(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】回路基板に電子部品をはんだ付けするための方法及び装置、コンピュータプログラム製品、並びにコンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H05K3/34 505F
H05K3/34 507E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074872
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501198796
【氏名又は名称】パック テック-パッケージング テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フェトケ, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】コルバソウ, アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ, ニコ
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0032099(KR,A)
【文献】特開2007-258209(JP,A)
【文献】特開2005-046895(JP,A)
【文献】実開昭62-169769(JP,U)
【文献】実開昭62-165071(JP,U)
【文献】特開2018-176247(JP,A)
【文献】特開2020-093296(JP,A)
【文献】特開2020-040089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホール(3)を備える回路基板(2)に、前記スルーホール(3)に挿入されるピン(4)を備える電子部品(1)をはんだ付けするための方法において、
液体化はんだボール(5)を、前記ピン(4)と前記スルーホール(3)との間の環状ギャップに前記液体化はんだボール(5)の一部が流れ込んで充填されるように、前記回路基板(2)上に付着させ
、
前記液体化はんだボール(5)を作るために、前記液体化はんだボール(5)の付着前に固形はんだボールにエネルギーが印加され、
前記エネルギーが、レーザビーム(7)であり、
前記エネルギーを印加しながら前記液体化はんだボール(5)の温度を測定し、
前記液体化はんだボール(5)の前記温度が所定の上限温度閾値を超えたときにエネルギーの印加を停止し、
前記液体化はんだボール(5)の温度が所定の下限温度閾値を下回ったときにエネルギーの印加を開始することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記液体化はんだボール(5)の前記一部が前記環状ギャップに充填された後に、付着前の前記液体化はんだボール(5)の所定の総体積に基づいて、前記スルーホール(3)外側の固化したはんだ(8a)の体積を測定することによって、前記環状ギャップの充填度が決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体化はんだボール(5)を、前記回路基板(2)の前記電子部品(1)が配置されている側とは反対の側から、前記回路基板(2)上に付着させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記液体化はんだボール(5)を、前記回路基板(2)上に下方向に付着させることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液体化はんだボール(5)を、前記回路基板(2)上に傾斜角度(α)で付着さ
せることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体化はんだボール(5)の付着方向が、前記スルーホール(3)に向けら
れることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記回路基板(2)上への前記液体化はんだボールの付着中
、前記液体化はんだボールを液体化したままにするために前記レーザビーム(7)を前記液体化はんだボール(5)に照射することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体化はんだボール(5)が前記回路基板(2)上へ達した後、前記液体化はんだを液体化したままにするために前記レーザビーム(7)を前記液体化はんだに照射することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
固形はんだボールの直径が0.8mm~2.0mmの範囲に
あることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記液体化はんだボール(5)の付着前に、前記回路基板(2)を60℃~90℃の範囲の温度に加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
スルーホール(3)を備える回路基板(2)に、前記スルーホール(3)に挿入されるピン(4)を備える電子部品(1)をはんだ付けするための方法において、
液体化はんだボール(5)を、前記ピン(4)と前記スルーホール(3)との間の環状ギャップに前記液体化はんだボール(5)の一部が流れ込んで充填されるように、前記回路基板(2)上に付着させ
、
前記液体化はんだボール(5)の前記一部が前記環状ギャップに充填された後に、付着前の前記液体化はんだボール(5)の所定の総体積に基づいて、前記スルーホール(3)外側の固化したはんだ(8a)の体積を測定することによって、前記環状ギャップの充填度が決定されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
スルーホール(3)を備える回路基板(2)に、前記スルーホール(3)に挿入されるピン(4)を備える電子部品(1)をはんだ付けするための方法において、
液体化はんだボール(5)を、前記ピン(4)と前記スルーホール(3)との間の環状ギャップに前記液体化はんだボール(5)の一部が流れ込んで充填されるように、前記回路基板(2)上に付着させ
、
前記液体化はんだボール(5)を作るために、前記液体化はんだボール(5)の付着前に固形はんだボールにエネルギーが印加され、
前記エネルギーが、レーザビーム(7)であり、
前記液体化はんだボール(5)の付着前に、前記ピン(4)を、前記レーザビーム(7)の波長とは異なる、前記ピン(4)の吸収特性に適合した波長を含むピン加熱用レーザビーム(15)によって、加熱することを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1、11及び12の何れか一項に記載の方法を実行するための命令を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラム製品を記憶することを特徴とする、コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
スルーホール(3)を備える回路基板(2)に、前記スルーホール(3)に挿入されるピン(4)を備える電子部品(1)をはんだ付けするための装置において、
前記ピン(4)と前記スルーホール(3)との間の環状ギャップに液体化はんだボール(5)の一部が流れ込んで充填されるように、前記回路基板(2)上に前記液体化はんだボール(5)を付着さ
せるはんだボール付着デバイスと、
前記液体化はんだボールを作るために固形はんだボールにエネルギーを印加するためのエネルギー印加ユニットと、を備え、前記エネルギー印加ユニットはレーザビーム(7)のレーザ源であり、
前記装置は、
前記液体化はんだボール(5)の温度を測定する温度測定ユニット(9)と、
前記温度測定ユニット(9)から前記温度を受信し、前記液体化はんだボール(5)の前記温度が所定の上限温度閾値を超えたときに前記エネルギーの印加を停止し、前記液体化はんだボール(5)の温度が所定の下限温度閾値を下回ったときに前記エネルギーの印加を開始する制御ユニットと、
を更に備えることを特徴とする、装置。
【請求項16】
スルーホール(3)を備える回路基板(2)に、前記スルーホール(3)に挿入されるピン(4)を備える電子部品(1)をはんだ付けするための装置において、
