(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20240305BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240305BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B22F3/16
B33Y10/00
B28B1/30
(21)【出願番号】P 2019228029
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-015737(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1844266(KR,B1)
【文献】実開平07-015738(JP,U)
【文献】特開平09-078105(JP,A)
【文献】特開平08-067904(JP,A)
【文献】特開2010-100883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0054193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00-99/00
B28B 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末とバインダーとを含む材料を用いて複数の凸部を有する成形体を形成する成形体形
成工程と、
前記凸部のそれぞれを挿入可能な位置に溝部を有する支持体に、複数の前記凸部を前記
溝部に挿入した状態で、支持させる支持工程と、
前記支持体に支持された状態の前記成形体を加熱し、前記粉末を焼結させる焼結工程と
、を有し、
前記溝部は、前記焼結工程を実行することによる前記成形体の収縮方向を規定する規定
方向に、前記凸部の挿入位置から延設されて
おり、
前記溝部は、前記凸部の挿入位置から前記規定方向に向けて幅が狭くなっていることを
特徴とする三次元造形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形方法において、
前記規定方向は、複数の前記凸部のうちの少なくとも2つを結ぶ直線方向に沿う方向
、
又は、前記成形体の長手方向に沿う方向であることを特徴とする三次元造形方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の三次元造形方法において、
前記凸部は、円柱形状、円筒形状または円錐形状であることを特徴とする三次元造形方
法。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の三次元造形方法において、
前記粉末は、金属粉末であ
り、又は、
前記支持体は、セラミック製であることを特徴とする三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉末とバインダーとを含む材料を用いて成形体を形成し、該成形体を加熱して粉末を焼結させることで三次元造形物を造形する三次元造形方法が使用されている。このような三次元造形方法を実行すると、焼結工程に伴って成形体が収縮する。成形体が収縮すると様々な問題が生じうる。そこで、例えば、特許文献1には、造形プレートに凹部を設け成形体の一部を該凹部に引っ掛ける構成とすることで、アンカー効果を利用して成形体の収縮に伴う造形プレートからの剥離を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉末とバインダーとを含む材料を用いて成形体を形成し、該成形体を加熱して粉末を焼結させると、焼結工程に伴って三次元造形物が歪むという問題が生じる場合がある。なお、特許文献1に開示される技術を使用しても、成形体の一部が凹部に引っ掛かった状態で成形体が収縮し、かえって三次元造形物の歪みが大きくなる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形方法は、粉末とバインダーとを含む材料を用いて複数の凸部を有する成形体を形成する成形体形成工程と、前記凸部のそれぞれを挿入可能な位置に溝部を有する支持体に、複数の前記凸部を前記溝部に挿入した状態で、支持させる支持工程と、前記支持体に支持された状態の前記成形体を加熱し、前記粉末を焼結させる焼結工程と、を有し、前記溝部は、前記焼結工程を実行することによる前記成形体の収縮方向を規定する規定方向に、前記凸部の挿入位置から延設されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の三次元造形方法における成形体を形成可能な三次元造形装置の一例を表す概略構成図。
【
図2】
図1の三次元造形装置を用いて行う成形体の形成例を説明するための概略図。
【
図3】本発明の三次元造形方法の一実施例のフローチャート。
【
図4】焼結工程を実行する成形体の一例を表す概略斜視図。
