(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 15/16 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B41J15/16
(21)【出願番号】P 2019237291
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 裕一
(72)【発明者】
【氏名】湯本 裕矢
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208499417(CN,U)
【文献】特開平07-040650(JP,A)
【文献】特開2018-111275(JP,A)
【文献】特開2002-200591(JP,A)
【文献】特開2010-221076(JP,A)
【文献】特開平04-075951(JP,A)
【文献】特開2014-186218(JP,A)
【文献】特開2000-264492(JP,A)
【文献】特開2002-210919(JP,A)
【文献】特開2015-136864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/00-15/24
B65H 20/00-20/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに記録可能な記録部と、
前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送する搬送部と、
前記保持部と前記記録部との間で
記録前の前記メディアの裏面に接触して当該メディアにテンションを付与するテンションバーと、
記録前の前記メディアの表面にガスを吹き付ける吹付部と、
前記メディアの搬送方向において前記記録部の上流且つ前記テンションバーの下流で前記メディアを被覆可能なカバーと
前記メディアを前記搬送部に押し付ける押付部と、を備え、
前記搬送部は、
前記ロール体から巻き解かれた前記メディアの裏面を支持する支持面を有するとともに前記メディアを搬送可能に移動する搬送ベルトを有する可動式支持部と、
前記メディアを前記搬送ベルトの前記支持面に密着させる密着力を付与する密着力付与部と、を有し、
前記押付部は、前記メディアを前記支持面に押し付けて密着させ、
前記カバーは、前記押付部を覆う閉位置と、前記押付部を覆わない開位置とに移動可能に構成され、
前記吹付部は、
前記カバーに設けられ、当該カバーと共に前記テンションバー及び前記押付部に対して移動可能に構成され、
前記カバーが前記閉位置にある状態の下で、前記吹付部は前記テンションバーに向かってガスを
記録前の前記メディアに吹き付け
、
前記カバーは、前記閉位置にあるときに、前記押付部と前記テンションバーとを区画する隔壁部を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
メディアに記録可能な記録部と、
前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、
前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送する搬送部と、
前記保持部と前記記録部との間で
記録前の前記メディアの裏面に接触して当該メディアにテンションを付与するテンションバーと、
記録前の前記メディアの表面にガスを吹き付ける吹付部と、
前記メディアの搬送方向において前記記録部の上流且つ前記テンションバーの下流において記録前の前記メディアを被覆可能なカバーと、を備え、
前記搬送部は、
前記ロール体から巻き解かれた前記メディアの裏面を支持する支持面を有するとともに前記メディアを搬送可能に移動する搬送ベルトを有する可動式支持部と、
前記メディアを前記搬送ベルトの前記支持面に密着させる密着力を付与する密着力付与部と、を有し、
前記カバーは、前記メディアの搬送方向において下流端部を中心に回動可能に設けられ、前記搬送ベルトの一部を覆う閉位置と、前記搬送ベルトの一部を覆わない開位置とに回動し、
前記吹付部は、
前記カバーの回動端側に設けられ、前記カバーの回動半径方向に沿う方向を指向して前記ガスを吹き付け可能に構成され、
前記カバーが前記閉位置にあるときに、前記吹付部は吹き付け方向が前記テンションバーを指向する高さに配置されることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記テンションバーにおける前記メディアの裏面と接触する部分には、摩擦部材が設けられていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記テンションバーに前記メディアを巻き付け可能なローラー対を備え、
前記ローラー対によって前記テンションバーに前記メディアを半周以上巻き付け可能であることを特徴とする、請求項1
~請求項3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記吹付部は、前記ガスの流れの方向が、前記記録部に向かって前記メディアが搬送される搬送方向と反対方向となるように、前記テンションバーに向かってガスを吹き付けることを特徴とする、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記吹付部は、前記記録部から前記テンションバーに向かう方向にガスを吹き付け可能なノズルを含み、
前記ノズルの延長線が前記テンションバーと交わる交点における接線を基準線とした場合、
前記基準線のうち前記交点よりも当該交点における前記メディアの搬送方向の下流の部分と前記延長線とのなす角度は0度以上90度以下であることを特徴とする、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記吹付部は、前記テンションバーに対して移動可能であることを特徴とする、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記吹付部は、
ガスを通過可能なダクトと、
前記ダクトの内部に収容され、ガスが流れる気流方向と交差するダクト幅方向に並ぶ複数のファンと、を含み、
前記ダクトは、ガスを吹き付けるノズルと、前記気流方向における前記ファンと前記ノズルとの間に位置し、前記気流方向及び前記ダクト幅方向と交差する高さ方向のダクト内高さが、前記気流方向に前記ノズルに近いほど連続的または段階的に小さくなる整流化領域を有することを特徴とする、請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記メディアの搬送方向において、前記記録部の上流且つ前記テンションバーの下流における前記メディアを被覆可能なカバーを備えることを特徴とする、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記カバーは、前記搬送部に対して変位可能であることを特徴とする、請求項
9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記吹付部は、
前記カバーに設けられ、当該カバーと共に前記テンションバーに対して移動可能であることを特徴とする、請求項
9または請求項
10に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール体から巻き解かれた用紙や布帛等のメディアを搬送経路に沿って搬送する搬送部と、搬送されるメディアに記録する記録部を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送経路の上流位置にメディアが巻かれたロール体が保持され、ロール体から巻き解かれたメディアを、搬送経路の下流位置に保持されたロール体に巻き取ることで搬送する搬送部と、メディアにインク等の液体を吐出して画像等を記録する記録部と、を備えたインクジェットプリンターが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたインクジェットプリンターは、印刷機構を収容する筐体を有し、筐体よりもメディアの搬送方向の上流の位置に、メディアの表面に空気流を送風する送風手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された記録装置では、メディアの表面に付着した塵埃などの異物が除去される際、気流によりメディアがばたついてしまう。これにより、メディアの姿勢が不安定となり、記録された画像の品質が劣化する虞があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する記録装置は、メディアに記録可能な記録部と、前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送する搬送部と、前記保持部と前記記録部との間で前記メディアの裏面に接触して当該メディアにテンションを付与するテンションバーと、前記メディアの表面にガスを吹き付ける吹付部と、を備え、前記吹付部は、前記テンションバーに向かってガスを吹き付ける。
【0007】
上記課題を解決する記録装置は、メディアに記録可能な記録部と、前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記メディアの裏面を支持するとともに前記メディアを搬送可能に移動する可動式支持部と、前記メディアの表面にガスを吹き付ける吹付部と、を備え、前記吹付部は、前記可動式支持部に向かってガスを吹き付ける。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態における記録装置の模式側断面図。
【
図3】カバーが開状態にあるときの吹付部の周辺を示す模式側断面図。
【
図8】第2実施形態における吹付部とその周辺を示す模式側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、記録装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1では、記録装置11が水平面上に置かれているものとして、互いに直交する3つの仮想軸を、X軸、Y軸及びZ軸とする。X軸は後述する搬送ベルト21の幅方向と平行な仮想軸であり、Y軸は搬送ベルト21上のメディアMが搬送されるベルト搬送方向Yと平行な仮想軸である。また、Z軸は鉛直方向と平行な仮想軸である。以下では、X軸に沿う方向を幅方向Xともいう。
【0010】
図1に示すように、記録装置11は、例えば、布帛、用紙などであるメディアMに液体の一例であるインクを吐出することによって、文字、写真などの画像を記録するインクジェット式のプリンターである。記録装置11は、保持部12と、皺抑制装置13と、剥離装置14と、記録部15と、搬送部の一例としての搬送ユニット16と、押付部17と、を有する。保持部12は、メディアMが巻かれたロール体R1を保持する。搬送ユニット16は、ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送する。記録部15は、メディアMに記録する。なお、メディアMは、保持部12に保持されたロール体R1から、剥離装置14により搬送ユニット16から剥離されて巻き取られたロール体R2までの搬送経路に沿う搬送方向Y1に搬送される。この搬送方向Y1は、搬送経路上のメディアMの位置に応じて変化する方向である。搬送ユニット16により搬送されるメディアMの搬送方向であるベルト搬送方向Yは、搬送方向Y1のうちの一つである。ここで、メディアMは、ベルト搬送方向Yと、ベルト搬送方向Yとは反対の逆ベルト搬送方向-Yと、に移動可能である。搬送方向Y1は、メディアMに対して記録部15による記録動作が実行される場合の搬送方向であり、逆ベルト搬送方向-Yは、例えばメディアMが搬送ユニット16にセットされる際のメディア位置を調整する調整動作が実行される場合の搬送方向である。
【0011】
