される。このように、キャビティCが犠牲層120の内側に形成されるため、犠牲層120上に配置される下部電極150などは平らに形成されることができる。
【0020】
エッチング防止部130は、キャビティCの境界に沿って配置される。エッチング防止部130は、キャビティCの形成過程で、キャビティ領域を超えてエッチングが行われることを防止する役割を果たす。
【0021】
メンブレン層140は、基板110とともにキャビティCを形成する。また、メンブレン層140は、犠牲層120の除去時にエッチングガスとの反応性が低い材料からなることができる。一方、エッチング防止部130は、メンブレン層140によって形成された溝部142内に埋め込まれて配置される。一方、メンブレン層140としては、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれか一つの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0022】
一方、メンブレン層140上には、窒化アルミニウム(AlN)からなるシード層(不図示)が形成されることができる。すなわち、シード層は、メンブレン層140と下部電極150との間に配置されることができる。シード層は、窒化アルミニウム(AlN)以外にも、HCP結晶構造を有する誘電体又は金属を用いて形成されることができる。一例として、シード層が金属である場合には、上記シード層はチタン(Ti)で形成されることができる。
【0023】
下部電極150は、メンブレン層140上に形成され、一部がキャビティC上に配置される。また、下部電極150は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0024】
下部電極150は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、下部電極150は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0025】
圧電層160は、少なくともキャビティC上に配置される下部電極150を覆うように形成される。一方、圧電層160は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛ジルコニウムチタン酸化物(PZT;PbZrTiO)のいずれかで形成されることができる。特に、圧電層160が窒化アルミニウム(AlN)で構成される場合、圧電層160は、希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、一例として、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。なお、二価金属であるマグネシウム(Mg)も含むことができる。
【0026】
一方、圧電層160は、平坦領域Sに配置される圧電部162と、拡張領域Eに配置される屈曲部164と、を含む。
【0027】
圧電部162は、下部電極150の上面に直接積層される部分である。これにより、圧電部162は、下部電極150と上部電極170との間に介在することで、下部電極150及び上部電極170とともに平らな形で形成される。
【0028】
屈曲部164は、圧電部162から外側に延長され、拡張領域E内に位置する領域として定義することができる。
【0029】
屈曲部164は、後述の挿入層180上に配置され、挿入層180の形状に沿って隆起する形で形成される。そのため、圧電層160は、圧電部162と屈曲部164の境界で屈曲し、屈曲部164は、挿入層180の厚さ及び形状に対応して隆起する。
【0030】
屈曲部164は、傾斜部164aと延長部164bとに区分されることができる。
【0031】
傾斜部164aは、後述の挿入層180の傾斜面Lに沿って傾斜するように形成される部分を意味する。そして、延長部164bは、傾斜部164aから外側に延長される部分を意味する。
【0032】
傾斜部164aは、挿入層180の傾斜面Lと平行に形成され、傾斜部164aの傾斜角は、挿入層180の傾斜面Lの傾斜角θと同一に形成されることができる。
【0033】
上部電極170は、少なくともキャビティC上に配置される圧電層160を覆うように形成される。上部電極170は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。すなわち、下部電極150が入力電極として用いられると、上部電極170は出力電極として用いられることができ、下部電極150が出力電極として用いられると、上部電極170は入力電極として用いられることができる。
【0034】
上部電極170は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成されることができる。但し、これに限定されず、上部電極170は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0035】
挿入層180は、下部電極150と圧電層160との間に配置される。挿入層180は、酸化ケイ素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの誘電体で形成されることができるが、圧電層160とは異なる材料で形成される。また、必要に応じて、挿入層180が備えられる領域を空き空間(air)で形成することも可能である。これは、製造過程において、挿入層180を除去することにより実現されることができる。
【0036】
本実施例において、挿入層180の厚さは、下部電極150の厚さと同一であってもよく、類似に形成されてもよい。また、挿入層180の厚さは、圧電層160の厚さと類似であってもよく、又は圧電層160よりも薄く形成されてもよい。例えば、挿入層180は、100Å以上の厚さで形成され、且つ圧電層160の厚さよりも薄く形成されることができる。しかし、本発明の構成がこれに限定されるものではない。
【0037】
一方、挿入層180は、メンブレン層140、下部電極150、及びエッチング防止部130によって形成される表面に沿って配置される。
【0038】
挿入層180は、平坦領域Sの周辺に配置されて圧電層160の屈曲部164を支持する。これにより、圧電層160の屈曲部164は、挿入層180の形状に沿って傾斜部164aと延長部164bとに区分されることができる。
【0039】
挿入層180は、平坦領域Sを除いた領域に配置される。例えば、挿入層180は、平坦領域Sを除いた領域全体に配置されてもよく、又は一部の領域に配置されてもよい。
【0040】
また、挿入層180は、少なくとも一部が圧電層160と下部電極150との間に配置される。
【0041】
平坦領域Sの境界に沿って配置される挿入層180の側面は、平坦領域Sから遠くなるほど厚さが厚くなる形状に形成される。これにより、挿入層180は、平坦領域Sと隣接して配置される側面が一定の傾斜角θを有する傾斜面Lで形成される。
【0042】
挿入層180の側面の傾斜角θが5°よりも小さく形成されると、これを製造するために、挿入層180の厚さを非常に薄く形成するか、又は傾斜面Lの面積を過度に大きく形成する必要があるため、実質的な実現が難しくなる。
【0043】
