(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】血圧分析装置、血圧分析方法、及び血圧分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 15/00 20180101AFI20240305BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G16H15/00
A61B5/022 400Z
A61B5/022 500M
(21)【出願番号】P 2019220711
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥川 美貴
(72)【発明者】
【氏名】石原 大資
(72)【発明者】
【氏名】中西 基文
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-109685(JP,A)
【文献】特開2017-056107(JP,A)
【文献】特開2003-235813(JP,A)
【文献】特表2012-502671(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073692(WO,A1)
【文献】特開2007-125079(JP,A)
【文献】特開2016-189085(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124010(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/043299(WO,A1)
【文献】特開2018-015061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の過去の血圧測定データを分析する血圧分析装置であって、
血圧の変動の要因となる複数の変動要因毎に決められた異なる分析アルゴリズムによって前記血圧測定データを分析して、最新の血圧測定データにおける血圧の変動の有無を判定する血圧変動判定部と、
前記血圧変動判定部によって前記変動が有りと判定された場合に、当該
変動が有りと判定した前記分析アルゴリズムに対応する前記変動要因と、血圧の変動があったこととを示す情報を前記被測定者に報知する報知制御部と、を備える血圧分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の血圧分析装置であって、
前記報知制御部は、複数の前記変動要因による血圧の変動があると前記血圧変動判定部により判定された場合には、当該複数の変動要因の中から選択した1つの変動要因に基づく前記情報を報知する血圧分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の血圧分析装置であって、
前記報知制御部は、全ての前記変動要因毎に対応付けられた優先度に基づいて、前記複数の変動要因の中から1つを選択する血圧分析装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の血圧分析装置であって、
全ての前記変動要因毎に決められた報知頻度と、前記変動要因毎の前記情報の報知実績とに基づいて、前記変動要因毎に前記情報の報知が必要か否かを判定する報知要否判定部を備え、
前記報知制御部は、前記血圧変動判定部によって血圧の変動が有りと判定され、且つ当該変動の要因となる前記変動要因に基づく前記情報の報知が前記報知要否判定部により必要と判定された場合に、当該情報を報知する血圧分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の血圧分析装置であって、
前記報知制御部は、前記情報の報知が必要と判定された前記変動要因が複数存在し、且つ当該複数の変動要因のうちの2つ以上の前記変動要因による血圧の変動があると前記血圧変動判定部により判定された場合には、当該2つ以上の変動要因の中から優先度に基づいて選択した1つの変動要因に基づく前記情報を報知し、
更に、前記報知制御部は、前記情報の報知が必要と判定された前記変動要因が存在し、且つ、当該変動要因による血圧の変動があると前記血圧変動判定部により判定され、且つ、当該変動要因に基づく前記情報の報知が行われない状態が所定回継続する場合には、当該変動要因に基づく前記情報を前記被測定者に報知する血圧分析装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の血圧分析装置であって、
前記複数の変動要因は、測定状態の変化、生体情報のゆらぎ、服薬状態の変化、同一時間帯における測定時刻の違い、曜日の違い、又は季節の変化、によって生じる血圧の変動の中から選ばれる2つ以上を含む血圧分析装置。
【請求項7】
被測定者の過去の血圧測定データを分析する血圧分析方法であって、
コンピュータが、
血圧の変動の要因となる複数の変動要因毎に決められた異なる分析アルゴリズムによって前記血圧測定データを分析して、最新の血圧測定データにおける血圧の変動の有無を判定する血圧変動判定ステップと、
前記血圧変動判定ステップによって前記変動が有りと判定された場合に、当該
変動が有りと判定した前記分析アルゴリズムに対応する前記変動要因と、血圧の変動があったこととを示す情報を前記被測定者に報知する報知制御ステップと、を
実行する血圧分析方法。
【請求項8】
被測定者の過去の血圧測定データを分析する血圧分析プログラムであって、
血圧の変動の要因となる複数の変動要因毎に決められた異なる分析アルゴリズムによって前記血圧測定データを分析して、最新の血圧測定データにおける血圧の変動の有無を判定する血圧変動判定ステップと、
前記血圧変動判定ステップによって前記変動が有りと判定された場合に、当該
