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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240305BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20240305BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20240305BHJP
   C09J 201/02 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 23/08 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 9/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/24
C09J7/25
C09J201/02
B32B27/00 M
B32B23/08
B32B9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020010677
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021004352
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019116816
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】國弘 明
(72)【発明者】
【氏名】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
(72)【発明者】
【氏名】塚田 力
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-172581(JP,A)
【文献】特開2001-089722(JP,A)
【文献】特開平08-113897(JP,A)
【文献】特開2018-115278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0186013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと基材シートの少なくとも一部に粘着層を有する粘着シートであって、
前記基材シートがアミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とするフィルムであり、且つJIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下であり、
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、
前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位有し、
前記親水性モノマー単位を前記共重合樹脂組成中に20~30質量%含有し、
前記粘着剤層のゲル分率が50%以下である粘着シート。
【請求項2】
単位面積あたりの前記粘着シートに対する前記粘着層の質量比率が0.10~0.35で
ある請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記基材シートが、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定
したはっ水度がR7以下である請求項1または2に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも基材の片面に粘着剤層が積層された粘着シートに関し、特に誤って海洋に流出した場合には海水により分解し環境負荷の少ない粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、商業用、事務用、切手等の印紙用、配送伝票用、工程管理用、家庭用等非常に広範囲にわたって使用されている。粘着シートの一般的な構成は、基材と剥離シートとの間に粘着剤を挟み込んだ状態にしたものである。
基材には紙、フィルム、あるいは金属フォイル等が用いられる。剥離シートには、一般的にシリコーン化合物やフッ素化合物の如き剥離剤が剥離シート用基材に塗布されたものが用いられる。なお、剥離シート用基材には、グラシン紙のような高密度原紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙などにポリエチレン等の樹脂フィルムをラミネート加工したラミネート紙、あるいはクラフト紙や上質紙等にポリビニルアルコール、澱粉などの水溶性高分子等と顔料とを主成分とする塗被層を設けた樹脂コーティング紙等が挙げられる。中でも、ポリエチレンをラミネート加工したラミネート紙やグラシン紙が一般的に広く使用されている。
【0003】
また、粘着剤としては、ゴム系、アクリル系、ビニルエーテル系等のエマルジョン型、溶剤型又は無溶剤型の各種粘着剤が使用される。かかる粘着シートは、商品等に貼付けられ、貼付けされた後は被着体に貼りついたまま永続的に利用される永久接着タイプと、商品等の関係から表示の目的を達成した後は剥離され破棄される再剥離タイプのものもある。
一方、最近では地球規模での資源・廃棄物制約の観点で、プラスチックの排出量の削減や再利用の促進、リサイクル率の向上が喫緊の課題となっており、特に海洋へ流出するプラスチックごみによる環境汚染や海洋生物への影響が世界的に懸念されている。
【0004】
このような問題を解決するために、水に溶けるフィルムやポリ乳酸などの生分解性フィルムを基材に用いた粘着シートも提案されているが、水に対して容易に溶けることから耐水性などの実用性に欠けたり、限定された条件下でないと生分解しないなどの欠点があった。