搬送ユニット16の上方にはハウジング11aが配置されている。ハウジング11a内には記録部15及び制御部100が収容されている。記録部15は、例えば、メディアMに液体を吐出することにより、メディアMに記録する。記録部15は、記録ヘッド18と、記録ヘッド18を保持するヘッド保持部19とを有する。記録ヘッド18は、液滴を吐出するノズル18Nと、ノズル18Nが開口するノズル面18aとを有する。ノズル面18aは、搬送ベルト21の支持面21aと所定のギャップを隔てて対向する。ノズル18Nから吐出された液滴が、支持面21a上に貼り付けられたメディアMの表面Maに着弾することで、メディアMに画像が記録される。
【0012】
記録部15は、メディアMに対して走査するシリアルヘッドでもよいし、メディアMの幅と略同じ範囲に亘って延在するラインヘッドでもよい。記録部15がシリアルヘッドである場合、ヘッド保持部19はX軸に沿う方向である幅方向Xと平行な走査方向に移動するキャリッジである。キャリッジが走査方向に移動する途中で記録ヘッド18がノズル18Nから液滴を吐出することで、メディアMに記録する。記録部15がラインヘッドである場合、メディアMの幅と略同じ範囲に配列された複数のノズル18Nから、一定速度で搬送されるメディアMに向けて一斉に液滴を吐出することで、メディアMに記録する。なお、記録部15は、インクジェット方式に限らず、固体のトナーを付与したのち種々の感光手段によってメディアMに画像などを定着させる電子写真方式でもよい。
【0013】
搬送ユニット16は、搬送ベルト21と、駆動ローラー22と、従動ローラー23とを含む。搬送ベルト21は、駆動ローラー22と従動ローラー23とに巻き掛けられる。搬送ベルト21は、無端状の基材24と、基材24の外周面上に設けられる粘着層25とを有する。粘着層25は、基材24の外周面の全周に、粘着剤が塗布されることによって形成される。つまり、搬送ベルト21は、粘着層25を有するグルーベルトである。搬送ベルト21は、粘着層25の表面に、メディアMを支持するための支持面21aを有する。メディアMは、粘着層25の表面に貼り付けられた状態で支持面21aに支持される。
【0014】
搬送ユニット16は、駆動源として搬送モーター26を備える。駆動ローラー22は、搬送モーター26と動力伝達可能に連結されている。搬送モーター26が駆動されると、駆動ローラー22が回転する。駆動ローラー22が回転すると、搬送ベルト21が周回する。従動ローラー23は、搬送ベルト21の周回に従動して回転する。このようにして、搬送モーター26は、駆動ローラー22に駆動力を伝達して搬送ベルト21を駆動する。搬送ベルト21が周回することで、支持面21aに貼り付けられたメディアMは搬送される。なお、駆動ローラー22と従動ローラー23との位置を反対にし、ベルト搬送方向Yの下流側のローラーを駆動ローラー22としてもよい。
【0015】
押付部17は、記録部15よりもベルト搬送方向Yの上流側の位置に、搬送ベルト21の支持面21aと対向する上方に配置される。
押付部17は、メディアMを搬送ベルト21に押し付ける。これにより、メディアMは、粘着層25に貼り付けられる。押付部17は、搬送ベルト21の周回に伴って粘着層25にメディアMを順次貼り付ける。メディアMは、搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられた状態で支持される。
【0016】
押付部17は、メディアMの表面Maに接触してメディアMを加圧する加圧ローラー17aを備える。押付部17は、加圧ローラー17aを搬送ベルト21の支持面21aに沿って往復移動させる移動機構17b(
図2参照)を備える。押付部17は、加圧ローラー17aがメディアMを加圧しながら移動機構17bによりベルト搬送方向Yと逆ベルト搬送方向-Yとに往復移動することによって、メディアMの裏面Mbを確実に粘着層25に貼り付ける。なお、加圧ローラー17aは、幅方向Xにおいて往復移動してもよいし、幅方向Xとベルト搬送方向Yとの両方に交差する交差方向において往復移動してもよい。また、押付部17は、加圧ローラー17aによってメディアMを支持面21aに押し付けるものに限らず、例えば風圧によってメディアMを支持面21aに押し付けるものでもよい。
【0017】
図1、
図2に示すように、記録装置11は、搬送ベルト21上のメディアMのうちベルト搬送方向Yにおいて、記録部15よりも上流に位置する部分を被覆可能なカバー30を備える。本実施形態では、カバー30は、搬送ユニット16のうちハウジング11aで覆われる部分よりもベルト搬送方向Yに上流側の部分を覆う。詳しくは、カバー30は、搬送ベルト21の上面と対向する領域のうち押付部17の配置空間を含む領域をZ軸に沿うZ方向において上方から覆う。
図2に示すように、カバー30は、カバー30のベルト搬送方向Yの下流端部に設けられた回動軸30aを中心として回動することによって開閉可能である。つまり、カバー30は、搬送ユニット16に対して変位可能である。
【0018】
カバー30を
図2に示す閉位置から
図3に示す開位置へ移動させることで、搬送ユニット16の一部が露出し、搬送ユニット16に対するメディアMのセット作業が可能になる。例えば、カバー30が開位置にあるとき、押付部17にメディアMをセットするセット作業が可能になる。また、カバー30を開位置から閉位置へ移動させた状態では、押付部17および押付部17により押し付けられる部分のメディアMが、カバー30によって外気中の塵埃等の異物から保護される。また、カバー30は、皺抑制装置13と押付部17との間を区画する隔壁板35を有する。隔壁板35は、カバー30と共に、押付部17が配置される室を区画する壁部の一部を形成する。隔壁板35は、記録装置11の後方からの室への異物の侵入を防止する。なお、
図1は、記録装置11の一部を側断面で示すが、ハウジング11aおよびカバー30の下方領域については幅方向Xの両側が不図示の側壁部により覆われている。
【0019】
図1に示すように、押付部17により支持面21aに貼り付けられたメディアMは、搬送ベルト21の周回によってベルト搬送方向Yに搬送される。記録部15は、搬送ベルト21により搬送される途中の記録位置で、支持面21a上のメディアMに記録する。
【0020】
保持部12は、メディアMが巻き重ねられたロール体R1を保持する。保持部12は、ロール体R1を回転可能に保持する。保持部12が保持するロール体R1は、記録前のメディアMが巻き重ねられたものである。このロール体R1を、以下では第1ロール体R1ともいう。本実施形態においては、搬送ベルト21が駆動することによって、保持部12に保持された第1ロール体R1からメディアMが巻き解かれる。巻き解かれたメディアMは、保持部12から記録部15に向かう搬送経路に沿って搬送される。本実施形態では、保持部12には、保持するロール体R1からメディアMを繰り出す駆動源となる給送モーター27が設けられている。給送モーター27を備える構成である場合、給送モーター27は、搬送ユニット16と共に、搬送部の一例を構成する。なお、第1ロール体R1と搬送ベルト21との間の部分のメディアMに過度なテンションがかからなければ、給送モーター27はなくてもよい。
【0021】
皺抑制装置13は、保持部12と記録部15との間でメディアMの裏面Mbに接触してメディアMにテンションを付与するテンションバーの一例としてのテンションローラー31を備える。皺抑制装置13は、1本のテンションローラー31と、テンションローラー31にメディアMを巻き付け可能なローラー対32とを有する。ローラー対32によってテンションローラー31にメディアMを半周以上巻き付け可能である。ローラー対32は、テンションローラー31に対して一方側に離れた位置に二本並んで配置される第1ガイドローラー33と第2ガイドローラー34との一対で構成される。第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMは、第1ガイドローラー33及び第2ガイドローラー34にガイドされた状態でテンションローラー31の外周面の一部に巻き付けられる。このとき、メディアMがテンションローラー31の外周面に接触するときの反作用により、テンションローラー31がメディアMを各ガイドローラー33,34から離れる方向に押圧することができる。これにより、メディアMに張力が付与される。テンションローラー31の外周面は、ガイドローラー33,34の外周面に比べ高摩擦面となっている。なお、テンションローラー31は各ガイドローラー33,34から離れる方向に付勢されていなくてもよいし、バネなどの弾性部材によって各ガイドローラー33,34から離れる方向に付勢されていてもよい。
【0022】
ユーザーは、第1ロール体R1から引き出したメディアMを皺のない張った状態でテンションローラー31に巻きつける。最初にメディアMを張った状態にセットすれば、メディアMは、テンションローラー31の外周面である高摩擦面によって少なくとも幅方向Xに滑りにくいので、テンションローラー31に巻き付けられる過程でメディアMが幅方向Xに引き伸ばされた状態が維持される。これによりメディアMの皺が増加することが抑制される。メディアMが蛇行または斜行することにより発生する皺は、加圧ローラー17aで押し付けられたときにできる折れの原因になる。この種の折れを防ぐために皺抑制装置13はメディアMに対して幅方向Xのテンションが付与される状態を維持することにより、皺抑制装置13よりも搬送方向Y1の下流の位置でメディアMの皺が増加することを抑制する。
【0023】
なお、回転可能なテンションローラー31に替え、回転不能なテンションロッドを、テンションバーの一例としてもよい。要するに、メディアMにテンションを付与することで、メディアMの記録面となる表面Maと反対側の面である裏面Mbが押圧された状態でメディアMをテンションバーの外周面に密着させられればよい。
【0024】
剥離装置14は、メディアMが巻き重ねられたロール体R2を保持する。剥離装置14は、ロール体R2を回転可能に保持する。剥離装置14が保持するロール体R2は、記録部15と搬送ベルト21との間を通過した後のメディアMが巻き重ねられたものである。このロール体R2を、以下では第2ロール体R2ともいう。剥離装置14は、保持するロール体R2にメディアMを巻き取る駆動源となる巻取モーター28を備える。剥離装置14は、巻取モーター28の駆動力で、所定の回転トルクで第2ロール体R2を回転させることによって、メディアMを搬送ベルト21から剥離する。剥離装置14は、剥離したメディアMを第2ロール体R2として巻き取ることで、記録後のメディアMを回収する。
【0025】
なお、Z方向において搬送ベルト21の下方には、不図示の清掃部および乾燥部が設けられている。清掃部は、支持面21aに付着したインク等の液体や毛羽等の異物を除去するために支持面21aを清掃する。清掃部は、例えば、洗浄液で濡れたブラシを支持面21aに接触させることによって、支持面21aを清掃する。乾燥部は、清掃後に洗浄液で濡れた支持面21aを加熱乾燥させる。搬送ベルト21の下方において、乾燥部は、搬送ベルト21が周回方向の上流側に位置し、乾燥部は周回方向の下流側に位置する。搬送ベルト21が周回することによって、支持面21aの清掃と、洗浄液で濡れた支持面21aの乾燥とが順次行われる。
【0026】