前記ピン(4)と前記スルーホール(3)との間の環状ギャップに液体化はんだボール(5)の一部が流れ込んで充填されるように、前記回路基板(2)上に前記液体化はんだボール(5)を付着さ
せるはんだボール付着デバイスを備え、
前記装置は、付着前の前記液体化はんだボール(5)の所定の総体積に基づいて前記環状ギャップの充填度を決定するために、前記スルーホール(3)外側の固化したはんだ(8a)の体積を測定するための体積測定ユニット(12)を更に備えることを特徴とする、装置。
【請求項17】
スルーホール(3)を備える回路基板(2)に、前記スルーホール(3)に挿入されるピン(4)を備える電子部品(1)をはんだ付けするための装置において、
前記ピン(4)と前記スルーホール(3)との間の環状ギャップに液体化はんだボール(5)の一部が流れ込んで充填されるように、前記回路基板(2)上に前記液体化はんだボール(5)を付着さ
せるはんだボール付着デバイスと、
液体化はんだボールを作るために固形はんだボールにエネルギーを印加するためのエネルギー印加ユニットと、を備え、前記エネルギー印加ユニットはレーザビーム(7)のレーザ源であり、
前記装置は、前記ピンを加熱するためのピン加熱ユニットを更に備え、前記ピン加熱ユニットは、前記レーザビーム(7)の波長とは異なる、前記ピン(4)の吸収特性に適合した波長を含むピン加熱用レーザビーム(15)のレーザ源であることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スルーホールを備える回路基板に、スルーホールに挿入されるピンを備える電子部品をはんだ付けするための方法及び装置に関する。本開示はさらに、コンピュータプログラム製品及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装技術(SMT)により、プリント回路基板(PCB)などの回路基板の表面上に電子部品を直接実装することができる。このように実装された電子部品を表面実装部品(SMD)と呼ぶ。SMTは、製造の自動化を促進し、コストを削減し、はんだ付けの品質を向上させるので、回路基板のスルーホールに挿入実装部品(THD)のピンを挿入するスルーホール実装技術(THT)に大きく取って代わった。
【0003】
しかしながら、SMTに適さない電子部品には依然としてTHTが必要とされる。これは、高い機械的強度又はヒートシンクが要求される場合である。代表的な電子部品は、大型変圧器、ヒートシンク(例えば、パワートランジスタ、レーザ、及び発光ダイオード(LED))を含むパワー半導体、又はコネクタである。THDと回路基板との十分に強固な接続を保証するために、スルーホールとスルーホールに挿入されたピンとの間に形成される環状ギャップの少なくとも70%をはんだで充填する必要がある。以下では、環状ギャップの容積の70%を超える充填度のことを高充填度とも称する。
【0004】
その結果、回路基板は、THTだけでなくSMTも用いて実装されることが多い。以下、この種の回路基板を混合実装型の回路基板と呼ぶ。
【0005】
混合実装型の回路基板を作製するために、国際公開第03/079743号は、弱熱性のハウジングを備えるTHDを回路基板にはんだ付けするためのいわゆる裏面リフロー法を使用することを教示している。特に、この方法では、回路基板の第1側にSMD及びTHDを予備組付けし、回路基板の第1側が回路基板の第2側の下になるように回路基板を回転させ、及び回路基板の第2側にSMDのみを予備組付けすることによって、混合実装型の回路基板が作製される。SMDは、回路基板上のはんだペーストが配置されたそれぞれの位置にSMDの接点を配置することによって、回路基板上に予備組付けされる。SMDは、接着剤によって回路基板上に固定されてもよい。THDは、はんだペーストが配置された接触領域において、第2側からピンが突出するように、第1側のスルーホールにTHDのピンを挿入することによって、予備組付けされる。回路基板を回転するときにTHDが脱落するのを回避するために、接着技術によって、又はTHDのピンを保持するためにスルーホールにカラー部を備えるソフトロック技術によって、回路基板にTHDを固定してもよい。その後、回路基板はリフロー炉に挿入され、THDが取り付けられた回路基板の第1側が、はんだ付けをする熱又はエネルギーから少なくとも部分的に遮蔽されるように、加熱される。
【0006】
上記方法をさらに発展させたものが、独国特許出願公開第102008035405号明細書に開示されている。この方法では、回路基板は、SMDが両側に予備組付けされ、少なくとも1つのTHDも第1側に予備組付けされる。接着剤又はソフトロック固定具の代わりに、第2側にSMDを実装するために回路基板が回転される前に、THDの少なくとも1つのピンを回路基板に選択的にはんだ付けすることによって、少なくとも1つのTHDが回路基板の第1側に固定される。その後、SMD及びTHDを回路基板にはんだ付けするために、回路基板がリフロー炉に挿入される。
【0007】
独国特許出願公開第102005043279号明細書に、混合実装型の回路基板を製造するための別の方法が開示されている。この方法では、回路基板にSMDのみが実装され、回路基板にSMDをはんだ付けするためにリフロー炉に入れられる。その後、少なくとも1つのTHDが回路基板に選択的にはんだ付けされる。
【0008】
回路基板にTHDのピンを選択的にはんだ付けするために、はんだポットが直交座標系の3つの直交する方向、すなわちX、Y、及びZ方向に駆動されて、スルーホールから突出する各ピンに接触する。また、酸化を抑制し、適切なはんだ付けを可能にするために、ピンにフラックスを塗布する必要がある。しかしながら、はんだポットをピン対して個別に前進及び後退させるためのZ方向の移動のため、回路基板へのTHDのはんだ付けは、リフロー炉を使用するはんだ法と比較して、さらに長い時間を要する。したがって、欧州特許出願公開第3153270号明細書は、はんだ付け速度を上げるために、3つの直交方向にそれぞれ独立駆動される少なくとも2つのはんだポットを使用することを提案している。しかしながら、はんだポットを用いて回路基板にTHDのピンを選択的にはんだ付けする場合、ピンに付着されるはんだの量を正確に調整できないという欠点が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本開示の目的は、従来技術の欠点を克服し、スルーホールを備える回路基板に、スルーホールに挿入されるピンを備える電子部品をはんだ付けするための高度な方法及び装置を提供することである。また、本開示による方法及び装置は、混合実装型の回路基板の製造にも使用可能のはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項1に記載の方法及び独立請求項17に記載の装置によって達成される。この目的は、さらに請求項15に記載のコンピュータプログラム製品及び請求項16に記載のコンピュータ可読媒体によって達成される。好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【0011】
本開示による方法は、ピンとスルーホールとの間の環状ギャップに液体化はんだボールの一部が流れ込んで充填されるように、電子部品のピンが挿入されるスルーホールを備える回路基板上に液体化はんだボールを付着、特に吹き付けることによって、この目的を達成する。その結果、本方法は、弱熱性の電子部品に使用することも可能である。また、はんだポットをピンに対して前進させたり後退させたりする必要がなくなるので、スルーホールを有する回路基板に、スルーホールに挿入されるピンを有する電子部品をはんだ付けするのに要する時間を短縮できる。また、液体化はんだボールを付着させることにより、スルーホールに付着されるはんだの量を適切に調整することができる。ピンとスルーホールとの適切な接合を保証するために、液体化はんだボールの一部が環状ギャップの容積の少なくとも70%に充填されるということに留意されたい。また、はんだボールの体積は、環状ギャップの体積よりも大きいことが好ましく、液体化はんだが環状ギャップに流れ込んだ後、スルーホールの外側にもはんだが存在するということにも留意すべきである。液体化はんだが環状ギャップに充填された後、液体化はんだボールが固化して、ピンとスルーホールとの間に恒久的な導電性の接合部が形成される。上述したように、液体化はんだボールは回路基板上に特に吹き付けられる。液体化はんだボールを付着、特に吹き付けるための方法及び装置が国際公開第0228588号明細書に開示されている。その内容は、参照により本明細書に含まれる。