変動が有りと判定した前記分析アルゴリズムに対応する前記変動要因と、血圧の変動があったこととを示す情報を前記被測定者に報知する報知制御ステップと、をコンピュータに実行させるための血圧分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧分析装置、血圧分析方法、及び血圧分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定者の過去の血圧測定データの分析に基づく情報を出力するシステムが知られている(例えば、特許文献1-4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-234118号公報
【文献】特開2005-218492号公報
【文献】特開2007-282668号公報
【文献】特開2014-188063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血圧は、測定時刻の違い、曜日の違い、又は季節の違い等の様々な要因によって変動し得る。また、被測定者毎に、血圧の変動が発生する要因も異なる。特許文献1は、被測定者の血圧が異常値となった場合に、その原因として可能性の高いイベント情報を特定するものである。しかし、イベント情報以外の要因で血圧の変動が発生している場合には、これを被測定者が知ることはできない。特許文献3、4は、1つの要因による血圧の変動の有無しか被測定者に知らせることができず、他の要因で血圧の変動が発生している場合には、これを被測定者が知ることはできない。特許文献2は、過去の血圧測定データを、週毎、月毎、及び曜日毎等で切り替えて被測定者に提示可能である。しかし、このような情報の提示だけでは、血圧の変動の有無や、血圧の変動があった場合のその要因を被測定者が知ることは難しい。
【0005】
本発明の目的は、血圧の変動に関する分析結果を被測定者毎に最適化して報知することのできる血圧分析装置、血圧分析方法、及び血圧分析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用する。なお、括弧内には、後述の実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0007】
(1)
被測定者の過去の血圧測定データを分析する血圧分析装置(システム制御部31)であって、
血圧の変動の要因となる複数の変動要因(測定状態要因、服薬要因、時刻要因、曜日要因、季節要因)毎に決められた異なる分析アルゴリズム(第一から第五分析アルゴリズム)によって上記血圧測定データを分析して血圧の変動の有無を判定する血圧変動判定部(血圧変動判定部31A)と、
上記血圧変動判定部によって変動が有りと判定された場合に、その変動の有無の判定に用いられた上記分析アルゴリズムに対応する上記変動要因に基づく情報を上記被測定者に報知する報知制御部(報知制御部31B)と、を備える血圧分析装置。
【0008】
(1)によれば、複数の変動要因毎に異なる分析アルゴリズムによって血圧の変動の有無が判定され、血圧の変動が有りと判定された場合には、その要因に基づく情報が被測定者に報知される。このため、単一の変動要因による血圧の変動の有無を判定する場合と比べて、被測定者毎に最適な情報を提供することができ、被測定者の血圧管理に役立てることができる。
【0009】
(2)
(1)記載の血圧分析装置であって、
上記報知制御部は、複数の上記変動要因による血圧の変動があると上記血圧変動判定部により判定された場合には、その複数の変動要因の中から選択した1つの変動要因に基づく情報を報知する血圧分析装置。
【0010】
(2)によれば、1つの情報のみが被測定者に報知されるため、必要性の高い情報に絞って被測定者に伝えることができ、被測定者の状態に合わせた最適な情報の提供が可能になる。
【0011】
(3)
(2)記載の血圧分析装置であって、
上記報知制御部は、全ての上記変動要因毎に対応付けられた優先度に基づいて、上記複数の変動要因の中から1つを選択する血圧分析装置。
【0012】
(3)によれば、被測定者にとって必要性が高いと思われる情報を優先的に被測定者に提供することができ、被測定者の状態に合わせた最適な情報の提供が可能になる。
【0013】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載の血圧分析装置であって、
全ての上記変動要因毎に決められた報知頻度と、上記変動要因毎の上記情報の報知実績とに基づいて、上記変動要因毎に上記情報の報知が必要か否かを判定する報知要否判定部(報知要否判定部31C)を備え、
上記報知制御部は、上記血圧変動判定部によって血圧の変動が有りと判定され、且つその変動の要因となる上記変動要因に基づく情報の報知が上記報知要否判定部により必要と判定された場合に、その情報を報知する血圧分析装置。
【0014】
(4)によれば、変動要因毎の報知頻度と報知実績に基づいて、変動要因に基づく情報の報知の必要性が判定される。これにより、例えば、短期的な血圧の変動と長期的な血圧の変動のそれぞれに対し、その変動が有った場合に、適切な頻度でその変動要因を報知することが可能となり、被測定者の利便性を向上させることができる。
【0015】
(5)
(4)記載の血圧分析装置であって、
上記報知制御部は、上記情報の報知が必要と判定された上記変動要因が複数存在し、且つその複数の変動要因のうちの2つ以上の上記変動要因による血圧の変動があると上記血圧変動判定部により判定された場合には、その2つ以上の変動要因の中から優先度に基づいて選択した1つの変動要因に基づく情報を報知し、
更に、上記報知制御部は、上記情報の報知が必要と判定された上記変動要因が存在し、且つ、その変動要因による血圧の変動があると上記血圧変動判定部により判定され、且つ、その変動要因に基づく情報の報知が行われない状態が所定回継続する場合には、その変動要因に基づく情報を上記被測定者に報知する血圧分析装置。
