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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】運転補助装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/54 20080401AFI20240305BHJP
   G05G 13/00 20060101ALI20240305BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20240305BHJP
   B60T 7/10 20060101ALI20240305BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20240305BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20240305BHJP
【FI】
G05G1/54
G05G13/00
B60K26/02
B60T7/10 P
B60W10/00 120
B60W10/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019112729
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020204948
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 義浩
(72)【発明者】
【氏名】殿原 恭幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慶一
(72)【発明者】
【氏名】前堂 勝久
(72)【発明者】
【氏名】合原 和尊
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176095(JP,A)
【文献】国際公開第2008/153204(WO,A1)
【文献】特開2017-061184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/54
G05G 13/00
B60K 26/02
B60T 7/10
B60W 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席に着席したドライバーが手動操作可能な手動操作領域から運転席近傍の床面に向けて下方向に延び、該手動操作領域よりも下部が車体に支持された操作バーを備えた運転補助装置であって、
上記操作バーは、前下後上状の傾斜姿勢で該操作バーの軸方向に沿ってスライド変位可能に車体に支持されており、
上記手動操作領域よりも少なくとも下方には、上記操作バーの前下方向への上記スライド変位によりブレーキ機構を作動させるブレーキ作動部と、上記前下方向へのスライド変位とは、同軸上で逆方向となる後上方向への上記操作バーのスライド変位によりアクセル機構を作動させるアクセル作動部を備え、
上記アクセル作動部は、上記操作バーを該操作バーに対して操作力の入力がない状態のニュートラル位置に付勢する付勢手段と、
上記付勢手段の付勢力に抗して上記操作バーを上記後上方向へスライド変位させる操作力に応じて揺動するレバーと、
上記レバーの揺動角度を検出するセンサと、
上記操作バーの上記後上方向への引張りによる上記操作力を、上記操作バーの側から上記レバーの側へ伝達する操作力伝達ケーブルとを備え、
上記センサによって検出した上記揺動角度に基づいてエンジンの出力回転数を制御可能に構成され、
上記操作力伝達ケーブルは、ドライバーの足元空間の前方側において車体側に備えた上記レバーと上記操作バーとを架け渡すワイヤを備えた
運転補助装置。
【請求項2】
記ブレーキ作動部は、上記操作バーの下部とブレーキペダルとの間に介在し、上記前下方向へのスライド変位による操作量を上記ブレーキペダルへ伝達するリンク機構で構成し、
上記ブレーキペダルは、ドライバーが踏込むペダル部よりも上方部位が、車幅方向に延びる軸によって軸支された吊り下げ式であり、
上記リンク機構には、上下方向に延びるリンクを備え、
上記リンクは、上記操作バーの上記前下方向へのスライド変位による操作量に基づいて、上記ブレーキペダルを押圧するペダル押圧部と、該ペダル押圧部よりも上方部位において車幅方向に延びる軸を介して車体側に対して軸支される車体側軸支部を備えた
請求項1に記載の運転補助装置。
【請求項3】
上記ブレーキペダルは、上記ペダル部から上方に延びるペダルレバー部の上部において車体に枢着され、
上記リンク機構は、上記操作バーの側から上記ブレーキペダルの側へ順に第1リンクと、上記リンクとしての第2リンクを備え、
上記第1リンクには、上記操作バーの下部と枢着される枢着部と、該枢着部よりも上方部位において上記第2リンクを押圧する第2リンク押圧部と、該第2リンク押圧部よりも上方部位において幅方向に延びる軸を介して車体側に対して軸支される車体側軸支部を備え、
上記第2リンクは、上記ペダル押圧部が上記ブレーキペダルの上記ペダルレバー部に対して後方から対向する高さで配置された
請求項2に記載の運転補助装置。
【請求項4】
上記操作バーが上記ニュートラル位置において、上記第2リンクは、上記ニュートラル位置にある上記ブレーキペダルの姿勢に対応して上下方向に対して前上後下状に傾斜する姿勢で配置され、上記第1リンクは、上記第2リンクよりも前上後下状に倒伏するように傾斜する姿勢で配置された
請求項3に記載の運転補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、身体障害者用の運転補助装置に関し、ブレーキ操作やアクセル操作を運転席に着席した下肢不自由者が手動で行う運転補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダルやアクセルペダルの足による踏み込み操作が困難な、下肢が不自由な身体障害者(下肢不自由者)であっても、運転席に着席した状態から手動操作によってブレーキ操作やアクセル操作を可能とするため、特許文献1、2に例示されるような運転補助装置が提案されている。
【0003】
特許文献1の運転補助装置としてのブレーキの手動操作装置は、前下後上状に傾斜した姿勢で配置されたレバー部材(操作レバー)を後方へさらに傾けることにより、該レバー部材の下端部が接合されたブレーキペダルを踏み込み方向に回動させてブレーキを作動させるものである。
【0004】
また、特許文献2の運転補助装置としての身体障害者用自動車運転装置は、ステアリングコラムから車幅方向内側に延びる姿勢で該ステアリングコラムに軸支された操作レバーとしてのブレーキ操作レバーとアクセル操作レバーとを備え、ブレーキ操作レバーを前方(ダッシュ板方向)に押し込むことによりブレーキ操作を行う一方で、アクセル操作レバーを後方(ハンドル側)へ引くことによりアクセル操作を行うものである。
【0005】
すなわち、特許文献1、2は共に、操作レバーの、車体に軸支された一端側を支点として、他端側を運転席に着席したドライバーが把持する等して該他端側が揺動可能な範囲の一方側又は他方側へ回動(スイング)させることにより、適宜アクセル操作やブレーキ操作するものである。
