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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20240305BHJP
   B43M 11/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B43L19/00 H
B43M11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019188200
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062537
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 草
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148119(JP,A)
【文献】特開平08-040630(JP,A)
【文献】実開平07-031752(JP,U)
【文献】実開平4-46070(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0031873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 19/00
B43M 11/06
B65H 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、
前記両リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成し共通軸周りに回転する二つの回転要素間に滑りを生じさせて前記転写テープのテンションを適正化するための滑りクラッチ機構とを具備してなり、
前記滑りクラッチ機構は、一方の回転要素と一体的に回転する圧縮コイルバネを含んで構成されたものであり、
前記圧縮コイルバネは、基端側が前記一方の回転要素と一体的に回転するように固定されるとともに先端前記共通軸に直交する姿勢で他方の回転要素に設けられたバネ受面に前記共通軸方向の収縮により生じる弾性復帰力により弾性的に摺接するものであり、
前記圧縮コイルバネの前記他方の回転要素側の端部における巻き方向は、前記他方の回転要素に入力される回転方向と逆方向に設定されている転写具。
【請求項2】
前記一方の回転要素は、前記圧縮コイルバネの基端部における外周面及び内周面の少なくとも一方に圧接するバネ保持部材を備えたものである請求項1記載の転写具。
【請求項3】
前記リール連動機構は、前記繰出用のリールの内周に嵌合する第一のコア部材と、この第一のコア部材とともに回転する第一の連動ギアと、この第一の連動ギアに噛合する第二の連動ギアと、この第二の連動ギアとともに回転し前記巻取用のリールの内周に嵌合する第二のコア部材とを備えたものであり、
前記滑りクラッチ機構は前記第一のコア部材と前記第一の連動ギアとの間及び前記第二の連動ギアと前記第二のコア部材との間の何れか一方に設けられている請求項1又は2記載の転写具。
【請求項4】
前記一方の回転要素が前記第一の連動ギアであり、前記他方の回転要素が前記第一のコア部材である請求項3記載の転写具。
【請求項5】
前記一方の回転要素は、前記圧縮コイルバネの基端部における外周面及び内周面の少なくとも一方に圧接するバネ保持部材を備えたものであり、
前記バネ保持部材が、前記第一の連動ギアの中心部に設けられた円筒体状のものであり、このバネ保持部材内に前記圧縮コイルバネの基端部が圧入されている請求項4記載の転写具。
【請求項6】
繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、
前記両リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成し共通軸周りに回転する二つの回転要素間に滑りを生じさせて前記転写テープのテンションを適正化するための滑りクラッチ機構とを具備してなり、
前記滑りクラッチ機構は、一方の回転要素と一体的に回転する圧縮コイルバネを含んで構成されたものであり、