ハウジング11a内には、インク等の液体を収容する複数の液体収容容器(図示略)が配置されている。複数の液体収容容器は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローを含む色の異なるインクをそれぞれ収容する。液体収容容器が収容する液体は、不図示のチューブを通って記録部15に供給される。記録部15は、液体収容容器から供給された液体を記録ヘッド18のノズル18Nから吐出する。液体収容容器は、例えば、インクタンク、インクカートリッジおよびインクパックのうちいずれかにより構成される。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の記録装置11は、メディアMの表面Maにガスの一例として空気を吹き付ける吹付部40を備える。吹付部40は、記録部15よりも搬送方向Y1の上流に位置し、ノズル43からメディアMに向かって空気を吹き付ける。吹付部40は、カバー30に設けられ、カバー30と共にテンションローラー31に対して移動可能である。本実施形態の吹付部40は、テンションローラー31に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maに向かって空気を吹き付ける。吹付部40は、ベルト搬送方向Yの上流に向かう方向に空気流を吹き付ける。吹付部40は、空気の吹き付けによって、メディアMの表面Maに付着していた塵埃や毛羽等の異物を除去する。吹付部40からの空気流によってメディアMから除去された毛羽等の異物は、記録ヘッド18と反対側の方向へ気流とともに吹き飛ばされる。皺抑制装置13を構成するテンションローラー31の外周に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maは、皺がなく綺麗に空気流を吹き付けられるので、吹付部40はこの部分に空気を吹き付ける。
【0028】
図1に示すように、吹付部40は、テンションローラー31に向かって空気を吹き付ける。吹付部40は、テンションローラーの外周面に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maに向かって空気を吹き付ける。メディアMの表面Maに付着した塵埃や毛羽等の異物は、吹き付けられた空気によりメディアMの表面Maから吹き飛ばされて離間する。
【0029】
制御部100は、記録装置11を制御する。制御部100は、吹付部40、押付部17、搬送ユニット16の搬送モーター26、および記録部15を制御する。
次に、記録装置11の一連の動作について説明する。
【0030】
搬送ベルト21の駆動により、保持部12に保持された第1ロール体R1からメディアMが巻き解かれる。巻き解かれたメディアMは皺抑制装置13のテンションローラー31によってテンションが付与される。メディアMにテンションが付与されることで、メディアMの皺が抑制される。テンションローラー31に巻き付けられた部分のメディアMは裏面Mbがテンションローラー31の外周面に押圧された状態でテンションローラー31の外周面に密着する。吹付部40のノズルはテンションローラー31に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maに空気を吹き付ける。メディアMの記録面となる表面Maに付着していた毛羽等の異物が、吹き付けられた空気によって予め記録前に除去される。
【0031】
押付部17は、メディアMのガスが吹き付けられたガス吹付領域を押して搬送ベルト21にメディアMを貼り付ける。次に、記録部15は、搬送ベルト21の上面に貼り付けられたメディアMに対して記録位置で記録する。次に、剥離装置14は、搬送ベルト21の上面に貼り付けられた記録後のメディアMを搬送ベルト21から剥離する。このように、搬送ベルト21が周回することによって、メディアMの貼り付け、メディアMへの記録、記録後のメディアMの剥離が、順次行われる。
【0032】
<皺抑制装置の構成>
次に、
図2、
図3を参照して、皺抑制装置13の構成について説明する。
図2に示すように、皺抑制装置13を構成するテンションローラー31の外周面には、高摩擦材料よりなる摩擦部材31aが形成されている。つまり、テンションローラー31におけるメディアMの裏面Mbと接触する部分には、摩擦部材31aが設けられている。摩擦部材31aは、例えば、少なくとも表面層が高摩擦材料よりなるテープが貼り付けられることで構成される。テンションローラー31の外周面の摩擦係数は、ローラー対32を構成する2本のガイドローラー33,34の外周面の摩擦係数よりも高くなっている。
【0033】
皺抑制装置13を構成する3本のローラー31,33,34は、記録装置11の後方に延出するフレーム13aに対し回転可能な状態で支持されている。3本のローラー31,33,34は軸線方向がX軸と平行である。
【0034】
皺抑制装置13の主ローラーであるテンションローラー31は従動ローラーであり、搬送ベルト21によってメディアMが引っ張られる力によりメディアMの搬送量と同じ量だけ回転する。2本のガイドローラー33,34は、例えば、金属ローラーである。このため、2本のガイドローラー33,34は、布帛等のメディアMに対して多少すべりがある。
【0035】
皺抑制装置13では、テンションローラー31が一番高くに位置し、第1ガイドローラー33がテンションローラー31に比べ下方かつ搬送方向Y1の上流に位置する。第2ガイドローラー34がテンションローラー31に比べ下方かつ搬送方向Y1の下流に位置する。第1ロール体R1から巻き解かれたメディアMは、第1ガイドローラー33の外周面のうち第2ガイドローラー34と対向する一部を経由して上方へ延びたのち、テンションローラー31の外周面のうち上側部分の180度(半周)以上の角度範囲に亘って巻き付けられる。
図3に示す例では、2本のガイドローラー33,34の間隔が、テンションローラー31の直径よりも狭く、メディアMはテンションローラー31の外周面のうち約200度の角度範囲に亘って巻き付けられる。さらにテンションローラー31の外周面を経由したメディアMは下方へ延び、さらに第2ガイドローラー34の外周面のうち第1ガイドローラー33と対向する一部を経由して搬送ベルト21の上面に向かって延びている。なお、テンションローラー31の外周面に対するメディアMの巻付角度は、180度以上が好ましいが、180度未満でもよい。メディアMに必要なテンションを付与できれば、例えば、90度でもよい。
【0036】
図2、
図6に示すように、吹付部40は、ファン41と、ファン41が内部に配置されるダクト42とを備える。ダクト42は、ファン41の回転によって外気を取り込み、その取り込んだ外気をそのまま空気として吹き付けるノズル43を有する。吹付部40は、皺抑制装置13の近傍位置に取り付けられている。吹付部40は、ダクト42の先端部にノズル43を有している。つまり、吹付部40は、記録部15からテンションローラー31に向かう方向にガスを吹き付け可能なノズル43を含む。吹付部40は、取り込んだ外気(空気)をノズル43からテンションローラー31に向かって吹き付ける。
【0037】
<吹付部の退避機構>
次に、
図2、
図3を参照して、吹付部40の退避機構について説明する。
図2、
図3に示す吹付部40は、押付部17の上方を覆うカバー30に取り付けられている。このため、カバー30を開閉することで、吹付部40を、ノズル43から空気流をテンションローラー31に向かって吹き付けるときの吹付位置と、テンションローラー31にメディアMをセットするときに邪魔にならない退避位置との間で移動させることが可能である。すなわち、吹付部40は、テンションローラー31に対して移動可能である。吹付部40が移動可能に構成されることで、吹付部40を不要時に退避させる退避機構が構成されている。つまり、本実施形態では、開閉可能なカバー30が、吹付部40の退避機構を兼ねている。
【0038】
記録装置11にメディアMをセットするときは、テンションローラー31を経由して搬送ベルト21の支持面21aへ送り、支持面21a上で加圧ローラー17aにより押し付けるようにメディアMをセットする。このとき、加圧ローラー17aと支持面21aとの間にメディアMを通す必要があるため、ユーザーはメディアMをセットするときにカバー30を閉位置から開位置へ移動させる。そして、カバー30を開位置へ移動させると、吹付部40がテンションローラー31から遠ざかるベルト搬送方向Yの下流へ退避する。つまり、ユーザーがカバー30を閉位置から開位置へ移動させると、吹付部40がテンションローラー31から遠ざかる位置へ退避する。
【0039】
一方、メディアMをセットし終えたユーザーは、
図3に示す開位置にあるカバー30を
図2に示す閉位置に移動させる。カバー30が閉位置に移動することによって、吹付部40はノズル43がテンションローラー31を指向する姿勢となる吹付位置に配置される。このように、ユーザーがメディアMのセット作業のためにカバー30を開位置へ移動させれば、吹付部40がテンションローラー31から遠ざかる位置へ退避するので、ユーザーはテンションローラー31にメディアMをセットするセット作業がし易くなる。そして、セット作業を終えたユーザーが、押付部17の配置空間を覆うためにカバー30と閉位置へ移動させると、吹付部40が吹付位置に配置される。このため、メディアMのセット作業を行うときに行うべき通常の作業を行えば、特別な回避機構を操作しなくても、吹付部40を適切なタイミングに適切な退避位置へ移動させることが可能である。また、記録装置11の運転中に、カバー30は、押付部17をZ方向において上方から覆うことで、搬送ベルト21の支持面21aへ貼り付けられた搬送中のメディアMの表面Maへの異物の付着を抑制する。
【0040】
<吹付部の構成>
次に、
図4、
図5を参照して、吹付部40の詳細な構成を説明する。
図4、
図5に示すように、吹付部40は、少なくとも一つのファン41とダクト42とを備える。ファン41は、ダクト42内に配置されている。ファン41は、例えば、軸流ファンである。本実施形態では、複数のファン41がダクト幅方向DWに並んで配置されている。ファン41の数は、搬送ベルト21の幅、必要な風量および風速等に応じて適宜な数に設定してよい。ファン41の数は、
図5では5個の例を示しているが、例えば、6~10個でもよいし、2~4個でもよい。また、必要な風量および風速が得られれば、ファン41は1個でもよい。
【0041】
ダクト42は、外気取込用の吸気室51と、吸気室51とファン41を挟んで反対側に位置する排気室52とを有する。ダクト42は、カバー30の部分とダクト42の部分との境界に配置された隔壁42aを有する。吸気室51は、ダクト42内にファン41と隔壁42aとの間に形成された室よりなる。ダクト42には、吸気室51の上壁を形成する部分に複数の吸気口42bが開口している。ファン41が駆動されると、外気が吸気室51内に吸気口42bを通じて吸気方向Fiに取り込まれる。吸気口42bは、外気を取り込みやすくするために、吹付部40が吹付位置に位置する状態において、Z方向においてファン41の上方に配置されることが好ましい。なお、吸気口42bに塵埃等の異物を補足可能なフィルターが取り付けられていてもよい。
【0042】
<ダクト内の気流の均一化>
ダクト42の内部において、ファン41よりも気流方向FDの下流の領域である排気室52は、フラット領域53、整流化領域の一例である斜状領域54、およびノズル領域55を有する。フラット領域53、斜状領域54、ノズル領域55は、ファン41からノズル43に向かう気流方向FDにこの順番で位置する。フラット領域53は、ダクト42内のZ方向における空間の高さFH(以下、「ダクト内高さ」ともいう。)が、ファン41が配置される部分の高さと同じになっている領域である。言い換えれば、フラット領域53のダクト内高さFHは、吸気室51のダクト内高さIHと等しい。斜状領域54は、ダクト内高さCHがノズル43に向かうほど連続的または段階的に小さくなる領域である。本実施形態では、斜状領域54のダクト内高さCHがノズル43に向かうほど連続的に小さくなっている。ノズル領域55は、そのダクト内高さNH1がノズル43の吹出口43aの開口高さNH2と同じ高さで所定長さに亘って延出する領域である。なお、吹出口43aの開口高さNH2が、ノズル領域55のダクト内高さNH1よりも狭くてもよい。
【0043】
ダクト42は、吸気室51を内部に有する吸気口42bと、斜状領域54を内部に有する斜状部44と、ノズル領域55を内部に有するノズル43とを備える。これにより、ノズル43から吹き付けられる空気流が一定以上の風速でかつ流速が幅方向Xに均一になる。