【0006】
しかしながら、このように操作レバーを回動させてブレーキ操作やアクセル操作を行う構造においては、その傾け具合(回動具合)に応じて該操作レバーの姿勢が変動することになる。
【0007】
例えば、特許文献1においては、前下後上状に延びる姿勢からレバー部材を後方に傾け時には、後方に傾けるに従って、該レバー部材の操作方向(レバー部材の揺動端の変位方向)は、車両後方向に変位する成分と比して車両下方向に変位する成分が徐々に大きくなる。
【0008】
特許文献2においては、車幅方向に延びる姿勢から車両前後方向へ揺動する操作レバー(ブレーキ操作レバーおよびアクセル操作レバー)の操作方向(操作レバーの揺動端の変位方向)は、該操作レバーの操作時の傾け姿勢によっては車両前後方向に変位する成分と比して車幅方向に変位する成分が大きくなる場合が生じる。
【0009】
すなわち、特許文献1、2においては、車両走行中にドライバーによる操作レバーのブレーキ操作やアクセル操作の操作方向(操作レバーの揺動端の変位方向)は、その操作時の操作レバーの操作具合(傾け具合)によっては、車両の進行方向に沿うことが多い車両前後方向変位成分よりも、車両の進行方向に沿わない車両下方向や車幅方向の変位成分が大きくなることが生じる。
【0010】
このため、このような場合には操作レバーの操作方向が、ドライバーの感覚とズレが生じることや、ドライバーにとって直感的に認識し難くなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2004/091987A1
【文献】実公昭59-36518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、車両運転中のドライバーの感覚に近い形で手動によりブレーキ操作やアクセル操作することができる運転補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、運転席に着席したドライバーが手動操作可能な手動操作領域から運転席近傍の床面に向けて下方向に延び、該手動操作領域よりも下部が車体に支持された操作バーを備えた運転補助装置であって、上記操作バーは、前下後上状の傾斜姿勢で該操作バーの軸方向に沿ってスライド変位可能に車体に支持されており、上記手動操作領域よりも少なくとも下方には、上記操作バーの前下方向への上記スライド変位によりブレーキ機構を作動させるブレーキ作動部と、上記前下方向へのスライド変位とは、同軸上で逆方向となる後上方向への上記操作バーのスライド変位によりアクセル機構を作動させるアクセル作動部を備え、上記アクセル作動部は、上記操作バーを該操作バーに対して操作力の入力がない状態のニュートラル位置に付勢する付勢手段と、上記付勢手段の付勢力に抗して上記操作バーを上記後上方向へスライド変位させる操作力に応じて揺動するレバーと、上記レバーの揺動角度を検出するセンサと、上記操作バーの上記後上方向への引張りによる上記操作力を、上記操作バーの側から上記レバーの側へ伝達する操作力伝達ケーブルとを備え、上記センサによって検出した上記揺動角度に基づいてエンジンの出力回転数を制御可能に構成され、上記操作力伝達ケーブルは、ドライバーの足元空間の前方側において車体側に備えた上記レバーと上記操作バーとを架け渡すワイヤを備えたものである。
【0014】
上記操作バーを後上方向へスライド変位させることによりアクセル操作できるため、操作バーの操作量(操作具合)に関わらず、操作バーの姿勢を一定に維持しつつ、しかもその操作方向を、車両前後方向、すなわち、車両の進行方向に沿った方向としたため、操作バーを、その操作量に関わらずドライバーの感覚に近い形で操作し続けることができる。
【0015】
この発明の態様として、記ブレーキ作動部は、上記操作バーの下部とブレーキペダルとの間に介在し、上記前下方向へのスライド変位による操作量を上記ブレーキペダルへ伝達するリンク機構で構成し、上記ブレーキペダルは、ドライバーが踏込むペダル部よりも上方部位が、車幅方向に延びる軸によって軸支された吊り下げ式であり、上記リンク機構には、上下方向に延びるリンクを備え、上記リンクは、上記操作バーの上記前下方向へのスライド変位による操作量に基づいて、上記ブレーキペダルを押圧するペダル押圧部と、該ペダル押圧部よりも上方部位において車幅方向に延びる軸を介して車体側に対して軸支される車体側軸支部を備えたものである。
【0016】
上記ブレーキ作動部は、上記操作バーの下部とブレーキペダルとの間に介在し、上記前下方向へのスライド変位による操作量を上記ブレーキペダルへ伝達する、機械式の操作量伝達機構であるリンク機構で構成することで、操作量(操作変位量、操作力)を、リンク機構を介してブレーキペダルへ物理的に伝達することができ、電気的およびソフト的な不具合のおそれがなく、操作バーによるブレーキ操作の信頼性を高めることができる。
【0017】
この発明の態様として、上記ブレーキペダルは、上記ペダル部から上方に延びるペダルレバー部の上部において車体に枢着され、上記リンク機構は、上記操作バーの側から上記ブレーキペダルの側へ順に第1リンクと、上記リンクとしての第2リンクを備え、上記第1リンクには、上記操作バーの下部と枢着される枢着部と、該枢着部よりも上方部位において上記第2リンクを押圧する第2リンク押圧部と、該第2リンク押圧部よりも上方部位において幅方向に延びる軸を介して車体側に対して軸支される車体側軸支部を備え、上記第2リンクは、上記ペダル押圧部が上記ブレーキペダルの上記ペダルレバー部に対して後方から対向する高さで配置されたものである。
【0018】
またこの発明の態様として、上記操作バーが、該操作バーに対して操作力の入力がない状態のニュートラル位置において、上記第2リンクは、上記ニュートラル位置にある上記ブレーキペダルの姿勢に対応して上下方向に対して前上後下状に傾斜する姿勢で配置され、上記第1リンクは、上記第2リンクよりも前上後下状に倒伏するように傾斜する姿勢で配置されたものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、車両運転中のドライバーの感覚に近い形で操作バーによりブレーキ操作やアクセル操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態の運転補助装置を備えた車両を運転する様子を示す外観図。
図2】本実施形態の運転補助装置をベース車両に組み込んだ状態を示す外観図。
図3】運転補助装置を車幅方向内側かつ車両後方から見た外観図。
図4】ニュートラル位置(a)、最大アクセル位置(b)、最大ブレーキ位置(c)の夫々における操作バーの上部をその軸方向に沿って切断した断面図。
図5】ニュートラル位置にある操作バー、リンク機構およびブレーキペダルのレイアウトを車幅方向外側から視て模式的に示したレイアウト説明図。
図6】アクセル作動部に備えたセンサおよびその周辺部位をセンサに対して車幅方向内側かつ後方から視た要部拡大図。
図7図6中の矢視Aから視た要部拡大図。
図8】最大ブレーキ位置にある操作バー、リンク機構およびブレーキペダルのレイアウトを図5に基づいて示した作用説明図。
