(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ハブ組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20240305BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20240305BHJP
A61M 39/26 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61M5/158 500H
A61M25/06 580
A61M39/26
(21)【出願番号】P 2019567211
(86)(22)【出願日】2019-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2019002823
(87)【国際公開番号】W WO2019146791
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018011154
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018017286
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018195457
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】秋本 春男
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-103149(JP,U)
【文献】特開2000-279526(JP,A)
【文献】特開昭63-197463(JP,A)
【文献】特開2001-046507(JP,A)
【文献】特開2005-349195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00- 5/52
A61M 25/00-25/06
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
を備え、
前記通気路の前記液体の通路に対する開口部の前記隔壁側の端部は、前記隔壁の先端に対し、先端側に10mm以下の場所に設けられ、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記ハブの中心軸を軸とする略円筒状の形状を有し、前記ハブ本体及び前記ハブ外装体とは別部材で構成されるとともに、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域を常にカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターキャップは、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域について、前記中心軸の方向から見て、前記ハブの外壁面の全周を覆うことを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項2】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置されるスリット付きの隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと
、
前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて通気可能とした通気路と、
を備え、
前記外部機器からのチューブが前記ハブに接続された際には、前記隔壁のスリットが押し開けられることで、前記液体の通路における前記隔壁の生体側と外部機器側とを連通させ、
前記通気路の前記隔壁よりも前記生体側の前記液体の通路に対する開口部は、前記ハブの内壁において、前記隔壁のスリットが押し開けられた際に、該スリットの周囲において変形した前記隔壁の一部が達する領域に設けられ、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記ハブの中心軸を軸とする略円筒状の形状を有し、前記ハブ本体及び前記ハブ外装体とは別部材で構成されるとともに、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域を常にカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターキャップは、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域について、前記中心軸の方向から見て、前記ハブの外壁面の全周を覆うことを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項3】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置されるスリット付きの隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
を備え、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記ハブの中心軸を軸とする略円筒状の形状を有し、前記ハブ本体及び前記ハブ外装体とは別部材で構成されるとともに、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域を常にカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターキャップは、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域について、前記中心軸の方向から見て、前記ハブの外壁面の全周を覆うことを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項4】
前記隔壁のスリットが押し開けられることで、前記液体の通路における前記隔壁の生体側と外部機器側とを連通させた際に、前記変形した前記隔壁の一部が前記通気路の前記液体の通路に対する開口部を閉塞させ、
前記通気路の前記液体の通路に対する開口部が設けられた位置における、前記液体の通路の径はφ3mm以上であることを特徴とする、請求項2に記載のハブ組立体。
【請求項5】
前記フィルターキャップは、前記フィルターを通過した気体がフィルターキャップの外部に排出可能なキャップ通気手段を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のハブ組立体。
【請求項6】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置されるスリット付きの隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
を備え、
前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域をカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターは、前記ハブの外壁面と前記フィルターキャップの内壁面との間に設けられるリング状の立体形状を有し、
前記ハブの外壁面及び前記フィルターキャップの内壁面において、前記フィルターに接する部分の角部の少なくとも一つに角丸めが施されたことを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項7】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置されるスリット付きの隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
を備え、
前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域をカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターは、前記ハブの外壁面と前記フィルターキャップの内壁面との間に設けられるリング状の立体形状を有し、
前記フィルターは、前記ハブの外壁面及び前記フィルターキャップの内壁面によって、少なくとも一部が径方向に圧縮されて固定され、
該固定されたフィルターの周囲の少なくとも一部には、該フィルターが圧縮されることに起因して突出する、該フィルターの突出部分を収容する収容空間を有することを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項8】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域をカバーするフィルターキャップと、を備え、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記隔壁を挟んで前記ハブ本体の先端側において前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記フィルターキャップは、前記ハブ外装体及び前記ハブ本体の少なくとも一部を収容
するとともに、前記フィルターキャップと、前記ハブ本体とが係合されることにより、前記ハブ外装体、前記ハブ本体及び前記フィルターキャップを一体化させることを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項9】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置され、先端側の空間と基端側の空間とを区画する隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部又は前記基端側の空間とを前記フィルターを介して連通し、前記先端側の空間における気体を通過させる通気路と、
を備え、
前記フィルターは、前記液体の通路における気体が該フィルターを通過する方向に対して角度を有する方向に圧縮され、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記ハブの中心軸を軸とする略円筒状の形状を有し、前記ハブ本体及び前記ハブ外装体とは別部材で構成されるとともに、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域を常にカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターキャップは、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域について、前記中心軸の方向から見て、前記ハブの外壁面の全周を覆うことを特徴とする、ハブ組立体。
【請求項10】
前記フィルターが、二つの硬質部材によって圧縮されていることを特徴とする、請求項9に記載のハブ組立体。
【請求項11】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される開閉可能な隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域に開口部を有し、前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域と、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部とを連通し、前記液体の通路中における前記隔壁の前記生体側の領域における気体を、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部に移動可能とした通気路と、
を備え、
前記隔壁が開口することで、前記隔壁の一部が前記通気路の前記開口部の少なくとも一部を閉塞させ又は前記隔壁の前記生体側の領域と前記通気路とを離隔するように変形し、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記ハブの中心軸を軸とする略円筒状の形状を有し、前記ハブ本体及び前記ハブ外装体とは別部材で構成されるとともに、前記ハブの外壁面における
前記フィルターが配置された領域を常にカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターキャップは、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域について、前記中心軸の方向から見て、前記ハブの外壁面の全周を覆うことを特徴とするハブ組立体。
