(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】貼付剤支持体用フィルム、積層体、及び貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20240101AFI20240305BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20240305BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240305BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240305BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20240305BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
B32B3/30
B32B27/36
B32B27/32 Z
B32B27/28 102
A61F13/02 310D
A61K9/70 401
(21)【出願番号】P 2019202766
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 徹三
(72)【発明者】
【氏名】高柳 浩介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088765(JP,A)
【文献】特開平08-127531(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187266(JP,U)
【文献】特開平08-260328(JP,A)
【文献】特表2008-516700(JP,A)
【文献】特開2019-063520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
B32B 3/30
B32B 27/36
B32B 27/32
B32B 27/28
A61K 9/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を一方の面側に配置可能な、厚さが10μm以上100μm以下の薬剤バリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルムであって、
上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、
上記凹部と上記凸部はそれぞれ直線状に延在しており、
上記凸部及び凹部の並び方向に沿った、上記凸部の形状が、頂部と上記頂部の両側に連続する壁部とを有する台形形状であり、
隣り合う上記凸部間の間隔である上記凹凸構造の1ピッチの間隔Pに対する、当該1ピッチ間の凹凸の面に沿った道のり長さWの比である(W/P)が、1.2以上2.0以下であり、
上記凸部及び凹部の並び方向に沿った、上記凸部の上記頂部と上記壁部とでなす交角が、90度以上125度未満であり、
上記1ピッチの間隔Pは、174μm以上
475μm以下の範囲内であ
り、
上記凸部及び凹部の並び方向に沿った、上記凸部の上記頂部は、断面平坦な平坦部となっており、
上記平坦部における平坦度は、レーザ顕微鏡の200倍観察時の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下である、
ことを特徴とする貼付剤支持体用フィルム。
【請求項2】
上記凹凸構造は、隣り合う上記凹部と上記凸部との高低差が、上記貼付剤支持体用フィルムの厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項3】
上記薬剤バリア性材料が、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項4】
上記凹部と凸部の並び方向に直交する方向の20%引張荷重に対する、上記凹部と凸部の並び方向の20%引張荷重の比が、1/20以上1/3以下であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項5】
上記凹凸構造は、隣り合う上記凹部と上記凸部との高低差が、15μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項6】
上記貼付剤支持体用フィルムは、複数の領域を有し、各領域毎に個別の凹凸パターンで上記凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項7】
上記凸部及び凹部の並び方向に沿った、上記凸部の上記頂部の長さは、74μm以上615μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項8】
上記貼付剤支持体用フィルムは、2層構造の積層フィルムであり、
上記貼付剤支持体用フィルムを構成する第一の層は、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体のいずれかから選ばれる樹脂で形成され、
上記貼付剤支持体用フィルムを構成する第二の層は、ポリエチレンで形成されていることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項9】
上記貼付剤支持体用フィルムを構成する第一の層は、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体のいずれかから選ばれる樹脂で形成されていることを特徴とする請求項8に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項10】
請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルムの片面に機能層が積層された積層体。
【請求項11】
上記請求項1~請求項
9のいずれか1項の貼付剤支持体用フィルム、又は請求項
10の積層体の一方の面側に対する、薬剤を含有した粘着剤層と剥離ライナーとがこの順に形成された貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤支持体用フィルム、積層体、及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質がある。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、点滴パック、買物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料を選択することが重要である。更に、プラスチックフィルムを複数種類重ねて積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補うようにした用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、若しくは透明性などの観点から、適正なフィルム材料の選択が行われる。
