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特許7447438貼付剤支持体用フィルム、積層体及び貼付剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】貼付剤支持体用フィルム、積層体及び貼付剤
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240305BHJP
   B32B 3/28 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240305BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20240305BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B3/28 C
B32B27/18 F
B32B27/00 M
A61L15/26 110
A61L15/24 110
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019204172
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021075647
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 徹三
(72)【発明者】
【氏名】高柳 浩介
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-090006(JP,A)
【文献】特開2019-088765(JP,A)
【文献】特開2020-163038(JP,A)
【文献】特開平08-127531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B32B 1/00-43/00
B29C 63/00-63/48
B29C 65/00-65/82
A61L 15/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一表面が薬剤バリア性を有する樹脂からなる貼付剤支持体用フィルムであって、
上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、
上記凹凸構造は、上記凹部と上記凸部との高低差が上記貼付剤支持体用フィルムの厚さよりも大きく、
上記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、20μm以上450μm以下の範囲であり、
上記凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷した際に、初期長さの10%伸び時に必要となる荷重が3N以下であり、
上記凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷して初期長さの15%以上50%以下の伸び量を与え、その荷重の除荷後に残る伸び量が初期長さの5%以上30%以下であり、
上記凸部の頂部は、断面平坦な平坦部となっており、
上記平坦部における平坦度は、レーザ顕微鏡の200倍観察時の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下である、
ことを特徴とする貼付剤支持体用フィルム。
【請求項2】
上記凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷した際に、初期長さの20%伸び時に必要となる荷重が3.5N以下であることを特徴とする請求項1に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項3】
上記薬剤バリア性を有する樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項4】
複数の領域を有し、各領域に個別の凹凸パターンで上記凹凸構造が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1項に記載した貼付剤支持体用フィルム。
【請求項5】
上記貼付剤支持体用フィルムの厚さが、25μm以上90μm以下の範囲であり、
上記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、90μm以上300μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム。
【請求項6】
上記凸部の頂部及び上記凹部の底部は、それぞれ断面平坦形状となっており、
上記凹凸構造の高低差が60μm以上210μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム。
【請求項7】
隣り合う上記凸部の頂部と上記凹部の底部において、凹部と凸部の並び方向における上記底部の幅が205μmであることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム。
【請求項8】
隣り合う上記凸部の頂部と上記凹部の底部において、凹部と凸部の並び方向における上記頂部の幅が、30μm以上625μm以下の範囲であることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルムの両面又は片面に機能層が積層された積層体。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の貼付剤支持体用フィルム又は請求項の積層体における薬剤バリア性樹脂層側に、薬剤入り粘着剤層と剥離ライナーとがこの順に形成された貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤支持体用フィルム、積層体及び貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能などの性質を有する。このため、プラスチックフィルムは、様々なものに利用されている。プラスチックフィルムの用途は、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材、点滴パック、買物袋、ポスター、テープ、液晶テレビ等に利用される光学フィルム、保護フィルム、窓に貼合するウィンドウフィルム、ビニールハウス、建装材等々、多岐にわたる。このような用途に対し、用途に応じて適正なプラスチック材料が選択される。更に、プラスチックフィルムを複数種類重ねて積層体とすることもなされている。また、複数のプラスチック材料を1つの層中に混ぜることで、単一材料の欠点を補う用い方もある。多くの場合、耐熱性や機械強度、透明性などの観点から、フィルム材料の選択を実行している。
