IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7447479画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム
<>
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図1
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図2
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図3
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図4
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図5
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図6
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図7
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図8
  • 特許-画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像形成装置、寿命予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G03G21/00 512
G03G21/00 312
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019231097
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099422
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 圭
(72)【発明者】
【氏名】木村 丈信
(72)【発明者】
【氏名】桜井 翔太
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-029408(JP,A)
【文献】特開2016-075777(JP,A)
【文献】特開2015-004970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/04
21/10-21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構と、
用紙又は中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る読取部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第1残寿命を算出する第1算出部と、
前記読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出する第2算出部と、
前記第1算出部により算出された第1残寿命と前記第2算出部により算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて前記潤滑剤塗布機構の残寿命を予測する予測部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤の枯渇状態を推定し、当該推定された枯渇状態に基づいて前記画像スジ判定の実行頻度を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、ネットワークを介して収集される前記潤滑剤塗布機構の交換実績に基づいて算出された枯渇発生確率密度分布を用いて、前記潤滑剤の枯渇状態を推定することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記枯渇発生確率密度分布を用いて、前記潤滑剤の枯渇発生に係る確率密度関数をF(x)、現時点の前記潤滑剤塗布機構の摺動距離をLとしたとき、下記式(1)を用いて現時点からΔL後までの枯渇発生確率を算出し、当該算出された枯渇発生確率に基づいて前記潤滑剤の枯渇状態を推定することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【数1】
【請求項5】
前記読取部は、前記用紙又は前記中間転写ベルト上に形成された所定濃度の諧調パターンを読み取り、
前記第2算出部は、前記読取部により読み取られた所定濃度の諧調パターンの濃度又は輝度の主走査方向分布に基づいて、前記画像スジ判定を実行することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2算出部は、前記画像スジ判定履歴情報の回帰分析により前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2算出部は、前記画像スジ判定履歴情報の時系列分析により前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構と、用紙又は中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る読取部と、を備える画像形成装置における前記潤滑剤塗布機構の残寿命予測方法であって、
前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第1残寿命を算出する第1算出工程と、
前記読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出する第2算出工程と、
