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特許7447375モータユニットおよびモータユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】モータユニットおよびモータユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/15 20060101AFI20240305BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20240305BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H02K5/15
H02K11/21
H02K15/14 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020207602
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094617
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】黒田 義和
(72)【発明者】
【氏名】井川 正章
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/194959(WO,A1)
【文献】特開2008-187834(JP,A)
【文献】特開2010-041870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/15
H02K 11/21
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのステータが固定されるとともに前記モータのロータが回転自在に支持されるハウジングと、
回転検出装置が取り付けられ、締結部材を介して前記ハウジングに接合されるエンドベルと、
前記ハウジングおよび前記エンドベルの一方に形成され、前記締結部材が挿通される第一孔部と、
前記ハウジングおよび前記エンドベルの他方に形成され、前記締結部材が挿通される第二孔部とを備え、
前記第一孔部が、前記ハウジングおよび前記エンドベルの接合面において、前記第一孔部の内壁から前記第二孔部に向かって突設されて前記第二孔部と面接触するフランジを有する
ことを特徴とする、モータユニット。
【請求項2】
前記回転検出装置が、レゾルバである
ことを特徴とする請求項1記載のモータユニット
【請求項3】
前記第二孔部が、前記第一孔部側の端部を拡径されてなり、前記フランジと面接触するフランジ受け面を有する
ことを特徴とする、請求項1または2記載のモータユニット。
【請求項4】
前記エンドベルに固定され、前記ステータに対する前記ロータの回転を拘束するブレーキ装置をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記第二孔部を有するケースの材料硬度が、前記第一孔部を有するケースの材料硬度以上の硬度である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記フランジが、前記締結部材の軸心を通る断面において、前記軸心に対して傾斜した形状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記フランジが、前記締結部材の軸心を通る断面において、前記軸心と平行な形状に形成される
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項8】
モータのステータが固定されるとともに前記モータのロータが回転自在に支持されるハウジングと、回転検出装置が搭載されるエンドベルと、を締結部材で接合するモータユニットの製造方法であって、
前記ハウジングおよび前記エンドベルの一方に、前記締結部材が挿通される第一孔部と前記第一孔部の内壁から縮径方向に突設されたフランジとを形成し、
前記ハウジングおよび前記エンドベルの他方に、前記締結部材が挿通される第二孔部を形成し、
前記ハウジングと前記エンドベルとの組付けに際し、前記フランジを前記第二孔部と面接触させるべく、前記第一孔部の位置と前記第二孔部の位置とを合わせた状態で前記第一孔部にバーリングパンチを挿入する