【
図5】
図4の成形体を一例としての支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【
図6】
図4の成形体を
図5の支持体とは別の支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【
図7】
図4の成形体とは異なる形状の成形体の一例を表す概略斜視図。
【
図8】
図7の成形体を一例としての支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【
図9】
図4の成形体及び
図7の成形体とは異なる形状の成形体の一例を表す概略斜視図。
【
図10】
図9の成形体を一例としての支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【
図11】
図4の成形体、
図7の成形体及び
図9の成形体とは異なる形状の成形体の一例を表す概略斜視図。
【
図12】
図11の成形体を一例としての支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【
図13】
図4の成形体、
図7の成形体、
図9の成形体及び
図11の成形体とは異なる形状の成形体を一例としての支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【
図14】
図4の成形体、
図7の成形体、
図9の成形体、
図11の成形体及び
図13の成形体とは異なる形状の成形体を一例としての支持体に支持させた状態を表す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形方法は、粉末とバインダーとを含む材料を用いて複数の凸部を有する成形体を形成する成形体形成工程と、前記凸部のそれぞれを挿入可能な位置に溝部を有する支持体に、複数の前記凸部を前記溝部に挿入した状態で、支持させる支持工程と、前記支持体に支持された状態の前記成形体を加熱し、前記粉末を焼結させる焼結工程と、を有し、前記溝部は、前記焼結工程を実行することによる前記成形体の収縮方向を規定する規定方向に、前記凸部の挿入位置から延設されていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、複数の凸部を有する成形体を形成し、複数の凸部を溝部に挿入した状態で成形体の収縮方向を規定しつつ焼結工程を実行する。このため、成形体の収縮方向を規定できるので、成形体の形状に応じた規定方向に延設される溝部とすることで、成形体に無理な力を加えることなく収縮させることが可能になり、三次元造形物の歪みを抑制することができる。
【0009】
本発明の第2の態様の三次元造形方法は、前記第1の態様において、前記規定方向は、複数の前記凸部のうちの少なくとも2つを結ぶ直線方向に沿う方向であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、規定方向は、複数の凸部のうちの少なくとも2つを結ぶ直線方向に沿う方向である。焼結工程に伴って複数の凸部同士の間隔は小さくなるが、規定方向を2つの凸部を結ぶ直線方向に沿う方向とすることで、成形体に無理な力が加わり歪むことを効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の三次元造形方法は、前記第1または第2の態様において、前記規定方向は、前記成形体の長手方向に沿う方向であることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、規定方向は、成形体の長手方向に沿う方向である。焼結工程に伴って成形体の長手方向に沿って大きく収縮するが、規定方向を成形体の長手方向に沿う方向とすることで、成形体に無理な力が加わり歪むことを効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の三次元造形方法は、前記第1から第3のいずれか1つの態様において、前記溝部は、前記凸部の挿入位置から延設される方向に向けて幅が狭くなっていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、溝部は凸部の挿入位置から延設される方向に向けて幅が狭くなっている。焼結工程に伴って成形体は全体的に収縮するので凸部も収縮するが、凸部が収縮して細くなった場合でも溝部が凸部の挿入位置から延設される方向に向けて幅が狭くなっていることで、凸部が細くなることに伴う規定方向のずれを抑制できる。
【0015】
