(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240305BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/18
B41J2/14 605
(21)【出願番号】P 2020014627
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】長沼 陽一
(72)【発明者】
【氏名】福澤 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】鷹合 仁司
(72)【発明者】
【氏名】玉井 捷太郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059130(JP,A)
【文献】特開2015-024608(JP,A)
【文献】特開2015-042482(JP,A)
【文献】特開2000-272128(JP,A)
【文献】特開2018-111282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、
前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、
前記第1圧力室に液体を供給する供給流路と、
前記第2圧力室から液体が排出される排出流路と、
前記第1方向に延在し、液体を吐出するノズルに連通するノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室及び前記ノズル流路を連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室及び前記ノズル流路を連通する第2連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室及び前記排出流路を連通する第3連通流路と
、
を備え、
前記第2圧力室の壁面は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第1壁面を含み、
前記第2連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第2壁面と、前記第1方向において前記第2壁面とは反対側の第3壁面と、を含み、
前記第1壁面と前記第3壁面との間には、第1傾斜部が設けられ、
前記第1傾斜部は、
前記第1方向及び前記第2方向の間の第3方向に延在する第1構成面を有し、
前記第3連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第4壁面を含み、
前記第1壁面と前記第4壁面の間には、第2傾斜部が設けられ、
前記第2傾斜部は、
前記第1方向と反対の第4方向及び前記第2方向の間の第5方向に延在する第2構成面を有する、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、
前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、
前記第1圧力室に液体を供給する供給流路と、
前記第2圧力室から液体が排出される排出流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、一端が前記第1圧力室に連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、一端が前記第2圧力室に連通する第2連通流路と、
前記第2方向に延在し、一端が前記第2圧力室に連通し、他端が前記排出流路に連通する第3連通流路と、
前記第1連通流路の他端と、前記第2連通流路の他端と、液体を吐出するノズルと、を連通するノズル流路と
、
を備え、
前記第2圧力室の壁面は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第1壁面を含み、
前記第2連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第2壁面と、前記第1方向において前記第2壁面とは反対側の第3壁面と、を含み、
前記第1壁面と前記第3壁面との間には、第1傾斜部が設けられ、
前記第1傾斜部は、
前記第1方向及び前記第2方向の間の第3方向に延在する第1構成面を有し、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室及び前記排出流路を連通する第3連通流路を更に備え、
前記第3連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第4壁面を含み、
前記第1壁面と前記第4壁面の間には、第2傾斜部が設けられ、
前記第2傾斜部は、
前記第1方向と反対の第4方向及び前記第2方向の間の第5方向に延在する第2構成面を有する、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1方向及び前記第3方向のなす角度は、
前記第4方向及び前記第5方向のなす角度と略同じである、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1傾斜部は、
前記第1方向及び前記第3方向の間の第6方向に延在する第3構成面を有する、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1傾斜部は、
前記第1方向に延在する第3構成面を有する、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第3構成面は、
前記第1構成面と前記第3壁面との間に設けられる、
ことを特徴とする、請求項4または5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1圧力室の壁面は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第5壁面を含み、
前記第1連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向と反対の第4方向において前記ノズルから最も遠い第6壁面と、前記第1方向において前記第6壁面とは反対側の第7壁面と、を含み、
前記第5壁面と前記第7壁面の間には、第3傾斜部が設けられ、
前記第3傾斜部は、
前記第2方向及び前記第4方向の間の第5方向に延在する第4構成面を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1傾斜部と前記第3傾斜部とは、略同じ形状を有する、
ことを特徴とする、請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第2方向に延在し、前記第1圧力室及び前記供給流路を連通する第4連通流路を更に備え、
前記第4連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第4方向において前記ノズルから最も遠い第8壁面を含み、
前記第5壁面と前記第8壁面の間には、第4傾斜部が設けられ、
前記第4傾斜部は、
前記第3方向に延在する第5構成面を有する、
ことを特徴とする、請求項7または8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1圧力室、及び、前記第2圧力室が設けられた圧力室基板と、
前記ノズル流路、前記第1連通流路、前記第2連通流路、前記供給流路、及び、前記排出流路が設けられた連通板と、
前記ノズルが設けられたノズル基板と、
を備える、
ことを特徴とする、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第1傾斜部は、前記圧力室基板に設けられる、
ことを特徴とする、請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記ノズルは、
前記ノズル流路の略中央において、前記ノズル流路に連通する、
ことを特徴とする、請求項1乃至11のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
第1駆動信号の供給に応じて、前記第1圧力室内の液体に圧力を付与する第1素子と、