前記圧縮コイルバネは、基端側が前記一方の回転要素と一体的に回転するように固定されるとともに先端前記共通軸に直交する姿勢で他方の回転要素に設けられたバネ受面に前記共通軸方向の収縮により生じる弾性復帰力により弾性的に摺接するものであり、
前記圧縮コイルバネは、先端側の小口端面が前記バネ受面に対して引っ掛からない方向に回転し得る転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、糊等の転写物が添着された転写テープが繰り出される繰出用のリールと、この繰出用のリールから繰り出された転写テープを巻き取るための巻取用のリールと、これら両リールの回転を連動させるリール連動機構とを備えた転写具が知られている。
【0003】
この種の転写具には、特許文献1に示すように、転写テープのテンションを適正化するために、繰出用のギアと繰出リールを支持し得るスペーサとの間に、コイルスプリングを配したものが存在する。特許文献1に開示された転写具は、コイルスプリングにおける径方向の変位による弾性力を利用して、繰出用のギアとスペーサとの間に滑りを生じさせ得る構成をなしている。
【0004】
ところが、このような構成のものであると、繰出用のギアやスペーサに対して径方向に付勢するコイルスプリングが広範囲に摺接するものとなるため、繰出用のギアに対するスペーサの滑り度合いの設定が難しいだけでなく、繰出用のギア及びスペーサの双方が摩耗により劣化し易いという不具合を有している。
【0005】
なお、以上の事情は、繰出用のギアと繰出用のリールを支持する部材との間にコイルスプリングを配した態様のものに限られるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許公報第5382655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、滑りクラッチ機構を構成する圧縮コイルバネと回転要素とが好適に摺接し得る転写具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、前記両リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成し共通軸周りに回転する二つの回転要素間に滑りを生じさせて前記転写テープのテンションを適正化するための滑りクラッチ機構とを具備してなり、前記滑りクラッチ機構は、一方の回転要素と一体的に回転する圧縮コイルバネを含んで構成されたものであり、前記圧縮コイルバネは、基端側が前記一方の回転要素と一体的に回転するように固定されるとともに先端前記共通軸に直交する姿勢で他方の回転要素に設けられたバネ受面に前記共通軸方向の収縮により生じる弾性復帰力により弾性的に摺接するものであり、前記圧縮コイルバネの前記他方の回転要素側の端部における巻き方向は、前記他方の回転要素に入力される回転方向と逆方向に設定されている転写具である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記一方の回転要素は、前記圧縮コイルバネの基端部における外周面及び内周面の少なくとも一方に圧接するバネ保持部材を備えたものである請求項1記載の転写具である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記リール連動機構は、前記繰出用のリールの内周に嵌合する第一のコア部材と、この第一のコア部材とともに回転する第一の連動ギアと、この第一の連動ギアに噛合する第二の連動ギアと、この第二の連動ギアとともに回転し前記巻取用のリールの内周に嵌合する第二のコア部材とを備えたものであり、前記滑りクラッチ機構は前記第一のコア部材と前記第一の連動ギアとの間及び前記第二の連動ギアと前記第二のコア部材との間の何れか一方に設けられている請求項1又は2記載の転写具である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記一方の回転要素が前記第一の連動ギアであり、前記他方の回転要素が前記第二のコア部材である請求項3記載の転写具である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記一方の回転要素は、前記圧縮コイルバネの基端部における外周面及び内周面の少なくとも一方に圧接するバネ保持部材を備えたものであり、前記バネ保持部