(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240305BHJP
G03G 15/23 20060101ALI20240305BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G15/23
G03G21/20
(21)【出願番号】P 2019229602
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019023906
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下平 善樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 真登
(72)【発明者】
【氏名】坂本 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 光介
(72)【発明者】
【氏名】小寺 哲郎
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-051277(JP,A)
【文献】特開2011-039148(JP,A)
【文献】特開2000-305385(JP,A)
【文献】特開平10-133506(JP,A)
【文献】特開2008-262069(JP,A)
【文献】国際公開第2005/059658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/23
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される記録媒体にトナー画像を転写する転写部と、
記録媒体の搬送方向において前記転写部の下流側に配置され、記録媒体と接触して記録媒体を加熱し、トナー画像を記録媒体に定着する
第一の加熱部と、
前記
第一の加熱部によって記録媒体の第一面にトナー画像が定着された記録媒体の表裏を反転させて、記録媒体を前記転写部へ送る反転部と、
記録媒体の搬送方向において前記転写部と前記
第一の加熱部との間に配置され、記録媒体を非接触状態で加熱する
第二の加熱部であって、前記反転部によって前記転写部へ送られて第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、前記
第一の加熱部で記録媒体が加熱される前に記録媒体の前記第一面
に定着されたトナーの温度がトナーの軟化点より高くなるように記録媒体を加熱する前記
第二の加熱部と、
前記
第二の加熱部から前記
第一の加熱部までの間で、
前記第二の加熱部が記録媒体を加熱するときに、前記第二面にトナー画像が転写された記録媒体の前記第一面のトナー画像形成領域と、記録媒体以外の部材とを非接触状態とする非接触手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記
第二の加熱部は、前記第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の前記第二面側から記録媒体を加熱する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記録媒体を搬送する搬送部を備え、
前記搬送部は、記録媒体の先端部を保持して、記録媒体を水平方向に沿って搬送し、
前記
第二の加熱部は、搬送される記録媒体の上方に配置されており、
記録媒体を挟んで前記
第二の加熱部の反対側には、記録媒体に空気を吹き付ける吹付け部が、前記非接触手段として備えられている請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
複数サイズの記録媒体にトナー画像を形成することができ、
前記複数サイズの記録媒体のうち、前記搬送方向において最大サイズの記録媒体を用いるときに、前記
第一の加熱部は、前記
第二の加熱部によって一部が加熱されている状態の記録媒体の他部を加熱する請求項1~3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数サイズの記録媒体のうち、前記搬送方向において最小サイズの記録媒体を用いるときに、前記
第一の加熱部は、前記
第二の加熱部によって一部が加熱されている状態の記録媒体の他部を加熱する請求項4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電子写真システムは、複数台の電子写真装置を実質上連結して印刷を行う場合に用いられる印刷速度と、複数台の電子写真装置を独立させて個々の電子写真装置で印刷を行う場合に用いられる印刷速度とを設定するとともに、印刷速度を切り替える印刷速度切替え手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、記録媒体の両面に画像を形成するときは、先ず、第二の加熱部が、第一面にトナー画像が転写された記録媒体を非接触状態で加熱し、第一の加熱部が、記録媒体と接触して、第二の加熱部によって加熱された記録媒体の第一面に画像を定着する。次に、記録媒体の第二面にトナー画像が転写され、第二の加熱部が、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を非接触状態で加熱する。さらに、第一の加熱部が、記録媒体と接触して、第二の加熱部によって加熱された記録媒体の第二面にトナー画像を定着する。
【0005】
ここで、第二の加熱部が、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点以上となり、第一面のトナー画像を構成するトナーが軟らかくなってしまう。そこで、第二の加熱部から第一の加熱部までの間で、記録媒体の第一面の画像形成領域が、記録媒体以外の部材と接触してしまうと、第一面のトナー画像が損傷してしまう。
【0006】
本発明の課題は、第二の加熱部が第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点以上となる構成において、第二の加熱部から第一の加熱部までの間で、記録媒体の第一面の画像形成領域が記録媒体以外の部材と接触する場合と比して、第一面に形成されたトナー画像が損傷するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る画像形成装置は、搬送される記録媒体にトナー画像を転写する転写部と、記録媒体の搬送方向において前記転写部の下流側に配置され、記録媒体と接触して記録媒体を加熱し、トナー画像を記録媒体に定着する第一の加熱部と、前記第一の加熱部によって記録媒体の第一面にトナー画像が定着された記録媒体の表裏を反転させて、記録媒体を前記転写部へ送る反転部と、記録媒体の搬送方向において前記転写部と前記第一の加熱部との間に配置され、記録媒体を非接触状態で加熱する第二の加熱部であって、前記反転部によって前記転写部へ送られて第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、前記第一の加熱部で記録媒体が加熱される前に記録媒体の前記第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるように記録媒体を加熱する前記第二の加熱部と、前記第二の加熱部から前記第一の加熱部までの間で、前記第二面にトナー画像が転写された記録媒体の前記第一面のトナー画像形成領域と、記録媒体以外の部材とを非接触状態とする非接触手