図5に、ファン41から送り出される空気流の流線を模式化した矢印を示す。同図に示すように、ファン41に一番近いフラット領域53では、空気流の流線に疎密が現れている。斜状領域54では、ダクト内高さCHがノズル43に近づくほど小さくなるので、この斜状領域54を通る過程で空気流の流線の疎密が徐々に緩和される。ノズル領域55では、空気流の流線が均一化される。ノズル43の吹出口43aからはダクト幅方向DWに均一な流速で空気流が吹き付けられる。本実施形態では、ノズル43の吹出口43aの開口高さNH2は、2~10mmの範囲内の所定値(例えば7mm)である。
【0044】
ダクト42は、吸気室51および排気室52を有する所定の形状を有しており、搬送ベルト21の幅寸法と略同じ寸法の幅を有している。ダクト42は、吸気室51および排気室52の全領域に亘ってダクト幅方向DWに同じ幅を有している。
【0045】
吹付部40は、ガス流を通過可能なダクト42と、ダクト42の内部に収容され、ガス流が流れる気流方向FDと交差するダクト幅方向DWに並ぶ複数のファン41と、を含む。ダクト42は、空気流を吹き付けるノズル43と、気流方向FDにおけるファン41とノズル43との間に位置し、気流方向FDおよびダクト幅方向DWと交差する高さ方向Hのダクト内高さが連続的に小さくなる整流化領域の一例である斜状領域54を有する。
【0046】
<吹付部の吸気口と吹出口との位置関係>
図4、
図5に示すように、吸気口42bを通じて取り込まれる吸引気流の吸気方向Fiと、吹出口43aから吹き出される空気流の吹付方向Fsとは交差する。本実施形態では、吹付部40は、吸気口42bを通じて上方から下方へ吸ってダクト42内に取り込んだ空気を、ファン41が水平方向に送り出すことでノズル43から水平方向へ空気流を吹き付ける。このように、吸気口42bにおける吸気方向Fiと、吹出口43aにおける吹付方向Fsとが交差するように吸気口42bの向きを構成している。これにより、吹付方向Fsにおいて、ファン41に対して吹出口43aと同じ側に吸気口42bが設けられる場合と比べて、空気の吹き付けによって吹き飛ばされた毛羽等の異物が再び吸気口42bからダクト42内に取り込まれることを抑制できる。これにより、異物が混入した空気がノズル43からメディアMの表面Maに向かって吹き付けられる事態を回避できる構成となっている。
【0047】
<ノズルとテンションローラーのサイズ条件>
ノズル43の吹出口43aの開口高さNH2とテンションローラー31の直径RDとの大きさの関係は、NH2<RDの関係がある。本例では、吹出口43aの開口高さNH2は、テンションローラー31の直径RDの例えば1/30~1/5の範囲内の所定値である。NH2<RDの関係が成立するので、ノズル43から吹付方向Fsに吹き出された空気をテンションローラー31の外周面上の適切な位置、すなわちメディアMの表面Ma上の特定のエリアに絞って空気を吹き付けることができる。また、吹付部40が吹付位置に位置する状態において、吹付方向Fsから見てノズル43がテンションローラー31とオーバーラップするように、ノズル43の位置が適宜設計される。
【0048】
そして、上記のノズル43の好適な吹付角度θは、ノズル43の吹出口43aの開口高さNH2が、テンションローラー31の直径RDよりも小さいことを前提に定義される。
<吹付条件>
図6に示すように、吹付部40のノズル43は、空気を吹き付けてもばたつかない部分のメディアMの表面Maに吹き付ける。また、吹付部40のノズル43は、加圧ローラー17aよりも搬送方向Y1の上流に位置する部分のメディアMの表面Maに吹き付ける。テンションローラー31は、メディアMにテンションを付与する部材である。したがって、テンションローラー31の外周面に巻き付けられた部分のメディアMは、テンションローラー31の外周面と密着している。さらに、テンションローラー31の外周面は摩擦部材31aにより高摩擦面になっているので、ローラー対32を構成する二本のガイドローラー33,34の外周面に比べ、メディアMがローラー軸線方向に沿って滑る横滑りが発生しにくい。よって、テンションローラー31の外周面に巻き付けられた部分のメディアMは、搬送方向Y1にも幅方向Xにも引き伸ばされる状態が維持される。これにより、テンションローラー31を通る過程でメディアMは皺のない状態に維持される。つまり、テンションローラー31を通る過程でメディアMの皺が除去される。このテンションがかかった状態でメディアMはテンションローラー31の外周面に巻き付けられるので、メディアMはテンションローラー31の外周面に密着する。このため、メディアMが高摩擦面の外周面にテンションがかかった状態で巻き付けられた部分は、メディアMと外周面との密着力が高い。よって、メディアMのうちテンションローラー31に巻き付けられた部分は、ノズル43から空気が吹き付けられても、ばたつきにくい。言い換えれば、メディアMのうちテンションローラー31に巻き付けられた部分は、ノズル43から空気が吹き付けられても、姿勢が安定しやすい。
【0049】
<吹付角度>
図6に示す側面視で、吹付角度θは、ノズル43から吹付方向Fsに吹き付けられた空気が当たる位置である吹付位置(交点Ps)における接線である基準線TLに対してなす角度で示される。つまり、吹付角度θは、ノズル43の吹付方向Fsの延長線がテンションローラー31の外周面と交わる交点をPsとすると、交点Psにおける接線を基準線TLとした場合、基準線TLとなす角度で表される。但し、θは、0≦θ≦90の範囲内で定義される。ノズル43の指向方向は、吹付方向Fsが、ベルト搬送方向Yと反対方向の方向成分をもつように設定される。本実施形態では、吹付方向Fsは、ベルト搬送方向Yと反対方向の方向成分だけをもつ、ベルト搬送方向Yと正反対の水平な方向に設定されている。この方向を例えば反搬送方向ともいい、前述の逆ベルト搬送方向-Yと同義である。
【0050】
本実施形態では、吹付角度θは、0度以上90度以下の値に設定されている(0≦θ≦90)。
吹付角度θが小さすぎると、ノズル43からの空気流がメディアMの表面Maに沿って流れるだけで、空気流とメディアMの表面Maとの衝突が起きにくい。このため、ノズル43とからの空気流がメディアMの表面Maとがある程度の角度で衝突して異物除去能力を高めるため、吹付角度θは30度以上であることが好ましい。また、吹付角度θが大きすぎると、メディアMの表面に空気流が衝突した後に、衝突箇所からテンションローラー31の外周面に沿って互いに反対の二方向に分かれて流れた気流の一方が記録部15に向かうと、その気流に含まれる異物が記録ヘッド18のノズル面18aに付着し、これが吐出不良の原因になる場合がある。このため、ベルト搬送方向Yの上流に流れる気流の量に対する、ベルト搬送方向Yの下流に流れる気流の量の割合が相対的に小さくなるように、吹付角度θは70度未満であることが好ましい。このため、吹付角度θは、30度以上70度未満であることが好ましい。
【0051】
特に本例では、吹付角度θに関する実験結果とシミュレーション結果とを基に、強い空気流を表面Maに衝突させられる異物除去能力と、異物を含む気流を記録部15のある方向へ流さない異物再付着防止能力とを考慮し、吹付角度θは、45度以上55度未満の値に設定されている。これは、吹付角度θが45度未満になると、異物再付着防止能力は高いものの異物除去能力の低下が認められるようになり、55度以上になると、異物除去能力は高いものの記録部15のある方向へ流れる気流が増えだして異物再付着防止能力の低下が認められるようになることを根拠にする。
【0052】
<風速>
ノズル43から吹き付ける空気流の好適な風速は、風速6m/秒以上である。実験結果とシミュレーション結果を基に、風速6m/秒と8m/秒で異物除去効果があった。風速3m/秒未満では異物除去効果が低下することが認められた。このため、風速3m/秒以上あればよく、特に好ましい風速は6m/秒以上である。
【0053】
<吹付距離>
吹付距離CDは、空気流が、吹付位置Psから、テンションローラー31の外周面に巻き付けられた部分の表面Maに沿って記録部15から遠ざかる方向へ流れる空気の流れる範囲を周長で表した距離である。
【0054】
ノズル43から水平に空気を吹き付ける構成である場合、テンションローラー31の中心Oから鉛直方向に延ばした
図6に破線で示す仮想線とテンションローラー31の外周面との交点が、テンションローラー31の外周面上の最も高い最高点Peとなる。ノズル43から水平に吹き付けられた空気は吹付位置Psに衝突した後、主に搬送方向Y1と反対の方向へ向かってメディアMの表面Maに沿って最高点Peまで流れる。その後、空気流はメディアMの表面Maから離れて記録ヘッド18側と反対方向となる後方へ排気される。すなわち、メディアMの表面Maに吹き付けられた後の空気流の向きは、テンションローラー31の外周面の各点において変化する。吹付距離CDが、必要な距離だけ確保されるように、吹付位置Psを決めている。この吹付距離CDが、30mm以上のときと、60mm以上のときに、共に効果が認められた。この吹付距離CDは、異物除去能力にあまり影響せず、比較的短い距離(30mm未満)であっても一定の効果が得られた。
【0055】
<吹付時間>
次に、吹付時間について説明する。記録装置11がシリアルプリンターである場合、ヘッド保持部19であるキャリッジが走査方向に移動する過程で記録ヘッド18のノズル18Nから液体を吐出して1走査分の記録を行う記録動作と、メディアMを次の記録位置まで搬送する搬送動作とを交互に行う。このとき、記録動作中はメディアMが停止しているので、吹付部40がノズル43からメディアMの同じ箇所に空気を吹き付ける。一方、メディアMが搬送される搬送動作時は、吹付部40がノズル43から空気を吹き付ける箇所を、メディアMが一回の搬送動作における搬送速度と同じ速度で通過する。このように、メディアMは空気が吹き付けられているエリアを通過するだけであるが、上記吹付角度θおよび風速の条件での空気流の吹き付けによって、異物除去効果があることが確認された。このように、吹付時間は0.1~0.5秒の範囲内の所定時間でも異物除去効果がある。
【0056】
例えば、必要な吹付時間が、例えば1秒以上と長い場合、キャリッジの走査中にある記録動作時はメディアMが停止しているので、その停止時間を利用して吹付時間を確保できる。しかし、メディアMを搬送する搬送動作時は、メディアMは吹付けエリアを通過するだけなので、必要な吹付時間を確保できない。この場合、搬送速度を遅らせたり、吹付エリアを搬送方向Y1に長く確保したりする対策が必要になる。前者は、記録速度が低下する弊害があり、後者は吹付部40の大型化や配置個数の増大等の弊害がある。
【0057】
本実施形態では、テンションローラー31の外周面のうちメディアMが巻き付けられる部分であり外周面とメディアMとが高い密着力で密着する部分にノズル43から空気流を吹き付ける。例えば、空気の吹付けによってメディアMがばたつくと、メディアMの姿勢が不安定になるだけでなく、メディアMが揺れることで空気流による異物除去効果が低下する。また、メディアMの裏面と軽く接触している程度で密着性が低い部分では、メディアMに皺が発生する。メディアMの皺のある部分に空気を吹き付けた場合、皺の部分および皺の周辺部分で異物除去効果が低下し、皺が原因で除去し切れなかった異物が付着したままメディアMに記録が行われる。この場合、異物の付着部分が記録不良になる虞がある。
【0058】
これに対して、本実施形態では、皺が除去されたメディアMの裏面Mbがテンションローラー31の外周面に密着した部分の表面Maに空気を吹き付けるため、メディアMのばたつき、浮き上がり、皺が抑制され、高い異物除去効果が得られる。このため、搬送動作時にメディアMが吹付けエリアを通過するだけの短い吹付時間でも、異物が除去される。よって、記録装置11がシリアルプリンターでもラインプリンターでも、吹付部40を適用することで、必要な異物除去効果が得られる。
【0059】
<液体吐出方式のメリット>