ことを特徴とする、モータユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータとレゾルバ等の回転検出装置とを内蔵したモータユニットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスモータ(以下、モータ)が内蔵されるケースにレゾルバを固定し、モータの回転位置をレゾルバにて精度よく検出し、モータの駆動を制御できるようにしたモータユニットが知られている。モータのステータ(固定子)は、例えば有底筒状のケースに固定される。また、モータのロータ(回転子)はシャフトに固定され、シャフトが軸受を介してケースに回転自在に支持される。レゾルバは、ケースとは別体に設けられたカバー(ブラケット)にモータのステータの位置に合わせて固定される。このカバーは、ケースに対してその端面を塞ぐように取り付けられる(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-022878号公報
【文献】特開平07-212993号公報
【文献】特開2019-122177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータユニットにおいて、レゾルバが固定されるカバーに回転方向の力(トルク)が作用した場合には、ケース(ハウジング)に対するカバー(エンドベル)の位置がずれ、その結果、最適に調整されてカバー上に取り付けられているレゾルバがモータステータに対してずれてしまうおそれがある。例えば、ロータの回転を拘束するための電磁ブレーキ装置がカバーに固定されるような、オプション仕様のモータユニットでは、電磁ブレーキ装置を作動させることでカバーにトルクが作用し、カバーが僅かに回転方向に移動する可能性がある。
【0005】
このような位置ずれは、レゾルバにより検出されるロータ回転位置情報にずれを生じさせ、モータ性能を低下させる要因の一つとなる。なお、電磁ブレーキ装置の有無に関わらず、何らかの外力がカバーに作用することで、カバーの位置ずれが発生する可能性がある。したがって、レゾルバの検出精度を維持する上では、電磁ブレーキ装置を持たないモータユニットにおいても、できるだけカバーの位置ずれを抑制することが望まれる。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に照らして創案されたものであり、簡素な構成でレゾルバにより検出されるロータ回転位置の検出精度を確保できるようにしたモータユニットおよびその製造方法を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示のモータユニットは、モータのステータが固定されるとともに前記モータのロータが回転自在に支持されるハウジングと、回転検出装置が取り付けられ、締結部材を介して前記ハウジングに接合されるエンドベルとを備える。また、前記ハウジングおよび前記エンドベルの一方に形成され、前記締結部材が挿通される第一孔部と、前記ハウジングおよび前記エンドベルの他方に形成され、前記締結部材が挿通される第二孔部とを備える。前記第一孔部は、前記ハウジングおよび前記エンドベルの接合面において、前記第一孔部の内壁から前記第二孔部に向かって突設されて前記第二孔部と面接触するフランジを有する。
【0008】
また、開示のモータユニットの製造方法は、モータのステータが固定されるとともに前記モータのロータが回転自在に支持されるハウジングと、回転検出装置が搭載されるエンドベルと、を締結部材で接合するモータユニットの製造方法である。まず、前記ハウジングおよび前記エンドベルの一方に、前記締結部材が挿通される第一孔部と前記第一孔部の内壁から縮径方向に突設されたフランジとを形成する。また、前記ハウジングおよび前記エンドベルの他方に、前記締結部材が挿通される第二孔部を形成する。前記ハウジングと前記エンドベルとの組付けに際し、前記フランジを前記第二孔部と面接触させるべく、前記第一孔部の位置と前記第二孔部の位置とを合わせた状態で前記第一孔部にバーリングパンチを挿入する。
【発明の効果】
【0009】
開示のモータユニットおよびモータユニットの製造方法によれば、簡素な構成でレゾルバの検出精度を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例としてのモータユニットの構造を模式的に示す断面図である。
図2図1に示すモータユニットのハウジングとエンドベルとの接合箇所の構造を説明するための断面図である。
図3図2に示す接合箇所の構造を説明するための断面図であり、(A)は接合前におけるエンドベルの断面図、(B)は接合前におけるハウジングの断面図である。
図4】(A)~(C)はバーリング加工の手順を説明するための断面図である。