また、挿入層180の側面の傾斜角θが70°よりも大きく形成されると、挿入層180上に積層される圧電層160の傾斜部164aの傾斜角も70°より大きく形成される。この場合、圧電層160が屈曲しすぎるため、圧電層160の屈曲部分でクラック(crack)が発生することがある。
【0044】
パッシベーション層190は、下部電極150及び上部電極170の一部を除いた領域に形成される。一方、パッシベーション層190は、工程中に上部電極170及び下部電極150が損傷することを防止する役割を果たす。
【0045】
一方、パッシベーション層190としては、例えば、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0046】
さらに、パッシベーション層190は、最終工程において、周波数調整のために一部がエッチングによって除去されることができる。すなわち、最終工程でパッシベーション層190の厚さが調節されることができる。そして、パッシベーション層190には、下部電極150、圧電層160、及び上部電極170のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部192が備えられる。
【0047】
すなわち、
図2に示すように、パッシベーション層190には、トリミングが行われないトリミング未進行領域A、及びトリミングが行われるトリミング進行領域Bが形成され、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間に連結領域Cが形成される。
【0048】
一例として、連結領域Cの幅、すなわち、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離は1μm以下であってもよい。換言すると、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)を介してトリミング未進行領域Aとトリミングが行われるトリミング進行領域Bとが分かれることにより連結領域Cの幅を大幅に減少させることができる。ここで、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)は、フォトレジスト(PR、Photo Resist)からなることができる。
【0049】
すなわち、トリミング工程により、トリミング未進行領域Aのパッシベーション層190の厚さ、つまり、トリミング未進行部192の厚さt1とトリミング進行領域Bのパッシベーション層190の厚さt2とが互いに異なるように形成される。そして、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとを連結する連結領域Cの幅が1μm以下であることができる。
【0050】
これにより、
図3に示すように、トリミング工程が従来技術(すなわち、ステンシルマスク)を介して行われる場合には、共振器で誘発されるノイズ(noise)が原因でフィルタ波形でノッチが発生することが確認できる。これに対し、
図4に示すように、上記した本発明によるバルク音響共振器によると、つまり、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)としてフォトレジスト(PR)を用いてトリミング工程を行う場合には、フィルタ波形でノッチが発生しないことが分かる。
【0051】
さらに、
図5に示すように、トリミング工程が従来技術(すなわち、ステンシルマスク)を介して行われる場合には、共振器の波形異常領域が発生する。これに対し、上記した本発明によるバルク音響共振器によると、つまり、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)としてフォトレジスト(PR)を用いてトリミング工程を行う場合には、共振器の波形異常領域が発生しないことが分かる。
【0052】
このように、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)としてフォトレジスト(PR)を用いてトリミング工程を行う場合には、共振器の特性が向上することが分かる。
【0053】
金属パッド195は、下部電極150及び上部電極170のうち上記したパッシベーション層190が形成されていない部分に形成される。一例として、金属パッド195は、金(Au)、金-スズ(Au-Sn)合金や、銅(Cu)、銅-スズ(Cu-Sn)合金、及びアルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの材料からなることができる。例えば、アルミニウム合金は、アルミニウム-ゲルマニウム(Al-Ge)合金であることができる。
【0054】
上述のように、パッシベーション層190には、下部電極150、圧電層160、及び上部電極170のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部192が備えられる。また、連結領域Cの幅、すなわち、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離が1μm以下となるように形成される。
【0055】
これにより、パッシベーション層190の厚さ勾配が広い領域に渡って形成されることによって生じる異常なノッチの発生を抑制することができる。
【0056】
さらに、パッシベーション層190の厚さ勾配が広い領域に渡って形成されることによって生じる波形異常領域の発生を抑制することができる。
【0057】
このように、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)としてフォトレジスト(PR)を用いてトリミング工程を行う場合には、共振器の特性が向上することが分かる。
【0058】
図6は本発明によるバルク音響共振器の製造方法におけるトリミング工程を説明するための説明図である。
【0059】
図6に示すように、トリミング用のマスク(trimming mask)として、フォトリソグラフィ(photolithography)工程を用いてフォトレジスト(PR、Photo Resist)で形成されたPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10が用いられる。すなわち、金属パッド195の形成後に、パッシベーション層190上にトリミングが行われない領域にPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10を積層する。その後、上記PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10が積層されていない領域に配置されるパッシベーション層190に対してトリミングを行う。続いて、上記PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10を除去する。
【0060】
このようなバルク音響共振器の製造方法によると、フォトリソグラフィ(photolithography)工程を用いることにより実現される効果を奏することができ、フォトレジスト(PR)材料を用いることにより実現される効果も奏することができる。
【0061】
まず、フォトレジスト(PR)材料を用いることにより、ステンシルマスク(Stencil mask)を用いる場合に比べて材料費を比較的低くすることができる(約1/25のレベル)。
