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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/296 20210101AFI20240305BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20240305BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240305BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240305BHJP
   H01M 50/298 20210101ALI20240305BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20240305BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240305BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M50/296
H01G11/12
H01G11/78
H01M50/209
H01M50/298
H01M50/507
H01M50/588
H01M50/591
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019192446
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021068567
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】飛鷹 強志
(72)【発明者】
【氏名】川内 智弘
(72)【発明者】
【氏名】楠 寿樹
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186001(JP,A)
【文献】特開2018-063882(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131182(WO,A1)
【文献】特開2016-027578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/209
H01M 50/296
H01M 50/298
H01M 50/507
H01M 50/588 - 595
H01G 11/12
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、電極端子が配置された端子配置面を有する複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子の前記端子配置面それぞれの少なくとも一部を一括して覆う部分を有する絶縁部材と、
前記複数の蓄電素子の内の1つである所定の蓄電素子が有する前記電極端子の端子面に接続された導電部材とを備え、
前記複数の蓄電素子を、前記端子配置面が上向きとなる姿勢にした場合において、
前記端子面は、前記電極端子の上面であり、
前記絶縁部材の下端部は、上下方向において、前記端子面より下に位置し、
前記絶縁部材は、前記所定の蓄電素子の側方に位置する壁部を有し、
前記壁部は、前記導電部材が貫通して配置される第一開口部であって、前記上下方向において、前記端子面と同じ位置を含む範囲に設けられた第一開口部を有
前記第一開口部は、前記絶縁部材の前記下端部から切欠き状に設けられている、
蓄電装置。
【請求項2】
それぞれが、電極端子が配置された端子配置面を有する複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子の前記端子配置面それぞれの少なくとも一部を一括して覆う部分を有する絶縁部材と、
前記複数の蓄電素子の内の1つである所定の蓄電素子が有する前記電極端子の端子面に接続された導電部材とを備え、
前記複数の蓄電素子を、前記端子配置面が上向きとなる姿勢にした場合において、
前記端子面は、前記電極端子の上面であり、
前記絶縁部材の下端部は、上下方向において、前記端子面より下に位置し、
前記絶縁部材は、前記所定の蓄電素子の側方に位置する壁部を有し、
前記壁部は、前記導電部材が貫通して配置される第一開口部であって、前記上下方向において、前記端子面と同じ位置を含む範囲に設けられた第一開口部を有し
前記絶縁部材は、前記第一開口部における前記導電部材の上方に位置し、前記導電部材の上方への移動を規制する規制部を有する、
電装置。
【請求項3】
さらに、上方が開口したケースであって、前記複数の蓄電素子を収容するケースを備え、
前記ケースの上端部は、前記上下方向において、前記電極端子の前記端子面より上に位置し、
前記ケースは、前記第一開口部に対向する位置に配置され、前記導電部材が貫通して配置される第二開口部を有する、
請求項1または2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記複数の蓄電素子を電気的に接続する1以上のバスバーを保持するバスバーフレームである、
請求項1~のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子を備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の蓄電素子を収容する外装体と、外装体の外部に設けられた正極外部端子及び負極外部端子を備える蓄電装置が開示されている。正極外部端子及び負極外部端子のそれぞれは端子カバー本体部に覆われる。端子カバー本体部には開口部が設けられており、端子カバー本体部は、開口部が異なる位置に配置されるように、正極外部端子または負極外部端子に対して回転可能に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-204296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された蓄電装置のような従来の蓄電装置では、例えば、基板及びバスバー等を保持する内蓋(絶縁部材)が複数の蓄電素子の上方に配置される。