【0016】
(5)によれば、優先度が低い変動要因による血圧の変動が有り、その変動要因に基づく情報の報知が必要と判定されていながら、その情報の報知が行われない状態が所定回数継続した場合には、この情報の報知が行われる。このため、優先度が低く報知が行われにくい変動要因であっても、その変動要因による血圧の変動が頻発するような場合に、この変動要因を優先的に報知することができ、被測定者の状態に合わせた最適な情報提供が可能になる。
【0017】
(6)
(1)から(5)のいずれか1つに記載の血圧分析装置であって、
上記複数の変動要因は、測定状態の変化、生体情報のゆらぎ、服薬状態の変化、同一時間帯における測定時刻の違い、曜日の違い、又は季節の変化、によって生じる血圧の変動の中から選ばれる2つ以上を含む血圧分析装置。
【0018】
(6)によれば、様々な要因による血圧の変動の有無を判定することができ、被測定者毎に最適な情報の提供が可能となる。
【0019】
(7)
被測定者の過去の血圧測定データを分析する血圧分析方法であって、
血圧の変動の要因となる複数の変動要因毎に決められた異なる分析アルゴリズムによって上記血圧測定データを分析して血圧の変動の有無を判定する血圧変動判定ステップと、
上記血圧変動判定ステップによって変動が有りと判定された場合に、その変動の有無の判定に用いられた上記分析アルゴリズムに対応する上記変動要因に基づく情報を上記被測定者に報知する報知制御ステップと、を備える血圧分析方法。
【0020】
(8)
被測定者の過去の血圧測定データを分析する血圧分析プログラムであって、
血圧の変動の要因となる複数の変動要因毎に決められた異なる分析アルゴリズムによって上記血圧測定データを分析して血圧の変動の有無を判定する血圧変動判定ステップと、
上記血圧変動判定ステップによって変動が有りと判定された場合に、その変動の有無の判定に用いられた上記分析アルゴリズムに対応する上記変動要因に基づく情報を上記被測定者に報知する報知制御ステップと、をコンピュータに実行させるための血圧分析プログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、血圧変動に関する分析結果を被測定者毎に最適化して報知することのできる血圧分析装置、血圧分析方法、及び血圧分析プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の血圧分析装置の一実施形態を含む血圧分析システム100の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す血圧分析システム100の電子機器2の内部ハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示す血圧分析システム100の分析装置3の内部ハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】
図3に示す分析装置3のシステム制御部31の機能ブロック図である。
【
図5】データベース33に記憶される測定データの一例を示す模式図である。
【
図6】データベース33に記憶される制御用データの一例を示す模式図である。
【
図7】分析装置3のシステム制御部31の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
§1 適用例
本発明の血圧分析装置が適用されるシステムは、被測定者から測定された過去の血圧測定データを複数の観点にて分析し、その分析結果に基づく情報を被測定者にフィードバックするものである。同じ被測定者であっても、その被測定者から測定される血圧は様々な要因によって変動し得る。
【0024】
こういった血圧が変動する要因(以下、変動要因とも記載する)には、例えば、測定状態の不備を要因とするもの(以下、測定状態要因と記載する)、被測定者の脈波等の生体情報のゆらぎを要因とするもの(以下、生体ゆらぎ要因と記載する)、降圧剤等の服用が必要とされる人であれば服薬忘れを要因とするもの(以下、服薬要因と記載する)、同一の測定時間帯(例えば朝時間帯や夜時間帯)であっても測定時刻の違いを要因とするもの(以下、時刻要因と記載する)、測定した曜日の違いを要因とするもの(以下、曜日要因と記載する)、及び、季節の変化を要因とするもの(以下、季節要因と記載する)等がある。
【0025】
上記の測定状態の不備とは、血圧の測定結果の信頼性が低くなり得る状態を言い、例えば、カフの巻き付け方が不十分である状態(所謂、ゆる巻き)、測定中に大きな体動が生じている状態、及び、不規則脈波が発生している状態等である。不規則脈波は、被測定者の体動又は心境の変化に伴って生じる場合と、特に原因なく生体の反応(ゆらぎ)として生じる場合とがある。このように、不規則脈波によって血圧変動が生じた場合、その変動の要因は、測定状態要因と生体ゆらぎ要因とのどちらにもなり得る。したがって、以下では、生体ゆらぎ要因を、測定状態要因に含まれるものとして説明する。しかし、生体ゆらぎ要因と測定状態要因とで個別に血圧変動の有無の判定を行うことも可能である。
【0026】
本システムでは、被測定者の過去の血圧測定データを、上述した各種の変動要因毎に異なる分析アルゴリズムを用いて分析し、変動要因毎の血圧の変動の有無を判定する。そして、本システムでは、血圧の変動が有ると判定した場合に、その変動要因を被測定者に報知する。これにより、被測定者に対し、どのような要因で血圧の変動があったのかをフィードバック可能としている。このフィードバックを受けることで、被測定者は、自身の血圧の変動がどのような要因によって生じているのかを知ることができる。被測定者毎に、血圧が変動する際の変動要因は異なることから、複数の分析アルゴリズムを用いて変動要因毎に血圧の変動の有無を判定する構成とすることで、被測定者毎に最適なフィードバックを行うことを可能としている。
