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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20240305BHJP
   F01M 13/00 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F01M13/00 J
F01M13/00 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019175748
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050810
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】ニデックパワートレインシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】中西 智彦
(72)【発明者】
【氏名】高井 貴志
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-153937(JP,A)
【文献】特開平11-230011(JP,A)
【文献】特開2004-169826(JP,A)
【文献】特開2016-138515(JP,A)
【文献】特開昭62-233580(JP,A)
【文献】特開2010-210066(JP,A)
【文献】実開昭58-187661(JP,U)
【文献】特開2018-179019(JP,A)
【文献】特開2009-221905(JP,A)
【文献】特開2011-033181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F16K 27/00 - 27/12
F16K 31/06 - 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、前記貫通孔に挿入され、軸方向に沿って移動可能に支持されたプランジャと、前記ボビンの外周部に巻回され、通電に伴い磁力を生じて前記プランジャを移動させるコイルとを有するソレノイドと、
第1流路と、第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐ中継部と、該中継部に隣接して配置され、軸方向に沿う弁体収納部とを有し、前記ソレノイドに連結される流路部材、及び、前記弁体収納部に挿入され、前記プランジャとともに軸方向に沿って移動可能に支持され、前記第1流路と前記第2流路との間で前記中継部を介した流体の通過と遮断とを切り換える柱状の弁体を有する弁機構とを備え、
前記弁体は、該弁体の外周部からその径方向外側に向かって突出して設けられ、前記弁体が移動した際に前記弁体収納部の内壁面に案内される凸部を有し、
前記弁体は、樹脂製の本体部と、該本体部の中心部に軸方向に沿って設けられ、前記本体部を貫通する金属製のピンとを備え
前記本体部は、軸方向他方側の面に設けられ、軸方向一方側に向かって凹む凹部を備え、該凹部の底面において、前記ピンの軸方向他方側の端面が露出していることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記ピンは、その外径が縮径した第1縮径部を有し、
前記第1縮径部は、前記本体部と接触して、前記本体部の前記ピンに対する軸方向への移動を規制する請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記ピンは、さらに、その外径が縮径した第2縮径部を有し、
前記第1縮径部が軸方向他方側に位置し、前記第2縮径部が軸方向一方側に位置する請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記第2縮径部は、前記本体部から軸方向一方側に突出し、
前記中継部は、前記弁体収納部に開口し、前記第1流路が繋がるポート部を有し、
前記弁体は、さらに、前記第2縮径部に接触して設けられ、前記ポート部の周縁に接触可能であり、弾性を有する弁部を備える請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記流路部材は、樹脂製である請求項1に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記本体部と前記ピンとは、インサート成形による一体成形品である請求項1に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記プランジャは、金属製のプランジャピンを有し、
前記ピンの軸方向他方側の端面と前記プランジャピンの軸方向一方側の端面とが接触している請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項8】
前記弁機構は、前記弁体に対し軸方向他方側に設けられ、前記弁体を軸方向他方側に押し込むコイルバネを有し、