第2駆動信号の供給に応じて、前記第2圧力室内の液体に圧力を付与する第2素子と、
を備える、
ことを特徴とする、請求項1乃至12のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記第1駆動信号の波形と、
前記第2駆動信号の波形とは、略同じである、
ことを特徴とする、請求項13に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、
前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、
前記第1圧力室に液体を供給する供給流路と、
前記第2圧力室から液体が排出される排出流路と、
前記第1方向に延在し、液体を吐出するノズルに連通するノズル流路と、
前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室及び前記ノズル流路を連通する第1連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第2圧力室及び前記ノズル流路を連通する第2連通流路と、
前記第2方向に延在し、前記第1圧力室及び前記供給流路を連通する第4連通流路と
、
を備え、
前記第2圧力室の壁面は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第1壁面を含み、
前記第2連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第2壁面と、前記第1方向において前記第2壁面とは反対側の第3壁面と、を含み、
前記第1壁面と前記第3壁面との間には、第1傾斜部が設けられ、
前記第1傾斜部は、
前記第1方向及び前記第2方向の間の第3方向に延在する第1構成面を有し、
前記第1圧力室の壁面は、
前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第5壁面を含み、
前記第1連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第1方向と反対の第4方向において前記ノズルから最も遠い第6壁面と、前記第1方向において前記第6壁面とは反対側の第7壁面と、を含み、
前記第5壁面と前記第7壁面の間には、第3傾斜部が設けられ、
前記第3傾斜部は、
前記第2方向及び前記第4方向の間の第5方向に延在する第4構成面を有し、
前記第4連通流路の壁面は、
前記第2方向に延在し、前記第4方向において前記ノズルから最も遠い第8壁面を含み、
前記第5壁面と前記第8壁面の間には、第4傾斜部が設けられ、
前記第4傾斜部は、
前記第3方向に延在する第5構成面を有する、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、従来から、圧力室内の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドに関する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術においては、圧力室からノズルに至る流路において気泡が滞留し、ノズルから液体を吐出しにくくなる吐出異常が生じる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の問題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出するノズルに連通するノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室及び前記ノズル流路を連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室及び前記ノズル流路を連通する第2連通流路と、前記第1圧力室に液体を供給する供給流路と、前記第2圧力室から液体が排出される排出流路と、を備え、前記第2圧力室の壁面は、前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第1壁面を含み、前記第2連通流路の壁面は、前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第2壁面と、前記第1方向において前記第2壁面とは反対側の第3壁面と、を含み、前記第1壁面と前記第3壁面との間には、第1傾斜部が設けられ、前記第1傾斜部は、前記第1方向及び前記第2方向の間の第3方向に延在する第1構成面を有する、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の好適な態様に係る液体吐出装置は、第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第1圧力室と、前記第1方向に延在し、液体に圧力を付与する第2圧力室と、前記第1方向に延在し、液体を吐出するノズルに連通するノズル流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延在し、前記第1圧力室及び前記ノズル流路を連通する第1連通流路と、前記第2方向に延在し、前記第2圧力室及び前記ノズル流路を連通する第2連通流路と、前記第1圧力室に液体を供給する供給流路と、前記第2圧力室から液体が排出される排出流路と、を備え、前記第2圧力室の壁面は、前記第1方向に延在し、前記第2方向において前記ノズルから最も遠い第1壁面を含み、前記第2連通流路の壁面は、前記第2方向に延在し、前記第1方向において前記ノズルから最も遠い第2壁面と、前記第1方向において前記第2壁面とは反対側の第3壁面と、を含み、前記第1壁面と前記第3壁面との間には、第1傾斜部が設けられ、前記第1傾斜部は、前記第1方向及び前記第2方向の間の第3方向に延在する第1構成面を有する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置100の一例を示す構成図である。
【
図2】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す平面図である。
【
図5】圧電素子PZqの構成の一例を示す断面図である。
【
図6】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図8】参考例に係る液体吐出ヘッド1Zの構成の一例を示す断面図である。
【
図9】変形例1に係る循環流路RJAの構成の一例を示す平面図である。
【
図10】変形例2に係る液体吐出装置100Bの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。但し、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
<<A.実施形態>>
以下、
図1を参照しつつ、本実施形態に係る液体吐出装置100について説明する。
【0010】
<<1.液体吐出装置の概要>>
図1は、本実施形態に係る液体吐出装置100の一例を示す説明図である。本実施形態に係る液体吐出装置100は、インクを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、例えば、印刷用紙であるが、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。
図1に例示される通り、液体吐出装置100は、インクを貯留する液体容器93を備える。液体容器93としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンク等を採用することができる。液体容器93には、色彩が相違する複数種のインクが貯留される。
【0011】
図1に例示される通り、液体吐出装置100は、制御装置90と移動機構91と搬送機構92と循環機構94と、を備える。
このうち、制御装置90は、例えばCPUまたはFPGA等の処理回路と、半導体メモリ等の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素を制御する。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略称であり、FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