【0012】
本開示の一態様によれば、スルーホールの直径とスルーホールの深さとの比率は0.5~3の範囲にすることができる。この比率は1にできることが好ましい。また、スルーホールの直径はピンの直径の1.5倍~3倍にすることができる。スルーホールの直径はピンの直径の2倍にできることが好ましい。また、回路基板の表面からのピンの高さは、0又はスルーホール径aの0.5倍以下にすることができる。さらに、スルーホール外側のはんだの根元の直径は、スルーホールの直径の1.5倍~2倍とすることができる。はんだ付け後のスルーホールの充填度は、ピンとスルーホールとの間に形成される環状ギャップの容積の0.7倍以上にできることが最も好ましい。上記パラメータでのピンとスルーホールとの間のはんだ接合により、及びピンと回路基板上のリードに接続できるスルーホールの接触領域との間の適切な機械的強度及び良好な電気的接続が可能となる。
【0013】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに充填されてはんだが固化した後、付着前の液体化はんだボールの所定の総体積に基づいてスルーホール外側の固化はんだの体積を測定することによって、環状ギャップの充填度を決定することができる。スルーホール外側の固化はんだの体積は、3次元画像処理を用いて測定されることが好ましい。一例として、スルーホール外側のはんだの体積を決定するために、3Dスキャナ、白色光干渉計、又はライトフィールドカメラが使用されてもよい。付着前のはんだボールの既知体積から、スルーホールの外側の固化はんだの測定体積を減算することにより、環状ギャップに流れ込んだはんだの体積を決定することができる。スルーホール外側のはんだの体積を決定するために、3次元画像処理を用いて決定された体積から、回路基板の上のピンの体積を減算する必要があるということに留意されたい。また、ピンの体積とスルーホールの容積及びこれらの寸法が事前に分かるので、スルーホールの容積からスルーホール内のピンの体積を減算することによって環状ギャップの容積も決定することができる。その結果、環状ギャップに流れ込んだはんだの体積を環状ギャップの容積で除算することで、環状ギャップの充填度を決定することができる。その結果、この方法により、はんだ接合部の品質の現場確認を行うことが可能となる。その結果、ピンとスルーホールとの間の導電性接合部の品質チェックの時間を短縮できる。これに対し、従来はX線や断面検査を用いて充填度を決定すていた。リフローはんだ付け又ははんだポットなどの噴流式はんだ付けを用いる場合は、X線及び断面検査が環状ギャップの充填度を決定するための唯一の方法である。結果として、本開示による方法により、時間節約型でコスト効率が低い品質チェックがもたらされ、それによって、全体的な生産品質が改善されるように、さらに多くの実装回路基板をチェックすることが可能となる。
【0014】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールが、回路基板の電子部品が配置されている側とは反対の側から、回路基板上に付着される。その結果、はんだ付けの対象となる箇所、すなわち環状ギャップ、に液体化はんだボールを容易に付着できる。
【0015】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールが回路基板上に下方向に付着され得る。下方向は重力方向と定義されるということに留意されたい。その結果、例えばはんだポットを用いて上方向に液体化はんだボールを付着する場合と比較して、さらに環状ギャップに高度に充填しやすくなるように、環状ギャップに流れ込む一部の液体化はんだボールが重力によって支援される。
【0016】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールが回路基板上に傾斜角度で付着され得る。これは、液体化はんだボールの付着方向が、回路基板、すなわち回路基板の表面、に対して傾斜していることを意味する。傾斜角度は、回路基板に対して30°~60°の範囲であることが好ましい。傾斜角度は、回路基板に対してほぼ45°であることが好ましい。これにより、環状ギャップが適切に充填されるように、液体化はんだボールをスルーホールに容易に付着できる。また、ピンの長さがはんだ波の高さやはんだポットの深さによって制限されないため、ピンの長さを独自に選択できる。はんだポットを使用するのとは対照的に、はんだ材料を節約できるように、ピンの先端にはんだを付着する必要はない。特に、液体化はんだボールは、先端を有するピンが使用されるときに傾斜角度で付着され得る。このようにして、先端からのレーザビームの反射を回避できる。また、先端のあるピンを使用する際に、液体化はんだボールを傾斜角度で付着することで、液体化はんだボールの飛散を回避できる。
【0017】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールの付着方向をスルーホールに向けることが可能である。ピンがスルーホールから出る箇所に付着方向を向けることが好ましい。その結果、環状ギャップの高充填度を達成できるように適切に液体化はんだボールを付着できる。
【0018】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールを作るために、液体化はんだボールの付着前に固形はんだボールにエネルギーが印加され得る。その結果、回路基板、すなわち環状ギャップに付着されるはんだの体積が予め分かり、環状ギャップの体積に対して適切な体積の固形はんだボールを選択することによって、環状ギャップの高充填度を達成できる。
【0019】
本開示の一態様によれば、エネルギーはレーザビームであり得る。レーザビームが、200 W NIR~400 W NIRの範囲の出力を提供するようになっている近赤外レーザビームであることが好ましい。レーザビームが20ms~4000msの範囲の時間にわたって照射されることが好ましい。その結果、適切な接合を達成するために液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込んで充填されるように、液体化はんだボールが十分に液体化されることが確保される。
【0020】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールが回路基板に向けて付着、特に吹き付けられるときにレーザビームを照射できる。より具体的には、はんだボールが回路基板に向かって飛行しているときに、レーザビームが液体化はんだボールに照射される。これにより、はんだボールの液体化を保証できる。
【0021】
本開示の一態様によれば、レーザビームは恒久的又は断続的に固形はんだボール又は液体化はんだボールに照射できる。これにより、はんだボールの液体化を保証できる。
【0022】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールを液体化したままにするために、レーザビームは、液体化はんだボールが回路基板上、すなわち回路基板の表面上、に到達したときに、液体化はんだボールに照射できる。到着時間は、液体化はんだボールが付着される付着速度及び距離から事前に計算することもできるし、画像処理又は実験によって決定することもできる。これにより、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込んで充填されることを保証できる。
【0023】
本開示の一態様によれば、エネルギーを印加しながらはんだボールの温度を測定することが可能である。固形又は液体化はんだボールの温度が所定の閾値を超えたときに、エネルギーの印加、すなわちレーザビームの照射が停止可能であることが好ましい。液体化はんだボールの温度が所定の下限温度閾値を下回ったときに、エネルギーの印加、すなわちレーザビームの照射が開始可能又は再開可能であることが好ましい。結果として、はんだの焼き付きやはんだの固化を回避できる。したがって、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込んで充填され、ピンとスルーホールとの適切な接合を達成できることが保証される。