前記凸部は、前記コイルバネの軸方向他方側の端部が接触するバネ座として機能する請求項1~のいずれか1項に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの通過と遮断とを切り換える電磁弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電磁弁は、固定コアと、電磁力の作用を受けると固定コアに対して近づくことが可能な移動コアと、ガス導入孔とガス排出孔とを有するガス流路形成部材とを備える。固定コアには、移動コアを案内する筒状部が固定される。また、移動コアの固定コアと反対側の端部には、弁体が取り付けられる。弁体は、移動コアの移動に伴って、ガス導入孔を開放して、ガス導入孔からガス排出孔へのガスの通過を可能とし、反対に、ガス導入孔を閉塞して、前記ガスの通過を停止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-179019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、弁体(移動コア)は、金属製のブロック体で構成する場合が多く、弁体のより安定した移動を実現するには更なる改良の余地がある。
そこで、本発明の目的は、弁体の構造を工夫することにより、弁体の安定した移動が可能となる電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電磁弁の一つの態様は、軸方向に沿って貫通した貫通孔を有する筒状のボビンと、前記貫通孔に挿入され、軸方向に沿って移動可能に支持されたプランジャと、前記ボビンの外周部に巻回され、通電に伴い磁力を生じて前記プランジャを移動させるコイルとを有するソレノイドと、
第1流路と、第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを繋ぐ中継部と、該中継部に隣接して配置され、軸方向に沿う弁体収納部とを有し、前記ソレノイドに連結される流路部材、及び、前記弁体収納部に挿入され、前記プランジャとともに軸方向に沿って移動可能に支持され、前記第1流路と前記第2流路との間で前記中継部を介した流体の通過と遮断とを切り換える柱状の弁体を有する弁機構とを備え、
前記弁体は、該弁体の外周部からその径方向外側に向かって突出して設けられ、前記弁体が移動した際に前記弁体収納部の内壁面に案内される凸部を有し、
前記弁体は、樹脂製の本体部と、該本体部の中心部に軸方向に沿って設けられ、前記本体部を貫通する金属製のピンとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電磁弁の一つの態様によれば、弁体を安定して移動させ、電磁弁において流路の正確な開閉を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の電磁弁(開状態)の使用状態の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の電磁弁(閉状態)の使用状態の一例を示す図である。
図3図3は、本発明の電磁弁の実施形態を示す断面図である。
図4図4は、図3中のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の電磁弁を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
以下、図1図4を参照して、本発明の電磁弁の実施形態について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸を設定する。一例として、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。本実施形態では、第1軸O1がX軸に平行となっており、第2軸O2および第3軸O3がZ軸と平行になっている。また、X軸と平行な方向を「軸方向(第1軸O1方向)」と言い、この軸を中心とする径方向を単に「径方向」と言い、前記軸を中心とする周方向を単に「周方向」と言うことがある。また、X軸方向正側を「軸方向一方側(第1軸O1の一端側)」または単に「一方側」と言い、X軸方向負側を「軸方向他方側(第1軸O1の他端側)」または単に「他方側」と言うことがある。本明細書中において、上下方向、水平方向、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0009】
図1図2に示すように、電磁弁1は、例えば、エンジン等の内燃機関10を備える車両100に搭載して用いられる。内燃機関10は、燃焼室111、クランク室112およびバッファ室113を有するハウジング11と、燃焼室111内に移動可能に設けられたピストン12と、クランク室112内に設けられ、ピストン12の往復運動を回転運動に変換するクランク13と備える。
また、ハウジング11内では、クランク室112とバッファ室113とが内部流路114を介して接続される。
【0010】