【0003】
一般に、プラスチックフィルムの機械特性やバリア性は、プラスチックフィルムの材料や層構成によって決まる。このとき、例えば、強度重視で選択した材料は伸び性が小さくなる傾向がある。このため、高い強度を有しつつ十分な伸び性を確保できるフィルム材料が切望されている。しかし、バリア性が必要な場合には、バリア性の良い材料に限定して使用するか、別の工程でバリア層を積層する必要が出てくるなど、製造時の手間やコストが問題となってくる場合がある。
【0004】
ところで、肌に貼るシップで代表される貼付剤は、肌に貼る面を構成する粘着剤中に薬剤を入れ、その薬剤を皮膚から体内へと吸収させるものである。貼付剤の外側表面を構成する支持体は、通常、フィルム又は不織布の積層体で構成されている。この貼付剤の支持体に求められる機能としては、薬剤に対しバリア性(薬剤バリア性)があること、伸び性があることなどが挙げられる。ここで、薬剤バリア性は、薬剤が効率良く皮膚から吸収されるように、支持体が薬剤を吸収しない若しくは薬剤を吸収し難い性能のことを指す。また、伸び性は、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感を抑えたり、貼った貼付剤が動作時に剥がれにくくしたりするといった重要な要素となる。伸び性は、伸び具合の一指標である。
【0005】
しかしながら、薬剤バリア性と伸び性とは両立が難しいのが現状である。特に、薬剤バリア性を有するプラスチックフィルムの材料としては、二軸延伸PETやエチレン-ビニルアルコール共重合体やシクロオレフィンコポリマーなどのような、一部の材料に限定されてしまう。そして、これら材料は、強度が大きいために伸び性が低いという欠点がある。
【0006】
例えば特許文献1では、PETやエチレン-ビニルアルコール共重合体などの材料を使用したプラスチックフィルムを貼付剤の支持体として用いている。しかし、これら材料は、伸び性が低く、貼付剤として使用したときのごわつき感や、激しい動作時に剥がれやすいといった欠点がある。このように、従来から、貼付剤支持体用フィルムには、薬剤バリア性と伸び性の両立が求められている。
これに対し、特許文献2では、バリアフィルムと軟質フィルムとを接着し、バリアフィルム面を蛇腹構造にすることで薬剤バリア性と伸び性を両立する試みがなされている。しかし、特許文献2の方法は、工程数が多く、作製方法が煩雑である欠点がある。
【0007】
また、特許文献3には、弾性体シートとひだ状の不織布を部分的に結合させることで、柔軟性と肌触りを両立させる試みが開示されている、しかし、貼付剤表面の印字を視認することが困難であり、使用者が貼付剤種を確認しにくいといった欠点がある。
更に、伸縮性の良いシート、即ち、良好な伸び性と共に良好な戻り性も有するシートを用いた場合、シートが伸びた状態で貼り付けた際にツッパリ感につながり、貼付剤支持体として使用した際に違和感が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6176846号公報
【文献】特開平8-127531号公報
【文献】特許第3295455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、製造時の手間やコストを抑えつつ、薬剤バリア性と伸び性が良好で、貼付箇所を動かしても違和感を覚えない貼付剤支持体用フィルム、これを用いた積層体、貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、本発明の第1態様は、少なくとも一表面が薬剤バリア性を有する樹脂からなる貼付剤支持体用フィルムであって、上記貼付剤支持体用フィルムは、層全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造を有し、上記凹凸構造は、上記凹部と上記凸部との高低差が上記貼付剤支持体用フィルムの厚さよりも大きく、上記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、20μm以上450μm以下の範囲であり、上記凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷した際に、初期長さの10%伸び時に必要となる荷重が3N以下であり、上記凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷して初期長さの15%以上50%以下の伸び量を与え、その荷重の除荷後に残る伸び量が初期長さの5%以上30%以下である、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、簡易な構造で、支持体としての強度を確保しつつ、薬剤バリア性と伸び性が共に良好で、更に、貼付部を動かしても違和感を覚えない柔軟性を備えた貼付剤支持体用フィルム、及びこれを用いた積層体や貼付剤を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一例を示す断面図模式図である。
図2】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、総厚・凹凸構造の高低差・凹凸構造の間隔を説明する断面模式図である。
図3】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、フィルム膜厚を説明する断面模式図である。
図4】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける別の一例を示す断面図模式図である。
図5】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図6】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図7】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図8】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図9】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける一区画内での凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図10】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図11】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムにおける、複数の区画を組み合わせた際の凹凸構造の別の延在方向例を示した俯瞰模式図である。
図12】本実施形態の積層体の例を示す断面模式図である。