【0024】
本開示の一態様によれば、固形はんだボールの直径は0.8mm~2.0mmの範囲とすることができる。はんだボールの直径は、スルーホールの直径の0.8~1.4の範囲であることが好ましい。その結果、環状ギャップの高充填度を実現できる。
【0025】
本開示の任意の態様によれば、液体化はんだボールを付着する前に、フラックスをスルーホールに付着できる。上述したように、フラックスの塗付は明示的に必要とされるものではないが、はんだ、ピン、及びスルーホールの酸化に関してプラスの効果をもたらし得る。したがって、ピンとスルーホールとの適切な接合を達成できる。
【0026】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールを付着させる前にフラックスを活性化できる。特に、フラックスは60℃~130℃の温度に加熱することによって活性化できる。フラックスはエネルギーを印加することによって活性化できることが好ましく、印加されるエネルギーがレーザビームであることがさらに好ましい。その結果、ピンとスルーホールに良い影響を及ぼすことができる。
【0027】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールの付着前に回路基板を60℃~90℃の範囲の温度に加熱できる。その結果、液体化はんだボールは回路基板の表面に到達した後に強く冷えることがなく、液体化はんだボールは環状ギャップに適切に流れ込んで充填されるように十分に液体化した状態に維持される。したがって、環状ギャップの高充填度を達成できる。
【0028】
本開示の一態様によれば、液体化はんだボールを付着させる前にピンを加熱できる。レーザビームをピンに向けることによってピンを加熱できることが好ましい。ピンの吸収特性すなわちピンの材質に適合する波長を有する光を備えるピン加熱用レーザビームがピンに向けられることがさらに好まししい。具体的には、ピン加熱用レーザビームは青色レーザビームである。例えば、ピン加熱用レーザビームの光は、450nm~475nmの範囲、特に450nm、の波長を有し得る。このように、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込んで充填されるように、液体化はんだボールがピンに到達したときの液体化はんだボールの固化を遅らせることができる。その結果、環状ギャップの高充填度、ひいてはピンとスルーホールとの適切な接合を達成できる。
【0029】
本開示の追加の態様によれば、加熱中にピンの温度を測定してもよい。ピンの温度が所定の閾値温度を超える場合には、ピンの加熱が停止される。このようにして、ピン又はピンに接続された電子部品の過熱が回避される。
【0030】
所定の本開示のさらに別の態様によれば、ピンを加熱する時間を事前に決めてもよい。例えば、実験を行うことによって、この時間を事前に決めてもよい。このようにして、ピン又はピンに接続された電子部品の過熱を回避できる。
【0031】
本開示の一態様によれば、不活性ガスを受動的又は能動的にスルーホールに与えることができる。不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム又はギ酸ガスとすることもできる。その結果、はんだの酸化が抑制され、スルーホールへのピンのはんだ付けに良い影響を及ぼす。
【0032】
本開示の一態様によれば、電子部品と回路基板との間にガス排気流路が形成されるように、電子部品と回路基板とを互いに離間することができる。これは、電子部品と回路基板とを離間して保持することによって達成されてもよいし、電子部品と回路基板との間にスペーサを配置することによって達成されてもよい。その結果、環状ギャップ内にあるガス、例えば不活性ガス又は空気は、回路基板上に液体化はんだボールが付着される側と反対の側にあるスルーホール開口部から排出され得る。したがって、高充填度を達成するために、液体化はんだボールの一部が環状ギャップにさらに流れ込んで充填されやすくなり得る。
【0033】
本開示によるコンピュータプログラム製品は、本開示による方法を実行するための命令を含む。結果として、この命令により、コンピュータ又は制御ユニットが本開示による方法を実行する。
【0034】
本開示によるコンピュータ可読媒体は、本開示によるコンピュータプログラム製品を記憶する。結果として、コンピュータのCPU又は制御ユニットは、本開示による方法の各ステップを実行するために、コンピュータ可読媒体から命令を読み取ることができる。
【0035】
スルーホールを備える回路基板に、スルーホールに挿入されるピンを備える電子部品をはんだ付けするための装置は、ピンとスルーホールとの間の環状ギャップに液体化はんだボールの一部が流れ込んで充填されるように、回路基板上に液体化はんだボールを付着、特に吹き付けるはんだボール付着デバイスを備える。はんだボールを付着、特に吹き付けるための装置が、国際公開第0228588号明細書に開示されている。その内容は、参照により本明細書に含まれる。特に、はんだボール付着デバイスは、回路基板、すなわち環状ギャップ、に対して移動可能なキャピラリ(細管)と、液体化はんだボールを回路基板上に付着、特に吹き付けるためにキャピラリ内に圧力ガスを供給するための圧力ガス源とを備える。上述のはんだボール付着デバイスを使用することにより、キャピラリをピン及びスルーホールに対して前進させたり後退させたりする必要がないので、はんだ付けプロセスの速度を向上させることができる。
【0036】
本開示の一態様によれば、この装置は、はんだボール付着デバイスを制御するための制御ユニット及び駆動するための駆動ユニットを備えることができる。制御ユニットは、CPUと、メモリと、入出力ユニットとを備える。メモリは、本開示による方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム製品を記憶するコンピュータ可読媒体を含む。駆動ユニットは、はんだボール付着デバイスのキャピラリを回路基板に対して、すなわち環状ギャップに対して、位置決めするための電気機械式デバイスである。なお、本願出願人は、本開示による方法を実行するように構成された制御ユニットに関する独立請求項を含む権利を留保する。
【0037】
本開示の一態様によれば、キャピラリは、キャピラリの内径が、液体化はんだボールを作るために使用される固形はんだボールの直径よりも小さくなるように、開口部に向かって先細にできる。これにより、キャピラリからの固形はんだボールの落下が防止される。
【0038】
本開示の一態様によれば、キャピラリを回路基板の表面に対して傾斜させることができる。キャピラリは、固定角度又は駆動ユニットを用いて設定できる又は可変角度で傾斜させることができる。その結果、液体化はんだボールを容易に回路基板に付着することができる。
【0039】
本開示の一態様によれば、この装置は、液体化はんだボールを作るために固形はんだボールにエネルギーを印加するためのエネルギー印加ユニットを備えることができる。その結果、キャピラリ内に圧力ガスが供給されるときに先細のキャピラリから噴出させるために、固形はんだボールを十分に液体化させることができる。
【0040】
本開示の好適な態様によれば、エネルギー印加ユニットは、レーザビーム、すなわちレーザ源とすることができる。レーザビームは、200W NIR~400W NIRを出力できる近赤外レーザビームであることが好ましい。レーザビームが恒久的又は断続的に照射されるようになっていることが、さらに好ましい。レーザビームの出力及び時間は制御ユニットによって調整され、レーザビームは、キャピラリと同じ方向を向くようにキャピラリを通って案内され得る。結果として、レーザビームは、液体化はんだボールを作るために固形はんだボールに適切に照射することができ、また、液体化はんだボールを十分に液体化した状態に保つために使用されてもよい。レーザビームがキャピラリと同じ方向に向けられると、キャピラリから噴出された後も、液体化はんだボールにレーザビームが届く。したがって、キャピラリから回路基板への飛行中に、又は液体化はんだボールが回路基板に到達した後に、液体化はんだボールにレーザビームを照射できる。その結果、高い充填度を達成できるように、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込むことを保証できる。