【請求項12】
治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される開閉可能な隔壁と、
前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域に開口部を有し、前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域と、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部とを連通し、前記液体の通路中における前記隔壁の前記生体側の領域における気体を、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部に移動可能とした通気路と、
を備え、
前記通気路には気体を通気可能なフィルターが配置され、該フィルターには吸水性膨潤体が設けられ、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体とともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記ハブの中心軸を軸とする略円筒状の形状を有し、前記ハブ本体及び前記ハブ外装体とは別部材で構成されるとともに、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域を常にカバーするフィルターキャップをさらに備え、
前記フィルターキャップは、前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域について、前記中心軸の方向から見て、前記ハブの外壁面の全周を覆うことを特徴とする、ハブ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野での輸液や輸血、人工透析等に際して血管等へ穿刺されて用いられる、ハブ組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析等を行うための医療器具の一種として、スリット付きの隔壁を有するハブ組立体が知られている。これらに関連する技術としては、隔壁がディスク状に形成されて、隔壁には周方向に延びる環状凹溝が形成されており、環状凹溝よりも内周に位置する中央部分にスリットが形成されている一方、押し子ガイドにおける隔壁側の軸方向先端部或いは押し子における隔壁側の軸方向先端部において環状凹溝内に入り込む保持部が形成されたもの等が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような、内部に隔壁が設けられた形態のハブ組立体については、さらに、カテーテルアセンブリのカテーテルアダプタ内に隔壁が配置され、複数の通気溝が、隔壁とカテーテルアダプタの内表面との間に介設され、カテーテルを患者に挿入する際の血液の「フラッシュバック」を可能にするものが公知である(特許文献2参照)。
【0004】
また、カテーテルハブの中空部内には、止血弁、多孔質性のシール部材、支持部材が設けられ、止血弁の基端側に挿入配置される遮断機構部は、空気を基端側中空部に流通可能とする一方で、基端側中空部への血液の流通を遮断する機能を有しているものが公知である(特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術においては、通気溝が隔壁とカテーテルアダプタの内表面との間に介設されており、流体が隔壁の基端側に流れるため、空気の他、血液が隔壁の基端側にリークする危険性があった。また、特許文献3の技術においては、止血弁24の基端側に配置された遮断機構部において空気を流通可能とし、血液の流通を遮断することしているものの、部材どうしの接合面の隙間を通じて血液が基端側にリークする危険性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-13360号公報
【文献】特表2012-517326号公報
【文献】特開2017-144028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情を背景として為されたものであって、その目的は、ハブ組立体において、より確実に、血液のフラッシュバックの確認を可能とするとともに、隔壁より基端側に血液が流入することを防止することで、より信頼性の高いハブ組立体を得ることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
を備え、
前記通気路の前記液体の通路に対する開口部の前記隔壁側の端部は、前記隔壁の先端に対し、先端側に10mm以下の場所に設けられたことを特徴とする、ハブ組立体である。
【0009】
本発明においては、上記のとおり、液体の通路とハブの外部とをフィルターを介して連通し、液体の通路中における気体を、フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路を有している。そして、通気路が、前記隔壁よりも前記生体側の液体の通路中の気体を直接、ハブの外部に排出するとともに、血液等の液体をフィルターで遮断する。従って、通気路として、液体の通路における弁の前後を連通するものだけを備えている場合と比較して、生体から液体の通路に進入しフィルターによって遮断された血液が、隔壁の外部機器側に移動し難くなっている。これにより、生体から液体の通路に進入した血液が、ハブ組立体の外部機器側に漏出することを抑制できる。なお、本発明は、通気路としては、液体の通路とハブの外部とをフィルターを介して連通したものだけを備えることが望ましい。このことで、より確実に、生体から液体の通路に進入した血液が、ハブ組立体の外部機器側に漏出することを抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明においては、通気路の液体の通路に対する開口部の隔壁側の端部は、隔壁の先端に対し、先端側に10mm以下の場所に設けられているので、液体の通路に気泡が発生した場合でも、10mm以上の大きさの気泡は、確実に通気路からフィルターを通過して外部に排出される。よって、大きな気泡が生体の体内に導入されてしまうことを抑制できる。
【0011】
また、通気路を有するハブ組立体において、外部機器のポンプ圧等の作用により血液が通気路内を移動してしまう課題を有する。本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置されるスリット付きの隔壁と、
前記液体の通路における、気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて通気可能とした通気路と、
を備え、
前記外部機器からのチューブが前記ハブに接続された際には、前記隔壁のスリットが押し開けられることで、前記液体の通路における前記隔壁の生体側と外部機器側とを連通させ、
前記通気路の前記隔壁よりも前記生体側の前記液体の通路に対する開口部は、前記ハブの内壁において、前記隔壁のスリットが押し開けられた際に、該スリットの周囲において変形した前記隔壁の一部が達する領域に設けられたことを特徴とする、ハブ組立体である。
【0012】
すなわち、本発明においては、通気路の液体の通路に対する開口部は、ハブの内壁において、例えば押し子によって隔壁のスリットが押し開けられた際に、スリットの周囲において変形した隔壁の一部が達する領域に設けられている。よって、隔壁のスリットが押し開けられた際に、スリットの周囲において変形した隔壁の一部によって通気路への液体の進入が阻害される。よって、隔壁のスリットが押し開けられた状態において、外部機器のポンプ圧等、生体の血圧より大きな圧力がフィルターに作用することを防止でき、フィルターに接触する液体圧によってフィルターを超えて血液が外部に漏出してしまうことを抑制できる。
【0013】
これにより、従来、外部機器からハブ組立体に液体を導入し液体の通路を通過させる場合に、外部機器のポンプ圧がフィルターに作用することによる、液体の漏出やフィルターの寿命の低下等といった不都合が生じ得たところ、これらを解消することが可能となる。また、透析治療時に通気路と液体の通路とが分断されるようにすれば、通気路内に形成され得る血栓等の微少な異物が血管内に混入する不都合を抑制することができる。なお、上記の構成は、通気路がハブ組立体の液体の通路と外部とを連通している場合の他、通気路がハブ組立体の液体の通路における隔壁の生体側と外部機器側を連通している場合にも適用可能である。
【0014】
また、通気溝が隔壁とカテーテルアダプタの内表面との間に介設されたハブ組立体において、流体が隔壁の基端側に流れるため、空気の他、血液が隔壁の基端側にリークする危険性があるという課題を有する。本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置されるスリット付きの隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
を備え、
前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域をカバーするフィルターキャップをさらに備えることを特徴とするハブ組立体である。
【0015】
ここで、フィルターと、液体の通路とハブの外部とをフィルターを介して連通する通気路と、を備えるような場合には、フィルターがハブ組立体の外表面に露出した構造では、フィルターが人の手等に触れて破損したり、フィルターと通気路を備える部分において、ハブの肉厚を充分に厚くすることができない場合がある。これに対し、本発明においては、フィルターキャップでハブをカバーすることで、ハブ組立体の強度を向上させることができる。また、ハブ組立体の取り扱い時に使用者の手がフィルターに触れるなどの不都合を抑制することが可能である。なお、上記の構成は、通気路として、ハブ組立体の液体の通路と外部とを連通しているもののみを有する場合の他、通気路として、ハブ組立体の液体の通路における隔壁の生体側と外部機器側を連通するものも併せて有する場合にも適用可能である。
【0016】
なお、フィルターは通気路の液体の通路に対する開口部に近い位置に配置されているのが好ましく、前記フィルターは、前記隔壁よりも前記生体側に配置されるようにする方が好ましい。
【0017】
また、本発明においては、前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体が挿入されることで該ハブ本体と結合するとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成されるようにしてもよい。これによれば、ハブ本体と、ハブ外装体とで、前記隔壁を挟み込んで固定する。あるいは、ハブ本体の材質をハブ外装体の材質より硬度が低い材質として、コネクターのかじりを防止する等、ハブ組立体としての設計自由度を増加させることができる。
【0018】
また、本発明においては、前記隔壁のスリットが押し開けられることで、前記液体の通路における前記隔壁の生体側と外部機器側とを連通させた際に、前記変形した前記隔壁の一部が前記通気路の前記液体の通路に対する開口部を閉塞させるようにしてもよい。そうすれば、さらに確実に、生体の血圧より大きな圧力がフィルターに作用することを防止でき、装置の耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明においては、前記通気路の前記液体の通路に対する開口部が設けられた位置における、前記液体の通路の径はφ3mm以上としてもよい。本発明に係るハブ組立体の液体の通路は、薬液や血液の流量を考慮すると径はφ1.5mm以上であることが望ましい。そして、それに加えて液体の通路の径をφ3mm以上としつつ、前記押し子によって前記隔壁のスリットが押し開けられた際に、該スリットの周囲において変形した前記隔壁の一部が達する径とすることで、押し子が隔壁のスリットを押し開けた際に、隔壁による通気路の閉塞機能をより円滑に発揮させることが可能となる。これにより、さらに確実に、生体の血圧より大きな圧力がフィルターに作用することを防止でき、装置の耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明においては、前記ハブ外装体の外壁面における前記フィルターが配置された領域をカバーする略円筒状のフィルターキャップをさらに備えるようにしてもよい。そうすれば、フィルターがハブの外壁面に配置され、ハブについて充分な肉厚を確保できない場合でも、ハブ組立体としての強度を向上させることができる。また、ハブ組立体の取り扱い時に使用者の手がフィルターに触れるなどの不都合を抑制することが可能である。