記録部15が液体を吐出する液体吐出方式(インクジェット方式)の記録装置11である場合、ノズル18Nから液体を噴射するときに発生する噴流によってメディアMの表面に付着した塵埃や毛羽等の異物が舞い上がり、記録ヘッド18のノズル面18aに異物が付着する場合がある。ノズル面18aに付着した異物は、吐出不良の原因になる。ノズル18Nから吐出される液滴が、ノズル18Nの近傍に付着している異物に接触し、液滴の飛翔経路が曲がってしまう。これが原因で液滴の着弾位置がずれてしまい、記録精度が低下する可能性がある。また、ノズル面18aに付着した異物は、ノズル18Nから液滴が吐出されないドット抜け等の吐出不良や目詰まりの原因となる。これに対して、本実施形態では、記録部15よりも搬送方向Y1の上流位置で、吹付部40が事前にメディアMの記録面となる表面Maに付着している異物を除去する。したがって、メディアMと共に記録部15の周辺近くまで侵入する異物の量を低減できる。この結果、ノズル面18aへの異物の付着に起因する吐出不良および目詰まりの低減が可能である。
【0060】
<記録装置の電気的構成>
次に、
図7を参照して記録装置11の電気的構成について説明する。
制御部100には、記録部15、搬送モーター26、およびファン41が電気的に接続されている。制御部100は、搬送モーター26を制御することで、搬送ベルト21が所定の搬送速度となるように制御する。また、制御部100は、搬送ベルト21の駆動により引っ張られるメディアMのテンションが過度にならないように搬送モーター26の出力トルクを制御し、保持部12に保持された第1ロール体R1から搬送ベルト21までにおけるメディアMのテンションを調整可能である。
【0061】
また、制御部100には、入力部61および操作部62が電気的に接続されている。入力部61は、各種のデータを入力可能な入力機能を有する通信インターフェイスである。制御部100は、入力部61を介して印刷データPDを入力する。
【0062】
操作部62は、ユーザーが記録装置11に対して各種の指示を与えるために操作される操作スイッチを有する。操作部62は、表示部を備える操作パネルであってもよい。操作部62には、電源スイッチおよび選択スイッチ等が含まれる。ここで、表示部をタッチパネルにより構成し、表示部の操作機能が操作部62の一部を兼ねてもよい。
【0063】
本実施形態では、制御部100は、ファン41のオン/オフを制御する。制御部100は、ユーザーが操作部62を操作した指示に基づいてファン41のオン/オフを制御してもよい。すなわち、ユーザーは、例えば操作パネルの表示部に表示された設定画面で、操作部62を操作してファン41のオン/オフを選択できる構成としてもよい。ユーザーは、メディアMが、塵埃や毛羽等の異物を除去する必要がある種類のメディアMである場合、ファン41のオンを選択し、異物を除去する必要のない種類のメディアMである場合、ファン41のオフを選択する。ここで、メディアMが布帛である場合、毛羽等の異物を除去する必要のある種類のメディアMとしては、コットン(木綿)およびウールを挙げることができる。また、毛羽等の異物を除去する必要がない種類のメディアMとしては、シルク(絹)およびナイロン等の化学繊維を挙げることができる。
【0064】
また、制御部100は、印刷データPD中のメディア種の情報に基づいて、ファン41のオン/オフの制御を行ってもよい。制御部100は、印刷データPDに含まれるメディア種の情報を基に、メディア種が異物を除去する必要がある第1のメディア種であれば、ファン41をオンに制御する。一方、制御部100は、印刷データPDに含まれるメディア種の情報を基に、メディア種が異物を除去する必要がない第2のメディア種であれば、ファン41をオフに制御する。このように、制御部100が、メディア種の情報を基にファン41のオン/オフ制御を行ってもよい。
【0065】
なお、制御部100は、メディア種に応じてファン41の回転数を変化させてもよい。例えば、メディアMとしてカーペットのようにその表面Maから異物が除去しにくい種類の場合はファン41の回転数を増加させ、メディアMとして重量の軽い薄布のようにその姿勢が変化しやすい種類の場合はファン41の回転数を減少させる。これにより、メディア種の特性に応じて、異物の除去能力を調整できる。
【0066】
制御部100は、記録装置11に対する記録制御を含む各種の制御を行う。制御部100は、自身が実行する全ての処理についてソフトウェア処理を行うものに限られない。たとえば、制御部100は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、制御部100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサー、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサーは、1つ以上のCPU並びに、1つ以上のRAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリーすなわちコンピューター可読媒体は、汎用または専用のコンピューターでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0067】
次に、記録装置11の作用について説明する。
メディアMをセットする場合、ユーザーはカバー30を
図2に示す閉位置から
図3に示す開位置へ移動させる。ユーザーがカバー30を開けることによって、吹付部40は、
図2に示す吹付位置からテンションローラー31から遠ざかる
図3に示す退避位置へ移動する。ユーザーは、保持部12に保持されたロール体R1からメディアMを引き出し、引き出したメディアMを皺抑制装置13の第1ガイドローラー33、テンションローラー31、第2ガイドローラー34の順に巻き付ける。メディアMをテンションローラー31に巻き付けるとき、吹付部40は
図3に示す退避位置にあるので、セット作業の邪魔にならない。さらにメディアMの先端部を搬送ベルト21の支持面21a上に載置し、加圧ローラー17aを下降させてメディアMを押し付ける。こうしてメディアMをセットし終わると、ユーザーが操作部62を操作して記録装置11に記録開始指示を与える。記録装置11の制御部100は、指示された印刷データPDを基に記録装置11を制御する。この結果、記録装置11は、メディアMに印刷データに基づく画像を記録のための運転を開始する。
【0068】
搬送ベルト21が回転することでメディアMは搬送される。このとき、メディアMは皺抑制装置13の各ローラー31,33,34に巻き付けられているので、搬送ベルト21の搬送力で引っ張られ、その引張り力によって各ローラー31,33,34は回転する。
【0069】
テンションローラー31は、ローラー対32を構成する2本のローラー33,34に比べて大径であるうえ、ローラー対32との位置関係から巻付角度が180度以上と大きく、テンションローラー31の外周面に巻き付けられた部分のメディアMの巻付長さが半周以上と長い。また、テンションローラー31の外周面は、摩擦部材31aにより、2本のガイドローラー33,34の外周面に比べ摩擦係数の大きな高摩擦面である。メディアMとテンションローラー31の高摩擦面との間に広い接触面積が確保される。メディアMはテンションローラー31の外周面に密着して皺のない状態で巻き付けられている。メディアMはテンションローラー31の外周面との摩擦によってその外周面上で横滑りしにくいので、皺のない密着した状態が保たれる。よって、メディアMはテンションローラー31の外周面からの押圧を受けながら長手方向にも幅方向Xにもテンションが付与され、幅方向Xに引き伸ばされながら巻き付けられる。これにより、テンションローラー31に巻き付けられる過程でメディアMの皺が抑制された状態が維持される。こうして、メディアMはテンションローラー31の外周面に密着した状態で搬送される。
【0070】
記録装置11の運転中は、吹付部40のノズル43からテンションローラー31に向かって空気が吹き付けられる。このため、テンションローラー31に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maにノズル43から空気流が吹き付けられる。空気流が吹き付けられる部分のメディアMは、テンションローラー31の外周面に密着している。このため、空気が吹き付けられても、メディアMはばたつかない。また、メディアMとテンションローラー31の外周面との密着した間に空気流が侵入することもないので、メディアMがテンションローラー31の外周面から捲れ上がったり浮き上がったりすることもない。
【0071】
例えば、メディアMのローラー間の部分にノズルから空気流を吹き付ける構成であると、メディアMのローラー間の部分はローラーの外周面に支持されていないので、メディアMが空気流によってばたつくことになる。メディアMがばたつくと、そのばたつきの揺れが搬送方向Y1の下流へ伝播し、その伝播した揺れの力でメディアMの位置がずれる場合がある。例えば、メディアMが搬送ベルト21の支持面21aに貼り付けられる過程で微小に揺れたり微小に位置がずれたりすると、その揺れた位置やずれた位置のままメディアMが支持面21aに貼り付けられる心配がある。この場合、メディアMの搬送ベルト21への貼り付け位置のずれや、その貼り付け位置がずれたときに皺が発生する場合がある。メディアMに発生した皺は、加圧ローラー17aで押し付けられると折れになる。メディアMの貼り付け位置のずれやそのずれに起因する折れは、画像の記録位置ずれ不良の原因になる。
【0072】
これに対して、本実施形態では、ノズル43から空気流が吹き付けられる吹付箇所が、テンションローラー31の外周面に密着する状態で巻き付けられた部分なので、空気流が吹き付けられても、メディアMがその吹付箇所でばたつくことがない。この結果、メディアMの搬送ベルト21の支持面21aへの貼り付け位置精度が高く、貼り付け時に皺が発生することがないので、加圧ローラー17aで押し付けられた後のメディアMに折れも発生しない。
【0073】
メディアMが搬送ベルト21の支持面21aに位置精度よく貼り付けられることから、支持面21a上のメディアMに位置精度よく記録部15のノズル18Nから吐出された液滴が着弾し、メディアMに品質の高い画像を記録することができる。すなわち、メディアMの姿勢が不安定になることを抑制しつつ、メディアMの表面Maに付着している異物を除去できる。メディアMの姿勢が安定することにより、記録ヘッド18のノズル面18aと搬送ベルト21の支持面21a上のメディアMの表面Maとのギャップの変動を抑制し、ギャップの変動に起因する画像品位の低下を抑制できる。
【0074】
ノズル43から吹き付けられる空気流は、
図5に示すように幅方向Xに流線が均一な空気流である。このため、テンションローラー31に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maに幅方向Xに均一な空気流が吹き付けられる。このため、メディアMの表面Maに付着した異物を幅方向Xにばらつきなく効果的に除去できる。例えば、メディアMの表面Maに異物が残っていると、記録ヘッド18のノズル18Nから液滴が吐出されたときに発生する噴流によってメディアMの表面Maに付着している異物が舞い上がり、異物がノズル面18aに付着する場合がある。本実施形態では、メディアMの表面Maに付着していた異物は効果的に除去されるので、噴流で舞い上がる異物事態が極めて少なく、ノズル面18aに仮に異物が付着しても極めて少ない。よって、ノズル面18aに付着した異物に起因する吐出不良の発生頻度が極めて低くなる。メディアMの記録面となる表面Maに残っている異物に起因する画像品位の低下を抑制できる。本実施形態によれば、メディアMの姿勢を安定に維持しつつ、メディアMの表面Maに付着している異物を効果的に除去できるので、メディアMに記録される画像品位が向上する。
【0075】