【0003】
一般に、プラスチックフィルムの機械特性やバリア特性は、材料や層構成により決まってしまう。例えば、プラスチックフィルムは、強度重視の材料では伸び性が小さくなる傾向があり、高い強度を有しつつ十分な伸び性を確保できるフィルム材料が切望されている。また、バリア性が必要な場合には、バリア特性の良い材料を限定して使用するか、別の工程でバリア層を積層する必要がある。このため、製造時の手間やコストが問題となってくる場合がある。
【0004】
ところで、肌に貼るシップで代表される貼付剤は、肌に貼る面を構成する粘着剤中に薬剤を入れ、皮膚から体内へと薬剤を吸収させるものである。貼付剤の外側表面を構成する支持体は、通常、フィルム又は不織布の積層体で構成されている。この貼付剤の支持体に求められる機能としては、薬剤に対しバリア性(薬剤バリア性)があること、伸び性、柔軟性があることなどが挙げられる。薬剤バリア性は、薬剤が効率良く皮膚から吸収されるように、支持体が薬剤を吸収しない若しくは薬剤を吸収し難い性能のことである。伸び性や柔軟性は、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感を抑えたり、貼った貼付剤が動作時に剥がれにくくなるようにしたりといった重要な要素である。
【0005】
ここで、伸び性とは、支持体を引っ張った際にどの程度伸びるどうかの伸び具合の指標である。柔軟性は、伸び性の一指標であって、低応力での伸び具合を表す指標である。
しかしながら、薬剤バリア性と伸び性及び柔軟性とは、兼備するのが難しいのが現状である。特に、薬剤バリア性があるプラスチックフィルムの材料は、二軸延伸PET(PolyEthylene Terephthalate)やエチレン-ビニルアルコール共重合体やシクロオレフィンコポリマーなどのような、一部の材料に限定されてきてしまい、これら材料は、強度が大きいために伸び性や柔軟性が低いという欠点がある。
【0006】
例えば特許文献1では、PETやエチレン-ビニルアルコール共重合体などの材料を貼付剤の支持体として用いている。しかし、これら材料では伸び性が低く、伸びに要する応力も高くて柔軟性がないため、貼付剤として使用したときのごわつき感や、激しい動作時に貼付剤が剥がれやすいといった欠点がある。
このように、従来から、貼付剤支持体用フィルムには、薬剤バリア性と伸び性、更には伸びに要する低応力性(柔軟性)の兼備が求められているものの、なかなか達成できていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、薬剤バリア性と伸び性及び柔軟性とが良好な支持体としての貼付剤支持体用フィルム、これを用いた積層体や貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の第一態様は、粘着剤層を一方の面側に配置可能な、厚さが10μm以上100μm以下の薬剤バリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルムであって、上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、上記凹部と上記凸部はそれぞれ直線状に延在しており、上記凸部及び凹部の並び方向に沿った、上記凸部の形状が、頂部と上記頂部の両側に連続する壁部とを有する台形形状であり、隣り合う上記凸部間の間隔である上記凹凸構造の1ピッチの間隔Pに対する、当該1ピッチ間の凹凸の面に沿った道のり長さWの比である(W/P)が、1.2以上2.0以下であり、上記凸部及び凹部の並び方向に沿った、上記凸部の上記頂部と上記壁部とでなす交角が、90度以上125度未満である、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様である貼付剤支持体用フィルムによれば、薬剤バリア性と伸び性が良好であると共に、柔軟性も良好である。このため、本発明の態様である貼付剤支持体用フィルムによれば、貼付剤として使用したときに、体の動きに対しての追従性が良く、しかも、ごわつき感が低減し、激しい動作時にも剥がれにくいという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一例を示す断面模式図である。
【
図3】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける断面形状を変更した一例を示す断面模式図である。
【
図4】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図5】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図6】本発明に関わる実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、フィルム厚さ・凹凸構造の高低差・凹凸構造の間隔、頂角の角度を説明する断面模式図である。
【
図7】本発明に関わる実施例と従来の支持体フィルムの伸び挙動例を示すグラフである。
【
図8】貼付剤支持体用フィルムの断面形状を変えた場合において、フィルム全体伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したグラフである。
【
図9】貼付剤支持体用フィルムの断面形状を変えて示す断面図である。
【
図10】本実施形態の機能層を積層した積層体の例を示す断面模式図である。
【
図11】従来の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
【
図12】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
【
図13】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の別の一例を示す断面模式図である。
【
図14】本実施形態の積層体を用いた貼付剤の一例を示す断面模式図である。
【
図15】本実施形態の積層体を用いた貼付剤の別の一例を示す断面模式図である。
【
図16】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【
図17】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0013】
(貼付剤支持体用フィルムの構成)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、
図1に示すように、層全体が厚さ方向にうねった形状(側方から見て蛇行した形状)に構成されることで、面に沿って凹部2Bと凸部2Aを繰り返す凹凸構造2を有する。凹凸構造2は、凹部2B及び凸部2Aが、
図1の奥行き方向に直線状に延在している。直線状には、幅方向へ蛇行つつ所定直線方向に延在する場合も含む。
【0014】
凹凸構造2は、凹部2Bと凸部2Aとの高低差Hが、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きくなるように形成されているのが好ましい(