【0021】
また、本発明においては、前記フィルターキャップは、前記フィルターを通過した気体がフィルターキャップの外部に排出可能なキャップ通気手段を有するようにしてもよい。そうすれば、フィルターを通過した空気を円滑にフィルターキャップの外部に排出することが可能となり、使用者がより円滑に生体の血液のフラッシュバックを確認することが可能となる。
【0022】
また、本発明においては、前記通気路の一部は、前記ハブの内壁である前記液体の通路側に設けられ前記ハブの軸方向に延びる溝である通気溝と、前記ハブにおける外壁側に設けられた凹部である通気孔を連通させて形成されるようにしてもよい。
【0023】
これによれば、通気溝と通気孔との位置関係及び、通気溝の断面形状を変化させることで、通気路の態様を高い自由度で変更することが可能となる。また、樹脂成形により通気路を含むハブを成形する際に、型の設計自由度を高めることが可能となる。
【0024】
また、本発明においては、前記通気路は、前記ハブの軸方向から見て、周方向に複数形成されるようにしてもよい。なお、好ましくは、少なくとも90度毎に4箇所形成されるようにしてもよい。これによれば、仮にハブ組立体が傾いた状態であっても、いずれかの通気路を通じて、より確実に、気体をハブの外部に排出させることが可能となる。
【0025】
また、本発明においては、前記フィルターは、前記ハブの外壁面と前記フィルターキャップの内壁面との間に設けられる、リング状の立体形状を有するようにしてもよい。このようにすることで、フィルターを容易にハブ組立体に組み付けることができる。その際、フィルターは、ハブの外壁面に嵌合されるようにしてもよい。また、フィルターは、ハブの外壁面とフィルターキャップの内壁面に直接挟持されている必要はなく、別部材を介して間接的に挟持されていてもよい。
【0026】
これによれば、フィルターをハブの外壁面に容易な方法で設置することができ、ハブの構造を簡単にするとともに、組立を容易化することが可能となる。その結果、装置のコストダウンを図ることができる。
【0027】
また、本発明においては、前記ハブの外壁面及び前記フィルターキャップの内壁面において、前記フィルターに接する部分の角部の少なくとも一つに角丸めが施されるようにしてもよい。
【0028】
これによれば、フィルターをハブの外壁面に嵌合する際や、フィルターキャップを組み付ける際に、ハブやフィルターキャップの角部がフィルターに当接し、フィルターが削れたり破損することを抑制できる。なお、万が一、フィルターが削れた際にも、角部に角丸めが施されていない場合には、削り粉がそのまま角部に残ってしまうが、角丸めが施された場合には、削り粉はフィルターの圧縮面に入り込んで保持される。その結果、フィルターが削れた際の削り粉がハブ組立体の内部に移動し得る状態で残存することを抑制できる。
【0029】
また、本発明においては、前記フィルターは、前記ハブの外壁面及び前記フィルターキャップの内壁面によって、少なくとも一部が径方向に圧縮されて固定され、該固定されたフィルターの周囲の少なくとも一部には、該フィルターが圧縮されることに起因して突出する、該フィルターの突出部分を収容する収容空間を有するようにしてもよい。
【0030】
ここで、一般的には所定の部材を圧縮した場合には、当該部材における圧縮されていない箇所は逆に突出する場合が多い。そして、部材を圧縮する際に、前述のような突出を妨げてしまうと、圧縮自体が円滑に行えない、あるいは、圧縮に必要な圧力が増加するなどの不都合が生じる虞がある。これに対し、本発明においては、フィルターがハブの外壁面及びフィルターキャップの内壁面によって圧縮されて固定される際に、フィルターの突出部分を収容可能な収容空間を予め設けておくこととした。これによれば、より円滑に、フィルターを圧縮することが可能となり、組立後のフィルターの形状や位置を安定化させることが可能となる。
【0031】
また、通気溝が隔壁とカテーテルアダプタの内表面との間に介設されたハブ組立体において、流体が隔壁の基端側に流れるため、空気の他、血液が隔壁の基端側にリークする危険性があるという課題を有する。また、ハブ組立体においては、組立の容易性や自由度を向上させるという課題がある。本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部とを前記フィルターを介して連通し、前記液体の通路中における気体を、前記フィルターを通過させて外部に排出可能とした通気路と、
前記ハブの外壁面における前記フィルターが配置された領域をカバーするフィルターキャップと、を備え、
前記ハブは、前記外部機器からのチューブと接続されるハブ本体と、前記ハブ本体が挿入されることで該ハブ本体と前記生体側から結合するとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブ外装体とから構成され、
前記フィルターキャップは、前記ハブ外装体及び前記ハブ本体の少なくとも一部を収容するとともに、前記フィルターキャップと、前記ハブ本体とが係合されることにより、前記ハブ外装体、前記ハブ本体及び前記フィルターキャップを一体化させることを特徴とする、ハブ組立体であってもよい。
【0032】
これによれば、フィルターキャップの内部に、ハブ外装体を包含し、さらに、ハブ外装体とフィルターキャップにハブ本体を挿入し、フィルターキャップとハブ本体を係合させることで、全体を一体化することが可能となる。その結果、結合箇所を全体として減少させ、装置構成を簡略化し、組立方法を容易化することが可能となる。なお、ここで一体化するとは、複数の部材が係合することで、一体として取扱い可能となることをいう。
【0033】
また、通気路を有するハブ組立体においては、血圧等の圧力により血液が通気路内を移動してしまう課題を有する。本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記外部機器からのチューブと接続されるとともに前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置され、先端側の空間と基端側の空間とを区画する隔壁と、
前記液体の通路における気体を通過させるフィルターと、
前記液体の通路と前記ハブの外部又は前記基端側の空間とを前記フィルターを介して連通し、前記先端側の空間における気体を通過させる通気路と、
を備え、
前記フィルターは、前記液体の通路における気体が該フィルターを通過する方向に対して角度を有する方向に圧縮されていることを特徴とする、ハブ組立体であってもよい。
【0034】
本発明によれば、通気路に設けられたフィルターが、液体の通路における気体が該フィルターを通過する方向に対して角度を有する方向に圧縮されて固定されることで効率的にフィルターの隙間を小さくすることができ、より確実に耐圧性を向上させることができ、血液が外部にリークする可能性を低減させる。
【0035】
また、本発明においては、前記フィルターが、硬質部材によって挟まれるように圧縮されているようにするのが好ましい。これによれば、フィルターを効率的に圧縮させることができ、フィルターの隙間がより確実に小さくなり、より確実に耐圧性を高くすることができる。
【0036】
また、通気路を有するハブ組立体において、ハブに外部機器のコネクターが接続された状態において、外部機器のポンプにより圧送される液体がそのままの勢いで、通気路の弁より先端側の開口部に送達されてしまうので、ポンプにより圧送される液体が通気路内に流入しやすいという課題を有する。本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される開閉可能な隔壁と、
前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域に開口部を有し、前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域と、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部とを連通し、前記液体の通路中における前記隔壁の前記生体側の領域における気体を、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部に移動可能とした通気路と、
を備え、
前記隔壁を開口することで、前記隔壁の一部が前記通気路の前記開口部の少なくとも一部を閉塞させる又は前記隔壁の前記生体側の領域と前記通気路とを離隔するように変形することを特徴とするハブ組立体である。
【0037】
これによれば、ハブ組立体と外部機器とが接続された状態において、外部機器のポンプによって圧送される液体は前記隔壁の一部により緩衝されることで勢いが弱まる。従って、通気路の生体側の領域の開口から通気路内に液体が流入することが抑制される。これにより、通気路を介して液体の漏出が生じることを抑制することができる。なお、通気路が外部と連通している場合に、通気路において生じた血栓等が通気路を介して液体の通路に流れる事態を抑制することができる。
【0038】
また、本発明においては、前記隔壁の一部が前記通気路の前記開口部全体を閉塞させるように変形することを特徴とするハブ組立体であってもよい。これによれば、確実に、液体の通路における隔壁の生体側の領域と通気路とを分離させることもできる。
【0039】
また、本発明においては、前記隔壁の一部が、前記通気路の前記開口部の周りを囲む、又は、前記通気路の前記開口部より生体側のハブ内面と周状に当接するように変形することを特徴とするハブ組立体であってもよい。また、前記隔壁の生体側の面に周状の突起を設け、当該突起が前記ハブ内面と周状に当接することで、前記隔壁の一部が前記通気路の前記開口部より生体側のハブ内面と周状に当接するようにしてもよい。
【0040】
また、本発明においては、前記通気路の途中に設けられ気体を通過させるとともに液体の通過を規制するフィルターがさらに備えられていてもよい。フィルターは材質や圧縮具合により、液体の通過を許容してしまう上限圧が変わるものの、上限圧を超えれば液体は通過してしまう。本発明によれば、外部機器のポンプ等による大きな圧力がフィルターに影響を及ぼす事を低減でき、ポンプ等によるフィルターへの影響を低減できる。
【0041】
また、本発明は、治療または検査の対象である生体と外部機器との間で所定の液体の流通を可能とするハブ組立体であって、
前記液体の通路を構成する略筒状のハブと、
前記ハブの内部における前記液体の通路に配置される開閉可能な隔壁と、
前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域に開口部を有し、前記液体の通路における前記隔壁の前記生体側の領域と、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部とを連通し、前記液体の通路中における前記隔壁の前記生体側の領域における気体を、前記液体の通路における前記隔壁の前記外部機器側の領域または前記ハブの外部に移動可能とした通気路と、
を備え、
前記通気路には気体を通気可能なフィルターが配置され、該フィルターには吸水性膨潤体が設けられることを特徴とする、ハブ組立体であってもよい。
【0042】
なお、上記の構成は、通気路がハブ組立体の液体の通路と外部とを連通している場合、血液が外部に漏出される事態を低減できる。また、通気路がハブ組立体の液体の通路における隔壁の生体側と外部機器側を連通している場合、ハブ組立体の外部機器側にコネクターが挿入されていない時(内針抜去からコネクター接続までの間やトイレ休憩等で一時的にコネクターを接続解除する時等)に血液が外部機器側から漏出してしまう事態を低減できる。
【0043】
なお、本発明においては、上記した課題を解決するための手段を、可能な限り組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、ハブ組立体において、血液のフラッシュバックの確認を可能とするとともに、より高い信頼性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の実施例における外針ユニットの斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1における外針ユニットを軸と垂直方向から見た断面図である。
【
図3】本発明の実施例1におけるハブ組立体を軸と垂直方向から見た断面図である。
【
図4】本発明の実施例1におけるハブ組立体におけるフィルター付近を示す図である。
【