また、粘着剤として水またはアルカリ水に溶解する粘着剤を使用したタイプのものや天然ゴムを主成分としたタイプも提案されているが、粘着剤が溶解するため耐水性に劣ったり、分子量が低く設計されているため高温・高湿の環境下では品質が著しく劣化したり、経時により変色するなどの欠点があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-211829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、日常での水濡れ、水性ペンによる筆記および印刷加工に対して十分な耐水性を有し、且つ、誤って海洋に流出した場合でも海水により分解し、環境負荷の極めて少ない粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の粘着シートは、以下の構成を有する。
【0008】
(1)基材シートと基材シートの少なくとも一部に粘着層を有する粘着シートであって、前記基材シートがアミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とするフィルムであり、前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位有し、前記親水性モノマー単位を前記共重合樹脂組成中に20~30質量%含有し、且つ、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下であり、前記粘着剤層のゲル分率が50%以下である粘着シート。
(2)単位面積あたりの前記粘着シートに対する前記粘着層の質量比率が0.10~0.35である(1)に記載の粘着シート。
(3)前記基材シートが、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定したはっ水度がR7以下である(1)または(2)に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によって、本発明の粘着シートは、通常使用環境において十分な耐水性を有し、誤って海洋に投機された場合には、海水で分解するため環境への負荷の少ない粘着シートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粘着シートは、基材シートと基材シートの少なくとも一部に粘着層を有する。
前記粘着層は、基材シートの片面の少なくとも一部に積層されていてもよく、基材シートの両面に積層されていてもよい。
【0011】
「基材シート」
本発明の粘着シートで使用する基材シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主原料とするフィルムである。
例えば、溶融状または溶液状のアミロース組成物をダイコーターから加熱ロールやベルト上に吐出し、揮発分を乾燥させることによりアミロースを主原料とするフィルム製造することができる。
【0012】
ポリビニルアルコールを主原料とするフィルムは、例えばポリビニルアルコールを主成分とする水分散液から溶液流延法により形成したものである。
【0013】
ビスコースを主原料とするフィルムは、一般にはセルロースフィルムの名称で市販されており、例えば、以下の方法で製造されるものである。セルロース供給源であるパルプを水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液に浸漬した後、二硫化炭素を添加して硫化し、さらにアルカリ溶解によりビスコースを調製する。ビスコースを硫酸等の酸溶液中へ膜状に吐出することにより凝固反応が生じ、フィルム状に成形される。
【0014】
このようなフィルムのうち、JIS P 8140に準拠して測定される吸水度(水接触時間30秒)が10g/m以下であるものを使用する。
ここで言う吸水度とは、粘着シートの粘着層が積層されていない側を測定面として測定された値、または、粘着層積層前の基材シートの表面を測定面として測定された値である。
【0015】
基材シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを主成分として構成されるものであるが、粘着シートの少なくとも粘着層が積層されていない側の吸水度が10g/mを超える場合、使用前或いは使用中における水濡れ、水性ペンによる筆記、印刷加工等により、粘着シートが破損する恐れがある。
【0016】
本発明の粘着シートにおいては、基材シートとしてJIS P 8140に準拠して測定される吸水度が10g/m以下のものを選択して使用する。より好ましくは吸水度が5g/m以下のもの、更に好ましくは吸水度が2g/m以下のものを使用する。基材シートに用いることができる材料の例としては、クラレ社製アミロースフィルム(製品名Plantic)、アイセロ社製ポリビニルアルコールフィルム(製品名ソルブロン)、フタムラ化学社製セルロースフィルム(製品名NatureFlexシリーズ)、等が挙げられる。
【0017】
基材シートは、アミロース、ポリビニルアルコールまたはビスコースのいずれかを使用したフィルムであっても、過度に耐水化処理が施されていると海洋分解性が劣る可能性がある。本発明の基材シートの表面に耐水化処理が施されている場合は、前記耐水化処理層が0.5g/m以下であることが好ましい。
【0018】
また、基材シートの粘着剤層が形成されない面の、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って測定したはっ水度が、R7以下であることが好ましい。はっ水度がR8以上となると、海洋分解性が劣りやすくなる。
【0019】
「粘着剤層」
本発明の粘着シートは、基材シートの少なくとも一部に粘着層を有する。また、基材シートの片面の少なくとも一部に積層されていてもよく、基材シートの両面に積層されていてもよい。
前記粘着シートの単位面積あたりの前記基材シートに対する前記粘着層の質量比率が0.10~0.35であることが好ましい。より好ましくは0.15~0.35である。
前記基材シートに対する前記粘着層の質量比率が0.10以上であれば被着体への良好な接着力を確保し、粘着層に水が浸入して基材シート表面に皺や膨れが発生し印字物の読取適性が低下することを防ぐことができる。また、前記基材シートに対する前記粘着層の質量比率が0.35以下であればより良好な海洋分解性を得ることができる。
【0020】