【0062】
そして、フォトリソグラフィ(photolithography)工程を行う自動化設備を用いることにより、工程の容易性も確保することができる。また、フォトリソグラフィ(photolithography)工程に含まれる露光工程でステッパー(stepper)設備を用いることができるため、バルク音響共振器100とPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10の間の整列精度を向上させることができ、再現性を確保することができる。これにより、従来技術のステンシルマスクを用いる場合と比較して、所望の正確な位置に再現性が確保された状態でトリミング(trimming)工程を行うことができる。
【0063】
また、バルク音響共振器100とPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10との間に間隙がなくイオンビームによる影効果(ion beam shadow effect)の発生を防止することができる。そして、トリミングが行われる層以外の層をPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10が保護することで、トリミングが行われる層以外の層が外部に露出することを防止することができる。これにより、トリミングが行われる層以外の層とトリミング工程の際に用いられるアルゴンイオン(Ar ion)との引斥力によって発生することがあるイオンビーム経路(ion beam path)の歪みも防止することができる。
【0064】
これにより、
図7に示すように、従来技術(ステンシルマスクを用いた場合)に比べてトリミングが行われる層(すなわち、パッシベーション層190)上の正確な位置での明確な段差を実現することができる。
【0065】
図2を参照してこれについてより詳細に説明すると、トリミングが行われる層であるパッシベーション層190には、トリミングが行われないトリミング未進行領域A、及びトリミングが行われるトリミング進行領域Bが形成され、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間に段差が形成される連結領域Cが形成される。
【0066】
一例として、連結領域Cの幅、すなわち、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離は1μm以下であってもよい。すなわち、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10を介してトリミング未進行領域Aと、トリミングが行われるトリミング進行領域Bとが分かれることにより連結領域Cの幅を大幅に減少させることができる。
【0067】
換言すると、トリミング工程により、トリミング未進行領域Aのパッシベーション層190の厚さ、すなわち、トリミング未進行部192の厚さt1とトリミング進行領域Bのパッシベーション層190の厚さt2とが互いに異なるように形成される。そして、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとを連結する連結領域Cの幅が1μm以下であることができる。
【0068】
一方で、
図7に示すように、従来技術によるステンシルマスク30を用いてトリミング工程を行う場合には、
図8のようなパッシベーション層20の厚さ勾配を有する。すなわち、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間のギャップが1μmよりも遥かに大きく、連結領域Cで緩やかな傾斜角を有する傾斜面が形成される。
【0069】
上述のように、トリミング工程を行うためのマスク(mask)としてPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10を用いることにより、バルク音響共振器100とPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10との間の整列精度を向上させることができ、再現性を確保することができる。
【0070】
これにより、トリミングが行われる層、すなわち、パッシベーション層190上のトリミング進行領域の位置変動誤差を1μm以下に減少させることができる。
【0071】
また、トリミング工程を行うためのマスク(mask)としてPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10を用いることにより、イオンビーム影効果(ion beam shadow effect)の発生を防止することができ、トリミングが行われる層以外の層とトリミング工程の際に用いられるアルゴンイオン(Ar ion)との引斥力によって発生することがあるイオンビーム経路(ion beam path)の歪みも防止することができる。
【0072】
これにより、アルゴンイオン(Ar ion)の直進性を確保することで、トリミングが行われる層(一例として、パッシベーション層190)の特定の位置でトリミング未進行部を形成することができる。すなわち、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域A及びトリミング進行領域Bが1μm以内にともに存在するようにすることができる。
【0073】
さらに、下部に配置される層の段差とは関係なく、金属パッド195とバルク音響共振器100の中心との間に配置されるパッシベーション層190の特定の位置において、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域A及びトリミング進行領域Bが1μm以内にともに存在するようにすることができる。
【0074】
なお、弾性波フィルタ装置(不図示)を構成する共振器100と共振器100との間に配置されるパッシベーション層190の特定の位置において、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域A及びトリミング進行領域Bが1μm以内に存在するようにすることができる。すなわち、共振器100と共振器100との間の間隔が10μm以内の場合でも、共振器100と共振器100との間に配置されるパッシベーション層190の特定の位置にトリミング未進行部を形成することができる。
【0075】
そして、バルク音響共振器100内で対称配置されるトリミング未進行部を形成することもできる。
【0076】
図9は本発明の第2実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図であり、
図10は
図9のa部を示す拡大図であり、
図11は
図9のa'部を示す拡大図である。
【0077】
図9から
図11を参照すると、本発明の第2実施形態によるバルク音響共振器200は、一例として、基板210、メンブレン層220、下部電極230、圧電層240、上部電極250、パッシベーション層260、及び金属パッド270を含んで構成されることができる。
【0078】
基板210はシリコン基板であることができる。例えば、基板210としては、シリコンウエハが用いられるか、又はSOI(Silicon On Insulator)型の基板が用いられることができる。