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様に係る画像形成装置は、第1態様に記載の画像形成装置において、前記第二の加熱部は、前記第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の前記第二面側から記録媒体を加熱することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3態様に係る画像形成装置は、第2態様に記載の画像形成装置において、記録媒体を搬送する搬送部を備え、前記搬送部は、記録媒体の先端部を保持して、記録媒体を水平方向に沿って搬送し、前記第二の加熱部は、搬送される記録媒体の上方に配置されており、記録媒体を挟んで前記第二の加熱部の反対側には、記録媒体に空気を吹き付ける吹付け部が、前記非接触手段として備えられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4態様に係る画像形成装置は、第1~3態様の何れか1態様に記載の画像形成装置において、複数サイズの記録媒体にトナー画像を形成することができ、前記複数サイズの記録媒体のうち、前記搬送方向において最大サイズの記録媒体を用いるときに、前記第一の加熱部は、前記第二の加熱部によって一部が加熱されている状態の記録媒体の他部を加熱することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5態様に係る画像形成装置は、第4態様に記載の画像形成装置において、前記複数サイズの記録媒体のうち、前記搬送方向において最小サイズの記録媒体を用いるときに、前記第一の加熱部は、前記第二の加熱部によって一部が加熱されている状態の記録媒体の他部を加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様の画像形成装置によれば、第二の加熱部が第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、記録媒体の第一面の温度がトナーの軟化点以上となる構成において、第二の加熱部から第一の加熱部までの間で、記録媒体の第一面の画像形成領域が記録媒体以外の部材と接触する場合と比して、第一面に形成されたトナー画像が損傷するのを抑制することができる。
【0013】
本発明の第2態様の画像形成装置によれば、第二の加熱部が、第二面にトナー画像が転写された記録媒体を加熱するときに、第一面側から記録媒体を加熱する場合と比して、第二面に形成されたトナー画像の光沢度を高くすることができる。
【0014】
本発明の第3態様の画像形成装置によれば、記録媒体が重力によって撓んだ状態で搬送される場合と比して、装置本体内で部材を配置することができる領域を増やすことができる。
【0015】
本発明の第4態様の画像形成装置によれば、記録媒体の両面にトナー画像を形成するときに、第一の加熱部が最大サイズの記録媒体を加熱し始めるときに、第二の加熱部による記録媒体の加熱が終了している場合と比して、第二の加熱部の出力を弱くすることができる。
【0016】
本発明の第5態様の画像形成装置によれば、記録媒体の両面にトナー画像を形成するときに、第一の加熱部が最小サイズの記録媒体を加熱し始めるときに、第二の加熱部による記録媒体の加熱が終了している場合と比して、第二の加熱部の出力を弱くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置を示した構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の本定着部を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置のチェーングリッパを示した斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられたファンを示した平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の本定着部を示した断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた定着装置の本定着部を示した断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る画像形成装置の実施例、比較例に対する評価結果を表で示した図面である。
【
図8】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられた冷却部を示した断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る画像形成装置に備えられたトナー画像形成部を示した構成図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例について
図1~
図10に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0019】
(画像形成装置10)
本実施形態に係る画像形成装置10は、シート部材Pにトナー画像を形成する電子写真式の画像形成装置である。画像形成装置10は、
図10に示されるように、制御部160と、収容部50と、排出部52と、画像形成部12と、搬送機構60と、反転機構80と、定着装置100と、冷却部90とを備えている。
【0020】
〔制御部160〕
制御部160は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびHDD(Hard Disk Drive)(何れも不図示)により構成されている。CPUでは、処理プログラムが実行される。ROMには、各種プログラム、各種テーブル、パラメータ等が記憶されている。RAMは、CPUによる各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。
【0021】
〔収容部50〕
収容部50は、記録媒体としてのシート部材Pを収容する機能を有している。画像形成装置10では、収容部50は、複数(例えば2つ)備えられている。この複数の収容部50から選択的にシート部材Pが送り出される構成とされている。
【0022】
〔排出部52〕
排出部52は、トナー画像が形成されたシート部材Pが排出される部分である。具体的には、定着装置100でトナー画像が定着された後に、冷却部90で冷却されたシート部材Pが排出部52へ排出される構成とされている。
【0023】
〔画像形成部12〕
画像形成部12は、電子写真方式によりシート部材Pにトナー画像を形成する機能を有している。具体的には、画像形成部12は、トナー画像を形成するトナー画像形成部20と、トナー画像形成部20で形成されたトナー画像をシート部材Pに転写する転写装置30と、を備えている。
【0024】
トナー画像形成部20は、色ごとにトナー画像を形成するように複数備えられている。画像形成装置10では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色のトナー画像形成部20が備えられている。
図10に示す(Y)、(M)、(C)、(K)は、上記各色に対応する構成部分を示している。
【0025】
-トナー画像形成部20-
各色のトナー画像形成部20は、用いるトナーを除き基本的に同様に構成されている。具体的には、各色のトナー画像形成部20は、
