(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】多層基板用導電性接着シート
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240305BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240305BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240305BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240305BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H05K3/46 B
C09J7/30
C09J9/02
C09J201/00
H01B1/22 B
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2019218037
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恭史
(72)【発明者】
【氏名】梅原 整裕
(72)【発明者】
【氏名】原田 龍
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-049482(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108502(WO,A1)
【文献】特表2004-502020(JP,A)
【文献】特開2016-172528(JP,A)
【文献】特開2019-119799(JP,A)
【文献】特開2019-021838(JP,A)
【文献】特開2009-194359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
C09J 7/30
C09J 9/02
C09J 201/00
H01B 1/22
H05K 3/32
H05K 3/36
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂100質量部に対してアクリル樹脂が75質量部~250質量部含有する樹脂組成物と
、エポキシ樹脂100質量部に対して導電性フィラー
が30質量部~50質量部含有した導電性接着シートであって、該導電性接着シートの80℃における動的弾性率が
3.9×10
6
以上4.3×10
7
であり、
前記アクリル樹脂が、カルボン酸含有アクリル樹脂、カルボン酸含有アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、カルボン酸含有スチレン-ブタジエン-エチレン樹脂のいずれかを含有することを特徴とする多層基板用導電性接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層基板用導電性接着シートに関し、特に、部品内蔵型多層基板に好適な多層基板用導電性接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
部品内蔵型多層基板は、金属コアに設けた収納部に部品を配置し、該金属コアの表裏両面と該収納部とが絶縁層で封止された構成を有している。そして、金属コアが複数の金属板で構成され、複数の金属板が樹脂層を介して貼り合わせられている。このような部品内蔵型多層基板では、金属板を貼り合わせる樹脂層に導電性を持たせることが必要なことも知られている(例えば、特許文献1参照)。このような金属板を貼り合わせる樹脂層としては導電性接着シートが使用されている。
【0003】
上記のような部品内蔵型多層基板では、基板を製造する際、導体に、金属コアを貫通するスルーホール導体を設け、金属コアの表裏面側に設けられた配線パターンに電気的に接続させる必要がある。このスルーホール導体は、金属コアに成型した貫通孔を絶縁層で封止し、これをドリルもしくはレーザーで加工して開口した貫通孔の側壁に導体層を設けて形成する。したがって、導電性接着シートにはドリルやレーザーでの加工性が求められていた。
【0004】
また、ビアやスルーホール形成のための加工後に、基材や導電性接着シートの樹脂残渣(スミア)を除去する工程(デスミア)がある。薬液を使用したデスミアや、レーザーでのデスミア加工が行われる。さらに、薬液を使用してスミアを除去し、かつ、後工程でメッキへの密着性を向上するためにスルーホールの壁面を粗面化する工程(湿式デスミア工程)がある。従来の導電性接着シートでは、加工性が充分でなかったり、導電性接着シートの残渣を完全に除去できなかったり、導電性接着シートの粗面化が不十分でメッキ密着性が不十分であったり、という問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、レーザー加工性及びデスミア加工性が良好な部品内蔵型多層基板に好適な多層基板用導電性接着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]エポキシ樹脂100質量部に対してアクリル樹脂が75質量部~250質量部含有する樹脂組成物と、エポキシ樹脂100質量部に対して導電性フィラーが30質量部~50質量部含有した導電性接着シートであって、該導電性接着シートの80℃における動的弾性率が3.9×10
6
以上4.3×10
7
であり、