また、移動機構91は、制御装置90による制御のもとで、媒体PPを+Y方向に搬送する。なお、以下では、+Y方向と、+Y方向とは反対の方向である-Y方向とを、Y軸方向と総称する。
また、搬送機構92は、制御装置90による制御のもとで、複数の液体吐出ヘッド1を、+X方向、及び、+X方向とは反対の方向である-X方向に往復動させる。なお、以下では、+X方向及び-X方向をX軸方向と総称する。ここで、+X方向とは、+Y方向に交差する方向である。例えば、+X方向とは、+Y方向に直交する方向である。搬送機構92は、複数の液体吐出ヘッド1を収容する収納ケース921と、収納ケース921が固定された無端ベルト922とを具備する。なお、液体容器93及び循環機構94を液体吐出ヘッド1とともに収納ケース921に収納してもよい。
また、循環機構94は、制御装置90による制御のもとで、液体容器93に貯留されたインクを、液体吐出ヘッド1に設けられた供給流路RB1に供給する。更に、循環機構94は、制御装置90による制御のもとで、液体吐出ヘッド1に設けられた排出流路RB2に貯留されたインクを回収し、当該回収したインクを、供給流路RB1に還流させる。なお、供給流路RB1及び排出流路RB2については、
図3で後述する。
【0012】
図1に例示される通り、液体吐出ヘッド1には、制御装置90から、液体吐出ヘッド1を駆動するための駆動信号Comと、液体吐出ヘッド1を制御するための制御信号SIと、が供給される。そして、液体吐出ヘッド1は、制御信号SIによる制御のもとで駆動信号Comにより駆動され、液体吐出ヘッド1に設けられたM個のノズルNの一部または全部から、+Z方向にインクを吐出させる。ここで、値Mは、1以上の自然数である。また、+Z方向は、+X方向及び+Y方向に交差する方向である。例えば、+Z方向は、+X方向及び+Y方向に直交する方向である。以下では、+Z方向と、+Z方向とは反対の方向である-Z方向とを、Z軸方向と総称する場合がある。なお、ノズルNについては、
図2乃至
図4において後述する。
液体吐出ヘッド1は、移動機構91による媒体PPの搬送と、搬送機構92による液体吐出ヘッド1の往復動とに連動して、M個のノズルNの一部又は全部からインクを吐出させて、当該吐出されたインクを媒体PPの表面に着弾させることで、媒体PPの表面に所望の画像を形成する。
【0013】
<<2.液体吐出ヘッドの概要>>
以下、
図2乃至
図5を参照しつつ、液体吐出ヘッド1の概要を説明する。
なお、
図2は、液体吐出ヘッド1の分解斜視図であり、
図3は、
図2におけるIII-III線の断面図であり、
図4は、液体吐出ヘッド1を-Z方向から見た平面図である。
【0014】
図2及び
図3に例示される通り、液体吐出ヘッド1は、ノズル基板60と、コンプライアンスシート61及びコンプライアンスシート62と、連通板2と、圧力室基板3と、振動板4と、貯留室形成基板5と、配線基板8と、を備える。
【0015】
図2に例示される通り、ノズル基板60は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材であり、M個のノズルNが形成される。ここで、「略平行」とは、完全に平行である場合の他に、誤差を考慮すれば平行であると看做せる場合を含む概念である。ノズル基板60は、例えば、エッチング等の半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。但し、ノズル基板60の製造には公知の材料及び製法が任意に採用され得る。また、ノズルNは、ノズル基板60に設けられた貫通孔である。本実施形態では、一例として、ノズル基板60において、M個のノズルNが、Y軸方向に延在するノズル列Lnを形成するように設けられた場合を想定する。
【0016】
図2及び
図3に例示される通り、ノズル基板60の-Z側には、連通板2が設けられる。連通板2は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材であり、インクの流路が形成される。
具体的には、連通板2には、1個の供給流路RA1と、1個の排出流路RA2とが形成される。このうち、供給流路RA1は、後述する供給流路RB1と連通し、Y軸方向に延在するように設けられる。また、排出流路RA2は、後述する排出流路RB2と連通し、供給流路RA1から見て-X方向においてY軸方向に延在するように設けられる。
また、連通板2には、M個のノズルNと1対1に対応するM個のノズル流路RNと、M個のノズルNと1対1に対応するM個の連通流路RR1と、M個のノズルNと1対1に対応するM個の連通流路RR2と、M個のノズルNと1対1に対応するM個の連通流路RK1と、M個のノズルNと1対1に対応するM個の連通流路RK2と、M個のノズルNと1対1に対応するM個の連通流路RX1と、M個のノズルNと1対1に対応するM個の連通流路RX2と、が形成される。なお、連通板2には、M個のノズルNに共通する1個の連通流路RX1が設けられてもよいし、M個のノズルNに共通する1個の連通流路RX2が設けられてもよい。
このうち、連通流路RX1は、供給流路RA1と連通し、供給流路RA1から見て-X方向においてX軸方向に延在するように設けられる。また、連通流路RK1は、連通流路RX1と連通し、連通流路RX1から見て-X方向においてZ軸方向に延在するように設けられる。また、連通流路RR1は、連通流路RK1から見て-X方向においてZ軸方向に延在するように設けられる。
また、連通流路RX2は、排出流路RA2と連通し、排出流路RA2から見て+X方向においてX軸方向に延在するように設けられる。また、連通流路RK2は、連通流路RX2と連通し、連通流路RX2から見て+X方向においてZ軸方向に延在するように設けられる。また、連通流路RR2は、連通流路RK2から見て+X方向であって、連通流路RR1から見て-X方向において、Z軸方向に延在するように設けられる。
また、ノズル流路RNは、連通流路RR1及び連通流路RR2を連通し、連通流路RR1から見て-X方向であって、連通流路RR2から見て+X方向において、X軸方向に延在するように設けられる。ノズル流路RNは、当該ノズル流路RNに対応するノズルNに連通する。
なお、連通板2は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。但し、連通板2の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
【0017】
図2及び
図3に例示される通り、連通板2の-Z側には、圧力室基板3が設けられる。圧力室基板3は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材であり、インクの流路が形成される。
具体的には、圧力室基板3には、M個のノズルNと1対1に対応するM個の圧力室CB1と、M個のノズルNと1対1に対応するM個の圧力室CB2と、が形成される。このうち、圧力室CB1は、連通流路RK1及び連通流路RR1を連通し、Z軸方向から見た場合に、連通流路RK1の+X側の端部と、連通流路RR1の-X側の端部とを結び、X軸方向に延在するように設けられる。また、圧力室CB2は、連通流路RK2及び連通流路RR2を連通し、Z軸方向から見た場合に、連通流路RK2の-X側の端部と、連通流路RR2の+X側の端部とを結び、X軸方向に延在するように設けられる。
なお、圧力室基板3は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造される。但し、圧力室基板3の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
また、詳細は後述するが、圧力室基板3には、圧力室CB1に対応して傾斜部TP1A及び傾斜部TP1Bが設けられ、圧力室CB2に対応して傾斜部TP2A及び傾斜部TP2Bが設けられる。
【0018】
なお、以下では、供給流路RA1及び排出流路RA2を連通するインクの流路を、循環流路RJと称する。
図4に例示される通り、供給流路RA1及び排出流路RA2は、M個のノズルNと1対1に対応するM個の循環流路RJにより連通される。各循環流路RJは、上述のとおり、供給流路RA1に連通する連通流路RX1と、連通流路RX1に連通する連通流路RK1と、連通流路RK1に連通する圧力室CB1と、圧力室CB1に連通する連通流路RR1と、連通流路RR1に連通するノズル流路RNと、ノズル流路RNに連通する連通流路RR2と、連通流路RR2に連通する圧力室CB2と、圧力室CB2に連通する連通流路RK2と、連通流路RK2及び排出流路RA2を連通する連通流路RX2と、を含む。なお、本実施形態では、一例として、各循環流路RJが、X軸方向に延在する場合を想定する。