図9図1の車両を、ステアリングホイールに備えたステアリング操作補助具を把持しながら運転する様子を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は本実施形態の運転補助装置を組み込んだ車両の運転席周辺の要部構造および該車両をドライバーが運転している様子を示す外観図、図2はベース車両に組み込んだ本実施形態の運転補助装置およびその周辺を運転席側から視た斜視図であって、車室に備えたインストルメントパネルやセンタコンソール等の内装部材を取り除いて図示した斜視図を示し、図3は本実施形態の運転補助装置の要部構造を車幅方向内側かつ後方から見た斜視図、図4(a)はニュートラル位置、図4(b)は最大アクセル位置(b)、図4(c)は最大ブレーキ位置(c)の夫々における、操作バーの上部をその軸方向に沿って切断して模式的に示した断面図、図5はニュートラル位置にある操作バー、リンク機構およびブレーキペダルのレイアウトを車幅方向外側から視て模式的に示したレイアウト説明図、図6はアクセル作動部に備えたセンサおよびその周辺部位をセンサに対して車幅方向内側かつ後方から視た要部拡大図、図7図6中の矢視Aから視た要部拡大図、図8は最大ブレーキ位置にある操作バー、リンク機構およびブレーキペダルのレイアウトを図5に基づいて示した作用説明図を示す。
【0022】
図中、矢印Fは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印OUTは車幅方向外側(車両右方)を夫々示すものとする。また、以下の説明において車幅方向外側(車室外側)は「車幅外側」と称し、車幅方向内側(車室内側)は「車幅内側」と称する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の車両は、右ハンドル車であって、ブレーキペダルやアクセルペダルの足による踏み込み操作が困難な下肢が不自由なドライバーDが運転席に着席した状態でブレーキ操作やアクセル操作を手動で行うことができる、図2に示すような身体障害者用の運転補助装置1を備えている。
【0024】
本実施形態の運転補助装置1はベース車両を改造することで、該ベース車両に組み込まれており、以下、運転補助装置1について説明するが、それに先立ってベース車両の概略構造について説明する。
【0025】
図2に示すように、車両の前部は、車幅方向および上下方向に延びる縦壁状のダッシュパネル60によって車両前後方向においてエンジンルーム(図示省略)と車室とに区分けされている。
【0026】
ダッシュパネル60の下部は、下方程後方に延びており、その下端部には、車室床面を形成するフロアパネル61の前端が接合されている。ダッシュパネル60およびフロアパネル61の車幅中央部には、車両前後方向に延びるフロアトンネル62が上方へ突状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、ダッシュパネル60における車室側には、タコメータやスピードメータ等の各種計器類の表示部63や、エアコンやオーディオ等の各種車載機器を操作する操作部64が配設されたインストルメントパネル65が、車室の車幅方向全体に亘って設けられている。
【0028】
インストルメントパネル65は、車室の内装部材の一部を成し、その内部において車幅方向に延びるインパネメンバ66(図2参照)によって支持されている。インパネメンバ66は、パイプ鋼材から形成された車体強度部材であり、ダッシュパネル60の両サイドにおいて上下方向に延びる車体剛性メンバとしての不図示のヒンジピラーに結合されている。
【0029】
図2に示すように、上記インパネメンバ66と上記フロアトンネル62とは、車体強度部材としてのセンタステー67によって連結されている。センタステー67は、ベース車両に元々備えたものであり、インパネメンバ66から後下方向に延びるセンタステーアッパ68と、フロアトンネル62の右側側壁面の上部から前上方向に延出するセンタステーロア69とで構成されている。
【0030】
図1に示すように、フロアパネル61における、前側かつ、後述するセンタコンソール73よりも右側部位の上面には、ドライバーD(運転者)が着席するための運転席76が搭載されている。運転席76の前方には、ドライバーDにより把持した状態で操作されるステアリングホイール70が設けられている。
【0031】
図1に示すように、ステアリングホイール70は、ステアリング支持機構71を介してインパネメンバ66(図2参照)に支持されている。ステアリング支持機構71は、ステアリングホイール70の回転中心から前方かつ下方へ傾斜して延びる不図示のステアリングシャフトと、ステアリングシャフトを囲繞するように設けられたステアリングコラム72を備えている。
【0032】
図1に示すように、運転席76と助手席(図示省略)との間における、フロアトンネル62(図2参照)の上方には、前端部がインストルメントパネル65の車幅方向中央部に接続されるセンタコンソール73が設けられている。センタコンソール73は、車室の内装部材の一部を成し、運転席76に着席したドライバーDの左手で操作可能な箇所に、シフトノブ74やスタートスイッチ75等が配設されている。
【0033】
車室内の運転席76前方のフロアパネル61近傍には、アクセルペダル(図示省略)およびブレーキペダル80(図2参照)が設けられている。
図示省略するがアクセルペダルは、運転席76に着席したドライバーDの右足が置かれる位置に設けられ、ブレーキペダル80(図2参照)は、アクセルペダルよりも左側(車幅方向中央側)寄りに設けられている。
【0034】
アクセルペダルはエンジンのスロットル弁を操作するとともにブレーキペダル80はブレーキを操作するものであり、共にベース車両に備えた一般的なペダルである。
【0035】
図2に示すように、アクセルペダルはエンジンのスロットル弁を操作する一般的なペダルであり、ブレーキペダル80はブレーキを操作する一般的なペダルであり、共にベース車両に備えたものである。
【0036】
ブレーキペダル80は、上下方向に延びるレバー部81と、レバー部81の下端部に設けられたペダル部82とを備え、車体(ダッシュパネル60)に取付けられたブレーキペダル支持ブラケット83によって車幅方向に延びる軸83B(図5参照)を介してレバー部81の上部が軸支されており、これにより、ペダル部82を踏込むことでブレーキペダル支持ブラケット83における、ブレーキペダル80の軸支部83a(同図参照)を支点として下方(前方)へ回動する吊り下げ式で構成されている。
【0037】
以下、運転補助装置1について説明する。図2に示すように、運転補助装置1は主に、ドライバーDが運転席76(図1参照)に着席した状態で手動にて操作する操作バー2と、操作バー2の後述する所定の操作によって、ブレーキを作動させるブレーキ作動部3と、アクセルを作動させるアクセル作動部4とを備えている。
【0038】
図1に示すように、操作バー2は、運転席76近傍の、ステアリングホイール70に対して左側、すなわちセンタコンソール73側に備えており、上部が、運転席76に着席したドライバーDが左手で操作可能な手動操作領域に位置し、該手動操作領域から前下方向、すなわち運転席76の前側近傍のフロアパネル61に向けて延びている。