前記アクリル樹脂が、カルボン酸含有アクリル樹脂、カルボン酸含有アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、カルボン酸含有スチレン-ブタジエン-エチレン樹脂のいずれかを含有することを特徴とする多層基板用導電性接着シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザー加工性及びデスミア加工性が良好な部品内蔵型多層基板に好適な多層基板用導電性接着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態の多層基板用導電性接着シートについて説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明の多層基板用導電性接着シート(以下、導電性接着シートという)は、80℃における動的弾性率が4.5×107未満でなければならない。動的弾性率が4.5×107以上では、レーザー加工性が充分でなかったり、導電性接着シートの残渣を完全に除去できなかったり問題を有する。特に導電性接着シートの80℃における動的弾性率は、3×106以上4.5×107未満であることがレーザー加工性とデスミア加工性を良好にできるため好ましい。当該動的弾性率は、熱ラミネーターを用いて導電性接着シートを積層し厚さ200μmの樹脂積層体に加工したものを測定する。80℃における動的弾性率は、オリエンテック社製、レオバイブロン動的粘弾性測定器を用い、周波数11Hz、昇温3℃/min、温度-50~250℃の範囲で測定し、80℃における値を、導電性接着シートの80°における動的粘弾性率とする。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の導電性接着シートに使用する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマーを挙げることができる。
【0012】
熱硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂単独で硬化反応が十分に完了するものと、熱硬化性樹脂単独では硬化せずに適宜な硬化剤および反応促進剤を併用する必要があるものの両者を含むものである。このような熱硬化性樹脂としては、室温~200℃程度の加熱により架橋硬化されるものであり、アクリロニトリル単独重合体またはアクリロニトリル系共重合体等を挙げることができる。その他の熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ジイソシアナート化合物等が挙げられ、これらに限定されるものではない。本発明においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が、適宜な硬化剤を選択することで比較的温和な条件により硬化し、耐熱性の高い架橋構造を得ることができるため好適に用いる。また、該熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物に対して、5~20質量%が好適である。添加量が5質量%より少ない場合は熱安定性の向上効果が認められず、20質量%より添加量が多い場合では電気化学安定性が低下しやすい。
【0013】
熱硬化性樹脂として用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、線状脂肪族エポキシド類、脂環式エポキシド類、ヒダントイン型エポキシ類等が挙げられる。具体的には、グリシジルエーテル類としては、例えば、ビスフェノールのグリシジルエーテル類、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル類、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル類等が挙げられる。より具体的には、ビスフェノールのグリシジルエーテル類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等の二価フェノール類のグリシジルエーテルが挙げられ、フェノールノボラックのポリグリシジルエーテル類としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルが挙げられ、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル類としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類のグリシジルエーテルが挙げられる。また前記グリシジルエステル類としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステル、ダイマー酸のグリシジルエステル等が挙げられ、グリシジルアミン類としては、例えば、トリグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。更に、線状脂肪族エポキシド類としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられ、脂環式エポキシド類としては、例えば。3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、水素添加型ビスフェノールエポキシド等が挙げられる。ヒダントイン型エポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン等が挙げられる。これらの化合物は単なる例示であり、本発明においてはこれらに限定されるものではない。これらの化合物は単独で用いてもよく、また、2種以上を混合してもよい。エポキシ樹脂を加熱硬化させるためには、種々のエポキシ硬化剤を添加する必要がある。エポキシ硬化剤の例としては、フェノール樹脂、ジイソシアナート化合物、酸無水物化合物、ポリアミド樹脂、ジアミン化合物等が挙げられる。また、加熱硬化を促進するために反応促進剤を適宜に添加することができる。