図6参照)。凹凸構造2は、例えば、層全体を面方向に沿って蛇行した形状に加工することで設けることができる。
ここで、貼付剤支持体用フィルム1は複数層から構成されていても良い。貼付剤支持体用フィルム1が複数層から構成される場合、各層が同一の材料から構成されていても良いし、互いに異なる材料から構成されていても良い。
【0015】
貼付剤支持体用フィルム1は、一方の面に、薬剤入りの粘着剤層が配置可能である。貼付剤支持体用フィルム1は、粘着剤層に含有される薬剤に対し薬剤バリア性を有する材料から構成される。貼付剤支持体用フィルム1の材料は、貼付剤への使用が想定される薬剤に対し薬剤バリア性を有する公知のプラスチック材料から適宜、選択すればよい。
貼付剤支持体用フィルム1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体を、好ましく使用することが出来る。
【0016】
貼付剤は、体に貼ることで、その粘着剤層に含まれている薬効成分を皮膚に浸透させ、血液を通じて全身に作用させるために使用される。かかる貼付剤に使用される貼付剤支持体用フィルム1は、その薬効成分をバリアし、吸着しない又は吸着しがたいバリア性を有することが重要である。上記材料においては、薬効成分へのバリア性(非吸着性)が良好で、貼付剤の薬効成分を減らすことなく支持体としての機能を果たす。このような材料で形成された貼付剤支持体用フィルム1は、例えばリバスチグミン、ツロブテロール、リドカインのような薬剤に対し、薬剤バリア性を有する。
【0017】
(凹凸構造2について)
凹凸構造2について、隣り合う凸部2A同士の間隔D1及び隣り合う凹部2B同士の間隔D2(
図6参照)は、各々、等間隔など周期性を持って配置してもよいし、異なっていても良い。間隔D1、D2は、貼付剤に要望される所望の延伸状態に応じて適宜設定することが可能であるが、好ましくは等間隔に周期性を持つ方が、貼付剤全面において意図した性能を発揮しやすく、性能のムラがなく良い。
ここで、隣り合う凸部2A同士の間隔D1が、凹凸構造の1ピッチの間隔Pに相当する。凹凸構造の1ピッチの間隔Pは、隣り合う凹部2B同士の間隔D2で決定してもよい。
また、凸部及び凹部の並び方向に沿った凹凸構造2の形状は、
図1~
図3に示すように、凸部2Aが台形形状となっていて、隣り合う凸部2A間が凹部2Bによって連結された構成となっている。
【0018】
凸部が台形形状とは、頂部2Aaと頂部2Aaの両側にそれぞれ連続する壁部2Abとを有する形状である。本実施形態では、厚さ方向に断面において凸部の頂部2Aaが平坦となっており、壁部2Abが、凸部に対し90度以上傾斜して斜面を形成した台形形状である。本実施形態では、台形形状は厳密な意味での台形以外のほか、台形類似形状も含まれる。
図1、
図2の形状パターンは台形形状の参考例であり、これらの形状に限定するものではない。例えば、
図3のように頂部2Aaと壁部2Abとの連結部である角部が丸まっていても、台形形状に含まれる。また、頂部2Aaや壁部2Abの面に粗さを有していても台形形状に含まれるとする。なお、
図2や
図3では、凹部の底部が平坦な場合を例示しているがこれに限定されない。凹部は、断面形状がV字形状であったり、底部の面が曲線形状であったりして良い。また、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム全面で同一パターンでも良いし、異なるパターンを組み合わせても良い。
なお、天地を逆に配置した場合には、凹部が凸部に、凸部が凹部となる。
【0019】
ここで、
図2は断面において面の向きが変更される境界である稜線部(角部)に角がある形状とした例である。また、
図3は、断面において面の向きが変更される境界である稜線部(断面V字形状の部分を除く)の角を丸めた形状とした例である。
上述のように、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凸部2A、及び/又は凹部2Bが断面平坦形状である、台形形状なっている。頂部2Aaが平坦になっていることで、機能層である印刷層を積層した際に視認性が良好となると共に、粘着剤等と貼り合わせた場合に密着性が確保しやすくなる。平坦とは、印刷適性を有する平坦度を有することを指す。貼付剤支持体用フィルムの平坦度は、例えば、レーザ顕微鏡の200倍観察時の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下であることが好ましい。
【0020】
また凹凸構造2は、凹部2B及び凸部2Aが、
図4及び
図5に示すように、それぞれ直線状に延在するような凹凸パターンで構成されている。凹凸構造の延在方向を実線で示している。凹部2B及び凸部2Aは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
図4は、凹凸構造2を形成する領域10を、辺10a、10bを境界とした長方形形状とし、短辺10bに平行となるように、凹部2B及び凸部2Aの延在方向を設定した例である。すなわち、面方向に沿って、領域10の長辺10a方向に向けて凹部2B及び凸部2Aが並ぶように凹凸構造2を形成した例である。
【0021】
図5は、凹凸構造2を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2B及び凸部2Aの延在方向を、短辺10b及び長辺10aの両方から傾くように設定した例である。
また凹凸構造2は、凹部2B及び凸部2Aの延在方向の少なくとも一部が曲線で構成されるような凹凸パターンで構成しても良い。凹部2B及び凸部2Aは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
なお、以上の凹凸パターンは一例であり、これらの形状に限定されるものではない。
例えば、一つの領域10内に、凹部2B及び凸部2Aの基本の延在方向を直線形状とし、一部に曲線に沿って延在する部分を設けたりしても良い。
【0022】
また、凹凸構造2を形成する領域10についても、長方形形状を例示したが、領域10の形状は、長方形形状に限定されるものではない。領域10の輪郭が、円形形状等であっても良い。
また、貼付剤支持体用フィルム1の全面を、凹凸構造2を設ける領域10とする必要もない。例えば、
図4における左右両側の縁部や凹凸の延在方向の中央部などに、凹凸構造2を形成しない箇所があっても良い。
図4の場合、左右方向に伸び性が大きくなっているので、その伸びを拘束しない位置であれば、貼付剤支持体用フィルム1に、部分的に凹凸構造2がない部分が存在していても問題はない。
【0023】
(貼付剤支持体用フィルム1の厚さ、及び凹凸部の高さ等)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、10μm以上100μm以下であると好ましく、より好ましくは10μm以上70μm以下、更に好ましくは10μm以上50μm以下である。厚さが10μm未満であると、貼付剤としての強度が損なわれ、実用性のないものとなってしまう。また、厚さ100μmを超えると、貼付剤として肌に貼付した際にごわつき、違和感を覚えてしまうだけでなく、貼付剤としての柔軟性も損なわれてしまう。