また、ノズル43から吹き付けられる空気流の吹付角度θは、0度以上90度以下である。特に本例では、45度以上55度以下の範囲内の吹付角度θである。また、ノズル43からテンションローラー31の中心Oよりも上方の位置となる吹付位置Psに空気流を吹き付ける。よって、ノズル43からテンションローラー31の外周面における吹付位置Psに吹き付けられた空気流は、吹付位置Psからその大部分がベルト搬送方向Yと反対の方向にテンションローラー31の外周面に沿って最高点Peまで流れる。一方、吹付位置Psから下側へ流れる気流は少量に抑えられる。このため、空気流の吹き付けによって表面Maから除去された毛羽等の異物は、空気流とともにベルト搬送方向Yと反対の方向、つまり記録部15の位置する方向と反対の方向へ吹き飛ばされる。この結果、ノズル43からの空気流の吹き付けによって除去された異物がメディアMの表面Maに再付着することが回避される。言い換えれば、吹付部40は、空気の流れの方向が、記録部15に向かってメディアMが搬送される搬送方向Y1あるいはベルト搬送方向Yと反対方向となるように、テンションローラー31に向かって空気を吹き付けることができる。ここでいう搬送方向Y1とは、搬送経路における任意の場所におけるメディアMの搬送方向を指す。例えば、テンションローラー31上の任意の点におけるメディアMの搬送方向である。なお、「空気(ガス)の流れの方向が搬送方向Y1と反対方向である」とは、テンションローラー31上の任意の点において、空気(ガス)の流れの方向が完全に搬送方向Y1或いはベルト搬送方向Yと平行であるものに限らず、空気(ガス)の流れの方向が搬送方向Y1あるいはベルト搬送方向Yと交差するものも含まれる、という意味である。
【0076】
上記実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)記録装置11は、メディアMに記録可能な記録部15と、メディアMが巻かれたロール体R1を保持可能な保持部12と、ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送する搬送ユニット16と、を備える。記録装置11は、保持部12と記録部15との間でメディアMの裏面Mbに接触してメディアMにテンションを付与するテンションローラー31と、メディアMの表面Maにガスを吹き付ける吹付部40と、を備える。吹付部40は、テンションローラー31に向かってガスを吹き付ける。つまり、テンションローラー31のうちメディアMが巻き付けられた部分に空気流を吹き付ける。
【0077】
よって、テンションローラー31の外周面によりメディアMが押圧されてメディアMに所定の押圧力が加わっている。メディアMはテンションローラー31に密着する。そして、吹付部40がテンションローラー31に向かってガスを吹き付けることにより、メディアMがテンションローラー31に密着している部分にガスが吹き付けられる。メディアMはテンションローラー31に密着しているので、メディアMとテンションローラー31との間にガスが流れ込むことが抑制される。メディアMとテンションローラー31との間にガスが流れ込むことに起因するメディアMのばたつきを抑制できる。これにより、メディアMの表面Maに付着した塵埃などの異物を除去しながら、メディアMの姿勢が不安定になることを抑制できる。この場合、安定した記録動作を実現できる。ここでいう安定した記録動作とは、メディアMの姿勢が安定することにより、記録ヘッド18のノズル面18aと搬送ベルト21の支持面21a上のメディアMの表面Maとのギャップの変動を抑制し、ギャップの変動に起因する画像品位の低下を抑制できるとともに、メディアMの記録面となる表面Maからの異物の除去による画像品位の向上を指す。
【0078】
(2)テンションローラー31におけるメディアMの裏面Mbと接触する部分には、摩擦部材31aが設けられている。よって、メディアMの裏面Mbと接触する部分に摩擦部材31aが設けられたテンションローラー31に、ローラー対32によってメディアMを巻き付けることができる。これにより、メディアMが幅方向Xにずれてしまうことを抑制でき、更にメディアMの姿勢を安定化できる。
【0079】
(3)テンションローラー31にメディアMを巻き付け可能なローラー対32を備え、ローラー対32によってテンションローラー31にメディアMを半周以上巻き付け可能である。よって、テンションローラー31にメディアMを半周以上の巻付け角で巻き付けることにより、巻付け角が半周未満である場合と比べて、テンションローラー31に巻き付けられた部分のメディアMに強いテンションが働く。これにより、メディアMの幅方向Xへの横ずれを抑制することで、メディアMの皺の発生を抑制でき、更にメディアMの姿勢を安定化できる。
【0080】
(4)吹付部40は、空気の流れの方向が、記録部15に向かってメディアMが搬送される搬送方向Y1あるいはベルト搬送方向Yと反対方向となるように、テンションローラー31に向かって空気を吹き付ける。ここで、空気の流れの方向が、記録部15に向かってメディアMが搬送される搬送方向と同じである場合、吹付部によってメディアMの表面Maから取り除かれた異物が記録部15に向かうとともに、当該異物が記録部15の少なくとも一部に付着することで、記録部15の動作が阻害される可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、吹付部40によってメディアMの表面Maから取り除かれた異物が記録部15に向かうことを抑制し、記録部15の動作が阻害されることを抑制できる。また、吹付部40によってメディアMの表面Maから取り除かれた異物が記録部15に向かうことを更に抑制し、記録部15の動作が阻害されることを更に抑制できる。
【0081】
(5)吹付部40は、記録部15からテンションローラー31に向かう方向にガスを吹き付け可能なノズル43を含む。ノズル43の延長線がテンションローラー31と交わる交点Psにおける接線を基準線TLとした場合、基準線TLのうち交点Psよりも交点Psにおける搬送方向Y1の下流側へ延びる線分とのなす角度である吹付角度θは、0度以上90度以下である。
【0082】
吹付部40からのガス流がテンションローラー31に密着したメディアMの表面Maに吹き付けられて異物が飛ばされた場合、異物は記録装置11近傍を浮遊する。ガス流の方向や吹付角度によっては、浮遊している異物がメディアMに再付着し、画像品位が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、異物がメディアMに再付着することを抑制できる。
【0083】
(6)吹付部40は、テンションローラー31に対して移動可能である。よって、テンションローラー31に対してメディアMをセットする場合、例えばテンションローラー31から吹付部40を遠ざけることができる。これにより、メディアMをセットするためのスペースが確保され、メディアMがセットしやすくなる。
【0084】
(7)吹付部40は、ガス流を通過可能なダクト42と、ダクト42の内部に収容され、ガス流が流れる気流方向FDと交差するダクト幅方向DWに並ぶ複数のファン41と、を含む。ダクト42は、気流方向FDおよびダクト幅方向DWと交差する高さ方向Hにおけるダクト内空間の高さが、気流方向FDにノズル43に近づくほど連続的に小さくなる斜状領域54を有する。
【0085】
よって、複数のファン41を気流方向と交差するダクト幅方向DWに並べた場合、1つのファン41を設ける場合と比べて風圧を大きくできる。しかし、複数のファン41の間隔などによって、ダクト幅方向DWに空気流の速度分布ができる場合がある。上記構成によれば、ダクト42は、ファン41とノズル43との間の位置に、ダクト内高さが、気流方向FDにノズル43に近いほど連続的に小さく斜状領域54を有する。これにより、空気流のダクト幅方向DWにおける速度分布が均一になる。これにより、メディアMの幅全域に均一な空気流を吹き付けることが可能となり、異物の除去能力が高まる。
【0086】
(8)メディアMの搬送方向Y1において、記録部15の上流且つテンションローラー31の下流におけるメディアMを被覆可能なカバー30を備える。よって、カバー30により、吹付部40により吹き飛ばされて浮遊した異物が、記録部15の上流且つテンションローラー31の下流におけるメディアMに再付着することを抑制できる。
【0087】
(9)カバー30は、搬送ユニット16に対して変位可能である。よって、搬送ユニット16へのメディアMのセット性を向上できる。
(10)吹付部40は、カバー30に設けられ、カバー30と共にテンションローラー31に対して移動可能である。よって、カバー30がテンションローラー31の移動機構を兼ねるので、テンションローラー31を移動可能にする専用の移動機構を設ける必要がない。
【0088】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図8を参照して説明する。吹付部が空気流を吹き付ける対象が、前記第1実施形態と異なる。前記第1実施形態では、吹付部40が空気流をテンションローラー31に吹き付けたが、第2実施形態の吹付部40は、メディアMを支持する状態でメディアMと共に移動する可動式支持部の一例としての搬送ベルト21に支持されている部分のメディアMにガスの一例としての空気を吹き付ける。すなわち、吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aのうちメディアMが支持される部分に空気流を吹き付ける。
【0089】
図8に示すように、記録装置11は、メディアMに記録可能な記録部15と、メディアMが巻かれたロール体R1を保持可能な保持部12と、ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送する搬送部の一例としての搬送ユニット16と、を備える。さらに、記録装置11は、メディアMの表面Maにガスの一例としての空気を吹き付ける吹付部40を備える。
【0090】
搬送ユニット16は、ロール体R1から巻き解かれたメディアMの裏面Mbを支持する支持面21aを有するとともに、メディアMを搬送可能に移動する可動式支持部の一例としての搬送ベルト21を有する。さらに、搬送ユニット16は、メディアMを搬送ベルト21の支持面21aに密着させる密着力を付与する密着力付与部の一例としての粘着層25を有する。
【0091】
吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aと対向する位置に配置されている。吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aに向かって空気を吹き付ける。すなわち、吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aのうちメディアMが貼り付けられる部分に、ノズル43からの空気流を吹き付ける。搬送ベルト21は、駆動ローラー22と従動ローラー23との間に張られた状態にあるとともに、搬送ベルト21のメディアMを支持する上側の部分は垂れ下がりを防止する目的で不図示の支持部材で支持されている。このため、搬送ベルト21は、特に下方へは変位しない状態で移動する。また、吹付部40のノズル43の指向先は、搬送ベルト21の支持面21aのうちメディアMの裏面Mbが粘着層25に貼り付けられる部分の上方の位置である。このため、吹付部40のノズル43から吹き付けられる部分のメディアMは、粘着層25により支持面21aに所定の貼付け強度で貼り付けられる。つまり、ノズル43から空気流が吹き付けられる部分のメディアMの裏面Mbは、所定の貼付け強度で搬送ベルト21の支持面21aと密着している。
【0092】
図8に示すように、吹付部40は、カバー30に取り付けられている。よって、カバーの開閉により、吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aに空気流を吹き付ける
図8に示す吹付位置と、搬送ベルト21から遠ざかる退避位置とに移動可能となっている。
【0093】