【0014】
また、フェノール樹脂としては、フェノール、クレゾール、ナフトール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジフェノール、ビスフェノール等のフェノール性水酸基を有するフェノール類化合物とホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる合成樹脂で、この縮合反応の触媒として塩基を用いた場合に得られるメチロール基を有するレゾール型と、酸を用いた場合に選られるノボラック型とに大分される。本発明においては、レゾール型、ノボラック型のどちらのフェノール樹脂を用いることも可能であり、また、これらを併用することも問題ない。レゾール型を用いた場合、ノボラック型と比較して反応性に富むために硬化剤を用いなくともそれ単独で硬化させることが可能となるが、ノボラック型を硬化させるためにはヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を併用することが必要である。本発明においては、より温和な条件でも反応性が高いレゾール型フェノール樹脂が好適に用いられ、高い耐熱性を発現することができる。上記の如きレゾール型フェノール樹脂に於いて、本発明では特に、ビスフェノールAとホルムアルデヒドの反応により得られたメチロール基を2個以上有する化合物の混合物もしくはこれから分離された単独品が、良好な熱硬化性を有し、優れた耐熱性が得られることから好ましい。更に、反応促進剤等を少量配合し、熱硬化性を向上することも可能である。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂及びその変性物、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレートやポリエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン樹脂、アクリロニトリル-エチレンゴム-スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂などのスチレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリルニトリル、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6T-PA、9T-PA、MXD6-ナイロンなどのポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-アクリル酸樹脂、エチレン-エチルアクリレート樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂、ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、メチルペンテン樹脂、セルロース樹脂等、ならびにオレフィン系エラストマー、グリシジル変性オレフィン系エラストマー、マレイン酸変性オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0016】
エラストマーとしては、アクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、エチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-エチレン樹脂(SEBS)、ブタジエンゴム(BR)、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、これらの中でもアクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、最適にはアクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体である。アクリロニトリル-ブタジエン共重合体はアクリロニトリル含有量が10~50モル%が好ましく、さらに好ましくは20~40モル%である。10モル%未満では硬化物の耐薬品性が低く、50モル%を超えるとメチルエチルケトン、トルエン等の汎用溶剤への溶解性が低下するので好ましくない。また、これらのエラストマーは、硬化後の耐熱性向上のために、前記のエポキシ樹脂と反応可能な官能基を有することが望ましい。具体的な官能基としては、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基(無水物を含む)、シラノール基、水酸基、ビニル基、メチロール基、メルカプト基等が挙げられる。中でもアミノ基、カルボキシル基、水酸基は反応性に富むため好ましく、最適にはカルボキシル基、水酸基を有するエラストマーである。官能基の含有量は0.2~20モル%が好ましく、更に好ましくは0.5~15モル%、より好ましくは2~8モル%である。官能基量が0.2モル%未満であると反応性が低く、20モル%を超えると塗料の状態で安定性が悪くなる。
【0017】
本発明に係る樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂とエラストマーとの組み合わせ、又は前記熱可塑性樹脂とエラストマーとの組み合わせが好ましい。特に前記エラストマー及びエポキシ樹脂を必須成分として含有することが好ましい。