図13】本実施形態の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面図模式図である。
図14】本実施形態の積層体を用いた貼付剤の一例を示す断面図模式図である。
図15】従来の貼付剤支持体用フィルムを用いた貼付剤の一例を示す断面図模式図である。
図16】本発明に関わる実施例と従来の支持体フィルムの伸び挙動例を示すグラフである。
図17】貼付剤支持体用フィルムの表面形状を変えた場合において、フィルム全体伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したグラフである。
図18】貼付剤支持体用フィルムの断面形状を変えて示す断面図である。
図19】本発明に関わる貼付剤支持体用フィルムの戻り性を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0014】
(貼付剤支持体用フィルム1の構成)
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、凹凸の並び方向に沿った断面図である図1に示すように、層全体が厚さ方向にうねった形状(側方から見て蛇行した形状)に構成されることで、面に沿って凹部2Aと凸部2Bを繰り返す凹凸構造4を有する。凹凸構造4は、図2に示すように、凹部2Aと凸部2Bとの高低差が貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きくなるように形成されている。凹凸構造4は、例えば、層全体を面方向に沿って蛇行した形状に加工することで設けることができる。
【0015】
貼付剤支持体用フィルム1は、一方の面2(図1中上面側)側若しくはもう一方の面3(図1中下面側)側に、薬剤入りの粘着剤層6を配置可能である。図1には、一方の面2側に薬剤入りの粘着剤層6を配置する場合を例示している。貼付剤支持体用フィルム1は、粘着剤層6に含有される薬剤に対し薬剤バリア性を有する材料から構成される。貼付剤支持体用フィルム1の材料は、貼付剤への使用が想定される薬剤に対し薬剤バリア性を有する公知のプラスチック材料から適宜、選択すればよい。
【0016】
貼付剤支持体用フィルム1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体を挙げることが出来る。貼付剤は体に貼ることで、その粘着剤層6に含まれている薬効成分を皮膚に浸透させ、血液を通じて全身に作用させるものである。係る貼付剤に使用される貼付剤支持体用フィルム1は、その薬効成分をバリアし、吸着しない又は吸着しがたいことが重要である。上記材料においては、薬効成分へのバリア性(非吸着性)が良好で、貼付剤の薬効成分を減らすことなく支持体としての機能を果たす。このような材料で貼付剤支持体用フィルム1を形成した場合には、例えばツロブテロールやリバスチグミンのような薬剤に対して、薬剤バリア性を有する。
【0017】
また、図12に示したように、薬剤入り粘着剤層6を設けない側の面(図12の例では下面)には、凹凸構造4に沿った形で、薬剤バリア性の有無を問わない機能層30を設けることが可能である。薬剤入り粘着剤層6を設ける側の面に機能層を設けようとする場合には、該機能層の材料にも薬剤バリア性が求められる。
【0018】
(凹凸構造4について)
上記凹凸構造において、貼付剤支持体用フィルム1の一方の面2(図1中上面側)と、もう一方の面3(図1中下面側)は共に、凹凸の位置は一致しており、図示はないが断面形状における角部が丸みを帯びていてもよい。
【0019】
本実施形態の凹凸構造4は、図1に示すように、少なくとも薬剤入り粘着剤層6を設ける面側において、凹部2Aの底部2aの面及び凸部2Bの頂部2bの面のうち、少なくとも凸部2Bの頂部2bの面が平坦に形成されている。更に、隣り合う凹部2Aの底部と凸部2Bの頂部とが、壁部によって連結した構造となっている。上記角部とは、頂部又は底部と壁部との連結部(稜線の部分)を指す。頂部2bの面が平坦になっていることで、機能層である印刷層を積層した際に視認性が良好となると共に、粘着剤等と貼り合わせた場合に密着性が確保しやすくなる。平坦とは、印刷適性を有する平坦度を有することを指す。貼付剤支持体用フィルムの平坦度は、例えば、レーザ顕微鏡の200倍観察時の算術平均粗さ(Ra)が0.3μm以下であることが好ましい。ここで、貼付剤支持体用フィルム1の天地を逆にした場合、凹部2Aが凸部となり、凸部2Bが凹部となる。すなわち、面3aが頂部の面となり、面3bが底部の面となる。この下側にも機能層等を積層する場合には、面3a及び面3bは平坦であることが好ましい。また、凹部2Aは、断面V形状などで構成されて底部2aの幅がゼロ又はゼロに近い形状となっていても良い。
【0020】
ここで、凹凸構造4について、隣り合う凸部2B同士の間隔D1及び隣り合う凹部2A同士の間隔D2(図2参照)は、各々、等間隔など周期性を持って配置してもよいし、異なっていても良い。間隔D1,D2は、貼付剤に要望される所望の延伸状態に応じて適宜設定することが可能である。また、図5に示したように、凹凸構造の底部又は頂部の平坦部の長さを複数パターン組み合わせることで、所望の延伸状態が発現するように調整することも可能である。
また凹凸構造4は、凹部2A及び凸部2Bが、粘着剤層6を形成する側の面側(図1中上面2側)からみて、平面図である図5及び図6に示すように、それぞれ直線状に延在するような凹凸パターンで構成しても良い。凹部2A及び凸部2Bは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
【0021】
図5は、凹凸構造4を形成する領域10を辺10a、10bを境界とした長方形形状とし、短辺10bに平行となるように、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を設定した例である。すなわち、面方向に沿って、領域10の長辺10a方向に向けて凹部2A及び凸部2Bが並ぶように凹凸構造4を形成した例である。
図6は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、短辺10b及び長辺10aの両方から傾くように設定した例である。
また凹凸構造4は、凹部2A及び凸部2Bが、粘着剤層6を形成する側の面側(図1中上面側)からみて、図7図9に示すように、凹部2A及び凸部2Bの延在方向の少なくとも一部が曲線で構成されるような凹凸パターンで構成しても良い。凹部2A及び凸部2Bは同幅で構成しても良いし、幅が異なるように構成しても良い。
【0022】
図7は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、同心円状に設定した例である。