図5】本発明の実施例におけるディスク弁の概略図である。
【
図6】本発明の実施例におけるフィルターの概略図である。
【
図7】本発明の実施例におけるガイドコネクターの概略図である。
【
図8】本発明の実施例における外針ユニットの分解斜視図である。
【
図9】本発明の実施例1におけるハブ組立体の作用の一例を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施例2におけるハブ組立体におけるフィルター付近を示す図である。
【
図11】本発明の実施例3における外針ユニットの斜視図である。
【
図12】本発明の実施例3における外針ユニットを軸と垂直方向から見た断面図である。
【
図13】本発明の実施例3におけるハブ組立体を軸と垂直方向から見た断面図である。
【
図14】本発明の実施例3におけるハブ組立体におけるフィルター付近を示す図である。
【
図15】本発明の実施例3におけるハブ組立体におけるフィルター付近を示す拡大図である。
【
図16】本発明の実施例3におけるフィルターキャップの概略図である。
【
図17】本発明の実施例3におけるコネクターカバーの概略図である。
【
図18】本発明の実施例3におけるガイドコネクターの概略図である。
【
図19】本発明の実施例3における外針ユニットにコネクターを取り付けた状態の図及び、軸と垂直方向から見た断面図である。
【
図20】本発明の実施例3における外針ユニットにコネクターを取り付けた状態の斜視図である。
【
図21】本発明の実施例4におけるハブ組立体を軸と垂直方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施例は本発明の実施形態の一例に過ぎず、本発明の構成を特に限定するものではない。
【0047】
(実施例1)
<基本構成>
図1及び
図2には、本発明の実施例としてのハブ組立体10を備えた留置針組立体における外針ユニット12を示す。
図1(a)は、外針ユニット12の斜視図であり、
図1(b)は特にハブ組立体10の斜視図を拡大した拡大図である。
図2は、外針ユニット12を軸方向に垂直な方向から見た断面図である。なお、本明細書において、軸方向とは外針ユニット12が構成する流体通路の長さ方向のことであって、
図2における左右方向を意味する。また、先端側とは、
図2における左側を意味し、基端側とは、
図2における右側を意味する。
【0048】
図1に示す外針ユニット12においては、ハブ組立体10の先端側に、円筒状のクランピングチューブ13の基端が固定され、さらに、クランピングチューブ13の先端側に、中空の外針14及び、外針14の基端側が拡径して設けられた外針針基部14aが固定された構造となっている。また、外針14の先端部には、先細となるテーパ状外周面64が形成されて、生体への穿刺抵抗が軽減されていると共に、テーパ状外周面64の周壁には、複数の貫通孔66が設けられて、外針14に対する流体の流通効率の向上が図られている。そして、外針ユニット12に対して、内針を備える公知の内針ユニットが挿通されることにより、留置針組立体が構成される。
【0049】
ハブ組立体10の概略形状は、ハブ外装体の一例であるコネクターカバー16の基端側に、ハブ本体の一例であるガイドコネクター9が挿入されることで形成されている。コネクターカバー16は略円筒形状を有している。また、コネクターカバー16の基端側の外壁面には、使用者が把持し易いように複数の凸条30が軸方向に平行に形成されている。ガイドコネクター9の基端側開口部の外壁面には、ねじ山が設けられたロック部9aが形成されており、ガイドコネクター9の基端側開口部に対してルアーロック式の雄コネクター等を接続できるようになっている。また、本実施例においては、コネクターカバー16の先端側には、略円筒状の形状を有しコネクターカバー16の先端側の領域を覆うフィルターキャップ18が取り付けられている。
【0050】
次に、
図3を用いて、ハブ組立体10の構造についてより詳細に説明する。
図3は、ハブ組立体10を軸方向に垂直な方向から見た断面図である。コネクターカバー16の内部において、その先端側にはクランピングチューブ13が嵌合される円柱形状の空間を形成する先端嵌合部16aが設けられており、基端側にはガイドコネクター9が挿入され固定される略円柱形の空間を形成する基端挿入部16dが設けられている。さらに、先端嵌合部16aと基端挿入部16dの間を連通する断面円形の連通穴16bを形成する接続壁部16cが設けられている。
【0051】
前述のように、先端嵌合部16aには、先端側からクランピングチューブ13が圧入されて固定されている。また、基端挿入部16dには、ガイドコネクター9が挿入され、位置規制爪9bがコネクターカバー16の係合穴16eと係合することで離脱が防止されている。さらに、
図1(b)に示すように、位置規制凸部9cがコネクターカバー16の係合スリット16fと係合することで、コネクターカバー16に対する、ガイドコネクター9の先端側への過剰な移動や軸回りの回転が規制されている。
【0052】
また、コネクターカバー16の外壁面における先端側の領域は、略円筒形状を有するフィルターキャップ18により覆われている。このフィルターキャップ18は、先端において縮径しており縮径した先端の段差18aがコネクターカバー16の先端と当接することで基端側への移動が規制されている。また、
図1(b)に示すように、コネクターカバー16に設けられたキャップ位置規制爪16lがフィルターキャップ18のキャップ係合穴18bと係合することで、コネクターカバー16に対する、フィルターキャップ18の離脱が規制されている。さらに、コネクターカバー16に設けられたキャップ位置規制凸部16iがフィルターキャップ18のキャップ係合スリット18cと係合することで、コネクターカバー16に対する、フィルターキャップ18の基端側への過剰な移動や軸回りの回転が規制されている。
【0053】
図4には、ハブ組立体10におけるフィルター25(後述)付近の図を示す。
図4(a)はフィルター25(後述)の軸方向から見た図、
図4(b)はフィルター25(後述)の軸に垂直な方向から見た断面図である。なお、本実施例ではフィルターキャップ18は透明な樹脂材料で形成されているため、
図4(a)には表れていない。
図3及び
図4に示されるように、コネクターカバー16において、フィルターキャップ18に覆われた領域であって、軸方向に関して連通穴16bに相当する部分の外壁には、フィルター収納部16jが設けられている。このフィルター収納部16jは、コネクターカバー16の軸に垂直な方向から見て円形の断面を有する円柱状の空間である。このフィルター収納部16jは、コネクターカバー16の外壁面のフィルター開口部16mにおいて開口している。
【0054】
そして、円筒状のフィルター収納部16jの底面であるフィルター設置面16kには、円盤状のフィルター25が設置されている。フィルター25は、フッ素樹脂やセルロースアセテート、ポリエチレン、アクリル、ポリエーテルスルフォン、ガラス繊維等で作られた多孔性の膜からなるメンブレンフィルターである。
図6にはフィルター25の概略形状について示す。また、フィルター設置面16kの中央部にはさらに円柱状の凹部である通気孔16hが設けられている。なお、フィルター25は、通気孔16hの開口部を隙間なく囲むように、溶着部16sにおいてフィルター設置面16kに溶着により固定されている。
【0055】
一方、コネクターカバー16における連通穴16bの内壁面には、連通穴16b内の空気を外部に逃がすための通気溝16gが設けられている。この通気溝16gは、連通穴16bの内壁面に設けられた前後方向に延びる凹溝である。この通気溝16gの先端側の一部は、上述の通気孔16hと連通している。よって、この通気溝16gと通気孔16hとを介して連通穴16b内の空気がフィルター25を通過し、さらに、コネクターカバー16とフィルターキャップ18との間の隙間16tを通過して外部に流出可能となっている。一方、連通穴16b内に存在する血液等の液体は、この通気溝16gと通気孔16hとを介してフィルター25に到達するが、フィルター25によって遮断され、外部に漏出することが防止されている。なお、本実施例において、コネクターカバー16とフィルターキャップ18との間の隙間16tは、キャップ通気手段の一例である。また、本実施例において、通気溝16gと通気孔16hの位置がずれている。このようにすることで、ハブの成形性を維持しつつ通気溝16gを隔壁に隣接させることができるが、通気溝16gと通気孔16hの位置とを一致させてもよい。
【0056】
図3に示すように、コネクターカバー16の内部には、スリット20cが形成された隔壁としてのディスク弁20が装着されている。
図5には、ディスク弁20の概略構成を示す。
図5(a)は軸方向に垂直な方向から見た断面図、
図5(b)は基端側から見た図である。ディスク弁20は、円盤状のディスク部20aとディスク部20aの外周に設けられ基端側に突出した枠状の枠部20bを有している。ディスク部20aには、ディスク部20aの中心から120度間隔で放射状に設けられたスリット20cが設けられ、ディスク部20aと枠部20bの境界部分には円環状の溝20dが設けられている。なお、枠部20bは、周方向の全周に亘って連続して形成されて略円筒形状とされており、溝20dの外周側の壁部がそのまま基端側に延長されるようにして形成されている。
【0057】
このディスク弁20はゴムやエラストマーにより形成されることで弾性変形可能なディスク状の弁体とされている。なお、スリット20cは、直線状や十文字形状、中心から4方向以上に延び出す放射形状であってもよい。
【0058】
図3の説明に戻る。ディスク弁20は、コネクターカバー16の基端挿入部16dに挿入され、ディスク部20aの先端側の面が接続壁部16cに当接され、枠部20bの外壁面が基端挿入部16dにおける接続壁部16c付近の内壁面に当接されることで位置が規制されている。ここで、ディスク弁20の単品状態での外径寸法は、コネクターカバー16における基端挿入部16dの接続壁部16c付近の内径寸法よりも僅かに大きくされている。これにより、ディスク弁20がコネクターカバー16に組み付けられた状態では、ディスク弁20に対して径方向の圧縮力が及ぼされて、スリット20cを閉鎖状態に保持する応力が与えられるようになっている。また、ディスク弁20がコネクターカバー16に収容装着された状態では、溝20dが、軸方向基端側に向かって開口されている。
【0059】
ディスク弁20の基端側には、概略円筒状の押し子22が配置されている。押し子22は、軸方向の全長に亘って直線的に延びる挿通孔を形成する内壁面22bを有している。また、押し子22の先端側の外壁面は、先端側に向かって次第に小径となるテーパ部22aとされており、前進することで押し子22がディスク弁20のスリット20cに押し入れられ、ディスク弁20の先端側と基端側が連通されるようになっている。また、押し子22の基端側部分の外壁面は、テーパ部22aの最大外径寸法よりも小径とされている。
【0060】
ガイドコネクター9は、概略円筒状の部材である。ガイドコネクター9の先端部9kは、その設置位置において、ディスク弁20の溝20dに進入し溝20dをコネクターカバー16の基端挿入部16dにおける接続壁部16cの壁面に押圧することで、ディスク部20aの位置及び姿勢を規制する。なお、これらはゼロタッチで当接していてもよいし、押し付けられて、ディスク弁20の外周端部が軸方向で圧縮されていてもよい。また、先端部9kの基端側の外壁面には、テーパ状に拡径した拡径面9mが形成されており、拡径面9mの外壁面がディスク弁20の枠部20bの内壁面を押し広げるようになっている。そして、コネクターカバー16の基端挿入部16dの内壁面とガイドコネクター9の拡径面9mの外壁面とでディスク弁20の枠部20bを径方向で挟み込み、ディスク弁20を支持するようになっている。また、このことで、ディスク弁20の外壁面とコネクターカバー16の内壁面との間の気密性、液密性を確保している。
【0061】
また、ガイドコネクター9の拡径面9mの基端側には垂直に外周側に切り立った壁面である垂直面9lが設けられている。この垂直面9lが、ガイドコネクター9の組付状態において、ディスク弁20の枠部20bの基端側の端部を先端側に押圧する。これにより、コネクターカバー16の接続壁部16cの壁面とガイドコネクター9の垂直面9lとでディスク弁20の枠部20bを軸方向で挟み込み、このことによってもディスク弁20を支持するようになっている。このことで、ディスク弁20の外壁面とコネクターカバー16の内壁面との間の気密性、液密性を確保している。
【0062】