【0019】
図2及び
図3に例示される通り、圧力室基板3の-Z側には、振動板4が設けられる。振動板4は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材であって、弾性的に振動可能な部材である。
【0020】
図2及び
図3に例示される通り、振動板4の-Z側には、M個の圧力室CB1に1対1に対応するM個の圧電素子PZ1と、M個の圧力室CB2に1対1に対応するM個の圧電素子PZ2と、が設けられる。以下では、圧電素子PZ1及び圧電素子PZ2を、圧電素子PZqと総称する。圧電素子PZqは、駆動信号Comの電位変化に応じて変形する受動素子である。換言すれば、圧電素子PZqは、駆動信号Comの電気エネルギーを運動エネルギーに変換する、エネルギー変換素子の一例である。なお、以下では、液体吐出ヘッド1のうち、圧電素子PZqに対応する構成要素または信号を示す符号に、添え字「q」を付する場合がある。
【0021】
図5は、圧電素子PZqの近傍を拡大した断面図である。
図5に例示される通り、圧電素子PZqは、所定の基準電位VBSが供給される下部電極ZDqと、駆動信号Comが供給される上部電極ZUqとの間に、圧電体ZMqを介在させた積層体である。圧電素子PZqは、例えば、-Z方向から見たときに、下部電極ZDqと上部電極ZUqと圧電体ZMqとが重なる部分である。また、圧電素子PZqの+Z方向には、圧力室CBqが設けられる。
上述の通り、圧電素子PZqは、駆動信号Comの電位変化に応じて駆動されて変形する。振動板4は、圧電素子PZqの変形に連動して振動する。振動板4が振動すると、圧力室CBq内の圧力が変動する。そして、圧力室CBq内の圧力が変動することで、圧力室CBqの内部に充填されたインクが、連通流路RRq及びノズル流路RNを経由して、ノズルNから吐出される。
【0022】
図2及び
図3に例示される通り、振動板4の-Z側の面には、配線基板8が実装される。配線基板8は、制御装置90及び液体吐出ヘッド1を電気的に接続するための部品である。配線基板8としては、例えば、FPCまたはFFC等の可撓性の配線基板が好適に採用される。ここで、FPCとは、Flexible Printed Circuitの略称であり、また、FFCとは、Flexible Flat Cableの略称である。配線基板8には、駆動回路81が実装される。駆動回路81は、制御信号SIによる制御のもとで、圧電素子PZqに対して、駆動信号Comを供給するか否かを切り替える電気回路である。
図5に例示される通り、駆動回路81は、配線810を介して、圧電素子PZqの有する上部電極ZUqに対して駆動信号Comを供給する。
なお、以下では、圧電素子PZ1に供給される駆動信号Comを、駆動信号Com1と称し、圧電素子PZ2に供給される駆動信号Comを、駆動信号Com2と称する場合がある。本実施形態では、ノズルNからインクを吐出させる際に、駆動回路81がノズルNに対応する圧電素子PZ1に供給する駆動信号Com1の波形と、駆動回路81がノズルNに対応する圧電素子PZ2に供給する駆動信号Com2の波形とが、略同じである場合を想定する。ここで、「略同じ」とは、完全に同一である場合の他に、誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む概念である。
【0023】
図2及び
図3に例示される通り、連通板2の-Z側には、貯留室形成基板5が設けられる。貯留室形成基板5は、Y軸方向に長尺な部材であり、インクの流路が形成される。
具体的には、貯留室形成基板5には、1個の供給流路RB1と、1個の排出流路RB2とが形成される。このうち、供給流路RB1は、供給流路RA1と連通し、供給流路RA1から見て-Z方向において、Y軸方向に延在するように設けられる。また、排出流路RB2は、排出流路RA2と連通し、排出流路RA2から見て-Z方向であって、供給流路RB1から見て-X方向において、Y軸方向に延在するように設けられる。
また、貯留室形成基板5には、供給流路RB1と連通する導入口51と、排出流路RB2と連通する排出口52とが設けられる。そして、供給流路RB1には、液体容器93から、導入口51を介してインクが供給される。また、排出流路RB2に貯留されたインクは、排出口52を介して回収される。
また、貯留室形成基板5には、開口50が設けられる。開口50の内側には、圧力室基板3と、振動板4と、配線基板8とが設けられる。
なお、貯留室形成基板5は、例えば、樹脂材料の射出成形により形成される。但し、貯留室形成基板5の製造には公知の材料や製法が任意に採用され得る。
【0024】
本実施形態において、液体容器93から導入口51に供給されたインクは、供給流路RB1を経由して、供給流路RA1に流入する。そして、供給流路RA1に流入したインクの一部は、連通流路RX1及び連通流路RK1を経由して、圧力室CB1に流入する。また、圧力室CB1に流入したインクの一部は、連通流路RR1とノズル流路RNと連通流路RR2とを経由して、圧力室CB2に流入する。そして、圧力室CB2に流入したインクの一部は、連通流路RK2と連通流路RX2と排出流路RA2と排出流路RB2とを経由して、排出口52から排出される。
なお、駆動信号Com1により圧電素子PZ1が駆動される場合、圧力室CB1内部に充填されているインクの一部は、連通流路RR1とノズル流路RNとを経由して、ノズルNから吐出される。また、駆動信号Com2により圧電素子PZ2が駆動される場合、圧力室CB2内部に充填されているインクの一部は、連通流路RR2とノズル流路RNとを経由して、ノズルNから吐出される。
【0025】
図2及び
図3に例示される通り、連通板2の+Z側の面上には、供給流路RA1と連通流路RX1と連通流路RK1とを閉塞するように、コンプライアンスシート61が設けられる。コンプライアンスシート61は、弾性材料から形成されており、供給流路RA1、連通流路RX1、及び、連通流路RK1内のインクの圧力変動を吸収する。また、連通板2の+Z側の面上には、排出流路RA2と連通流路RX2と連通流路RK2とを閉塞するように、コンプライアンスシート62が設けられる。コンプライアンスシート62は、弾性材料から形成されており、排出流路RA2、連通流路RX2、及び、連通流路RK2内のインクの圧力変動を吸収する。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、供給流路RA1から循環流路RJを経由して排出流路RA2へと、インクを循環させる。このため、本実施形態では、圧力室CBq内部のインクがノズルNから吐出されない期間が存在する場合であっても、圧力室CBq内部及びノズル流路RN等において、インクが滞留した状態が継続することを防止できる。よって、本実施形態では、圧力室CBq内部のインクがノズルNから吐出されない期間が存在する場合であっても、圧力室CBq内部のインクが増粘することを抑制することが可能となり、インクの増粘に起因してノズルNからインクが吐出できなくなる吐出異常の発生を予防することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1内部に充填されているインクと、圧力室CB2内部に充填されているインクとを、ノズルNから吐出することができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、例えば、1個の圧力室CBq内部に充填されているインクのみをノズルNから吐出する態様と比較して、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることが可能となる。
【0028】
<<3.圧力室の形状>>
以下、
図6及び
図7を参照しつつ、圧力室CBqの形状を説明する。
【0029】
図6は、循環流路RJのうち、ノズル流路RN、連通流路RR1、圧力室CB1、連通流路RK1、及び、連通流路RX1の断面図である。