絶縁部材において基板等が載置された板状部分の周囲には壁部が立設され、複数の蓄電素子それぞれの電極端子は、壁部によって、不要な導通が生じないように、側方の他の部材から保護される。このように構成された蓄電装置では、他の蓄電装置等との間で、充電及び放電の際の電流の導通路(主回路)を形成する部材として、丸端子等の接続端子を備えるケーブルが用いられる場合がある。この場合、例えばケーブルにおける接続端子の近傍には比較的に外径の大きい部分が存在し、これによりケーブルが壁部を越え難い状況が生じる。そこで、従来、例えば接続端子と電極端子との間に、他の導電部材を介在させることで、接続端子を上方に持ち上げる構造が採用される。これにより、ケーブルを、絶縁部材の壁部を越えた状態で無理なく蓄電素子に接続することができる。しかしながらこの場合、接続端子を持ち上げる他の導電部材が必要となること等に起因して、蓄電装置の構成が複雑化する。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、複数の蓄電素子を備える蓄電装置であって、構成の簡易化を図ることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、それぞれが、電極端子が配置された端子配置面を有する複数の蓄電素子と、前記複数の蓄電素子の前記端子配置面それぞれの少なくとも一部を一括して覆う部分を有する絶縁部材と、前記複数の蓄電素子の内の1つである所定の蓄電素子が有する前記電極端子の端子面に接続された導電部材とを備え、前記複数の蓄電素子を、前記端子配置面が上向きとなる姿勢にした場合において、前記端子面は、前記電極端子の上面であり、前記絶縁部材の下端部は、上下方向において、前記端子面より下に位置し、前記絶縁部材は、前記所定の蓄電素子の側方に位置する壁部を有し、前記壁部は、前記導電部材が貫通して配置される第一開口部であって、前記上下方向において、前記端子面と同じ位置を含む範囲に設けられた第一開口部を有する。
【0007】
この構成によれば、電極端子の端子面に接続されたケーブル等の導電部材は、その端子面と同じ高さ位置から第一開口部を介して無理なく絶縁部材の外側に引き出した状態にすることができる。そのため、導電部材の、電極端子との接続に用いられる接続端子の近くに外径が太くなっている部分があっても、導電部材の接続端子を電極端子の端子面に接触させた状態で電極端子に接続することができる。つまり、導電部材を壁部の上を通過させる場合に必要となる、導電部材と端子面との間に介在させる他の導電部材を用いる必要がない。このように、本態様に係る蓄電装置によれば、構成の簡易化を図ることができる。
【0008】
前記第一開口部は、前記絶縁部材の前記下端部から切欠き状に設けられている、としてもよい。
【0009】
この構成によれば、電極端子に導電部材を接続した状態で、絶縁部材を複数の蓄電素子に対して配置することができる。そのため、例えば、絶縁部材に邪魔されることなく、導電部材の電極端子への接続作業(ナットの締結等)を行うことができる。従って、本態様の蓄電装置によれば、構成の簡易化を図りつつ、製造作業の容易化も図られる。
【0010】
前記絶縁部材は、前記第一開口部における前記導電部材の上方に位置し、前記導電部材の上方への移動を規制する規制部を有する、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば、導電部材が第一開口部の位置において上方に移動または傾くことが抑制されるため、規制部が、導電部材の電極端子への接続前の仮押さえとして機能する。また、導電部材の電極端子への接続後において、半完成品の取り扱いが容易になる。つまり、本態様の蓄電装置によれば、構成の簡易化を図りつつ、製造効率の向上も図られる。
【0012】
蓄電装置はさらに、上方が開口したケースであって、前記複数の蓄電素子を収容するケースを備え、前記ケースの上端部は、上下方向において、前記電極端子の端子面より上に位置し、前記ケースは、前記第一開口部に対向する位置に配置され、前記導電部材が貫通して配置される第二開口部を有する、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、複数の蓄電素子を収容するケースは、例えば、所定の蓄電素子に接続された導電部材を含む高さ位置まで、複数の蓄電素子を覆うことができ、これにより、ケースに絶縁部材を固定することができる。そのため、ケースの、複数の蓄電素子を覆う構造体としての強度が向上される。また、ケースに第二開口部が設けられていることで、導電部材のケースからの引き出し構造は、ケースによって阻害されない。つまり、本態様の蓄電装置によれば、構成の簡易化を図りつつ、構造的な安定化も図られる。
【0014】
前記絶縁部材は、前記複数の蓄電素子を電気的に接続する1以上のバスバーを保持するバスバーフレームであるとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、バスバーフレームは、電極端子の端子面よりも下の部分まで覆うため、電極端子と他の部材との不要な導通を防ぐことができ、かつ、第一開口部によって、導電部材を無理のない姿勢で電極端子に直接的に接続させることができる。つまり、構成の簡易化を図りつつ、絶縁部材の効率的な利用も図られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構成の簡易化を図ることができる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置を蓄電ユニットと基板ユニットとに分離した場合の構成を示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る蓄電ユニットを分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る蓄電ユニットにおける外装体の端部の構成を示す斜視図である。
図5】実施の形態に係るバスバーフレーム及び外装体本体と負極電源ケーブルとの構造上の関係を示す斜視図である。
図6】実施の形態に係る負極電源ケーブルと蓄電素子との接続構造を示す分解斜視図である。
図7】実施の形態に係るバスバーフレーム及び外装体本体と負極電源ケーブルとの構造上の関係を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0019】