ガイドコネクター9の内壁面9jには、内周側に突出する段差部9hが、周方向に連続した環状に形成されている。段差部9hの内径寸法は、押し子22の基端側部分の外壁面の径寸法と略同じか僅かに大きく設定されており、また、ガイドコネクター9の内壁面9jの内径寸法は、押し子22におけるテーパ部22aの最大外径寸法と略等しいか僅かに大きくなっている。このことで、段差部9hの内壁面により、押し子22の基端側部分の外壁面が保持されると共に、ガイドコネクター9の内壁面9jにより、押し子22におけるテーパ部22aの最大外径部分が保持されている。その結果、ガイドコネクター9内で押し子22が略同軸的に支持され案内されるようになっている。さらに、段差部9hの内径寸法は、押し子22におけるテーパ部22aの最大外径より小さく設定されている。これにより、押し子22が基端側に移動してガイドコネクター9から離脱することが防止されている。
【0063】
なお、上記の組付状態において、ディスク弁20のディスク部20aの基端側の面と押し子22の先端とが当接していることが好適である。これにより、押し子22の先端側の位置を規定することができて、押し子22がディスク弁20とガイドコネクター9との間で軸方向について位置決めされ得ると共に、押し子22が軸方向に対して傾く危険性が低減され得る。
【0064】
図7には、本実施例におけるガイドコネクター9の概略図を示す。
図7(a)は軸方向先端側から見た図、
図7(b)は軸方向と垂直な方向から見た断面図である。本実施例におけるガイドコネクター9は、前述のように全体として略円筒形状とされており、内壁面の基端側の領域9dは、基端側にいくほど拡径されるテーパ面となっている。このテーパ角は、透析器等の外部機器からのチューブ先端のコネクターのテーパ角度と一致するように設定されている。
【0065】
ガイドコネクター9をコネクターカバー16に挿入し、位置規制爪9bをコネクターカバー16の係合穴16eと係合させ、位置規制凸部9cをコネクターカバー16の係合スリット16fと係合させることで、コネクターカバー16内におけるガイドコネクター9の位置が決まる。
【0066】
さらに、ガイドコネクター9の外壁面における垂直面9lの基端側には、コネクターカバー16の内壁面と対向するカバー挿入面9nが設けられている。このカバー挿入面9nは、コネクターカバー16の内壁面より若干小さい外径を有し、コネクターカバー16内で安定してガイドコネクター9の軸と垂直方向の位置や傾きを維持可能となっている。
【0067】
ガイドコネクター9の外壁面における位置規制爪9bの基端側には、コネクターカバー16の係合穴16eより基端側の内壁面と対向する第二カバー挿入面9pが設けられている。この第二カバー挿入面9pは、コネクターカバー16における係合穴16eの基端側の内壁面より若干小さい外径を有し、コネクターカバー16内におけるガイドコネクター9の軸と垂直方向の位置や傾きの維持を補助している。
【0068】
ガイドコネクター9の外壁面における第二カバー挿入面9pのさらに基端側には、コネクターカバー16の基端側に露出する部分である露出面9rが設けられる。この露出面9rの外壁面は、カバー挿入面9n、第二カバー挿入面9pより小さい径を有し、外部機器からのチューブ先端のコネクターをガイドコネクター9に接続する際の作業性を確保している。
【0069】
なお、上述のコネクターカバー16、ガイドコネクター9、押し子22は、作用する外力に対して実質的に変形することなく初期形状を保ち得る程度の剛性を有する材料で形成されていればよい。好適には、硬質の合成樹脂材料で形成されたものが採用され得る。例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート等であってもよい。なお、ガイドコネクター9を形成する材料は、コネクターカバー16を形成する材料より硬度の低いものとしてもよい。そうすることで、ハブ組立体全体としての強度を確保しながら、ガイドコネクター9と外部機器からのコネクターとのかじりを抑制することができる。
図8には、本実施例における外針ユニット12の分解斜視図を示す。
【0070】
<作用>
上記のような構造とされたハブ組立体10の先端に対して、外針14、外針針基部14a及びクランピングチューブ13が固着されることにより、外針ユニット12が構成されている。外針14としては、従来公知のものが採用され得て、例えばステンレス鋼などにより形成された金属製の中空針とされてもよいが、適度な可撓性を有する材料、例えば各種の軟質樹脂により形成されてもよい。
【0071】
さらに、外針ユニット12に対して、内針を備える内針ユニット(不図示)を挿通することにより、留置針組立体が構成される。ここで、外針ユニット12に対して内針ユニットを挿通することにより、内針がディスク弁20のスリット20cに挿通されるが、押し子22は
図3等に示される組付状態となっており、ディスク弁20が大きく弾性変形させられることはない。
【0072】
上記の留置針組立体を使用するに際しては、先ず、留置針組立体を生体の血管に穿刺した後、内針ユニットが血管に穿刺されていることを確認し、内針ユニットを外針ユニット12から基端側に引き抜く。このことにより、外針ユニット12を患者の血管に穿刺された状態で留置することが可能である。その際、ディスク弁20から内針が抜去されることにより、ディスク弁20が初期形状に復元されて、スリット20cが閉鎖される。
【0073】
この際、例えば、クランピングチューブ13内に存在していた空気は、血液の流入圧により基端側に押し出される。この空気は、コネクターカバー16の内壁面に設けられた通気溝16gに流入する。そして、空気は、通気孔16hにさらに流入し、フィルター25に到達する。フィルター25は、空気(気体)を通過可能に構成されていることから、空気をそのままフィルターキャップ18とコネクターカバー16の間の空間に排出することができる。さらに空気は、フィルターキャップ18とコネクターカバー16の外壁面の隙間16tを通過して外部に排出される。これにより、空気は、クランピングチューブ13内から連通穴16b、通気溝16g、通気孔16h、フィルター25、コネクターカバー16とフィルターキャップ18との間の隙間16tを通過して外部に流出可能である。その結果、外針14及びクランピングチューブ13の中は血液で満たされる。使用者は、この「フラッシュバック」を視認することで、外針ユニット12が正常に生体の血管に穿刺されていることを確認できる。
【0074】
ディスク弁20から内針が抜けると、血液は、クランピングチューブ13に充満し、その一部が連通穴16b、通気溝16g、通気孔16hに流入するが、フィルター25によって、外部への流出が妨げられる。また、ガイドコネクター9の拡径面9mがディスク弁20の枠部20bの内壁面を圧縮してコネクターカバー16の内壁面に密接させているため、生体の血液が、外針ユニット12内において、ディスク弁20より基端側へ漏出することが防止されている。
【0075】
そして、使用者は、
図9に示されているように、ガイドコネクター9(あるいは、外針ユニット12)の基端側からコネクター68の先端部分を挿入して、ガイドコネクター9の基端側の開口部に対してテーパ係合して接続させる。または、雄コネクターとしてルアーロックコネクタが採用される場合には、ロック部9aに対してねじ固定して接続させる。これに伴い、押し子22がコネクター68の先端部分により軸方向先端側に押し込まれると共に、押し子22の先端がディスク弁20のスリット20cに押し入れられる。この結果、ディスク弁20のディスク部20aのスリット20cの周囲の部分が軸方向先端側に弾性変形し、スリット20cが開放されて、ディスク弁20の基端側と先端側が連通する。これにより、コネクター68の内部領域から外針ユニット12の内部を経て、生体の血管内へと至る通路が構成され、輸液や輸血、採血等が実施される。
【0076】
なお、押し子22が軸方向先端側に押し込まれる際には、押し子22の最大径を有するテーパ部22aの基端部が、ガイドコネクター9の内壁面9jにゼロタッチで当接、または僅かな距離を隔てて離隔していることから、押し子22は、ガイドコネクター9の内壁面に沿って移動して軸方向先端側のディスク弁20に押し込まれる。或いは、軸方向に対して傾斜したとしても、僅かな傾斜角度をもって、押し子22がディスク弁20に押し込まれる。
【0077】
また、その際、押し子22がディスク弁20に押し込まれた際には、ディスク弁20のディスク部20aが連通穴16b側に変形し、通気溝16gを閉塞させる。これは、通気溝16gは隔壁の一部が達する領域に位置するに設けられていることによる。具体的には、通気溝16gが隔壁先端から軸方向所定距離(押し子によって変形するディスク部20aの変形領域の外周縁からスリット20cの中央部までの長さ)以内に設けられることによる。このことにより、輸液や輸血により、コネクター68から導入された薬液や血液が通気溝16g及び通気孔16hに流入し、外部機器からの薬液や血液の流入圧力がそのままフィルター25に作用することが抑制される。このように、本実施例では、押し子22がディスク弁20に押し込まれた際には、ディスク弁20が通気溝16gを閉塞させるため、フィルター25の負荷、例えば、外部機器のポンプ圧の作用を低減することができ、装置の耐久性等の信頼性を向上できるとともに、フィルター25自体の耐圧性の仕様や溶着の仕様を緩和することが可能となる。
【0078】
なお、通気溝16gは隔壁にできるだけ近づけた方が良く、隔壁に隣接している方が好ましい。本実施例においては、ディスク部20aの変形領域の外周側(スリットが無い部分)が通気溝16gを閉塞する。ディスク部20aのスリット20cに囲まれた部分が通気溝16gを全部閉塞するようにしてもよいが、ディスク部20aの変形領域の外周側(スリットが無い部分)が通気溝16gをできるだけ閉塞する方が好ましい。なお、本実施例においては、通気溝16gは上述の位置に設けられているが、通気溝16gの位置はスリットの形状やスリットの長さ及び押し子の寸法により変更可能である。従って、通気溝16gはスリット20cの周囲の部分が変形したディスク弁20の一部が達する領域に位置するようであればよい。
【0079】
そして、治療または検査の後、あるいは中断時には、コネクター68をガイドコネクター9(あるいは、外針ユニット12)の基端側から引き抜くことにより、ディスク弁20が初期形状に復元変形すると共に、この弾性復元力によって押し子22が基端側に押し戻される。この押し子22の基端側への移動は、ディスク弁20が組付状態に復元するか、押し子22のテーパ部22aの基端部とガイドコネクター9の段差部9hとが当接することによって制限される。
【0080】
ここで、一般的に、輸液や採血、血液透析等を行うためハブ組立体10に求められる流量の観点から、押し子22の内壁面22bの直径はφ1.5mm程度以上であることが望ましい。その場合、上記のように変形したディスク弁20によって通気溝16gを閉塞させるためには、ディスク弁20の変形空間を考慮して、連通穴16bの直径Dにはφ3mm以上であると良い。よって、本実施例においては、連通穴16bの直径Dはφ3mm以上とすることが望ましい。また、押し子22の一部外面に大径部を設けて、押し子22の大径部がディスク弁20外周側を周状に押し込むことが望ましい。
【0081】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、ハブ組立体内における液体の流路からフィルターに繋がる通気路の流路への開口部が、実施例1と比較して、より先端側において開口している例について説明する。実施例1においては、連通穴16bにおいて、空気や血液のフィルター25への通気路である通気溝16gは、ディスク弁20の先端面の直前方から開口されていた。これは、押し子22がディスク弁20のスリット20cを押し開けた場合に、より確実に通気溝16gを閉塞させるためのものである。
【0082】
しかしながら、押し子22がディスク弁20のスリット20cを押し開けた場合に、必ずしも、ディスク弁20によって、通気溝16gを完全に閉塞させる必要はない。また、通気溝16gに直接接触することなく、通気溝16gを囲うようであってもよい。また、変形後のディスク弁20が、通気溝16gの開口部の後端側の一部に当接すれば、ある程度フィルター25の負荷を低減することができる。このように考えた場合には、フィルター25への通気路の開口部の位置は、より先端側であっても構わない。すなわち、この場合には、必ずしも通気溝16gを設ける必要はなく、
図10(a)に示すように、通気孔16hがフィルター設置面16kから連通穴16bまで貫通する構成としてもよい。
【0083】