熱硬化性樹脂とエラストマーとを組み合わせる場合は、熱硬化性樹脂100質量部に対してエラストマーが25~200質量部が好ましい。エラストマーが25質量部未満であるとシート化する際の製膜性が悪くなるおそれがある。また、エラストマーが200質量部を超えると耐熱性が悪くなるおそれがある。さらに、熱可塑性樹脂とエラストマーとを組み合わせる場合は、熱可塑性樹脂100質量部に対してエラストマー200質量部未満が好ましい。
【0018】
[導電性フィラー]
本発明の導電性接着シートに含有させる導電性フィラーとしては、銀粉粒子、銅粉粒子、鉄粉粒子などの導電性フィラーを挙げることができる。また、該導電性フィラーを芯材としてこれらの表面の一部又は全部を異種導電性材料、例えば金、銀、銅、ニッケル、スズなどで被覆してなる粒子(以下、これらを導電性被覆フィラーという)などを挙げることができる。上記金属性の導電性フィラーは、導電性接着シート中に10質量%以上60質量%未満であることが好ましく、20質量%以上50質量%未満が特に好ましい。
【0019】
特に導電性フィラー又は導電性被覆フィラーの形状がデンドライト状のものが好ましい。デンドライト状導電性フィラーとは、光学顕微鏡若しくは電子顕微鏡(500~20,000倍)で観察した際に、棒状部分を主軸とし、該主軸から直交方向又は斜め方向に複数の枝が分岐して、二次元的或いは三次元的に成長した形状を呈する粒子を意味する。幅広の葉が集まって松ぼっくり状を呈するものや、主軸を有さず多数の針状部が放射状に伸長してなる形状のものは、本発明においてはデンドライト状導電性フィラーには含まれない。
【0020】
デンドライト状導電性フィラーは、平均粒径が3~50μmが好ましい。平均粒子径が3μm未満では、導電性接着シートにおける縦方向における十分な導通を得ることができにくく、50μmより大きい場合では導電性接着シートの表面にデンドライト状導電性フィラーの一部が突出するため、被接着体への導電性接着シートの密着性が悪くなりやすい。
上記デンドライト状導電性フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を使用することで測定できる。
【0021】
デンドライト状導電性フィラーは、銅粉粒子の表面に銀が被覆している銀コート銅粉が導電性が優れているため好ましく、該銀コート銅粉における銀コート量は1~20%であることが好ましい。また、デンドライト状導電性フィラーは、タップ密度が0.5~2であることが導電性が優れているため好ましい。
上記デンドライト状導電性フィラーの銀コート量は、導電性粒子を硝酸で溶解し、原子吸光分析装置を使用することで測定できる。また、タップ密度はISO3953に準拠することで測定できる。
【0022】
また、導電性フィラーは薄片状導電性フィラーでもよい。薄片状導電性フィラーに用いられる導電性粒子は、銀粉粒子、銅粉粒子、鉄粉粒子などの導電性粒子を挙げることができる。また、該導電性粒子を芯材としてこれらの表面の一部又は全部を異種導電性材料、例えば金、銀、銅、ニッケル、スズなどで被覆してなる粒子を挙げることができる。
【0023】
薄片状導電性フィラーとは、前記の導電性粒子又は導電性被覆粒子であって、形状が薄片状を有するものである。
薄片状導電性フィラーとは、扁平状主面を有する導電性粒子をいう。ここで扁平状主面とは、薄片状導電性フィラーの長軸方向と幅方向とがなす面であって、側面(端面)に比べて大きな表面積を有する面をいう。前記扁平状主面の形状は特に限定されず、矩形などの多角形状、円状、楕円状などが挙げられ、緩やかな曲面や微細な凹凸面などがあってもよい。
【0024】
薄片状導電性フィラーは、平均粒径が11~50μmであることが好ましい。平均粒子径が11μm未満では、導電性接着シートにおける縦方向における十分な導通を得ることができにくく、50μmより大きい場合では導電性接着シートの表面が被接着体への密着性が高いために一旦貼着すると貼り直しができにくく作業性が悪くなりやすい。
上記薄片状導電性フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を使用することで測定できる。
【0025】
薄片状導電性フィラーは、銅粉粒子の表面に銀が被覆している銀コート銅粉が導電性が優れているため好ましく、該銀コート銅粉における銀コート量は1~20%であることが好ましい。また、薄片状導電性フィラーは、タップ密度が0.5~2であることが導電性が優れているため好ましい。
上記薄片状導電性フィラーの銀コート量は、導電性粒子を硝酸で溶解し、原子吸光分析装置を使用することで測定できる。
【0026】
導電性接着シートにおいて、前記デンドライト状導電性フィラーと薄片状導電性フィラーとを混合して使用する場合は、割合が質量比で80:20~20:80の範囲内であることが好ましい。デンドライト状導電性フィラーが80より多い場合は、導電性接着シートの表面にデンドライト状導電性フィラーの一部が突出するため、被接着体への導電性接着シートの密着性が悪くなりやすい。一方、薄片状導電性フィラーが80より多い場合は、導電性接着シートの表面が被接着体への密着性が高いために一旦貼着すると貼り直しができにくく作業性が悪くなりやすい。
【0027】
また、導電性接着シートにおけるデンドライト状導電性フィラーと薄片状導電性フィラーとの含有量は、導電性接着シートの全体積(乾燥体積)を基準として、10~35体積%であることが好ましく、更に好ましくは、15~30体積%である。含有量が10体積%未満であると導電性が低下するおそれがあり、35体積%を越えると密着性が低下するおそれがあり、また、経済性が低下する。