図9に示されるように、図中矢印A方向に回転する感光体ドラム21(=感光体)と、感光体ドラム21を帯電させる帯電器22とを備えている。さらに、各色のトナー画像形成部20は、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21を露光して感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23と、露光装置23によって感光体ドラム21に形成された静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー画像を形成する現像装置24とを備えている。
【0026】
-転写装置30-
転写装置30は、各色の感光体ドラム21のトナー画像を、中間転写体に重畳して一次転写し、該重畳されたトナー画像をシート部材Pに二次転写する機能を有している。具体的には、転写装置30は、
図10に示されるように、中間転写体としての転写ベルト31と、一次転写ロール33と、転写部35とを備えている。
【0027】
一次転写ロール33は、感光体ドラム21に形成されたトナー画像を、感光体ドラム21と一次転写ロール33との間の一次転写位置T(
図9参照)で転写ベルト31に転写する機能を有している。
【0028】
転写ベルト31は、無端状を成し、複数のロール32に巻き掛けられて姿勢が決められている。転写ベルト31は、複数のロール32の少なくとも1つが回転駆動されることで、矢印B方向へ周回し、一次転写されたトナー画像を二次転写位置NTへ搬送する。
【0029】
転写部35は、転写ベルト31に転写されたトナー画像をシート部材Pに転写する機能を有している。具体的には、転写部35は、二次転写部34と、対向ロール36とを備えている。
【0030】
対向ロール36は、転写ベルト31に対向するように、転写ベルト31の下側に配置されている。二次転写部34は、対向ロール36との間に転写ベルト31が配置されるように、転写ベルト31の内側に配置されている。二次転写部34は、具体的には、コロトロンで構成されている。転写部35では、転写ベルト31に転写されたトナー画像が、二次転写部34の放電により発生された静電力により、二次転写位置NTを通過するシート部材Pに転写される。
【0031】
〔搬送機構60〕
搬送機構60は、収容部50に収容されたシート部材Pを二次転写位置NTへ搬送する機能を有している。さらに、搬送機構60は、二次転写位置NTから後述の本加熱部120(第一の加熱部の一例)へ搬送する機能を有している。搬送機構60については、詳細を後述する。
【0032】
〔反転機構80〕
反転機構80は、シート部材Pの表裏を反転させる機能を有している。反転機構80については詳細を後述する。
【0033】
〔定着装置100〕
定着装置100は、転写装置30によってシート部材Pに転写されたトナー画像をシート部材Pに定着する機能を有している。なお、定着装置100については、詳細を後述する。
【0034】
〔冷却部90〕
冷却部90は、定着装置100で加熱されたシート部材Pを冷却する機能を有している。冷却部90は、
図10に示されるように、シート部材Pの搬送方向において、定着装置100の本加熱部120の下流側に配置されている。また、冷却部90は、装置幅方向に並んでいる2個の冷却ロール92を備えている。2個の冷却ロール92は、同様の構成とされているため、一方の冷却ロール92について説明する。
【0035】
冷却ロール92は、
図8に示されるように、シート部材Pの搬送経路を挟んで上方に配置されたロール92aと、シート部材Pの搬送経路を挟んで下方に配置されたロール92bとを備えている。
【0036】
ロール92a、92bは、装置奥行方向に延びている円柱状とされており、円筒状の基材94a、94bを有している。基材94a、94bは、アルミニウム管であって、図示せぬ送風機構によって生じた空気の流れが、基材94a、94bの内部に生じるようになっている。この空気の流れによって、ロール92a、92bの表面の温度は、この空気の流れが生じない場合の温度と比して低下する。
【0037】
この構成において、ロール92bは、図示せぬ駆動部材から回転力が伝達されて、回転する。さらに、ロール92bに従動してロール92aが回転する。ロール92a、92bは、シート部材Pを挟み込んで搬送し、シート部材Pを冷却する。
【0038】
(画像形成装置の作用)
図10に示す画像形成装置10では、次のようにしてトナー画像が形成される。
【0039】
先ず、電圧が印加された各色の帯電器22(
図9参照)は、各色の感光体ドラム21の表面を予定の電位で一様にマイナス帯電する。続いて、外部から入力された画像データに基づいて露光装置23は、帯電した各色の感光体ドラム21の表面に露光光を照射して静電潜像を形成する。
【0040】
これにより、画像データに対応した静電潜像が夫々の感光体ドラム21の表面に形成される。さらに、各色の現像装置40は、この静電潜像を現像し、トナー画像として可視化する。また、転写装置30は、各色の感光体ドラム21の表面に形成されたトナー画像を、転写ベルト31に転写する。
【0041】
そこで、
図10に示す収容部50から搬送機構60によってシート部材Pの搬送経路へ送り出され、搬送されるシート部材Pは、転写ベルト31と対向ロール36とが接触する二次転写位置NTへ送り出される。二次転写位置NTでは、シート部材Pが転写ベルト31と対向ロール36とに挟み込んで搬送されることで、転写ベルト31の表面のトナー画像は、シート部材Pの第一面(=表面)に転写される。
【0042】
さらに、定着装置100は、シート部材Pの第一面に転写されたトナー画像をシート部材Pに定着し、シート部材Pは、冷却部90へ搬送される。冷却部90は、トナー画像が定着されたシート部材Pを冷却して排出部52へ排出する。
【0043】
一方、シート部材Pの第二面(=裏面)にトナー画像を形成する場合には、搬送機構60によって搬送されることで定着装置100を通過したシート部材Pが、反転機構80へ搬送され、反転機構80によって表裏が反転される。さらに、反転機構80は、表裏が反転したシート部材Pを搬送機構60へ搬送する。搬送機構60は、シート部材Pを搬送する。そして、シート部材Pの第二面にトナー画像を形成するために、前述した工程が再度行われる。
【0044】
(要部構成)
次に、搬送機構60、反転機構80、及び定着装置100について説明する。
【0045】
〔搬送機構60〕
搬送機構60は、
図10に示されるように、送出ロール62と、複数の搬送ロール64と、チェーングリッパ66とを備えている。チェーングリッパ66は、搬送部の一例である。
【0046】
送出ロール62は、収容部50に収容されたシート部材Pを送り出すロールである。複数の搬送ロール64は、送出ロール62が送り出したシート部材Pをチェーングリッパ66へ搬送するロール、又はチェーングリッパ66が搬送したシート部材Pを冷却部90へ搬送するロールである。チェーングリッパ66は、シート部材Pの先端部を保持してシート部材Pを搬送する機能を有している。
【0047】
チェーングリッパ66は、
図3に示されるように、一対のチェーン72と、保持部(=把持部)としてのグリッパ76とを有している。一対のチェーン72は、環状に形成されている。この一対のチェーン72は、装置奥行方向に間隔をおいて配置されている。そして、一対のチェーン72は、対向ロール36(
図10参照)に対する軸方向の一端側及び他端側に配置された一対のスプロケット(図示省略)と、後述の加圧ロール140に対する軸方向の一端側及び他端側に配置された一対のスプロケット71(
図2参照)とに巻き掛けられている。さらに、一対のチェーン72は、一対のスプロケット74(