しかしながら、その場合には、通気孔16hの連通穴16bへの開口部のディスク弁20側の端部の位置がディスク弁20の先端面の位置から10mm以下(X≦10mm)となることが望ましい。これによれば、例えば、ディスク弁20の先端面の前側に10mmより大きな気泡Bがあった場合には、より確実に、通気孔16hからフィルター25を介して外部に排出される。よって、10mmより大きな気泡Bが生体に流入してしまうことを防止できる。10mm未満の大きさの気泡Bが生体に流入したとしても健康に悪影響を及ぼす可能性は低く、本実施例に係るハブ組立体の安全性を確保することが可能となる。なお、本実施例では、通気孔16hの連通穴16bへの開口部のディスク弁20側の端部の位置がディスク弁20の先端面の位置から10mm以下としたが、通気孔16hの連通穴16bへの開口部における先端側の端部の位置が、ディスク弁20の先端面の位置から10mm以下とすることが、さらに望ましい。これによれば、通気孔16hの連通穴16bへの開口部の全てをディスク弁20の先端面の位置から10mm以下とすることができる。その結果、より確実に大きな気泡Bが生体に流入することを抑制できる。
【0084】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されることなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えた態様で実施され得るものであり、また、そのような実施態様も、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
例えば、上記の実施例においては、ハブ外装体の一例であるコネクターカバー16にハブ本体の一例であるガイドコネクター9を挿入して、両者でディスク弁20を挟み込んで固定する態様について説明したが、コネクターカバー16とガイドコネクター9を一体構造としてハブを形成するようにしてもよい。この場合には、ディスク弁20の固定のために、別途固定部材をハブに挿入するようにしても構わない。
【0086】
また、上記の実施例においては、フィルター25としては、円盤状のメンブレンフィルターを使用したが、この代わりにリング状のフィルター(例えばスポンジフィルターなどの、多孔性のフィルター)でコネクターカバー16の外壁面の全周囲を囲うような構成としても構わない。また、上記の実施例においては、フィルター25は、ディスク弁20の先端側すなわち生体側に配置されており、ハブ組立体内における液体の流路からフィルターを介してコネクターカバー16の外部に到る通気路の全体がディスク弁20の先端側に配置されていた。しかしながら、本発明においてフィルター25及び、通気路のコネクターカバー16の外部への開口は、ディスク弁20の後端側すなわち外部機器側に存在していても構わない。通気路が隔壁の外周面と一部接触していてもよい。
【0087】
また、例えば、前記実施形態では、ハブ組立体10の先端に外針14、外針針基部14a及びクランピングチューブ13が固着されており、かかる外針ユニット12に対して内針ユニット(不図示)が挿通されて留置針組立体が構成されていたが、ハブ組立体10の先端にはカテーテル等が固着され、内針ユニットが挿通されて留置用カテーテル組立体などが構成されてもよい。このような留置用カテーテル組立体などにおいても、本発明の効果は同様に発揮し得る。
【0088】
また、コネクターカバー16、ディスク弁20、押し子22、フィルター25、ガイドコネクター9、フィルターキャップ18の材質は目的・仕様に応じて適宜変更することが可能である。また、例えば、コネクターカバー16とガイドコネクター9の結合方法は他の方法であってもよい。より具体的には、超音波溶着や、ねじ込み方式を採用しても構わない。また、フィルターキャップ18の材質は必ずしも透明である必要はなく、不透明な材質を用いてフィルターキャップ18を形成しても構わないし、特定の意味を持つカラーを付与してもよい。
【0089】
(実施例3)
<基本構成>
図11及び
図12には、本発明の実施例3としてのハブ組立体40を備えた留置針組立体における外針ユニット42を示す。
図11(a)は、外針ユニット42の斜視図であり、
図11(b)は特にハブ組立体40の斜視図を拡大した拡大図である。
図12は、外針ユニット42を軸方向に垂直な方向から見た断面図である。
図11に示す外針ユニット42における、円筒状のクランピングチューブ13、外針14及び、外針針基部14aは、実施例1で説明したものと同等であるので、ここでは説明を省略する。
【0090】
ハブ組立体40の概略形状は、
図12に示すように、ハブ外装体の一例であるコネクターカバー46の基端側に、ハブ本体の一例であるガイドコネクター39が挿入されることで形成されている。コネクターカバー46は略円筒形状を有している。ガイドコネクター39の基端側開口部の外壁面には、ねじ山が設けられたロック部39aが形成されている点は、実施例1と同様である。また、本実施例においては、コネクターカバー46と、ガイドコネクター39とを固定するようにフィルターキャップ48が取り付けられている。また、フィルターキャップ48の先端側の外壁面には、使用者が把持し易いように複数の凸条60が軸方向に平行に形成されている。
【0091】
次に、
図13を用いて、ハブ組立体40の構造についてより詳細に説明する。
図13は、ハブ組立体40を軸方向に垂直な方向から見た断面図である。コネクターカバー46の内部において、先端側にはクランピングチューブ13が嵌合される先端嵌合部46aが設けられ、基端側にはガイドコネクター39が挿入され固定される基端挿入部46dが設けられ、先端嵌合部46aと基端挿入部46dの間に連通穴46bを形成する接続壁部46cが設けられている。
【0092】
前述のように、先端嵌合部46aには、先端側からクランピングチューブ13が圧入されて固定されている。また、基端挿入部46dには、ディスク弁20及びガイドコネクター39が挿入されている。また、フィルターキャップ48は、外径及び内径がともに、先端において縮径しており縮径した先端の内壁に設けられた段差48aがコネクターカバー46の先端と当接することで、コネクターカバー46の先端側への移動が規制されている。
【0093】
図11(b)に戻るが、ガイドコネクター39に設けられたキャップ位置規制爪39bがフィルターキャップ48のキャップ係合穴48bと係合することで、フィルターキャップ48と、コネクターカバー46及びガイドコネクター39が結合されている。さらに、ガイドコネクター39に設けられたキャップ位置規制凸部39cがフィルターキャップ48のキャップ係合スリット48cと係合することで、ガイドコネクター39の、フィルターキャップ48の先端側への移動や軸回りの回転が規制されている。
【0094】
なお、
図13から分かるように、本実施例においては、コネクターカバー46に挿入されたガイドコネクター39の先端部39kと、コネクターカバー46における、接続壁部46cの基端側の壁面との間に、実施例1で説明したものと同等のディスク弁20が挟まれて固定されている。すなわち、本実施例において、コネクターカバー46に対するガイドコネクター39の軸方向位置は、ディスク弁20の弾性によって変動可能となっている。そして、コネクターカバー46の先端の位置が、フィルターキャップ48の段差48aによって規制され、ガイドコネクター39のキャップ位置規制爪39bの基端側の位置がフィルターキャップ48のキャップ係合穴48bで規制される。このことで、コネクターカバー46及びガイドコネクター39の軸方向の位置が決定されている。
【0095】
また、本実施例では、実施例1に示した平面状のフィルター25(メンブレンフィルターのような平面的な濾過構造体)とは異なり、リング形状を有する立体状のフィルター55(立体的な濾過構造体)が、コネクターカバー46の外壁面と、フィルターキャップ48の内壁面との間に、径方向に圧縮され挟まれた状態で保持されている。立体的な濾過構造体を流体の通過方向に対して直交するように、あるいは流体の通過方向と角度を有するように圧縮することで液密性及び耐圧性を好適に向上させることができ、血液が外部にリークする可能性を低減させる。なお、立体状のフィルター55(立体的な濾過構造体)は少なくとも一部をリング状とすることで、ハブ組立体として製造しやすくすることでき、例えば、立体状のフィルター55は軸方向に長い筒形状としてもよい。立体的な濾過構造体の形状はリング状に関わらず適宜変更することができるが、いずれの場合でも隣接部材に圧縮されるのが好ましい。
【0096】
フィルター55は、疎水性フィルターであり、例えば、立体的な濾過構造体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂の粉末を加熱し焼結したもの(焼結体)であってもよい。疎水性フィルターは液体に触れると通気性が低減し又は失われるため、ハブ本体が液体で満たされた後に、通気路を介して外部からハブ本体内に空気が混入することを防止することができる。また、フィルター55は多孔質性の材質で形成されていてもよい。また、フィルター55内には、血液等の液体を吸収することで膨潤し、フィルター55における液体や気体の流路を塞ぐポリマー等を分散させておくのが好ましい。このポリマーは、より具体的には、所謂高吸水性高分子(Superabsorbent polymer)であってもよい。この場合には、フィルターの隙間がポリマー等により埋まり、流体の流路が塞がれるため、耐圧性を向上させることができる。なお、この場合のフィルター55の耐圧性は、200mmhg以上が望ましい。あるいは、透析治療者の平均動脈圧120~140mmhgであることを考慮した場合には、フィルター55の耐圧性は、120mmhg以上が望ましい。また、使用対象が小児である場合も考えられ、その場合はもっと低い耐圧性としてもよい。
【0097】
なお、フィルター55は、必ずしもコネクターカバー46の外壁面と、フィルターキャップ48の内壁面との間に、径方向に圧縮され挟まれた状態で保持される必要はない。例えば、フィルター55の内径を、コネクターカバー46の外径より若干小さく形成しておき、フィルター55をコネクターカバー46に嵌合する際に、コネクターカバー46によってフィルター55の内壁が拡径され、そのことで径方向に実質的に圧縮されるようにしてもよい。また、ハブ組立体40の軸方向に、硬質部材(ハブ先端側部材)、フィルター55、硬質部材(ハブ基端側部材)と直列するように配置し、フィルター55を、ハブ先端側部材とハブ基端側部材の二つの硬質部材で軸方向に圧縮するようにしてもよい。
【0098】
図14には、ハブ組立体40におけるフィルター55付近の拡大図を示す。
図13及び
図14に示されるように、コネクターカバー46の外壁には、外周側に突出したフィルター規制部46fが設けられている。このフィルター規制部46fは、略円筒状のコネクターカバー46の外壁面におけるフィルター嵌合部46eに、先端側からフィルター55を嵌合させた際に、フィルター55の基端側の端面に当接することで、フィルター55がコネクターカバー46の基端側に過剰に移動することを防止する。
【0099】
また、フィルターキャップ48の内壁において、コネクターカバー46の先端がフィルターキャップ48の段差48aに当接した状態において、フィルター嵌合部46eに対向する部分には、フィルターキャップ48の基端側から縮径した部分であるフィルター圧縮部48fが設けられている。このフィルター圧縮部48fは、コネクターカバー46のフィルター嵌合部46eとともに、フィルター55を径方向に圧縮して固定する。
【0100】
そして、コネクターカバー46におけるフィルター嵌合部46eには、コネクターカバー46の外壁面から内周側に向けて形成される凹穴である通気孔46hが設けられている。この通気孔46hは、軸方向から見て90度毎に4箇所設けられている。一方、コネクターカバー46における連通穴46bの内壁面には、連通穴46b内の空気を外部に逃がすための通気溝46gが設けられている。この通気溝46gは、連通穴46bの内壁面における、通気孔46hに対応する位置に、やはり軸方向から見て90度毎に4箇所設けられ、前後方向に延びる凹溝である。この通気溝46gを周方向から見た断面形状は、
図14に示すように、外周側が内周側よりも先端側に延びるような逆L字型となっている。そして、通気溝46gの外周側の一部は、上述の通気孔46hと連通している。
【0101】
よって、この通気溝46gと通気孔46hとを介して連通穴46b内の空気がフィルター55を通過する。さらに、フィルターキャップ48の内壁面とコネクターカバー46の外壁面との間の隙間である通気路46i及び、フィルターキャップ48の内壁面とガイドコネクター39の外壁面との間の隙間である通気路39dを通過して、キャップ係合穴48bから外部に流出可能となっている。