また、以下の説明及び図面中において、1つの蓄電素子における一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、蓄電素子の容器の短側面の対向方向、または、蓄電ユニットの外装体の長側面の対向方向を、X軸方向と定義する。複数の蓄電素子の並び方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、蓄電ユニットの外装体の短側面の対向方向、または、蓄電ユニットと基板ユニットとの並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電ユニットのベース部材と外装体蓋体との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋部との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0020】
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0021】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、本実施の形態に係る蓄電装置1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る蓄電装置1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施の形態に係る蓄電装置1を蓄電ユニット10と基板ユニット20とに分離した場合の構成を示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係る蓄電ユニット10を分解した場合の各構成要素を示す分解斜視図である。
【0022】
蓄電装置1は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置1は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置1は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等として用いることができる。また、蓄電装置1は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等としても用いることができる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。
【0023】
図1図3に示すように、蓄電装置1は、蓄電ユニット10と、蓄電ユニット10に取り付けられる基板ユニット20と、を備えている。蓄電ユニット10は、Y軸方向に長尺の略直方体形状を有する電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電ユニット10は、複数の蓄電素子11と、バスバーフレーム60と、複数のバスバー13と、これらを収容する外装体本体14、ベース部材15及び外装体蓋体17からなる外装体18と、を有している。また、蓄電ユニット10には正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32が接続されている。なお、蓄電ユニット10は、複数の蓄電素子11を拘束する拘束部材(エンドプレート、サイドプレート等)等を有していてもよい。
【0024】
蓄電素子11は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子11は、扁平な直方体(角形)の形状を有しており、本実施の形態では、16個の蓄電素子11がY軸方向に並んで配列されている。なお、蓄電素子11の形状、配置位置及び個数等は、特に限定されない。また、蓄電素子11は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子11は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。さらに、蓄電素子11は、固体電解質を用いた電池であってもよい。
【0025】
具体的には、蓄電素子11は、金属製の容器11aを備え、容器11aの蓋部には、金属製の電極端子である正極端子11b及び負極端子11cが設けられている。つまり、容器11aの蓋部は、電極端子(11b、11c)が配置された端子配置面11eを形成している。また、隣り合う蓄電素子11同士の間には、スペーサ11dが配置されている。なお、容器11aの端子配置面11eには、電解液を注液するための注液部、及び、容器11a内の圧力上昇時にガスを排出して圧力を開放するガス排出弁等が設けられていてもよい。また、容器11aの内方には、電極体(蓄電要素または発電要素ともいう)及び集電体(正極集電体及び負極集電体)等が配置され、電解液(非水電解質)などが封入されているが、詳細な説明は省略する。
【0026】
正極端子11b及び負極端子11cは、容器11aの端子配置面11eからZ軸プラス方向)に向けて突出して配置されている。そして、複数の蓄電素子11が有する最も外側の正極端子11b及び負極端子11cのそれぞれが電源ケーブルに接続されることにより、蓄電装置1(蓄電ユニット10)が、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる。
【0027】
具体的には、図3に示すように、複数の蓄電素子11のうちの、Y軸プラス方向の端部の蓄電素子11の正極端子11bが、複数の蓄電素子11の総プラス端子(蓄電ユニット10の正極端子51)として機能する。つまり、外装体18の内部において、蓄電ユニット10の正極端子51に正極電源ケーブル31が接続される。また、複数の蓄電素子11のうちの、Y軸マイナス方向の端部の蓄電素子11の負極端子11cが、複数の蓄電素子11の総マイナス端子(蓄電ユニット10の負極端子52)として機能する。つまり、外装体18の内部において、蓄電ユニット10の負極端子52に負極電源ケーブル32が接続される。なお、図3以降の各図において、Y軸プラス方向の端部の蓄電素子11を、蓄電素子11Bと表記し、Y軸マイナス方向の端部の蓄電素子11を、蓄電素子11Aと表記する。つまり、蓄電素子11Bの正極端子11bが蓄電ユニット10の正極端子51として機能し蓄電素子11Aの負極端子11cが蓄電ユニット10の負極端子52として機能する。蓄電素子11Aは、導電部材の一例である負極電源ケーブル32が接続される所定の蓄電素子の一例である。