燃焼室111には、ハウジング11の外側から外部流路14が接続される。外部流路14の途中には、スロットル弁である電磁弁15が設置される。
外部流路14の電磁弁15よりも下流側と、クランク室112とは、第1補助流路16を介して、接続される。第1補助流路16の途中には、PCV弁である電磁弁17が設置される。
【0011】
外部流路14の電磁弁15よりも上流側と、バッファ室113とは、第2補助流路18を介して、接続される。そして、第2補助流路18には、外部流路14との境界部に本発明の電磁弁1が設置される。電磁弁1は、外部流路14の開閉を切り換える弁である。電磁弁1は、車両100の通常走行時には、外部流路14を開状態(図1参照)とし、混合気AR等の漏れ(以下単に「漏れ」と言う)を検出するリーク検出時には、外部流路14を閉状態(図2参照)とする。
【0012】
図1に示すように、開状態では、混合気ARは、外部流路14を通過して、燃焼室111に流入し、燃焼に供される。これにより、ピストン12が移動することができる。また、外部流路14を通過する混合気ARの一部は、外部流路14の途中から第2補助流路18に流入し、バッファ室113、内部流路114を順に経て、クランク室112に至る。クランク室112に流入した混合気ARは、第1補助流路16を経て、外部流路14に戻ることができる。
【0013】
図2に示すように、閉状態では、内燃機関10への混合気ARの供給が停止する。そして、燃焼室111が燃焼により高圧となった際に、燃焼室111内のブローバイガスQの一部がピストン12を越えてクランク室112に流入する。その後、クランク室112内のブローバイガスQは、第1補助流路16を経て、外部流路14に流入する。このとき、漏れが生じていないならば、クランク室112内の圧力が経時的に減少することなる。そして、クランク室112内の圧力が閾値を下回った場合、漏れが生じていないと判断される。一方、漏れが生じているならば、クランク室112内での圧力が減少せずに前記閾値を下回ることがないか、または、圧力の減少傾向が緩やかとなり、前記閾値を下回るまでに時間を費やすこととる。この場合、漏れが生じていると判断される。
【0014】
図3に示すように、電磁弁1は、X軸方向負側に配置されたソレノイド2と、X軸方向正側に配置された弁機構3とを備える。以下、各部の構成について説明する。
ソレノイド2は、ボビン21と、プランジャ22と、コイル23と、ケース24と、コア25と、ヨーク26とを有する。
【0015】
ボビン21は、貫通孔211を有する筒状の部材である。貫通孔211は、X軸方向と平行な軸方向に沿って貫通する。また、貫通孔211の内径は、軸方向に沿って一定である。ボビン21は、一方側で、径方向に突出したフランジ212と、他方側で、径方向に突出したフランジ213とを有する。ボビン21は、例えば、ポリエステル樹脂やポリイミド樹脂等の各種樹脂材料で構成される。
【0016】
ボビン21の外周部214には、導電性を有するコイル23が巻回される。そして、コイル23を通電状態とすることにより、すなわち、コイル23での通電に伴って、ボビン21とコア25とヨーク26とで磁気回路が構成されて、磁力を生じることができる。これにより、プランジャ22を軸方向に沿って移動させることができる。
【0017】
ボビン21の貫通孔211には、コア25とヨーク26とが挿入され、さらに内側にプランジャ22が挿入される。
コア25は、軸方向一方側に配置され、ヨーク26は、軸方向他方側に配置される。
【0018】
コア25は、全体として円筒状であり、X軸方向と平行に配置される。また、ヨーク26も、全体として円筒状であり、X軸方向と平行に配置される。コア25およびヨーク26は、鉄のような軟磁性材料からなる、すなわち、軟磁性の金属材料で構成される。これにより、プランジャ22を十分に移動させることができる程度の磁気回路を生じさせることができる。
【0019】
また、ソレノイド2は、貫通孔211内で、コア25とヨーク26とを離間させた状態で連結する連結部材201を有する。連結部材201は、円筒状であり、内側にコア25の他端部とヨーク26の一端部とが嵌め込まれる。連結部材201は、非磁性であり、錆に対する耐性を有する、例えばオーステナイト系のステンレス鋼等の金属材料で構成される。
【0020】
プランジャ22は、コア25とヨーク26とにまたがって配置され、軸方向に沿って一方側と他方側とに交互に移動可能、すなわち、往復動可能に支持される。
プランジャ22は、円筒状のプランジャ本体222と、プランジャ本体222に挿入されたプランジャピン221とを有する。プランジャピン221は、軸方向一方側および他方側の双方に突出する。また、ヨーク26の他方側は、壁部262によって閉塞しており、当該壁部262にプランジャピン221が接触する、すなわち、衝突することにより、プランジャ22の他方側への移動限界が規制される。
また、プランジャ22は、コア25内では、プランジャピン221がブッシュ202によって支持され、ヨーク26内では、プランジャピン221がブッシュ203によって支持される。これにより、プランジャ22は、円滑に往復動することができる。