図5】モータユニットの製造方法を例示するフローチャートである。
図6】変形例としての接合箇所の構造を示す断面図である。
図7】変形例としてのモータユニットの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1. 構成]
以下、図面を参照して実施形態(適用例)としてのモータユニット10とその製造方法を説明する。図1は、実施例としてのモータユニット10の構造を模式的に示す断面図である。モータユニット10には、モータ11と回転検出装置であるレゾルバ16とが収容される。モータ11は、例えばブラシレスDCモータであり、コイルを含むステータ12(モータ固定子)と永久磁石で形成されたロータ13(モータ回転子)とを有する。
【0012】
図1に示すように、これらのステータ12およびロータ13は、ハウジング1に内蔵される。ステータ12およびロータ13のうち、ステータ12はハウジング1に固定される。また、ロータ13は、モータ11の回転軸であるシャフト14に固定される。シャフト14は、軸受15を介してハウジング1およびエンドベル2に回転自在に支持される。図1に例示するハウジング1は、上面が開放された有底円筒状に形成されている。シャフト14は、ハウジング1の底面を貫通するように設けられ、その貫通箇所に軸受15が配置される。なお、ハウジング1は底部に軸受15を設置した器形状としているが、これに限らず筒状とし、底部(軸受15付)を別体のフロントベルとして用意し、組み立てても良い。
【0013】
ハウジング1の上面側の開口部は、エンドベル2によって閉塞されている。エンドベル2は、下面が開放された有底円筒状に形成された容器であり、その平面部内側にレゾルバ16を搭載している。レゾルバ16は、レゾルバステータ17とレゾルバロータ18とを有する。図1に示すように、レゾルバステータ17はエンドベル2に固定され、レゾルバロータ18はシャフト14に固定される。シャフト14は、エンドベル2の頂面を貫通するように設けられ、その貫通箇所に軸受15が配置される。
【0014】
ハウジング1の材料は、例えば亜鉛合金を含むアルミ合金や鋼であり、エンドベル2の材料は、例えば亜鉛合金を含むアルミ合金である。これらのハウジング1およびエンドベル2は、ダイキャストや低圧鋳造などの手法で製造される。また、ハウジング1の材料硬度は、好ましくはエンドベル2の材料硬度以上の硬度に設定される。言い換えれば、ハウジング1の材料は少なくともエンドベル2と同一材料か、エンドベル2よりも硬い材料であることが好ましい。
【0015】
エンドベル2の平面部外側(図1中でエンドベル2の上部側)には、オプション装備品としてのブレーキ装置19(電磁ブレーキ)が設置されうる。ブレーキ装置19は、シャフト14の回転を減速させ、あるいは、その回転を拘束して停止状態を維持するための装置である。これらの機能が不要である場合には、ブレーキ装置19は省略される。本実施例では、ブレーキ装置19が締結部材5を介してエンドベル2の平面部外側に固定される。締結部材5の具体例としては、ボルト,ナット,ねじ,タッピングねじ,カシメピン,リベットなどが挙げられる。締結部材5による締結箇所数は不問であるが、例えばシャフト14の回転軸について回転対称となる複数の位置に締結部材5が取り付けられる。
【0016】
図2は、ハウジング1とエンドベル2とが接合される締結箇所を拡大して示す断面図である。エンドベル2は、締結部材5を介してハウジング1に接合される。エンドベル2を接合するための締結部材5は、ブレーキ装置19を固定するための締結部材5と同一種類の部品である必要はない。また、図2に示す断面図は、締結部材5が挿通される直前の状態を表している。エンドベル2には、締結部材5が挿通される第一孔部3が設けられる。また、ハウジング1にも、締結部材5が挿通される第二孔部4が設けられる。
【0017】
第一孔部3には、円筒面状の内壁21とその内壁21から突設されるフランジ6とが設けられる。内壁21は締結部材5が余裕を持って挿通されうる孔径に形成される。また、フランジ6は、内壁21のうち、ハウジング1とエンドベル2との接合面(図2における第一孔部3の下方側)の近傍から円錐面状に突設される。図2に示す状態(第一孔部3の孔芯を通る断面)においては、フランジ6が第一孔部3の内側かつ下方に向かって斜めに突設される。換言すれば、フランジ6は、締結部材5の軸心を通る断面において、締結部材5の軸心(締結方向)に対して傾斜した形状に形成される。また、フランジ6の下面側は、第二孔部4の内側と面接触するように設けられる。