【0028】
正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32は、蓄電装置1(蓄電ユニット10)を充放電するための電流(充放電電流、主電流ともいう)が流れる被覆電線(電力ケーブル、電源線、電力線ともいう)である。正極電源ケーブル31の、蓄電ユニット10から露出した部分の端部には正極コネクタ41が設けられており、負極電源ケーブル32の、蓄電ユニット10から露出した部分の端部には負極コネクタ42が設けられている。正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32のそれぞれは、図2に示すように、外装体18の端部18a(蓄電ユニット10の端部18aともいう)から外装体18の外方に引き出された状態で配置されている。なお、例えば「ケーブルから外装体18から引き出された状態で配置」とは、ケーブルが、外装体18の壁部を貫通して配置されている状態を指す。つまり、正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32の配置作業において、外装体18の内部から外部に実際に引き出す動作は必須ではない。
【0029】
バスバーフレーム60は、複数の蓄電素子11の端子配置面11eそれぞれの少なくとも一部を一括して覆う部分を有する絶縁部材の一例である。具体的には、バスバーフレーム60は、バスバー13と他の部材との電気的な絶縁、及び、バスバー13の位置規制を行うことができる扁平な矩形状の部材である。バスバーフレーム60は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の、後述する基板ユニット20の基板ケース21と同様の絶縁部材により形成されている。
【0030】
具体的には、バスバーフレーム60は、複数の蓄電素子11の上方に載置され、複数の蓄電素子11に対して位置決めされる。また、バスバーフレーム60には複数のバスバー用開口部65が形成されており、複数のバスバー用開口部65のそれぞれにバスバー13が配置されて位置決めされている。これにより、バスバー13は、複数の蓄電素子11に対して位置決めされて、当該複数の蓄電素子11が有する正極端子11b及び負極端子11cに接合される。また、バスバーフレーム60は、外装体18の中蓋として、外装体本体14の補強を行う機能も有している。
【0031】
さらに、バスバーフレーム60は、複数のバスバー用開口部65が形成された部分の周縁に立設された壁部61を有しており、壁部61には第一開口部62が形成されている。第一開口部62には、負極電源ケーブル32が貫通した状態で配置される。負極電源ケーブル32とバスバーフレーム60等との構造上の関係については図4図7を用いて後述する。
【0032】
バスバー13は、複数の蓄電素子11上(バスバーフレーム60上)に配置され、複数の蓄電素子11の電極端子同士を電気的に接続する矩形状の板状部材である。バスバー13は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の金属で形成されている。本実施の形態では、バスバー13は、隣り合う蓄電素子11の正極端子11bと負極端子11cとを接続することで、16個の蓄電素子11を直列に接続している。なお、蓄電素子11の接続の態様は上記には限定されず、直列接続及び並列接続がどのように組み合わされていてもよい。
【0033】
また、バスバー13、または、蓄電素子11の電極端子には、検出用ケーブル13aが接続されている。検出用ケーブル13aは、蓄電素子11の電圧計測用、温度計測用、または、蓄電素子11間の容量バランス用の電線(通信ケーブル、制御ケーブル、通信線、制御線ともいう)である。なお、バスバー13または蓄電素子11の電極端子には、蓄電素子11の温度を計測するためのサーミスタ(図示せず)が配置されているが、説明は省略する。また、検出用ケーブル13aのY軸マイナス方向の端部には、コネクタ13bが接続されている。コネクタ13bは、後述する基板ユニット20の基板25に接続されるコネクタである。つまり、検出用ケーブル13aは、コネクタ13bを介して、蓄電素子11の電圧及び温度等の情報を、基板ユニット20の基板25に伝達する。また、検出用ケーブル13aは、基板25の制御によって、放電可能容量が大きい蓄電素子11を放電させて、蓄電素子11間の容量をバランスさせる際にも使用される。
【0034】
外装体18は、蓄電ユニット10の外装体を構成する矩形状(箱状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体18は、蓄電素子11等の外方に配置され、蓄電素子11等を所定の位置で固定し、衝撃などから保護する。外装体18は、上述のように、外装体本体14と、ベース部材15と、外装体蓋体17と、を有している。
【0035】
外装体本体14は、上方が開口し、かつ、複数の蓄電素子11を収容するケースの一例である。つまり、外装体本体14は、上方に開口が形成された有底矩形筒状のハウジングである。外装体本体14は、例えば、PC、PP、PE等の絶縁部材により形成されている。ベース部材15及び外装体蓋体17は、外装体本体14を保護(補強)する部材である。ベース部材15及び外装体蓋体17は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板等の金属製の部材により形成されている。なお、ベース部材15及び外装体蓋体17は、同じ材質の部材で形成されていてもよいし、異なる材質の部材で形成されていてもかまわない。
【0036】
