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  • 特許-道路トンネルの分岐合流構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】道路トンネルの分岐合流構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240305BHJP
   E21D 13/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
E21D9/06 301D
E21D13/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019221903
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021092043
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮元 克洋
(72)【発明者】
【氏名】足立 邦靖
(72)【発明者】
【氏名】磐田 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】屋代 勉
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-068861(JP,A)
【文献】特開2011-196135(JP,A)
【文献】特開2004-092391(JP,A)
【文献】特開平11-173067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法により構築された本線トンネル躯体と、
該本線トンネル躯体に一端が接続される横連絡坑と、
全長を前記本線トンネル躯体に対して離間して構築されるとともに、前記横連絡坑の他端が接続されて前記本線トンネル躯体と連通する、シールド工法により構築された支線トンネルと、
を備える道路トンネルの分岐合流構造であって、
前記本線トンネル躯体と前記支線トンネル躯体に、各々のトンネル軸線が平行となる平行区間が設けられるとともに、該平行区間各々にセグメントの切開き部が形成されており、
該切開き部に前記平行区間と直交する前記横連絡坑が接続され、
記横連絡坑は、前記本線トンネル躯体のトンネル軸線と直交する方向に延在する鉄筋コンクリート造のボックス状躯体であるとともに、
前記横連絡坑、前記本線トンネル躯体及び前記支線トンネル躯体に、相互に連続する道路床版が設けられており、
前記本線トンネル躯体内の前記道路床版上であって、前記横連絡坑の接続位置を含んでその走行方向上流側及び下流側の所定区間に、車線分離構造物が設けられ、該車線分離構造物の下流側に、該車線分離構造物により分離された走行2車線各々を走行する車両を検知する検知設備が設けられていることを特徴とする道路トンネルの分岐合流構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本線トンネル躯体と支線トンネル躯体とを備える道路トンネルの分岐合流構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路トンネルの分岐合流部を構築するにあたっては、様々な方法もしくは構造が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、図4の平面図で示すように、隣接して構築される本線トンネル102とランプトンネル103とを、各々の中心軸が互いに接近し最終的には両者が連結して1本の円形筒状のトンネル101となるように構築する。
【0004】
そして、中心軸が互いに接近していく区間104において、周囲の地盤補強を行ったうえで、本線トンネル102及びランプトンネル103各々で対向する部分のセグメントを撤去し、セグメントの残置部における上側どうしを天井版で連結するとともに、下側どうしを床版で連結し、トンネル分岐合流部を構築する。
【0005】
上記の方法では、中心軸が互いに接近していく区間104の区間長が長大となりやすいことに伴って、地盤補強を実施する領域や本線トンネル102とランプトンネル103とを天井版及び床版で連結する区間も長くなることから、多大な手間を要するとともに安全性についても課題が多い。
【0006】
このような中、例えば特許文献2では、図5(a)で示すように、本線トンネル202に隣接して支線トンネル203を構築するとともに、支線トンネル203を利用して本線トンネル202を囲繞する大断面の筒状躯体204を構築する。そして、図5(b)で示すように、この筒状躯体204の内方を掘削することにより大断面トンネル201を構築し、この大断面トンネル201に本線トンネル202と支線トンネル203との分岐合流部を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-144485号公報