図8は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、同心且つ楕円状(相似形楕円形状)に設定した例である。
図9は、凹凸構造4を形成する領域10を長方形形状とし、凹部2A及び凸部2Bの延在方向を、短辺に平行となるように設定すると共に、延在方向に沿って蛇行する蛇行状態に設定した例である。
【0023】
なお、以上の凹凸パターンは一例であり、これらの形状に限定されるものではない。また領域10の輪郭形状も、上記の形状に限定されるものではない。
例えば、一つの領域10内に、凹部2A及び凸部2Bの基本の延在方向を直線形状とし、一部に曲線に沿って延在する部分を設けたり、図5のパターンと図9のパターンを混合したパターン形状に設定したりしても良い。
また、凹凸構造4を形成する領域10についても、長方形形状を例示したが、領域10の形状は、長方形形状に限定されるものではない。領域10の輪郭が、円形形状等であっても良い。
【0024】
また、貼付剤支持体用フィルム1の全面を、凹凸構造4を設ける領域10とする必要もない。例えば、図5における左右両側の縁部や凹凸の延在方向の中央部などに、凹凸構造4を形成しない箇所があっても良い。図5の場合、左右方向に伸び性が大きくなっているので、その伸びを拘束しない位置であれば、貼付剤支持体用フィルム1に、部分的に凹凸構造4がない部分が存在していても問題はない。
【0025】
(貼付剤支持体用フィルム1の厚さ及び凹凸部の高さ等)
また、貼付剤支持体用フィルム1の総厚T(図2参照)は20μm以上450μm以下であると好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下である。なお、貼付剤支持体用フィルム1自体の厚さは、必ずしも均一である必要はない。凹凸形状加工後のフィルムにあっては、稜線付近(向きの異なる二つの部の連結部付近)の貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、他の部分の貼付剤支持体用フィルム1の厚さと異なっていても良い。
【0026】
貼付剤支持体用フィルム1の厚さ(膜厚)は、5μm以上150μm以下が好ましい。貼付剤支持体用フィルム1の厚さは、上記凹部底部の平坦部厚さt2と上記凸部頂部の平坦部厚さt1(図3参照)の平均値とする。これは、貼付剤支持体用フィルムの厚さが5μm未満では、必要な強度が維持できず破断し易くなり、150μmより厚くなると凹凸構造が変形する際に要される応力が大きくなりすぎ、伸び性が悪化するためである。より好ましくは、10μm以上100μm以下であるとよい。
【0027】
凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差H(図2参照)は、10μmより大きく300μm以下の範囲であると良い。凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが10μm以下の場合には、歪の調整効果を得ることは難しく、また、300μmを超える場合には、製造上、凹凸構造4をつけることが難しくなるおそれがある。より好ましくは、高低差Hが20μm以上200μm以下の範囲内であるとより良い。
なお、凸部頂部の平坦部厚さt1、凹部底部の平坦部厚さt2、総厚T、高低差Hは、CCD付光学顕微鏡で観察した断面において、各5箇所の測長を実施し、平均値を取ることとした。各測定位置での測長の全てが上記関係を満たすことが好ましい。
【0028】
凹凸構造4は凹部2Aと凸部2Bが規則的に並んでいる周期的構造であると良い。ランダムな構造としないことで、意図した伸び性を得やすいと同時に、凹凸構造4の設計や製作を簡便にすることができる。但し、ランダムな凹凸構造4や部分的に凹凸構造4の幅を変更することは任意である。
【0029】
(作用その他について)
一般に、薬剤バリア性を有するプラスチックフィルムは、比較的に強度が高い代わりに伸び性が低い。このため、本実施形態のような凹凸構造4を設けない平板形状の貼付剤支持体用フィルム1からフィルムが構成される場合、フィルムの伸び挙動は、図16中符号20に示したように、フィルムが伸び始めてから短い距離でのみ弾性変形が生じ、すぐに降伏点(以降、ネッキングが始まる起点を降伏点と呼ぶ)を迎える。そして、降伏点以降は、ネッキングを伴う塑性変形が生じ、破断点に到達したときに、フィルムが破断する。
【0030】
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、図16の符号21に示すように、例えば図1の左右方向、即ち周期的や非周期的に形成された凹凸構造4の並び方向に引っ張った場合に、貼付剤支持体用フィルム1は、まず弾性変形による形状変形が生じ、その後、形状変形の一部に塑性変形を生じる。更に引っ張り続けると、引張り応力により凹凸構造4の高低差が小さくなり、フラットに近づくことで形状変形できなくなる。即ち、主に凹凸構造が潰れて広がる段階(あまり力を掛けずに伸びる領域)と、潰れた凹凸構造が更に引き伸ばされて、ほぼフラットになる段階(力が掛かって伸びる領域)を経て降伏点に達し、最終的にはネッキングが発生して破断する。
【0031】
本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、このような多段階からなる形状変形を行うことで、図16に示したように、従来の貼付剤支持体用フィルムよりも降伏点を迎えるまでの伸び量が大きくなり、且つ伸びに要する応力が小さくなる。このため、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、ネッキング発生までの伸びが大きくなり、しかも、容易に伸びる性質を有する。
【0032】
また、本実施形態では、凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷して伸展(図1の左右方向)させた際に、初期長さの10%伸び時に必要となる荷重が3N以下となるように設定する。この設定は、上記の凹凸の形状を工夫することで可能である。例えば、初期長さの10%伸び状態では、凹凸構造が完全に潰れないように設定すればよい。すなわち、上記の「あまり力を掛けずに伸びる領域」内に、「初期長さの10%伸び」が入るように調整することで実現できる。この場合、例えば、初期長さの10%伸びを与えた後に、除荷後の戻りで残る伸び量が、ゼロに近づくように、すなわち、初期長さの10%伸びが弾性変形領域となる。
【0033】
更に、本実施形態では、図19に示したように、凹部と凸部の並び方向に向けて引張力を負荷して凹凸の並び方向へ伸展(図1の左右方向)させ、伸び量が初期長さの15%以上50%以下の伸びを与え、その荷重を除荷後の戻りで残る伸び量が初期長さの5%以上30%以下残る仕様にする。この仕様は、例えば、伸び量が初期長さの15%以上の領域を、上記の「力が掛かって伸びる領域」に設定すると共に、貼付剤支持体用フィルム1の膜厚や材料の調整を行うことで実現可能である。