【0079】
基板210の上面には絶縁層212が形成されることができ、かかる絶縁層212は、上に配置される構成と基板210とを電気的に絶縁させることができる。また、絶縁層212は、製造過程においてキャビティCを形成する場合、エッチングガスによって基板210がエッチングされることを防止する役割を果たす。
【0080】
この場合、絶縁層212は、二酸化ケイ素(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、及び窒化アルミニウム(AlN)のうち少なくとも一つで形成されることができ、化学気相蒸着(Chemical vapor deposition)、RFマグネトロンスパッタリング(RF Magnetron Sputtering)、及び蒸発(Evaporation)のいずれかの工程を経て形成されることができる。
【0081】
メンブレン層220は、基板210とともにキャビティCを形成する。また、メンブレン層220は、犠牲層(不図示)の除去時にエッチングガスとの反応性が低い材料からなることができる。一方、キャビティCは、犠牲層を除去することによって形成されることができる。一方、メンブレン層220としては、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれか一つの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0082】
一方、メンブレン層220上には、窒化アルミニウム(AlN)からなるシード層(不図示)が形成されることができる。すなわち、シード層は、メンブレン層220と下部電極230の間に配置されることができる。シード層は、窒化アルミニウム(AlN)以外にも、HCP結晶構造を有する誘電体又は金属を用いて形成されることができる。一例として、シード層が金属である場合には、上記シード層はチタン(Ti)で形成されることができる。
【0083】
下部電極230は、メンブレン層220上に形成され、一部がキャビティC上に配置される。また、下部電極230は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0084】
下部電極230は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、下部電極230は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0085】
圧電層240は、少なくともキャビティC上に配置される下部電極230を覆うように形成される。一方、圧電層240は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛ジルコニウムチタン酸化物(PZT;PbZrTiO)のいずれかで形成されることができる。特に、圧電層240が窒化アルミニウム(AlN)で構成される場合、圧電層240は、希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、一例として、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。なお、二価金属であるマグネシウム(Mg)も含むことができる。
【0086】
上部電極250は、少なくともキャビティC上に配置される圧電層240を覆うように形成される。上部電極250は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。すなわち、下部電極230が入力電極として用いられると、上部電極250は出力電極として用いられることができ、下部電極230が出力電極として用いられると、上部電極250は入力電極として用いられることができる。
【0087】
上部電極250は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成されることができる。但し、これに限定されず、上部電極250は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0088】
パッシベーション層260は、下部電極230及び上部電極250の一部を除いた領域に形成される。一方、パッシベーション層260は、工程中に上部電極250及び下部電極230が損傷することを防止する役割を果たす。
【0089】
一方、パッシベーション層260としては、例えば、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれか一つの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0090】
さらに、パッシベーション層260は、最終工程において、周波数調整のために一部がエッチングによって除去されることができる。すなわち、最終工程でパッシベーション層260の厚さが調節されることができる。そして、パッシベーション層260には、下部電極230、圧電層240、及び上部電極250のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部262が備えられる。
【0091】
すなわち、
図10及び
図11に示すように、パッシベーション層260には、トリミングが行われないトリミング未進行領域A、及びトリミングが行われるトリミング進行領域Bが形成される。
【0092】
一例として、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離は1μm以下であってもよい。換言すると、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)を介してトリミング未進行領域Aとトリミングが行われるトリミング進行領域Bとが分かれることにより連結領域C(
図2参照)の幅を大幅に減少させることができる。ここで、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)は、フォトレジスト(PR、Photo Resist)からなることができる。
【0093】
すなわち、トリミング工程により、トリミング未進行領域Aのパッシベーション層260の厚さ、つまり、トリミング未進行部262の厚さt1とトリミング進行領域Bのパッシベーション層260の厚さt2とが互いに異なるように形成される。そして、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとを連結する連結領域Cの幅が1μm以下であることができる。
【0094】
一方で、
図12及び
図13に示すように、トリミング工程が従来技術(すなわち、ステンシルマスク)を介して行われる場合には、金属パッド270'にトリミングが行われて、傾斜面272'が形成される。すなわち、トリミングを必要としない他の層、つまり、金属パッド270'がパッシベーション層260'とともにトリミングされて、金属パッド270'に傾斜面272'が形成される。さらに、トリミングが行われるパッシベーション層260'には、上面全体領域に対してトリミングが行われるため、かかるパッシベーション層260'に段差が形成されない。
【0095】