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、必ずしも均一である必要はない。凹凸形状加工後のフィルムにあっては、凸部2A位置での厚さt1と凹部2B位置での厚さt2は一致していなくても良い。本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、凸部2A位置での厚さt1の5箇所と凹部2B位置での厚さt2の5箇所の厚さ測定をした平均値で表されるものである(
図6参照)。
【0024】
凸部及び凹部の並び方向に沿った、凸部の頂部2Aaと壁部2Abとでなす交角が、90度以上125度未満である(
図6参照)。角度θが90度未満であると、製造が非常に困難であり、また、角度θが125度以上であると、凹凸構造2の左右を引っ張った際に凹凸構造の形状変形が起こりにくく、結果として柔軟性が損なわれてしまうものである。凸部2Aにおける左右の角度θは、それぞれ同じ角度でも良いし、異なる角度でも良い。
頂部2Aaと壁部2Abとでなす交角とは、頂部2Aaに対する壁部2Abの傾き角であり、稜線部での角度である。頂部2Aaと壁部2Abとでなす交角は、角部(稜線部の角)が丸まっている場合、平坦からなる頂部2Aaの延長線と、壁部2Abの延長線との交叉角のうち、小さい角度側の角度とする。
【0025】
また、本実施形態では、凹凸構造の1ピッチ(
図6のD1、D2)において、1ピッチの間隔P(直線長さ)に対する凹凸形状の面に沿った道のり長さWの比(W/P)が、1.2以上2.0未満である。すなわち、隣り合う凸部間の間隔である凹凸構造の1ピッチの間隔Pに対する、当該1ピッチ間の凹凸の面に沿った道のり長さWである比(W/P)が、1.2以上2.0以下である。
この比が1.2未満であると、左右に引っ張った際の伸び性が不十分であり、比が2.0より大きいと、凸部2Aの幅に対する高さの比が大きく製造が困難となってくる。又は、比が2.0より大きいと、凹部2Bの幅が狭くなり粘着剤や機能層と積層する際に、密着性の低下やうまく積層するのが困難となる場合がある。
【0026】
凹凸構造2の凹部2Bと凸部2Aの高低差Hは、15μm以上200μm以下の範囲であると良い。凹部2Bと凸部2Aの高低差Hが15μm未満の場合には、歪の調整効果を得ることは難しく、また、200μmを超える場合には、製造上、凹凸構造2をつけることが難しくなるおそれがある。より好ましくは、高低差Hが15μm以上150μm以下の範囲内であるとより良い。また高低差Hは、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも厚いことが好ましい。
凹凸構造2は凹部2Bと凸部2Aが規則的に並んでいる周期的構造であると好ましい。非周期的な構造としないことで、意図した伸び性を得やすいと同時に、凹凸構造2の設計や製作を簡便にすることができる。但し、非周期的な凹凸構造2や部分的に凹凸構造2の幅を変更することは任意である。
【0027】
(作用その他)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹凸構造2を有する特異構造により所要の伸び性が付与されている。ここで、本実施形態のような凹凸構造2を設けない平板形状の貼付剤支持体用フィルム(比較フィルムとも呼ぶ)を構成した場合、比較フィルムの伸び挙動は、
図7の符号21に示したように、フィルムが伸び始めてから短い距離でのみ弾性変形が生じ、すぐに降伏点(以降、ネッキングが始まる起点を降伏点と呼ぶ)を迎える。降伏点以降は、ネッキングを伴う塑性変形が生じ、破断点に到達すると、フィルムが破断する。
【0028】
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、例えば
図1の左右方向、即ち凹凸構造2の延在方向に直行方向に引っ張った場合に、まず弾性変形による形状変形が生じ、その後、形状変形の一部に塑性変形を生じる。更に引っ張り続けると引っ張り応力により凹凸構造2の高低差Hが小さくなりフラットに近づくことで形状変形できなくなる。すなわち、主に凹凸構造が潰れて広がる段階(あまり力をかけずに伸びる領域)と、潰れた凹凸構造が更に引き伸ばされて、ほぼフラットになる段階(力が掛かって伸びる領域)を経て降伏点に達し、最終的には比較フィルムと同様にネッキングが発生し、破断する。この破断するときの強度は、材料のヤング率と厚さにより決定される。
【0029】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、このような多段階からなる形状変形を行うことで、
図7の符号22に示したように、従来の貼付剤支持体用フィルムよりも降伏点を迎えるまでの伸び量が大きくなり、かつ伸びに要する応力が小さくなる。伸び量は、凹凸構造1ピッチにおいて、その1ピッチ(直線長さ)に対する凹凸に沿った道のり長さの比によって決定される。このため、本実施形態の貼付剤支持体用フィルムは、ネッキングせず容易に伸びる性質に寄与する。
【0030】
このように、一般的に伸び性が低いとされる材料で作られた貼付剤支持体用フィルム1であっても、形状に工夫を与えることより、比較フィルムに対し、高い伸び性を付与でき、伸びに要する応力を低くすることができる。つまり、本実施形態の貼付剤支持体用フィルムは、薬剤バリア性と高い伸び性、更には、伸びに要する低い応力(柔軟性)を兼備することができる。
このとき、貼付剤支持体用フィルム1の断面の形状を適切に制御することにより、任意の伸び性を得ることができる。例えば、フィルムを破断させずに大きく伸ばすようにしたい、又は伸びに要する低い応力を得たい場合には、凹凸構造2の高低差Hを大きくし、凸部2Aの角度を小さくし、稜線頂部又は稜線谷部は丸みをあまり帯びないようにするなどの調整を行うとよい。
【0031】
(貼付剤支持体用フィルム1の全体の伸びと局所的な歪みの最大値との関係)
図8は、本実施形態にかかる貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造2の形状を変えた場合における、全体の伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したものである。縦軸が局所的な歪みの最大値であり、横軸がフィルム全体の伸びである。点線で示す凹凸構造2を持たない平板状の貼付剤支持体用フィルムを比較例としている。
【0032】
また、
図8で示す評価に用いた高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1の断面形状を、
図9に示す。
図9は断面三角形状であるが、原理は断面台形形状も同様である。
図9(a)に示す形状Aは、凹凸構造2の凹部2Bと凸部2Aの高低差Hが比較的大きく、
図9(b)に示す形状Bは、凹凸構造2の凹部2Bと凸部2Aの高低差Hが比較的小さく(ただし貼付剤支持体用フィルム1の厚さより大きくして層厚を等しくしている)なっている。そして、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、その凹凸構造2の違いにより、全体の伸びと局所的な歪みの最大値の関係が大きく変化することが分かる。