【0034】
凹凸の並び方向への伸展(図1の左右方向)において、初期長さの10%伸び時に必要となる荷重が3N以下であり、且つ凹凸の並び方向への伸展(図1の左右方向)において、伸び量が初期長さの15%以上50%以下の伸びを与えた際に、戻り後に残る伸び量が初期長さの5%以上30%以下残る仕様とすることで、小さな力で伸び、且つ収縮性由来のツッパリ感を回避することが可能になり、貼付部の違和感を回避することができる。
また、20%伸び時に必要となる荷重が3.5N以下であると、更に良好な伸び性が得られる。これは、貼付剤支持体用フィルム1の膜厚や材料の調整を行うことで実現可能である。
【0035】
一方で、初期長さに対する伸び量L1が15%以上となってもL2<初期長さの5%となる戻り性を有している場合には、収縮性由来のツッパリ感が発生し、L2>初期長さの30%となると皮膚と貼付剤の長さ差が大きくなりすぎることによるゴワツキを感じるようになり、使用感が悪化する。
以上のように、一般的に伸び性が低いとされる材料で貼付剤支持体用フィルム1を形成しても、凹部及び凸部の形状に工夫を与えることより、貼付剤支持体用フィルム1に対し、高い伸び性と低収縮性(柔軟性)を付与し、薬剤バリア性と高い伸び性を有し、かつツッパリ感が生じない柔軟性を備えた貼付剤支持体用フィルムを得ることが可能となる。
【0036】
このとき貼付剤支持体用フィルム1断面の形状を適切に制御することにより、任意の伸び性を得ることができる。例えば、フィルムを破断させずに大きく伸ばすようにしたい場合には、凹凸構造4の高低差Hを大きくし、向きの異なる二つの部の連結部である稜線(角部)に丸みを帯びさせるようにするなどの調整を行うとよい。また、戻り性に関しては、形状の他、フィルムの厚さによっても調整することがで、戻り性を低下させることができる。
【0037】
本実施形態に係る貼付剤支持体用フィルム1は、引張時の初期においては、貼付剤支持体用フィルム1の形状が変化することにより伸び性を向上させることができる。つまり、通常のフラットな面を持つ貼付剤支持体用フィルム1のように、引っ張り当初の段階から材料自身が伸びることでフィルムが伸びているわけではない。本実施形態に係る貼付剤支持体用フィルム1においては、凹凸構造4の並び方向に引っ張った場合は、引っ張り当初において、貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造4に局所的な歪み(伸びや縮み)が生じ、それにより形状が変化することで、大きな伸び性を得ることができる。そのため、凹凸構造4の形状・厚さを適切に設定することで、フィルム全体の伸びや戻り性を自在に調整することが出来る。
【0038】
(貼付剤支持体用フィルム1の伸びと局所的な歪みの最大値との関係)
図17は、貼付剤支持体用フィルム1の凹凸構造4の形状を変えた場合における、全体の伸びと局所的な歪みの最大値との関係を示したものである。縦軸が局所的な歪みの最大値であり、横軸がフィルム全体の伸びである。点線で示す凹凸構造4を持たない(形状なし)貼付剤支持体用フィルムを比較例としている。
また、図17で示す評価に用いた高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1の断面形状を、図18に示す。図18(a)に示す形状Aは、凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが比較的大きく、図18(b)に示す形状Bは、凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが比較的小さくなっている。そして。本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、その凹凸構造4の違いにより、全体の伸びと局所的な歪みの最大値の関係が大きく変化することが分かる。
【0039】
例えば図18(a)の形状Aのように凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hを比較的大きくすることで、図17に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びを局所的な歪みよりも小さくすることが出来る。形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1では、フィルム自体が破断などのクラックが生じづらい。その他、例えば表面に硬い機能層を積層(例えば、蒸着やハードコートなど)した状態で引っ張っても、硬い機能層にクラックが入りにくくすることができる。硬い機能層は、上述の局所的な歪みの分だけ負荷が掛かるためである。つまり、形状Aを採用した貼付剤支持体用フィルム1は、例えば機能層を積層した積層体へ応用することで、硬い機能層の破壊を抑えつつ伸び性を持たせることも可能である。
【0040】
図18(b)の形状Bでは、凹凸構造4の凹部2Aと凸部2Bの高低差Hが比較的小さい形状であるが、この場合は図17に示すように、貼付剤支持体用フィルム1全体の伸びよりも局所的な歪みの方が大きくなる場合もあり得る。しかしながら、フィルム全体の伸びは形状なしのフィルムと比較して大きく高い伸び性を示すものである。これらの凹凸構造4は、所望とする貼付剤支持体用フィルム1の伸び性と強度、又は積層する機能化層の材料や形態等を勘案し最適化すればよい。例えば、汎用非線形有限要素解析ソリューションMarc(登録商標)を用いて最適化することで、目的とする実用的な貼付剤支持体用フィルム1を得ることが可能となる。
更に、伸び性を高めるためには、凹凸構造4の高低差Hは、貼付剤支持体用フィルム1の厚さよりも大きいと良い。この構成とすることにより、貼付剤支持体用フィルム1の断面がフラットになりにくく、歪の調整効果を効果的に得ることが出来る。
【0041】
(貼付剤支持体用フィルム1の特性)
また、本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、応力を掛けた際に伸びる効果があるため、衝撃耐性も高く、凹凸構造4が潰れることによる衝撃吸収性も高いという特性も有している。
更に、凹凸構造4が図1のような1次元的構造の場合、凹凸の延在方向(図1では紙面奥行き方向)には曲げ剛性が強いという性質もある。曲げ剛性は、断面二次モーメントとヤング率の掛け算の積分によって決まる。本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、同樹脂量の通常の貼付剤支持体用フィルム1に比べ、この断面二次モーメントが大きくなるため、曲げ剛性は高まる。
【0042】
(貼付剤支持体用フィルム1の製造方法)