図6に例示されるように、連通流路RR1は、Y軸方向から見た場合に、+X側の壁面HRa1と、-X側の壁面HRb1とを有する。ここで、壁面HRa1は、連通流路RR1を構成する壁面のうち、X軸方向におけるノズルNからの距離が最も遠い壁面であり、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向に延在する壁面である。なお、本実施形態において、「一の物体と他の物体との距離」とは、一の物体と他の物体との間の最短距離を意味することとする。また、壁面HRb1は、Y軸方向から見た場合に連通流路RR1を構成しZ軸方向に延在する2つの壁面のうち、壁面HRa1とは反対側の壁面である。
また、連通流路RK1は、Y軸方向から見た場合に、-X側の壁面HKa1と、+X側の壁面HKb1とを有する。ここで、壁面HKb1は、連通流路RK1を構成する壁面のうち、X軸方向におけるノズルNからの距離が最も遠い壁面であり、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向に延在する壁面である。また、壁面HKa1は、Y軸方向から見た場合に連通流路RK1を構成しZ軸方向に延在する2つの壁面のうち、壁面HKb1とは反対側の壁面である。
また、圧力室CB1は、Y軸方向から見た場合に、壁面HC1を有する。ここで、壁面HC1は、圧力室CB1を構成する壁面のうち、Z軸方向におけるノズルNからの距離が最も遠い壁面であり、Y軸方向から見た場合にX軸方向に延在する壁面である。
【0030】
図6に例示されるように、圧力室基板3には、壁面HRb1と壁面HC1との間において、傾斜部TP1Aが設けられる。ここで、傾斜部TP1Aは、壁面HP11、壁面HP12、及び、壁面HP13を有する。
このうち、壁面HP11は、Y軸方向から見た場合に、W11方向に延在し、壁面HC1に接続される。ここで、W11方向とは、+X方向及び-Z方向の間の方向である。具体的には、W11方向とは、+Y方向から見て、+X方向を角度θ11だけ反時計回りに回転させた方向である。ここで、角度θ11とは、0度よりも大きく90度よりも小さい角度であり、好ましくは、30度よりも大きく60度よりも小さい角度である。
また、壁面HP13は、Y軸方向から見た場合に、W11方向に延在し、壁面HRb1に接続される。また、壁面HP12は、Y軸方向から見た場合に、W12方向に延在し、壁面HP11及び壁面HP13を接続する。ここで、W12方向とは、+X方向及びW11方向の間の方向である。具体的には、W12方向とは、+Y方向から見て、+X方向を角度θ12だけ反時計回りに回転させた方向である。ここで、角度θ12とは、0度よりも大きく角度θ11よりも小さい角度である。なお、壁面HP12は、Y軸方向から見た場合に、+X方向に延在してもよい。
【0031】
図6に例示されるように、圧力室基板3には、壁面HKb1と壁面HC1との間において、傾斜部TP1Bが設けられる。ここで、傾斜部TP1Bは、壁面HP14を有する。壁面HP14は、Y軸方向から見た場合に、W13方向に延在し、壁面HKb1及び壁面HC1を接続する。ここで、W13方向とは、-X方向及び-Z方向の間の方向である。具体的には、W13方向とは、+Y方向から見て、-X方向を角度θ13だけ時計回りに回転させた方向である。ここで、角度θ13とは、0度よりも大きく90度よりも小さい角度であり、好ましくは、30度よりも大きく60度よりも小さい角度である。例えば、角度θ13は角度θ11と略同じであってもよい。
【0032】
図7は、循環流路RJのうち、ノズル流路RN、連通流路RR2、圧力室CB2、連通流路RK2、及び、連通流路RX2の断面図である。
図7に例示されるように、連通流路RR2は、Y軸方向から見た場合に、-X側の壁面HRa2と、+X側の壁面HRb2とを有する。ここで、壁面HRa2は、連通流路RR2を構成する壁面のうち、X軸方向におけるノズルNからの距離が最も遠い壁面であり、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向に延在する壁面である。また、壁面HRb2は、Y軸方向から見た場合に連通流路RR2を構成しZ軸方向に延在する2つの壁面のうち、壁面HRa2とは反対側の壁面である。
また、連通流路RK2は、Y軸方向から見た場合に、+X側の壁面HKa2と、-X側の壁面HKb2とを有する。ここで、壁面HKb2は、連通流路RK2を構成する壁面のうち、X軸方向におけるノズルNからの距離が最も遠い壁面であり、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向に延在する壁面である。また、壁面HKa2は、Y軸方向から見た場合に連通流路RK2を構成しZ軸方向に延在する2つの壁面のうち、壁面HKb2とは反対側の壁面である。
また、圧力室CB2は、Y軸方向から見た場合に、壁面HC2を有する。ここで、壁面HC2は、圧力室CB2を構成する壁面のうち、Z軸方向におけるノズルNからの距離が最も遠い壁面であり、Y軸方向から見た場合にX軸方向に延在する壁面である。
【0033】
図7に例示されるように、圧力室基板3には、壁面HRb2と壁面HC2との間において、傾斜部TP2Aが設けられる。ここで、傾斜部TP2Aは、壁面HP21、壁面HP22、及び、壁面HP23を有する。
このうち、壁面HP21は、Y軸方向から見た場合に、W21方向に延在し、壁面HC2に接続される。ここで、W21方向とは、-X方向及び-Z方向の間の方向である。具体的には、W21方向とは、+Y方向から見て、-X方向を角度θ21だけ時計回りに回転させた方向である。ここで、角度θ21とは、0度よりも大きく90度よりも小さい角度であり、好ましくは、30度よりも大きく60度よりも小さい角度である。例えば、角度θ21は角度θ11と略同じであってもよい。
また、壁面HP23は、Y軸方向から見た場合に、W21方向に延在し、壁面HRb2に接続される。また、壁面HP22は、Y軸方向から見た場合に、W22方向に延在し、壁面HP21及び壁面HP23を接続する。ここで、W22方向とは、-X方向及びW21方向の間の方向である。具体的には、W22方向とは、+Y方向から見て、-X方向を角度θ22だけ時計回りに回転させた方向である。ここで、角度θ22とは、0度よりも大きく角度θ21よりも小さい角度である。例えば、角度θ22は角度θ12と略同じであってもよい。
なお、壁面HP22は、Y軸方向から見た場合に、-X方向に延在してもよい。また、傾斜部TP2Aは、傾斜部TP1Aと略同じ形状を有していてもよい。具体的には、傾斜部TP1A及び傾斜部TP2Aは、例えば、ノズルNを通りYZ平面に平行な平面を基準として面対称となるように設けられてもよい。
【0034】
図7に例示されるように、圧力室基板3には、壁面HKb2と壁面HC2との間において、傾斜部TP2Bが設けられる。ここで、傾斜部TP2Bは、壁面HP24を有する。壁面HP24は、Y軸方向から見た場合に、W23方向に延在し、壁面HKb2及び壁面HC2を接続する。ここで、W23方向とは、+X方向及び-Z方向の間の方向である。具体的には、W23方向とは、+Y方向から見て、+X方向を角度θ23だけ反時計回りに回転させた方向である。ここで、角度θ23とは、0度よりも大きく90度よりも小さい角度であり、好ましくは、30度よりも大きく60度よりも小さい角度である。例えば、角度θ23は角度θ21と略同じであってもよい。また、例えば、角度θ23は角度θ13と略同じであってもよい。
また、傾斜部TP2Bは、傾斜部TP1Bと略同じ形状を有していてもよい。具体的には、傾斜部TP1B及び傾斜部TP2Bは、例えば、ノズルNを通りYZ平面に平行な平面を基準として面対称となるように設けられてもよい。
【0035】
なお、本実施形態において、ノズルNは、ノズル流路RNの略中央に設けられる。例えば、X軸方向におけるノズルNから壁面HRb1までの距離と、X軸方向におけるノズルNから壁面HRb2までの距離とは、略同じであってもよい。ここで、「略中央」とは、厳密に同一である場合の他に、誤差を考慮すれば中央であると看做せる場合を含む概念である。
【0036】
<<4.参考例>>
以下、本実施形態の効果を明確化するために、