前記第1算出工程で算出された第1残寿命と前記第2算出工程で算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて前記潤滑剤塗布機構の残寿命を予測する予測工程と、
を含む寿命予測方法。
【請求項9】
像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構と、用紙又は中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る読取部と、を備える画像形成装置のコンピュータを、
前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第1残寿命を算出する第1算出部、
前記読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出する第2算出部、
前記第1算出部により算出された第1残寿命と前記第2算出部により算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて前記潤滑剤塗布機構の残寿命を予測する予測部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、寿命予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体ドラム上に形成された静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を用紙に転写し、転写されたトナー像を加熱定着することで、用紙上に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
感光体ドラムに潤滑剤を塗布する機構を備えた感光体ドラムユニットにおいては、潤滑剤を使い切り枯渇した時点がユニットの寿命となる。例えば、抵抗検知等で潤滑剤の残量を直接検知することができれば、ユニットの寿命判断を行うことができるが、クリーニングユニット内にはトナーや潤滑剤の削り粉等が堆積しているため、潤滑剤の残量を直接検知することは困難である。
【0004】
そこで、回転体(感光体ドラム)の表面に固形潤滑剤を塗布する潤滑剤ローラー(潤滑剤塗布機構)の回転数又は回転速度を検出し、検出した回転数又は回転速度に基づいて、潤滑剤残量を判定する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-107591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の構成は、潤滑剤塗布機構の使用履歴(摺動距離)から潤滑剤の残量を推定することが可能であるが、外乱(印刷カバレッジ、温湿度)や内乱(潤滑剤の硬さ、密度)の影響により、潤滑剤の消費速度がばらつくため、推定精度が低いという課題がある。
【0007】
本発明は、過剰なユニット交換や交換遅れによる画像不良の発生を抑制することが可能な画像形成装置、寿命予測方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
画像形成装置において、
像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構と、
用紙又は中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る読取部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第1残寿命を算出する第1算出部と、
前記読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出する第2算出部と、
前記第1算出部により算出された第1残寿命と前記第2算出部により算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて前記潤滑剤塗布機構の残寿命を予測する予測部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤の枯渇状態を推定し、当該推定された枯渇状態に基づいて前記画像スジ判定の実行頻度を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、ネットワークを介して収集される前記潤滑剤塗布機構の交換実績に基づいて算出された枯渇発生確率密度分布を用いて、前記潤滑剤の枯渇状態を推定することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記枯渇発生確率密度分布を用いて、前記潤滑剤の枯渇発生に係る確率密度関数をF(x)、現時点の前記潤滑剤塗布機構の摺動距離をLとしたとき、下記式(1)を用いて現時点からΔL後までの枯渇発生確率を算出し、当該算出された枯渇発生確率に基づいて前記潤滑剤の枯渇状態を推定することを特徴とする。
【数2】
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記読取部は、前記用紙又は前記中間転写ベルト上に形成された所定濃度の諧調パターンを読み取り、
前記第2算出部は、前記読取部により読み取られた所定濃度の諧調パターンの濃度又は輝度の主走査方向分布に基づいて、前記画像スジ判定を実行することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記第2算出部は、前記画像スジ判定履歴情報の回帰分析により前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記第2算出部は、前記画像スジ判定履歴情報の時系列分析により前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、