【0018】
図3(A)は、エンドベル2の部品製造時における第一孔部3の形状を示す断面図である。部品製造時には、フランジ6の突出方向が内壁21に対して垂直な方向(縮径方向)に設定されている。フランジ6の突出方向は、ハウジング1とエンドベル2とを接合させた後に実施されるバーリング加工によって変更される。このバーリング加工については後述する。また、フランジ6の内壁21からの突出寸法は、バーリング加工後にフランジ6が締結部材5と干渉しない程度の長さに設定される。
【0019】
第二孔部4には、フランジ受け面7と孔壁8と内筒面22と円錐面23とが設けられる。フランジ受け面7は、フランジ6と面接触する面状の部位である。図2に示すフランジ受け面7は、第一孔部3側の端部を拡径した円錐面状に形成される。また、孔壁8は、締結部材5が挿通される孔の内壁を構成する面である。図2に示す孔壁8には、例えば締結部材5のネジ山9と螺合するネジ溝が形成され、これらの螺合によって締結状態が維持される。締結部材5がタッピングねじである場合には、締結部材5のネジ山9が孔壁8にねじ込まれながら固定される。
【0020】
図3(B)は、ハウジング1の部品製造時における第二孔部4の形状を示す断面図である。内筒面22は、孔壁8よりも大径の円筒面をなす部位であり、円錐面23は、内筒面22と孔壁8との間を繋ぐ面状の部位である。これらの内筒面22,円錐面23は、締結部材5を挿入しやすくするための面取りとなる。
【0021】
[2. バーリング加工]
モータユニット10の製造過程においては、ハウジング1とエンドベル2との組付けに際し、締結部材5による締結の直前に、締結箇所にバーリング加工が施されてフランジ6の形状が加工される。本実施例のバーリング加工とは、バーリングパンチ24を第一孔部3と第二孔部4とに挿入することで、フランジ6を第二孔部4と面接触するまで屈曲変形させる加工のことを意味する。このような加工を現合で施すことにより、たとえ組付け時に第一孔部3と第二孔部4の同軸度が多少ずれていたとしても、ハウジング1とエンドベル2とのロータ回転方向のガタツキがなくなり、ハウジング1に対するエンドベル2の組付け後の位置ずれが防止される。
【0022】
図4(A)~(C)は、バーリング加工の手順を説明するための断面図である。バーリング加工のための工具としては、図4(A)に示すバーリングパンチ24が用いられる。バーリングパンチ24には、第一筒面25と押圧面26と第二筒面27とが設けられる。第一筒面25は、第一孔部3の内壁21に対応する円筒面状に形成された面である。押圧面26は、フランジ6を押圧して屈曲変形させるための面であり、フランジ受け面7に対応する円錐面状に形成される。第二筒面27は、第一筒面25よりも小径の円筒面をなす部位であり、第二孔部4の内筒面22に対応する円筒面状に形成される。
【0023】
続いて、バーリング加工の手順を説明する。まず、ハウジング1とエンドベル2とが設備(図は省略)により第一孔部3と第二孔部4の同軸が合うように位置決め固定される。この設備には、バーリングパンチ24も第一孔部3と同軸が合うように配置されている。また、図4(A)に示すように、エンドベル2側から第一孔部3にバーリングパンチ24が挿入される。このとき、バーリングパンチ24の第一筒面25が第一孔部3の内壁21によってガイドされ、バーリングパンチ24が第一孔部3の奥へと誘導される。
【0024】
バーリングパンチ24は、設備に配置されたチェッカー(図は省略)にて押圧力を管理されながら下方に加重され、押圧面26がフランジ6を押圧して屈曲変形させる。フランジ6が、押圧面26によってフランジ受け面7に押し付けられた状態となると、チェッカーの感知する押圧力が屈曲変形中よりも増大し、一定値を超えた段階で設備はバーリングパンチ24への加重を停止するようプログラムされている。これにより、フランジ6とフランジ受け面7とが面接触し、ハウジング1に対するエンドベル2の組付け位置が固定される。
【0025】
なお、フランジ6とフランジ受け面7との接触は部分的に隙間が生じたとしてもよく、一部が面接触していればよい。
その後、バーリングパンチ24は引き抜かれる。その後、図4(B)に示すように、締結部材5が第一孔部3と第二孔部4とに挿入されて、ハウジング1とエンドベル2とが締結固定される。締結部材5がタッピングねじである場合、図4(C)に示すように、締結部材5のネジ山9が第二孔部4の孔壁8にねじ込まれて固定される。
【0026】
[3. フローチャート]