【0021】
ケース24は、ボビン21、プランジャ22、コイル23、コア25およびヨーク26を収納する。ケース24は、ケース本体241と、コネクタ部材242と、リング部材243とを有する。
ケース本体241は、有底筒状である。すなわち、ケース本体241は、軸方向一方側が開口する開口部244と、他方側を閉塞させる壁部245とを有する筒状の部材である。壁部245には、一方側からヨーク26が接する。
【0022】
リング部材243は、円環状をなし、コア25の径方向外側で、当該コア25と同心状に配置される。このリング部材243は、コア25に対して一方側から接する。
ケース本体241およびリング部材243は、コア25と同様に、鉄のような軟磁性の金属材料で構成される。
コネクタ部材242は、コイル23への通電を行うコネクタ(図示せず)が接続される。コネクタ部材242は、ボビン21と同様に、例えば、樹脂材料で構成される。
【0023】
また、ソレノイド2は、ケース24内で、リング部材243とボビン21のフランジ212との間に配置されたガスケット204と、ケース本体241の壁部245とボビン21のフランジ213との間に配置されガスケット205とを有する。
ガスケット204は、リング状をなし、コア25の外周側で、当該コア25と同心状に配置される。このガスケット204は、リング部材243とボビン21のフランジ212との間で圧縮された状態となっており、これにより、リング部材243とフランジ212との間を封止することができる。
【0024】
ガスケット205は、リング状をなし、ヨーク26の径方向外側で、当該ヨーク26と同心状に配置される。このガスケット205は、ケース本体241の壁部245とボビン21のフランジ213との間で圧縮された状態となっており、これにより、壁部245とフランジ213との間を封止することができる。
なお、ガスケット204およびガスケット205は、弾性材料で構成される。弾性材料としては、特に限定されず、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の各種ゴム材料が挙げられる。
【0025】
弁機構3は、流路部材4と、弁体5と、連結部材6と、ガスケット7とを有する。
流路部材4は、連結部材6を介して、ソレノイド2に連結される部材であり、流体であるブローバイガスQの通過と遮断とを切り換える切換弁として用いられる。
【0026】
流路部材4は、内部に、第1流路41と、第2流路42と、弁体収納部43とを有する。
弁体収納部43は、X軸方向(軸方向)に沿って設けられ、弁体5をX軸方向に沿って移動可能に収納する。弁体収納部43は、弁体収納部43のX軸方向と直交する方向の断面形状、すなわち、横断面形状が円形をなし、内径がX軸方向に沿ってほぼ一定である。
【0027】
第1流路41は、Z軸方向に沿った中心軸として第2軸O2を有する。この第1流路41は、X軸方向負側に向かって弁体収納部43に開口する第1ポート部412を有する。なお、第1ポート部412の内径は、弁体収納部43の内径よりも小さい。一方、第1流路41は、第1ポート部412と反対側において、Z軸方向負側に向かって外部に開口する。また、第1流路41側は、例えば、電磁弁1が固定される外部流路14を構成する配管に接続されており、外部流路14を介して燃焼室111に繋がっている。また、流路部材4には、外部流路14を構成する配管との間を封止するガスケット45が外側から嵌められる。
【0028】
第2流路42も、Z軸方向に沿った中心軸として第3軸O3を有する。この第2流路42は、Z軸方向負側に向かって弁体収納部43に開口する第2ポート部422を有する。一方、第2流路42は、第2ポート部422と反対側において、Z軸方向正側に向かって外部に開口する。なお、第2流路42の第2ポート部422は、第1流路41の第1ポート部412よりもX軸方向負側(軸方向他方側)に位置する。また、第2流路42は、第2補助流路18を構成する配管に接続される。
【0029】
かかる構成により、第1流路41と第2流路42とは、弁体収納部43を介して繋がっている。そして、弁体収納部43に収納された弁体5が第1ポート部412を開閉することにより、第1ポート部412(第1流路41)と第2ポート部422(第2流路42)との間でのブローバイガスQの通過と遮断とを切り換えることができる。例えば、電磁弁1が搭載された内燃機関が自然吸気型のエンジンの場合、図1に示すように、ブローバイガスQは、第1流路41から第1ポート部412および第2ポート部422を経て第2流路42に向かって流れる。
本実施形態では、このような流路部材4は、例えば、PPS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂のような硬質の樹脂材料で構成される。すなわち、流路部材4は、樹脂製である。これにより、流路部材4を軽量化することができる。
【0030】