本発明の第5の態様の三次元造形方法は、前記第1から第4のいずれか1つの態様において、前記凸部は、円柱形状、円筒形状または円錐形状であることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、凸部は、円柱形状、円筒形状または円錐形状であるので、焼結工程に伴って成形体が収縮する際に凸部が溝部に引っ掛かり成形体に無理な力が加わり歪むことを効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の第6の態様の三次元造形方法は、前記第1から第5の態様において、前記粉末は、金属粉末であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、粉末は金属粉末である。このため、歪みが抑制された頑丈な金属性の三次元造形物を造形することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の三次元造形方法は、前記第1から第6のいずれか1つの態様において、前記支持体は、セラミックス製であることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、支持体はセラミックス製である。このため、耐熱、熱膨張、熱伝導、耐熱衝撃性などの熱特性に優れた支持体に三次元造形物を造形することができる。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の三次元造形方法における成形体形成工程を実行可能な三次元造形装置1の一実施例について
図1を参照して説明する。ここで、
図1及び後述する各図における図中のX軸方向は水平方向であり供給ユニット8の往復移動方向に対応し、このうち、X1方向は往方向、X2方向は復方向に対応する。また、Y軸方向は水平方向であるとともにX軸方向と直交する方向であり、ローラー6の回転軸の延びる方向に対応する。また、Z軸方向は鉛直方向であり、層500の積層方向に対応する。
【0022】
なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、いわゆる二次元形状の形状であっても厚さを有する形状を形成することも含まれる。
【0023】
本実施例の三次元造形装置1は、層501、層502、層503、・・・層50nからなる層500を積層することにより三次元造形物を製造する三次元造形装置である。そして、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、造形テーブル9を有するテーブルユニット10と、三次元造形物の材料を造形テーブル9に供給する供給ユニット8と、テーブルユニット10及び供給ユニット8の動作を制御する制御部12と、を備えている。なお、三次元造形装置1は、パーソナルコンピューターなどの外部装置20と電気的に接続されており、外部装置20を介してユーザーからの指示を受け付け可能な構成となっている。
【0024】
造形テーブル9は、制御部12の制御によりZ軸方向に沿って移動可能な構成となっている。造形テーブル9の造形面9aをテーブルユニット10の上面部10aに対してZ軸方向において所定の距離だけ低い位置に配置し、造形面9aに供給ユニット8から三次元造形物の材料を供給して1層分の層500を形成する。そして、造形テーブル9の所定の距離分の下方への移動と、供給ユニット8からの三次元造形物の材料の供給と、を繰り返すことで積層する。
図1は、層501、層502、層503及び層504の4層分の層形成を繰り返して、造形面9a上に三次元造形物の成形体Sを形成した様子を表している。ここで、成形体Sは、脱脂及び焼結をする前の状態を表しており、所謂グリーン体と呼ばれるものである。
【0025】
供給ユニット8は、ガイドバー11に沿って、X軸方向に移動可能な構成となっている。また、供給ユニット8は、金属やセラミックスや樹脂などの粉末を含む材料を造形テーブル9に供給する材料供給部2を備えている。なお、材料供給部2として、X1方向の先頭側端部に形成された材料供給部2Aと、X2方向の先頭側端部に形成された材料供給部2Bと、を備えている。
【0026】
また、供給ユニット8は、造形テーブル9に供給された材料を圧縮して均すことが可能なローラー6を備えている。なお、ローラー6として、X軸方向における材料供給部2Aの隣に形成されたローラー6Aと、X軸方向における材料供給部2Bの隣に形成されたローラー6Bと、を備えている。
【0027】
また、供給ユニット8は、材料供給部2から供給された材料に含まれる粉末を結着するバインダーを含む液体を、三次元造形物の造形領域Pに吐出するヘッド3を備えている。なお、ヘッド3として、X軸方向におけるローラー6Aの隣に形成されたヘッド3Aと、X軸方向におけるローラー6Bの隣に形成されたヘッド3Bと、を備えている。ここで、ヘッド3A及びヘッド3Bから吐出される液体は同じ液体であり、ともに、バインダーとして紫外線硬化樹脂を含む液体である。ただし、このような液体に限定されず、熱可塑性樹脂をバインダーとして含む液体や、バインダーとしての固体の樹脂が揮発性の溶媒に溶解された状態の液体などを使用してもよい。
【0028】