【0041】
本開示の一態様によれば、この装置は、液体化はんだボール又は固形はんだボールの温度を測定するための温度測定ユニットを備えることができる。温度測定ユニットは、赤外線センサ又は任意で光学赤外線センサで構成できることが好ましい。その結果、温度測定ユニットから制御ユニット及びエネルギー印加ユニット、特にレーザビーム、に温度を送信できる。液体化はんだボールの焼き付きを回避するために、又は環状ギャップに流れ込んで充填される前の液体化はんだボールの固化を回避するために、温度を適切に制御できる。
【0042】
本開示の一態様によれば、この装置は、回路基板のスルーホールに電子部品のピンが挿入されるように回路基板と電子部品を保持するための保持ユニットを備えることができる。保持ユニットは電子部品と回路基板とを個別に把持することができ、電子部品のピンをスルーホールに挿入できることが好ましい。特に、電子部品が回路基板の第1側に配置されかつ液体化はんだボールが第1の側とは反対の第2側から付着されるように電子部品と回路基板を保持するように保持ユニットを適合させることができる。液体化はんだボールが下方向に付着されるように電子部品及び回路基板を保持するように保持ユニットを適合させることがさらに好ましい。あるいは、電子部品が予備組付けされた回路基板を保持するように保持ユニットを適合させてもよい。
【0043】
本開示の一態様によれば、この装置は、スルーホール外側の固化はんだの体積を測定するための体積測定ユニットを備えることができる。体積測定ユニットは、3Dスキャナなどの3次元検出デバイスと、スルーホール外側の固化はんだの体積を決定するために撮像画像を受信して3次元画像処理を実行する制御ユニットとで構成されることが好ましい。あるいは、3次元検出デバイスとして、白色光干渉計又はライトフィールドカメラが使用されてもよい。その結果、環状ギャップに流れ込む固化はんだの体積は、固形はんだボールの総体積からスルーホール外側の固化はんだの測定体積を減算することによって決定してもよい。スルーホール外側のはんだの体積を決定するために、3次元画像処理を用いて決定された体積から、回路基板の上のピンの体積を減算する必要があるということに留意されたい。ピン及びスルーホールの寸法及び体積は既知であるので、環状ギャップの容積を計算することができる。その後、環状ギャップに流れ込んだ液体化はんだの体積を環状ギャップの容積で除算することで、環状ギャップの充填度を決定することができる。なお、上記の計算は制御ユニットによって行われ得る。したがって、本開示による装置により、X線検査又は断面検査を必要とせずに、環状ギャップの充填度を現場確認することが可能となる。これにより、はんだ接合部の品質確認に要する時間を短縮できる。
【0044】
本開示の任意選択の態様によれば、この装置は、ピン及びトラフ穴にフラックスを塗布するためのフラックス塗布ユニットを備えることができる。その結果、ピンとスルーホールとの適切な接合を可能にするために、ピン及びスルーホールの酸化を抑制できる。
【0045】
本開示の好適な態様によれば、特にフラックスを60℃~130℃の温度に加熱することによってフラックスを活性化するために、エネルギー印加ユニット、特にレーザビーム、が使用され得る。その結果、はんだ付けプロセスに良い影響を与えることができる。
【0046】
本開示の好適な態様によれば、この装置は、回路基板を特に60℃~90℃の温度に加熱するための回路基板加熱ユニットを備えることができる。回路基板加熱ユニットは、温風の供給が可能であってもよいし、回路基板に接触する温部であってもよい。回路基板に接触する温部は保持ユニットに含まれることが好ましい。その結果、回路基板の表面への到達時に液体化はんだボールが冷えるということが回避される。したがって、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込んで充填されることが保証される。
【0047】
本開示の一態様によれば、この装置は、ピンを加熱するためのピン加熱ユニットを備えることができる。ピン加熱ユニットは、固形はんだボールを液体化するために使用される上記レーザビームとすることができる。レーザビームは、キャピラリを通ってピンに向けることができ、固形はんだボールがキャピラリ内に配置されていないときにオンに切り替えられる。ピン加熱ユニットが、ピンすなわちピンの材料の吸収特性に適合した波長を備える光を放射できるピン加熱用レーザビームであり得ることが好ましい。青色レーザ、例えば、450nm~475nmの範囲、特に450nm、の波長を有するレーザがピンの加熱に最も適していることが判明した。その結果、液体化はんだボールの一部が環状ギャップに適切に流れ込んで充填されるように、液体化はんだボールがピンに到達したときの液体化はんだボールの固化が遅らされる。
【0048】
本開示のさらに別の態様によれば、加熱中にピンの温度を測定するように温度測定ユニットを適合させてもよい。ピンの温度閾値を事前に定めて制御ユニットに記憶してもよい。温度閾値を温度測定ユニットから取得された温度測と比較するように制御ユニットを適合させてもよい。制御ユニットが温度閾値を超える温度値を温度測定ユニットから受信した場合、制御ユニットは、ピン加熱用レーザビーム又はピン加熱用レーザビームをオフに切り替えることによってピンの加熱を停止してもよい。
【0049】
本開示のさらに別の態様によれば、ピンを加熱する時間を事前に決めてもよい。この時間は、例えば実験によって決めてもよい。このようにして、ピン又はピンに接続された電子部品の過熱が回避され得る。
【0050】
本開示の一態様によれば、この装置は、不活性ガスを能動的又は受動的にスルーホール及びピンに与えるための不活性ガス供給ユニットを備えることができる。別の態様によれば、この装置は、不活性ガス雰囲気を含むチャンバ又は容器内に配置できる。その結果、液体化はんだの酸化が回避され、はんだ付けプロセスに良い影響を及ぼす。
【0051】
本開示の一態様によれば、電子部品と回路基板との間にガス排気流路が形成されるように電子部品と回路基板が互いに離間されるように回路基板と電子部品とを保持するように保持ユニットを適合させてもよい。その結果、環状ギャップの内側にあるガス、すなわち不活性ガス又は空気、は、液体化はんだボールが回路基板に到達して環状ギャップに流れ込んで充填されるときに、液体化はんだボールに対する抵抗を低減するために環状ギャップから出ることができる。したがって、環状ギャップの高充填度を達成できる。
【0052】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本開示の第1の実施形態による、スルーホールを備える回路基板に、スルーホールに挿入されるピンを備える電子部品をはんだ付けするための装置を模式的に示す図である。
【
図2】ピンとスルーホールとの間の環状ギャップの充填度を割り出すために、スルーホール外側の固化はんだの体積を測定するための3次元検出デバイスとして3Dスキャナを備える、本開示の第2の実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図3】この3次元検出デバイスとして、測定用ビームを照射する干渉計を備える、第2の実施形態による装置の変形例を模式的に示す図である。
【
図4】スルーホール、ピン、及びスルーホール外側の固化はんだの円錐台のサイズパラメータの定義を模式的に示す図である。
【
図5】キャピラリが回路基板に対して傾斜している、本開示の第3の実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図6】回路基板に対するキャピラリの角度を変更可能とする、第3の実施形態の装置の変形例を模式的に示す図である。
【
図7】回路基板と電子部品の間にギャップが形成された、本開示の第4の実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図8】ピンを加熱するためのピン加熱用レーザビームを含む、本開示の第5の実施形態による装置を模式的に示す図である。
【