【0027】
§2 構成例
以下、本発明の血圧分析装置が適用されるシステムの具体的な構成例について説明する。
【0028】
<システム構成>
図1は、本発明の血圧分析装置の一実施形態を含む血圧分析システム100の概略構成を示す図である。血圧分析システム100は、血圧計1と、電子機器2と、分析装置3と、を備える。
【0029】
血圧計1は、ユーザ(被測定者)の上腕に巻き付けられるカフを用いて、ユーザの生体情報(最高血圧、最低血圧、及び脈拍)を測定し、その測定結果を測定日時情報と対応付けてメモリに記憶する。測定日時情報には、生体情報の測定年月日、曜日、及び測定時刻が含まれる。
【0030】
血圧計1は、更に、上述した測定状態の不備の有無を判定する機能を有しており、この判定の結果も測定結果と対応付けてメモリに記憶する。この判定の結果は、ゆる巻きの有無、体動の有無、及び不規則脈波の有無を示す情報であり、以下では、測定状態情報と記載する。
【0031】
このように、血圧計1のメモリには、生体情報の測定結果と、測定日時情報と、測定状態情報と、を含む測定データが記憶される。血圧計1は、電子機器2と無線又は有線によって通信するための通信インタフェースを更に有しており、メモリに記憶した測定データを電子機器2に送信可能に構成されている。
【0032】
なお、本システムにおいては、ユーザが、血圧計1を用いて、1日のうちの2つの時間帯(朝時間帯と夜時間帯)の各々において生体情報の測定を行うことを理想状態として想定している。また、ユーザが、降圧剤等の薬を服用しながら生体情報の測定を行うことを想定している。
【0033】
電子機器2は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又は、タブレット端末等の電子機器である。電子機器2は、血圧計1と有線又は無線等で通信可能であり、血圧計1のメモリに記憶された測定データを読み込み可能である。
【0034】
図1に示す血圧分析システム100では、血圧計1のユーザが、自身の所有する電子機器2に、血圧管理を行うためのアプリケーション(以下、血圧管理アプリと記載)をインストールしておくことで、血圧計1と電子機器2とを連携させることが可能となっている。例えば、電子機器2を操作して電子機器2から血圧計1に生体情報の測定指示を行うと、この測定指示に応じて血圧計1が生体情報の測定を行い、その結果を含む測定データが電子機器2に送信され、この測定データが電子機器2にて確認可能となる。
【0035】
分析装置3は、例えば、上記の血圧管理アプリの管理者の運営するサーバ等のコンピュータである。分析装置3は、電子機器2から測定データを収集可能に構成され、収集した測定データの分析を行い、必要に応じて、その分析結果に基づく情報をユーザに報知する制御を行う。
【0036】
<電子機器の構成>
図2は、
図1に示す血圧分析システム100の電子機器2の内部ハードウェア構成例を示す図である。電子機器2は、通信インタフェース(以下、I/F)22と、記憶媒体23と、操作部24と、表示部25と、スピーカ26と、これらを統括制御するシステム制御部21と、を備える。
【0037】
システム制御部21は、プロセッサと、このプロセッサの実行するプログラム等が記憶されるROM(Read Only Memory)と、ワークメモリとしてのRAM(Random access memory)と、を含む。
【0038】
通信I/F22は、血圧計1及び分析装置3を含む他機器と有線通信又は無線通信によって接続するためのインタフェースである。なお、通信I/F22は、血圧計1に接続するためのものと、分析装置3に接続するためのものとで別々に設けられていてもよい。
【0039】
記憶媒体23は、血圧計1から受信した測定データを記憶する。記憶媒体23は、例えばフラッシュメモリ等により構成される。記憶媒体23は電子機器2に対して着脱可能であってもよい。
【0040】
操作部24は、システム制御部21に対する指示信号を入力するためのインタフェースであり、キーボード、マウス、ボタン、又は、タッチパネル等により構成される。
【0041】
表示部25は、各種情報を表示するためのものであり、例えば液晶表示装置等により構成される。
【0042】
電子機器2では、血圧管理アプリの機能によって、ユーザの服薬状況の登録が可能となっている。具体的には、ユーザが降圧剤等の服用を行い、操作部24を操作して服薬済であることの登録指示を行う。この登録指示を受けたシステム制御部21は、服薬済の情報を、その登録指示が行われた年月日及び時刻(以下、登録日時情報と記載)と対応付けて、記憶媒体23に記憶するようになっている。以下では、服薬済の情報とこれに対応する登録日時情報を含むデータを服薬状況データと記載する。
【0043】
システム制御部21は、血圧計1から取得した測定データを記憶媒体23に記憶すると、この測定データに含まれる測定日時情報に基づく測定タイミングの既定時間前までの間に上記の登録日時情報が属する服薬状況データが存在するか否かを判定する。このような服薬状況データが存在する場合には、システム制御部21は、この測定データに、服薬状況を示す情報として“服薬済”の情報を付加する。
【0044】
また、電子機器2では、血圧管理アプリの機能によって、記憶媒体23に測定データが記憶されると、既定のタイミング(例えば、データ記憶直後のタイミング)にて、この測定データが分析装置3にアップロードされるようになっている。
【0045】
<分析装置の構成>
図3は、
図1に示す血圧分析システム100の分析装置3の内部ハードウェア構成例を示す図である。分析装置3は、システム制御部31と、通信I/F32と、データベース33と、を備える。
【0046】