本実施形態の高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1の製造方法については、例えば熱プレスによる製造方法や、押出成形による製造方法を用いることができる。
熱プレスによる方法では、製膜したフィルムを、表面に凹凸形状を設けた一対の加熱ロール間、若しくは一対の加熱した平板状のプレス機に通すことで製造できる。この際、一対の加熱ロール間、若しくは一対の平板の、上下の凹形状と凸形状とを精密に位置合わせし、熱プレス後のフィルムの表面が連続的な凹凸構造になっていることが重要となる。
また、押出成形による方法では、樹脂を加熱溶融してTダイから押出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロール及びニップロールを用いてニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルムの表裏面に連続的な凹凸構造を設けることができる。この方法においても、冷却ロールとニップロールの凹凸形状の精密な位置合わせが必要になる。
【0043】
あるいは押出成形の別の方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の樹脂をフィードブロック法又はマルチマニホールド法により共押出することで、二層以上の多層フィルムを得ることができる。フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロールを用いてニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルムの表裏面に連続的な凹凸構造を設けることができる。更にこのとき、冷却ロールと接する第一樹脂層の膜厚tに対して、凹凸構造の高低差Hが大きい場合には、第一樹脂層と第二樹脂層の界面にも同様の凹凸構造が形成されるため、冷却後の多層フィルムから第二樹脂層を剥離すれば、表裏面に凹凸構造が設けられた第一樹脂層が得られ、これを貼付剤支持体用フィルム1として用いることができる。
その他、キャスキィング成形、インフレーション成形、カレンダー成形、などのような種々の方法を適宜選択して貼付剤支持体用フィルム1を製造することが可能であり、特に製造方法が限定されるものではない。
【0044】
(積層体)
高い伸び性を持つ貼付剤支持体用フィルム1は、図12のように、後工程で薬剤入り粘着剤層6を設けない側の面3の表面に印刷層や蒸着層、ハードコート層、反射防止層などの機能層30を積層した積層体とすることもできる。
図15は、一般的な貼付剤の概略断面図を示したものである。この一般例では、貼付剤支持体用フィルム8の片面に薬剤を含有した粘着剤層6があり、粘着剤層6の表面に剥離ライナー7を設けた構成である。肌に貼る場合は剥離ライナーを剥がし、粘着剤層6を肌に貼って使用する。そして、粘着剤層6中に含有された薬剤が皮膚から吸収され、作用するものである。
【0045】
このような一般的な貼付剤支持体用フィルム8では、伸び性が不足しており、貼付剤を肌に貼った後のごわつき感や、伸び性不足のために、動作時に貼付剤の端部などが剥がれてくる場合があるという問題を抱えている。
一方、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1又は積層体を使用することで、高い伸び性と低い戻り性を付与することができるようになり、上述のごわつき感や剥がれが解消される。
一例として、図13及び図14に、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1を使用した場合の貼付剤9の断面図を示す。本実施形態では、薬剤バリア性の高い材料を用いることで、薬剤が効率良く皮膚に吸収される効果があり、また貼付剤支持体用フィルム1の材料自体は硬く伸びにくい材料であっても、高い伸び性を示す。
【0046】
(貼付剤支持体用フィルム1の別な実施形態)
貼付剤支持体用フィルム1は、図10図11のように、複数の領域10を有し、各領域10に個別の凹凸パターンで凹凸構造4が形成されるようにしても良い。
図10図11は、一連の貼付剤支持体用フィルム1において、複数の区画で区分することで、複数の領域10(図10図11は4つの領域10に区分した例)を設定した場合であり、凹凸構造4の延在方向を実線で示している。符号10cは、隣り合う領域10の境界線を示す。
【0047】
図10は、凹凸構造4の延在方向が、各区画の縁と平行であり、隣接する区画内の凹凸構造4の延在方向とは直交する配置となっている。伸び性の良いフィルムには、加工時にフィルムが伸びて安定製膜が難しいと言う問題があるが、図10のような配置とすることで、成形加工時に安定した製膜が可能となり、最終製品では区画毎にカットしたり、打ち抜き加工を行ったりすることで、所望の一方向へ伸びる貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。隣接する区画同士の間には、明瞭な境界がなくてもよく、また、一連の貼付剤支持体用フィルム1上に存在する区画の数や区画サイズは任意に設定することが可能である。また、各領域10間に凹凸構造4を有しない領域10が存在していても良い。
【0048】
カットする位置も任意に設定することが可能であり、例えば図10に示した配置において、各領域10を縦若しくは横方向に半裁することで、縦方向と横方向等の2方向に伸びやすい2区画分の貼付剤支持体用フィルム1を得ることができる。この場合、フィルムの半分を固定し、残りの半分のみ伸縮させたい場合などに効果がある。すなわち、複数領域10で一つの最終製品を構成するように設計しても構わない。この場合、貼付剤を肌に張る場合に、最初はフィルムの伸びない半分を肌に貼って固定し、残りの半分を伸ばして貼ることも可能である。
図11に示す貼付剤支持体用フィルム1は、各領域10の一辺から、これと交差する他辺へと角度付けされた凹凸構造4がストレートに延在している。それ以外の構成は、図10に示す貼付剤支持体用フィルム1と同様である。凹凸構造4の、領域10を区画する境界線10cに対する角度は任意であり、領域10毎に角度が異なっていても良い。
【0049】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、一方の面側2に薬剤入り粘着剤層6を配置可能であり、貼付剤支持体用フィルム1全体が厚さ方向にうねった形状に構成されることで、面に沿って凹部と凸部を繰り返す凹凸構造4を有し、凹凸構造4は、凹部と凸部との高低差が薬剤バリア性を有する層の厚さよりも大きく、10%伸び時に必要となる荷重が3N以下であり、且つ伸び量が初期長さの15%以上50%以下の伸びを与えた際に、戻り後に残る伸び量が初期長さの5%以上30%以下であることを特徴とし、上記貼付剤支持体用フィルムの総厚が、20μm以上450μm以下の範囲である。