【0033】
例えば
図9(a)の形状Aのように凹凸構造2の凹部2Bと凸部2Aの高低差Hを比較的大きくすることで、
図8に示すように、フィルム全体の伸びを大きくすることができる。また、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びを局所的な歪みよりも小さくすることが出来る。形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1では、フィルム自体が破断などのクラックが生じづらい。その他、例えば表面に硬い機能層を積層(例えば、蒸着やハードコートなど)した状態で引っ張っても、硬い機能層にクラックが入りにくくすることができる。硬い機能層は、上述の局所的な歪みの分だけ負荷が掛かるためである。つまり、形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1は、例えば機能層を積層した積層体へ応用することで、硬い機能層の破壊を抑えつつ伸び性を持たせることも可能である。
【0034】
図9(b)の形状Bでは、凹凸構造2の凹部2Bと凸部2Aの高低差Hが比較的小さい形状であるが、この場合は、
図8に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びよりも局所的な歪みの方が大きくなる場合もあり得る。しかしながら、フィルム全体の伸びは形状無しのフィルムと比較して大きく高い伸び性を示すものである。これらの凹凸構造2は、所望とする貼付剤支持体用フィルムの伸び性と強度、又は積層する機能化層の材料や形態などを勘案し最適化すればよい。例えば、汎用非線形有限要素解析ソリューションMarc(登録商標)を用いて最適化することで、目的とする実用的な貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能となる。
【0035】
同様に、凸部の頂角を小さくすることで、より小さな歪みでフィルム全体の伸びが得られることもわかる。
更に、伸び性を高めるためには、凹凸構造2の高低差Hは、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きいと良い。こうすることにより、貼付剤支持体用フィルム1の断面がフラットになりにくく、歪の調整効果を効果的に得ることが出来る。
【0036】
(貼付剤支持体用フィルム1の特性)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹部と凸部の並び方向に直交する方向の20%引張荷重に対する凹部と凸部の並び方向の20%引張荷重の比が、1/20以上、1/3以下であることが好ましい。20%引張荷重の比が1/20よりも小さいと、材料強度に対して伸ばす力が弱すぎるため、ハンドリング性が失われ、使用時や製造工程における取扱いが難しくなる場合がある。また、20%引張荷重の比が1/3を超えると、2方向に伸びてしまい、使用時にきれいに貼りづらくなり、また製造工程において成形安定性や寸法安定性が損なわれ、製造が困難なものとなる場合がある。
【0037】
本発明における20%引張荷重の測定方法は、JISK7127:1999 プラスチック-引張特性の試験方法-の試験条件に準拠し、サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minにおいて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、貼付剤支持体用フィルム1が20%伸びた際の引張荷重を求めることで計測できる。
また、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、応力を掛けた際に伸びる効果があるため、衝撃耐性も高く、凹凸構造2が潰れることによる衝撃吸収性も高いという特性も有している。
【0038】
更に、凹凸構造2が
図1のような1次元的構造の場合、凹凸延在方向に直行方向には曲げ剛性が強いという性質もある。曲げ剛性は、断面二次モーメントとヤング率の掛け算の積分によって決まる。本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、同樹脂量の通常のフラットな貼付剤支持体用フィルム1に比べ、この断面二次モーメントが大きくなるため、曲げ剛性は高まる。
【0039】
(貼付剤支持体用フィルム1の製造方法)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の製造方法については、例えば熱プレスによる方法や、押出成形による方法を用いることができる。
熱プレスによる方法では、貼付剤支持体用フィルム1を片側表面に配置した多層のフラットフィルムを、その貼付剤支持体用フィルム1側表面に凹凸形状を設けた加熱ロール間、若しくは加熱した平板状のプレス機に通すことで、貼付剤支持体用フィルム1に凹凸構造2を付与することが可能である。この際、プレス深さやプレス圧を調整することによって、所望の凹凸形状が付与され、冷却後に凹凸構造2を付与した貼付剤支持体用フィルム1を多層フィルムから剥離することにより、本実施形態のうねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。
又は、製膜した単層でフラットの貼付剤支持体用フィルム1を、プレス表裏に凹凸形状を設け精密位置合わせされたプレス機に通すことにより、うねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能である。
【0040】
また、押出成形による方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の別の樹脂をフィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、貼付剤支持体用フィルム1を片側表面に配置した2層以上の多層構成のフィルムを得ることができる。フィルム化するための冷却工程において、貼付剤支持体用フィルム1を配置した面に、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2をつけることが出来る。この時、冷却ロールと接する貼付剤支持体用フィルム1のフィルム厚さに対し、凹凸構造2の山谷の高低差Hが大きいときには、貼付剤支持体用フィルム1の冷却ロールと反対面の界面にも同様に凹凸構造2が付加されるため、冷却後に凹凸構造2を付与した貼付剤支持体用フィルム1を多層フィルムから剥離することにより、本実施形態のうねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。
【0041】