ベース部材15は、外装体本体14を下方(Z軸マイナス方向)から支持する板状の部材であり、外装体本体14を介して複数の蓄電素子11を支持する役割も有している。ベース部材15は、底部15aと、基板ユニット取付部16と、接続部15b及び15cと、を有している。底部15aは、蓄電装置1の底部を構成する、XY平面に平行かつY軸方向に延設された平板状かつ矩形状の部位であり、外装体本体14の下方に配置される。基板ユニット取付部16は、底部15aのY軸マイナス方向側の端部からZ軸プラス方向に立設された平板状かつ矩形状の部位であり、基板ユニット20が取り付けられる。接続部15bは、基板ユニット取付部16のZ軸プラス方向側の端部に配置され、Y軸マイナス方向に突出する部位であり、外装体蓋体17と接続される。接続部15cは、底部15aのY軸プラス方向側の端部からZ軸プラス方向に立設され、かつ、Y軸プラス方向に突出する部位であり、外装体蓋体17と接続される。
【0037】
外装体蓋体17は、外装体本体14の開口を塞ぐように配置される部材であり、天面部17aと、接続部17b及び17cと、を有している。接続部17bは、天面部17aのY軸マイナス方向側の端部に配置され、Z軸マイナス方向に延び、かつ、Y軸マイナス方向に突出する部位であり、ベース部材15の接続部15bと接続される。接続部17cは、天面部17aのY軸プラス方向側の端部からZ軸マイナス方向に延び、かつ、Y軸プラス方向に突出する部位であり、ベース部材15の接続部15cと接続される。このように、ベース部材15及び外装体蓋体17は、外装体本体14を上下方向から挟み込んだ状態で、接続部15b及び15cと接続部17b及び17cとがネジ止め等で接続されることで固定される構成となっている。
【0038】
基板ユニット20は、蓄電ユニット10が有する蓄電素子11の状態の監視、及び、蓄電素子11の制御を行うことができる機器である。本実施の形態では、基板ユニット20は、蓄電ユニット10の外装体18の長手方向の端部18a(図2参照)、つまり、蓄電ユニット10のY軸マイナス方向側の側面に取り付けられる扁平な矩形状の部材である。基板ユニット20は、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の絶縁部材で形成される基板ケース21(図2参照)と、基板ケース21に収容された基板25とを有する。具体的には、基板ユニット20は、蓄電ユニット10の外装体18が有するベース部材15に設けられた基板ユニット取付部16に取り付けられる。基板25は、蓄電ユニット10に電気的に接続される回路基板(監視基板)である。具体的には、基板25は、上述の検出用ケーブル13a及びコネクタ13bを介して蓄電素子11に電気的に接続されることで、蓄電素子11の電圧及び温度等の情報を取得し、蓄電素子11の充電状態及び放電状態等の状態を監視する。また、基板25は、検出用ケーブル13aを用いて蓄電素子11を放電させて、蓄電素子11間の容量をバランスさせる制御基板としての機能も有している。基板25には、これ機能を実現するための複数の部品(図示せず)が実装されている。なお、基板25は、蓄電素子11の制御は行わず、蓄電素子11の状態の監視のみ行い、監視結果に基づく制御は、蓄電装置1に接続された外部の制御装置が行ってもよい。
【0039】
[2.電源ケーブルの配置の態様]
上記のように、実施の形態に係る蓄電装置1では、正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32が、外装体18の端部18aにおいて外装体18の内部から外部に引き出された状態で配置されている。このうち、負極電源ケーブル32は、外装体18の端部18aに最も近い蓄電素子11Aの負極端子11cと接続されている。そのため、バスバーフレーム60及び外装体本体14との関係で、負極電源ケーブル32をどのように配置すべきかが問題となる。
【0040】
この点に関し、本実施の形態では、バスバーフレーム60及び外装体本体14のそれぞれは、負極電源ケーブル32を、外装体18から引き出された状態で無理なく配置するための構造を有している。そこで、蓄電装置1における、正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32の配置の態様について、特に負極電源ケーブル32に着目して、図4図7を参照しながら以下に説明する。なお、図4図7のそれぞれでは、主として説明の対象となる複数の構成要素を図示し、他の構成要素についての図示は適宜省略されている。
【0041】
図4は、実施の形態に係る蓄電ユニット10における外装体18の端部18aの構成を示す斜視図である。具体的には、図4では、外装体蓋体17を外装体本体14から持ち上げた状態で、外装体18の端部18aを図示している。図5は、実施の形態に係るバスバーフレーム60及び外装体本体14と負極電源ケーブル32との構造上の関係を示す斜視図である。図6は、実施の形態に係る負極電源ケーブル32と蓄電素子11Aとの接続構造を示す分解斜視図である。図6では、蓄電素子11Aは、負極端子11c及びその周辺のみが簡易的に図示されている。図7は、実施の形態に係るバスバーフレーム60及び外装体本体14と負極電源ケーブル32との構造上の関係を示す部分断面図である。図7では、図5のVII-VII線を通るYZ平面におけるバスバーフレーム60及び外装体本体14の部分断面が図示されており、蓄電素子11A及び負極電源ケーブル32は側面図で表されている。また、図7における二点鎖線Tは、負極端子11cの端子面12の上下方向(Z軸方向)の位置を示している。本実施の形態では、蓄電装置1が備える複数の蓄電素子11の正極端子11b及び負極端子11cそれぞれの端子面12は、上下方向において実質的に同一の位置(二点鎖線Tの位置)に配置されている。
【0042】
図4に示すように、正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32は、外装体18の内部から外部に延設された状態で配置されている。具体的には、正極電源ケーブル31及び負極電源ケーブル32はともに、外装体18の端部18aから外装体18の外部に向けて延設されている。正極電源ケーブル31は正極コネクタ41を有し、負極電源ケーブル32は、負極コネクタ42を有している。なお、図4では省略されているが、正極コネクタ41及び負極コネクタ42それぞれには、他方との電気的な接点となる端子等が配置されている。
【0043】