本発明の粘着シートで使用する粘着層は、ゲル分率が50%以下である必要がある。ゲル分率を50%以下とすることにより海洋分解性を高めることができる。また、ゲル分率の下限値を25%以上とすることにより粘着層に水が浸入して基材シート表面に皺や膨れが発生し印字物の読取適性が低下することを防ぐことができるので好ましい。。好ましいゲル分率は25%以上47%以下であり、より好ましいゲル分率は27%以上、45%以下である。
【0021】
前記粘着剤層のゲル分率を50%以下に調整する方法としては、粘着剤層を構成する重合体中の親水性基の量を調整する方法、粘着剤層中に親水性の可塑化物質を添加する方法が挙げられる。
【0022】
親水性の可塑化物質としては、例えば、グリセリン、ソルビット、マンニット、ズルシット、イジット、エリトリット、アラビット、アドニット等の糖アルコール類、ポリエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシドとグリセリン、キシリットトリオキシイソブタン、ソルビットなどの多価アルコールとの共重合体やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールや、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のノニオン性の界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
これら親水性の可塑化物質の添加量は、粘着性と親水性を考慮して、共重合体100質量%に対して10質量%以下、より好ましくは0.5~10質量%の範囲で使用することが望ましい。
なお、これら親水性の可塑化物質の中でも、特に、ノニオン系の界面活性剤が、親水性、接着性や保存性の良好な粘着剤を仕上げることができるので好ましい。
【0024】
また、特に望むならば、粘着剤の性能、特にポリオレフィン系被着体に対する接着力、凝集力等の物性を向上させる目的で、エチレン-酢ビ共重合体、エチレン-酢酸ビニル-アクリル系共重合体を添加することもできる。
これらの添加物は、粘着性能並びにゲル分率を適正な範囲にするために用いることもできる。
【0025】
前記粘着層が共重合樹脂を主成分として構成され、前記共重合樹脂中に親水性モノマー単位を前記共重合樹脂中に有し前記親水性モノマー単位を粘着剤組成中に20~30質量%含有することが好ましい。
前記親水性モノマー単位を粘着剤組成中に20質量%以上含有することにより、軽度の水濡れに対して良好な耐水性を示す。また、前記親水性モノマー単位を粘着剤組成中に30質量%以下含有することにより、良好な接着性を得ることができる。
【0026】
前記親水性モノマー単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルイタコン酸、モノアルキルフマル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸含有モノマー、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ロジンエステル、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン付加物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0027】
前記粘着層を構成する親水性モノマー単位以外のモノマーとしては、粘着剤の粘着性を付与する成分として、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、粘着性能を整える成分として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、エチレン等が挙げられる。
【0028】
前記粘着性を付与する成分は、粘着剤の粘着性能のバランスを考慮して適宣使用できるが、粘着剤の粘着性や凝集力等の点で、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、酢酸ビニルを使用することがより好ましい。
さらに、該粘着剤を得るための共重合体製造時に(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコールの少なくともいずれか1種の補助成分を添加しても良い。
【0029】
(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、下記一般式(1)に表される化合物で、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
【化1】

(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを加えての存在下で共重合体を製造すると、粘着剤に親水性を付与できると共に、分子量を上げることができるので、水中に分散した場合でも粘着性を発現し難い。そのため、海中で粘着シートが分解し易く、他の海洋ゴミと再付着する危険を減らすことができる。
前記補助成分は、粘着剤の親水性、粘着性能のバランスを考慮して適宣使用できる。前記補助成分の中でも特にポリエチレングリコールジメタクリレートは、親水性に優れた共重合体が得られるのでより好ましい。
【0031】
なお、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、粘着剤組成混合物100質量%に対して、0.1~5質量%の範囲で添加することが望ましい。因みに0.1質量%未満では、粘着剤の親水性が不十分となる。一方、5質量%を超えると、重合時に粘着剤が凝集しやすくなる。
【0032】
なお、上記の共重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば、水、溶剤、連鎖移動剤、重合開始剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、分散剤等の存在下の水系でエマルジョン重合する方法などの公知の方法で製造される。
【0033】