材が、前記第一の連動ギアの中心部に設けられた円筒体状のものであり、このバネ保持部材内に前記圧縮コイルバネの基端部が圧入されている請求項4記載の転写具である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、繰出用のリールから繰り出された転写テープを転写ヘッドを経由させて巻取用のリールに巻き取らせるようにした転写具であって、前記両リールの回転を連動させるリール連動機構と、このリール連動機構を構成し共通軸周りに回転する二つの回転要素間に滑りを生じさせて前記転写テープのテンションを適正化するための滑りクラッチ機構とを具備してなり、前記滑りクラッチ機構は、一方の回転要素と一体的に回転する圧縮コイルバネを含んで構成されたものであり、前記圧縮コイルバネは、基端側が前記一方の回転要素と一体的に回転するように固定されるとともに先端前記共通軸に直交する姿勢で他方の回転要素に設けられたバネ受面に前記共通軸方向の収縮により生じる弾性復帰力により弾性的に摺接するものであり、前記圧縮コイルバネは、先端側の小口端面が前記バネ受面に対して引っ掛からない方向に回転し得る転写具である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、滑りクラッチ機構を構成する圧縮コイルバネと回転要素とが好適に摺接し得る転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における分解斜視図。
図3】同実施形態における分解斜視図。
図4】同実施形態における右側面図。
図5図4におけるX-X線断面図。
図6】同実施形態における右側面図。
図7】同実施形態における圧縮コイルバネの説明図。
図8】同実施形態における右側面図。
図9図8におけるY-Y線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図1~9を参照して説明する。
【0018】
この実施形態は、本発明を、転写物である糊(図示せず)を、用紙等の転写対象面(図示せず)に対して転写するための転写具に適用したものである。
【0019】
転写具は、帯状の基材t1及び当該基材t1の片面に所定のパターンで貼着した糊(図示せず)を有した転写テープTを内部に収容させている。転写具は、転写ヘッドHに裏当された転写テープTを転写対象面に押し付けることにより、糊を転写対象面に対して塗り付けし得るものである。
【0020】
転写具は、繰出用のリール3から繰り出された転写テープTを、転写ヘッドHを経由させて巻取用のリール4に巻き取らせるようにしている。換言すれば、転写具は、使用者による操作に連動させて転写テープTを繰出用のリール3から転写ヘッドHを経由して巻取用のリール4に移動させ得る構成をなしている。
【0021】
転写具は、繰出用のリール3及び巻取用のリール4の回転を連動させるリール連動機構Gを設けてなるケースCと、ケースCに対して着脱可能に構成されたリフィルRとを備えている。リフィルRは、繰出用のリール3、転写ヘッドH、及び、巻取用のリール4を保持してなるものである。
【0022】
<<ケースC>>
ケースCは、リール連動機構Gが配設されたケース本体1と、ケース本体1に対してスライド可能に支持されたスライド部材2とを備えたものである。
【0023】
<ケース本体1>
ケース本体1は、リール連動機構Gが収容された内部空間の左側を覆う外側壁11と、外側壁11の下縁から当該外側壁11と略直交する方向に延設された下壁12と、外側壁11の上縁から当該外側壁11と略直交する方向に延設された上壁13とを備えている。
【0024】
外側壁11には、繰出用のリール3の回転中心をなす第一の支軸J1と巻取用のリール4の回転中心をなす第二の支軸J2が立設されている。第一の支軸J1は、第二の支軸J2よりも後に設けられている。第一の支軸J1の先端部には、第一の連動ギアである繰出ギアBを抜け止めするための爪状の抜け止め部j11が設けられている。第二の支軸J2の先端部には、第二の連動ギアである巻取ギアNを抜け止めするための爪状の抜け止め部j21が設けられている。
【0025】
<スライド部材2>