この構成によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、簡易な構造で、支持体としての強度を確保しつつ、薬剤バリア性と伸び性が共に良好で、更に柔軟性も備える貼付剤支持体用フィルム1を提供できる。ここで、柔軟性とは、伸び性のうち、低応力での伸び具合を示す指標である。
【0050】
例えば、本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、薬剤バリア性を有するフィルムから貼付剤支持体用フィルム1を形成しても、凹凸構造4を設けることで伸び性を向上させることができる。このとき、10%伸び時に必要となる荷重が3N以下となるように形状を設計することで柔軟性を有し、且つ伸び量が初期長さの10%を超えると、戻り後も初期長さの5%以上の伸び量が残るような膜厚にすることで、貼付部の動きに追従して伸びやすく、収縮性由来のツッパリ感が生じない使い勝手の良い貼付剤支持体用フィルムを提供することが可能になる。また、20%伸び時に必要となる荷重が、3.5N以下となるように形状を設計することで、より伸び感の良い貼付剤支持体用フィルムの提供が可能となる。
【0051】
(2)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1は、材料がポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリロニトリル、エチレン‐ビニルアルコール共重合体、及びそれらの変性重合体、のいずれかから選ばれる樹脂からなる。
この構成によれば、貼付剤支持体用フィルム1に薬剤バリア性を付与することが出来る。
(3)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、平面視で、凹部及び凸部がそれぞれ直線状に延在している。
この構成によれば、凹凸の並び方向への伸び性を確実に大きく出来ると共に、凹凸の延在方向への曲げ構成を高く設定可能となる。
【0052】
(4)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、平面視で、凹部及び凸部2Bの延在方向の少なくとも一部が曲線で構成されている。
この構成によれば、凹凸の並び方向への伸び性を確実に大きく出来ると共に、凹凸の延在方向への曲げ構成を高く設定可能となる。
また、少なくとも一部で延在方向に曲線が設けられていることで、例えば、体が曲がる方向を想定して曲線を形成することで、貼り付けた位置の体の変化に対し、より追従性が増すといった利点がある。
【0053】
(5)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、凹凸の高低差は、5μmより大きく300μm以下である。この構成によれば、確実に伸び性を向上させることができる。
(6)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1では、複数の領域10を有し、各領域10に個別の凹凸パターンで凹凸構造4が形成されている。
この構成では、最終製品の原反として使用する場合、各領域10の伸びがある程度相殺しあうこことで、過剰な伸びが抑制されて、ロール形状などにしてフィルムを管理する際に、貼付剤支持体用フィルム1の扱いが容易となる。
また、最終製品の貼付剤支持体用フィルム1として使用する場合、伸び易い方向を2方向以上に設定しやすくなる。
【0054】
(7)本実施形態の貼付剤支持体用フィルム1の両面又は片面に機能層が積層された積層体としてもよい。この構成によれば、伸び性の調整が可能な積層体を提供可能となる。
(8)本実施形態の貼付剤は、貼付剤支持体用フィルム1又は積層体における支持層の一方の面側に、粘着剤層6が積層すると共に、その粘着剤層6の上に剥離ライナー7が形成されている。この構成によれば、製造時の手間やコストを抑えつつ、簡易な構造で、支持体としての強度を確保しつつ、薬剤バリア性と伸び性が共に良好で、貼付部にツッパリ感が生じない貼付剤を提供可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例
【0056】
以下、本発明に基づく実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、日本合成化学工業(株)製のエチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)ソアノールD2908(商品名)を使用した。
実施例1の貼付剤支持体用フィルム1は、押出成形により製膜したEVOH膜を、加熱した平板版で挟み込むことで、図1のような断面台形形状の凹凸が繰り返される蛇腹形状からなる凹凸構造4を設けた。このとき、該凹凸構造4の各所サイズが、総厚T=90μm、符号3aの面の平坦部幅=205μm、符号3bの面の平坦部幅=30μm、ピッチ(D1,D2、以下同様)=255μm、フィルム厚さ(t1、t2の平均値、以下同様)=30μm、高低差H=60μmとなるように調整した。
【0057】
(実施例2)
凹凸構造4において、総厚T=125μm、符号3aの面の平坦部幅=205μm、符号3bの面の平坦部幅=190μm、ピッチ=425μm、フィルム厚さ=25μm、高低差H=100μm、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
(実施例3)
凹凸構造4において、符号3aの面の平坦部幅=105μm、ピッチ=205μm、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0058】
(実施例4)
凹凸構造4において、総厚T=300μm、符号3aの面の平坦部幅=205μm、符号3bの面の平坦部幅=625μm、ピッチ=897μm、フィルム厚さ=90μm、高低差H=210μm、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
(実施例5)
貼付剤支持体用フィルムの材料として、ユニチカ(株)製のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂NEH-2050を用い、凹凸構造4において、総厚T=115μm、フィルム厚さ=15μm、に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、実施例5の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
【0059】
(比較例1)
押出成形時に凹凸部のない鏡面のロールを用いて、表裏に凹凸形状のない比較例1を作製した。フィルム総厚は30μmであった。
(比較例2)