【0039】
図1図3に示すように、操作バー2は、その軸方向の略全長に亘って延びるとともに、軸方向の直交断面が円形状の金属製パイプ材(所謂丸パイプ)から成る軸本体21と、運転席76に着席したドライバーDが左手で該軸本体21の軸方向に沿ってスライド操作するスライド操作部材22とを備えている。
【0040】
図4(a)に示すように、スライド操作部材22は、軸方向の上端が閉塞されるとともに、下端が開口する内部空間22sを有する有天筒状に形成され、その内部空間22sに軸本体21の上部が、前下端の開口部23から差し込まれた状態となるように軸本体21の、手動操作領域に位置する上部に外装されている。なお、図4中の矢印Xは操作バー2の軸方向を示し、矢印Xuは軸方向上方(車両の後上方向)を示し、矢印Xdは軸方向下方(車両の前下方向)を示す。
【0041】
これにより、スライド操作部材22は、軸本体21の上部において、その軸方向に沿ってスライド変位し、後述するが当例ではスライド操作部材22を、ブレーキやアクセルが作動しないニュートラル位置から後上方向にスライドすることでアクセル操作が可能となるとともに、前下方向にスライドすることでブレーキ操作が可能となるように構成している。
【0042】
なお図1図3に示すように、スライド操作部材22の上端部には、操作バー2を、ドライバーDが左手の掌部分等で前下方向へ押し込んだり、指に引掛ける等して後上方向(手前)に引張り易くするために上方へ屈曲形成した操作補助突起22aが形成されている。
さらにまた図示省略するが、スライド操作部材22の所定箇所には、各種車載機器(エアコンやオーディオ等)のON/OFF等を制御するためのスイッチ群(複数のスイッチ)が配設されており、ドライバーDが該スライド操作部材22を左手で把持した状態でこれらスイッチの押し操作を可能としている。
また図2図3に示すように、上述したスイッチ群と、車体側に備えた車載機器等とは、電気配線27によって電気的に接続されている。電気配線27は、操作バー2の内部空間22s,22s(図4(a)参照)に沿ってスイッチ群側から下方に配索され、該操作バー2の下端開口21d(図2参照)から延出された延出部分は車体側に配索される。
なお、図4においては、操作補助突起22a、スイッチ群および電気配線27の図示を省略している。
【0043】
図2図5に示すように、操作バー2は、軸本体21が、その軸方向に沿ってスライド変位可能に前下後上状の傾斜姿勢で車体側のセンタステー67に軸本体支持ブラケット5を介して支持されている。
なお、図3においては、センタステー67のうちセンタステーロア69のみ図示している。
【0044】
軸本体支持ブラケット5は、その上下両端部に、ブッシュ等を備えたスライド保持部5u,5dが夫々設けられており、操作バー2は、軸本体支持ブラケット5の上下各側に備えたスライド保持部5u,5dによって軸本体21が、その軸方向に沿ってスライド変位可能に保持されている。
【0045】
軸本体支持ブラケット5は、センタステー67におけるセンタステーロア69の右側側面に取付け固定されている。
これにより軸本体21は上述したように、軸本体支持ブラケット5を介してセンタステー67に対してスライド変位可能に支持されている。
【0046】
また図4(a)に示すように、スライド操作部材22の内部空間22sには、上述したように、該スライド操作部材22の前下側の開口部23から軸本体21の上部が挿通されているが、スライド操作部材22の前下側の開口部23の周縁には、突出片24が軸本体21の外周面に近接するように径内側に向けて突出形成されている。これにより突出片24は、その先端が径内側に向けて突出する。
【0047】
一方、操作バー2の軸本体21には、その軸方向の後上端から径外方向へ鍔状に突出するアクセル操作側ストッパ25が形成されている。
これにより、スライド操作部材22を、ニュートラル位置にある状態(図4(a)参照)から軸本体21の軸方向に沿って、後上方向にスライドさせ、該スライド操作部材22がアクセル操作量の限界値となる最大アクセル位置に達した際には、図4(b)に示すように、スライド操作部材22の前下端に設けた突出片24がアクセル操作側ストッパ25に当接することで、スライド操作部材22がそれ以上、後上方向にスライドしないように規制する。すなわちアクセル操作側ストッパ25は、突出片24と協働してスライド操作部材22が軸本体21の上端から抜け出さないように規制する。
【0048】
また、操作バー2の軸本体21には、その上部における、軸方向の後上端に位置するアクセル操作側ストッパ25に対して前下方向へ離間した位置から径外方向へ鍔状に突出するブレーキ操作側ストッパ26が装着されている。
【0049】
このブレーキ操作側ストッパ26は、スライド操作部材22がニュートラル位置にある状態において(図4(a)参照)、スライド操作部材22に設けた突出片24に、該ブレーキ操作側ストッパ26の後上側から当接する。これにより、ブレーキ操作側ストッパ26は、スライド操作部材22が、ニュートラル位置にある状態からさらに前下方向へ軸本体21に対して相対変位することを規制する。
【0050】
ここで上述したように、操作バー2の軸本体21は、車体側、すなわちセンタステー67に軸本体支持ブラケット5を介して、該軸本体21の軸方向に沿ってスライド変位可能に支持されており、また、ブレーキ操作側ストッパ26は、軸本体21に外装することにより該軸本体21と一体形成されている。
【0051】
このため、スライド操作部材22を図4(a)に示すようなニュートラル位置(すなわち、スライド操作部材22の突出片24がブレーキ操作側ストッパ26に後上側から当接した状態)から軸本体21の軸方向に沿って前下方向にさらに押し込んだ際には、図4(c)に示すように、スライド操作部材22は、軸本体21と一体に、すなわち操作バー2の全体が軸本体支持ブラケット5に対して前下方向へスライドする。
【0052】
すなわち操作バー2のブレーキ操作時には、スライド操作部材22を軸本体21の軸方向に沿って前下方向に押し込み操作(すなわちブレーキ操作)することで、スライド操作部材22と軸本体21とが一体で前下方向にスライド変位するように構成している。
【0053】
図2図5に示すように、ブレーキ作動部3は、操作バー2の下部とブレーキペダル80との間に介在し、操作バー2の上記前下方向へのスライド変位による操作力(操作量)をブレーキペダル80へ伝達するリンク機構30で構成している。
【0054】
リンク機構30は、操作バー2の側からブレーキペダル80の側へ順に第1リンク31と、第2リンク32を備えている。
【0055】
図2図3に示すように、第1リンク31は、略直線状に延びるとともに上下方向に幅を有する板状に形成されている。第1リンク31の前上側(基部側)は、車幅方向に水平に延びるボルト等の軸6B(図5参照)を介して、第1リンク支持ブラケット6の軸支部34に軸支されている。
第1リンク支持ブラケット6は、車体側、すなわちダッシュパネル60に、その後面側からボルト等により取り付け固定されている。
【0056】