一方、本実施例では、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとが接しているため連結領域Cが形成されない場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間に連結領域Cが形成されることもできる。
【0096】
再び
図9を参照して説明すると、金属パッド270は、下部電極230及び上部電極250のうち上記したパッシベーション層260が形成されていない部分に形成される。一例として、金属パッド270は、金(Au)、金-スズ(Au-Sn)合金や、銅(Cu)、銅-スズ(Cu-Sn)合金、及びアルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの材料からなることができる。例えば、アルミニウム合金は、アルミニウム-ゲルマニウム(Al-Ge)合金であることができる。
【0097】
上述のように、パッシベーション層260には、下部電極230、圧電層240、及び上部電極250のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部262が備えられ、連結領域Cの幅、すなわち、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離が1μm以下となるように形成される。
【0098】
これにより、パッシベーション層260の厚さ勾配が広い領域に渡って形成されることによって生じる異常なノッチの発生を抑制することができる。
【0099】
さらに、パッシベーション層260の厚さ勾配が広い領域に渡って形成されることによって生じる波形異常領域の発生を抑制することができる。
【0100】
このように、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)としてフォトレジスト(PR)を用いてトリミング工程を行う場合、共振器の特性が向上することが分かる。
【0101】
図14は本発明の第3実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図であり、
図15は
図14のb部を示す拡大図であり、
図16は
図14のb'部を示す拡大図である。
【0102】
図14から
図16を参照すると、本発明の第3実施形態によるバルク音響共振器300は、一例として、基板310、下部電極320、圧電層330、上部電極340、パッシベーション層350、及び金属パッド360を含んで構成されることができる。
【0103】
基板310はシリコン基板であることができる。例えば、基板310としては、シリコンウエハが用いられるか、又はSOI(Silicon On Insulator)型の基板が用いられることができる。また、基板310には、下部電極320とともにキャビティCを形成するためのキャビティ形成溝312が備えられることができる。
【0104】
下部電極320は、キャビティ形成溝312を覆うように基板310上に形成される。一方、下部電極320は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0105】
下部電極320は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、下部電極320は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0106】
圧電層330は、少なくともキャビティC上に配置される下部電極320を覆うように形成される。一方、圧電層330は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛ジルコニウムチタン酸化物(PZT;PbZrTiO)のいずれかで形成されることができる。特に、圧電層330が窒化アルミニウム(AlN)で構成される場合、圧電層330は、希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、一例として、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。なお、二価金属であるマグネシウム(Mg)も含むことができる。
【0107】
一方、
図15に示すように、圧電層330には、エッチング溝332が形成される。エッチング溝332は、金属パッド360と上部電極340との間に配置されて、外部に露出する圧電層330に形成されることができる。すなわち、パッシベーション層350のトリミング工程により圧電層330がエッチングされてエッチング溝332が形成されることができる。つまり、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)が積層される領域であるトリミング未進行領域A、及びPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)が積層されない領域であるトリミング進行領域Bが形成される。
【0108】
上部電極340は、少なくともキャビティC上に配置される圧電層330を覆うように形成される。上部電極340は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。すなわち、下部電極320が入力電極として用いられると、上部電極340は出力電極として用いられることができ、下部電極320が出力電極として用いられると、上部電極340は入力電極として用いられることができる。
【0109】
上部電極340は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成されることができる。但し、これに限定されず、上部電極340は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0110】
一方、上部電極340と圧電層330との間の一部に間隙gが形成される。また、間隙gは、活性領域の先端に配置されることができる。一方、活性領域の一側に配置される間隙gは、圧電層330の形状に対応する形状を有することができる。すなわち、活性領域の一側に配置される間隙gは、屈曲した形状を有することができる。そして、活性領域の他側に配置される間隙gは、一端が開放された形状を有することができる。
【0111】
パッシベーション層350は上部電極340を覆うように形成される。一方、パッシベーション層350は、工程中に上部電極340が損傷することを防止する役割を果たす。
【0112】
一方、パッシベーション層350としては、例えば、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0113】
さらに、パッシベーション層350は、最終工程において、周波数調整のために一部がエッチングによって除去されることができる。すなわち、最終工程でパッシベーション層350の厚さが調節されることができる。そして、パッシベーション層350には、下部電極320、圧電層330、及び上部電極340のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部352が備えられる。
【0114】
すなわち、
図16に示すように、パッシベーション層350には、トリミングが行われないトリミング未進行領域A、及びトリミングが行われるトリミング進行領域Bが形成される。