スライド部材2は、ケース本体1の外側壁11に設けたスリット111に沿って、前後方向にスライド移動可能に構成されたものである。スライド部材2は、ケース本体1に対して通常位置(B)と離間位置(S)との間でスライド移動し得るものとなっている。リフィルRは、スライド部材2が離間位置(S)にあるときに、ケース本体1に対して装脱され得るものとなっている。
【0026】
スライド部材2は、ケース本体1の外側壁11に沿って配される後外側壁21と、後外側壁21に対して略直交する方向に延設され繰出用のリール3の上側、後側、及び、下側を覆い得る側面視部分円弧状の形状をなす周壁22とを備えている。
【0027】
後外側壁21の前端部には、ケース本体1に形成されたスリット111に係り合う係合突起211が設けられている。また、周壁22における上下の各前端部には、前方に向けて係合爪222が突設されており、通常位置(B)においてケース本体1の下壁12及び上壁13に設けた係合孔121、131に係合し得るものとなっている。
【0028】
<<リフィルR>>
リフィルRは、内部空間の右側を覆う外側壁を構成する支持板r1と、支持板r1の前部に対向配置された内側板r2と、転写テープTが巻装され支持板r1の後部に当該支持板r1に対して回転可能に支持された繰出用のリール3と、繰出用のリール3から繰り出された転写テープTを巻き取るものであり支持板r1と内側板r2との間に回転可能に配された巻取用のリール4と、支持板r1及び内側板r2に支持された転写ヘッドHとを備えたものである。
【0029】
リフィルRは、転写テープTを繰出用のリール3に巻回しているとともに繰出用のリール3から引き出された転写テープTを転写ヘッドHを経由させた上で巻取用のリール4に至らせているものである。
【0030】
支持板r1及び内側板r2における前端部の下部には、転写ヘッドHを保護し得る転写ヘッドカバー5が回転可能に取り付けられている。支持板r1の後端部には、後方に突出した係合凸部r11が設けられている。係合凸部r11は、スライド部材2が通常位置(B)にあるときに、周壁22に形成された係合凹部221に係合し得るものとなっている。
【0031】
繰出用のリール3は、その内周にリール連動機構Gを構成する第一のコア部材Aが嵌合し得るものとなっている。
【0032】
巻取用のリール4は、その内周にリール連動機構Gを構成する第二のコア部材Eが嵌合し得るものとなっている。
【0033】
<リール連動機構G>
リール連動機構Gは、繰出用のリール3の内周に嵌合する第一のコア部材Aと、第一のコア部材Aとともに回転する第一の連動ギアである繰出ギアBと、繰出ギアBに噛合する第二の連動ギアである巻取ギアNと、巻取ギアNとともに回転し巻取用のリール4の内周に嵌合する第二のコア部材Eとを備えたものである。
【0034】
さらに、リール連動機構Gは、共通軸周りに回転する二つの回転要素、すなわち第一の支軸J1の軸心周りに回転する一方の回転要素である繰出ギアBと他方の回転要素である第一のコア部材Aとの間に滑りを生じさせて転写テープTのテンションを適正化するための滑りクラッチ機構Fを備えている。
【0035】
第一のコア部材Aは、第一の支軸J1及び繰出ギアBの支持部材b3が内部に配される円筒体状のボス部a1と、ボス部a1の先端縁から当該ボス部a1に対して略直交する外方に延設されたドーナツ板状をなす中間壁a2と、中間壁a2の外側端縁から当該中間壁a2に対して略直交する方向に延設された円筒体状の繰出リール係合部a3とを備えている。
【0036】
ボス部a1は、繰出リール係合部a3よりも小径をなす円筒状をなしている。ボス部a1の外周には圧縮コイルバネVにおける先端側が取り囲むように配設されている。ボス部a1は、後述する支持部材b3の突出方向に沿って長く延設されている。
【0037】
中間壁a2は、ボス部a1側を向く面に第一の支軸J1の軸方向に直交する姿勢をなすバネ受面mが設けられている。換言すれば、バネ受面mは、圧縮コイルバネV側を臨む平滑面となっている。バネ受面mには、圧縮コイルバネVにおける先端部v2が摺動可能に当接している。
【0038】
繰出リール係合部a3は、ボス部a1よりも大径をなす円筒状をなしている。繰出リール係合部a3には、外方に向かって繰出用のリール3と係合し得る複数の係合突起tが突設されている。
【0039】