本実施の形態では、正極コネクタ41及び負極コネクタ42は、互いに直接的に接続可能な構造を有している。例えば、負極コネクタ42及び正極コネクタ41の一方が他方に機械的に接続(挿入、嵌合、螺入等)することで、負極コネクタ42及び正極コネクタ41が電気的に接続される。これにより、例えば隣り合う2つの蓄電装置1の一方の正極コネクタ41と他方の負極コネクタ42とを、スパナ等の工具を用いることなく容易に接続することができる。従って、複数の蓄電装置1を、端部18aを同じ方向に向けて上下方向または左右方向に一列に並べた場合、これら複数の蓄電装置1の全体を容易に直列に接続することができる。
【0044】
さらに、1つの蓄電装置1が有する正極コネクタ41及び負極コネクタ42は、互いに直接的な接続が不可能な状態に置かれている。具体的には、図4に示すように、負極電源ケーブル32は、外装体18から延設された部分における少なくとも一部が蓄電ユニット10に固定されている。本実施の形態では、金属製のベース部材15は、負極電源ケーブル32の当該少なくとも一部を固定する固定部15dを有しており、これにより、負極コネクタ42は、実質的に下向きに固定される。この固定部15dには、例えば、負極コネクタ42を含む負極電源ケーブル32の一部を結束し、かつベース部材15に形成された凹部または孔に固定される結束部材(例えばプッシュタイと呼ばれる)が採用される。なお、固定部15dにおける固定構造に特に限定はなく、例えば、外装体18に設けられた凹部(溝、切り欠き、スリット等)、または、外装体18に固定された部材の凹部に、負極電源ケーブル32の一部を埋め込むことで当該一部が固定されてもよい。
【0045】
このように、負極コネクタ42の姿勢が規制された状態では、正極電源ケーブル31の外装体18の角部19から延設された部分の長さが図4に示す程度の長さである場合、負極コネクタ42と正極コネクタ41とを直接的に接続することは不可能である。そのため、蓄電装置1の短絡を生じさせる正極コネクタ41と負極コネクタ42との誤接続を実質的に防止することができる。
【0046】
このような構成において、複数の蓄電素子11の端子配置面11eと対向する位置に配置されたバスバーフレーム60には、複数のバスバー用開口部65が設けられたXY方向に平行な部分を囲むように、壁部61が立設されている(図3図5図7参照)。これにより、複数の蓄電素子11の正極端子11b及び負極端子11cに対する、側方からの他の要素の接触の可能性が低減する。つまり、各蓄電素子11における不要な導通が抑制される。
【0047】
しかしながら、バスバーフレーム60の壁部61は、蓄電素子11Aの負極端子11cと接続される負極電源ケーブル32との干渉の問題を生じさせ得る。具体的には、本実施の形態において、負極電源ケーブル32は、図5図7に示すように、丸端子である接続端子32aを端部に有し、接続端子32aの根元には、負極電源ケーブル32の電線と接続端子32aとの圧着部分を覆う絶縁カバー32bが配置されている。従って、負極電源ケーブル32における接続端子32aの近傍に外径が比較的に大きい部分(径大部)が存在する。このように近傍に径大部が存在する接続端子32aと負極端子11cとの接続にはナット12bが用いられる。具体的には、負極端子11cは、外周にネジ山が形成された接続軸体12aを有し、接続軸体12aが接続端子32aを貫通した状態でナット12bが締め付けられ、これにより、接続端子32aが端子面12に面接触する。その結果、負極電源ケーブル32の接続端子32aが設けられた端部には、端子面12と略平行な姿勢となるように、ナット12bによる締結力が作用する。
【0048】
一方、バスバーフレーム60は、各蓄電素子11の電極端子(11b、11c)と、側方の他の部材とを確実に絶縁するために、バスバーフレーム60の下端部60aは、電極端子(図7における負極端子11c)の端子面12よりも下方に位置することが好ましい。つまり、負極端子11cの側方には上下方向に比較的に長い壁部61が配置される。
【0049】
このような構成において、本実施の形態では、バスバーフレーム60の壁部61には、負極端子11cの端子面12の位置(図7における二点鎖線Tの位置)を含む範囲に第一開口部62が設けられている。これにより、負極電源ケーブル32を、無理なく容易に配置することができる。
【0050】
すなわち、本実施の形態に係る蓄電装置1は、それぞれが、電極端子が配置された端子配置面11eを有する複数の蓄電素子11と、バスバーフレーム60と、負極電源ケーブル32とを備える。端子配置面11eには、電極端子として正極端子11b及び負極端子11cとは配置されている。バスバーフレーム60は、複数の蓄電素子11の端子配置面11eそれぞれの少なくとも一部を一括して覆う部分を有する。負極電源ケーブル32は、複数の蓄電素子11の内の1つである蓄電素子11Aが有する負極端子11cの端子面12に接続されている。複数の蓄電素子11を、端子配置面11eが上向きとなる姿勢にした場合において、端子面12は、負極端子11cの上面であり、バスバーフレーム60の下端部60aは、上下方向において、端子面12より下に位置する。バスバーフレーム60は、蓄電素子11Aの側方に位置する壁部61を有する。壁部61は、負極電源ケーブル32が貫通して配置される第一開口部62であって、上下方向において、端子面12と同じ位置を含む範囲に設けられた第一開口部62を有する。
【0051】
この構成によれば、図5及び図7に示すように、負極端子11cの端子面12に接続された負極電源ケーブル32は、その端子面12と同じ高さ位置から第一開口部62を介して無理なくバスバーフレーム60の外側に引き出した状態にすることができる。そのため、負極電源ケーブル32に径大部(特に絶縁カバー32bが配置された部分)が存在する場合であっても、負極電源ケーブル32の接続端子32aを負極端子11cの端子面12に接触させた状態で負極端子11cに接続することができる。つまり、負極電源ケーブル32を壁部61の上を通過させる場合に必要となる、接続端子32aと端子面12との間に介在させる他の導電部材を用いる必要がない。このように、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、構成の簡易化を図ることができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、より詳細には、第一開口部62は、上下方向において、端子面12と同じ位置を含み、かつ、端子配置面11e以下を含む範囲に配置されている。これにより、図7に示すように、絶縁カバー32bを含む負極電源ケーブル32の一部が、端子配置面11eと接触する状態であっても、負極電源ケーブル32とバスバーフレーム60との干渉の問題は生じ難い。従って、例えば、振動または衝撃等に起因して、負極電源ケーブル32及びバスバーフレーム60の一方が他方を損傷するような不具合が生じ難い。