凹凸構造4において、総厚T=480μm、符号3aの面の平坦部幅=205μm、符号3bの面の平坦部幅=1060μm、ピッチ=1366μm、フィルム厚さ=160μm、高低差H=320μm、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較例2を作製した。
【0060】
(比較例3)
凹凸構造4において、総厚T=12μm、符号3aの面の平坦部幅=30μm、符号3bの面の平坦部幅=6μm、ピッチ=39μm、フィルム厚さ=3μm、高低差H=9μm、に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較例3を作製した。
(比較例4)
貼付剤支持体用フィルムの材料として、ユニチカ(株)製のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂NEH-2050を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例4の貼付剤支持体用フィルム1を作製した。
(比較例5)
貼付剤支持体用フィルム1の材料として、NatureWorks社製のポリ乳酸(PLA)INgeo 3052D(商品名)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例5を作製した。
【0061】
(測長方法)
ここで、得られたサンプルの総厚T、凸部及び凹部の平坦部厚さt1及びt2、高低差Hは、光学顕微鏡観察による測長により確認を行った。具体的には、得られた貼付剤支持体用フィルムを凹凸構造4の延在方向と平行及び垂直な方向に切断することで、10mm角の小片を切り出し、凹凸構造4の延在方向と垂直方向にミクロトームで断面出しして観察することで、各部位のサイズを測長し、5箇所の平均値を求めた。断面観察及び測長には、デュアルライト高倍率ズームレンズVH-Z250Rを取り付けたKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX-1000を用いた。
【0062】
(伸び性評価方法)
各実施例及び比較例の貼付剤支持体用フィルム1の伸び性能を評価するため、引張試験評価を実施した。
伸び性評価は、JISK7127:1999に基づき、株式会社エー・アンド・デイ製テンシロン万能材料試験機(RTC‐1250A)を用いて、ゼロの状態からフィルムが破断するまで引っ張り力を付与しつつ、10%及び20%伸び時に必要となる荷重、破断した際の破断強度を求めることで実施した。測定条件については、サンプル幅は15mm、チャック間距離は50mm、引張速度は100mm/miNとした。
評価は、破断強度は4N以上を「○」とし、それ未満を「×」とした。
【0063】
(戻り性評価方法)
各実施例及び比較例の貼付剤支持体用フィルム1の戻り性を評価するため、引張試験評価を実施した。
戻り性評価は、サンプルをL1だけ伸ばした状態で10秒保持し、解放後のサンプル長と初期状態のサンプル長の差L2を測定することで実施した。L1は、初期長さの5~50%の範囲(5%刻み)で変え、30%≧L2≧5%となる伸ばし量L1を調べた。
【0064】
(貼付剤の使用感評価方法)
各実施例及び比較例の貼付剤支持体用フィルム1を使用した貼付剤の使用感は、各貼付剤支持体用フィルムの片面に、厚さ=40μm、粘着力=8N/15mm(JISZ0237:2009に準拠して測定)の基材レス粘着テープを添付し、5cm角に切り出したものを1日上腕内側に貼り付けて、比較した。
評価は、サンプル貼り付け中、貼付部にツッパリ感やゴワツキ等の違和感が生じなければ「〇」、ツッパリ感やゴワツキ等の違和感があれば「×」とした。
【0065】
(薬剤吸着評価方法)
各実施例及び比較例における高い伸び性を有する貼付剤支持体用フィルム1の薬剤吸着性能を評価するため、吸着性試験評価を実施した。
各実施例及び比較例からなるサンプルを100mm角にカットした後、サンプル中央に貼付剤(リバスタッチパッチ18mg、小野薬品工業(株)製)を貼付した。薬剤が揮発・拡散しないようにアルミ箔で密閉し、40℃75%の環境で6ヶ月保管した。その後、フィルムから貼付剤を剥がし、フィルムに吸着した薬剤をメタノールで55℃・3時間以上抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により薬剤の吸着量を測定した。
評価は、薬剤吸着量は、元々の貼付剤の薬剤量の10%未満であれば「○」、それ以上であれば「×」とした。
【0066】
各実施例及び比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表1及び表2に示す。
表中の「凹凸構造」欄の「凹凸同士の並び方向」欄が「平行」とは、凹部と凸部を図5のような平行な並びにしたことを指す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
(評価結果)
表1から分かるように、本発明に基づく実施例1~5では、十分な破断強度を有すると共に、軽い伸び感とツッパリ感のなさで良好な使用感が得られることが確認された。
このとき、例えば実施例1においては、伸ばし量が5%で戻り後に残った伸び量は0%、伸ばし量10%で戻り後に残った伸び量は1%、伸ばし量15%及び20%で戻り後に残った伸び量は5%、伸ばし量が25%で戻り後に残った伸び量は10%、と伸ばし量が増すと段階的に元の長さに戻ろうとする回復力が弱くなることが確認されており、この作用がツッパリ感の回避に有効となっている。その他の実施例においても、この段階的な回復力の微弱化は同様であることを確認している。
【0070】
一方、比較例2では、構造の高低差が小さく、フィルム厚さが薄すぎるため、破断強度が小さく、貼付剤支持体用フィルムとしての使用に耐えない結果となった。
また比較例3では、フィルム厚さが厚すぎるため、構造が変形するのに要する荷重が大きくなった為伸び難くなり、使用感の悪化につながる結果となった。
比較例4は、材料自身の硬さにより、構造が変形するのに要する荷重が大きくなった為伸び難くなり、使用感の悪化につながる結果となった。このことは、単に凹凸構造を設けただけでは、材料などの選定如何によっては、本発明の範囲とならないことが分かる。
比較例5は、貼付剤支持体用フィルム1の材料が薬剤非吸着性を示さないため、貼付剤支持体としての要件を満たさない結果となった。
【符号の説明】
【0071】
1 貼付剤支持体用フィルム
2 貼付剤支持体用フィルムの一方の面
2A 凹部
2B 凸部
2a 底部
2b 頂部
3 貼付剤支持体用フィルムのもう一方の面
4 凹凸構造
6 粘着剤層
7 剥離ライナー
10 領域
30 機能層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19