像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構と、用紙又は中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る読取部と、を備える画像形成装置における前記潤滑剤塗布機構の残寿命予測方法であって、
前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第1残寿命を算出する第1算出工程と、
前記読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出する第2算出工程と、
前記第1算出工程で算出された第1残寿命と前記第2算出工程で算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて前記潤滑剤塗布機構の残寿命を予測する予測工程と、
を含む。
【0016】
請求項9に記載の発明は、
像担持体上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構と、用紙又は中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る読取部と、を備える画像形成装置のコンピュータを、
前記潤滑剤塗布機構の使用履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第1残寿命を算出する第1算出部、
前記読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて前記潤滑剤塗布機構の第2残寿命を算出する第2算出部、
前記第1算出部により算出された第1残寿命と前記第2算出部により算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて前記潤滑剤塗布機構の残寿命を予測する予測部、
として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過剰なユニット交換や交換遅れによる画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置の制御構造を示す機能ブロック図である。
図3】クリーニング部の構成を示す図である。
図4】枯渇発生の確率密度分布データの一例を示す図である。
図5】読み取り画像の主走査方向の濃度プロファイルデータの一例を示す図である。
図6】過去の所定期間のスジ検知レベルの推移を直線近似した一例を示す図である。
図7】枯渇発生の確率密度分布データを用いて枯渇状態を推定する方法の一例を示す図である。
図8】ある寿命比に到達したときの枯渇発生確率の一例を示す図である。
図9】寿命比と画像スジ判定の実行頻度との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る画像形成装置1は、原稿から読み取った画像データを用紙に画像形成して出力したり、PC等の外部装置(図示省略)からLANを介して受信した画像データに基づいて用紙に画像形成して出力したりする複合機である。
【0021】
画像形成装置1は、図1及び図2に示すように、本体部10と、本体部10の後段に接続されたオプション部20と、を備えて構成されている。
【0022】
本体部10は、図1及び図2に示すように、制御部11と、原稿読取部12と、画像形成部13と、記憶部14と、操作部15と、表示部16と、通信部17と、を備えて構成されている。
【0023】
制御部11は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。CPUは、操作部15から入力される操作信号又は通信部17により受信される指示信号に応じて、ROMに記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、RAMに展開した各種プログラムとの協働により、画像形成装置1の動作を統括的に制御する。
【0024】
原稿読取部12は、原稿台又は自動原稿搬送部(ADF:Auto Document Feeder)に載置された原稿の画像を走査露光装置の光学系により走査露光し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取り、これにより、画像信号を得る。この画像信号は、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理が施された後、画像データとして制御部11に入力される。なお、制御部11に入力される画像データとしては、原稿読取部12で読み取ったものに限らず、例えば、通信部17を介して外部装置(図示省略)から受信したものであってもよい。
【0025】
画像形成部13は、画像処理された原画像の各画素の4色の画素値に応じて、C、M、Y及びKの4色からなる画像を用紙上に形成する。
画像形成部13は、4つの書込部131、中間転写ベルト132、2次転写ローラー133、定着部134等を備えて構成されている。
【0026】
4つの書込部131は、中間転写ベルト132のベルト面に沿って直列(タンデム)に配置され、C、M、Y及びKの各色の画像を形成する。各書込部131は、形成する画像の色が異なるだけで構成は同じであり、光走査部131a、感光体(像担持体)131b、現像部131c、帯電部131d、クリーニング部131e及び1次転写ローラー131fを備えて構成されている。