【0053】
また、本実施の形態では、第一開口部62を有するバスバーフレーム60は、複数の蓄電素子11の端子配置面11eに当接して配置されている。そのため、バスバーフレーム60は、外装体18に直接的または間接的に固定されることで、複数の蓄電素子11の上方への移動を規制する規制部材としても機能する。また、バスバーフレーム60は、複数の蓄電素子11の端子配置面11eに、例えば接着剤で固定されてもよい。これにより、複数の蓄電素子11の位置の安定性が向上し、かつ、複数の蓄電素子11それぞれの膨張を抑制することができる。また、バスバーフレーム60を含む外装体18全体としての強度も向上する。
【0054】
また、本実施の形態では、複数の正極端子11b及び複数の負極端子11cに対して、これら電極端子と他の部材との電気的な絶縁をより確実にする1つの絶縁部材(バスバーフレーム60)が配置される。そのため、例えば、複数の電極端子のそれぞれに絶縁部材を設ける場合と比較すると、より効率よく蓄電装置1を製造することができ、かつ、製造に必要な部品点数も削減される。また、複数の電極端子のそれぞれに同一構造の絶縁部材を設ける場合、全ての絶縁部材に、電源ケーブルを貫通させるための開口部が形成されることになり、その結果、全ての電極端子の側方に、必ず絶縁部材の開口部が位置する。つまり、本来的には不要な(使用されない)開口部が1以上の電極端子の側方に存在することになり、このことは、電極端子と他の部材との電気的な絶縁の確実性の観点からは不利である。この点に関し、本実施の形態では、複数の正極端子11b及び複数の負極端子11cに対して1つのバスバーフレーム60が配置され、バスバーフレーム60には、電源ケーブルを貫通させるべき箇所にのみ第一開口部62を形成することができる。そのため、複数の正極端子11b及び複数の負極端子11cのそれぞれの側方に、本来的には不要な開口部を配置させないことができる。
【0055】
また、本実施の形態において、第一開口部62は、図3及び図7に示すように、バスバーフレーム60の下端部60aから切欠き状に設けられている。
【0056】
この構成によれば、例えば、負極端子11cに負極電源ケーブル32を接続した状態で、バスバーフレーム60を複数の蓄電素子11に対して配置することができる。そのため、例えば、バスバーフレーム60に邪魔されることなく、負極電源ケーブル32の負極端子11cへの接続作業(本実施の形態ではナット12bの締結等)を行うことができる。従って、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、構成の簡易化を図りつつ、製造作業の容易化も図られる。
【0057】
また、本実施の形態において、バスバーフレーム60は、図5及び図7に示すように、第一開口部62における負極電源ケーブル32の上方に位置し、負極電源ケーブル32の上方への移動を規制する規制部63を有している。
【0058】
この構成によれば、例えば、負極電源ケーブル32が第一開口部62の位置において上方に移動または傾くことが抑制されるため、規制部63が、負極電源ケーブル32の負極端子11cへの接続前の仮押さえとして機能する。また、負極電源ケーブル32の負極端子11cへの接続後において、半完成品の取り扱いが容易になる。つまり、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、構成の簡易化を図りつつ、製造効率の向上も図られる。
【0059】
また、本実施の形態のように、規制部63を、第一開口部62の左右の部分を接続するように架橋状に設けた場合、壁部61は、第一開口部62をまたいで連続する(第一開口部62によって分離されない)。そのため、バスバーフレーム60に第一開口部62を設けることによるバスバーフレーム60の強度の低下が抑制される。
【0060】
また、本実施の形態において、蓄電装置1は、上方が開口した外装体本体14であって、複数の蓄電素子11を収容する外装体本体14を備える。外装体本体14の上端部14a(図5及び図7参照)は、上下方向において、負極端子11cの端子面12より上に位置する。外装体本体14は、第一開口部62に対向する位置に配置され、負極電源ケーブル32が貫通して配置される第二開口部14bを有している。
【0061】
この構成によれば、複数の蓄電素子11を収容する外装体本体14は、例えば、蓄電素子11Aに接続された負極電源ケーブル32を含む高さ位置まで、複数の蓄電素子11を覆うことができる。これにより、外装体本体14にバスバーフレーム60を固定することができる。そのため、外装体本体14の、複数の蓄電素子11を覆う構造体としての強度が向上される。また、外装体本体14に第二開口部14bが設けられていることで、負極電源ケーブル32の外装体本体14からの引き出し構造は、外装体本体14によって阻害されない。つまり、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、構成の簡易化を図りつつ、構造的な安定化も図られる。
【0062】
また、本実施の形態において、複数の蓄電素子11の端子配置面11eに対向して配置され、第一開口部62を有する絶縁部材は、バスバーフレーム60である。バスバーフレーム60は、複数の蓄電素子11を電気的に接続する1以上のバスバー13を保持する部材である。
【0063】
すなわち、本実施の形態では、複数のバスバー13の位置決め等の役割を有するバスバーフレーム60は、電極端子(11b及び11c)の端子面12よりも下の部分まで覆うため、電極端子(11b及び11c)と他の部材との不要な導通を防ぐことができる。さらに、バスバーフレーム60は、第一開口部62を有することで、負極電源ケーブル32を無理のない姿勢で、接続すべき電極端子である負極端子11cに直接的に接続させることができる。つまり、本実施の形態に係る蓄電装置1によれば、構成の簡易化を図りつつ、バスバーフレーム60の効率的な利用も図られる。