上記の方法で得られた共重合体は、その共重合体中のカルボキシル基の50~120モル%に相当するアルカノールアミンや水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物やアンモニア等で中和処理を施すことにより、機械安定性を改良でき、また粘度調整を行うことができる。粘着シートに加工された後の経時での揮散による粘着性能の劣化防止の点から、アルカリ金属の水酸化物を使用することがより好ましい。
【0034】
前記粘着剤層のゲル分率は以下の方法によって測定される。
〔ゲル分率測定方法〕
粘着シートと、粘着層積層前の基材シートまたは粘着シートから粘着層を溶剤により取り除いた基材シートを準備する。
10cm角に切った基材シートサンプルの質量W1を測定する。
10cm角に切った粘着シートサンプルの質量W2を測定する。
上記シートサンプルをそれぞれトルエンに24時間浸漬させ、取り出して、80°Cのオーブンで1時間乾燥させた後、基材シートサンプルの質量W3、粘着シートサンプルの 質量W4を測定する。
下記式に従いゲル分率を算出する。

ゲル分率(%) = (W4-W3)/(W2-W1)×100
【0035】
「剥離シート」
本発明の粘着シートは、粘着層上に更に剥離シートが積層されていてもよい。
剥離シートの基材に使用するものとしては、特に限定するものではないが、例えば、グラシン紙の如き高密度原紙、クレーコート紙、グラシン紙やクラフト紙または上質紙等に、例えばカゼイン、デキストリン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル共重合体等の天然または合成樹脂および/または顔料を主成分とした目止め層を設けた紙類、グラシン紙やクラフト紙または上質紙等にポリエチレン等をラミネートしたラミネート紙(ポリラミ紙)類、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルム類を挙げることができる。
【0036】
「粘着シートの製造方法」
本発明の粘着シートを製造する方法としては公知の方法が採用できるが、一旦エマルジョン型の粘着剤を剥離シートに塗布、乾燥してから基材シートと貼り合わせる転写法を用いることが特に好ましい。上記粘着剤層は、水分散性の塗工液として調整することが好ましく、転写法を採用することにより、塗工液中の水分が基材シートへの接触を避けることができる。更に、乾燥の際に基材シートの僅かな収縮をさけることもできる。
【0037】
「粘着シートの実施態様」
本発明の粘着シートは、粘着ラベルや粘着テープとして使用することができる。
また、基材シートとして透明性の高いものを採用して、オーバーラミ用粘着フィルムとして使用することができる。印刷等された部分に貼付することで、その部分を保護することができる。
また、基材シートに金属層を施した金属光沢性の粘着シートとすることもできる。金属層は金属箔の貼り合せや金属蒸着なども採用できるが、基材シートと粘着剤層の間に印刷等で設けても良く、例えば、アルミニウムなどの金属粉を含むインキで透明性の高い基材シートと粘着剤層の間に印刷すると、耐擦過性に優れ、筆記や印刷したものが鮮明に視認することができる金属光沢性に富んだ粘着シートを得ることができる。
また、基材シート表面には感熱層などの記録層を施すこともできる。
また、基材シートの両面に粘着剤層を形成する両面粘着シートとすることもできる。この場合、粘着剤により海洋分解性の機能が低下する傾向にあるので、粘着剤をドット状、水玉状、ストライプ状、格子状など非連続皮膜の状態で形成することが好ましい。
【0038】
以下、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらに限定されるものではない。また例中の部、割合、塗被量等は特に断らない限り、全て固形分または有効成分質量で示すものである。
【0039】
[実施例1]
(粘着剤Aの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:292部
アクリル酸:32部
(メタ)アクリル酸メチル:20部
アクリル酸メトキシエチル:38部
酢酸ビニル:14部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10G/花王社製):3部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を4.5質量%添加して調製した。
粘着剤Aにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は26質量%であった。
【0040】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対してノニオン系界面活性剤(エマルゲン707/花王社製):4部を添加し、強撹拌して粘着剤Aを製造した。
【0041】
(粘着シートの作製)
市販のポリエチレンラミネート紙にシリコーン系剥離剤が塗布された剥離紙に、粘着剤Aを乾燥質量で20g/mとなるように塗被、乾燥させた後、基材シートとして市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex CLW42、坪量65g/m、フタムラ化学社製)を貼り合わせて粘着シートを得た。
【0042】
[実施例2]
(粘着剤Bの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:280部
アクリル酸:35部
(メタ)アクリル酸メチル:20部
アクリル酸メトキシエチル:50部
酢酸ビニル:5部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10PT/花王社製):6部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を0.9質量%添加して調製した。
粘着剤Bにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は28質量%であった。