図9】液体化はんだが回路基板に到達して環状ギャップに流れ込んでからレーザビームを照射する、本開示の第6の実施形態による装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、本開示の第1の実施形態により、電子部品1のピン4が挿入されるスルーホール3を備える回路基板2に、ピン4を備える電子部品1をはんだ付けするための装置を示す。電子1部品は挿入実装部品(THD)に対応する。本実施形態では、電子部品1の3つのピン4が、電子部品1の表面から、すなわち電子部品1のハウジングの表面から、上方向に略直角に突出している。ピン4は、回路基板2に形成された3つのスルーホール3のそれぞれに、回路基板2の第1側、すなわち
図1における下側から、この第1側と反対の回路基板2の第2側、すなわち
図1における上側、よりピン4が突出するように、挿入される。本開示は3つのピン4に限定されず、電子部品1が、少なくとも1つのピン、2つのピン、又は3つより多いピンを備えてもよいということに留意されたい。また、ピン4は、ピン4が突出する電子部品1の表面に対して傾斜していてもよいし、屈曲構造を含んでもよい。同様に、回路基板2は、少なくとも電子部品1のピン4の個数に対応する個数のスルーホール3を備えてもよい。また、スルーホール3は、スルーホール3の位置が電子部品1上のピン4の位置に対応するように、回路基板2に配置される。
【0055】
ピン4とスルーホール3との間に形成される環状ギャップに液体化はんだボール5の一部が流れ込んで充填されるように回路基板2上に液体化はんだボール5を吹き付けることによって、ピン4がスルーホール3に接合される。液体化はんだボール5の一部は環状ギャップに流れ込んだ後、はんだの融点を下回る環境温度により固化する。こうして、ピン4とスルーホール3との間に、ひいてはピン4とスルーホール3に接続される回路基板2のリードとの間に、導電性の接合部が形成される。
【0056】
図1に示す実施形態では、特に、キャピラリ6の開口部に向かって先細になっているキャピラリ6を備えるはんだボール付着デバイスを用いて液体化はんだボール5が作られて噴出される。特に、キャピラリ6の口径は、液体化はんだボール5を作るのに使用される固形はんだボール(不図示)の直径よりも小さい。これにより、固形はんだボールは、先細のキャピラリ6の直径と固形はんだボールの直径とが一致する位置に保持される。
【0057】
はんだ付けされる箇所、すなわち環状ギャップ、に向かって液体化はんだボール5を吹き付けるために、圧力ガス源によって圧力がキャピラリ6に印加され、液体化はんだボール5を作るために、エネルギーとしてレーザ源からレーザビーム7が固形はんだボールに照射される。このため、
図1に示すように、レーザビーム7はキャピラリ6を通って案内される。固形はんだボールが十分に液体化すると、液体化はんだボール5は、キャピラリ6内部の圧力によって、キャピラリ6を出ることができかつキャピラリ6から回路基板2、すなわち環状ギャップ、に向かって吹き付けるように、変形し得る。その結果、液体化はんだボール5を付着させるためにキャピラリ6を回路基板2に対して前進させたり後退させたりする必要がなくなる。
図1では、キャピラリがピン4の先端に正確に向けられているが、スルーホール3の円周内のピン4以外の箇所にキャピラリ6を向けてもよい。
【0058】
この装置は、キャピラリを制御及び移動するために、並びに、レーザビーム7すなわちレーザビーム7の照射の出力と時間及びガス圧力源を制御するために、制御ユニットと駆動ユニット(不図示)とを備える。制御ユニットは、CPU、メモリ、及び入出力ユニットを含むコンピュータによって実現される。メモリは、CPUによって実行される、本開示による方法を実行するための命令を含む制御プログラムを記憶する。駆動ユニットは、本装置のキャピラリ6及び他のユニット、例えば電子部品1及び/又は回路基板2を保持するための保持ユニット(不図示)、を駆動するための電気機械式駆動装置によって実現される。
【0059】
図1に示す実施形態では、液体化はんだボール5は、電子部品1が配置されている第1側とは反対の第2側から回路基板2上に吹き付けられる。
図1では、液体化はんだボール5が下方向に吹き付けられる。本明細書内では、下方向が重力方向と定義されることに留意されたい。この配置により、液体化はんだボール5が容易にスルーホール3に到達でき、ピン4とスルーホール3との間の環状ギャップに流れ込む一部の液体化はんだボール5が重力によって支援されるという利点がもたらされる。その結果、液体化はんだボール5を上方に吹き付ける場合に比べて、環状ギャップのはんだ充填度を向上させることができる。電子部品1が回路基板2から脱落することを回避するために、本装置は、少なくとも電子部品1と回路基板2とを保持するための保持ユニット(不図示)を備える。複数の電子部品1と回路基板2とを別々に保持するように保持ユニットを適合させてもよい。あるいは、電子部品1及び回路基板2が接着剤を用いて予備組付けされてもよく、回路基板2のみを保持するように保持ユニットを適合させる。
【0060】
レーザビーム7の照射は、液体化はんだボール5がキャピラリ6内にあるという状況に限定されるものではない。液体化はんだボール5が十分に液体化したままでいることを確保するために、液体化はんだボール5がキャピラリ6から噴出された後に恒久的又は断続的にレーザビーム7を照射することも可能であるということに留意されたい。液体化はんだボール5が回路基板2に到達したときに依然として液体化していることを保証するために、レーザビーム7は、特に液体化はんだボール5がキャピラリ6から回路基板2の表面に向かって飛ぶときに照射される。
【0061】
また、液体化はんだボール5の温度を測定するために赤外線センサ9が用いられる。このように赤外線センサ9は温度測定ユニットに対応する。赤外線センサ9は制御ユニットに通信可能に接続され、液体化はんだボール5の測定温度を制御ユニットに送信する。その結果、制御ユニットは、上限温度閾値と下限温度閾値とで限定される規定の温度範囲内に液体化はんだボール5の温度が維持されるようにレーザビーム7を制御できる。液体化はんだボール5の温度が上限温度閾値よりも高くなった場合には、レーザビーム7の照射が停止されるか、又は、レーザビーム7のパワーがさらに低い値に設定される。したがって、液体化はんだの焼き付きを回避できる。同様に、液体化はんだの温度が下限温度閾値よりも低くなった場合には、レーザビーム7が液体化はんだボール5に再照射されるか、レーザビームのパワーがさらに高い値に設定され得る。これにより、液体化はんだボール5の一部が環状ギャップに適切に流れ込むように、液体化はんだボールが十分に液体化されることを確保できる。したがって、ピン4とスルーホール3との間の適切な接合を確保できる。
【0062】
本開示によれば、はんだ付けされる箇所、すなわちスルーホール3及びピン4、に不活性ガス10を供給する。これは、不活性ガス10を能動的に与えることによって、例えば不活性ガス源に接続されたキャピラリ6で不活性ガスを供給することによって、行われ得る。したがって、キャピラリ6は不活性ガス供給ユニットに対応する。しかしながら、本装置は、別ノズルなど、キャピラリ6とは別体の不活性ガス供給ユニットを備えてもよい。別の実施形態では、不活性ガス10が充満する閉じた環境にピン4をスルーホール3にはんだ付けするための装置を配置することによって、不活性ガス10が受動的に与えられてもよい。その結果、はんだ、ピン4及び/又はスルーホール3の酸化を抑制することができ、はんだ付けプロセスに良い影響を及ぼす。
【0063】
液体化はんだボール5は、回路基板2に到達した後、ピン4とスルーホール3との間の環状ギャップに流れ込んで充填される。液体化はんだボール5の一部が環状ギャップに適切に流れ込むことができるようにするために、回路基板2に到達したときの液体化はんだボール5の固化が防止されるように回路基板2が加熱されてもよい。回路基板2は、加熱された空気を供給する送風機や回路基板2に接触する部品などの回路基板加熱ユニットを用いて加熱されてもよい。回路基板2に接触する回路基板加熱ユニットが、電子部品1及び回路基板2を保持するための保持ユニットに含まれることが好ましい。
【0064】