【0064】
(他の実施の形態)
以上、本実施の形態に係る蓄電装置1について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0065】
例えば、実施の形態では、バスバーフレーム60の第一開口部62及び外装体本体14の第二開口部14bを貫通して配置される導電部材が負極電源ケーブル32である場合を例示した。しかし、第一開口部62及び第二開口部14bを貫通して配置される導電部材は正極電源ケーブル31であってもよい。例えば、外装体18の端部18aの反対側の端部から、負極電源ケーブル32及び正極電源ケーブル31が引き出された状態で配置される場合、当該端部の側に、第一開口部62及び第二開口部14bを設けてもよい。これにより、当該端部に最も近い蓄電素子11Bの正極端子11bに接続されたに負極電源ケーブル32が、第一開口部62及び第二開口部14bを介して、バスバーフレーム60及び外装体本体14を無理なく越えて配置することができる。
【0066】
また、蓄電ユニット10において、複数の蓄電素子11を保持する外装体は、図2に示すような箱状である必要はない。例えば、一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを接続する接続部材とで複数の蓄電素子11をその並び方向で拘束する拘束部材が外装体として蓄電装置1に備えられてもよい。この場合、一対のエンドプレートの少なくとも一方に、第二開口部を設けることで、上下方向において上端部が端子面12より上に位置するエンドプレートに干渉させずに、無理なく、負極電源ケーブル32または正極電源ケーブル31を配置することができる。
【0067】
また、バスバーフレーム60が有する第一開口部62の形状は、図3図5及び図7等に示される形状には限定されない。例えば、第一開口部62の上に位置する規制部63が、第一開口部62の左右の部分を接続する架橋状ではなく、第一開口部62の左右の部分の一方からのみ延設された片持ち状に設けられてもよい。この場合、第一開口部62は、壁部61の上端に開口した形状となる。そのため、例えば、複数の蓄電素子11に対してバスバーフレーム60を配置した後における負極電源ケーブル32の配置作業が容易になる。また、第一開口部62は、バスバーフレーム60の下端部60aから切欠き状に設けられることは必須ではなく、例えば、壁部61に設けられた単純な貫通孔が、第一開口部62としてバスバーフレーム60に備えられてもよい。
【0068】
また、外装体本体14が有する第二開口部14bの形状も、図5等に示される形状には限定されない。例えば、外装体本体14は、第二開口部14bにおける負極電源ケーブル32の上方に位置する規制部を有してもよい。この場合、規制部は、第二開口部14bの左右の部分を接続する架橋状に設けられてもよく、また、当該左右の部分の一方からのみ延設された片持ち状に設けられてもよい。規制部が架橋状に設けられる場合、第二開口部14bは、外装体本体14に設けられた貫通孔により実現される。また、規制部が片持ち状に設けられる場合、第二開口部14bにおける、外装体本体14の上端部14aに開口した部分は残される。そのため、例えば、バスバーフレーム60が外装体本体14に対して配置された後における、負極電源ケーブル32の配置作業が容易になる。
【0069】
また、複数の蓄電素子11の端子配置面11eに対向して配置される絶縁部材は、バスバーフレーム60以外であってもよい。例えば、制御回路等の電気機器及び配線等を保持し、バスバー13を保持する機能を有しない部材(例えば中蓋)、または、複数の蓄電素子11及びその上方の部材を保護する部材(例えば外蓋)が、絶縁部材として配置されてもよい。この場合であっても、中蓋または外蓋の下端部が、上下方向において端子面12よりも下に位置する場合、中蓋または外蓋は、上下方向において、端子面12と同じ位置を含む範囲に設けられた第一開口部を有すればよい。これにより、蓄電素子11Aまたは11Bに接続された負極電源ケーブル32または正極電源ケーブル31は、第一開口部を介して、無理なく、中蓋または外蓋から外部に引き出された状態で配置することができる。
【0070】
また、実施の形態では各蓄電装置1において、負極コネクタ42が下向きの姿勢に固定されているが、負極コネクタ42は上向きに固定されてもよい。また、負極コネクタ42ではなく正極コネクタ41が下向きまたは上向きの姿勢となるように正極電源ケーブル31の一部が固定されてもよい。また、姿勢が実質的に固定される負極コネクタ42または正極コネクタ41の向きは上下方向である必要はなく、例えば左右方向であってもよい。さらに、蓄電装置1の負極コネクタ42及び正極コネクタ41の一方が固定されていることは必須ではない。
【0071】
また、蓄電装置1は、基板ユニット20を備えなくてもよい。つまり、複数の蓄電素子11の充電状態の監視及び電圧調整等の機能は、蓄電装置1と電気的に接続された外部の装置に担わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子を備えた蓄電装置及び複数の蓄電装置を備える蓄電設備に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 蓄電装置
10 蓄電ユニット
11、11A、11B 蓄電素子
11a 容器
11b、51 正極端子
11c、52 負極端子
11d スペーサ
11e 端子配置面
12 端子面
12a 接続軸体
12b ナット
13 バスバー
13a 検出用ケーブル
13b コネクタ
14 外装体本体
14a 上端部
14b 第二開口部
15 ベース部材
15a 底部
15b、15c、17b、17c 接続部
15d 固定部
16 基板ユニット取付部
17 外装体蓋体
17a 天面部
18 外装体
18a 端部
19 角部
20 基板ユニット
21 基板ケース
25 基板
31 正極電源ケーブル
32 負極電源ケーブル
32a 接続端子
32b 絶縁カバー
41 正極コネクタ
42 負極コネクタ
60 バスバーフレーム
60a 下端部
61 壁部
62 第一開口部
63 規制部
65 バスバー用開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7