一方、第1リンク31の後下側(先端側)は、軸本体21の軸方向における軸本体支持ブラケット5よりも下部に枢着されている。
【0057】
具体的には図2図3図5に示すように、操作バー2の軸本体21の軸方向における軸本体支持ブラケット5よりも下部には、軸本体21の軸方向に沿って第1リンク枢着ブラケット8が固着されている。第1リンク31の後下側(先端側)は、この第1リンク枢着ブラケット8に枢着される枢着部33を構成している(図3図5参照)。
なお、第1リンク枢着ブラケット8は、軸本体21の軸方向に沿って延び、その軸方向の直交断面が断面コ字状に形成されている。第1リンク枢着ブラケット8は、操作バー2がニュートラル位置にある状態において、該第1リンク枢着ブラケット8の後上端8uが軸本体支持ブラケット5の前下端(軸本体支持ブラケット5の下端に備えたスライド保持部5d)に当接する(図5参照)。
【0058】
これにより、第1リンク枢着ブラケット8は、スライド操作部材22をニュートラル位置よりも後上方向にスライド変位させたとき、該スライド操作部材22が軸本体21と一体に後上方向にスライドすることで、該軸本体21が軸本体支持ブラケット5に備えたスライド保持部5u,5dから抜けないように規制するストッパとしても機能する。
【0059】
また図2図5に示すように、第1リンク31の長手方向の中間部には、第2リンク32を押圧する押圧片37が、車幅外側の面から車幅外側に向けて略水平にボス状に突出形成されている。
【0060】
図2に示すように、第2リンク32は、第1リンク31とブレーキペダル80との間に配されており、図2図5に示すように、車幅方向に水平に延びるボルト等の軸7B(図5参照)を介して、第2リンク支持ブラケット7(図2参照)の軸支部38に軸支されている。
【0061】
図2に示すように、第2リンク支持ブラケット7は、第1リンク支持ブラケット6に対して車幅外側に隣接しており、車体側、すなわちダッシュパネル60に、その後面側からボルト等により取り付け固定されている。
【0062】
図2図3図5に示すように、第2リンク32は、クランク状部材35とL字状部材36とを備えている。
【0063】
クランク状部材35は、車幅方向に延びる本体部351と、該本体部351の車幅内端から後下方向へ延出し、第1リンク31の押圧片37に押圧される被押圧片352(図2図5参照)と、該本体部351の車幅外端から前上方向へ延出し、L字状部材36に接合される接合片353(図2図3参照)とでクランク状に形成されている。
【0064】
図2に示すように、L字状部材36は、本体部361と、該本体部361の後下端から車幅外側へ延出し、ブレーキペダル80を押圧するペダル押圧片362とでL字状に形成されている。
【0065】
図2図3に示すように、第2リンク32は、クランク状部材35の接合片353の車幅外面が、L字状部材36における本体部361の車幅内面に溶着等により接合されることで、クランク状部材35とL字状部材36とが一体化されている。
【0066】
図2図5に示すように、第2リンク32は、操作バー2がニュートラル位置にある時、ペダル押圧片362がブレーキペダル80のレバー部81を、その上方近傍にて横切るように配置される。
【0067】
そしてドライバーDが手動によりブレーキ操作をする際には、図4(c)、図8に示すように、スライド操作部材22をニュートラル位置よりも前下方向にスライド変位させる(すなわち前下方向に押し込む)。
【0068】
これにより、スライド操作部材22は軸本体21と一体に前下方向へスライドするため、スライド操作部材22の操作力をリンク機構30に伝達することができ、さらに、該リンク機構30に備えた第1、第2リンク31,32が連動することにより、ブレーキペダル80に操作力(スライド操作部材22の押込み力)を伝えることができる。
【0069】
具体的には図8に示すように、操作バー2を前下方向に押し下げることによって、第1リンク31には、該操作バー2からの操作力が、力点としての操作バー2との枢着部33から入力される。これにより第1リンク31は、第1リンク支持ブラケット6(図2参照)の軸支部34を支点として下方に回動し、作用点としての押圧片37が第2リンク32を下方へ押圧する。
【0070】
さらに第2リンク32は、力点としての被押圧片352に第1リンク31から操作力が入力されることにより、すなわち第1リンク31の押圧片37が第2リンク32の被押圧片352を下方へ押圧することにより、第2リンク32は、第2リンク支持ブラケット7(図2参照)の軸支部38を支点として下方に回動し、作用点としてのペダル押圧片362がブレーキペダル80を下方へ押圧する。
【0071】
これにより、ブレーキペダル80を踏み込む方向へ、すなわち下方(前方)へ回動させることができ、スライド操作部材22の前下方向へのスライド量に応じたブレーキを作動させることができる。
【0072】
なお、スライド操作部材22を、図4(a)に示すようなニュートラル位置から前下方向にスライドさせた際には、上述したように、軸本体21は、スライド操作部材22と一体に前下方向にスライドする。そして、スライド操作部材22が軸本体21と一体に、ブレーキ操作量の限界値となる最大ブレーキ位置に達したとき(図4(c)参照)、軸本体21に備えたブレーキ操作側ストッパ26が、車体側、すなわち軸本体支持ブラケット5の上前端(軸本体支持ブラケット5の上端に備えたスライド保持部5u)に当接することで、それ以上の操作バー2(軸本体21およびスライド操作部材22)の前下方向へのスライドが規制されるように設定されている。
【0073】
また図5に示すように、ブレーキペダル支持ブラケット83における、ブレーキペダル80の軸支部83aには、付勢手段としてのコイルスプリング84を、軸支部83aの軸83Bに沿って備えている。このコイルスプリング84は、踏み込まれるなどして下方へ回動したブレーキペダル80を、該ブレーキペダル80のニュートラル位置に付勢するものであって、ベース車両に備えたものである。
【0074】
このため、ドライバーDによる、スライド操作部材22のニュートラル位置からの前下方向への押し込みが解除された際には、コイルスプリング84の付勢力により、ブレーキペダル80がニュートラル位置に復元し、それに伴って第1、第2リンク31,32や操作バー2についてもニュートラル位置に復元するように構成している。
【0075】
具体的には、ブレーキペダル支持ブラケット83における、ブレーキペダル80の軸支部83aに備えたコイルスプリング84の付勢力を利用して、ブレーキペダル80が第2リンク32のペダル押圧片362を、その下側から押し上げ、さらに、それに伴って第2リンク32の被押圧片352が第1リンク31の押圧片37を、その下側から押し上げ、さらに、それに伴って第1リンク31が操作バー2を、すなわちスライド操作部材22と軸本体21とを一体に後上方向へスライド変位させる。
【0076】
また図2に示すように、上記アクセル作動部4は、スライド操作部材22を上記後上方向へスライド変位させる操作力に応じて揺動するレバー10と、レバー10の揺動角度を検出するセンサ15と、上記操作力を、張力を利用してスライド操作部材22の側からセンサ15の側へ伝達する操作力伝達ケーブル40と、を備えている。