更に押出成形による別の方法では、1台の押出機から単層にて押出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸構造2に対応する凹凸が表面に設けられた1対の冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸構造2が付与された、うねった形状の貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能である。
その他、射出成形など、凹凸構造2を付加するいずれかの方法が選択可能であり、特に方法が限定されるものではない。
【0042】
(積層体、及び貼付剤)
本実施形態にかかる貼付剤支持体用フィルム1は、後工程で表面に印刷層や蒸着層、ハードコート層、反射防止層、粘着剤との密着性向上のためのアンカーコート層などの機能層6を積層した積層体20とすることもできる。又は、別の熱可塑性樹脂などからなる機能層6を積層した積層体20とすることもできる(
図10参照)。別の熱可塑性樹脂は、例えば上述のような機能層を構成する場合もあるし、更に強度などの機能アップ層を構成する場合もある。
【0043】
図11は、一般的な貼付剤5の概略断面図を示したものである。この一般例では、フラットな貼付剤支持体用フィルム1の片面に薬剤を含有した粘着剤層3があり、粘着剤層3の表面に剥離ライナー4を設けた構成である。肌に貼る場合は剥離ライナー4を剥がし、粘着剤層3を肌に貼って使用する。そして、粘着剤層3中に含有された薬剤が皮膚から吸収され、作用するものである。
このような一般的な貼付剤支持体用フィルム1では、伸びに要する低い応力と伸び性が不足しており、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感や、伸び性不足のために、動作時に貼付剤の端部などが剥がれてくる場合があるという問題を抱えている。
【0044】
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1又は積層体を使用することで、伸びに要する低い応力と伸び性を持たすことができるようになり、上述のごわつき感や剥がれが解消される。
一例として、
図12に本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1を使用した場合の貼付剤5の断面図を示す。本実施形態では、薬剤バリア性の高い材料を用いることで、薬剤が効率良く皮膚に吸収される効果があり、また貼付剤支持体用フィルム1の材料自体はヤング率が高く伸びにくい材料であっても、伸びに要する低い応力と高い伸び性を示す。また、破断時には材料自体の硬さにより強度が保たれる。
【0045】
図13に、貼付剤支持体用フィルム1の反対面に粘着剤層3及び剥離ライナー4を積層して貼付剤5とした例を示す。また
図14には、機能層6を積層した積層体20の、貼付剤支持体用フィルム1面に粘着剤層3を配した貼付剤5の例を、
図15では、機能層6を積層した積層体20の、機能層6面に粘着剤層3を配した貼付剤5の例を示す。
図15の例は、機能層として粘着剤とアンカーコート層などを配した場合に適用される。また
図14は、粘着剤層3と貼付剤支持体用フィルム1との間に空隙があるように示されているが、粘着剤層3を埋めて空隙を無くしても良い。同様に
図17では、粘着剤層3と機能層6との間に空隙があるように示されているが、粘着剤層3を埋めて空隙を無くしても良い。
【0046】
(貼付剤支持体用フィルム1の別な実施形態)
貼付剤支持体用フィルム1は、
図16、
図17のように、複数の領域10を有し、各領域10毎に個別の凹凸パターンで凹凸構造2が形成されるようにしても良い。
図16、
図17は、一連の貼付剤支持体用フィルム1において、複数の区画で区分することで、複数の領域10(
図16、
図17は4つの領域10に区分した例)を設定した場合であり、凹凸構造2の延在方向を実線で示している。符号10cは、隣り合う境界線10の境界を示す。
【0047】
図16は、凹凸構造2の延在方向が、各区画の縁と平行であり、隣接する区画内の凹凸構造2の延在方向とは直交する配置となっている。伸び性の良いフィルムには、加工時にフィルムが伸びて安定製膜が難しいという問題があるが、
図16のような配置とすることで、成形加工時に安定した製膜が可能となり、最終製品では区画毎にカットしたり、打ち抜き加工を行ったりすることで、所望の一方向へ伸びる貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。隣接する区画同士の間には、明瞭な境界がなくてもよく、また、一連の貼付剤支持体用フィルム1上に存在する区画の数や区画サイズは任意に設定することが可能である。また、各領域10間に凹凸構造2を有しない領域10が存在していても良い。
【0048】
カットする位置も任意に設定することが可能であり、例えば
図16に示した配置において、各領域10を縦若しくは横方向に半裁することで、縦方向と横方向等の2方向に伸びやすい2区画分の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。この場合、フィルムの半分を固定し、残りの半分のみ伸ばしたい場合などに効果がある。すなわち、複数領域10で一つの最終製品を構成するように設計しても構わない。この場合、貼付剤を肌に張る場合に、最初はフィルムの伸びない半分を肌に貼って固定し、残りの半分を伸ばして貼ることも可能である。
【0049】
図17に示す貼付剤支持体用フィルム1は、各領域10の一辺から、これと交差する他辺へと角度付けされた凹凸構造2がストレートに延在している。それ以外の構成は、
図16に示す貼付剤支持体用フィルム1と同様である。凹凸構造2の、領域10を区画する境界線10cに対する角度は任意であり、領域10毎に角度が異なっていても良い。
【0050】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、粘着剤層を一方の面側に配置可能な、厚さが10μm以上100μm以下の薬剤バリア性材料からなる貼付剤支持体用フィルムであって、上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、凹部と凸部はそれぞれ直線状に延在しており、凸部及び凹部の並び方向に沿った、凸部の形状が、頂部2Aaと頂部2Aaの両側に連続する壁部2Abとを有する台形形状であり、隣り合う凸部間の間隔である凹凸構造の1ピッチの間隔Pに対する、当該1ピッチ間の凹凸の面に沿った道のり長さWの比である(W/P)が、1.2以上2.0以下であり、凸部及び凹部の並び方向に沿った、凸部の頂部2Aaと壁部2Abとでなす交角が、90度以上125度未満である。
【0051】
この構成によれば、薬剤バリア性と伸び性、更には柔軟性(伸びに要する低い応力)の全てが良好の貼付剤支持体用フィルム1を提供可能となる。
例えば、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、ヤング率の大きい硬い薬剤バリア性を有するフィルムを形成しても、凹凸構造2を設け、うねった形状とすることで貼付剤支持体用フィルム1に伸び性と柔軟性(伸びに要する低い応力)を付与させることができる。凹凸構造の凸部の断面形状が、台形形状ならびにその類似形状であることで、表面に平坦性があり、機能層や粘着剤との積層時に視認性や適度な密着強度を保持させることが可能となり、薬剤バリア性、伸び性、柔軟性(伸びに要する低い応力)、積層時の密着強度を兼備する、貼付剤支持体用フィルムを提供可能となる。