そして、X軸方向におけるヘッド3Aとヘッド3Bとの間には、紫外線硬化樹脂を硬化させることが可能な紫外線を照射する紫外線照射部4を備えている。なお、本実施例の供給ユニット8は、紫外線照射部4を1つ備える構成であるが、紫外線照射部4を2つ以上備える構成や、使用する液体の種類などに応じて、紫外線照射部4を備えない構成や、紫外線照射部4の代わりに熱可塑性樹脂を硬化させるため或いは溶媒を揮発させるためのヒーターを備える構成などであってもよい。
【0029】
図1で表されるように、本実施例の供給ユニット8は、X軸方向において構成部材の形状が対称となっている。このため、本実施例の三次元造形装置1は、供給ユニット8をX1方向に移動させつつ成形体Sの成形体形成工程を実行できるとともに、供給ユニット8をX2方向に移動させつつ成形体Sの成形体形成工程を実行できる。
【0030】
このように、本実施例の三次元造形装置1は、造形テーブル9と、造形テーブル9に粉末層である層500を形成する層形成部としての材料供給部2及びローラー6と、層500における三次元造形物の造形領域Pにバインダーを含む液体をノズルから吐出するヘッド3と、造形テーブル9に対するヘッド3の移動と、電圧を印可することによるヘッド3の駆動と、を制御する制御部12と、を備えている。
【0031】
次に、本実施例の三次元造形装置1で使用可能な材料についての具体例を説明する。材料に含有可能な金属粉末としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単体粉末、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金(マルエージング鋼、ステンレス(SUS)、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金)の粉末、これらの混合粉末を、用いることが可能である。
【0032】
また、材料に含有可能なセラミックス粉末としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素などを好ましく使用可能である。
【0033】
また、材料に使用可能な樹脂粉末、或いは、液体中に含有されるバインダーとしては、例えば、PMMA(アクリル)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸エステル)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル)、PLA(ポリ乳酸)、PEI(ポリエーテルイミド)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド)、EP(エポキシ)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PS(ポリスチレン)、パラフィンワックス、PVA(ポリビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレートなどを好ましく使用可能である。また、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂などを単独で或いは組み合わせて用いることができる。さらには、熱可塑性樹脂や、アクリルなどのような不飽和二重結合のラジカル重合を用いるタイプやエポキシなどのカチオン重合を用いるタイプの紫外線硬化性樹脂を用いることもできる。
【0034】
また、液体中に含有される溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
次に、
図1の三次元造形装置1と成形体Sを脱脂及び焼結することが可能な焼結炉とを用いて実行可能な三次元造形方法の一例について、
図2、並びに、
図4及び
図5を参照しつつ、
図3のフローチャートを用いて説明する。なお、
図2は、成形体Sにおける層500のうちの層502を形成する際の一例を表している。
【0036】
本実施例の三次元造形物の製造方法においては、
図3で表されるように、最初に、ステップS110の造形データ入力工程で、製造する三次元造形物の造形データを入力する。三次元造形物の造形データの入力元に特に限定はないが、外部装置20を用いて造形データを三次元造形装置1に入力できる。
【0037】
次に、ステップS120の層形成工程で、材料供給部2から材料を造形テーブル9の造形面9aに供給するとともにローラー6で材料を圧縮して均すことで層500を形成する。
図2の一番上の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動して層502を形成している状態を表している。ここで、X1方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、材料供給部2Aから材料を供給するとともにローラー6Aで材料を圧縮して均すことで層500を形成する。一方、X2方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、材料供給部2Bから材料を供給するとともにローラー6Bで材料を圧縮して均すことで層500を形成する。