システム制御部31は、プロセッサと、このプロセッサの実行するプログラム等が記憶されるROMと、ワークメモリとしてのRAMと、を含む。システム制御部31のROMには、血圧分析プログラムが格納されている。
【0047】
通信I/F32は、電子機器2と有線通信又は無線通信によって接続するためのインタフェースである。
【0048】
データベース33は、各種のデータを記憶するハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶媒体を含んで構成される。この各種のデータには、電子機器2からアップロードされた測定データと、上記の血圧分析プログラムの処理に必要な制御用データ等が含まれる。
【0049】
図4は、
図3に示す分析装置3のシステム制御部31の機能ブロック図である。
【0050】
システム制御部31は、プロセッサが血圧分析プログラムを実行して各部と協働することにより、血圧変動判定部31Aと、報知制御部31Bと、報知要否判定部31Cと、を備える血圧分析装置として機能する。
【0051】
血圧変動判定部31Aは、血圧の変動の要因となる複数の変動要因毎に決められた異なる分析アルゴリズムによって、データベース33に記憶されたユーザの過去の測定データを分析して、そのユーザの血圧の変動の有無を判定する。
【0052】
本実施形態で用いる分析アルゴリズムは、測定状態要因による血圧の変動の有無を判定するための第一分析アルゴリズムと、服薬要因による血圧の変動の有無を判定するための第二分析アルゴリズムと、時刻要因による血圧の変動の有無を判定するための第三分析アルゴリズムと、曜日要因による血圧の変動の有無を判定するための第四分析アルゴリズムと、季節要因による血圧の変動の有無を判定するための第五分析アルゴリズムと、の例えば5つとなっている。これら5つの分析アルゴリズムの詳細については後述する。
【0053】
血圧変動判定部31Aは、データベース33に最新の測定データが記憶される毎に、ユーザの血圧の変動の有無の判定を行う。血圧変動判定部31Aは、この判定の結果が、5つの変動要因のうちの少なくとも1つの変動要因による血圧の変動が有るという結果であった場合には、この最新の測定データに対して“変動有り”の情報を付加してデータベース33を更新する。血圧変動判定部31Aは、この判定の結果が、5つの変動要因の各々による血圧の変動が無いという結果であった場合には、この最新の測定データに対して“変動無し”の情報を付加してデータベース33を更新する。
【0054】
図5は、データベース33に記憶される測定データの一例を示す模式図である。
図5に示す各測定データのうちの測定日時情報、測定結果、測定状態情報、及び服薬状況は、電子機器2から送信されてくる情報である。
図5に示す各測定データのうちの“血圧変動の判定結果”は、血圧変動判定部31Aによって付加される情報である。
【0055】
報知制御部31Bは、5つの変動要因のうちの少なくとも1つによる血圧の変動が有ると血圧変動判定部31Aによって判定された場合に、その変動要因に基づく情報(以下、報知情報と記載する)をユーザに報知する。
【0056】
この報知情報は、例えば、血圧が変動していることをユーザに認識させるためのメッセージ等の情報と、その変動要因をユーザに認識させるためのメッセージ等の情報を含む。報知制御部31Bは、電子機器2に対して報知情報を送信し、この報知情報を、電子機器2の表示部25に画像として表示させたり、電子機器2のスピーカ26から音声として出力させたりすることで、血圧の変動があったことと、その変動要因とをユーザに報知する。報知情報には、ユーザへのアドバイスが含まれていてもよい。
【0057】
報知要否判定部31Cは、上記の5つの変動要因毎に決められた報知頻度と、この5つの変動要因毎の報知情報の報知実績とに基づいて、5つの変動要因毎に、報知情報のユーザへの報知が必要か否かを判定する。報知要否判定部31Cは、データベース33に最新の測定データが記憶される毎に、この判定を行う。
【0058】
図6は、データベース33に記憶される制御用データの一例を示す模式図である。制御用データは、測定状態要因、服薬要因、時刻要因、曜日要因、及び季節要因の各々に対して、報知要否判定条件と、優先度と、報知候補カウント値と、報知実績と、が対応付けられたデータとなっている。
【0059】
優先度は、5つの変動要因毎に予め決められた情報であり、その数値が小さいほど、優先度が高いことを示す。
【0060】
5つの変動要因毎の報知実績の情報は、その変動要因に基づく報知情報のユーザへの報知がなされた場合に、報知制御部31Bによって記憶(追加又は上書き)される情報である。
【0061】
具体的には、血圧変動判定部31Aによって血圧の変動が有るという判定結果が最新の測定データに付加され、且つ、この変動の要因となった変動要因に基づく報知情報のユーザへの報知が報知制御部31Bによってなされた場合に、その最新の測定データに含まれる測定日時情報が、制御用データにおける、その変動要因に対応する報知実績のデータに追加又は上書きされるようになっている。
【0062】
報知要否判定条件は、予め決められているデータであり、報知要否の判定時においてデータベース33に記憶済みの測定データの総数を示す測定回数Nの条件と、どの程度の頻度でユーザに報知が必要かを定めた報知頻度の条件と、を含む。
【0063】
測定状態要因に対応する報知要否判定条件は、測定回数Nが10回未満である場合には、測定状態要因に基づく報知情報の報知が最後に行われてからの測定回数(測定データの追加数)が1以上となっている場合に、その報知情報の報知が必要であることを定義し、測定回数Nが10回以上である場合には、測定状態要因に基づく報知情報の報知が最後に行われてからの測定回数が5以上となっている場合に、その報知情報の報知が必要であることを定義した条件である。