図5は、モータユニット10の製造方法について、その概要を説明するためのフローチャートである。ステップA1は、エンドベル2の製造に関する工程であり、ステップA2は、ハウジング1の製造に関する工程である。これらの工程の順序は不問であり、逆の順序であってもよいし、同時並行的に実施されるものとしてもよい。また、ステップA3~A5は、ハウジング1およびエンドベル2の組付けに関する工程であり、ステップA1およびA2の後に実施される。
【0027】
エンドベル2上へのレゾルバ16の取付けはフローチャート上では省略するが、全ての締結部材の固定が完了した後に、モータ11のステータ12に対する最適な位置となるよう調整して取り付けることとする。エンドベル2上の取付け面は、ロータ軸方向に対してモータ11側(図1中で下部側)でも、反モータ11側(図1中で上部側)でも、どちらでもよい。
なお、レゾルバ16をモータ11側へ取付ける場合には、後述する図7に示すように、ハウジング1を筒状とし、その底部を別体のフロントベル31として用意してもよい。レゾルバ16の取付け後にフロントベル31を筒状のハウジング1に組付けることで、モータユニット10の組立てが可能となる。
【0028】
ステップA1では、締結部材5が挿通される第一孔部3がエンドベル2に形成される。図3(A)に示すように、第一孔部3の内壁には、縮径方向に突設されたフランジ6が設けられる。また、ステップA2では、締結部材5が挿通される第二孔部4がハウジング1に形成される。図3(B)に示すように、第二孔部4には、第一孔部3側の端部を拡径してなる円錐面状のフランジ受け面7が設けられる。ステップA3では、第一孔部3と第二孔部4とが設備(図は省略)により第一孔部3と第二孔部4との同軸が合うように位置合わせされ、ハウジング1およびエンドベル2の位置が固定される。
【0029】
ステップA4では、第一孔部3にバーリングパンチ24が挿入されて、バーリング加工が施される。この工程で、図2に示すように、フランジ6の向きが第一孔部3の内側かつ下方に向かって傾斜した向きになり、フランジ受け面7に面接触した状態となる。これにより、ハウジング1とエンドベル2との位置ずれが防止される。その後のステップA5において、締結部材5が第一孔部3側から挿通され、ハウジング1とエンドベル2とが締結固定される。
【0030】
[4. 作用, 効果]
(1)上記のモータユニット10には、第一孔部3の内壁21から第二孔部4に向かって突設されたフランジ6が設けられる。このフランジ6を第二孔部4と面接触させることで、ハウジング1およびエンドベル2の組付後の位置ずれ(相対移動)を防止できる。また、例えばモータ11の稼働中にエンドベル2に何らかの外力が作用したような場合であっても、エンドベル2がハウジング1に対して移動するのを防止できる。これにより、位置ずれに伴うレゾルバ16の検出精度低下を防止できる。したがって、開示のモータユニット10によれば、簡素な構成でレゾルバ16の検出精度を確保でき、モータ11の制御性悪化を防止できる。
【0031】
(2)また、第二孔部4には、フランジ6と面接触するフランジ受け面7が設けられる。第二孔部4にフランジ受け面7を設けることで、フランジ6の面接触状態が安定し、ハウジング1およびエンドベル2の組付け後の位置ずれがより確実に防止される。したがって、レゾルバ16により検出される回転位置決め精度の悪化を防止できるとともに、エンドベル2の固定状態を維持しやすくでき、モータ11の制御性をさらに改善できる。
【0032】
(3)図1に示すように、エンドベル2にブレーキ装置19が設置されている場合には、ブレーキ装置19を作動させることでエンドベル2にロータ回転方向のトルクが作用し、エンドベル2がハウジング1に対して僅かに回転方向に移動する可能性がある。一方、上記のモータユニット10によれば、このようなエンドベル2の回転移動を拘束することができる。つまり、ブレーキ装置19を作動させたとしても、エンドベル2がハウジング1に対して回転方向にずれることを防止できる。したがって、簡素な構成でレゾルバ16の検出精度を向上させることができ、モータ11の制御性をさらに改善できる。
【0033】
(4)上記のモータユニット10では、第二孔部4を有するケースの材料硬度が、第一孔部3を有するケースの材料硬度以上の硬度に設定されうる。例えば、ハウジング1の材料硬度は、好ましくはエンドベル2の材料硬度以上の硬度に設定される。このような構成により、第一孔部3のフランジ6をバーリングパンチ24で第二孔部4に押し付ける際に、第二孔部4の表面(フランジ受け面7)を基準にしてフランジ6を屈曲変形させることができる。これにより、フランジ6を確実に第二孔部4と面接触させることができ、位置決め精度を高めることができる。