【文献】特開2018-25008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2によれば、大断面トンネル201を利用して本線トンネル202と支線トンネル203の分岐合流部を構築できることから、作業効率及び安全性を向上できる。しかし、大断面トンネル201は、断面径が30m程度の筒状躯体204の内方を掘削することにより構築されることから、地中掘削量が膨大となり構築作業が大掛かりなものとなるだけでなく、施工が煩雑であるとともに施工期間も長期化しやすい。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、簡略な構造かつ最小限の地中掘削で構築することの可能な、道路トンネルの分岐合流構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため本発明の道路トンネルの分岐合流構造は、シールド工法により構築された本線トンネル躯体と、該本線トンネル躯体に一端が接続される横連絡坑と、全長を前記本線トンネル躯体に対して離間して構築されるとともに、前記横連絡坑の他端が接続されて前記本線トンネル躯体と連通する、シールド工法により構築された支線トンネルと、を備える道路トンネルの分岐合流構造であって、前記本線トンネル躯体と前記支線トンネル躯体に、各々のトンネル軸線が平行となる平行区間が設けられるとともに、該平行区間各々にセグメントの切開き部が形成されており、該切開き部に前記平行区間と直交する前記横連絡坑が接続され、前記横連絡坑は、前記本線トンネル躯体のトンネル軸線と直交する方向に延在する鉄筋コンクリート造のボックス状躯体であるとともに、前記横連絡坑、前記本線トンネル躯体及び前記支線トンネル躯体に、相互に連続する道路床版が設けられており、前記本線トンネル躯体内の前記道路床版上であって、前記横連絡坑の接続位置を含んでその走行方向上流側及び下流側の所定区間に、車線分離構造物が設けられ、該車線分離構造物の下流側に、該車線分離構造物により分離された走行2車線各々を走行する車両を検知する検知設備が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上述する本発明の道路トンネルの分岐合流構造によれば、シールド工法により構築された本線トンネル躯体と支線トンネル躯体が、横連絡坑を介して連通されていることから、地中掘削作業は、横連絡坑の構築に必要な最小限の領域のみで足りる。
【0012】
また、本線トンネル躯体と支線トンネル躯体に平行区間を設け、この平行区間に形成したセグメントの切開き部に平行区間と直交する横連絡坑を接続する。これにより、本線トンネル躯体及び支線トンネル躯体と、横連絡坑との接続部に複雑な構造を要せず、また、横連絡坑自身もボックスカルバートのごとく簡略な構造とすることが可能となる。したがって、周辺地山より作用する土圧や水圧等の外力に対して高い耐力を確保しつつ、道路の分岐合流構造を合理的な構造にできるため、構築する際の作業を大幅な効率化を実現でき、工費削減、工期短縮、作業安全性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
本発明の道路トンネルの分岐合流構造によれば、本線トンネル躯体内を本線とし、支線トンネル躯体内をランプ線とした場合に、本線からランプ線に向けて分岐するための減速専用区間、もしくはランプ線から本線に合流するための加速専用区間と、本線とを、車線分離構造物で明確に分離してスムーズな走行を促すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本線トンネル躯体と支線トンネル躯体を横連絡坑を介して連通させることから、簡略な構造かつ最小限の地中掘削で道路トンネルの分岐合流構造を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態における道路トンネルの分岐合流構造を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における道路トンネルの分岐部を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における道路トンネルの合流部を示す図である。
図4】従来技術における道路トンネルの分岐合流部の事例を示す図である(その1)。
図5】従来技術における道路トンネルの分岐合流部の事例を示す図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、地中に構築された本線トンネル躯体とこれに隣接して構築された支線トンネル躯体とを横連絡坑で接続し、この横連絡坑を利用して道路トンネルの分岐合流部を構築するものである。以下に、道路トンネルの分岐合流構造について、その詳細を図1図3を用いて説明する。