【0102】
一方、連通穴46b内に存在する血液等の液体は、この通気溝46gと通気孔46hとを介してフィルター55に到達するが、フィルター55によって遮断され、外部に漏出することが防止されている。なお、本実施例において、フィルターキャップ48の内壁面とコネクターカバー46の外壁面との間の隙間による通気路46i及び、フィルターキャップ48の内壁面とガイドコネクター39の外壁面との間の隙間による通気路39dは、キャップ通気手段の一例である。なお、キャップ通気手段の別の例としては、フィルターキャップ48に貫通孔を設けることで通気を行うものであってもよい。
【0103】
また、本実施例においては、通気溝46gと通気孔46hの軸方向の位置がずれている。このようにすることで、コネクターカバー46の成形時の金型の構成を簡易にしつつ通気溝46gを隔壁としてのディスク弁20に隣接させることができる。また、フィルター55と通気の開口部(通気溝46g)との間に流路が小さい通気路が形成されるため、連通穴46b内に存在する液体がフィルター55に接触しづらく、連通穴46b内の空気を円滑に排気することができる。しかしながら、通気溝46gと通気孔46hの位置とを一致させてもよい。また、本実施例におけるディスク弁20の基端側には、実施例1と同様、概略円筒状の押し子22が配置されているが、ここでは詳細な説明は省略する。また、本実施例においては、上述のように、通気溝46gを周方向から見た断面形状は、外周側が内周側よりも先端側に延びるような逆L字型となっている。これにより、通気溝46gの、連通穴46bへの開口を、よりディスク弁20に近づけることができる。その結果、押し子がディスク弁20に挿入されディスク弁20のディスク部20aが先端側に変形した際に、より確実に、通気溝46gの、連通穴46bへの開口を閉塞することが可能となっている。
【0104】
図15には、本実施例におけるフィルター55付近の構成をさらに拡大した図を示す。
図15に示すように、本実施例においては、コネクターカバー46のフィルター嵌合部46eにおいて、フィルター55を嵌合させる際にフィルター55が接触する可能性のある角部(エッジ部分)には、Rが施されている。より具体的には、
図15中に円で示すように、フィルター嵌合部46eがコネクターカバー46のより先端側の部分から拡径するテーパ状の斜面のエッジ部分と、フィルター嵌合部46eにおける、通気孔46hの開口部のエッジ部分には、Rが設けられている。
【0105】
このRの大きさは、0.05mm~1.0mmであってもよい。これにより、コネクターカバー46の先端側からフィルター55を嵌合させる際に、コネクターカバー46の外壁面のエッジがフィルター55を削ってしまうような不都合を抑制できる。
【0106】
同様に、
図15に示すように、本実施例においては、フィルターキャップ48のフィルター圧縮部48fが、フィルターキャップ48内壁のより基端側の部分から縮径するテーパ状の斜面のエッジ部分にも、Rが設けられている。このRの大きさも、0.05mm~1.0mmであってもよい。これにより、コネクターカバー46にフィルター55が嵌合された状態で、それらをフィルターキャップ48に嵌入する際に、フィルターキャップ48の内周面のエッジがフィルター55を削ってしまうような不都合を抑制できる。
【0107】
図16には、本実施例におけるフィルターキャップ48の概略図を示す。
図16(a)は軸方向前方から見た図、
図16(b)は軸方向に垂直な方向からみた断面図である。
図16(b)を見て分かるように、フィルターキャップ48は、概略円筒状の部材であり、先端側部分48hからテーパ部48iを介して拡径することで、基端側部分48jが形成されている。
図16(a)を見て分かるように、先端側部分48hの外周面には凸条60が90度毎に4箇所設けられている。
【0108】
図16(b)から分かるように、先端の内周面には段差48aが設けられている。また、先端側部分48hの内周面48dは、コネクターカバー46の先端嵌合部46aの外径と略同径または若干大きな径を有し、コネクターカバー46がフィルターキャップ48に挿入された際に、大きなガタつきが生じない寸法関係とされている。そして、フィルターキャップ48におけるフィルター圧縮部48fのさらに基端側に位置する、基端側部分48jの内壁面は、フィルター圧縮部48fをさらに拡径した通気路形成部48gとなっている。この通気路形成部48gは、コネクターカバー46及び、ガイドコネクター39の外壁面とともに、通気路46i、通気路39dを形成する。
【0109】
フィルターキャップ48の内部におけるフィルター55の位置は、フィルター55がコネクターカバー46のフィルター嵌合部46e及び、フィルター規制部46fに当接した状態で挿入され、コネクターカバー46の先端が段差48aに当接することで決まる。本実施例では、この状態において、フィルター圧縮部48fの先端側の端面は、フィルター55の先端側の端面に対してより先端側に位置し、両者の間に隙間が生じるようになっている(
図13~
図15を参照)。これにより、フィルター55がフィルターキャップ48のフィルター圧縮部48fと、コネクターカバー46のフィルター嵌合部46eの間で圧縮され、前後方向に伸びたとしても、フィルター55がフィルター圧縮部48fの先端側の端面に当接し、フィルター55の圧縮変形を阻害することを防止している。
【0110】
フィルターキャップ48の基端側部分48jにおける、キャップ係合穴48bのさらに基端側の内壁面48eは、通気路形成部48gと略同径であり、ガイドコネクター39における第二キャップ挿入面39p(後述)と略同等または若干大きい径を有しており、フィルターキャップ48にガイドコネクター39が挿入された際に、フィルターキャップ48内におけるガイドコネクター39の径方向の位置や傾きを規制している。
【0111】
図17には、本実施例におけるコネクターカバー46の概略図を示す。
図17(a)は軸方向前方から見た図、
図17(b)は軸方向に垂直な方向から見た断面図である。コネクターカバー46には、ディスク弁20のディスク部20aの外壁が当接し、ディスク部20aの軸と垂直方向の位置が規制されるディスク部当接部46kが設けられている。ディスク弁20のディスク部20aはディスク部当接部46kによって中心方向に圧縮されるようになっている。これは、押し子22がディスク弁20のスリット20cに押し入れられた状態において、押し子22とスリット20cの間から液体が漏れ出すことを防止するためである。同様に、ディスク弁20の枠部20bの外周が、ガイドコネクター39によって外周側に拡張された状態で当接する枠部当接部46m、ガイドコネクター39のカバー挿入面39n(後述)の径方向の位置や傾きを規制するカバー接触面46nが、ディスク部当接部46k、枠部当接部46m、カバー接触面46nの順番で、径が大きくなるように設けられている。
【0112】
図18には、ガイドコネクター39の概略図を示す。
図18(a)は軸方向前方から見た図、
図18(b)は軸方向に垂直な方向から見た断面図である。ガイドコネクター39は、概略円筒状の部材である。ガイドコネクター39の先端部39kは、その設置位置において、ディスク弁20の溝20dに進入し溝20dをコネクターカバー46の基端挿入部46dにおける接続壁部46cの壁面に押圧することで、ディスク部20aの軸方向の位置及び姿勢を規制する。
【0113】
また、先端部39kの基端側の外壁面には、テーパ状に拡径した拡径面39mが形成されており、拡径面39mの外壁面がディスク弁20の枠部20bの内壁面に当接するようになっている。そして、コネクターカバー46の基端挿入部46dの枠部当接部46mとガイドコネクター39の拡径面39mの外壁面とでディスク弁20の枠部20bを径方向で挟み込み、このことによってもディスク弁20を支持するようになっている。このことで、ディスク弁20の外壁面とコネクターカバー46の内壁面との間の気密性、液密性を確保している。なお、拡径面39mの外壁面は、ディスク弁20の枠部20bの内壁面に当接するのみならず、押し広げるような寸法関係になっていても構わない。
【0114】
また、ガイドコネクター39の拡径面39mの基端側には垂直に外周側に切り立った壁面である垂直面39lが設けられている。この垂直面39lが、ガイドコネクター39の組付状態において、ディスク弁20の枠部20bの基端側の端部を先端側に押圧する。これにより、コネクターカバー46の接続壁部46cの壁面とガイドコネクター39の垂直面39lとでディスク弁20の枠部20bを軸方向で挟み込み、このことによってさらに確実に、ディスク弁20を支持するようになっている。
【0115】
ガイドコネクター39をコネクターカバー46及びフィルターキャップ48に挿入し、キャップ位置規制爪39bをフィルターキャップ48のキャップ係合穴48bと係合させ、キャップ位置規制凸部39cをフィルターキャップ48のキャップ係合スリット48cと係合させることで、フィルターキャップ48内におけるコネクターカバー46及び、ガイドコネクター39の位置が決まる。なお、本実施例においては、キャップ位置規制凸部39cは、径方向から見ると、
図11(b)に記載されるように、軸方向の中央部が細くなった両矢印形状となっている。これは、成形時におけるキャップ位置規制凸部39cの樹脂の引けによる形状精度の劣化を防止するための構成である。
【0116】
さらに、ガイドコネクター39の外壁面における垂直面39lの基端側には、コネクターカバー46のカバー接触面46nと対向するカバー挿入面39nが設けられている。このカバー挿入面39nは、コネクターカバー46のカバー接触面46nと略同径か若干小さい外径を有し、コネクターカバー46内においてガイドコネクター39の軸と垂直方向の位置や傾きを安定させることが可能となっている。
【0117】
ガイドコネクター39の外壁面におけるキャップ位置規制爪39bの先端側には、フィルターキャップ48のキャップ係合穴48bより先端側の内壁面である通気路形成部48gと対向する第一キャップ挿入面39rが設けられており、通気路形成部48gとともに、通気路39dを形成する。ガイドコネクター39の外壁面におけるキャップ位置規制爪39bの基端側には、コネクターカバー16の係合穴16eより基端側の内壁面と対向する第二キャップ挿入面39pが設けられている。この第二キャップ挿入面39pは、フィルターキャップ48におけるキャップ係合穴48bの基端側の内壁面48eと略同等または若干小さい外径を有し、フィルターキャップ48内におけるガイドコネクター39の軸と垂直方向の位置や傾きの安定化を補助している。
【0118】
ガイドコネクター39の外壁面における第二キャップ挿入面39pのさらに基端側には、フィルターキャップ48の基端側に露出する部分である露出面39sが設けられる。この露出面39sの外壁面は、第一キャップ挿入面39r、第二キャップ挿入面39pより小さい径を有し、外部機器からのチューブ先端のコネクターをガイドコネクター39に接続する際の作業性を確保している。また、フィルターキャップ48にコネクターカバー46及びガイドコネクター39を組み付けた状態において、ガイドコネクター39の露出面39sが環状に窪む形態となるので、装置全体としてコンパクトとなり、また、コネクターを接続して皮膚に固定した場合にも、全体を皮膚に対して略平行な状態にし易く、患者の皮膚に痛みを生じさせる角部等も少なくすることができる。
【0119】
なお、上述のフィルターキャップ48、コネクターカバー46、ガイドコネクター39は、作用する外力に対して実質的に変形することなく初期形状を保ち得る程度の剛性を有する材料で形成されていればよい。好適には、硬質の合成樹脂材料で形成されたものが採用され得る。例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート等であってもよい。なお、ガイドコネクター39を形成する材料は、コネクターカバー46及びフィルターキャップ48を形成する材料より硬度の低いものとしてもよい。そうすることで、ハブ組立体全体としての強度を確保しながら、ガイドコネクター39と外部機器からのコネクターとのかじりを抑制することができる。
【0120】
図19には、コネクター68が取り付けられた状態の、留置針組立体の概略図を示す。
図19(a)は側面図及び軸方向後面から見た図、
図19(b)は、断面A-Aによる断面図である。コネクター68に対して、ロックネジ部68aを回転させることで、ロックネジ部68aの内壁に形成されたネジ部68bが、ガイドコネクター39のロック部39aに螺号することで、コネクター68がガイドコネクター39に固定される。