【0034】
(5)上記のモータユニット10では、図2に示すように、締結部材5の軸心を通る断面において、フランジ6が締結部材5の軸心に対して傾斜した形状に形成される。このような構成により、ハウジング1とエンドベル2との間に作用する締め付け力がフランジ6と第二孔部4の表面(フランジ受け面7)との間に均等に分散されやすくなり、フランジ6の面接触状態をさらに安定させることができる。したがって、簡素な構成でレゾルバ16の検出精度を維持させることができ、モータ11の制御性も維持できる。
【0035】
(6)また、本実施例のモータユニット10の製造方法では、図5に示すように、ハウジング1とエンドベル2との組付けに際し、第一孔部3の位置と第二孔部4の位置とを合わせた状態で、現合で第一孔部3にバーリングパンチ24が挿入される。このような方法を採用することで、フランジ6を第二孔部4に対して確実に面接触させることができ、ハウジング1およびエンドベル2を強固に位置決めできる。これにより、位置ずれに伴うレゾルバ16の精度低下を防止でき、モータ11の制御性を維持できる。
【0036】
[5. 変形例]
上記の実施例はあくまでも例示に過ぎず、本実施例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、本実施例の各構成は必要に応じて取捨選択でき、あるいは、公知技術に含まれる各種構成と適宜組み合わせることができる。
【0037】
上記の実施例では、図2に示すように、締結部材5の軸心を通る断面において、フランジ6が締結部材5の軸心に対して傾斜した形状に形成されたものを例示したが、バーリング加工後のフランジ6の形状はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、締結部材5の軸心を通る断面において、フランジ6が締結部材5の軸心と平行な形状に形成されてもよい。言い換えれば、フランジ6と第二孔部4(フランジ受け面7)との接触面が、締結部材5の軸心に対して平行になるまで、フランジ6を屈曲変形させてもよい。このような構成においても、ハウジング1およびエンドベル2の組付後の位置ずれを防止できる。
【0038】
また、図1に示されるモータユニット10では、ハウジング1がエンドベル2よりも大きく形成されているが、必ずしもそれらの大小関係を表さない。ハウジング1は、少なくともステータ12が収容されるサイズがあればよいし、エンドベル2は、少なくともレゾルバ16が搭載されるサイズがあればよい。各部品の大小関係にかかわらず、第一孔部3のフランジ6を第二孔部4と面接触させる構造を採用することで、上記の実施例と同様の効果を獲得することができる。
【0039】
また、上記の実施例では、エンドベル2に第一孔部3が形成されるとともに、ハウジング1に第二孔部4が形成されているが、これらの対応関係を反転させてもよい。すなわち、ハウジング1側にフランジ6を形成してもよいし、これに対応するフランジ受け面7をエンドベル2側に形成してもよい。少なくとも、第一孔部3の内壁から第二孔部4に向かって突設されたフランジ6を第二孔部4と面接触させることで、上記の実施例と同様の効果を獲得することができる。
【0040】
なお、図7に示すように、エンドベル2をカバー32付きの二体物とし、エンドベル2とカバー32とで囲まれる空間内にレゾルバ16を配置してもよい。この場合、ブレーキ装置19は、エンドベル2の平面部上ではなくカバー32に配置してもよい。また、ハウジング1を中空筒状に形成し、その底面側をフロントベル31で閉塞してもよい。この場合、ハウジング1の頂面側がエンドベル2によって閉塞され、ハウジング1とエンドベル2とフロントベル31とで囲まれる空間内にモータ11を配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ハウジング
2 エンドベル
3 第一孔部
4 第二孔部
5 締結部材
6 フランジ
7 フランジ受け面
8 孔壁
9 ネジ山
10 モータユニット
11 モータ(ブラシレスモータ)
12 ステータ
13 ロータ
14 シャフト
15 軸受
16 レゾルバ(回転検出装置)
17 レゾルバステータ
18 レゾルバロータ
19 ブレーキ装置
21 内壁
22 内筒面
23 円錐面
24 バーリングパンチ
25 第一筒面
26 押圧面
27 第二筒面
31 フロントベル
32 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7