繰出ギアBは、外周縁に設けられ巻取ギアNと噛合する歯b1と、中心部に配設され圧縮コイルバネVの基端部v1を保持し得るバネ保持部材b2と、バネ保持部材b2よりも内側に配設され第一のコア部材Aを回転可能に支持し得る軸状の支持部材b3とを備えたものである。繰出ギアBは、歯b1、バネ保持部材b2、及び、支持部材b3を合成樹脂により一体に形成したものである。
【0040】
バネ保持部材b2は、圧縮コイルバネVの基端部v1における外周面v11に圧接するものである。バネ保持部材b2は、繰出ギアBの中心部に設けられた円筒体状のものである。すなわち、バネ保持部材b2は、円筒状をなすバネ保持部材本体b21と、バネ保持部材本体b21の内周面から内方に向けて突設された複数のバネ圧接部b22とを備えている。
【0041】
圧縮コイルバネVは、その基端部v1がバネ保持部材b2内に圧入されることにより繰出ギアBに対して固定され得るものとなっている。つまり、圧縮コイルバネVにおける基端部v1の外周面v11に対して、バネ保持部材本体b21に突設されたバネ圧接部b22が外側から圧接することにより、圧縮コイルバネVが繰出ギアBに対して一体的に回転し得る程度に固定されるものとなっている。
【0042】
支持部材b3は、第一のコア部材Aを回転可能に支持し得るものである。支持部材b3は、第一の支軸J1の外側に位置し当該第一の支軸J1と軸心を同一にして突設されている。支持部材b3の先端部には、圧縮コイルバネVにより付勢される第一のコア部材Aを位置決めし得る爪状の抜け止め部b31が設けられている。この実施形態では、比較的長く設定された第一のコア部材Aのボス部a1が、支持部材b3の外周に装着されているため、支持部材b3と第一のコア部材Aの繰出リール係合部a3との間の嵌合部のガタを減らし、繰出用のリール3の傾きを抑制し得るものとなっている。
【0043】
第一のコア部材Aは、圧縮コイルバネVによって常時繰出ギアBから離れる方向に付勢されている。そして、第一のコア部材Aの位置は、支持部材b3に設けた抜け止め部b31が中間壁a2に係り合うことにより規定されている。なお、第一の支軸J1の抜け止め部j11は、支持部材b3の先端部に係合することにより、繰出ギアBを抜け止めしている。
【0044】
巻取ギアNは、繰出ギアBと噛合する歯n1を外周縁に設けたものである。巻取ギアNは、第二の支軸J2に対して回転可能に支持されている。なお、この実施形態では、巻取ギアNの中心部には第二のコア部材Eが一体に設けられている。
【0045】
第二のコア部材Eは、第二の支軸J1が内部に配される円筒体状の巻取リール係合部e1を主体に構成されている。巻取リール係合部e1には、外方に向かって巻取用のリール4と係合し得る複数の係合突起kが突設されている。第二の支軸J2の抜け止め部j21は、巻取リール係合部e1の先端縁に係合することにより、巻取ギアN及び第二のコア部材Eを抜け止めしている。
【0046】
続いて、本実施形態におけるリール連動機構Gを構成する滑りクラッチ機構Fについて説明する。
【0047】
滑りクラッチ機構Fは、基端部v1側を繰出ギアBに固定するとともに先端部v2を共通軸に直交する姿勢で第一のコア部材Aに設けられたバネ受面mに共通軸方向の収縮により生じる弾性復帰力により弾性的に摺接させた圧縮コイルバネVを備えている。
【0048】
滑りクラッチ機構Fは、入力される回転方向Dに回転する繰出ギアB及び当該繰出ギアBと一体的に回転する圧縮コイルバネVに対して、第一のコア部材Aが繰出ギアB及び圧縮コイルバネVよりも回転方向Dに早く回転することにより、繰出ギアB及び圧縮コイルバネVと第一のコア部材Aとの間に滑りが生じ得るものとなっている。
【0049】
この実施形態では、圧縮コイルバネVの巻き方向Lが、繰出ギアB及び第一のコア部材Aに入力される回転方向Dと逆方向に設定されている。この実施形態では、圧縮コイルバネVの巻き方向Lは、特に図7に示すように、端部からみて右巻きとなっている。換言すれば、滑りクラッチ機構Fを構成する圧縮コイルバネVは、その先端部v2の小口端面v21が繰出ギアB及び第一のコア部材Aに入力される回転方向Dと同じ方向を向く構成のものが用いられている。
【0050】
続いて、本実施形態における転写具の作動について説明する。
【0051】