吹付部40の基本的な構成は、第1実施形態のものと同様である。吹付部40は、ファン41とダクト42とを備える。ファン41は、ダクト42内にダクト幅方向DWに複数個並んで配置されている。ダクト42は、吸気室51と排気室52とを備える。ダクト42は、搬送ベルト21の支持面21aを指向するノズル43を有する。ダクト42は、吸気室51に連通する吸気口42bを有する。また、ダクト42は、ダクト内高さが、ノズル43に近づくほど連続的に小さくなる整流化領域の一例である斜状領域54と、斜状領域54で狭くなった一定のダクト内高さで延出するノズル領域55とを備える。ダクト42は、斜状領域54を形成する斜状部44と、ノズル領域55を形成するノズル43とを備える。ノズルの先端には吹出口43aが開口している。
【0094】
ダクト42内でファン41が送り出す空気流は、斜状領域54を通ることで流速分布が均一化される。さらに、一定の高さ幅で延出するノズル領域55で空気流が更に均一化される。この結果、ノズル43の吹出口43aからはダクト幅方向DWに均一な流速および流量の空気流が、支持面21a上のメディアMの表面Maに吹き付けられる。
【0095】
ノズル43の吹出口43aの開口幅NW(
図5参照)は、メディアMの幅以上である。本例では、吹出口43aの開口幅NWの寸法は、記録装置11が対応可能な最大幅のメディアMの幅以上である。このため、ノズル43から吹き付けられる均一な空気流は、メディアMの幅全域に吹き付けられる。空気流が吹き付けられた部分のメディアMは、所定の貼り付け力で支持面21aに密着しているので、メディアMはばたつくことがない。よって、メディアMの安定した姿勢を維持しつつ、メディアMの表面Maに付着している毛羽等の異物を効果的に除去できる。
【0096】
また、本実施形態でも、吹付部40が吸気口42bから外気を取り込むときの吸気方向Fiと、ノズル43から空気流を吹き出す方向である吹付方向Fsとは交差している。特に本例では、記録装置11の上方から下方へ向かって外気を取り込む吸気方向Fiとなっており、吹付け対象である支持面21aに対してベルト搬送方向Yと反対方向の方向成分をもつ吹付方向Fsとなっている。吹付角度θは、ノズル43の吹付方向Fsと、支持面21a、つまり支持面21aに貼り付けられたメディアMの表面Maとのなす角度で表される。吹付角度θは、吹付方向Fsがベルト搬送方向Yと反対方向の方向成分をもつように、0度以上90度以下の値に設定されている。吹付角度θが小さすぎると、ノズル43の先端をメディアMの表面Maに近づける必要があり、吹付部40の組付誤差や位置ずれに起因してノズル43とメディアMとの接触が心配される。このため、吹付角度θは30度以上であることが好ましい。また、吹付角度θが大きすぎると、メディアMの表面Maに空気流が当たった後に、ベルト搬送方向Yの上流に流れる気流の量に対する、ベルト搬送方向Yの下流に流れる気流の量の割合が相対的に高くなり、毛羽等の異物を吹き飛ばした気流が記録部15側へ流れることが心配される。このため、吹付角度θは70度未満であることが好ましい。このため、吹付角度θは、30度以上70度未満であることが好ましい。
【0097】
特に本例では、空気流の実験結果とシミュレーション結果とを基に、強い空気流(高圧の空気)が表面Maに吹き付けられる異物除去能力と、異物を含む空気流が記録部15側へ流れることを抑制する異物再付着防止能力との二点を考慮し、吹付角度θは、45度以上55度未満の値に設定されている。吹付角度θは、45度未満になると、異物除去能力の低下が認められるようになり、55度以上になると、記録部15側へ流れる気流の割合が増加して異物再付着防止能力の低下が認められた。
【0098】
図8に示すように、吹付部40と皺抑制装置13との間の位置には、吹付部40から吹き付けられた空気流が支持面21aに衝突した後、ベルト搬送方向Yの上流へ流れた気流を上方へ案内するガイド部材71が設けられている。ガイド部材71は、板材を折り曲げた板形状を有する。ガイド部材71は、幅方向XにメディアMの幅よりも長い幅寸法を有するとともに、皺抑制装置13に対してベルト搬送方向Yの下流側の部分を覆うように上下に延びている。ガイド部材71は、ノズル43から吹き付けられた空気流から、皺抑制装置13の各ローラー31,33,34を経由する部分のメディアMを保護しつつ、その気流を記録装置11の上方へ案内する。
【0099】
また、
図8に示すように、カバー30の先端部には、カバー30が同図に示す閉位置にある状態で、第1ガイド部材71によって上方へ案内された気流をベルト搬送方向Yの上流へ案内する第2ガイド部材72が取り付けられている。この第2ガイド部材72は、第1ガイド部材71により上方へ案内された気流が、吹付部40の吸気口42bの外側周辺に流れることを防止する。このため、異物を含む空気が吸気口42bから取り込まれることが回避される。このため、吸気口42bから異物を含む外気を取り込んで、吹付部40から異物の混じった空気流が吹き出され、メディアMの表面Maに異物が再付着することが防止される。
【0100】
以上詳述したように、第2実施形態によれば、下記の効果が得られる。
(11)ロール体R1から巻き解かれたメディアMを搬送する搬送ユニット16は、ロール体R1から巻き解かれたメディアMの裏面Mbを支持する支持面21aを有するとともに、メディアMを搬送可能に移動する搬送ベルト21を有する。さらに、搬送ユニット16は、メディアMを搬送ベルト21の支持面21aに密着させる密着力を付与する密着力付与部の一例としての粘着層25を有する。吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aに向かって空気流を吹き付ける。これにより、吹付部40は、メディアMの表面Maに空気流を吹き付ける。
【0101】
吹付部40は、メディアMが搬送ベルト21の支持面21aに密着している部分のメディアMの表面Maに空気流を吹き付ける。メディアMは搬送ベルト21に密着しているので、空気流を吹き付けても、ばたつくことがない。また、ノズル43から空気流を吹き付ける方向がメディアMを支持面21aに押し付ける方向であることも、ばたつきを抑制する。さらに、ノズル43から吹き付けられた空気流の勢いでメディアMの端部が一部捲れ上がることや、メディアMと支持面21aとの間に空気流が入り込んでメディアMの一部が支持面21aから浮き上がったり、その浮き上がった部分がばたついたりする事態も回避できる。これにより、メディアMの姿勢が不安定になることを抑えつつ、メディアMの表面Maに付着した毛羽等の異物を除去することができる。よって、安定した記録動作でメディアMに画像を記録することができる。ここでいう安定した記録動作とは、メディアMの姿勢が安定することによる画像品位の低下の抑制と、メディアMの記録面となる表面Maからの異物の除去による画像品位の向上を指す。
【0102】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。以下に示す各変更例は、特に記載がない限りは、実施形態によらず適用可能である。
【0103】
・各実施形態において、吹付部40の吹付方向Fsは、ベルト搬送方向Yと反対方向の方向成分を含む方向であってもよい。吹付部40からの空気流が流れる先に記録部15への気流の侵入を遮蔽する遮蔽部があれば問題ない。
【0104】
・吹付部40は、空気以外のガスをメディアMの表面Maに吹き付けてもよい。例えば、常温において不活性な窒素ガスや希ガスでもよい。例えば、メディアMの表面Maと反応してメディアMの表面Maを改質するための反応性ガスでもよい。空気以外のガスが用いられる場合には、空気以外のガスが充填されたタンクなどを、チューブを介して吸気口42bと接続することが好ましい。
【0105】
・各実施形態において、給送モーター27と巻取モーター28とが、制御部100に制御されてもよい。この場合、給送モーター27は、搬送ベルト21の駆動源である搬送モーター26と同期して駆動され、制御部100によりメディアMに過度なテンションがかからず且つ弛みが発生しないように回転制御される。また、制御部100は、巻取モーター28を制御することで、剥離装置14に保持されたロール体R2の巻取りによる剥離動作を制御する。
【0106】
記録装置11がシリアルプリンターである場合、搬送動作と記録動作とが交互に行われる。このため、搬送モーター26は間欠的に駆動される。この搬送モーター26の間欠駆動に合わせて給送モーター27は所定の遅れを伴うタイミングで間欠的に駆動される。テンションローラー31に巻き付けられた部分およびこの部分よりも搬送方向Y1の下流となる部分のメディアMにテンションが付与される。
【0107】
・第1実施形態において、吹付位置Psは、テンションローラー31の外周面上の適宜な位置を選択してよい。テンションローラー31の外周面に巻き付けられた部分のメディアMの表面Maに空気流が吹き付けられればよい。
【0108】
・ファン41は、1個でもよい。また、ファン41は、5個以外の複数個でもよく、6個以上の複数個でもよいし、5個未満の複数でもよい。
・吹付部40の退避機構を、搬送ユニット16のうちハウジング11aで覆われる以外の部分を上方から覆うカバー30が兼ねる構成に限定されない。吹付部40をガスの吹き付けを行うべき吹付位置からテンションローラー31から離れる退避位置へ退避させる専用の退避機構を設けてもよい。退避機構は、図示されないレールに沿って、吹付部40を幅方向Xにスライドさせてテンションローラー31から遠ざけてもよいし、吹付部40をベルト搬送方向Yにスライドさせてテンションローラー31から遠ざけてもよい。この場合であっても、メディアMのセット作業がし易くなる。
【0109】
・ダクト42内の整流化領域は、ダクト内高さがノズル43に近づくほど階段状に小さくなる領域であってもよい。すなわち、ダクト42内の整流化領域は、ダクト内高さがノズル43に近づくほど段階的に小さくなる領域であってもよい。
【0110】
・吹付部40が吹き付けるガスは空気でなくてもよい。この場合、窒素ガスや希ガスなど反応性の低いものが好ましい。例えば、ガスが充填されたボンベを吹付部40の吸気室に接続し、ボンベから供給されたガスをファンによりノズルから吹き付ける。
【0111】
・吸気口42bは、吹付部40が吹付位置に位置する状態において、ベルト搬送方向Yにおいてファン41に対して吹出口43aと反対側に設けられていてもよい。このような場合であっても、空気の吹き付けによって吹き飛ばされた毛羽等の異物が再び吸気口42bからダクト42内に取り込まれることを抑制できる。
【0112】
・搬送部を搬送ベルト方式とした場合、メディアMを支持面21aに密着させる方式は、搬送ベルト21は粘着層25を有するグルーベルトに限定されない。搬送ユニット16は、搬送ベルト21の支持面21aにメディアMを密着させる方式として、静電気力によりメディアMを吸着させる静電吸引方式の吸引部でもよいし、負圧によりメディアMを吸着させる負圧吸引方式の吸引部でもよい。特に、第2実施形態では、搬送部の一例としての搬送ユニット16が、静電気力によりメディアMを吸着させる静電吸引方式の吸引部を備える構成である場合、静電吸引方式の吸引部が、密着力付与部の一例を構成する。また、搬送ユニット16が、負圧によりメディアMを吸着させる負圧吸引方式の吸引部を備える構成である場合、負圧吸引方式の吸引部が、密着力付与部の一例を構成する。吹付部40から吹き付けられる部分のメディアMは、静電吸引方式または負圧吸引方式の吸引部が発生させる吸引力により、可動式支持部材の一例である搬送ベルト21の支持面21aに吹き付ける。のうちメディアMが支持される部分に密着する。吹付部40は、ガスの一例としての空気を搬送ベルト21の支持面21aに吹き付ける。吹付部40は、搬送ベルト21の支持面21aのうちメディアMが支持される部分に空気流を吹き付ける。よって、吹付部40が空気流を吹き付けても、メディアMはばたつかない。
【0113】
・第2実施形態において、押付部17を有しない記録装置11の場合、記録部15よりもベルト搬送方向Yの上流側の位置であれば、搬送ベルト21の支持面21aのうちメディアMが支持される部分に、吹付部40から空気を吹き付けてもよい。この場合、吹付方向Fsは、ベルト搬送方向Yの上流に向かう成分をもつ方向であることが好ましい。
【0114】