【0052】
(2)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹凸構造2の凹部2Bと凸部2Aの高低差Hが、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きい。
この構成によれば、製造工程でうねった形状の形状再現性が良く、伸び性や柔軟性(伸びに要する低い応力)といった狙い効果を、より確実に行うことができる。
(3)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の材料が、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン‐ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなる。
この構成によれば、貼付剤支持体用フィルム1に薬剤バリア性を付与することが出来る。
【0053】
(4)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の凹凸延在方向に対する、凹凸直交方向の20%引張荷重の比が、1/20以上、1/3以下である。
これにより、小さすぎる力では伸びず、また1方向に伸びるため、製造工程でロール形状などにしてフィルムを管理する際や使用時に貼付剤支持体用フィルム1の扱いが容易となる。
(5)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、凹凸の高低差Hは、15μm以上200μm以下である。
この構成によれば、確実に伸び性と柔軟性(伸びに要する低い応力)を向上させることができる。
【0054】
(6)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、複数の領域10を有し、各領域10毎に個別の凹凸パターンで凹凸構造2が形成されている。
この構成では、最終製品の原反として使用する場合、各領域10の伸びがある程度相殺しあうこことで、過剰な伸びが抑制されて、ロール形状などにしてフィルムを管理する際に、貼付剤支持体用フィルム1の扱いが容易となる。
また、最終製品の貼付剤支持体用フィルム1として使用する場合、伸び易い方向を2方向以上に設定しやすくなる。
【0055】
(7)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の片面に機能層6が積層された積層体としてもよい。
この構成によれば、伸び性と柔軟性(伸びに要する低い応力)が良い積層体を提供可能となる。
(8)本実施形態の貼付剤5は、貼付剤支持体用フィルム1又は積層体の一方の面側に、薬剤を含有した粘着剤層3が積層すると共に、その粘着剤層3の上に剥離ライナー4が形成されている。
この構成によれば、薬剤バリア性、伸び性、柔軟性(伸びに要する低い応力)を兼備する、肌への追従性の良い貼付剤5を提供可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明者らが作成した実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、日本合成化学工業株式会社製のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノール D2908(商品名)を用いた。貼付剤支持体用フィルム1は、共押出成形により、貼付剤支持体用フィルム1側を凹凸の付いたロールにニップし、2層構造に製膜して凹凸構造2を付与した。その後、貼付剤支持体用フィルム1を共押出フィルムと剥離し、実施例1のサンプルとした。共押出の材料としては、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)ノバテックLD LC600A(商品名)を用いた。
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは20μmとし、台形凹凸構造2の高低差Hは60μm、ピッチは255μm、上辺長さは205μm、下辺長さは224μm、台形の頂角(角度θ)は99度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=1.4とした。
【0059】
(実施例2)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、ポリプラスチックス株式会社製の環状オレフィン・コポリマー(COC)TOPAS 8007(商品名)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは20μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例2のサンプルを作製した。
(実施例3)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、株式会社ベルポリエステルプロダクツ社製のホモPET樹脂EFG70(商品名)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは20μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例3のサンプルを作製した。
【0060】
(実施例4)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さを12μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例4のサンプルを作製した。
(実施例5)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは100μmとし、台形凹凸構造2の高低差Hは200μm、ピッチは991μm、上辺長さは615μm、下辺長さは678μm、台形の頂角は99度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=1.4とした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例5のサンプルを作製した。
【0061】
(実施例6)
台形凹凸構造2の高低差Hは60μm、ピッチは174μm、上辺長さは74μm、下辺長さは149μm、台形の頂角は122度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=1.4とした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例6のサンプルを作製した。
(実施例7)