【0077】
上記アクセル作動部4は、センサ15によって検出した、レバー10の揺動角に基づいてECUが、操作バー2と機械的に分離されたエンジンのスロットル弁を開ける制御を行うことができるアクセルバイワイヤ機構を採用している。
【0078】
操作力伝達ケーブル40は、操作バー2に備えたスライド操作部材22とセンサ15側に備えたレバー10とを架け渡すワイヤ41と、ワイヤ41の途中部を被覆する被覆チューブ42とを備えている。
【0079】
センサ15は、センサ本体部16と、該センサ本体部16に対して揺動する揺動子17とを備え、揺動子17の揺動角はセンサ本体部16によって検出される。
【0080】
また図2に示すように、第1リンク支持ブラケット6の直上には、センサ15を取付けるセンサ取付けブラケット51を備えるとともに、センサ取付けブラケット51の前側(ダッシュパネル60の側)には、レバー10を揺動可能に支持するレバー支持ブラケット55(図3参照)を備え、これらブラケット51,55は、何れもダッシュパネル60に、その後面側から夫々締結固定されている(図示省略)。
【0081】
図6図7に示すように、センサ15は、揺動子17の先端が車幅内側へ突出するとともに先端が上下に揺動可能に、センサ本体部16がセンサ取付けブラケット51の前壁部51aに、その後面側から取り付けられている。
【0082】
レバー10は、上下方向に幅を有して略直線状に延びるとともに、その長手方向の中間部に段部10aを有する板状に形成されている。レバー10は、揺動子17の直前(ダッシュパネル60の側)に備えるとともに、該レバー10の長手方向の一端(車幅外端)が略車両前後方向に延びるボルト等の軸10Bを介してレバー支持ブラケット55に枢着されている。なお、レバー支持ブラケット55における、レバー10を軸支する軸支部14に備えた軸10B(すなわちレバー10の揺動中心)とセンサ15の揺動子17の揺動中心とは同軸上に形成されている(図6図7中のXa参照)。
【0083】
また同図に示すように、レバー10の揺動端11(車幅内端)には、操作力伝達ケーブル40に備えたワイヤ41の延在方向におけるセンサ15側の端部が掛け止めされている。
【0084】
図2に示すように、レバー10の揺動端11の上下方向の揺動範囲よりも下方には、操作力伝達ケーブル40の延在方向の途中部を保持するセンサ側ワイヤ取付けフランジ6fが配置されている。なお、センサ側ワイヤ取付けフランジ6fは、第1リンク支持ブラケット6に設けられている。
【0085】
センサ側ワイヤ取付けフランジ6fには、操作力伝達ケーブル40に備えた被覆チューブ42の延在方向におけるセンサ15側の端部が支持されている。すなわち、操作力伝達ケーブル40のワイヤ41は、レバー10の揺動端11とセンサ側ワイヤ取付けフランジ6fとの間については被覆チューブ42によって被覆されていない。
【0086】
そして、これら11,61の間において、ワイヤ41は、レバー10の揺動端11の上下方向の揺動に応じて、被覆チューブ42のセンサ15側の端部から上方へスライド(すなわち被覆チューブ42の外側へ延出)したり、下方へスライド(すなわち被覆チューブ42の内側に退避)することで上下方向に張架した状態に保たれている。
【0087】
また図2図6図7に示すように、レバー10の長手方向の途中部には、レバー10の後面に対して溶着等により一体形成された押圧片12を備えている。押圧片12は、レバー10の後面から後方へセンサ15の揺動子17の先端に形成された被押圧片17a(図7参照)に対して上方近傍に至るまで水平に延びている。これにより、レバー10が下動するに伴って、該レバー10に備えた押圧片12が揺動子17の被押圧片17aを下方へ押圧する構成としている。
【0088】
レバー支持ブラケット55における、レバー10を軸支する軸支部14には、該軸支部14に備えた軸10Bに沿って付勢手段としてのコイルスプリング13を備えている。このコイルスプリング13によりレバー10の揺動端11は、レバー支持ブラケット55の軸支部14を支点として上方に勢付されている。一方、センサ15に内蔵された不図示の付勢手段としてのコイルスプリングによって、揺動子17の被押圧片17aも上方に勢付されている。
これにより、上述によりレバー10と、センサ15の揺動子17とは略同期した状態で同軸に、すなわち同じ揺動中心として揺動する。
【0089】
さらに図6図7に示すように、レバー支持ブラケット55には、緩衝部材19が、レバー10の可動範囲において該レバー10の揺動端11を上方から臨むように取り付けられている。緩衝部材19は、操作バー2がニュートラル位置にある状態においてコイルスプリング13の付勢力により上方に付勢されるレバー10の揺動端11と当接し、それ以上の揺動端11の上動を規制している。
【0090】
また図4(a)に示すように、パイプ状の軸本体21の内部空間21sには、操作力伝達ケーブル40のうちワイヤ41のみが、該軸本体21の下端開口21d(図2参照)から挿通されている。すなわち図2図3に示すように、被覆チューブ42は、操作バー2の下端(21d)とセンサ側ワイヤ取付けフランジ6fとの間部分に備えており、これらの間においてワイヤ41を延在方向にスライド変位可能に被覆している。
【0091】
ここで、図4(a)に示すように、スライド操作部材22の内部空間22sには、操作バー2(スライド操作部材22)の後上端近傍に至るまで配索されたワイヤ41の端部を掛け止める掛止部材28を備えている。
【0092】
掛止部材28は、スライド操作部材22の内部空間22sにおける、上壁22u近傍の内周壁部に嵌合する等して該スライド操作部材22に一体に固着されている。
【0093】
さらに、操作バー2の軸本体21の上壁21uにおける正面視で中央部には、ワイヤ41や、スイッチ群の電気配線27(図2図3参照(図4において図示省略))の挿通を許容する内径を有する貫通穴21hが軸方向に沿って形成されている。
【0094】
そして、パイプ状の軸本体21の下端開口21dから挿通されたワイヤ41は、内部空間21sにおいて軸方向に沿って軸本体21の上壁21uに至るまで配索される。さらにワイヤ41は図4(a)に示すように、軸本体21の上壁21uに形成した貫通穴21hから内部空間21sの外側へ延出され、その延出部分の端部(すなわち、ワイヤ41の操作バー2側の端部)がスライド操作部材22の内部空間22sにおいて、掛止部材28に掛止めされている。
【0095】
上述したスライド操作部材22を、図4(a)に示すようなニュートラル位置から後上方向へスライド操作(引張り操作)した際には、該スライド操作部材22は、図4(b)に示すように、軸本体21に対して後上方向へスライドし、該スライド操作部材22と一体形成された掛止部材28を介してワイヤ41が、後上方向へ引張られる。
【0096】
これにより、その操作力(引張り力)を、ワイヤ41およびレバー10を介してセンサ15の揺動子17に伝えることができる。
【0097】
従って、スライド操作部材22をニュートラル位置よりも後上方向へスライド操作(引張り操作)した際には、その操作量に応じてエンジンへの吸気量を増大させることができ、結果的にエンジンの出力回転数が増加して車両を加速させることができる。