【0028】
また、導電性フィラーとしては、カーボンフィラー、カーボン繊維、黒鉛およびこれらの混合物が挙げられる。カーボンフィラーの例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンなどが挙げられる。また、カーボン繊維としては、パン系カーボン繊維、ピッチ系カーボン繊維などが挙げられる。黒鉛の例としては、塊状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛、人造黒鉛などがある。これら材料は高い導電性と高い耐腐食性を有しており好ましく使用される。上記カーボンフィラー、カーボン繊維、黒鉛およびこれらの混合物からなる導電性フィラーは、導電性接着シート中に10質量%以上60質量%未満であることが好ましく、20質量%以上50質量%未満が特に好ましい。
【0029】
[その他成分]
本発明の導電性接着シートには、その他の成分として、硬化剤等を含有させてもよい。
硬化剤としては、イソシアネート型硬化剤、アミン系硬化剤、アジリジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物、ノボラックフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。これらの硬化剤を用いることにより、接着強度及び硬化後の耐熱性がより向上する効果を有する。イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビス(2-クロロアニリン)、メチレンビス(2-メチル-6-メチルアニリン)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-ブチルベンジルフタル酸等が挙げられる。アジリジン系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト等が挙げられる。酸無水物では、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。ノボラックフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒下で縮合反応することによって得ることができる。例えば、フェノール類としては、アルキルフェノール、パラフェニルフェノール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール等が挙げられる。
【0030】
好適にはイミダゾール系硬化剤、ノボラックフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。
また、これら硬化剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。
【0031】
[導電性接着シートの製造方法]
本発明の導電性接着シートは、上記のような原料と溶剤を攪拌混合することにより製造できる。導電性接着シートの調製には、導電性フィラーを均一に分散するため、溶剤を加えることが好ましい。
本発明の導電性接着シートは、上記のような原料と溶剤を攪拌混合し接着剤溶液を得た後、離型フィルムに塗工・乾燥することで形成することができる。
【0032】
前記溶剤は、比較的低沸点の、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソプチルケトン、2-エトキシエタノール、トルエン、ブチルセルソルブ、メタノール、エタノール、2-メトキシエタノール等が好ましい。また、塗工時の乾燥速度を調整するために高沸点溶剤を加えてもよい。高沸点溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0033】
攪拌混合には、例えば、スキャンデックス、ペイントコンディショナー、サンドミル、らいかい機、三本ロール及びビーズミル等により、またこれらを組み合わせて行うことができる。更に攪拌混合後に混合物から気泡を除去するために真空脱泡することが好ましい。
【0034】
導電性接着シートの厚さは、適宜に決定しうるが、接着特性や導電性等の観点より、通常1~200μm、好ましくは5~100μmとするのが好ましい。
【0035】
本発明に係る導電性接着シートの硬化物の接続抵抗値は、0.1Ω以下であることが好ましい。
【0036】
離型フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等や、それらに離型処理等を施したフィルム等を使用することができる。特に離型フィルムとしては、良好なビアホールへの埋め込み性を得るためにポリエチレンテレフタレートフィルム又は2軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:JER YL980、エポキシ当量180g/eq)100質量部、カルボン酸含有アクリル樹脂100質量部、グラファイト粉(体積平均粒子径:3.5μm、鱗片状導電性フィラー)30質量部、イミダゾール系硬化剤0.1質量部、トルエン100質量部を、均一に攪拌混合することで、接着剤溶液を調製した。
次に、片面にシリコーン系離型剤が塗布された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型フィルムに、上記の接着剤溶液を塗布し、130℃で3分間乾燥して、膜厚60±10μmの本発明の導電性接着シートを作製した。