図20には、コネクター68が取り付けられた状態の、留置針組立体の斜視図を示す。
【0121】
<作用>
上記のような構造とされたハブ組立体40を含む留置針組立体を使用するに際しては、先ず、留置針組立体を生体の血管に穿刺した後、実施例1で説明した内針ユニットを外針ユニット42から基端側に引き抜く。このことにより、外針ユニット42を患者の血管に穿刺された状態で留置する。その際、ディスク弁20から内針が抜去されることにより、ディスク弁20が初期形状に復元されて、スリット20cが閉鎖される。
【0122】
この際、例えば、クランピングチューブ13内に存在していた空気は、血液の流入圧により基端側に押し出される。この空気は、コネクターカバー46の内壁面に設けられた通気溝46gに流入する。そして、空気は、通気孔46hにさらに流入し、フィルター55に到達する。フィルター55は、空気(気体)を通過可能に構成されていることから、空気をそのまま通気路46i及び、通気路39dを通過してキャップ係合穴48bから外部に排出される。これにより、空気は、クランピングチューブ13内から連通穴46b、通気溝46g、通気孔46h、フィルター55、通気路46i及び、通気路39dを通過して外部に流出可能である。
【0123】
その結果、外針14及びクランピングチューブ13の中は血液で満たされる。使用者は、この「フラッシュバック」を視認することで、外針ユニット42が正常に生体の血管に穿刺されていることを確認できる。なお、本実施例では、通気溝46g及び通気孔46hは、コネクターカバー46の内壁における周方向に90度毎に4箇所設けられている。よって、仮に、ハブ組立体40を含む留置針組立体が傾いている場合であっても、4箇所のうちのいずれかの通気溝46g及び通気孔46hを介して空気が外部に流出可能であり、排気し易く、より確実に「フラッシュバック」を生じさせることが可能である。
【0124】
ディスク弁20から内針が抜けると、血液は、クランピングチューブ13に充満し、その一部が連通穴46b、通気溝46g、通気孔46hに流入するが、フィルター55によって、外部への流出が妨げられる。また、ガイドコネクター39の拡径面39mがディスク弁20の枠部20bの内壁面を圧縮してコネクターカバー46の枠部当接部46mに密接させているため、生体の血液が、外針ユニット12内において、ディスク弁20より基端側へ漏出することが防止されている。
【0125】
また、その際、押し子22がディスク弁20に押し込まれた際には、ディスク弁20のディスク部20aが連通穴46b側に変形し、通気溝46gを閉塞させる。これは、通気溝46gがディスク部20aの一部が達する領域に設けられていることによる。具体的には、通気溝46gが隔壁先端から軸方向所定距離(押し子によって変形するディスク部20aの変形領域の外周縁からスリット20cの中央部までの長さ)以内に設けられることによる。このことにより、スリットの位置等によらず、輸液や輸血により、コネクター68から導入された薬液や血液が通気溝46g及び通気孔46hに流入し、外部機器からの薬液や血液の流入圧力がそのままフィルター55に作用することが抑制される。
【0126】
なお、本実施例にけるハブ組立体40の組立手順の一例としては、(1)コネクターカバー46にフィルター55を嵌合する。(2)フィルターキャップ48に、コネクターカバー46にフィルター55を嵌合したものを挿入して第1ユニットとする。(3)ガイドコネクター39に押し子22を収納し、ディスク弁20を先端側から取り付けて第2ユニットとする。(4)第1ユニットの基端側から第2ユニットを挿入する。というものが考えられる。しかしながら、本実施例におけるハブ組立体の組立手順は上記のものに限られない。また、本実施例において、ディスク弁20は基端側に延びる枠部20bを有し、内挿されたガイドコネクター39の先端と外挿されたコネクターカバー46によって固定されているが、別部材で固定してもよい。また、ディスク弁20を先端側に延びる枠部を有する形状とし、内挿されたコネクターカバーと外挿されたガイドコネクターで固定したり、別部材で固定しても構わない。
【0127】
また、上記の実施例においては、一部材で構成されている部材を機能ごとに複数部材に分けてもよい。例えばガイドコネクターの先端部(ディスク弁を固定するため部分)を別部材とすることで複数部材としてもよい。また、ディスク弁を固定するための部材を、ガイドコネクターの内側に別途設けてもよく、この場合は、コネクターカバーとガイドコネクターとを一部材としてもよい。また、フィルターキャップとコネクターカバーとは同一部材であってもよく、あるいは各部材を溶着することで一部材の如く形成してもよい。
【0128】
また、上記の実施例において、隔壁であるディスク弁はハブ組立体内にルアーが挿入されることで流路が開口するものが好ましい。上記の実施例に記載したタイプのディスク弁以外の例としては、ハブ組立体の内部における先端側に、基端方向に延びる突起を設け、ディスク弁を先端側に移動させることでディスク弁が開口する形態としてもよい。その他、別途設けたボタンを押圧することによりディスク弁が開口する形態としてもよく、公知のディスク弁の開口手段を採用することができる。なお、ディスク弁の開口時、ディスク弁の変形部位或いは移動したディスク弁によりハブ組立体の内部と外部とを連通する流路が閉鎖されることが好ましい。
【0129】
また、上記の実施例においては押し子が設けられたが、ガイドコネクターで基端からディスク弁までの寸法を調整する或いはディスク弁の形状を軸方向に大きくすることで押し子を設けない形態とすることもできる。また、立体的な濾過構造体であるフィルターはコネクターカバーとガイドコネクターの硬質部材によって直接径方向に圧縮されているが、コネクターカバーとガイドコネクターの間に別の軟質部材或いは硬質部材を設けてフィルターを径方向に圧縮してもよい。
【0130】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について説明する。本実施例は、ハブが、ガイドコネクターとコネクターカバーの2部品で構成されているのではなく、ハブが一体の部品から構成されている例である。また、通気路にはフィルターが備えられておらず、さらに、通気路は、ハブの内周面におけるディスク弁の先端側の領域とディスク弁の基端側の領域とを連通する構成についての例である。
【0131】
図21には、本実施例におけるハブ組立体60を軸方向に垂直な方向から見た断面図である。ハブ組立体60においては、コネクターカバーとガイドコネクターの機能を一体化したハブ72が設けられている。そして、ハブ72の内周面によって、液体の流路72aが構成されている。また、前後方向の略中央には壁部72cにより段差が設けられている。ディスク弁20はハブ60の内部に壁部72cに当接されて固定されている。さらに、ハブ72の内部であって、ディスク弁20の基端側には押し子ガイド70が配置され、押し子ガイド70の内部には押し子62が前後方向に移動可能に配置されている。押し子62とディスク弁20、押し子ガイド70との寸法関係、位置関係は実施例1と略同等であるため、ここでは説明を省略する。
【0132】
なお、ハブ72の内周面におけるディスク弁20の先端側と、押し子ガイド70の基端側とは、通気路72gによって連通されている。この通気路72gは、ハブ72の内周面と、ディスク弁20の枠部20bの外周面及び押し子ガイド70の外周面との間には軸方向に延びる溝状に形成されており、軸方向から見て90度間隔で4箇所に設けられている。
【0133】
上記のような構造とされたハブ組立体60の先端に対して、実施例1において説明した外針14、外針針基部14a及びクランピングチューブ13が固着されることにより、外針ユニットが構成される。さらに、外針ユニットに対して、内針を備える内針ユニットを挿通することにより、留置針組立体が構成される。
【0134】
本実施例におけるハブ組立体60を備えた留置針組立体の使用法も、実施例1と同等である。すなわち、留置針組立体を生体の血管に穿刺した後、内針ユニットを外針ユニットから基端側に引き抜く。その際、例えば、ハブ72の内部のディスク弁20より先端側に存在していた空気は、血液の流入圧により基端側に押し出され、通気路72gに流入して通気路16g内を基端方向に流動する。このことで、生体の血液が円滑にハブ72内に導入され、所謂「フラッシュバック」が使用者によってより円滑に確認される。
【0135】
図16に示した構成において、ハブ72の後端側から外部機器のコネクターを結合した場合には、先述の他の実施例と同様、外部機器のコネクターが押し子62の基端に当接し、押し子62を先端方向にさせる。押し子62がディスク弁20のスリットに押し入れられ、ハブ72の内周面におけるディスク弁20の先端側と基端側とが、スリットを介して連通される。そうすると、外部機器のポンプの圧は変動するので、ポンプの作動によって圧送される液体が勢いよく通気路72gに流入し、その圧力が作用する場合がある。このため、通気路内に血液が流入しやすく、通気路内は滞留するので、通気路内に血栓が生じる場合がある。
【0136】
これに対し、本実施例においても、押し子62がディスク弁20のスリット20cに押し入れられた場合に、ディスク弁20におけるディスク部20aの一部が通気路72gの、ハブ72の内周面におけるディスク弁20の先端側の開口を閉塞するように構成されている。このことによって、隔壁より先端側の空間と基端側の空間とを非連通状態とすることができ、ポンプ圧によるフィルターへの影響を低減することができる。また、外部機器のポンプにより圧送された血液がそのままの勢いで通気路開口に送達されることはなく、通気路開口付近に設けたフィルターへの影響を低減でき、ディスク弁20が血液の勢いを弱め、通気路内に血液が流入しにくくすることが可能になっている。
【0137】
なお、上記の実施例において、通気路の開口を閉塞するとは、開口の全てを閉塞する場合と、開口の一部を閉塞する場合とを含む。また、開口の周囲に密接して閉塞する場合と、隙間を伴って閉塞する場合とを含む。
(その他の実施例)
【0138】
また、本発明の他の実施例は、ディスク弁20の一部が、通気路の開口部の周りを囲むものであってもよい。又は、ディスク弁20の一部が、通気路の開口部より生体側のハブ内面と周状に当接するように変形するものであってもよい。実施例においては、押し子22の一部外面にディスク部20aの変形領域の外周側に当接する外径の環状突起を設けることで、当該環状突起がディスク部20aの変形領域の外周側を先端方向に変形させて、ディスク部20aの変形領域の外周側とハブ内面とが周状に当接するようにされているが、ディスク弁20の生体側の面に周状の突起を設け、当該突起がハブ内面と周状に当接することで、開口の周囲に密接して閉塞してもよく、隙間を伴って閉塞してもよく、また、通気路の開口部の位置や大きさを適切に設定することで隔壁の変形時における通気路の開口部閉鎖を実現させてもよい。隔壁はディスク弁に限らず、また、スリットは、弾性体に線状の切り込みが入れられたものに限らず、穴を押しつぶすことで形成してもよいし、複数の部材を重ね合わせることで形成してもよい。
【0139】
上述した実施例は、ハブ組立体の内部と外部とをつなぐ通気路機構、フィルターの特定位置への固定機構、通気路閉鎖機構、フィルター耐圧機構等の複数の独立した発明を含む。ハブ組立体の形態によらず、隔壁が通気路開口部を閉塞する機構を設けることは、ポンプ圧による悪影響を低減させるために有用である。また、ハブ組立体の形態によらず、通気路上に設けたフィルターを圧縮することは、血液の漏出を低減させるために有用である。また、ハブ組立体の形態によらず、フィルターに吸水性膨潤体を設けることは、血液の漏出を低減させるために有用である。これら発明は互いに独立しており、例えば、通気路閉鎖機構は、フィルターの位置とは特に関係性がなく、また、フィルターを設けずとも通気路を閉鎖することで透析施術時の血液リークの可能性を低減させることができる独立した発明である。
【0140】
上記の実施例は、通気機構、耐圧機構等の独立した課題を解決するための複数の発明を含むものである。また、本発明は実施例の形態に限るものではない。
【符号の説明】
【0141】
9、39・・・ガイドコネクター
10、40・・・ハブ組立体
12、42・・・外針ユニット
13・・・クランピングチューブ
14・・・外針
16、46・・・コネクターカバー
18、48・・・フィルターキャップ
20・・・ディスク弁
22・・・押し子
25、55・・・フィルター