【0098】
ここで上述したように、操作バー2がニュートラル位置に位置するとき、該操作バー2の下部に固着された第1リンク枢着ブラケット8は、その後上端8uが軸本体支持ブラケット5の前下端に当接するように設定されている(図5参照)。このため、軸本体21は、ニュートラル位置から、センタステー67すなわち車体に対してさらに後上方向へスライド変位さすることが規制されている。
【0099】
これにより、スライド操作部材22をニュートラル位置から軸本体21の軸方向に沿って後上方向にスライドさせた際には、スライド操作部材22は、軸本体21と一体に後上方向にスライドすることがなく、スライド操作部材22のみが後上方向に軸本体21に対して相対的にスライドするため、ドライバーDによるスムーズな引張りによるアクセル操作を可能としている。
【0100】
なお図示省略するが、運転補助装置1には、該運転補助装置1のうち、例えば、操作バー2の下部、操作力伝達ケーブル40、リンク機構30等少なくとも一部を覆うカバーを備えてもよい。運転補助装置1の少なくとも一部を覆うカバーを備えることで、運転補助装置1を組み付けた状態の車両における運転席76周辺の見栄えを高めることができる。
【0101】
図1図2に示すように、本実施形態の運転補助装置1は、運転席76に着席したドライバーDが手動操作可能な領域(手動操作領域)から運転席76近傍の床面としてのフロアパネル61に向けて下方向に延び、該手動操作領域よりも下部が車体に支持された操作バー2を備えた運転補助装置であって、操作バー2は、前下後上状の傾斜姿勢で該操作バー2の軸方向に沿ってスライド変位可能に車体に支持されており、図2に示すように、手動操作領域よりも少なくとも下方(換言すると操作バー2、および運転席76近傍のフロアパネル61上)には、操作バー2の前下方向へのスライド変位によりブレーキ機構を作動させるブレーキ作動部3と、上記前下方向へのスライド変位とは、同軸上で逆方向となる後上方向への操作バー2のスライド変位によりアクセル機構を作動させるアクセル作動部4を備えたものである。
【0102】
上記構成によれば、ドライバーDが手動でブレーキ操作する際には、操作バー2を前下方向へ上記スライド変位させる操作、すなわち操作バー2を真直ぐに奥へ押し込み操作することで行うことができる。例えば、車両が前進時に、ドライバーDが操作バー2を前下方向へスライド操作することによってブレーキ操作した際には、ドライバーDには、ブレーキが作動することにより自身が前方へ変位しようとする慣性力が作用する。よって、この慣性力を利用して操作バー2を前下方向へ容易に押し込むことができ、操作バー2に操作力を効率的に伝えることができる。
【0103】
一方、ドライバーDが手動でアクセル操作する際には、操作バー2を後上方向へスライド変位、すなわち手前に真直ぐに引張り操作することで行うことができる。
【0104】
ここで一般に、人の手と肩とを直線状に結ぶ仮想ラインと略一致する方向は、その手で把持している物を自身の側に引張る際の引張り力を発揮し易い方向とされている。このため、ドライバーDが操作バー2を把持する側の手と肩とを直線状に結ぶ仮想ラインと略一致する後上方向へ操作バー2を、スライド操作する構成を採用することにより、容易にアクセル操作を行うことができる。
【0105】
具体的には、例えばアクセル操作やブレーキ操作を従来の操作レバーのようにスイング動作(揺動)により行う場合、操作時において操作レバーの操作端(揺動端)が孤状の軌道を描くことに起因して、操作レバーの車体への取り付け姿勢や操作時の傾け具合によっては、例えば、操作レバーを前後方へ変位させる際に、一旦、車幅方向に迂回したり、操作レバーを把持する側の手と肩とを直線状に結ぶ仮想ラインからずれた方向へ持ち上げるような軌道で動かすことを強いられる場合がある。このため操作レバーの揺動位置によっては、ドライバーDの操作力を操作レバーにダイレクトに伝え難くなることが懸念される。
【0106】
これに対して本実施形態においては、上述したように、アクセル操作やブレーキ操作を、操作バー2をその軸方向に沿ってスライド変位させることで行う構成を採用したため、操作バー2は、車幅方向や上下方向等に迂回するように変位しながらドライバーDによって操作されることがなく、その操作量に関わらず姿勢を一定に保つことができる。
【0107】
従って、操作バー2に操作力を効率的に伝えることができるため、該操作バー2による手動操作を容易に行うことができる。
【0108】
しかも、操作バー2は上述したように、その軸方向へスライド変位することでアクセル操作又はブレーキ操作が可能に、前下後上状の傾斜姿勢(車両前後方向に沿った姿勢)で車体に支持された構成を採用したため、アクセル操作、ブレーキ操作のいずれにおいても、車両走行中に車両の進行方向となり易い車両前後方向に沿った方向へ操作することができ、また、スライド操作により操作するため、操作中に操作方向が変動することもない。
従って車両走行中のドライバーDの感覚に近い形でアクセル操作やブレーキ操作することができる。
【0109】
特に上述したように、ブレーキ作動部3は、操作バー2の前下方向へのスライド変位によりブレーキ機構を作動させる構成を採用したため、ブレーキ操作時のおける操作バー2の操作方向は、車両の前進時におけるブレーキ操作時にドライバーDに慣性力が作用する方向(車両前方向)や、ブレーキペダル80の踏み込み方向と略一致させることができる。従って車両走行中のドライバーDの感覚により近い形でブレーキ操作することができる。
【0110】
加えて、上記構成によれば、ベース車両における操作バー2の設置スペースの制約を受け難いため、量産車両への組み付け自由度を高めることができる。
【0111】
詳述すると、上述したように、例えばアクセル操作やブレーキ操作を、操作レバーのスイング動作(揺動)により行う構成の場合、操作レバーが車幅方向や前後方向に変位することに伴い、操作レバーは、その可動範囲が車体やドライバーDに干渉しないように設置する必要が生じる。
【0112】
例えば、操作レバーを運転席76のドア側に設けた場合には、操作レバーの可動範囲が、ドアや、ステアリングおよび、ステアリングコラム72から車幅外側に突出する方向指示レバー等との干渉について考慮する必要が生じる。また、操作レバーを運転席76のセンタコンソール73側に設けた場合には、車幅方向においてはセンタコンソール73や運転席76(ドライバーDも含む)等との干渉について、車両前後方向においては、インストルメントパネル65や運転席76との干渉について考慮する必要が生じる。
【0113】
具体的には、運転席76近傍の床面に下端を枢支した構成においては、操作レバーの揺動範囲を確保するために、運転席76の前方へのスライド量が制限されることも懸念される。
【0114】
これに対して本実施形態においては、操作バー2は、上述したように、その操作具合に関わらず姿勢を一定に保つことができるため、操作バー2等の設置スペースの制約を受け難く、量産車両への組み付け自由度を高めることができる。
【0115】