流路部材4は、第1流路41を規定する壁部のうち軸方向他方側(図3中右側)の壁部の厚さが、弁体収納部43に向かって増大する第1肉厚部411を有する。この第1肉厚部411の上面(弁体5側の面)が、弁体収納部43の内壁面431の一部を構成している。また、第1肉厚部411の下面(弁体5と反対側の面)が、第2軸O2に対して傾斜する傾斜面411Aを構成している。すなわち、第1肉厚部411の厚さ(軸方向に沿った長さ)が、弁体収納部43に向かって漸増している。かかる構成により、第1流路41内で乱流が生じ難くなり、ブローバイガスQの滞留を防止または抑制することができる。
【0031】
また、流路部材4は、第2流路42を規定する壁部のうち軸方向一方側(図3中左側)の壁部の厚さが、弁体収納部43に向かって増大する第2肉厚部421を有する。この第2肉厚部421の下面(弁体5側の面)421Bが、弁体収納部43の内壁面431の一部を構成している。また、第2肉厚部421の上面(弁体5と反対側の面)が、第3軸O3に対して傾斜する傾斜面421Aを構成している。すなわち、第2肉厚部421の厚さ(軸方向に沿った長さ)が、弁体収納部43に向かって漸増している。かかる構成により、第2流路42内で乱流が生じ難くなり、ブローバイガスQの滞留を防止または抑制することができる。
【0032】
これらの第1肉厚部411と第2肉厚部421とは、それらの一部が軸方向において互いに重なっている。かかる構成により、第1流路41の第2軸O2と第2流路42の第3軸O3とを互いに近づけることができる。すなわち、流路部材4の軸方向の長さを短くすることができる。結果として、電磁弁1の小型化を図ることができる。
また、第1ポート部412は、第1流路41の第2軸O2よりも軸方向一端側に位置している。これにより、流路部材4の軸方向の長さを短くしつつも、第2肉厚部421の下面421Bの軸方向の長さを十分に確保することができる。なお、これによる効果は、後に詳述する。
【0033】
また、弁機構3は、弁体5とともに弁体収納部43に収納されるコイルバネ31を有する。コイルバネ31は、弁体5に対しX軸方向負側、すなわち、軸方向他方側に設けられる。また、コイルバネ31は、弁体収納部43の軸方向の途中に設けられた段部432と弁体5の軸方向他端側の端部(後述する第2凸部52B)との間で圧縮状態となる。これにより、弁体5に対して、X軸方負側、すなわち、軸方向他方側に押し込む押し込み力を付与することができる。この押し込み力により、弁体5を第1ポート部412から離間させることができ、よって、第1ポート部412を開状態とすることができる。なお、第1ポート部412を閉状態とするには、プランジャ22がコイルバネ31の押し込み力に抗してX軸方向正側に向かって移動した際、弁体5が第1ポート部412に接近して、当該第1ポート部412を塞ぐことにより可能となる。
【0034】
連結部材6は、リング状をなし、流路部材4に対して弁体収納部43の径方向外側に固定される。連結部材6には、ケース24の開口部244側を径方向内側に曲げてなる折り曲げ部246が引っ掛かる、すなわち、ケース24の開口部244側がカシメられる。カシメにより、連結部材6がケース24に連結され、よって、弁機構3とソレノイド2との位置関係が規制される。これにより、ソレノイド2からの動力、すなわち、プランジャ22の力を弁機構3の弁体5に伝達することができ、よって、弁体5を移動させることができる。なお、連結部材6は、連結部材201と同様に、例えば、非磁性であり、錆に対する耐性を有する金属材料で構成される。
【0035】
連結部材6とリング部材243と間には、ガスケット7が配置される。ガスケット7は、リング状をなし、弁体収納部43に対して同心状に設けられる。このガスケット7は、連結部材6とリング部材243との間で圧縮された状態となっており、これにより、連結部材6とリング部材243との間を封止することができる。なお、ガスケット7は、ガスケット204と同様に、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成される。
【0036】
流路部材4の弁体収納部43には、柱状の弁体5が挿入される。弁体5は、プランジャ22とともに軸方向に沿って一方側と他方側とに移動可能(往復動可能)に支持される。そして、弁体5が移動することにより、前記のように第1ポート部412を開閉させることができる。これにより、第1流路41と第2流路42との間で、第1ポート部412、弁体収納部43および第2ポート部422を介したブローバイガスQの通過と遮断とを切り換えることができる。
【0037】
弁体5は、樹脂製の円筒状の本体部501と、この本体部501の中心部に軸方向に沿って設けられ、本体部501を貫通する金属製のピン502とを備える。
本体部501を樹脂製とすることにより、弁体5全体としての軽量化を図ることができ、弁体5のより円滑な移動が可能となる。本体部501の構成材料としては、流路部材4で挙げたのと同様の硬質の樹脂材料を用いることができる。
弁体501に加えて流路部材4を樹脂製とすれば弁機構3全体としての軽量化を図ることができ好ましい。
【0038】