・各実施形態において、吹付部40の吹付方向Fsは、搬送方向Y1の下流に向かう方向を成分にもつ方向でもよい。例えば、空気流がメディアMの表面Maに当たった後の気流が記録部15へ流れることを防ぐ遮蔽部材を設ければよい。
【0115】
・搬送部は、ロール・ツー・ロール方式でもよい。すなわち、搬送ベルトを備えず、支持台を挟んだ両側に保持された給送用の第1ロール体R1と巻取り用の第2ロール体R2との間で、第1ロール体R1から繰り出されたメディアMを支持台の支持面に沿って摺動させながら第2ロール体R2が巻き取ることで、メディアMを搬送する。メディアMのうち支持台の支持面上の部分に記録部15が記録を行う。この場合、第1実施形態と同様に、皺抑制装置13を設け、メディアMをテンションローラー31に巻き付けてもよい。
【0116】
・搬送部は、搬送ベルト21に替え、記録部と対向する位置にプラテン等の支持部材が配置され、搬送ローラー対でメディアを搬送する記録装置でもよい。
・記録装置11は、布帛に記録する捺染機に限らず、ロール紙に印刷する記録装置でもよい。ロール紙に印刷するドットインパクトでもよい。この構成によれば、紙粉や空気中の粉塵も吹き飛ばすことができる。
【0117】
・記録装置11は、記録部15が走査方向Xに往復移動するシリアルプリンターまたは記録部15が幅方向に延びるラインプリンターに限定されず、記録部15が主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。
【0118】
・記録装置11は、インクジェット方式に限らず、ワイヤインパクト方式または熱転写方式であってもよい。また、記録装置11は、固体のトナーを付与したのち種々の感光手段によってメディアMに画像などを定着させる電子写真方式でもよい。
【0119】
・記録装置11は、読取ユニットを搭載する複合機でもよい。
・ロール体R1のメディアMは、布帛に限らず、ロール紙、可撓性のプラスチックフィルム、不織布、編物などであってもよいし、ロール状のラミネートフィルムや金属箔でもよい。
【0120】
・記録装置は、記録用のプリンターに限定されない。例えば、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体を吐出し、媒体の一例である基板に電気配線パターン、又は、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)及び面発光などの各種の方式のディスプレイの画素を製造するものでもよい。
【0121】
・記録装置11は、インクジェット方式に限定されず、ワイヤインパクト式の液体吐出装置、熱転写式の液体吐出装置であってもよい。記録ヘッドと支持部とのギャップを調整するギャップ調整機構を備える液体吐出装置であれば、記録方式は特に限定されない。
【0122】
前記実施形態および変更例から導かれる技術思想を、その作用効果と共に以下に記載する。
記録装置は、メディアに記録可能な記録部と、前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記メディアを搬送する搬送部と、前記保持部と前記記録部との間で前記メディアの裏面に接触して当該メディアにテンションを付与するテンションバーと、前記メディアの表面にガスを吹き付ける吹付部と、を備え、
前記吹付部は、前記テンションバーに向かってガスを吹き付ける。
【0123】
この構成によれば、テンションバーが保持部と記録部との間でメディアの裏面に接触することでメディアにテンションが付与される。よって、メディアはテンションバーに密着する。そして、吹付部がテンションバーに向かってガスを吹き付ける。ガスは、メディアがテンションバーに密着している部分に吹き付けられる。このため、ガスが吹き付けられても、メディアはばたつかない。これにより、メディアの姿勢が不安定になることを抑えつつ、メディアの表面に付着した塵埃等の異物を除去することができる。よって、安定した記録動作を実現できる。ここでいう安定した記録動作とは、メディアの姿勢が安定することによる記録部と搬送部により搬送されるメディアとのギャップの変動に起因する画像品位の低下を抑制できるとともに、メディアの記録面となる表面からの異物の除去による画像品位の向上を指す。
【0124】
上記記録装置において、前記テンションバーにおける前記メディアの裏面と接触する部分には、摩擦部材が設けられていてもよい。
この構成によれば、メディアの裏面と接触する部分に摩擦部材が設けられたテンションバーに、ローラー対によってメディアを巻き付けることができる。これにより、メディアが、搬送方向と交差する幅方向にずれてしまうことを抑制でき、更にメディアの姿勢を安定化できる。
【0125】
上記記録装置は、前記テンションバーに前記メディアを巻き付け可能なローラー対を備え、前記ローラー対によって前記テンションバーに前記メディアを半周以上巻き付け可能であってもよい。
【0126】
この構成によれば、ローラー対によってテンションバーにメディアを半周以上巻き付け可能である。これにより、巻付け角が半周未満である場合と比べて、テンションバーに巻き付けられた部分のメディアのテンションを大きくすることができる。これにより、メディアの幅方向への横ずれを抑制することで、メディアの皺の発生を抑制でき、更にメディアの姿勢を安定化できる。
【0127】
上記記録装置において、前記吹付部は、前記ガスの流れの方向が、前記記録部に向かって前記メディアが搬送される搬送方向と反対方向となるように、前記テンションバーに向かってガスを吹き付けてもよい。
【0128】
ガスの流れの方向が、記録部に向かってメディアが搬送される搬送方向と同じである場合、吹付部によってメディアの表面から取り除かれた異物が記録部に向かうとともに、当該異物が記録部の少なくとも一部に付着することで、記録部の動作が阻害される可能性がある。上記構成によれば、吹付部によってメディアの表面から取り除かれた異物が記録部に向かうことを抑制し、記録部の動作が阻害されることを抑制できる。
【0129】
上記記録装置において、前記吹付部は、前記記録部から前記テンションバーに向かう方向にガスを吹き付け可能なノズルを含み、前記ノズルの延長線が前記テンションバーと交わる交点における接線を基準線とした場合、前記基準線のうち前記交点よりも当該交点における前記メディアの搬送方向の下流の部分と前記延長線とのなす角度は0度以上90以下満であってもよい。
【0130】
吹付部からのガス流がテンションバーに密着したメディアの表面に吹き付けられて異物が飛ばされた場合、異物は記録装置近傍を浮遊する。ガス流の方向や吹付角度によっては、浮遊している異物がメディアに再付着し、画像品位が低下する可能性がある。上記構成によれば、異物がメディアに再付着することを抑制できる。また、吹付部によってメディアの表面から取り除かれた異物が記録部に向かうことを更に抑制し、記録部の動作が阻害されることを更に抑制できる。
【0131】
上記記録装置において、前記吹付部は、前記テンションバーに対して移動可能であってもよい。
この構成によれば、テンションバーにメディアをセットする場合、例えばテンションバーから吹付部を遠ざけることができる。これにより、メディアをセットするためのスペースが確保され、メディアがセットしやすくなる。
【0132】
上記記録装置において、前記吹付部は、ガス流を通過可能なダクトと、前記ダクトの内部に収容され、ガス流が流れる気流方向と交差するダクト幅方向に並ぶ複数のファンと、を含み、前記ダクトは、ガス流を吹き付けるノズルと、前記気流方向における前記ファンと前記ノズルとの間に位置し、前記気流方向及び前記ダクト幅方向と交差する高さ方向のダクト内高さが、前記気流方向に前記ノズルに近いほど連続的または段階的に小さくなる整流化領域とを有してもよい。
【0133】
この構成によれば、複数のファンを気流方向と交差するダクト幅方向に並べた場合、1つのファンを設ける場合と比べて風圧を大きくできる。しかし、複数のファンの間隔などによって、ダクト幅方向に空気流の速度分布ができる場合がある。上記構成によれば、ダクトは、ファンとノズルとの間の位置に、ダクト内高さが、気流方向にノズルに近いほど連続的又は段階的に小さくなる整流化領域を有する。これにより、空気流のダクト幅方向における速度分布が均一になる。これにより、メディアの幅全域に均一な空気流を吹き付けることが可能となり、異物の除去能力が高まる。
【0134】
上記記録装置は、前記メディアの搬送方向において、前記記録部の上流且つ前記テンションバーの下流における前記メディアを被覆可能なカバーを備えてもよい。
この構成によれば、カバーにより、吹付部により吹き飛ばされて浮遊した異物が、記録部の上流且つテンションバーの下流におけるメディアに再付着することを抑制できる。
【0135】
上記記録装置において、前記カバーは、前記搬送部に対して変位可能であってもよい。
この構成によれば、搬送部へのメディアのセット性を向上できる。
上記記録装置において、前記吹付部は、前記カバーに設けられ、当該カバーと共に前記テンションバーに対して移動可能であってもよい。
【0136】
この構成によれば、カバーがテンションバーの移動機構を兼ねるので、テンションバーを移動可能にする専用の移動機構を設ける必要がない。
記録装置は、メディアに記録可能な記録部と、前記メディアが巻かれたロール体を保持可能な保持部と、前記ロール体から巻き解かれた前記メディアの裏面を支持する支持面を有するとともに前記メディアを搬送可能に移動する可動式支持部と、前記メディアを前記可動式支持部の前記支持面に密着させる密着力を付与する密着力付与部と、前記メディアの表面にガスを吹き付ける吹付部と、を備え、前記吹付部は、前記可動式支持部の前記支持面に向かってガスを吹き付ける。
【0137】
この構成によれば、可動式支持部がメディアの裏面を支持面に支持する状態で移動することで、メディアは搬送される。このとき、メディアは、密着力付与部により付与された密着力により可動支持部の支持面に密着する。そして、吹付部が可動式支持部の支持面に向かってガスを吹き付ける。可動式支持部の支持面に密着している部分のメディアの表面にガスが吹き付けられる。このため、ガス流が吹き付けられても、メディアはばたつかない。これにより、メディアの姿勢が不安定になることを抑えつつ、メディアの表面に付着した塵埃等の異物を除去することができる。よって、安定した記録動作を実現できる。ここでいう安定した記録動作とは、メディアの姿勢が安定することによる画像品位低下の抑制と異物除去による画像品位向上を指す。
【符号の説明】
【0138】
11…記録装置、11a…ハウジング、12…保持部、13…皺抑制装置、14…剥離装置、15…記録部、16…搬送ユニット、17…押付部、17a…加圧ローラー、17b…移動機構、18…記録ヘッド、18a…ノズル面、18N…ノズル、19…ヘッド保持部、21…可動式支持部の一例としての搬送ベルト、21a…支持面、22…駆動ローラー、23…従動ローラー、24…基材、25…密着力付与部の一例としての粘着層、26…搬送モーター、27…搬送部の一例を構成する給送モーター、28…巻取モーター、30…カバー、30a…回動軸、31…テンションバーの一例としてのテンションローラー、31a…摩擦部材、32…ローラー対、33…第1ガイドローラー、34…第2ガイドローラー、40…吹付部の一例としての吹付装置、41…ファン、42…ダクト、42a…隔壁、43…ノズル、43a…吹出口、44…斜状部、51…吸気室、52…排気室、53…フラット領域、54…整流化領域の一例である斜状領域、55…ノズル領域、61…入力部、62…操作部、100…制御部、R1…第1ロール体(ロール体)、R2…第2ロール体(ロール体)、M…メディア、Ma…表面、Mb…裏面、X…幅方向、Y…ベルト搬送方向、Y1…搬送方向、FD…気流方向、DW…ダクト幅方向、Fi…吸気方向、Fs…吹付方向、Ps…吹付位置(交点)、TL…基準線、Pe…気流終点、θ…吹付角度、CD…気流距離、FH…ダクト内高さ、IH…ダクト内高さ、CH…整流化領域(斜状領域)のダクト内高さ、NH1…ダクト内高さ、NH2…吹出口の開口高さ。