図10参照)に巻き掛けられている。これらの一対のスプロケットのいずれかが回転することで、チェーン72が矢印C方向へ周回するようになっている。
【0048】
また、一対のチェーン72には、グリッパ76が取り付けられた取付部材75が装置奥行方向に沿って掛け渡されている。取付部材75は、複数設けられ、チェーン72の周方向(周回方向)に沿って予め定められた間隔で一対のチェーン72に固定されている。
【0049】
グリッパ76は、夫々の取付部材75に複数設けられ、装置奥行方向に沿って予め定められた間隔で取付部材75に取り付けられている。グリッパ76は、シート部材Pの先端部を保持する機能を有している。具体的には、グリッパ76は、爪76aを有している。また、取付部材75には、爪76aが接触する接触部75a(
図6参照)が形成されている。
【0050】
グリッパ76は、爪76aと接触部75aとの間にシート部材Pの先端部を挟むことでシート部材Pを保持するようになっている。なお、グリッパ76では、例えば、爪76aが接触部75aに対してバネ等により押し付けられると共に、カム等の作用により爪76aが接触部75aに対して接離される。
【0051】
そして、チェーングリッパ66では、グリッパ76がシート部材Pの先端部を保持した状態で、チェーン72が矢印C方向へ周回することで、シート部材Pが搬送される。チェーングリッパ66は、複数の搬送ロール64で搬送されたシート部材Pを二次転写位置NTへ搬送し、さらに、シート部材Pを後述の予備加熱部102
(第二の加熱部の一例)を通過させた後、後述の本加熱部120へ搬送する。なお、搬送機構60においてシート部材Pが搬送される搬送経路の一部が、
図10の一点鎖線で示されている。
【0052】
この構成において、チェーングリッパ66は、少なくとも、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、水平方向に沿ってシート部材Pを搬送する。つまり、チェーングリッパ66は、少なくとも、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、未定着のトナー画像面が上方を向くようにシート部材Pを搬送する。
【0053】
〔反転機構80〕
反転機構80は、
図10に示されるように、複数の搬送ロール82と、反転装置84と、複数の搬送ロール86とを備えている。反転機構80は、反転部の一例である。
【0054】
複数の搬送ロール82は、定着装置100から送られたシート部材Pを反転装置84へ搬送するロールである。反転装置84は、一例として、シート部材Pの搬送方向が例えば90度ずつ変化するように、シート部材Pを複数回折り返しながら搬送することで、メビウスの帯のようにシート部材Pを捻って、シート部材Pの表裏を反転させる装置である。複数の搬送ロール86は、反転装置84で表裏が反転されたシート部材Pをチェーングリッパ66へ搬送するロールである。
【0055】
この構成において、シート部材Pの第一面(=表面)及び第二面(=裏面)にトナー画像を形成する場合(以下「両面印刷の場合」と記載する)に、反転機構80は、第一面(=表面)にトナー画像が定着したシート部材Pの表裏を反転させる。そして、反転機構80は、チェーングリッパ66を通してシート部材Pを二次転写位置NTへ送る。
【0056】
〔定着装置100〕
定着装置100は、
図1に示されるように、搬送されるシート部材Pと非接触状態でシート部材Pを加熱する予備加熱部102と、シート部材Pと接触してシート部材Pを加熱、加圧する本加熱部120と、吹付けユニット170とを備えている。
【0057】
[予備加熱部102]
予備加熱部102は、
図1に示されるように、シート部材Pの搬送方向において、トナー画像がシート部材Pに転写される二次転写位置NT(
図10参照)に対して下流側で、搬送されるシート部材Pの上方に配置されている。換言すれば、予備加熱部102は、シート部材Pに転写された未定着トナー画像側に配置されている。この予備加熱部102は、反射板104と、複数の赤外線ヒータ106(以下「ヒータ106」と記載する)と、金網112とを備えている。
【0058】
-反射板104-
反射板104は、アルミニウム板を用いて形成されており、搬送されるシート部材P側が開放された底浅の箱状とされている。本実施形態では、上方から見て、反射板104は、搬送されるシート部材Pを装置奥行方向で覆うようになっている。
【0059】
-ヒータ106-
ヒータ106は、外形が円柱状の赤外線ヒータであって、反射板104の内部に複数収容され、装置奥行方向に延びるように配置されている。本実施形態では、上方から見て、ヒータ106は、搬送されるシート部材Pを装置奥行方向で覆うようになっている。また、ヒータ106は、搬送されるシート部材Pから上下方向で30〔mm〕離れている。
【0060】
さらに、複数のヒータ106は、装置幅方向に並べられている。本実施形態では、上方から見て、複数のヒータ106が配置されている領域は、搬送されるシート部材Pを装置幅方向で覆うようになっている。換言すれば、複数のヒータ106によって、搬送されるシート部材Pの全体が、一度に加熱されるようになっている。
【0061】
以上の構成において、ヒータ106からは、3〔μm〕以上5〔μm〕以下の波長で分光放射輝度が最大となる赤外線が放射され、ヒータ106の表面温度は、300〔℃〕以上1175〔℃〕以下の予め定められた温度となる。
【0062】
-金網112-
金網112は、反射板104の縁部に図示せぬ固定部材で固定されており、反射板104の内部と、反射板110の外部とを仕切っている。これにより、金網112は、搬送されるシート部材Pと、ヒータ106とが接触するのを防止している。
【0063】
この構成において、予備加熱部102は、未定着のトナー画像側から、非接触状態でシート部材Pを加熱する。つまり、予備加熱部102は、未定着のトナーを軟らかくする軟化手段として機能している。
【0064】
そして、第一面(=表面)だけにトナー画像を形成される場合(以下「片面印刷の場合」と記載することがある)に、予備加熱部102は、上方を向いた第一面側から非接触状態でシート部材Pを加熱する。具体的には、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。換言すれば、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高い状態が維持されるようにシート部材Pを加熱する。
【0065】
さらに、両面印刷の場合に、第二面(=裏面)に形成されたトナー画像を加熱するときに、予備加熱部102は、上方を向いた第二面側から非接触状態でシート部材Pを加熱する。具体的には、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第二面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。さらに、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。換言すれば、予備加熱部102は、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高い状態が維持されるようにシート部材Pを加熱する。本実施形態では、一例として、予め試験によって、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなる予備加熱部102の出力条件を紙種又は紙のサイズごとに求めておき、制御部160に予備加熱部102の出力テーブルを記憶させておく。そして、ユーザが入力したシート部材Pの紙種又はサイズの情報に基づき、制御部160が、予備加熱部102の出力を調整する。これにより、予備加熱部102が、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。なお、シート部材Pの第二面に形成されたトナー画像を加熱する前に、第一面の温度を温度センサで測定し、測定結果をもとに制御部160が予備加熱部102の出力を調整することで、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱してもよい。
【0066】
つまり、予備加熱部102が、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱することで、未定着トナー画像が形成された第二面の温度がトナーの軟化点より確実に高くなる。
【0067】
このように、予備加熱部102は、既にシート部材Pに定着した第一面のトナー画像を構成するトナーを軟らかくする他の軟化手段として機能している。
【0068】
ここで、「本加熱部120でシート部材Pが加熱される前のシート部材Pの第一面又は第二面の温度」とは、
図5に示す本加熱部120のニップ部Nの搬送方向上流端から搬送方向の上流側へ100〔mm〕(
図5に示すL01)離れた位置S01でのシート部材Pの第一面又は第二面の温度である。
【0069】
つまり、両面印刷の場合に、予備加熱部102が、第二面に対向して第二面に転写されたトナー画像を加熱するときに、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。具体的には、第二面に転写されたトナー画像の画像密度、色に係わらず、位置S01における第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるように、予備加熱部102の出力が調整されている。
【0070】
本実施形態では、一例として、ユーザが入力したシート部材Pの紙種、サイズ、及び画像分布等から、予備加熱部102の出力が調整されることで、両面印刷の場合に、予備加熱部102は、シート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱するようになっている。
【0071】
ここで、「トナーの軟化点(=トナーのガラス転移温度)」とは、フローテスター(島津製作所社製、CFT500)を用い、ダイス細孔径0.5〔mm〕、加圧加重0.98〔MPa〕、昇温速度1〔℃/min〕の条件で測定した1/2降下速度である。なお、1/2降下速度とは、トナーサンプルを溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度である。なお、本実施形態では、一例として、軟化点が75〔℃〕のトナーが用いられている。
【0072】
[吹付けユニット170]
吹付けユニット170は、
図1に示されるように、上下方向で予備加熱部102と対向するように配置されており、搬送されるシート部材Pは、吹付けユニット170と予備加熱部102との間を通過するようになっている。そして、吹付けユニット170は、
図4に示されるように、装置幅方向、及び装置奥行方向に並べられている複数のファン172を備えている。ファン172は、吹付け部の一例である。
【0073】
この構成において、複数のファン172が予備加熱部102との間を通過するシート部材Pに向けて空気を吹き付けることで、先端部が保持されて搬送されるシート部材Pの搬送姿勢が安定する。具体的には、複数のファン172がシート部材Pに向けて空気を吹き付けることで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pの搬送姿勢が安定する。このように、ファン172は、シート部材Pの搬送姿勢を安定させる姿勢安定手段として機能している。
【0074】
ここで、「シート部材Pの搬送姿勢が安定する」とは、姿勢安定手段が備えられていない場合と比して、重力によって撓んだ状態となる虞のあるシート部材Pのシート面後端部から予備加熱部102までの上下方向の距離が短くなることを意味する。更に、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの距離が、予備加熱部102からグリッパ76までの距離に対して長いことが好ましい。また、シート面の位置によってばらつくのを抑制させることが好ましい。換言すれば、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの距離が、予備加熱部102からグリッパ76までの距離に対して長いことが好ましく、また、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの最も長い距離と、最も短い距離との差を小さくさせることが好ましい。ここで、ファン172の出力を調整してもよい。本実施形態では、一例として、ファン172の出力条件を紙種又はサイズごとに求めておき、制御部160にファン172の出力テーブルを記憶させておく。そして、ユーザが入力した紙種又はサイズの情報をもとに制御部160がファン172の出力を調整する。例えば、ユーザが入力した紙厚が所定値よりも厚かったり、所定値よりも大きいサイズであれば、ファンの出力を高めるようにする。なお、シート部材Pのシート面から予備加熱部102までの距離を光学センサで測定し、測定結果をもとに制御部160がファン172の出力を調整してもよい。
【0075】
また、ファン172がシート部材Pに空気を吹き付けることで、シート部材Pに空気を吹き付けない場合と比して、シート部材Pの後端が搬送経路から離れるのが抑制される。このように、ファン172は、シート部材Pの後端の位置を規制する位置規制手段として機能している。
【0076】
また、ファン172がシート部材Pの後端の位置を規制することで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pにおいて下方を向いた面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とが非接触状態となる。このように、ファン172は、シート部材Pにおいて下方を向いた面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態とする非接触手段として機能している。
【0077】
ここで、「予備加熱部102から本加熱部120までの間」とは、トナーが軟らかくなった状態のトナー画像が、シート部材P以外の部材との接触による損傷を抑制する観点から、シート部材Pの搬送方向おいて予備加熱部102の中央部から、後述する本加熱部120のニップ部Nまで間(=
図1のH01)であればよく、シート部材Pの搬送方向おいて予備加熱部102の上流端から、後述する本加熱部120のニップ部Nまでの間(=
図1の範囲H02)であればさらに好ましい。
【0078】
また、「画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態とする」とは、シート部材Pの画像形成領域が如何なる部材とも接触しない状態である。
【0079】
また、「画像形成領域」とは、シート部材Pの外周部等の画像が形成されない部分以外の部分を指し、全面ベタ画像をシート部材Pに形成したときに、画像が形成される領域である。なお、本実施形態では、シート部材Pにおいて、グリッパ76によって把持されている先端部以外の部分が全て、シート部材P以外の部材と非接触状態となっている。