【0038】
次に、ステップS130の液体吐出工程で、層500における三次元造形物の造形領域Pにバインダーを含む液体をヘッド3のノズルから吐出する。
図2の上から2番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502の造形領域Pに液体をヘッド3のノズルから吐出している状態を表している。ここで、X1方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、ヘッド3Aから液体を吐出する。一方、X2方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、ヘッド3Bから液体を吐出する。
【0039】
次に、ステップS140の紫外線照射工程で、層500における三次元造形物の造形領域Pに向けて紫外線照射部4から紫外線を照射する。
図2の一番下の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502における三次元造形物の造形領域Pに向けて紫外線照射部4から紫外線を照射している状態を表している。
【0040】
そして、ステップS150の造形データ終了有無判断工程で、三次元造形装置1の制御部12において、ステップS110で入力した造形データに基づく層500の形成が全て終了したかどうかを判断する。層500の形成が全て終了していないと判断した場合、ステップS120の造形前フラッシング工程に戻り、次の層500を形成する。一方、層500の形成が全て終了したと判断した場合、ステップS160の支持工程に進む。
【0041】
上記のステップS110からステップS150までが、
図1で表される三次元造形装置1を用いて実行される、成形体Sを形成する成形体形成工程に該当する。ここで、本実施例の三次元造形方法においては、成形体形成工程において、
図2で表されるように、層501に成形体Sとして複数の凸部Saを形成している。このため、ステップS120からステップS150までを繰り返して形成される成形体Sは、
図4で表されるように、複数の凸部Saを有する成形体となる。
【0042】
ステップS160の支持工程では、上記のステップS120からステップS150までが繰り返されることで形成された成形体Sを、ユーザーが支持体5に支持させる。支持体5にはX軸方向に延設される溝部Gが設けられており、
図5で表されるように、成形体Sの凸部Saが溝部Gに挿入された状態となるように、成形体Sを支持体5に支持させる。本実施例の支持体5は平板状であり、溝部GはX軸方向を長手方向とする四角形の貫通孔であるが、このような構成に限定されない。支持体5は平板状でなくてもよく、溝部Gは凸部Saが挿入可能であれば貫通孔でなくてもよい。支持体5の材質についても特に限定はない。後述のステップS170の脱脂工程及びステップS180の焼結工程で、損傷や形状変化などを生じない材質であればよい。また、支持体5は、三次元造形装置1などを用いて造形してもよいが、市販の既製品などを使用してもよい。
【0043】
次に、ステップS170の脱脂工程では、支持体5に支持された状態の成形体Sにおけるバインダーなど、ステップS120からステップS150までを繰り返すことで製造された成形体Sの樹脂成分を、焼結炉などを用いて脱脂する。ステップS170の脱脂工程は、焼結炉以外の装置を用いて行ってもよい。また、脱脂の方法は、加熱することにより樹脂成分を揮発させる方法のほか、溶剤中に成形体Sを漬けて樹脂成分を溶解させる方法なども採用可能である。なお、樹脂製の三次元造形物を製造する場合など、製造する三次元造形物の種類などによっては、本ステップS180の脱脂工程を省略してもよい。
【0044】
そして、ステップS180の焼結工程では、ステップS170の脱脂工程で脱脂がなされた成形体Sを焼結炉などで加熱して材料を焼結する。ステップS180の焼結工程もステップS170の脱脂工程と同様、成形体Sが支持体5に支持された状態で実行される。ステップS170の脱脂工程及びステップS180の焼結工程を実行することにより、成形体Sは収縮するが、成形体Sの凸部SaがX軸方向を長手方向とする溝部Gに挿入された状態で脱脂及び焼結が行われるので、成形体Sの収縮を該長手方向の一方向に限定でき、成形体Sの収縮による歪み、ねじれ、ゆがみを抑制できる。
【0045】
なお、ステップS170の脱脂工程を実行した後においても成形体Sのバインダーなどの樹脂成分が残存していた場合でも、本ステップS180の焼結工程の実行に伴い該樹脂成分は除去される。そして、本ステップS180の焼結工程の終了に伴い、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。
【0046】