図8を参照しつつ、参考例に係る液体吐出ヘッド1Zについて説明する。なお、液体吐出ヘッド1Zは、圧力室基板3の代わりに、圧力室基板3Zを備える点を除き、実施形態に係る液体吐出ヘッド1と同様に構成されている。また、圧力室基板3Zは、傾斜部TP1A、傾斜部TP1B、傾斜部TP2A、及び、傾斜部TP2Bが設けられていない点を除き、実施形態に係る圧力室基板3と同様に構成されている。また、液体吐出ヘッド1Zの有する循環流路RJZは、圧力室CB1の代わりに圧力室CB1Zが設けられ、圧力室CB2の代わりに圧力室CB2Zが設けられている点において、実施形態に係る循環流路RJと相違する。
【0037】
図8は、参考例に係る液体吐出ヘッド1Zに設けられた循環流路RJZのうち、ノズル流路RN、連通流路RR2、圧力室CB2Z、連通流路RK2、及び、連通流路RX2の断面図である。
図8に例示されるように、圧力室CB2Zは、圧力室CB2Zを構成しZ軸方向に延在する2つの壁面HC21及び壁面HC22を備える。ここで、壁面HC21は、圧力室CB2Zを構成しZ軸方向に延在する2つの壁面のうち、+X側の壁面であり、壁面HC2及び壁面HRb2を接続する。また、壁面HC22は、圧力室CB2Zを構成しZ軸方向に延在する2つの壁面のうち、-X側の壁面であり、壁面HC2及び壁面HKb2を接続する。
【0038】
参考例に係る液体吐出ヘッド1Zにおいて、供給流路RA1から循環流路RJZを経由して排出流路RA2へとインクが流れる場合、壁面HC2及び壁面HC21の境界の領域Ar1と、壁面HC2及び壁面HC22の境界の領域Ar2とにおいて、インクの流速が低下し、インクが滞留する。このため、循環流路RJZ内で発生した気泡が、領域Ar1及び領域Ar2において滞留する可能性が高くなる。そして、参考例に係る液体吐出ヘッド1Zにおいて、圧電素子PZ2が駆動信号Com2により駆動され、圧力室CB2Z内のインクを、ノズルNから吐出しようとする場合においても、圧電素子PZ2がインクを押し出そうとする圧力が、圧力室CB2Zのうち領域Ar1及び領域Ar2に滞留する気泡により吸収され、ノズルNからインクを吐出し難くなる、所謂吐出異常が発生する。そして、吐出異常が発生する場合、媒体PPに対して形成される画像の画質が低下する。
同様に、参考例に係る液体吐出ヘッド1Zでは、圧電素子PZ1がインクを押し出そうとする圧力が、圧力室CB1Zに滞留する気泡により吸収され、ノズルNからインクを吐出し難くなる場合も存在しうる。
【0039】
これに対して、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、圧力室CB2において、傾斜部TP2A及び傾斜部TP2Bが設けられる。よって、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、液体吐出ヘッド1Zと比較して、圧力室CB2において気泡が滞留する可能性を低減することができる。また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、液体吐出ヘッド1Zと比較して、圧力室CB1において、傾斜部TP1A及び傾斜部TP1Bが設けられる。よって、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、液体吐出ヘッド1Zと比較して、圧力室CB1において気泡が滞留する可能性を低減することができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、液体吐出ヘッド1Zと比較して、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。これにより、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1では、液体吐出ヘッド1Zと比較して、媒体PPに対してより高画質の画像を形成することが可能となる。
【0040】
<<5.実施形態の纏め>>
以上において説明したように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、-X方向に延在し、インクに圧力を付与する圧力室CB1と、-X方向に延在し、インクに圧力を付与する圧力室CB2と、-X方向に延在し、インクを吐出するノズルNに連通するノズル流路RNと、-X方向と交差する-Z方向に延在し、圧力室CB1及びノズル流路RNを連通する連通流路RR1と、-Z方向に延在し、圧力室CB2及びノズル流路RNを連通する連通流路RR2と、圧力室CB1にインクを供給する供給流路RA1と、圧力室CB2からインクが排出される排出流路RA2と、を備え、圧力室CB2の壁面は、-X方向に延在し、-Z方向においてノズルNから最も遠い壁面HC2を含み、連通流路RR2の壁面は、-Z方向に延在し、-X方向においてノズルNから最も遠い壁面HRa2と、-X方向において壁面HRa2とは反対側の壁面HRb2と、を含み、壁面HC2と壁面HRb2との間には、傾斜部TP2Aが設けられ、傾斜部TP2Aは、+X方向及び-Z方向の間のW21方向に延在する壁面HP21を有する、ことを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB2において傾斜部TP2Aが設けられるため、圧力室CB2において傾斜部TP2Aが設けられない態様と比較して、連通流路RR2から圧力室CB2へと向かうインクの流れ、及び、圧力室CB2から連通流路RR2へと向かうインクの流れを、円滑にすることができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB2において傾斜部TP2Aが設けられない態様と比較して、連通流路RR2及び圧力室CB2において気泡が滞留する可能性を低減することができる。これにより、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB2において傾斜部TP2Aが設けられない態様と比較して、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1及び圧力室CB2が、連通流路RR1、ノズル流路RN、及び、連通流路RR2を介して連通しているため、圧力室CB1及び圧力室CB2の間において、インクの流れを生じさせることができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1及び圧力室CB2が連通していない態様と比較して、ノズル流路RN等において気泡が滞留する可能性を低減することができる。これにより、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1及び圧力室CB2が連通していない態様と比較して、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。
なお、本実施形態において、圧力室CB1は「第1圧力室」の一例であり、圧力室CB2は「第2圧力室」の一例であり、連通流路RR1は「第1連通流路」の一例であり、連通流路RR2は「第2連通流路」の一例であり、壁面HC2は「第1壁面」の一例であり、壁面HRa2は「第2壁面」の一例であり、壁面HRb2は「第3壁面」の一例であり、傾斜部TP2Aは「第1傾斜部」の一例であり、壁面HP21は「第1構成面」の一例であり、インクは「液体」の一例であり、-X方向は「第1方向」の一例であり、-Z方向は「第2方向」の一例であり、W21方向は「第3方向」の一例である。
【0041】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、-Z方向に延在し、連通流路RR2及び排出流路RA2を連通する連通流路RK2を備え、連通流路RK2の壁面は、-Z方向に延在し、-X方向においてノズルNから最も遠い壁面HKb2を含み、壁面HKb2と壁面HC2との間には、傾斜部TP2Bが設けられ、傾斜部TP2Bは、+X方向及び-Z方向の間のW23方向に延在する壁面HP24を有する、ことを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB2において傾斜部TP2Bが設けられるため、圧力室CB2において傾斜部TP2Bが設けられない態様と比較して、連通流路RK2から圧力室CB2へと向かうインクの流れ、及び、圧力室CB2から連通流路RK2へと向かうインクの流れを、円滑にすることができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB2において傾斜部TP2Bが設けられない態様と比較して、連通流路RK2及び圧力室CB2において気泡が滞留する可能性を低減することができる。これにより、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB2において傾斜部TP2Bが設けられない態様と比較して、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。