【0027】
画像形成時、各書込部131では、帯電部131dにより感光体131bを帯電させた後、原画像に基づいて光走査部131aにより出射した光束で感光体131b上を走査し、静電潜像を形成する。現像部131cによりトナー等の色材を供給して現像すると、感光体131b上に画像が形成される。
4つの書込部131の感光体131b上にそれぞれ形成した画像を、それぞれの1次転写ローラー131fにより、中間転写ベルト132上に順次重ねて転写(1次転写)する。これにより、中間転写ベルト132上には各色からなる画像が形成される。中間転写ベルト132は、複数のローラーに巻き回されて回動する。1次転写後、クリーニング部131eにより感光体131b上に残留する色材を除去する。
【0028】
図3に、クリーニング部131eの構成を示す。
クリーニング部131eは、弾性体(例えばポリウレタンゴム)からなる平板状のクリーニングブレード1311を感光体131bに当接させるブレードクリーニング方式を採用し、一次転写後の感光体131b上に残留する残留トナーや紙紛等の残留物を除去する。
また、クリーニング部131eは、ブラシローラー1322aと、潤滑剤棒1322bと、からなる潤滑剤塗布機構1322を備えて構成されている。
潤滑剤塗布機構1322は、クリーニングブレード1311よりも感光体131bの回転方向上流側に設置され、潤滑剤棒1322bから削り取った潤滑剤を感光体131b上に塗布するとともに、1次転写ローラー131fによる転写後に感光体131b上に残留する残留物を回収する。
【0029】
ブラシローラー1322aは、潤滑剤棒1322b及び感光体131bの双方と当接するように設置されたロール状のブラシ部材であり、潤滑剤棒1322bから削り取った滑剤粉を感光体131bまで搬送し、感光体131bに滑剤粉を供給する。また、ブラシローラー1322aは、1次転写ローラー131fによる転写後に感光体131b上に残留する残留物を回収する。なお、ブラシローラー1322aは、滑剤粉を感光体131bに供給する際、感光体131bとの当接圧により滑剤粉を感光体131b上に延展塗布する役割も担っている。
【0030】
潤滑剤棒1322bは、粉体状の潤滑剤を固形化したものであり、感光体131b表面に塗布可能でかつ感光体131bの表面エネルギーを低下させてトナーと感光体131bとの付着力を低減可能な材料(例えばステアリン酸亜鉛)から選択される。潤滑剤棒1322bは、上記の材料を溶融して成形する若しくは上記材料の粒子を圧縮成型することで、ブラシローラー1322aにより削り取ることが可能な形状に整えられて使用される。感光体131b表面に供給された滑剤粉は、ブラシローラー1322aの下流に設置されたクリーニングブレード1311により感光体131b表面に成膜されて皮膜を形成する。ステアリン酸亜鉛で形成された皮膜は、離型性が高く(すなわち純水接触角が高く)摩擦係数が小さいことから、転写性及びクリーニング性がよく、かつ感光体41の減耗も抑制されて長寿命化を達成することができる。
【0031】
画像形成部13では、回動する中間転写ベルト132上の画像が2次転写ローラー133の位置に至るタイミングに合わせて、給紙トレイ135から用紙を給紙する。2次転写ローラー133は、対をなす一方のローラーが中間転写ベルト132に圧接し、他方が中間転写ベルト132を巻き回す複数のローラーのうちの1つを構成している。2次転写ローラー133の圧接により、中間転写ベルト132から用紙上に画像を転写(2次転写)すると、定着部134に用紙を搬送して定着処理を施し、オプション部20へ搬送する。定着処理は、定着ローラーにより用紙を加熱及び加圧して画像を用紙に定着させる処理である。用紙の両面に画像を形成する場合、反転経路136に用紙を搬送して用紙面を反転させた後、2次転写ローラー133の位置へ再度用紙を給紙する。
【0032】
記憶部14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成される不揮発性の記憶手段であり、各種プログラムや各種設定データ等を制御部11から読み書き可能に記憶する。
【0033】
操作部15は、表示部16の画面上に設けられるタッチパネルと、表示部16の画面周囲に配置される各種ハードキーと、を備えて構成され、ユーザーによる操作入力を受け付ける。操作部15は、画面上に表示されたボタンが手指やタッチペン等で押下された場合、押下された力点のXY座標を電圧値で検出し、検出された位置に対応付けられた操作信号を制御部11に出力する。なお、タッチパネルは感圧式に限らず、例えば静電式や光式等であってもよい。また、操作部15は、ハードキーが押下された場合、押下されたキーに対応付けられた操作信号を制御部11に出力する。ユーザーは、操作部15を操作して、画質設定、倍率設定、応用設定、出力設定及び用紙設定等の画像形成に関する設定、用紙搬送指示、並びに装置の停止操作などを行うことができる。
【0034】
表示部16は、カラー液晶ディスプレイなどで構成され、ユーザーに対して各種情報を表示する。表示部16は、制御部11から入力される表示制御信号に従って、操作画面等(各種設定画面、各種ボタン、各機能の動作状況等)を表示する。
【0035】
通信部17は、画像形成装置1を通信ネットワークに接続するインターフェースである。通信部17は、通信用IC及び通信コネクタなどを有し、制御部11の制御の下、所定の通信プロトコルを用いて通信ネットワークに接続されている外部装置と各種情報の送受信を行う。また、通信部17は、USBを介して各種情報の入出力を行うことも可能である。
【0036】
オプション部20は、図1及び図2に示すように、一対の画像読取部(読取部)21と、分光測色計22、とを備えて構成されている。