上記のように、本実施例の三次元造形方法は、粉末とバインダーとを含む材料を用いて複数の凸部Saを有する成形体Sを形成するステップS120からステップS150までの成形体形成工程を有する。また、成形体Sを支持体5に支持させる、ステップS160の支持工程を有する。ステップS160の支持工程では、
図5で表されるように、凸部Saの各々を挿入可能な位置に溝部Gを有する支持体5に、複数の凸部Saの各々を溝部Gに挿入した状態で支持させる。そして、支持体5に支持された状態の成形体Sを加熱し、成形体Sを構成する粉末を焼結させるステップS180の焼結工程を有する。ここで、
図5で表されるように、溝部Gは、X軸方向を長手方向としており、凸部Saの挿入位置IからX軸方向において中央部側に向けて延設されている。別の表現をすると、溝部Gは、焼結工程を実行することによる成形体Sの収縮方向を規定する規定方向Dに、凸部Saの挿入位置Iから延設されている。
【0047】
このように、本実施例の三次元造形方法では、複数の凸部Saを有する成形体Sを形成し、複数の凸部Saの各々を溝部Gに挿入した状態で成形体Sの収縮方向を規定しつつ焼結工程を実行する。このように、溝部Gの形状を規定方向DであるX軸方向に延設される形状としていることで、成形体Sの収縮方向を、無理な力が加わりにくい、X軸方向に規定できる。このため、本実施例の三次元造形方法を実行することで、成形体Sに無理な力を加えることなく収縮させることが可能になり、造形される三次元造形物の歪み、ねじれ、ゆがみ等を抑制することができる。
【0048】
ここで、成形体Sの形状に応じた規定方向Dとは、例えば、成形体Sの長手方向に沿う方向である。
図4及び
図5で表されるように、本実施例の成形体SはX軸方向を長手方向としている。焼結工程を実行すると、該焼結工程に伴って成形体Sの長手方向に沿って大きく収縮する。しかしながら、溝部Gの延設方向、すなわち、溝部Gによる規定方向Dを成形体Sの長手方向に沿う方向とすることで、焼結工程に伴って成形体Sに無理な力が加わり、成形体Sが歪むことを効果的に抑制することができる。
【0049】
図4及び
図5で表されるように、凸部Saは、円柱形状である。凸部Saの形状に特に限定はないが、円柱形状、円筒形状または円錐形状であることが好ましい。凸部Saが、円柱形状、円筒形状または円錐形状であれば、焼結工程に伴って成形体Sが収縮する際に凸部Saが溝部Gに引っ掛かり成形体Sに無理な力が加わり歪むことを効果的に抑制することができるためである。
【0050】
また、上記のように、成形体Sの材料に含まれる粉末としては、様々な粉末を用いることができるが、金属粉末を用いることが好ましい。金属は頑丈であるため、頑丈な三次元造形物を、歪みが抑制された状態で造形することができるためである。
【0051】
また、上記のように支持体5としては様々な材質のものを使用できるが、支持体5はセラミックス製であることが好ましい。セラミックスは頑丈で熱に強いため、支持体5としてセラミックス製のものを使用することで、頑丈で熱に強い支持体5に三次元造形物を造形することができるためである。
【0052】
図5で表される支持体5は、X軸方向を長手方向とする四角形の溝部Gを有している。しかしながら、溝部Gは、成形体Sの収縮方向を規定する規定方向Dに凸部Saの挿入位置Iから延設されている構成であれば、四角形に限定されない。例えば、
図6で表されるように、X軸方向を長手方向とする三角形であって成形体Sの収縮方向を規定する規定方向Dに沿って幅が狭くなる溝部Gを有していてもよい。
【0053】
図6で表される支持体5の溝部Gのように、凸部Saの挿入位置Iから延設される方向に向けて幅が狭くなっていることで、規定方向Dのずれを効果的に抑制できる。その理由としては、焼結工程に伴って成形体Sは全体的に収縮するので凸部Saも収縮するが、凸部Saが収縮して細くなった場合でも溝部Gが凸部Saの挿入位置Iから延設される方向に向けて幅が狭くなっていることで、溝部Gと凸部Saとの規定方向Dと交差する方向における隙間を小さく保つことができ、凸部Saが細くなることに伴う規定方向Dのずれを抑制できるためである。
【0054】
図5で表される成形体S及び支持体5、並びに、
図6で表される成形体S及び支持体5は共に、溝部Gによる規定方向Dは、X軸方向に沿う方向であり、別の表現をすると、2つの凸部Saを結ぶ直線方向に沿う方向である。このように、溝部Gによる規定方向Dは、複数の凸部Saのうちの少なくとも2つを結ぶ直線方向に沿う方向であることが好ましい。焼結工程に伴って複数の凸部Sa同士の間隔は小さくなるが、規定方向Dを2つの凸部Saを結ぶ直線方向に沿う方向とすることで、成形体Sに無理な力が加わり歪むことを効果的に抑制することができるためである。
【0055】
上記のように、
図5で表される成形体S及び支持体5、並びに、