なお、本実施形態において、連通流路RK2は「第3連通流路」の一例であり、壁面HKb2は「第4壁面」の一例であり、傾斜部TP2Bは「第2傾斜部」の一例であり、壁面HP24は「第2構成面」の一例であり、+X方向は「第4方向」の一例であり、W23方向は「第5方向」の一例である。
【0042】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、-X方向及びW21方向のなす角度θ21は、+X方向及びW23方向のなす角度θ23と略同じであってもよい。
この場合、本実施形態によれば、角度θ21及び角度θ23が異なる角度である場合と比較して、液体吐出ヘッド1の製造が容易となる。
【0043】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、傾斜部TP2Aは、-X方向、または、-X方向及びW21方向の間のW22方向に延在する壁面HP22を有する、ことを特徴とする。この場合、壁面HP22は、壁面HP21及び壁面HRb2の間に設けられてもよい。また、この場合、壁面HP22及び壁面HRb2の間には、W21方向に延在する壁面HP23が設けられてもよい。
すなわち、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、傾斜部TP2Aにおいて壁面HP22が設けられるため、傾斜部TP2Aにおいて壁面HP22が設けられない態様と比較して、連通流路RR2から圧力室CB2へと向かうインクの流れ、及び、圧力室CB2から連通流路RR2へと向かうインクの流れを、円滑にすることができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、傾斜部TP2Aにおいて壁面HP22が設けられない態様と比較して、連通流路RR2及び圧力室CB2において気泡が滞留する可能性を低減することができる。
特に、傾斜部TP2Aは、ノズルNからインクを吐出するときには、インクが流れる方向を、+X方向から-Z方向に切り替える一方で、ノズルNからインクを吐出させずに循環流路RJにおいてインクを循環させるときには、インクが流れる方向を、+Z方向から-X方向に切り替えるための構成要素である。本実施形態では、傾斜部TP2Aにおいて、X軸方向に対する傾斜が比較的小さいW22方向に延在する壁面HP22を設けることで、ノズルNからインク吐出するときに、インクが流れる方向を、+X方向から-Z方向に円滑に切り替えることができる。また、本実施形態では、傾斜部TP2Aにおいて、X軸方向に対する傾斜が比較的大きいW21方向に延在する壁面HP23を設けることで、ノズルNからインクを吐出させずに循環流路RJにおいてインクを循環させるときに、インクが流れる方向を、+Z方向から-X方向に円滑に切り替えることができる。
なお、本実施形態において、壁面HP22は「第3構成面」の一例であり、W22方向は「第6方向」の一例である。
【0044】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、圧力室CB1の壁面は、-X方向に延在し、-Z方向においてノズルNから最も遠い壁面HC1を含み、連通流路RR1の壁面は、-Z方向に延在し、+X方向においてノズルNから最も遠い壁面HRa1と、-X方向において壁面HRa1とは反対側の壁面HRb1と、を含み、壁面HC1と壁面HRb1との間には、傾斜部TP1Aが設けられ、傾斜部TP1Aは、-Z方向及び+X方向の間のW11方向に延在する壁面HP11を有する、ことを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1において傾斜部TP1Aが設けられるため、圧力室CB1において傾斜部TP1Aが設けられない態様と比較して、連通流路RR1から圧力室CB1へと向かうインクの流れ、及び、圧力室CB1から連通流路RR1へと向かうインクの流れを、円滑にすることができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1において傾斜部TP1Aが設けられない態様と比較して、連通流路RR1及び圧力室CB1において気泡が滞留する可能性を低減することができる。これにより、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1において傾斜部TP1Aが設けられない態様と比較して、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。
なお、本実施形態において、壁面HC1は「第5壁面」の一例であり、壁面HRa1は「第6壁面」の一例であり、壁面HRb1は「第7壁面」の一例であり、傾斜部TP1Aは「第3傾斜部」の一例であり、壁面HP11は「第4構成面」の一例であり、W11方向は「第5方向」の他の例である。
【0045】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、傾斜部TP2Aと傾斜部TP1Aとは、略同じ形状を有してもよい。
本実施形態において、傾斜部TP2A及び傾斜部TP1Aが略同じ形状の場合、傾斜部TP2A及び傾斜部TP1Aが異なる形状の場合と比較して、液体吐出ヘッド1の製造が容易となる。
また、本実施形態において、傾斜部TP2A及び傾斜部TP1Aが略同じ形状の場合、圧力室CB1から連通流路RR1及びノズル流路RNを介してノズルNに至るインクの流路の形状と、圧力室CB2から連通流路RR2及びノズル流路RNを介してノズルNに至るインクの流路の形状とを、略同じにすることができる。よって、本実施形態において、傾斜部TP2A及び傾斜部TP1Aが略同じ形状の場合、傾斜部TP2A及び傾斜部TP1Aが異なる形状の場合と比較して、圧力室CB1に充填されているインクをノズルNから吐出させるための制御と、圧力室CB2に充填されているインクをノズルNから吐出させるための制御とを、簡素化することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、-Z方向に延在し、圧力室CB1及び供給流路RA1を連通する連通流路RK1を備え、連通流路RK1の壁面は、-Z方向に延在し、+X方向においてノズルNから最も遠い壁面HKb1を含み、壁面HKb1と壁面HC1との間には、傾斜部TP1Bが設けられ、傾斜部TP1Bは、W13方向に延在する壁面HP14を有する、ことを特徴とする。
すなわち、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1において傾斜部TP1Bが設けられるため、圧力室CB1において傾斜部TP1Bが設けられない態様と比較して、連通流路RK1から圧力室CB1へと向かうインクの流れ、及び、圧力室CB1から連通流路RK1へと向かうインクの流れを、円滑にすることができる。このため、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1において傾斜部TP1Bが設けられない態様と比較して、連通流路RK1及び圧力室CB1において気泡が滞留する可能性を低減することができる。これにより、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、圧力室CB1において傾斜部TP1Bが設けられない態様と比較して、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。
なお、本実施形態において、連通流路RK1は「第4連通流路」の一例であり、壁面HKb1は「第8壁面」の一例であり、傾斜部TP1Bは「第4傾斜部」の一例であり、壁面HP14は「第5構成面」の一例であり、W13方向は「第3方向」の他の例である。