本体部501は、軸方向他方側の面5012に設けられ、軸方向一方側に向かって凹む凹部501Aを備える。凹部501Aを設けることにより、本体部501(弁体5)のさらなる軽量化を図ることができる。また、プランジャピン221の軸方向一端側の端部形状によらず、弁体5をプランジャ22と組み立て易くなる。すなわち、市販の各種ソレノイドを使用することができ、よって、電磁弁1の製造コストを削減することができる。
【0039】
この凹部501Aの底面において、ピン502の軸方向他方側の端面が露出している。本実施形態では、プランジャピン221の軸方向一端側の端部が凹部501A内に位置し、ピン502の軸方向他方側の端面とプランジャピン221の軸方向一方側の端面とが接触している。これにより、プランジャ22によって、弁体5をより確実に軸方向一方側に向かって押し込むことができる。この場合、プランジャピン221も金属製であることが好ましい。金属製のピン502と金属製のプランジャピン221とを直接接触させることにより、ソレノイド2による押圧力を弁体5に確実に伝達することができる。
なお、ピン502およびプランジャピン221を構成する材料には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金のような各種金属材料を用いることができる。
【0040】
ピン502は、その外径が縮径した2つの縮径部502A、502Bを有する。これらのうち、第1縮径部502Aは、ピン502の軸方向他方側に位置し、第2縮径部502Bは、ピン502の軸方向一方側に位置して設けられている。
第1縮径部502Aは、本体部501内に位置し、本体部501と接触することにより、本体部501のピン502に対する軸方向への移動を規制する。かかる簡単な構成で、本体部501のピン502からの脱落を防止することができる。
一方、第2縮径部502Bは、本体部501の軸方向一方側の面5011から、本体部501から軸方向一方側に突出している。
【0041】
この本体部501から突出する第2縮径部502Bに接触して、リング状の弾性を有する弁部53が設けられている。すなわち、弁体5は、さらに、ピン502のX軸方向正側に装着された弁部(シール部)53を有する。
弁部53は、弁体5が第1ポート部412を閉状態とするときに、第1ポート部412の周縁に接触することができる。これにより、第1ポート部412が十分に閉状態となり、よって、ブローバイガスQがより確実に遮断される。すなわち、第1ポート部412の閉状態において、第1ポート部412の周縁は、弁部53(弁体5)が接触する弁座部分として機能する。したがって、本実施形態では、当該弁座部分および第1ポート部412を含む領域が、第1流路41と第2流路42とを繋ぐ中継部を構成している。
なお、弁部53は、ガスケット204と同様に、例えば、ウレタンゴム等の弾性材料で構成される。
これらの本体部501とピン502とは、アウトサート成形による組立体であってもよいが、インサート成形による一体成形品であることが好ましい。インサート成形によれば、本体部501とピン502とをより強固に固定することができる。
【0042】
図3に示すように、弁体5(本体部501)は、複数の凸部52を有する。複数の凸部52は、それぞれ、弁体5の外周部51からその径方向外側に向かって突出して設けられる。
また、これらの複数の凸部52のうち、軸方向一方側の端部に位置する凸部52を「第1凸部52A」と言い、軸方向他方側の端部に位置する凸部52を「第2凸部52B」と言う。第1凸部52Aは、図4に示すように、弁体5の周方向に沿って等間隔に3つ設けられ、第2凸部52Bも、弁体5の周方向に沿って等間隔に3つ設けられる。なお、第1凸部52Aと第2凸部52Bとは、それぞれ、弁体5の周方向に沿って3つ設けられるが、これに限定されず、例えば、4つ以上であってもよい。また、第1凸部52Aの設置数と、第2凸部52Bの設置数とは、同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
【0043】
そして、図4に示すように、各凸部52の径方向最も外側に位置する頂部521は、弁体5が移動した際に、弁体収納部43の内壁面431に接して案内される。これにより、弁体5としての、内壁面431との摺動面積(接触面積)をできる限り抑えることができ、これに伴って、摺動抵抗もできる限り抑えることができる。その結果、弁体5の安定した摺動が可能となる、すなわち、弁体5の摺動性が向上する。また、ブローバイガスQに異物が含まれていたとしても、各凸部52の頂部521の面積が小さい分、当該異物(デポジット)が頂部521に付着するのを抑制または防止することができる。これにより、異物(デポジット)で弁体5の移動が妨げられるのを防止することができ、よって、弁体5の摺動性がさらに向上する。
【0044】
図3に示すように、各第2凸部52Bは、コイルバネ31の軸方向他方側の端部が接触するバネ座として機能し、弁体収納部43の段部432は、コイルバネ31の軸方向一方側の端部が接触するバネ座として機能する。これにより、当該バネ座を別途設けるのを省略することができ、よって、電磁弁1を簡単な構成とすることができる。