図6で表される成形体S及び支持体5は共に、凸部Sa及び溝部Gを2つずつ備え、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致する構成である。しかしながら、このような構成に限定されない。凸部Sa及び溝部Gを3つずつ以上備えていてもよい。また、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない構成であってもよい。さらには、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致する溝部Gと、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない溝部Gと、を共に有する構成であってもよい。以下に、様々な構成の成形体S及び支持体5の例について説明する。ただし、このような構成例に限定されない。
【0056】
図7及び
図8で表される成形体S及び
図8で表される支持体5は、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない構成例である。
図7及び
図8で表されるように直方体である成形体Sの長手方向はX軸方向に沿う方向であるが、
図8で表されるように規定方向Dに対応する溝部Gの延設方向は平面視で直方体である成形体Sの対角線に沿う方向である。
【0057】
図9及び
図10で表される成形体S及び
図10で表される支持体5は、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致する溝部Gと、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない溝部Gと、を共に有する構成例である。
図9及び
図10で表されるように、直方体である成形体Sは凸部Saを4つ有し、このうち2つの凸部Saを挿入可能な溝部GはX軸方向に沿う成形体Sの長手方向に沿って延設され、残りの2つの凸部Saを挿入可能な溝部GはY軸方向に沿う成形体Sの短手方向に沿って延設されている。
【0058】
図11及び
図12で表される成形体Sは、平面視で円形であり凸部Saを4つ有している。また、
図12で表される支持体5は、凸部Saの挿入位置Iから平面視で円形の成形体Sの中心に向かって延設される溝部Gを4つ有している。
図11及び
図12で表される成形体Sは平面視で円形であるため、長手方向及び短手方向という概念で表現できない。このため、
図11及び
図12で表される成形体S及び
図12で表される支持体5は、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない構成例である。
【0059】
図13で表される成形体Sは、平面視で円形であり凸部Saを8つ有している。また、
図13で表される支持体5は、凸部Saの挿入位置Iから平面視で円形の成形体Sの中心に向かって延設される溝部Gを8つ有している。すなわち、
図13で表される成形体S及び
図13で表される支持体5も、
図11及び
図12で表される成形体S及び
図12で表される支持体5と同様、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない構成例である。
【0060】
図14で表される成形体Sは、平面視で正方形のZ軸方向に貫通する孔部を有するとともにZ軸方向に扁平した四角柱状であり、凸部Saを4つ有している。
図14で表される成形体Sは、平面視で正方形であり、長手方向及び短手方向という概念で表現できない。また、
図14で表される支持体5は、凸部Saの挿入位置Iから成形体Sにおける平面視で西方形の孔部の中心に向かって延設される溝部Gを4つ有している。
図14で表される成形体S及び
図14で表される支持体5は、成形体Sの長手方向と溝部Gの延設方向とが一致しない構成例である。
【0061】
図15で表される成形体Sは、X軸方向に沿って延設される部分とY軸方向に沿って延設される部分とを有し、平面視でL字型をしており、凸部Saを4つ有している。そして、X軸方向に沿う方向を長手方向としている。また、
図15で表される支持体5は、X軸方向に沿って延設される溝部Gを2つと、Y軸方向に沿って延設される溝部Gを2つと、を有している。
図15で表される成形体S及び
図15で表される支持体5は、成形体Sの長手方向と延設方向が一致する溝部Gと、成形体Sの長手方向と延設方向が一致しない溝部Gと、を共に有する構成例である。
【0062】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1…三次元造形装置、2…材料供給部、2A…材料供給部、2B…材料供給部、
3…ヘッド、3A…ヘッド、3B…ヘッド、4…紫外線照射部、5…支持体、
6…ローラー、6A…ローラー、6B…ローラー、8…供給ユニット、
9…造形テーブル、9a…造形面、10…テーブルユニット、10a…上面部、
11…ガイドバー、12…制御部、20…外部装置、500…層、
501、502、503、・・・50n…層、D…規定方向、G…溝部、I…挿入位置、
P…造形領域、S…成形体