【0115】
一例として、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離は1μm以下であってもよい。換言すると、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)を介してトリミング未進行領域Aとトリミングが行われるトリミング進行領域Bとが分かれることにより連結領域Cの幅を大幅に減少させることができる。ここで、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)は、フォトレジスト(PR、Photo Resist)からなることができる。
【0116】
すなわち、トリミング工程により、トリミング未進行領域Aのパッシベーション層350の厚さ、つまり、トリミング未進行部352の厚さt1とトリミング進行領域Bのパッシベーション層350の厚さt2とが互いに異なるように形成される。そして、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとを連結する連結領域Cの幅が1μm以下であることができる。
【0117】
一方で、
図17及び
図18に示すように、トリミング工程が従来技術(すなわち、ステンシルマスク)を介して行われる場合には、金属パッド360'、及びトリミング未進行領域Aに配置されるパッシベーション層350'にトリミングが行われて、傾斜面362'、352'が形成される。つまり、トリミングを必要としない他の層、すなわち、金属パッド360'、及びトリミング未進行領域Aに配置されるパッシベーション層350'がパッシベーション層350'のトリミング進行領域Bとともにトリミングされて、金属パッド360'、及びトリミング未進行領域Aに配置されるパッシベーション層350'に段差を有さない傾斜面362'、352'が形成される。
【0118】
一方、本実施例では、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとが接しているため連結領域Cが形成されない場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間に連結領域Cが形成されることもできる。
【0119】
再び
図14を参照して説明すると、金属パッド360は、下部電極320及び上部電極340のうち上記したパッシベーション層350が形成されていない部分に形成される。一例として、金属パッド360は、金(Au)、金-スズ(Au-Sn)合金や、銅(Cu)、銅-スズ(Cu-Sn)合金、及びアルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの材料からなることができる。例えば、アルミニウム合金は、アルミニウム-ゲルマニウム(Al-Ge)合金であることができる。
【0120】
図19は、本発明の第4実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図であり、
図20は、
図19のc部を示す拡大図であり、
図21は、
図19のc'部を示す拡大図である。
【0121】
図19から
図21を参照すると、本発明の第4実施形態によるバルク音響共振器400は、一例として、基板410、下部電極420、圧電層430、上部電極440、パッシベーション層450、及び金属パッド460を含んで構成されることができる。
【0122】
基板410はシリコン基板であることができる。例えば、基板410としては、シリコンウエハが用いられるか、又はSOI(Silicon On Insulator)型の基板が用いられることができる。
【0123】
基板410の上面には絶縁層(不図示)が形成されることができ、かかる絶縁層は、上部に配置される構成と基板410を電気的に絶縁させることができる。また、絶縁層は、製造過程においてキャビティCを形成する場合、エッチングガスによって基板410がエッチングされることを防止する役割を果たす。
【0124】
この場合、絶縁層は、二酸化ケイ素(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、及び窒化アルミニウム(AlN)のうち少なくとも一つで形成されることができ、化学気相蒸着(Chemical vapor deposition)、RFマグネトロンスパッタリング(RF Magnetron Sputtering)、及び蒸発(Evaporation)のいずれかの工程を経て形成されることができる。
【0125】
下部電極420は、基板410とともにキャビティCを形成する。このため、下部電極420は、一部がキャビティCを形成するために曲面を形成する。また、下部電極420は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0126】
また、下部電極420は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、下部電極420は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0127】
圧電層430は、少なくともキャビティC上に配置される下部電極420を覆うように形成される。一方、圧電層430は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛ジルコニウムチタン酸化物(PZT;PbZrTiO)のいずれかで形成されることができる。特に、圧電層430が窒化アルミニウム(AlN)で構成される場合、圧電層430は、希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、一例として、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。なお、二価金属であるマグネシウム(Mg)も含むことができる。
【0128】
上部電極440は、少なくともキャビティC上に配置される圧電層430を覆うように形成される。上部電極440は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。すなわち、下部電極420が入力電極として用いられると、上部電極440は出力電極として用いられることができ、下部電極420が出力電極として用いられると、上部電極440は入力電極として用いられることができる。
【0129】
上部電極440は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成されることができる。但し、これに限定されず、上部電極440は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0130】
パッシベーション層450は、下部電極420及び上部電極440の一部を除いた領域に形成される。一方、パッシベーション層450は、工程中に上部電極440及び下部電極420が損傷することを防止する役割を果たす。
【0131】
一方、パッシベーション層450としては、例えば、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0132】