【0037】
画像読取部21は、用紙の裏面を読み取る裏面側画像読取部21aと、用紙の表面を読み取る表面側画像読取部21bと、が用紙搬送方向に距離を置いて互いに異なる位置に配置され、用紙の両面を1パスで読み取るように構成されている。画像読取部21は、用紙の両面をスキャンして当該用紙の両面の画像を光学的に読み取る。
【0038】
分光測色計22は、表面側画像読取部21bよりも搬送方向下流側に配置され、画像形成部13により形成された画像の各カラーパッチの色を分光的に測定し、測色データを取得する。
【0039】
本実施形態において、制御部11は、潤滑剤塗布機構1322の使用履歴情報(摺動距離)に基づいて潤滑剤塗布機構1322の残寿命(第1残寿命)を算出する第1算出部として機能する。
具体的には、制御部11は、潤滑剤塗布機構1322の摺動距離に対する潤滑剤寿命(枯渇)発生の確率密度分布データ(図4参照)を参照し、「平均+3σの摺動距離」で定義される寿命の摺動距離から現在の摺動距離を減算する(寿命の摺動距離-現在の摺動距離)ことで、残寿命の摺動距離(プリント数)を算出する。
【0040】
なお、確率密度分布データは、既知の実験データを用いるようにしてもよいし、ネットワークを介して収集した市場設置機の潤滑剤塗布機構1322の交換実績データを用いるようにしてもよい。
また、市場設置機の潤滑剤塗布機構1322の交換実績データ(特に、交換時の摺動距離)を、潤滑剤の削り速度ばらつきに対する外乱(印刷カバレッジ、温湿度)を入力とした機械学習モデルで解析することで、確率密度分布データの精度向上を図るようにしてもよい。
【0041】
また、制御部11は、画像読取部21により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報(スジ検知レベルの推移)に基づいて潤滑剤塗布機構1322の残寿命(第2残寿命)を算出する第2算出部として機能する。
具体的には、まず、制御部11は、画像形成部13により用紙上に形成された基準画像(例えば全面ハーフトーン(所定濃度の諧調パターン)を出力した画像)を画像読取部21により読み取らせ、読み取り画像(図5(A)参照)の副走査方向の濃度データを平均して主走査方向の濃度プロファイルデータ(図5(B)参照)を取得する。なお、図5(A)中の符号A1は、画像スジの一例である。次いで、制御部11は、画像スジに相当する部分(図5(B)の符号E1、図5(C)参照)の主走査方向の幅W1と濃度差H1を既定の可視感度関数に入力して画像スジの検知レベルを出力することで、主走査方向の画像スジのレベルを検知する画像スジ判定を実行する。次いで、制御部11は、図6に示すように、過去の所定期間のスジ検知レベルの推移を直線近似(図中符号L1)し、所定の品質限界閾値S1に到達するまでのプリント数を残寿命として算出する。すなわち、制御部11は、画像スジ判定履歴情報(スジ検知レベルの推移)の回帰分析(直線近似)により潤滑剤塗布機構1322の残寿命を算出する。
【0042】
なお、第2残寿命の算出方法としては、上記の直線近似(回帰分析)を用いる方法に限らず、X軸を日時とした時系列分析モデル(時系列分析)を用いる方法を採用するようにしてもよい。ここで、時系列分析モデルとしては、種類を問うことはなく、例えば、自己回帰モデル、移動平均モデル等が挙げられる。
【0043】
また、制御部11は、第1残寿命と第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて潤滑剤塗布機構1322の残寿命を予測する予測部として機能する。
【0044】
また、制御部11は、潤滑剤塗布機構1322の使用履歴情報(摺動距離)に基づいて潤滑剤の枯渇状態を推定し、当該推定された枯渇状態に基づいて画像スジ判定の実行頻度を制御する。
具体的には、まず、制御部11は、潤滑剤塗布機構1322の摺動距離に対する潤滑剤寿命(枯渇)発生の確率密度分布データ(図4参照)を参照し、潤滑剤の枯渇発生に係る確率密度関数をF(x)、現時点の潤滑剤塗布機構1322の摺動距離をLとしたとき、下記式(1)を用いて現時点からΔL後までの枯渇発生確率を算出し、当該算出された枯渇発生確率に基づいて潤滑剤の枯渇状態を推定する(図7参照)。
【数2】
【0045】
図8に、ある寿命比に到達したときの枯渇発生確率の一例を示す。また、図9に、寿命比と画像スジ判定の実行頻度との関係の一例を示す。
図8に示すように、平均寿命に対する寿命比が大きくなればなるほど、枯渇発生確率が高くなるようになっている。そこで、本実施形態では、図9に示すように、枯渇発生確率が高くなればなるほど、画像スジ判定の実行頻度を上げることで、寿命到達の検知漏れを低減することができる。なお、図9において、寿命比が「1.3以上」の場合に実行頻度が「標準」となっているのは、画像スジ判定を行うまでもなく、ほぼ確実に寿命に到達していることが予想できるからである。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1は、像担持体(感光体131b)上に潤滑剤を供給する潤滑剤塗布機構1322と、用紙又は中間転写ベルト132上に形成された画像を読み取る読取部(画像読取部21)と、制御部11と、を備える。また、制御部11は、潤滑剤塗布機構1322の使用履歴情報に基づいて潤滑剤塗布機構1322の第1残寿命を算出する第1算出部と、読取部により読み取られた画像に基づいて画像スジ判定を実行し、当該実行された画像スジ判定に係る画像スジ判定履歴情報に基づいて潤滑剤塗布機構1322の第2残寿命を算出する第2算出部と、第1算出部により算出された第1残寿命と第2算出部により算出された第2残寿命とを比較し、短い方の残寿命に基づいて潤滑剤塗布機構1322の残寿命を予測する予測部と、を備える。