【0018】
≪道路トンネルの分岐部≫
図1(a)の平面図で示すように、道路トンネル1は、シールド工法により構築された本線トンネル躯体2と、同じくシールド工法により構築され、本線トンネル躯体2に隣接して構築された支線トンネル躯体3と、両者を連通する横連絡坑4と、を備えている。
【0019】
本線トンネル躯体2は、図1(b)で示すように、内空部に構築される道路床版5上に、少なくとも走行2車線の道路幅を確保することの可能な大きさの横断面を有している。そして、図1(a)で示すように、本線トンネル躯体2において、道路トンネル1に設定された分岐部領域11内の一部分にセグメントを撤去し切り開いた切開き部が形成され、この切開き部に横連絡坑4が接続されている。
【0020】
横連絡坑4は、本線トンネル躯体2のトンネル軸線と直交する方向に延在するよう構築された鉄筋コンクリート造のボックスカルバートのごとく構築された躯体であり、一端が本線トンネル躯体2に接続され、他端が支線トンネル躯体3に接続されている。なお、横連絡坑4の断面幅Wは少なくとも、本線トンネル躯体2から支線トンネル躯体3に向けて、走行車両がスムーズに移動できる幅を確保する。
【0021】
支線トンネル躯体3は、図1(a)で示すように、道路トンネル1に設定した分岐部領域11を通過することなく、その中ほどに到達するよう構築されており、全長にわたって本線トンネル躯体2との間に離間距離が確保されている。つまり、本線トンネル躯体2と支線トンネル躯体3が直接合流することはない。そして、支線トンネル躯体3には、道路トンネル1に設定された分岐部領域11内の一部分にセグメント撤去し切り開いた切開き部が形成され、本線トンネル躯体2と同様に、この切開き部に横連絡坑4が接続されている。
【0022】
これら本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3の各々に形成された切開き部、つまり横連絡坑4が接続されている部分は、各々のトンネル軸線が平行に構築されている平行区間21、31に位置し、また互いに対向している。したがって、横連絡坑4は、平行区間21、31に対して直交して配置されている。
【0023】
これにより、横連絡坑4と本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3との接続部は複雑な構造を不要としながら、周辺地山より作用する土圧や水圧等の外力に対して高い耐力を確保することが可能となる。また、横連絡坑4もボックスカルバートのごとくシンプルな構造にできるだけでなく、地中掘削作業は横連絡坑4の構築に必要な最小限の領域で良い。このため、道路トンネル1の分岐合流構造を構築する際の作業効率を向上することができるだけでなく、工費削減、工期短縮、及び作業安全性の向上を図ることが可能となる。
【0024】
このように、横連絡坑4により本線トンネル躯体2と支線トンネル躯体3は連通された状態となり、これらの内空部には、図1(b)で示すような、本線トンネル躯体2、支線トンネル躯体3及び横連絡坑4に連続する道路床版5が構築される。ところで、こうして構築された分岐部領域11の道路床版5は、図1(a)で示すように、平面視H形状となることから、本実施の形態では、平面視ランプ線54に向かうための減速専用区間52を、横連絡坑4内の道路床版5上ではなく、本線トンネル躯体2内の道路床版5上に確保している。
【0025】
つまり、図2(a)で示すように、道路トンネル1の分岐部領域11において、本線トンネル躯体2内の道路床版5上には、車線分離構造物6が設けられて走行2車線が分離されている。車線分離構造物6は、コンクリート造の柱体よりなり、横連絡坑4の接続位置を含む走行方向上流側及び下流側に、複数設けられている。
【0026】
これにより、分離された走行2車線の一方を、分岐せずに直進して走行するための本線51、他方を、本線から分岐して支線トンネル躯体3内のランプ線54に向かうための減速専用区間52として明確に分離でき、スムーズな走行を促すことが可能となる。
【0027】
なお、図2(a)では、横連絡坑4の接続位置より走行方向下流側において、減速専用区間52の下流端を車線分離構造物6で塞ぐ構成としたが、必ずしもこれに限定するものではない。例えば図2(b)では、減速専用区間52を走行する車両が、本線51に戻ることも可能なように、減速専用区間52の下流端を開放している。
【0028】
具体的には、道路トンネル1の分岐部領域11において、横連絡坑4の接続位置を含む走行方向上流側に加えて下流側にも、車線分離構造物6を、本線51と減速専用区間52の延長部分とを分離するように複数設置している。そして、これら下流側に設置した車線分離構造物6もしくはその近傍に、本線51及び減速専用区間52の各々を走行する車両の、走行を支援する走行支援装置7を設置している。