さらに、パッシベーション層450は、最終工程において、周波数調整のために一部がエッチングによって除去されることができる。すなわち、最終工程でパッシベーション層450の厚さが調節されることができる。そして、パッシベーション層450には、下部電極420、圧電層430、及び上部電極440のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部452が備えられる。
【0133】
すなわち、
図20及び
図21に示すように、パッシベーション層450には、トリミングが行われないトリミング未進行領域A、及びトリミングが行われるトリミング進行領域Bが形成される。
【0134】
一例として、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bの離隔距離は1μm以下であってもよい。すなわち、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)を介してトリミング未進行領域Aとトリミングが行われるトリミング進行領域Bとが分かれることにより連結領域C(
図2を参照)の幅を大幅に減少させることができる。ここで、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)は、フォトレジスト(PR、Photo Resist)からなることができる。
【0135】
すなわち、トリミング工程により、トリミング未進行領域Aのパッシベーション層450の厚さ、つまり、トリミング未進行部452の厚さt1とトリミング進行領域Bのパッシベーション層450の厚さt2とが互いに異なるように形成される。そして、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとを連結する連結領域Cの幅が1μm以下であることができる。
【0136】
一方で、
図22及び
図23に示すように、トリミング工程が従来技術(すなわち、ステンシルマスク)を介して行われる場合には、金属パッド460'にトリミングが行われて、傾斜面462'が形成される。すなわち、トリミングを必要としない他の層、つまり、金属パッド460'がパッシベーション層450'とともにトリミングされて、金属パッド460'に傾斜面462'が形成される。さらに、トリミングが行われるパッシベーション層450'には、上面全体領域に対してトリミングが行われるため、かかるパッシベーション層450'に段差が形成されない。
【0137】
一方、本実施例では、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとが接しているため連結領域Cが形成されない場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間に連結領域Cが形成されることもできる。
【0138】
再び
図19を参照して説明すると、金属パッド460は、下部電極420及び上部電極440のうち上記したパッシベーション層450が形成されていない部分に形成される。一例として、金属パッド460は、金(Au)、金-スズ(Au-Sn)合金や、銅(Cu)、銅-スズ(Cu-Sn)合金、及びアルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの材料からなることができる。例えば、アルミニウム合金は、アルミニウム-ゲルマニウム(Al-Ge)合金であることができる。
【0139】
図24は本発明の第5実施形態によるバルク音響共振器を示す概略断面図であり、
図25は
図24のd部を示す拡大図であり、
図26は
図24のd'部を示す拡大図である。
【0140】
図24及び
図25を参照すると、本発明の第5実施形態によるバルク音響共振器500は、一例として、基板510、下部電極520、圧電層530、上部電極540、パッシベーション層550、及び金属パッド560を含んで構成されることができる。
【0141】
基板510はシリコンが積層された基板であることができる。例えば、基板510としては、シリコンウエハ(Silicon Wafer)が用いられることができる。一方、基板510には、反射層512が備えられることができる。また、反射層512は、誘電体層511内に配置されることができる。
【0142】
反射層512は、基板510内の中央部に配置されることができ、活性領域の下に配置されることができる。ここで、活性領域とは、下部電極520、圧電層530、及び上部電極540のすべてが重なるように配置される領域のことである。
【0143】
一方、反射層512は、第1反射部材及び第2反射部材513、514を備えることができ、かかる第1反射部材及び第2反射部材513、514は、互いに異なる材料からなることができる。
【0144】
第1反射部材513としては、例えば、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などが用いられることができる。また、第2反射部材514は、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料からなることができる。なお、第1及び第2反射部材513、514は、一対のみからなってもよく、一対の第1及び第2反射部材513、514が一対となって繰り返されて構成されてもよい。
【0145】
誘電体層511上に窒化アルミニウム(AlN)からなるシード層(不図示)が形成されることができる。すなわち、シード層は、誘電体層511と下部電極520との間に配置されることができる。シード層は、窒化アルミニウム(AlN)以外にも、HCP結晶構造を有する誘電体又は金属を用いて形成されることができる。一例として、シード層が金属である場合には、上記シード層はチタン(Ti)で形成されることができる。
【0146】
下部電極520は誘電体層511上に形成される。また、下部電極520は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。
【0147】
また、下部電極520は、一例として、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成することができる。但し、これに限定されず、下部電極520は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0148】
圧電層530は、少なくとも反射層512上に配置される下部電極520を覆うように形成される。一方、圧電層530は、電気的エネルギーを弾性波の形の機械的エネルギーに変換する圧電効果を引き起こす部分であって、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、鉛ジルコニウムチタン酸化物(PZT;PbZrTiO)のいずれかで形成されることができる。特に、圧電層530が窒化アルミニウム(AlN)で構成される場合、圧電層530は、希土類金属(Rare earth metal)をさらに含むことができる。一例として、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、及びランタン(La)のうち少なくとも一つを含むことができる。また、一例として、遷移金属は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)のうち少なくとも一つを含むことができる。なお、二価金属であるマグネシウム(Mg)も含むことができる。