この発明の態様として、図2図3図4(a)(c)、図5図8に示すように、ブレーキ作動部3は、操作バー2の下部とブレーキペダル80との間に介在し、上記前下方向へのスライド変位による操作量をブレーキペダル80へ伝達するリンク機構30で構成したものである。
【0116】
上記構成によれば、ブレーキ作動部3を機械式の操作量伝達機構であるリンク機構30で構成することで、操作バー2の操作量(操作変位量、操作力)をリンク機構30を介してブレーキペダル80へ物理的に伝達することができ、電気的およびソフト的な不具合のおそれがなく、操作バー2によってブレーキ操作を確実に行うことができる。
【0117】
この発明の態様として、図2図3図4(a)(b)、図6図7に示すように、アクセル作動部4は、操作バー2の上記後上方向へのスライド変位による操作量を検出するセンサ15と、上記後上方向へのスライド変位量を操作バー2からセンサ15の側へ伝達するワイヤ41とを備えたアクセルバイワイヤ機構で構成したものである。
【0118】
本実施形態においては、ブレーキ作動部3をリンク機構30で構成することで、操作バー2によるブレーキ操作の信頼性を機械的な操作量伝達方式により高めることができつつ、アクセル作動部4をアクセルバイワイヤ機構で構成することで、運転席76に着席するドライバーDの足元を極力広いスペースに保つことができる。
【0119】
詳しくは、運転席76の前側に有するドライバーDの足元のスペースにおける、右側(すなわち右ハンドル車においてドア側)にアクセルペダルが、アクセルペダルよりも左側(すなわち右ハンドル車においてアクセルペダルよりも車幅内側)にブレーキペダル80が、夫々配設されている。
【0120】
すなわち、ブレーキペダル80は、運転席76近傍のセンタコンソール73側(車幅方向中央側)寄りに配設された操作バー2に対して、車幅方向においてアクセルペダルよりも近い位置に配設されている。
【0121】
このため当例では、ブレーキ作動部3に関して、操作バー2と、該操作バー2と相対的に近い位置に配されたブレーキペダル80とを、リンク機構30を介して機械的に連結した構成とすることで、該リンク機構30の大型化を抑制しつつ、操作バー2によるブレーキ操作の信頼性を機械的な操作量伝達方式により高めることができる。
【0122】
一方、アクセル作動部4に関して、車幅方向において操作バー2と、操作バー2に対して相対的に離間したアクセルペダルとを、機械的に連結せずにアクセルバイワイヤ方式を採用したものである。これにより、運転席76に着席するドライバーDの足元を極力広いスペースに保つことができる。
【0123】
以上により、操作バー2によるブレーキ操作の信頼性を高めつつ、運転席76に着席するドライバーDの足元を極力広いスペースを確保することができる。
【0124】
この発明の態様として、図4(a)(b)(c)に示すように、操作バー2は、該操作バー2に対して操作力の入力がない状態で位置するニュートラル位置から上記前下方向又は上記後上方向へスライド変位するものであり、図5図8に示すように、ブレーキ作動部3には、操作バー2を上記前下方向へスライド変位した位置からニュートラル位置に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング84を備えるとともに、図2図3図6図7に示すように、アクセル作動部4には、操作バー2を上記後上方向へスライド変位した位置からニュートラル位置に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング13を備えものである。
【0125】
上記構成によれば、操作バー2は、その軸方向に沿ってスライド変位するため、ニュートラル位置からのスライド変位量に関わらず、前下後上状の傾斜姿勢は変わらない。それ故に、ドライバーDにとって操作バー2のニュートラル位置、すなわち、操作中の操作バー2のスライド変位量が認識し難くなることが懸念される。
【0126】
これに対して本実施形態のように、ブレーキ作動部3とアクセル作動部4との夫々に、操作バー2をニュートラル位置に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング84,13を備えることにより、ドライバーDがニュートラル位置を意識せずとも、操作バー2に対して操作力を入力しない状態においては、軸方向に沿ってスライド変位させた操作バー2をニュートラル位置に戻すことができるため、ニュートラル位置から前下方向へスライド変位させるブレーキ操作、後上方向へスライド変位させるアクセル操作を適切に行うことができる。
【0127】
この発明の態様として、図2に示すように、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル60の後方近傍に、車幅方向に延びる車体強度部材としてのインパネメンバ66が配設され、車体床面を形成するフロアパネル61およびダッシュパネル60の車幅方向中央部には、車両前後方向に延びる車体強度部材としてのフロアトンネル62が配設され、操作バー2は、インパネメンバ66とフロアトンネル62とを繋ぐ車体強度部材としてのセンタステー67に、運転席76側からスライド変位可能に支持されたものである。
【0128】
上記構成によれば、操作バー2を、車体強度部材としてのセンタステー67によって支持することで、車体に対してしっかりと支持させることができる。
【0129】
さらにセンタステー67は、車体に元々組み付けられている既存の車体強度部材であるため、このようなセンタステー67を利用して操作バー2を、車体に対して支持させることで、運転補助装置1の量産車両への組み付け性を高めることができる。
【0130】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、図9に示すように、ベース車両のステアリングホイール70には、片手(右手のみ)によるステアリング操作を補助するステアリング操作補助具79を取付けた構成を採用してもよい。
【0131】
本実施形態のように運転補助装置1の操作バー2を運転席の左寄りに設けた構成においては、ドライバーDが操作バー2を左手で把持しながらブレーキ/アクセル操作を行うことになる。このため、ステアリングホイール70の右側にステアリング操作補助具79を取付けることで、ステアリング操作補助具79を片手(右手のみ)で把持しながらステアリング操作することで、片手でも容易にステアリング操作することができる。
【符号の説明】
【0132】
1…運転補助装置
2…操作バー
3…ブレーキ作動部
4…アクセル作動部
10…レバー
13…コイルスプリング(アクセル作動部に備えた付勢手段)
15…センサ
30…リンク機構
31…第1リンク
32…第2リンク(リンク、第2リンク)
33…枢着部
34…軸支部(第1リンクの車体側軸支部)
37…第2リンク押圧片(第2リンク押圧部)
38…第2リンクの軸支部(リンクの車体側軸支部)
40…操作力伝達ケーブル
41…ワイヤ
76…運転席
80…ブレーキペダル
81…ブレーキペダルのレバー部(ペダルレバー部)
82…ブレーキペダルのペダル部
362…ペダル押圧片(ペダル押圧部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9