【0080】
[本加熱部120]
本加熱部120は、
図1に示されるように、シート部材Pの搬送方向において、予備加熱部102の下流側に配置されている。本加熱部120は、搬送されるシート部材Pと接触してシート部材Pを加熱する加熱ロール130と、加熱ロール130に向けてシート部材Pを加圧する加圧ロール140と、回転する加熱ロール130に従動して回転する従動ロール150とを備えている。
【0081】
-加熱ロール130-
加熱ロール130は、
図1に示されるように、搬送されるシート部材Pの上方を向いた面に接触し、軸方向を装置奥行方向として装置奥行方向に延びるように配置されている。また、加熱ロール130は、円筒状の基材132と、基材132の全周を覆うように形成されたゴム層134と、ゴム層134の全周を覆うように形成された離型層136と、基材132の内部に収容されたヒータ138とを有している。加熱ロール130における離型層136の外周面の外径は、一例として80〔mm〕とされている。
【0082】
基材132は、アルミニウム管であって、一例として厚さ20〔mm〕とされている。また、ゴム層134は、シリコーンゴムによって形成されており、一例として厚さ6〔mm〕とされている。さらに、離型層136は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロエチレンの共重合体(PFA樹脂)によって形成されており、一例として厚さ50〔μm〕とされている。
【0083】
また、
図2に示されるように、装置奥行方向において加熱ロール130の両端部には、装置奥行方向に延びる軸部139aが夫々形成されており、そして、軸部139aを夫々支持する支持部材139bが設けられている。これにより、加熱ロール130は、加熱ロール130の両端部で支持部材139bによって回転可能に支持されている。
【0084】
-従動ロール150-
従動ロール150は、
図1、
図2に示されるように、加熱ロール130を挟んで搬送されるシート部材Pの反対側で、軸方向を装置奥行方向として装置奥行方向に延びるように配置されている。また、従動ロール150は、円筒状の基材152と、基材152の内部に収容されたヒータ154とを有している。従動ロール150の基材152の外周面の外径は、一例として50〔mm〕とされている。
【0085】
基材152は、アルミニウム管であって、一例として厚さ10〔mm〕とされている。そして、従動ロール150は、従動ロール150の両端部で図示せぬ支持部材によって回転可能に支持されている。
【0086】
この構成において、従動ロール150は、加熱ロール130に従動して回転する。そして、従動ロール150は、加熱ロール130を加熱する。このように、加熱ロール130が従動ロール150によって加熱されること、及び加熱ロール130自身がヒータ138を有していることで、加熱ロール130の表面温度は、180〔℃〕以上200〔℃〕以下の予め定められた温度となる。
【0087】
-加圧ロール140-
加圧ロール140は、
図1、
図2に示されるように、搬送されるシート部材Pを挟んで加熱ロール130の反対側で、搬送されるシート部材Pの下方を向いた面に接触し、軸方向を装置奥行方向として装置奥行方向に延びるように配置されている。また、加圧ロール140は、円筒状の基材142と、基材142を覆うように形成されたゴム層144と、ゴム層144を覆うように形成された離型層146と、装置奥行方向の両端部に形成された一対の軸部148(
図2参照)とを有している。加圧ロール140における離型層146の外周面の外径は、一例として225〔mm〕とされている。このように、加圧ロール140の外径は、加熱ロールの外径と比して大きくされている。
【0088】
基材142は、アルミニウム管であって、一例として厚さ20〔mm〕とされている。また、ゴム層144は、シリコーンゴムによって形成されており、一例として厚さ1〔mm〕とされている。さらに、離型層146は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロエチレンの共重合体(PFA樹脂)によって形成されており、一例として厚さ50〔μm〕とされている。
【0089】
また、加圧ロール140の外周面には、装置奥行方向に延びる凹部140aが形成されている。そして、加圧ロール140と加熱ロール130との間をシート部材Pが通過する場合に、シート部材Pの先端部を把持するグリッパ76が、
図6に示されるように、この凹部140aに収容されるようになっている。
【0090】
そして、予備加熱部102から本加熱部120までの距離(
図1のL02)は、シート部材Pの搬送方向において最小サイズのシート部材Pを用いるときに、本加熱部120がシート部材Pの先端を加熱している状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102によって加熱されるように決められている。換言すれば、シート部材Pの先端が本加熱部120のニップ部Nで挟まれた状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102と上下方向で対向するようになっている。なお、最小サイズについては、画像形成装置10の取扱い説明書に記載されている。シート部材Pの先端は、シート部材Pの一部の一例であって、シート部材Pの後端は、シート部材Pの他部の一例である。
【0091】
また、一対の軸部148は、
図2に示されるように、加圧ロール140の装置奥行方向の両端部に形成されており、加圧ロール140における離型層146の外周面と比して小径化され、軸方向に延びている。
【0092】
この構成において、加圧ロール140は、図示せぬ駆動部材から回転力が伝達されて回転する。そして、回転する加圧ロール140に従動して加熱ロール130が回転し、回転する加熱ロール130に従動して従動ロール150が回転する。さらに、加熱ロール130と加圧ロール140とが、トナー画像が転写されたシート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像がシート部材Pに定着される。
【0093】
-その他-
本加熱部120は、
図2に示されるように、加圧ロール140を支持する支持部材156と、支持部材156を介して加圧ロール140を加熱ロール130側に付勢する付勢部材158とを備えている。
【0094】
支持部材156は、一対設けられている。そして、一対の支持部材156は、加圧ロール140の一対の軸部148を下方から回転可能に支持するように夫々配置されている。
【0095】
付勢部材158は、圧縮スプリングであって、一対設けられており、支持部材156を挟んで軸部148の反対側に配置されている。
【0096】
この構成において、一対の付勢部材158が、加圧ロール140を加熱ロール130側に付勢することで、加圧ロール140が、シート部材Pを加熱ロール130に向けて加圧する。そして、
図2に示されるように、加圧ロール140によって付勢された部分の加熱ロール130が変形し、加熱ロール130と加圧ロール140とが接触した領域であるニップ部Nが形成される。
【0097】
そして、加熱ロール130と加圧ロール140とのニップ部Nで、シート部材Pが挟み込まれることで、軟らかくされたトナーで形成されているトナー画像の表面の平滑度が高うなり、トナー画像の光沢度が高くなる。このように、本加熱部120は、トナー画像の光沢度を高くする光沢度向上手段として機能している。