【0064】
測定状態要因に基づく報知情報の報知が最後に行われたタイミング(年月日及び時刻)は、制御用データにおける測定状態要因に対して報知実績が追加されていればこの報知実績がそのまま用いられ、報知実績が追加されていない(一度も報知がなされていない場合)には、データベース33に記憶されている最古の測定データの測定日時情報が用いられる。
【0065】
服薬要因に対応する報知要否判定条件は、測定回数Nが0以上であり、且つ、服薬要因に基づく報知情報の報知が最後に行われてからの測定回数が1以上となっている場合に、その報知情報の報知が必要であることを定義した条件である。
【0066】
服薬要因に基づく報知情報の報知が最後に行われたタイミングは、制御用データにおける服薬要因に対して報知実績が追加されていればこの報知実績がそのまま用いられ、報知実績が追加されていない(一度も報知がなされていない場合)には、データベース33に記憶されている最古の測定データの測定日時情報が用いられる。
【0067】
時刻要因に対応する報知要否判定条件は、測定回数Nが0以上であり、且つ、時刻要因に基づく報知情報の報知が最後に行われてからの経過日数が20以上となっている場合に、その報知情報の報知が必要であることを定義した条件である。
【0068】
時刻要因に基づく報知情報の報知が最後に行われたタイミングは、制御用データにおける時刻要因に対して報知実績が追加されていればこの報知実績がそのまま用いられ、報知実績が追加されていない(一度も報知がなされていない場合)には、データベース33に記憶されている最古の測定データの測定日時情報が用いられる。
【0069】
曜日要因に対応する報知要否判定条件は、測定回数Nが0以上であり、且つ、曜日要因に基づく報知情報の報知が最後に行われてからの経過日数が30以上となっている場合に、その報知情報の報知が必要であることを定義した条件である。
【0070】
曜日要因に基づく報知情報の報知が最後に行われたタイミングは、制御用データにおける曜日要因に対して報知実績が追加されていればこの報知実績がそのまま用いられ、報知実績が追加されていない(一度も報知がなされていない場合)には、データベース33に記憶されている最古の測定データの測定日時情報が用いられる。
【0071】
季節要因に対応する報知要否判定条件は、測定回数Nが0以上であり、且つ、季節要因に基づく報知情報の報知が最後に行われてからの経過日数が30以上となっている場合に、その報知情報の報知が必要であることを定義した条件である。
【0072】
季節要因に基づく報知情報の報知が最後に行われたタイミングは、制御用データにおける季節要因に対して報知実績が追加されていればこの報知実績がそのまま用いられ、報知実績が追加されていない(一度も報知がなされていない場合)には、データベース33に記憶されている最古の測定データの測定日時情報が用いられる。
【0073】
報知候補カウント値は、初期値を0として“1”ずつ増加(カウントアップ)され、最大値を例えば“5”とする情報である。この報知候補カウント値は、血圧変動判定部31Aによって血圧の変動が有るという判定結果が最新の測定データに付加され、且つ、この変動の要因となった変動要因に基づく報知情報のユーザへの報知が報知要否判定部31Cによって必要と判定され、且つ、この報知情報の報知が報知制御部31Bによってなされなかった場合に、報知制御部31Bによってカウントアップされる。
【0074】
<分析アルゴリズムの例>
(第一分析アルゴリズム)
血圧変動判定部31Aは、データベース33に記憶されている最新の測定データを除く測定データのうち、最新の測定データの測定時刻と同時間帯の測定時刻を含み、且つ、血圧変動の判定結果として“変動有り”が付加されておらず、且つ、測定状態情報にゆる巻き、体動、及び不規則脈波のいずれか有りの情報が含まれていない測定データを、新しいものから例えば10日分選択し、選択した測定データの最高血圧の平均値Av1と標準偏差δ1を算出する。
【0075】
血圧変動判定部31Aは、最新の測定データの最高血圧Bpと平均値Av1の差の絶対値が標準偏差δ1よりも大きく、且つ、最新の測定データの測定状態情報にゆる巻き、体動、及び不規則脈波のいずれか有りの情報が含まれるという条件を満たす場合に、測定状態要因による血圧の変動が有ると判定し、この条件を満たさない場合に、測定状態要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0076】
なお、平均値Av1及び標準偏差δ1の算出に必要な数の測定データがデータベース33に記憶されていない場合には、血圧変動判定部31Aは、測定状態要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0077】
(第二分析アルゴリズム)
血圧変動判定部31Aは、データベース33に記憶されている最新の測定データを除く測定データのうち、最新の測定データの測定時刻と同時間帯の測定時刻を含み、且つ、服薬状況として“服薬済み”の情報が付加されており、且つ“変動有り”の判定結果が付加されていない測定データを、新しいものから例えば5日分選択し、選択した測定データの最高血圧の平均値Av2と標準偏差δ2を算出する。
【0078】
血圧変動判定部31Aは、最新の測定データの最高血圧Bpと平均値Av2の差の絶対値が標準偏差δ2よりも大きく、且つ、最新の測定データに服薬済みの情報が付加されていないという条件を満たす場合に、服薬要因による血圧の変動が有ると判定し、この条件を満たさない場合に、服薬要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0079】
なお、平均値Av2及び標準偏差δ2の算出に必要な数の測定データがデータベース33に記憶されていない場合には、血圧変動判定部31Aは、服薬要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0080】