転写具は、転写ヘッドHの転写ローラーh1に裏当てされた転写テープTが転写対象面に当接しつつ移動させられると、繰出用のリール3から転写テープTが順次繰り出されるようになっている。これと同時に、転写テープTの移動により生ずる繰出用のリール3の回転力がリール連動機構Gを介して巻取用のリール4に伝達されることにより、転写テープTが巻取用のリール4に巻き取られるようになっている。
【0052】
繰出用のリール3の回転力は、第一のコア部材Aに伝達されるとともに、滑りクラッチ機構Fを介して繰出ギアBに伝達される。さらに、繰出用のリール3の回転力は、繰出ギアBに噛合した巻取ギアNを介して第二のコア部材Eに外嵌した巻取用のリール4に伝達される。そして、回転力を得た巻取用のリール4は、転写テープTを巻き取ることになる。
【0053】
繰出用のリール3に巻回された転写テープTの残量が減少し、巻取用のリール4に巻き取られた転写テープTの巻取量が増えていくと、繰出用のリール3の回転数が増えていくとともに巻取用のリール4の回転数も増えていく。この結果、巻取用のリール4と繰出用のリール3との間の転写テープTの張力は次第に増大していくことになり、繰出用のリール3から第一のコア部材Aに伝達される回転力も転写テープTの張力と比例して増大していくことになる。
【0054】
この回転力が所定以上に増大すると、第一のコア部材Aと圧縮コイルバネVとの間の摩擦力よりも第一のコア部材Aの回転力が大きくなり、第一のコア部材Aが圧縮コイルバネVに対して回転方向Dに滑り動くことになる。すなわち、第一のコア部材Aが、圧縮コイルバネVよりも入力される回転方向Dに対して早く回転することになる。
【0055】
この実施形態では、圧縮コイルバネVの巻き方向Lが、繰出ギアB及び第一のコア部材Aに入力される回転方向Dと逆方向に設定されている。このため、第一のコア部材Aのバネ受面mが圧縮コイルバネVの先端部v2に対して滑り動く際に、当該先端部v2の小口端面v21がバネ受面mに対して引っ掛かることが無い。
【0056】
つまり、圧縮コイルバネVにおける小口端面v21の周縁には、平滑面に対して引っ掛かり易い直角部分が形成されやすい。仮に、平滑面の回転方向が、小口端面v21が向く方向と反対の方向に回転する場合には、平滑面と小口端面v21の周縁部とが引っ掛かり易いものとなる。
【0057】
しかしながら、この実施形態では、圧縮コイルバネVは、バネ受面mに対して小口端面v21が引っ掛からない巻き方向Lのものが適用されている。そして、バネ受面mは、圧縮コイルバネVの小口端面v21が向く方向と同じ方向に回転するようになっている。そのため、第一のコア部材Aと圧縮コイルバネVとが相対回転する際に、圧縮コイルバネVに対して第一のコア部材Aが滑らかに滑り動き得るものとなっている。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る転写具は、繰出用のリール3から繰り出された転写テープTを転写ヘッドHを経由させて巻取用のリール4に巻き取らせるようにしたものである。
【0059】
そして、繰出用のリール3及び巻取用のリール4の回転を連動させるリール連動機構Gと、リール連動機構Gを構成し共通軸周りに回転する二つの回転要素たる繰出ギアB及び第一のコア部材A間に滑りを生じさせて転写テープTのテンションを適正化するための滑りクラッチ機構Fとを具備している。
【0060】
滑りクラッチ機構Fは、基端側を一方の回転要素である繰出ギアBに固定するとともに先端を共通軸に直交する姿勢で他方の回転要素である第一のコア部材Aに設けられたバネ受面mに共通軸方向の収縮により生じる弾性復帰力により弾性的に摺接させた圧縮コイルバネVを備えている。しかして、圧縮コイルバネVの巻き方向Lは、第一のコア部材A及び繰出ギアBに入力される回転方向Dと逆方向に設定されている。
【0061】
このため、滑りクラッチ機構Fを構成する圧縮コイルバネVと第一のコア部材Aとが好適に摺接し得る転写具を提供することができる。
【0062】
つまり、圧縮コイルバネVにおける軸方向の収縮により生じる弾性復帰力を用いて滑りクラッチ機構Fが構成されている。そして、圧縮コイルバネVにおける巻き方向Lが、第一のコア部材Aに入力される回転方向Dと反対方向になっている。
【0063】
そのため、圧縮コイルバネVに対して第一のコア部材Aが滑り動く際に、当該圧縮コイルバネVの先端部v2が第一のコア部材Aのバネ受面mに引っ掛かり難いものとなりスムーズな相対回転すなわち滑り動作を実現し得るものとなっている。