【0039】
[実施例2]
実施例1において、エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:JER 1001、エポキシ当量450g/eq)100質量部に代えた以外は実施例1と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0040】
[実施例3]
実施例2において、カルボン酸含有アクリル樹脂の含有量を75質量部に代えた以外は実施例2と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0041】
[実施例4]
実施例2において、カルボン酸含有アクリル樹脂の含有量を150質量部に代えた以外は実施例2と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0042】
[実施例5]
実施例2において、カルボン酸含有アクリル樹脂の含有量を250質量部に代えた以外は実施例2と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0043】
[実施例6]
実施例2において、カルボン酸含有アクリル樹脂を、カルボン酸含有アクリロニトリル-ブタジエン樹脂100質量部に代えた以外は実施例2と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0044】
[実施例7]
実施例2において、カルボン酸含有アクリル樹脂を、カルボン酸含有スチレン-ブタジエン-エチレン樹脂100質量部に代えた以外は実施例2と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0045】
[実施例8]
実施例2において、グラファイト粉の含有量を50質量部に代えた以外は実施例2と同様にして本発明の導電性接着シートを作製した。
【0046】
[比較例1]
実施例1において、カルボン酸含有アクリル樹脂の含有量を50質量部に代えた以外は実施例1と同様にして比較用の導電性接着シートを作製した。
【0047】
[比較例2]
実施例1において、カルボン酸含有アクリル樹脂を、カルボン酸含有アクリロニトリル-ブタジエン樹脂50質量部に代えた以外は実施例1と同様にして比較用の導電性接着シートを作製した。
【0048】
[比較例3]
実施例2において、グラファイト粉の含有量を60質量部に代えた以外は実施例2と同様にして比較用の導電性接着シートを作製した。
【0049】
前記実施例1~8および比較例1~3における導電性接着シートの組成と、動的弾性率を次のように測定しその結果を表1に示した。
<動的弾性率の測定>
前記実施例及び比較例で得られた導電性接着シートについて、各実施例及び比較例ごとに熱ラミネーターを用いて積層し、厚さ200μmの樹脂積層体を作成した。次に、160℃で1時間の条件で熱循環型オーブンで加熱したのち、樹脂積層体を幅4cm、長さ2cmに切り出し、粘弾性率測定用サンプルとした。
次に上記サンプルの動的弾性率を、オリエンテック社製、レオバイブロン動的粘弾性測定器を用い、周波数11Hz、昇温3℃/min、温度-50~250℃の範囲で測定した。当該温度-50~250℃の範囲で測定した値における80℃の値を、導電性接着シートの80°における動的粘弾性率とした。
【0050】
次に前記で得た実施例及び比較例の導電性接着シートを次のように評価した。
<レーザー加工性>
導電性接着シートにおける離型フィルムとは反対面を、熱ラミネーターを用いて銅箔に貼り合わせた。
次に、160℃で1時間の条件で熱循環型オーブンで加熱したのち、離型フィルムを剥離し、マスク径1.0mm、エネルギー10mJの炭酸ガスレーザーにて、レーザー加工を行った。その後、走査型電子顕微鏡でレーザー孔の観察を行い、レーザー加工性の評価を行った。
レーザー孔に導電性接着シート由来の残渣が残らないものを○、残渣が残ったものを×とした。
【0051】
<デスミア加工性>
導電性接着シートにおける離型フィルムとは反対面を、熱ラミネーターを用いて銅箔に貼り合わせた。
次に、160℃で1時間の条件で熱循環型オーブンで加熱したのち、離型フィルムを剥離し、デスミア評価用サンプルを得た。
前記デスミア評価用サンプルを、80℃のジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、水酸化ナトリウム、蒸留水からなる膨潤液に10分間浸漬した後、水洗し、80℃の過マンガン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、蒸留水からなるエッチング液に10分間浸漬し、水洗した。
その後、40℃のグリオキサール、コハク酸、硫酸、蒸留水からなる中和液に5分間浸漬し、水洗した。
上記デスミア処理前後で膜厚を測定し、デスミア処理後の膜厚が減少していれば○、減少していなければ×とした。
【0052】
【0053】
表1の評価結果から明らかなように、実施例1~7の導電性接着シートは、いずれも、レーザー加工後のレーザー孔に導電性接着シート由来の残渣が残らないことが確認された。また、実施例1~7の導電性接着シートは、いずれも、デスミア処理後の膜厚が減少しデスミア加工性に問題がないことが確認された。
一方、比較例1~3の導電性接着シートは、レーザー加工後のレーザー孔に導電性接着シート由来の残渣が残っておりレーザー加工性に問題を有することが確認された。また、比較例3の導電性接着シートは、デスミア処理後の膜厚が減少しておらずデスミア加工性に問題を有することが確認された。