【0047】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、圧力室CB1及び圧力室CB2が設けられた圧力室基板3と、ノズル流路RN、連通流路RR1、連通流路RR2、供給流路RA1、及び、排出流路RA2が設けられた連通板2と、ノズルNが設けられたノズル基板60と、を備える、ことを特徴とする。
このため、本実施形態によれば、圧力室CB1、圧力室CB2、ノズル流路RN、連通流路RR1、連通流路RR2、供給流路RA1、排出流路RA2、及び、ノズルNを、半導体製造技術を利用して製造することができる。これにより、本実施形態によれば、圧力室CB1、圧力室CB2、ノズル流路RN、連通流路RR1、連通流路RR2、供給流路RA1、排出流路RA2、及び、ノズルNを、微細化及び高密度化することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、傾斜部TP2Aは、圧力室基板3に設けられる、ことを特徴とする。
このため、本実施形態によれば、傾斜部TP2Aを半導体製造技術を利用して製造することができる。これにより、本実施形態によれば、傾斜部TP2Aを微細化及び高密度化することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、ノズルNは、ノズル流路RNの略中央において、ノズル流路RNに連通する、ことを特徴とする。
このため、本実施形態によれば、圧力室CB1から連通流路RR1及びノズル流路RNを介してノズルNに至るインクの流路の形状と、圧力室CB2から連通流路RR2及びノズル流路RNを介してノズルNに至るインクの流路の形状とを、略同じにすることができる。これにより、本実施形態によれば、例えば、ノズル流路RNの中央とは異なる位置においてノズルNがノズル流路RNと連通する態様と比較して、圧力室CB1に充填されているインクをノズルNから吐出させるための制御と、圧力室CB2に充填されているインクをノズルNから吐出させるための制御とを、簡素化することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、駆動信号Com1の供給に応じて、圧力室CB1内のインクに圧力を付与する圧電素子PZ1と、駆動信号Com2の供給に応じて、圧力室CB2内のインクに圧力を付与する圧電素子PZ2と、を備える、ことを特徴とする。
このため、本実施形態によれば、1個の圧力室CBq内のインクに圧力を付与する圧電素子PZqのみを備える態様と比較して、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることが可能となる。
なお、本実施形態において、圧電素子PZ1は「第1素子」の一例であり、圧電素子PZ2は「第2素子」の一例であり、駆動信号Com1は「第1駆動信号」の一例であり、駆動信号Com2は「第2駆動信号」の一例である。
【0051】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、駆動信号Com1の波形と、駆動信号Com2の波形とは、略同じである、ことを特徴とする。
このため、本実施形態によれば、駆動信号Com1の波形と駆動信号Com2の波形とが異なる態様と比較して、圧力室CB1に充填されているインクをノズルNから吐出させるための制御と、圧力室CB2に充填されているインクをノズルNから吐出させるための制御とを、簡素化することが可能となる。
【0052】
<<B.変形例>>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0053】
<変形例1>
上述した実施形態では、
図4に示すように、圧力室CBqの形状が、Z軸方向から見たときに矩形である態様を一例として示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。Z軸方向から見たときの圧力室CBqの形状は任意であってもよい。例えば、Z軸方向から見たときの圧力室CBqの形状として、平行四辺形または台形を採用してもよい。また、Z軸方向から見たときの循環流路RJの形状も、
図4に示す形状に限定されるものではない。Z軸方向から見たときの循環流路RJの形状は任意であってもよい。
【0054】
図9は、本変形例に係る循環流路RJAを、Z軸方向から見たときの平面図である。
図9に示すように、本変形例において、循環流路RJAは、圧力室CB1及び圧力室CB2の代わりに、圧力室CB1A及び圧力室CB2Aを備える点において、実施形態に係る循環流路RJと相違する。圧力室CB1Aは、連通流路RK1の-Z側におけるY軸方向の幅dY1Aが、連通流路RR1の-Z側におけるY軸方向の幅dY1Bよりも広くなるように設けられている。また、圧力室CB2Aは、連通流路RK2の-Z側におけるY軸方向の幅dY2Aが、連通流路RR2の-Z側におけるY軸方向の幅dY2Bよりも広くなるように設けられている。ここで、幅dY2Aは、幅dY1Aと略同じであってもよいし、幅dY2Bは、幅dY1Bと略同じであってもよい。
【0055】
本変形例によれば、連通流路RKqに近い位置における圧力室CBqのY軸方向の幅dYqAよりも、連通流路RRqに近い位置における圧力室CBqのY軸方向の幅dYqBの方が狭いため、連通流路RKqにおけるインクの流速よりも、連通流路RRqにおけるインクの流速を速くすることができる。このため、本変形例によれば、圧力室CBqから連通流路RRq及びノズル流路RNを経由してノズルNに至るまでの経路において、気泡が滞留する可能性を低減することができる。これにより、本変形例によれば、気泡に起因する吐出異常が発生する可能性を低減することができる。
【0056】
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例1では、液体吐出ヘッド1を搭載した無端ベルト922を、Y軸方向に往復動させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
【0057】
図10は、本変形例に係る液体吐出装置100Bの構成の一例を示す図である。液体吐出装置100Bは、制御装置90の代わりに制御装置90Bを備える点と、収納ケース921の代わりに収納ケース921Bを備える点と、無端ベルト922を備えない点とにおいて、実施形態に係る液体吐出装置100と相違する。制御装置90Bは、無端ベルト922を制御する信号を出力しない点において、制御装置90と相違する。収納ケース921Bは、Y軸方向を長手方向とする複数の液体吐出ヘッド1が、媒体PPの全幅に亘り分布するように設けられている。なお、収納ケース921Bには、液体吐出ヘッド1の代わりに、液体吐出ヘッド1Aまたは液体吐出ヘッド1Bが搭載されてもよい。
【0058】
<変形例3>
上述した実施形態並びに変形例1及び2では、圧力室CBの内部に圧力を付与するエネルギー変換素子として、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する圧電素子PZを例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。圧力室CBの内部に圧力を付与するエネルギー変換素子としては、例えば、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、加熱により圧力室CBの内部に気泡を発生させて、圧力室CBの内部の圧力を変動させる発熱素子を採用してもよい。発熱素子は、例えば、駆動信号Comの供給により発熱体が発熱する素子であってもよい。
【0059】
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例1乃至3で例示した液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0060】
1…液体吐出ヘッド、2…連通板、3…圧力室基板、4…振動板、5…貯留室形成基板、8…配線基板、60…ノズル基板、100…液体吐出装置、CB1…圧力室、CB2…圧力室、HC1…壁面、HC2…壁面、HKa1…壁面、HKa2…壁面、HKb1…壁面、HKb2…壁面、N…ノズル、PZ1…圧電素子、PZ2…圧電素子、RA1…供給流路、RA2…排出流路、RK1…連通流路、RK2…連通流路、RN…ノズル流路、RR1…連通流路、RR2…連通流路、TP1A…傾斜部、TP1B…傾斜部、TP2A…傾斜部、TP2B…傾斜部。