【0029】
走行支援装置7は、例えば、本線51及び減速専用区間52の各々を走行する車両を検知するセンサもしくはカメラ等の検知設備71と、検知設備71で検知した走行車両に係る情報を解析管理する情報管理システム72と、情報管理システム72で解析した結果に基づいて、本線51もしくは減速専用区間52を走行する車両に警告情報を表示する警告表示部73と、を備える。
【0030】
こうすると、分岐部領域11を通過する手前で本線51及び減速専用区間52を走行する車両は互いに、合流する可能性のある車両の存在を車線分離構造物6で仕切られた状態にあっても、認識することが可能となる。
【0031】
なお、警告表示部73は、いずれの表示方法によるものでもよく、本線51を走行する車両に対しては、減速専用区間52から合流しようとする車両の存在を伝達し、減速専用区間52を走行する車両に対しては、本線51を走行する車両の存在を伝達できれば、警告表示板や警告灯等いずれの表示手段であってもよい。
【0032】
≪道路トンネルの合流部≫
上記のような、道路トンネル1の分岐合流構造は、図3で示すような合流部領域12であっても、分岐部領域11と同様の構成を有する。つまり、道路トンネル1に設定された合流部領域12内において、本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3の各々に、トンネル軸線が平行に構築された平行区間21、31が設けられるとともに、セグメントを撤去し切り開いた切開き部が互いに対向して形成される。そして、この切開き部に平行区間21、31に対して直交する横連絡坑4が接続されている。
【0033】
また、道路トンネル1の合流部領域12において、道路床版5は、図3で示すように、平面視H形状となることから、本線トンネル躯体2内の道路床版5上に、ランプ線54から本線51に合流して走行するための加速専用区間53を設けている。つまり、本線トンネル躯体2内の道路床版5上であって、横連絡坑4の接続位置を含む走行方向上流側及び下流側に、複数の車線分離構造物6を設置し、この車線分離構造物6により本線トンネル躯体2内の道路床版5上を、本線51と、ランプ線54から本線51に合流して走行するための加速専用区間53とに分離する。
【0034】
そして、加速専用区間53の上流端を車線分離構造物6で塞ぐ構成とし、加速専用区間53の下流端もしくはその近傍には、本線51及び加速専用区間53の各々を走行する車両の走行を支援するべく、前述した走行支援装置7の検知設備71と情報管理システム72とが設置されている。
【0035】
なお、加速専用区間53には、走行支援装置7だけでなく、信号設備8を設けてもよい。
【0036】
本発明の道路トンネル1の分岐合流構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、本実施の形態では、車線分離構造物6を柱体とし、これを道路床版5上に複数構築したが、必ずしもこれに限定するものではなく、例えば、車両の走行方向に延在する壁体に構築してもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3の各々に設けた平行区間21、31を対向するように配置して、横連絡坑4を本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3各々のトンネル軸線に対して直交するように構築した。しかし、必ずしもこれに限定するものではない。
【0039】
例えば、本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3の平行区間21、31の位置を、各々のトンネル軸線方向にずらして配置し、横連絡坑4を、分合流しようとする走行車両の走行方向に対応させるよう、本線トンネル躯体2及び支線トンネル躯体3各々のトンネル軸線に対して斜め方向に交差するよう設けてもよい。
【0040】
さらに、横連絡坑4は鉄筋コンクリート造のボックス状躯体に限定されるものではなく、例えば、支線トンネル躯体3から本線トンネル躯体2に向けてシールド機を発進させることにより構築したシールドトンネル躯体であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 道路トンネル
11 分岐部領域
12 合流部領域
2 本線トンネル躯体
21 平行区間
3 支線トンネル躯体
31 平行区間
4 横連絡坑
5 道路床版
51 本線
52 減速専用区間
53 加速専用区間
54 ランプ線
6 車線分離構造物
7 走行支援装置
71 検知設備
72 情報管理システム
73 警告表示部
8 信号設備
101 トンネル
102 本線トンネル
103 ランプトンネル
104 区間
201 大断面トンネル
202 本線トンネル
203 支線トンネル
204 筒状躯体
図1
図2
図3
図4
図5