(第三分析アルゴリズム)
血圧変動判定部31Aは、データベース33に記憶されている最新の測定データを除く測定データのうち、最新の測定データの測定時刻と同時間帯の測定時刻を含む測定データを新しいものから例えば20日分選択する。血圧変動判定部31Aは、この20日分の測定データの各々の測定時刻の中央値Cと、この20日分の測定データの最高血圧の平均値Av3を算出する。
【0081】
血圧変動判定部31Aは、最新の測定データの測定時刻が中央値Cの±2時間の範囲に属しておらず、且つ、平均値Av3と最新の測定データの最高血圧Bpとの差の絶対値が閾値(例えば3mmHg)以上となる条件を満たす場合に、時刻要因による血圧の変動が有ると判定し、この条件を満たさない場合に、時刻要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0082】
なお、平均値Av3及び中央値Cの算出に必要な数の測定データがデータベース33に記憶されていない場合には、血圧変動判定部31Aは、時刻要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0083】
(第四分析アルゴリズム)
血圧変動判定部31Aは、データベース33に記憶されている最新の測定データを除く測定データのうち、最新の測定データの測定時刻と同時間帯の測定時刻を含む測定データを、新しいものから例えば35日分選択する。この35日分の測定データは、月曜日から日曜日までの測定データがそれぞれ5日分含まれるように選択する。そして、血圧変動判定部31Aは、抽出した35日分の測定データについて、各曜日の測定データ毎に、最高血圧の平均値Av4を算出する。
【0084】
血圧変動判定部31Aは、最新の測定データの測定された曜日について算出された平均値Av4が、算出した7個の平均値Av4のうちの2番目に大きい平均値Av4よりも閾値(例えば2mmHg)以上大きいという条件を満たす場合に、曜日要因による血圧の変動が有ると判定し、この条件を満たさない場合に、曜日要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0085】
なお、平均値Av4の算出に必要な数の測定データがデータベース33に記憶されていない場合には、血圧変動判定部31Aは、曜日要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0086】
(第五分析アルゴリズム)
血圧変動判定部31Aは、データベース33に記憶されている最新の測定データを除く測定データのうち、最新の測定データの測定時刻と同時間帯の測定時刻を含む測定データを、新しいものから例えば60日分選択する。この60日分の測定データは、最新の測定データの測定月を含む月又はこの測定月の直前の月を含む例えば3か月分の測定データであって、各月に例えば20日分の測定データが含まれるように選択する。
【0087】
血圧変動判定部31Aは、選択した60日分の測定データの最高血圧の、測定月毎の平均値Av5を算出する。血圧変動判定部31Aは、測定月を横軸とし、この3つの平均値Av5を縦軸としてプロットしたグラフから、最小二乗法等によって平均値Av5の推移を示す一次直線の傾きαを算出する。血圧変動判定部31Aは、傾きαの絶対値が閾値以上であるという条件を満たす場合に、季節要因による血圧の変動が有ると判定し、この条件を満たさない場合に、季節要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0088】
なお、平均値Av5及び傾きαの算出に必要な数の測定データがデータベース33に記憶されていない場合には、血圧変動判定部31Aは、季節要因による血圧の変動が無いと判定する。
【0089】
§3 動作例
図7は、分析装置3のシステム制御部31の動作の一例を説明するためのフローチャートである。電子機器2から分析装置3に最新の測定データがアップロードされて、この最新の測定データがデータベース33に記憶されると、
図7のフローが開始される。
【0090】
まず、システム制御部31は、5つの変動要因毎の報知実績と、
図6に示した報知要否判定条件と、に基づいて、5つの変動要因毎に、その変動要因に基づく報知情報のユーザへの報知の要否を判定する(ステップS1)。
【0091】
次に、システム制御部31は、5つの変動要因毎に、その変動要因に対して決められた上述の分析アルゴリズムに基づいて、データベース33に記憶済みの測定データの分析を行い、ユーザの血圧の変動の有無を判定する(ステップS2)。
【0092】
システム制御部31は、血圧の変動がないと判定した場合(ステップS3:NO)には処理を終了し、5つの変動要因のうちの少なくとも1つによる血圧の変動が有ると判定した場合(ステップS3:YES)にはステップS4以降の処理を行う。
【0093】
ステップS4において、システム制御部31は、データベース33に記憶した最新の測定データに対して、血圧変動有りの結果の情報を追加する(ステップS4)。
【0094】
ステップS4の後、システム制御部31は、血圧の変動ありと判定した変動要因として該当する変動要因(以下、特定変動要因と記載)のうち、ステップS1の判定において報知が必要と判定されたものがあるか否かを判定する(ステップS5)。
【0095】
システム制御部31は、特定変動要因のうち報知が必要なものが存在しない場合(ステップS5:NO)には処理を終了する。システム制御部31は、特定変動要因のうち報知が必要なものが存在する場合(ステップS5:YES)には、特定変動要因が複数存在するか否かを判定する(ステップS6)。
【0096】