【0043】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対し、ノニオン系の界面活性剤(商品名:エマルゲン709/花王社製):4部、エチレン-酢ビ-アクリル共重合(商品名:スミカフレックスS-400HQ/住友化学工業社製):20部を添加し、強撹拌して本発明に使用する粘着剤を製造した。
【0044】
市販のポリエチレンラミネート紙にシリコーン系剥離剤が塗布された剥離紙に、粘着剤Bを乾燥質量で20g/mとなるように塗被、乾燥させた後、基材シートとして市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex 42NVSW、坪量65g/m、フタムラ化学社製)を貼り合わせて粘着シートを得た。
【0045】
[実施例3]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex 42NVSW、坪量65g/m、フタムラ化学社製)の代わりに市販のアミロースを主成分とするフィルム(Plantic/クラレ社製)に易接着層を設けたものを基材シートとして用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0046】
[実施例4]
(粘着剤Cの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:260部
アクリル酸:35部
(メタ)アクリル酸メチル:20部
アクリル酸メトキシエチル:60部
酢酸ビニル:25部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10PT/花王社製):3部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を1.8質量%添加して調製した。
粘着剤Cにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は35質量%であった。
【0047】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対し、ノニオン系の界面活性剤(商品名:エマルゲン709/花王社製):4部、エチレン-酢ビ-アクリル共重合(商品名:スミカフレックスS-400HQ/住友化学工業社製):27部を添加し、強撹拌して本発明に使用する粘着剤を製造した。
【0048】
前記粘着剤Cを使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した
【0049】
[実施例5]
(粘着剤Dの製造)
まず乳化モノマー混合液として、
アクリル酸-2-エチルヘキシル:280部
アクリル酸:20部
(メタ)アクリル酸メチル:10部
アクリル酸メトキシエチル:10部
酢酸ビニル:5部
アニオン系乳化剤(商品名:エマール10G/花王社製):3部
イオン交換水:150部
を混合し、乳化剤とイオン交換水を除く全モノマー混合物に対してポリエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル9G/新中村化学社製)を4.5質量%添加して調製した。
粘着剤Dにおいて粘着剤組成中の親水性モノマー由来成分の含有率は14質量%であった。
【0050】
次ぎに撹拌機、クーラー、滴下ロート、窒素吸入管、温度計を付帯したフラスコに、イオン交換水150部、過硫酸カリウム3部、オクチルメルカプタン3部を仕込み、窒素置換しながら80℃に昇温した後、上記乳化モノマー混合液を1/6滴下した。反応率が90%に達した時点で残りのモノマー混合液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、80℃で3時間熟成して反応を完結させた。次にフラスコ内容物を40℃に冷却し、トリエタノールアミンと10%KOH水溶液をそれぞれ共重合体中のカルボキシル基の50モル%添加して中和反応を行った。得られた組成物100部に対してノニオン系界面活性剤(エマルゲン707/花王社製):4部を添加し、強撹拌して粘着剤Dを製造した。
【0051】
前記粘着剤Dを使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した
【0052】
[実施例6]
実施例1の粘着シートの作製において粘着剤Aを乾燥質量で15g/mとなるように塗被、乾燥させた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0053】
[実施例7]
実施例1の粘着シートの作製において粘着剤Aを乾燥質量で25g/mとなるように塗被、乾燥させた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0054】
[実施例8]
実施例1の粘着シートの作製において粘着剤Aを乾燥質量で10g/mとなるように塗被、乾燥させた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0055】
[実施例9]
実施例1の粘着シートの作製において粘着剤Aを乾燥質量で30g/mとなるように塗被、乾燥させた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0056】
[比較例1]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex 42NVSW、65g/m、フタムラ化学社製)の代わりに市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製)を基材シートとして使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した
【0057】
[比較例2]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex 42NVSW、坪量65g/m、フタムラ化学社製)の代わりに市販の撥水紙(レインガード/王子エフテックス社製)を基材シートとして使用した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0058】
[比較例3]
実施例1において粘着剤Aの代わりに市販のアクリル系粘着剤(商品名:BPW6111A-1/トーヨーケム社製)を乾燥質量で20g/mとなるように塗被、乾燥した以