【0064】
さらに、圧縮コイルバネVの基端部v1側が繰出ギアBに固定されているため、滑り可能に当接し合う部位が圧縮コイルバネVの先端部v2と第一のコア部材Aにおけるバネ受面mに集約されたものになっている。
【0065】
そのため、繰出ギアBと第一のコア部材Aとの間に滑りを生じさせるためのトルクコントロールを容易にできるものとなるだけでなく、摩擦により生じ得る部品の摩耗や劣化も好適に抑制し得る設計の自由度に優れたものとなっている。
【0066】
一方の回転要素である繰出ギアBは、圧縮コイルバネVの基端部v1における外周面v11に圧接するバネ保持部材b2を備えている。
【0067】
このため、圧縮コイルバネVの基端部v1側がバネ保持部材b2による径方向の押圧により繰出ギアBに支持され得るものとなるため、圧縮コイルバネVの繰出ギアBに対する取り付けが円滑に行われ得るものとなっている。
【0068】
リール連動機構Gが、繰出用のリール3の内周に嵌合する第一のコア部材Aと、第一のコア部材Aとともに回転する第一の連動ギアたる繰出ギアBと、繰出ギアBに噛合する第二の連動ギアたる巻取ギアNと、巻取ギアNとともに回転し巻取用のリール4の内周に嵌合する第二のコア部材Eとを備えたものである。そして、滑りクラッチ機構Fが第一のコア部材Aと繰出ギアBとの間に設けられている。
【0069】
このため、転写テープTに作用する張力を適切に調整し得る滑りクラッチ機構Fが、繰出用のリール3側に設けられるものとなり、好適に作用し得るものとなっている。
【0070】
バネ保持部材b2が、繰出ギアBの中心部に設けられた円筒体状のものである。そして、繰出ギアBに設けられたバネ保持部材b2内に圧縮コイルバネVの基端部v1が圧入されている。
【0071】
このため、繰出ギアBに圧縮コイルバネVを圧入により装着し、滑りクラッチ機構Fを好適に構成し得るものとなっている。
【0072】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0073】
転写具は、転写物を転写対象面に転写するものであればどのようなものであってもよい。換言すれば、転写物は、本実施形態に示された糊に限られるものではなく、例えば、修正用の修正剤(修正テープ)や装飾用の装飾剤(装飾テープ)であってもよい。
【0074】
転写具は、上述した実施形態で示したようないわゆるリフィル交換タイプのものに限られるものではない。例えば、他の転写具としては、転写テープが無くなった場合は以後使用できなくなるいわゆるディスポーザブルタイプのものであってもよい。
【0075】
滑りクラッチ機構は、リール連動機構を構成し共通軸周りに回転する二つの回転要素間に滑りを生じさせて転写テープのテンションを適正化するためのものであればよい。例えば、滑りクラッチ機構を構成する一方の回転要素が第二のギアたる巻取ギアであり、他方の回転要素が巻取ギアに対して回転可能に構成された第二のコア部材であってもよい。
【0076】
圧縮コイルバネの基端側が固定される一方の回転要素は、繰出ギアに限られるものではなく、第一のコア部材であってもよい。換言すれば、他方の回転要素は、第一のコア部材に限られるものではなく、繰出ギアであってもよい。なお、このときの繰出ギアに入力される回転方向とは、図8と同様すなわち、第一のコア部材を繰出ギアよりも手前に位置させて見た場合に特定される方向である。
【0077】
一方の回転要素のバネ保持部材は、圧縮コイルバネの基端部における外周面に圧接するものには限られず、外周面及び内周面の少なくとも一方に圧接するものであればよい。
【0078】
圧縮コイルバネの巻き方向は、回転要素に入力される回転方向と逆方向に設定されているものであればよく、左巻きのものであっても実現し得るものであることは言うまでもない。
【0079】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
3…繰出用のリール
4…巻取用のリール
D…回転方向
F…滑りクラッチ機構
G…リール連動機構
H…転写ヘッド
L…(圧縮コイルバネの)巻き方向
T…転写テープ
V…圧縮コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9