図1は、既に固化はんだ8で充填されている環状ギャップを示す。本実施形態では、固形はんだボール、ひいては液体化はんだボール5の体積が環状ギャップの容積よりも大きいため、全部のはんだが環状ギャップに流れ込むわけではない。その結果、液体化はんだボール5の一部は環状ギャップに流れ込んで環状ギャップに充填されるが、液体化はんだボールの他の部分はスルーホール外側に残る。
【0065】
本開示による装置は、上述したように、はんだボール付着デバイスを用いて、第1側に配置されたSMD(表面実装部品)を回路基板にはんだ付けすることができ、その後、回路基板が回転される場合があり、次にTHD、すなわち回路基板2のスルーホール3に挿入されるピン4を備える電子部品1、を回路基板2にはんだ付けすることができる、という追加の利点をもたらす。
【0066】
少なくとも1つのTHDが、第2側からピンが突出するように第1側に配置され、液体化はんだボール5が第2側から付着されることが、さらに好ましい。また、SMDは、第2側、すなわち回路基板2の上側、に配置され、やはり回路基板2にはんだ付けされる。その後、回路基板2は、第1側が第2側の上方になるように回転され、THTデバイスは、ピン4が第1側から突出するように第2側に配置される。次いで、スルーホール3にピン4をはんだ付けするために、第1側に液体化はんだボール5が付着される。さらに、SMDが第1側に配置され、液体化はんだボール5を用いて回路基板にはんだ付けされる。このようにして、リフローはんだ付け又は選択的はんだ付けなどの第2のはんだ付け法を使用せずに、回路基板の両側に電子部品、すなわちSMD及びTHD、を備える混合実装型の回路基板を容易に製造できる。
【0067】
図2は、3次元検出デバイスとして3Dスキャナ12を含む、本開示の第2の実施形態による装置を示す。この実施形態では、3次元画像処理を用いて、スルーホール3外側の固化はんだ8aの体積を測定する。なお、本開示においては、従来公知の3次元構築のための画像処理法が使用されてもよい。3Dスキャナ12は、赤外線センサ9と同じハウジングに含まれていてもよいし、別個に設けられていてもよい。3Dスキャナ12は制御ユニットに接続され、制御ユニットでは、スルーホール外側の固化はんだ8bの体積を決定する画像処理が実行される。したがって、3Dスキャナ12及び制御ユニットは体積測定ユニットに対応する。なお、3次元画像処理は、制御ユニットとは別のコンピュータによって行われてもよい。
【0068】
図2は、既に固化はんだ8が充填されている環状ギャップを示す。上述したように、液体化はんだボール5の体積が環状ギャップの容積よりも大きいことが好ましい。本開示では、ピン4とスルーホール3との適切な電気的及び機械的接合を保証するために、環状ギャップの充填度は少なくとも70%でなければならない。
【0069】
本開示によれば、所定の体積のはんだ、すなわち固形はんだボールの体積に対応する体積の液体化はんだボール5、が回路基板2に付着されるので、スルーホール3外側の固化はんだ8aの体積を測定することによって環状ギャップの充填度を決定することができる。
【0070】
充填度を決定するために、以下のプロセスを実行するように制御ユニットを構成できる。環状ギャップに流れ込んで固化したはんだ8bの体積を決定するために、測定された固化はんだ8aの体積を付着前の液体化はんだボール5の総体積と比較する。これに関し、スルーホール3外側のはんだ8aの体積を決定するときに、スルーホール3の外側のピン4の体積を考慮に入れる必要があるということに留意されたい。例えば電子部品1及び回路基板2の仕様から、ピン4及びスルーホール3の寸法は予め分かる。したがって、スルーホール3の容積から、スルーホール3の内側のピン4の体積を減算することによって、環状ギャップの容積を決定することもできる。次いで、充填度を決定するために、環状ギャップ内の固化はんだ8bの体積を環状ギャップの容積で除算する。はんだの一部が下側のスルーホール開口部から流出する場合、求められた固化はんだ8bの体積は、環状ギャップの容積よりもさらに大きい。この場合、充填度は100%であると判定される。
【0071】
決定された体積の結果、充填度、及び撮像画像は、制御ユニットのメモリに記憶される。結果として、本開示によれば、環状ギャップの充填度を決定することによって、X線検査や断面検査を用いることなく、はんだ接合部の品質を現場確認することができる。
【0072】
図3は、充填度を決定することができるように、スルーホール3外側の固化はんだ8aの体積を検出するために、測定用ビーム14を照射する干渉計13が3次元検出デバイスとして使用される、第2の実施形態の変形例を示す。したがって、干渉計13及び制御ユニットは、体積測定ユニットに対応する。
【0073】
図4は、スルーホール3、ピン4、及びスルーホール3外側の固化はんだ8aのパラメータの定義を示す。特に、本願発明者らは、固化はんだ8aが円錐台とほぼ考えられることを見出した。回路基板からのピンの高さdが、固化はんだ8aの高さgよりも小さい場合、固化はんだ8aは円錐形である。
【0074】
さらに、本願発明者らは、良好な結果すなわち70%以上の充填度を達成するために、
図4に示される種々のパラメータの比率が以下の表に記載される範囲内でなければならないことを見出した。
【表1】
【0075】
上表に記載されているように、スルーホール3の直径aとスルーホール3の深さbとの比率は、0.5~3の範囲とすることができる。上記比率は、好ましくは1にすべきである。また、スルーホール3の直径aはピン4の直径cの1.5倍~3倍とすることができる。好ましくは、スルーホール3の直径aはピン4の直径cの2倍にすべきである。また、回路基板2の表面からのピン3の高さdは、0又はスルーホール3の直径aの0.5倍以下にすべきである。また、スルーホール3外側のはんだ8aの根元の直径eは、スルーホール3の直径aの1.5倍~2倍とすることができる。はんだ付け後のスルーホール3の充填度は、ピン4とスルーホール3との間に形成される環状ギャップの容積の0.7倍以上にできることが最も好ましい。上記の比率を設定することにより、ピン4とスルーホール3との間の固化はんだ8は適切な機械的接合を実現でき、良好な電気的接続がもたらされる。
【0076】
上述したように、制御ユニット及び3Dスキャナ12又は干渉計13は、スルーホール3外側の固化はんだ8aの体積、すなわち円錐台又は円錐の寸法、を測定する。ピン4及びスルーホール3の寸法は、例えば電子部品1及び回路基板2の仕様から分かる。したがって、制御ユニットは、以下の計算を行うことによって環状ギャップの充填度を算出できる。
【0077】
特に、円錐台の体積V
fcは、式(1)によって計算できる。なお、回路基板2からのピン4の高さdが、スルーホール3外側の固化はんだ8aの高さgよりも小さい場合は、式(1)のfが0となり、式(1)は円錐の体積を算出する式に対応する。なお、以下では、円錐台は一例に過ぎず、代わりに3次元画像処理を用いて環状ギャップ外側のはんだ8aの体積を求めてもよい。
【数1】
【0078】
回路基板2の上のピン4の体積V
pinは、式(2)によって算出できる。なお、以下では、ピン4を円筒と考える。ピン4の他の幾何学的形状については、それに応じて回路基板2の上のピン4の体積を計算する必要がある。
【数2】
【0079】
スルーホール3外側の固化はんだ8aの体積V
soは、式(3)を用いて、円錐台の体積V
fcから回路基板2の上のピン4の体積V
pinを減算することによって算出できる。
【数3】
【0080】
固形はんだボールの体積、ひいては液体化はんだボール5の体積V
sbが予め分かるので、式(4)を用いて環状ギャップ内の固化はんだ8bの体積V
siを算出できる。
【数4】
【0081】
また、環状ギャップの容積V
agは、以下の式(5)によって算出できる。ここでも、ピン4は円筒と見なされている。
【数5】
【0082】
最後に、環状ギャップV
agの容積をスルーホール3内の固化はんだ8bの体積V
siで除算することによって、充填度Fを算出する(式(6)参照)。
【数6】
【0083】
なお、液体化はんだボール5が付着された側とは反対側の環状ギャップから液体化はんだが流出することがある。この場合、充填度Fとして100%を超える値が計算されることがあるが、充填度Fは100%と見なされる。
【0084】
図5は、本開示の第3の実施形態による装置を示す。
図3に示す装置は、キャピラリ6が回路基板2の表面に対して傾斜角αで配置されている点が、