【0149】
上部電極540は、少なくとも反射層512上に配置される圧電層530を覆うように形成される。上部電極540は、RF(Radio Frequency)信号などの電気信号を入出力する入力電極及び出力電極のいずれかとして用いられることができる。すなわち、下部電極520が入力電極として用いられると、上部電極540は出力電極として用いられることができ、下部電極520が出力電極として用いられると、上部電極540は入力電極として用いられることができる。
【0150】
上部電極540としては、例えば、モリブデン(molybdenum:Mo)のような導電性材料又はその合金を用いて形成されることができる。但し、これに限定されず、上部電極540は、ルテニウム(ruthenium:Ru)、タングステン(tungsten:W)、イリジウム(Iridium:Ir)、プラチナ(Platinium:Pt)、銅(Copper:Cu)、チタン(Titanium:Ti)、タンタル(Tantalum:Ta)、ニッケル(Nickel:Ni)、クロム(Chromium:Cr)などの導電性材料又はその合金からなることができる。
【0151】
パッシベーション層550は、下部電極520及び上部電極540の一部を除いた領域に形成される。一方、パッシベーション層550は、工程中に上部電極540及び下部電極520が損傷することを防止する役割を果たす。
【0152】
一方、パッシベーション層550としては、例えば、窒化シリコン(Si3N4)、酸化シリコン(SiO2)、酸化マンガン(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)のいずれかの材料を含有する誘電体層(Dielectric layer)が用いられることができる。
【0153】
さらに、パッシベーション層550は、最終工程において、周波数調整のために一部がエッチングによって除去されることができる。すなわち、最終工程でパッシベーション層550の厚さが調節されることができる。そして、パッシベーション層550には、下部電極520、圧電層530、及び上部電極540のすべてが重なるように配置される活性領域の外側に配置され、活性領域上に配置される部分の厚さよりも厚いトリミング未進行部552が備えられる。
【0154】
すなわち、
図25及び
図26に示すように、パッシベーション層550には、トリミングが行われないトリミング未進行領域A、及びトリミングが行われるトリミング進行領域Bが形成される。
【0155】
一例として、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間の離隔距離は1μm以下であってもよい。換言すると、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)を介してトリミング未進行領域Aとトリミングが行われるトリミング進行領域Bとが分かれることにより連結領域C(
図2を参照)の幅を大幅に減少させることができる。ここで、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)は、フォトレジスト(PR、Photo Resist)からなることができる。
【0156】
すなわち、トリミング工程により、トリミング未進行領域Aのパッシベーション層550の厚さ、つまり、トリミング未進行部552の厚さt1とトリミング進行領域Bのパッシベーション層550の厚さt2とが互いに異なるように形成される。そして、厚さが互いに異なるトリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとを連結する連結領域Cの幅が1μm以下であることができる。
【0157】
一方で、
図27及び
図28に示すように、トリミング工程が従来技術(すなわち、ステンシルマスク)を介して行われる場合には、金属パッド560'にトリミングが行われて、傾斜面562'が形成される。すなわち、トリミングを必要としない他の層、つまり、金属パッド560'がパッシベーション層550'とともにトリミングされて、金属パッド560'に傾斜面562'が形成される。さらに、トリミングが行われるパッシベーション層550'には、上面全体領域に対してトリミングが行われるため、かかるパッシベーション層550'に段差が形成されない。
【0158】
一方、本実施例では、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとが接しているため連結領域Cが形成されない場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、トリミング未進行領域Aとトリミング進行領域Bとの間に連結領域Cが形成されることもできる。
【0159】
金属パッド560は、下部電極520及び上部電極540の上記したパッシベーション層550が形成されていない部分に形成される。一例として、金属パッド560は、金(Au)、金-スズ(Au-Sn)合金や、銅(Cu)、銅-スズ(Cu-Sn)合金、及びアルミニウム(Al)、アルミニウム合金などの材料からなることができる。例えば、アルミニウム合金は、アルミニウム-ゲルマニウム(Al-Ge)合金であることができる。
【0160】
以下では、オーバーハング(Overhang)の幅による厚さ偏差について説明する。
【0161】
図29に示すように、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10の積層時にパッシベーション層620と金属パッド640の境界線からPRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10の先端までの離隔距離をオーバーハング(Overhang)の幅としたとき、
図30に示すように、オーバーハングの幅による共振器内の位置ごとにパッシベーション層の厚さ偏差が異なっていることが分かる。すなわち、金属パッド640が3μm露出する場合(Overhang-3μmの場合)には、厚さ偏差が最も大きいことが分かり、PRトリミング用のマスク(PR trimming mask)10が、金属パッド640から1μm以上突出するように積層してトリミングされている場合には、厚さ偏差が改善されることが分かる。しかし、オーバーハング(Overhang)の幅が2μm、3μmのレベルまで増加すると、金属パッド640とトリミング進行領域の間の間隔も、その分だけ確保する必要があるため、設計値を考慮して、適切なオーバーハング(Overhang)の幅を選定する必要がある。
【0162】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0163】
100、200、300、400、500 バルク音響共振器
110、210、310、410、510 基板
120 犠牲層
130 エッチング防止部
140、220 メンブレン層
150、230、320、420、520 下部電極
160、240、330、430、530 圧電層
170、250、340、440、540 上部電極
180 挿入層
190、260、350、450、550 パッシベーション層
195、270、360、460、560 金属パッド