システム制御部31は、特定変動要因が1つのみであった場合(ステップS6:NO)には、この特定変動要因に基づく報知情報をユーザに報知する制御を行い(ステップS7)、ステップS11に処理を移行する。
【0097】
システム制御部31は、特定変動要因が複数であった場合(ステップS6:YES)には、
図6の制御用データにおける、この複数の特定変動要因の各々に対応する報知候補カウント値をカウントアップする(ステップS8)。その後、システム制御部31は、
図6の制御用データにおける、この複数の特定変動要因の各々に対応する報知候補カウント値及び優先度に基づいて、この複数の特定変動要因の中から1つを選択する(ステップS9)。
【0098】
具体的には、システム制御部31は、報知候補カウント値が上限値の“5”となっている特定変動要因があれば、優先度に関係なく、この特定変動要因を選択する。システム制御部31は、報知候補カウント値が上限値の“5”となっている特定変動要因がない場合には、優先度にしたがい、優先度が最も高い特定変動要因を選択する。
【0099】
次に、システム制御部31は、ステップS9にて選択した特定変動要因に基づく報知情報をユーザに報知する制御を行う(ステップS10)。ステップS7又はステップS10の後、システム制御部31は、報知情報の報知を行った特定変動要因に対応する報知候補カウント値をリセットする(ステップS11)。その後、システム制御部31は、制御用データのうちの、ステップS7又はステップS10にて報知情報の報知を行った特定変動要因に対し、報知実績の情報を追加して報知実績を更新し(ステップS12)、処理を終了する。
【0100】
以上の血圧分析システム100によれば、分析装置3において、複数の変動要因毎に異なる分析アルゴリズムによってユーザの血圧の変動の有無が判定され、血圧の変動が有りと判定された場合には、その要因(特定変動要因)に基づく情報がユーザに報知される。このため、単一の変動要因による血圧の変動の有無を判定する場合と比べて、ユーザ毎に最適な情報を提供することができ、ユーザの血圧管理に役立てることができる。
【0101】
また、分析装置3は、複数の特定変動要因による血圧の変動があると判定した場合には、この複数の特定変動要因の中から選択した1つの変動要因に基づく報知情報をユーザに報知する。この構成によれば、複数の要因で血圧が変動していた場合であっても、1つの報知情報のみがユーザに報知されるため、必要性の高い情報に絞ってユーザに伝えることができ、ユーザの状態に合わせた最適な情報の提供が可能になる。
【0102】
また、分析装置3では、優先度が低い変動要因による血圧の変動が有り、その変動要因に基づく報知情報の報知が必要と判定されていながら、その報知情報の報知が行われない状態が所定回数(上記の例では5回)継続した場合には、この報知情報の報知が行われる。このため、優先度が低く報知が行われにくい変動要因であっても、その変動要因による血圧の変動が頻発するような場合に、この変動要因を優先的に報知することができ、ユーザの状態に合わせた最適な情報提供が可能になる。
【0103】
また、分析装置3では、変動要因毎に報知情報の要否が判定され、報知情報の報知が必要であり、且つ、血圧の変動有りの要因に該当した変動要因(上記の特定変動要因)が存在する場合にのみ、ユーザへの報知が行われる。この報知情報の報知の要否の判定は、
図6に示した報知要否判定条件に含まれる報知頻度に基づいて行われる。このように、変動要因毎の報知頻度と報知実績に基づいて、変動要因に基づく情報の報知の必要性が判定されることで、例えば、短期的な血圧の変動(測定状態要因や服薬要因による変動)と長期的な血圧の変動(曜日要因や季節要因による変動)のそれぞれに対し、その変動が有った場合に、適切な頻度でその変動要因を報知することが可能となり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0104】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、上記の説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができる。例えば、以下のような変更が可能である。
【0105】
報知制御部31Bは、特定変動要因が複数ある場合に、複数の特定変動要因の各々に基づく報知情報をユーザに報知する構成としてもよい。この構成によれば、複数の変動要因で血圧の変動が発生していることをユーザに認識させることができる。
【0106】
システム制御部31が、変動要因毎の報知要否の判定を行わない構成としてもよい。この場合、報知制御部31Bは、血圧変動判定部31Aによって血圧の変動が有ると判定された場合に、その変動要因の全て又はいずれか1つに基づく報知情報をユーザに報知する。この構成であっても、ユーザ毎に適した変動要因をユーザに伝えることができる。
【0107】
血圧計1と電子機器2は、それぞれ別々の機器としているが、血圧計1に電子機器2の機能が含まれる構成であってもよい。
【0108】
電子機器2と分析装置3は、それぞれ別々の機器としているが、電子機器2に分析装置3の機能が含まれる構成であってもよい。
【0109】
変動要因として5つを例示し、5つの分析アルゴリズムによって血圧変動の有無を判定するものとしたが、この5つの変動要因の中から選択される2つ、3つ、又は4つの変動要因について、分析アルゴリズムによって血圧変動の有無を判定する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 血圧計
2 電子機器
3 分析装置
21,31 システム制御部
22,32 通信I/F
23 記憶媒体
24 操作部
25 表示部
26 スピーカ
31A 血圧変動判定部
31B 報知制御部
31C 報知要否判定部
33 データベース
100 血圧分析システム