前述したように、第1凸部52Aおよび第2凸部52Bは、それぞれ、弁体5の周方向に沿って等間隔に3つ設けられる。また、第1凸部52Aと第2凸部52Bとは、軸方向に離間して設けられる。これにより、弁体収納部43内での弁体5の姿勢を維持することができ、よって、弁体収納部43内で弁体5が安定して移動することができる。
【0045】
特に、図3に示す構成では、第1凸部52Aおよび第2凸部52Bを、それぞれ弁体5の軸方向両端部に設け、第1凸部52Aが第2ポート部422(第3軸O3)よりも軸方向一方側の領域で移動するようにしたので、上記効果がより向上して、第1ポート部412のより正確な開閉が可能となる。
本実施形態では、第1凸部52Aは、第1ポート部412(第2軸O2)と第2ポート部422(第3軸O3)との間で移動するように構成されており、弁体5のストロークを十分に確保することができる。よって、第1ポート部412の開放時(ソレノイド2の非作動時)に、ブローバイガスQが通過可能な弁体収納部43内の空間の大きさを十分に増大させ、その円滑な通過を可能にする。
さらに、第1ポート部412が第2軸O2(第1流路41の中心軸)よりも軸方向一方側に位置することにより、弁体5のストロークをさらに大きく確保することができ、よって、上記効果をより向上させることができる。
【0046】
図4に示すように、各凸部52は、弁体5の周方向に沿った幅W52が径方向外側に向かって徐々に減少する、すなわち、漸減する。これにより、弁体5の移動時の各凸部52の強度を保ちつつ、弁体収納部43の内壁面431に対する各凸部52の摺動面積をできる限り抑えることができる。
また、前述したように、弁体収納部43の横断面形状は円形である。そして、各凸部52の頂部521は、弁体収納部43の円形形状の曲率と同じ円弧状である。これにより、弁体5の円滑な摺動が可能となる。
【0047】
また、第1ポート部412が開状態のときに第2流路42側に陰圧が作用した場合、ブローバイガスQは、周方向において隣り合う凸部52同士の間を通過することができる。これにより、弁体5に対するX軸方向正側と負側との圧力が相殺されることとなり、よって、弁体5の不本意な移動を防止することができる。ここでの「陰圧」とは、第1流路41側の圧力よりも第2流路42側の圧力が低くなる状態のこと言う。
【0048】
以上、本発明の電磁弁を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電磁弁を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の電磁弁は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0049】
また、電磁弁1は、前記実施形態ではエンジン等の内燃機関10を備える車両100に搭載して用いられた場合となっているが、電磁弁1の適用箇所は、車両100に限定されない。また、電磁弁1によって通過と遮断とが切り換えられる流体も、気体(ブローバイガスQ)に限定されず、液体または気体と液体との混合物であってもよい。
また、電磁弁1は、前記実施形態ではブローバイガスQが第1流路41から第2流路42に向かって流れる構成となっているが、電磁弁1の使用状態によっては、ブローバイガスQを第2流路42から第1流路41に向かって流すこともできる。
【0050】
また、弁体5が有する凸部52の形状は、軸方向に沿った凸条であってもよく、弁体5の周方向に沿ったリング状であってもよい。
また、第1ポート部412は、軸方向に沿った長さを有さない中継用の孔(中継孔)に限らず、軸方向に沿った所定の長さを有する中継用の流路(中継流路)であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…電磁弁、2…ソレノイド、21…ボビン、211…貫通孔、212…フランジ、213…フランジ、214…外周部、22…プランジャ、221…プランジャピン、222…プランジャ本体、23…コイル、24…ケース、241…ケース本体、242…コネクタ部材、243…リング部材、244…開口部、245…壁部、246…折り曲げ部、25…コア、26…ヨーク、262…壁部、201…連結部材、202…ブッシュ、203…ブッシュ、204…ガスケット、205…ガスケット、3…弁機構、31…コイルバネ、4…流路部材、41…第1流路、411…第1肉厚部、411A…傾斜面(上面)、412…第1ポート部、42…第2流路、421…第2肉厚部、421A…傾斜面(上面)、421B…下面、422…第2ポート部、43…弁体収納部、431…内壁面、432…段部、45…ガスケット、5…弁体、501…本体部、5011、5012…面、501A…凹部、502…ピン、51…外周部、52…凸部、52A…第1凸部、52B…第2凸部、521…頂部、53…弁部、6…連結部材、7…ガスケット、O1…第1軸、O2…第2軸、O3…第3軸、Q…ブローバイガス、W52…幅、AR…混合気

図1
図2
図3
図4