外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0059】
[比較例4]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex 42NVSW、坪量65g/m、フタムラ化学社製)の代わりに市販のポリ乳酸系フィルム(エコロージュ/三菱ケミカル社製)を基材シートとして用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0060】
[比較例5]
実施例1において粘着剤Aの代わりに市販のデンプン糊を乾燥質量で20g/mとなるように塗被、乾燥した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0061】
[比較例6]
実施例1の粘着シートの作製において市販のセルロースフィルム(製品名:NatureFlex 42NVSW、坪量65g/m、フタムラ化学社製)の代わりに市販のセロハン(レンゴー社製、坪量坪量56g/m)を基材シートとして用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作成した。
【0062】
このようにして得られた粘着シートについて、下記の評価を行い、得られた結果を表1に示した。
【0063】
(評価試験項目)
〔接着力〕
JIS-Z-0237の常態粘着力の測定方法に準拠し、下記の二つの条件で保存した後の接着力をそれぞれ測定した。(単位:N/25mm)
条件A:粘着シートの製造後、温度23±2℃、関係湿度65±5%の雰囲気下に7日間保存した後、その接着力を測定した。
条件B:粘着シート製造後、温度40±2℃、関係湿度90±5%の雰囲気下に7日間保存した後、その接着力を測定した。
接着力は8N/25mm以上であれば、実用上問題がない。
【0064】
〔粘着シートの吸水度〕
JIS-P-8140の吸水度試験方法に準拠し、粘着シートの表面側(基材シート)の吸水度を測定した。なお、水の接触時間は30秒で行った。
【0065】
〔粘着シートのはっ水度〕
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.68:2000に従って、粘着シートの表面側(基材シート)のはっ水度を測定した。
【0066】
(耐水性試験)
前記粘着シートの前記基材シートの前記粘着層が積層されていない面に熱転写プリンタ(型番:SCAN TRONICS SG412R、サトー社製)でJANバーコードを印字した後、前記粘着シートの前記JANバーコード印字部を含んで切り出した50mm×50mmの粘着シートサンプルを前記粘着層を介して60mm×60mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り付けた後、水温23℃の水道水500ccの入ったビーカーに投入して20秒浸漬した。
サンプルの耐水性を以下の基準で評価した。
○:粘着シートサンプルがポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がれておらず、耐水性が良好である。
×:粘着シートサンプルがポリエチレンテレフタレートフィルムから剥がれており、耐水性に実用上問題がある。
【0067】
(印刷保存性)
前記耐水性試験において20秒浸漬した粘着シートサンプルをビーカーから取り出して温度23±2℃、関係湿度65±5%の雰囲気下で乾燥させてから、バーコードリーダー(型番:BHT-6159UMWB、デンソー社製)で読取りを行い、以下の基準で評価した。
○:バーコードを読み取ることができ、印字保存性が良好である。
△:バーコードを読み取り成功率が70%以上であり、実用に耐える。
×:バーコードを読み取ることができ、印字保存性に実用上問題がある。
【0068】
(海洋分解性試験)
40L水槽に蒸留水35Lを入れ、人口海水の素(製品名:RED SEA SALT、Red Sea社製)を比重1.02になるよう溶解して、人口海水を調整する。
次いで、水温を26℃に調整し、水槽にライブロックを投入し、ポンプで水槽を循環させて海洋環境を作成する。
予め乾燥質量Aを測定した100mm×100mmの試験片を水槽に90日間浸漬させた後、試験片を取り出して乾燥質量Bを測定し、残存率(乾燥質量B/乾燥質量A)を測定する。残存率が20%以下のものを合格とする。
【0069】
〔耐水性試験〕
5cm角に切った粘着シートを市販のポリエチレンテレフタレートフィルムに貼り付け、温度23±2℃、関係湿度65±5%の雰囲気下に24時間放置後、23゜Cの水に20秒間浸漬し、取り出したときの状態を下記評価基準にて評価した。
○:粘着ラベルがフィルムから剥がれないで、評価前の状態を維持している。
△:粘着ラベルの一部に剥がれが見られる、もしくはラベル周囲が波打つ。
×:粘着ラベルが全てフィルムから剥がれる。
【0070】
〔ゲル分率〕
10cm角に切った基材シート重量を測定する。・・・W1
10cm角に切った粘着シートの重量を測定する。・・・W2
上記基材シートならびに粘着シートをそれぞれトルエンに24時間浸漬させ、取り出した後に乾燥させてそれぞれの重量(基材シート:W3、粘着シート:W4)を測定する。 下記式に従いゲル分率を算出し、結果を表1に示した。
ゲル分率(%) = (W4-W3)/(W2-W1)×100
【0071】
(水性ペン筆記性)
前記粘着シートの前記基材シートの前記粘着層が積層されていない面に水性ペン(水性サインペン、ペンテル社製)で描画し、画像の滲み具合を以下の基準で評価した。
○:滲みが殆どなく水性ペン筆記性が良好である。
△:僅かに滲みが見られるが、実用上問題ない水性ペン筆記性を有する。
×:滲みが観察される、または、画像がかすれ実用上問題がある。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の如く、本発明の粘着シートは、貼り付け時には必要な接着力を示し、経時による接着力の低下も少なく、実使用時の耐水性にも優れ、且つ使用後に海洋に廃棄されたとしても海洋環境下で分解される粘着シートであった。