【0098】
(要部構成の作用)
次に、画像形成装置10の作用について説明する。
【0099】
図10に示す画像形成装置10では、送出ロール62が、収容部50に収容されたシート部材Pをシート部材Pの搬送経路へ送り出す。さらに、複数の搬送ロール64が、送出ロール62によって送り出されたシート部材Pをチェーングリッパ66へ搬送する。
【0100】
さらに、チェーングリッパ66が、
図3に示されるように、シート部材Pの先端部を保持してシート部材Pを搬送し、シート部材Pを二次転写位置NTへ搬送する。
図10に示す二次転写位置NTでは、転写ベルト31及び対向ロール36が、シート部材Pを挟み込んで搬送する。これにより、転写ベルト31の表面のトナー画像が、シート部材Pにおいて上方を向いた第一面(=表面)に転写される。
【0101】
さらに、チェーングリッパ66は、シート部材Pを水平方向に沿って搬送する。そして、
図1に示す予備加熱部102は、チェーングリッパ66によって搬送されるシート部材Pの第一面側(=未定着のトナー画像側)から非接触状態でシート部材Pを加熱する。予備加熱部102がシート部材Pを加熱するときには、ファン172が、シート部材Pの第二面(=裏面)に向かって空気を吹き付ける。これにより、予備加熱部102によって加熱されている状態のシート部材Pの搬送姿勢が安定する。
【0102】
さらに、本加熱部120が、加熱ロール130と加圧ロール140とによってシート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像をシート部材Pの第一面に定着させる。
【0103】
片面印刷の場合は、冷却部90が、本加熱部120からシート部材Pを受け取って、第一面にトナー画像が定着したシート部材Pを冷却して排出部52へ排出する。
【0104】
一方、両面印刷の場合は、
図10に示す反転機構80は、本加熱部120から第一面にトナー画像が定着したシート部材Pを受け取って、シート部材Pの表裏を反転させる。さらに、チェーングリッパ66が、表裏が反転されたシート部材Pを反転機構80から受け取って搬送する。
【0105】
チェーングリッパ66が、第二面が上方を向いた状態のシート部材Pの先端部を保持して搬送し、シート部材Pを再度二次転写位置NTへ搬送する。二次転写位置NTでは、転写ベルト31及び対向ロール36が、シート部材Pを挟み込んで搬送する。これにより、転写ベルト31の表面のトナー画像が、シート部材Pの第二面(=裏面)に転写される。
【0106】
さらに、チェーングリッパ66は、トナー画像が転写された第二面が上方、トナー画像が定着した第一面が下方を向いた状態のシート部材Pを搬送する。また、
図1に示す予備加熱部102は、チェーングリッパ66によって搬送されるシート部材Pの第二面側から非接触状態でシート部材Pを加熱する。予備加熱部102がシート部材Pを加熱するときには、吹付けユニット170のファン172が、シート部材Pの第一面(=下方を向いた面)に向かって空気を吹き付ける。予備加熱部102によって加熱されている状態のシート部材Pの姿勢が安定する。
【0107】
これにより、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pの第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とが非接触状態で、シート部材Pが搬送される。
【0108】
さらに、予備加熱部102が、第二面に転写されたトナー画像を加熱するときに、位置S01(
図5参照)での第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。
【0109】
そして、本加熱部120が、加熱ロール130と加圧ロール140とによって、シート部材Pを挟み込んで搬送することで、トナー画像をシート部材Pの第二面に定着させる。ここで、加熱ロール130と加圧ロール140とによってシート部材Pの先端が挟み込まれている状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102によって加熱されている。換言すれば、予備加熱部102によるシート部材の加熱が終了する前に、本加熱部120がシート部材Pを加熱し始める。
【0110】
また、前述したように、予備加熱部102が、第二面に転写されたトナー画像を加熱するときに、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点より高くなるようにシート部材Pを加熱する。つまり、本加熱部120の加熱ロール130と加圧ロール140とによって、シート部材Pが挟み込まれる前に、第一面の温度がトナーの軟化点より高くなっている。
【0111】
このため、第一面の温度がトナーの軟化点以下の場合と比して、加熱ロール130と加圧ロール140とによって挟み込まれることで、第一面のトナー画像の平滑度が高くなる。換言すれば、第一面の温度がトナーの軟化点以下の場合と比して、加熱ロール130と加圧ロール140とによって挟み込まれることで、第一面のトナー画像の光沢度が高くなる。
【0112】
また、冷却部90は、両面にトナー画像が定着したシート部材Pを本加熱部120から受け取り、シート部材Pを冷却して排出部52へ排出する。
【0113】
ここで、両面印刷の場合において、位置S01での第一面の温度と、トナー画像の光沢度との関係について評価したため、この評価について説明する。この評価には、軟化点の温度が75〔℃〕のトナーを用い、黒ベタ画像をシート部材Pの第一面に形成させた。
図7には、評価結果が示されている。位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点より低い、比較例1、2については、光沢度(=グロス)が、45となった。これに対して、位置S01での第一面の温度がトナーの軟化点より高い、実施例1については、光沢度が57となり、実施例2については、光沢度が65となった。つまり、実施例1、2の光沢度は、比較例1、2の光沢度と比して高くなった。
【0114】
このように、両面印刷の場合に、トナー画像がシート部材Pに定着した第一面の位置S01での温度をトナーの軟化点より高くすることで、第一面に形成されたトナー画像の光沢度が高くなる。
【0115】
なお、光沢度は、グロス測定機(BYK-Gardner社製のAG-4430)を用いて評価した。具体的には、このグロス測定機を用いて、鏡面光沢度の測定方法(JIS Z 8741)における入射角60度で測定し、この測定値を光沢度とした。
【0116】
(まとめ)
以上説明したように、両面印刷の場合に、トナー画像がシート部材Pに定着した第一面の位置S01での温度が、トナーの軟化点より高くなる。つまり、第一面のトナー画像を形成するトナーが軟らかくなり、シート部材P以外の部材と接触するとトナー画像が損傷してしまう。しかし、シート部材Pの下方からファン172がシート部材Pに向けて空気を吹き付けることで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pの第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とが非接触状態で、シート部材Pが搬送される。
【0117】