台形凹凸構造2の高低差Hは60μm、ピッチは475μm、上辺長さは205μm、下辺長さは224μm、台形の頂角は99度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=1.2とした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例7のサンプルを作製した。
(実施例8)
台形凹凸構造2の高低差Hは100μm、ピッチは202μm、上辺長さは160μm、下辺長さは192μm、台形の頂角は99度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=2.0とした。それ以外は実施例1と同様の方法で実施例8のサンプルを作製した。
【0062】
(比較例1)
押出成形時に貼付剤支持体用フィルム1側に凹凸のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のないフラットなサンプルを作製した。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例1のサンプルを作製した。
(比較例2)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さを6μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例2のサンプルを作製した。
【0063】
(比較例3)
貼付剤支持体用フィルム1の厚さは150μmとし、台形凹凸構造2は、実施例5で使用した台形形状を使用した。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例3のサンプルを作製した。
(比較例4)
台形凹凸構造2の高低差Hは60μm、ピッチは255μm、上辺長さは53μm、下辺長さは224μm、台形の頂角は145度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=1.15とした。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例4のサンプルを作製した。
【0064】
(比較例5)
台形凹凸構造2の高低差Hは200μm、ピッチは273μm、上辺長さは180μm、下辺長さは243μm、台形の頂角は99度、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)=2.5とした。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例5のサンプルを作製した。
(比較例6)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、NatureWorks社製のポリ乳酸(PLA)Ingeo 3052D(商品名;ヤング率2600MPa)を用い、貼付剤支持体用フィルム1の厚さは20μmとした。それ以外は実施例1と同様の方法で比較例6のサンプルを作製した。
【0065】
(薬剤バリア性評価方法)
各実施例及び比較例における貼付剤支持体用フィルム1の薬剤バリア性能を評価するため、吸着性試験評価を実施した。
サンプルを100mm角にカットした後、サンプル中央に貼付剤(リバスタッチパッチ18mg、小野薬品工業(株)製)を貼付した。薬剤が揮発・拡散しないようにアルミ箔で密閉し、40℃75%の環境で6ヶ月保管した。その後、フィルムから貼付剤を剥がし、フィルムに吸着した薬剤をメタノールで55℃・3時間以上抽出し、Agilent Technologies社製の超高速液体クロマトグラフィー 1260 HPLCシステムにより薬剤の吸着量を測定した。
薬剤吸着量は、元々の貼付剤の薬剤量の10%未満であれば「○」、それ以上であれば「×」とした。
【0066】
(降伏伸度、20%引張荷重評価方法)
各実施例及び比較例における、貼付剤支持体用フィルム1の降伏伸度、及び20%引張荷重を評価するため、引張試験評価を実施した。
引張試験評価は、JISK7127:1999 プラスチック-引張特性の試験方法-の試験条件に準拠し、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて実施した。サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/minにおいて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与し、降伏点までの伸び率を降伏伸度とした。また、貼付剤支持体用フィルム1が20%伸びた際の引張荷重を求めた。
貼付剤支持体用フィルム1の降伏伸度は20%以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
貼付剤支持体用フィルム1の20%引張荷重は6N/15mm以下を「○」とし、それを超えた場合は「×」とした。
【0067】
各実施例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。また、各比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表2に示す。
【0068】
【0069】
【0070】
(評価結果)
表1からわかるように、実施例1~8では、薬剤バリア性、降伏点伸度、20%引張荷重が全て良好な貼付剤支持体用フィルム1が得られた。
一方、表2における比較例1では、貼付剤支持体用フィルム1がフラットなフィルムであるため、使用時には降伏点伸度が低く、20%引張荷重も大きく伸びないフィルムであった。
比較例2では、貼付剤支持体用フィルム1の厚さが薄過ぎるため、すぐに破断してしまい、貼付剤としての要件を満たしていない結果となった。
【0071】
比較例3では、貼付剤支持体用フィルム1の厚さが厚過ぎるため、20%引張強度が高くなりすぎてしまい、柔軟性に欠ける結果となった。
比較例5では、台形の頂角が大きすぎるため凹凸構造を潰すための力が必要となり、20%引張強度が高くなりすぎてしまい、柔軟性に欠ける結果となった。
比較例4では、台形の頂角が大きすぎるため(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)も小さくなってしまい、降伏伸度が低くなりすぎてしまった。また、凹凸構造を潰すための力が必要となり、20%引張強度が高くなりすぎてしまい、柔軟性に欠ける結果となった。
【0072】
比較例5では、(凹凸の道のり長さ)/(1ピッチ)が大きく降伏伸度(伸び性)を重視したため、凹凸構造の高低差を大きくする必要があり、成形品で凹凸形状を再現することができず成形不良となってしまった。
比較例6では、貼付剤支持体用フィルム1の材料としてPLAを用いたため、薬剤バリア性が悪く、貼付剤としての要件を満たしていない結果となった。
【符号の説明】
【0073】
1 貼付剤支持体用フィルム
2 凹凸構造
2A 凸部
2Aa 頂部
2Ab 壁部
2B 凹部
3 粘着剤層
4 剥離ライナー
5 貼付剤
6 機能層
10 領域
10c 縁(境界)
20 積層体
H 高低差
t1 凸部の厚さ
t2 凹部の厚さ