図1に示す第1の実施形態による装置と異なる。したがって、液体化はんだボール5は傾斜角度αで付着される。
図2において、傾斜角αは45°である。ただし、傾斜角αは、この角度に限定されず、回路基板2の表面に対して30°~60°の範囲とすることができる。本実施形態は、ピン4がスルーホールから出ている箇所に、液体化はんだボールが環状ギャップに適切に流れ込んで充填されるように液体化はんだボール5を付着できる、という効果をもたらす。その結果、環状ギャップの高充填度を達成できる。
【0085】
図6は、制御ユニットによって制御される駆動ユニットを用いてキャピラリ6を傾斜させる第3実施形態の変形例を示す。この結果、はんだ付けする箇所に応じてキャピラリ6を傾斜させることができる。
図6において、位置1では、キャピラリ6は回路基板2に垂直に向けられている。キャピラリは、位置2では角度α
1に傾けられ、位置3では角度α
2に傾けられている。特に、回路基板2の、液体化はんだボール5を付着する側に、SMDなどの電子部品が既に実装されている場合には、種々の角度のキャピラリ6の傾斜が重要である。また、本開示は混合実装型の回路基板に使用され得るので、SMDなどの他の電子部品を回路基板にはんだ付けするために付着角度の変更が必要となることもある。その結果、本実施形態によれば、ピン4とスルーホール3とを適切に接合することができ、混合実装型の回路基板の実装を容易に行うことができる。
【0086】
図7は、本開示の第4の実施形態による装置を示す。
図7に示す装置は、電子部品1と回路基板2との間にガス排気流路11が形成されるように電子部品1と回路基板2が互いに離間されている点が、
図1に示す装置と異なる。したがって、液体化はんだボール5がスルーホール3に到達すると、環状ギャップの内側に存在するガス、すなわち不活性ガス10又は空気、が回路基板2の反対側、すなわち
図7の下側、に出ることができる。その結果、環状ギャップに流れ込む際の液体化はんだボール5の抵抗は、環状ギャップの適切な充填が確保されるように低減される。ガス排気流路11を形成するために互いに離間した電子部品1と回路基板2とを保持するように保持ユニットを適合させてもよい。これとは別に、又はこれに追加して、電子部品1と回路基板2との間に1つ以上のスペーサを配置されてもよい。第4の実施形態は、回路基板2の表面に対して傾斜していない第1の実施形態によるキャピラリ6と共に示されているが、キャピラリ6が回路基板2の表面に対して一定又は可変の角度で傾けられる第3の実施形態と組み合わせてもよいということに留意されたい。
【0087】
図8は、本開示の第5の実施形態を示す。第1の実施形態の説明で述べたように、加熱ユニットを用いて回路基板2を加熱してもよい。これとは別に、又はこれに追加して、第5の実施形態による装置はピン加熱ユニットを含んでもよい。
図8に示すように、ピン加熱ユニットは、液体化はんだボール5を作るために固形はんだボールを液体化するために使用されるレーザビーム7とは異なるピン加熱用レーザビーム15によって形成される。好ましくは、ピン加熱用レーザビーム15は、キャピラリを通って案内されてもよいし、ピン4に集光されてもよい。このため、ピン加熱用レーザビーム15は、レーザビーム7よりも小径であってもよい。また、ピン加熱用レーザビーム15は、レーザビーム7の波長と異なる、ピン4、すなわちピン4の材料、の吸収特性に適合した波長を備える。特に、ピン加熱用レーザビーム15は青色レーザビームであり、ピン加熱用レーザビーム15の波長は約450nmである。しかしながら、ピンレーザビームの波長は、はさらに大きな475nmまでとすることができる。液体化はんだボール5を付着する前にピン4を加熱することにより、液体化はんだの固化、特に環状ギャップに流れ込むはんだの固化、が遅くなり、より多くの部分がピン4とスルーホール3との間の環状ギャップに流れ込んで充填される。このようにして、より高い充填度、したがってピン4とスルーホール3との間のより良好な接合を達成できる。ピン4の加熱にレーザビーム7が使用されてもよいということに留意されたい。しかし、レーザビーム7の波長がピン4に合っていないので、ピン4の加熱に要する時間が長くなることがある。
【0088】
また、上記実施形態は、液体化はんだボール5の付着前にピン加熱用レーザビーム15をピンに照射することに限定されない。ピン4の高さがスルーホール外側のはんだ8aの高さよりも高い場合には、液体化はんだボール5が回路基板2上に到達し、液体化はんだの一部が既に環状ギャップに流れ込んだ後に、ピン加熱用レーザビーム15をピン4に照射してもよい。
【0089】
第5の実施形態において、ピン4を加熱する時間を事前に決めてもよい。この時間は、例えば実験によって決めてもよい。このようにして、ピン4又はピンに接続された電子部品1の過熱を回避できる。
【0090】
また、第5の実施形態は、温度測定ユニットとして赤外線センサ9を含む第1の実施形態と組み合わせてもよい。次いで、加熱中にピン4の温度をさらに測定するように赤外線センサ9を適合させてもよい。ピン4の温度閾値を事前に定めて制御ユニットに記憶してもよい。温度閾値を赤外線センサ9から取得された温度値と比較するように制御ユニットを適合させてもよい。制御ユニットが温度閾値を超える温度値を温度測定ユニットから受信した場合、制御ユニットは、ピン加熱用レーザビーム15をオフに切り替えることによってピン4の加熱を停止してもよい。
【0091】
図9は、回路基板上に到達して、既に環状ギャップに一部が流れ込んでいるはんだ8にレーザビーム7を照射する本開示の第6の実施形態を示す。回路基板2の表面への到達時間は、回路基板2の表面からキャピラリ6までの距離及びキャピラリ6内の圧力に応じて計算してもよいし、経験的に決定してもよい。あるいは、画像認識によって到着時間を検知してもよい。
【0092】
回路基板2上に到達した後にレーザビーム7を照射することで、
図9の矢印に示すように、さらに環状ギャップに流れ込むようにはんだ8は液体化したままである。ピン4がはんだ8から環状ギャップ外側に突出している場合もあるので、レーザビーム7によってピン4を加熱することも可能である。赤外線センサ9を用いてはんだ8の温度を測定し、はんだの温度が所定の閾値を超えた場合に制御ユニットがレーザビーム7の照射を停止させることが好ましい。あるいは、例えば実験を行って事前に求めた時間の間、レーザビーム7を照射してもよい。このようにして、はんだ8の焼き付きを回避できる。要するに、第6の実施形態によれば、回路基板上に到達した後にはんだは液体化したままであるので、環状ギャップの充填度を高くすることができる。
【0093】
また、第5の実施形態と第6の実施形態とを組み合わせてもよい。したがって、ピン加熱用レーザビーム15を用いてピン4を予熱し、液体化はんだボール5が回路基板2上に到達した後、はんだ8を液体化したままにする。また、ピン4の高さがスルーホール外側のはんだ8aの高さよりも高い場合には、液体化はんだボール5が回路基板に到達した後に、レーザビーム7とピン加熱用レーザビーム15が同時に照射されてもよい。その後、ピン加熱用レーザビーム15がピン4に集光されることが最も好ましい。
【0094】
以上、第1~第6の実施形態について説明した。なお、異なる実施形態を組み合わせてもよい。例えば、第1の実施形態を、第2の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態、及び第6の実施形態と組み合わせてもよい。また、第3実施形態を、第2の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態、及び第6の実施形態と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 電子部品
2 回路基板
3 スルーホール
4 ピン
5 液体化はんだボール
6 キャピラリ
7 レーザビーム
8 はんだ
8a スルーホール外側のはんだ
8b スルーホール内側のはんだ
9 赤外線センサ
10 不活性ガス
11 ガス排気流路
12 3Dスキャナ
13 干渉計
14 測定用ビーム
15 ピン加熱用レーザビーム
a スルーホール径
b スルーホール深さ
c ピン径
d 回路基板からのピンの高さ
e 円錐台の底径
f 円錐台の頂径
g 円錐台の高さ