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、感光体ドラムユニットの寿命を精度よく検出することができるので、過剰なユニット交換や交換遅れによる画像不良の発生を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部11は、潤滑剤塗布機構1322の使用履歴情報に基づいて潤滑剤の枯渇状態を推定し、当該推定された枯渇状態に基づいて画像スジ判定の実行頻度を制御する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、枯渇発生確率が高くなればなるほど、画像スジ判定の実行頻度を上げることができるので、寿命到達の検知漏れを低減することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部11は、ネットワークを介して収集される潤滑剤塗布機構1322の交換実績に基づいて算出された枯渇発生確率密度分布を用いて、潤滑剤の枯渇状態を推定する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、枯渇発生確率密度分布の精度向上を図ることができるので、より精度よく潤滑剤の枯渇状態を推定することが可能となり、より確実に寿命到達の検知漏れを低減することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、制御部11は、潤滑剤の枯渇発生に係る確率密度関数をF(x)、現時点の潤滑剤塗布機構1322の摺動距離をLとしたとき、下記式(1)を用いて現時点からΔL後までの枯渇発生確率を算出し、当該算出された枯渇発生確率に基づいて潤滑剤の枯渇状態を推定する。
【数3】
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、枯渇発生確率密度分布の精度向上を図ることができるので、より精度よく潤滑剤の枯渇状態を推定することが可能となり、より確実に寿命到達の検知漏れを低減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、読取部は、用紙又は中間転写ベルト132上に形成された所定濃度の諧調パターンを読み取り、第2算出部は、読取部により読み取られた所定濃度の諧調パターンの濃度又は輝度の主走査方向分布に基づいて、画像スジ判定を実行する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、新たな構成を追加することなく容易に画像スジ判定を実行することができるので、装置の大型化やコストの増大を防ぎつつ潤滑剤塗布機構1322の残寿命を算出することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、第2算出部は、画像スジ判定履歴情報の回帰分析により潤滑剤塗布機構1322の第2残寿命を算出する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、簡易的な算出方法を用いて精度よく潤滑剤塗布機構1322の残寿命を算出することができるので、過剰なユニット交換や交換遅れによる画像不良の発生を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、第2算出部は、画像スジ判定履歴情報の時系列分析により潤滑剤塗布機構1322の第2残寿命を算出する。
したがって、本実施形態に係る画像形成装置1によれば、簡易的な算出方法を用いて精度よく潤滑剤塗布機構1322の残寿命を算出することができるので、過剰なユニット交換や交換遅れによる画像不良の発生を抑制することができる。
【0053】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、画像読取部21により、用紙上に形成された画像を読み取る構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、中間転写ベルトの近傍にラインセンサーを設置するようにし、用紙上に形成された画像の代わりに、中間転写ベルト上に形成された画像を読み取る構成を採用するようにしてもよい。
【0055】
上記実施形態では、画像読取部21により読み取られた所定濃度の諧調パターンの濃度の主走査方向分布(主走査方向の濃度プロファイルデータ(図6参照))に基づいて、画像スジ判定を実行するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、濃度の主走査方向分布の代わりに、輝度の主走査方向分布に基づいて、画像スジ判定を実行するようにしてもよい。
【0056】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 画像形成装置
10 本体部
11 制御部(第1算出部、第2算出部、予測部)
12 原稿読取部
13 画像形成部
131 書込部
131a 光走査部
131b 感光体(像担持体)
131c 現像部
131d 帯電部
131e クリーニング部
1311 クリーニングブレード
1322 潤滑剤塗布機構
1322a ブラシローラー
1322b 潤滑剤棒
131f 1次転写ローラー
132 中間転写ベルト
133 2次転写ローラー
134 定着部
14 記憶部
15 操作部
16 表示部
17 通信部
20 オプション部
21 画像読取部(読取部)
22 分光測色計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9