このため、本加熱部120でシート部材Pが加熱される前にシート部材Pの第一面の温度がトナーの軟化点より高くなる構成において、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pの第一面の画像形成領域がシート部材P以外の部材と接触する場合と比して、第一面に形成されたトナー画像の損傷が抑制される。
【0118】
また、画像形成装置10では、予備加熱部102が第二面にトナー画像が転写されたシート部材Pを加熱するときに、予備加熱部102は、第二面側からシート部材Pを加熱する。これにより、未定着トナー画像が転写された第二面の温度が、第一面に対して高くなる。つまり、未定着トナー画像が転写された第二面の温度が、トナーの軟化点より高くなる。このため、予備加熱部が第一面側からシート部材Pを加熱する場合と比して、第二面に転写されたトナー画像を構成するトナーが軟らかくなり、第二面に形成されたトナー画像の光沢度が高くなる。
【0119】
また、画像形成装置10では、シート部材Pの下方からファン172がシート部材Pに向けて空気を吹き付けることで、先端部が保持されて搬送されるシート部材Pの搬送姿勢が安定する。具体的には、ファン172がシート部材Pに空気を吹き付けることで、シート部材Pが重力によって撓んだ状態で搬送される場合と比して、シート部材Pの後端が搬送経路から離れるのが抑制される。このように、シート部材Pの後端が搬送経路から離れるのが抑制されことで、シート部材Pが重力によって撓んだ状態で搬送される場合と比して、シート部材Pの後端部の温度がシート部材Pの先端部の温度より低下することが抑制される。
【0120】
また、画像形成装置10では、最小サイズのシート部材Pの先端が本加熱部120のニップ部Nで挟まれた状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102と上下方向で対向している。つまり、本加熱部120がシート部材Pを加熱し始めるときに、シート部材Pは、予備加熱部102によって加熱されている。このため、本加熱部120がシート部材Pを加熱し始めるときに、予備加熱部102によるシート部材Pの加熱が終了している場合と比して、予備加熱部102の出力が弱くなる。
【0121】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、ファン172を用いてシート部材Pの搬送姿勢を安定させることで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態としたが、例えば、チェーングリッパ66によって搬送されるシート部材Pの搬送姿勢を考慮して、シート部材P以外の部材の配置を決めることで、シート部材Pの第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態としてもよい。この場合には、第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態とする非接触手段は、シート部材Pが通過する領域にシート部材P以外の部材が配置されていない空間を有する装置本体となる。
【0122】
また、上記実施形態では、ファン172を用いてシート部材Pの搬送姿勢を安定させることで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pの第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態としたが、シート部材Pの後端を保持することで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態としてもよい。この場合には、第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態とする非接触手段は、シート部材Pの後端を保持する保持部となる。
【0123】
また、上記実施形態では、ファン172を用いてシート部材Pの搬送姿勢を安定させることで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート部材Pの第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態としたが、シート部材Pの幅方向両端を保持することで、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態としてもよい。この場合には、第一面の画像形成領域とシート部材P以外の部材とを非接触状態とする非接触手段は、シート部材Pの幅方向両端を保持する保持部材となる。
【0124】
また、上記実施形態では、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、ファン172によって、シート面が上下方向を向いた状態でシート部材Pが搬送されたが、予備加熱部102から本加熱部120までの間で、シート面が装置幅方向を向いた状態でシート部材Pを下方から上方へ搬送してもよい。この場合には、ファン172を用いることなく、シート部材Pの搬送姿勢が安定する。
【0125】
上記実施形態では、シート部材Pの搬送方向において最小サイズのシート部材Pの先端が本加熱部120のニップ部Nで挟まれた状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102と上下方向で対向していたが、シート部材Pの搬送方向において最大サイズのシート部材Pの先端が本加熱部120のニップ部Nで挟まれた状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102と上下方向で対向していてもよい。しかし、この場合には、最小サイズのシート部材Pの先端が本加熱部120のニップ部Nで挟まれた状態で、シート部材Pの後端が予備加熱部102と上下方向で対向することで奏する作用は奏しない。
【0126】
上記実施形態では、「シート部材Pの第一面の温度」と記載したが、第一面にトナー画像が形成されている場合には、「シート部材Pの第一面の温度」は、「シート部材Pの第一面に形成されているトナー画像の温度」と同義である。同様に、上記実施形態では、「シート部材Pの第二面の温度」と記載したが、第二面にトナー画像が形成されている場合には、「シート部材Pの第二面の温度」は、「シート部材Pの第二面に形成されているトナー画像の温度」と同義である。
【0127】
上記実施形態では、チェーングリッパ66は、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、略水平方向にシート部材Pを搬送していたが、チェーングリッパ66は、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、少なくとも水平方向に沿ってシート部材Pを搬送し、未定着のトナー画像面が上方を向くようになっていればよい。例えば、チェーングリッパ66は、二次転写位置NTから本加熱部120までの間は、シート部材Pを水平方向に対して傾けて搬送していてもよい。この場合は、シート部材Pの先端が、後端よりも上下方向において下側となるよりも、上側となるよう傾けてシート部材Pを搬送した方が、シート部材Pの後端が上下方向において下側に垂れることによってシート部材Pの姿勢が変化するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0128】
10 画像形成装置
35 転写部
66 チェーングリッパ(搬送部の一例)
80 反転機構(反転部の一例)
102 予備加熱部(第二の加熱部の一例)
120 本加熱部(第一の加熱部の一例)
172 ファン(非接触手段の一例)