(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20240305BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60N2/20
A47C1/024
(21)【出願番号】P 2020015310
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-08-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岸田 圭史
(72)【発明者】
【氏名】清水 照之
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊佑
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0107546(US,A1)
【文献】特開2019-018747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/20
A47C 1/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、
前記シートクッションに対してシート前後方向に揺動可能な第1シートバックと、
前記第1シートバックとは分離して前記シートクッションに対してシート前後方向に揺動可能な第2シートバックと、
前記第1シートバックを支持する第1バックフレームと、
前記第2シートバックを支持する第2バックフレームと、
前記第1バックフレームを前記第2バックフレームに対し連結するように構成されたロック機構と、
前記第1バックフレームのシート前方への揺動を規制するように構成された規制機構と、
を備え、
前記ロック機構は、
前記第1バックフレームから突出するストライカと、
前記第2バックフレームに取り付けられると共に前記ストライカが係合するように構成された係合部と、
を有し、
前記規制機構は、
前記第1バックフレームに取り付けられると共に、前記第1バックフレームと共にシート前後方向に揺動するストッパと、
前記ストッパの揺動に伴って変形することで、前記ストッパをシート後方に向けて付勢するように構成された弾性体と、
前記第2バックフレームに取り付けられると共に、前記第2バックフレームと共にシート前後方向に揺動する移動部と、
を有し、
前記弾性体は、前記ロック機構によって前記第1バックフレームの揺動が規制された状態で前記ストッパと当接するように構成され、
前記移動部は、前記第2バックフレームがシート前方に揺動する際に、前記弾性体を
、前記第2バックフレームが前倒しされた状態における前記弾性体の変形状態である第1段階まで変形させるように構成され、
前記ストッパは、前記第1バックフレームがシート前方に揺動する際に、前記第1段階よりも前記ストッパへの付勢力が大きくなるように前記第1段階にある前記弾性体を変形させるように構成される、乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記弾性体は、中心軸が前記第1バックフレームの揺動中心軸と平行となるように配置されたスパイラルスプリングである、乗物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記移動部は、前記弾性体のスパイラル外側の端部をシート前方に押すように構成される、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックをシートクッションに対してシート前後方向に揺動可能にした乗物用シートが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗物用シートには、シートクッションに対して個別に揺動する第1シートバック及び第2シートバックが取り付けられた分割型シートがある。このような分割型シートでは、第1シートバックから突出するストライカを第2シートバックに係合して第1シートバックの揺動をロックする機構が採用される。
【0005】
上記分割型シートにおいて、第2シートバックのみをシート前方に倒すと、ストライカによるロックが解除された第1シートバックが自重によって前方に倒れ得る。その結果、予期しない第1シートバックの揺動によって、第1シートバックから突出したストライカが他のシートバックの着席者に干渉するおそれがある。
【0006】
本開示の一局面は、第1シートバックのロックを行う第2シートバックの前倒しによる第1シートバックの予期せぬ揺動を抑制できる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シートクッション(2)と、シートクッション(2)に対してシート前後方向に揺動可能な第1シートバック(3)と、第1シートバック(3)とは分離してシートクッション(2)に対してシート前後方向に揺動可能な第2シートバック(4)と、第1シートバック(3)を支持する第1バックフレーム(5)と、第2シートバック(4)を支持する第2バックフレーム(6)と、第1バックフレーム(5)を第2バックフレーム(6)に対し連結するように構成されたロック機構(8)と、第1バックフレーム(5)のシート前方への揺動を規制するように構成された規制機構(10)と、を備える乗物用シート(1)である。
【0008】
ロック機構(8)は、第1バックフレーム(5)から突出するストライカ(81)と、第2バックフレーム(6)に取り付けられると共にストライカ(81)が係合するように構成された係合部(82)と、を有する。規制機構(10)は、第1バックフレーム(5)に取り付けられると共に、第1バックフレーム(5)と共にシート前後方向に揺動するストッパ(101)と、ストッパ(101)の揺動に伴って変形することで、ストッパ(101)をシート後方に向けて付勢するように構成された弾性体(103)とを有する。
【0009】
このような構成によれば、ストッパ(101)を介して第1バックフレーム(5)が弾性体(103)からシート後方に向けて付勢されるため、第1シートバック(3)が自重で前方に倒れようとする際に、第1シートバック(3)のシート前方への揺動が弾性体(103)の付勢力によって抑制される。その結果、ロック機構(8)により第1シートバック(3)と連結されていた第2シートバック(4)の前倒しによる第1シートバック(3)の予期せぬ揺動を抑制できる。
【0010】
本開示の一態様では、規制機構(10)は、第2バックフレーム(6)に取り付けられると共に、第2バックフレーム(6)と共にシート前後方向に揺動する移動部(102)を有してもよい。弾性体(103)は、ロック機構(8)によって第1バックフレーム(5)の揺動が規制された状態でストッパ(101)と当接するように構成されてもよい。移動部(102)は、第2バックフレーム(6)がシート前方に揺動する際に、弾性体(103)を第1段階まで変形させるように構成されてもよい。ストッパ(101)は、第1バックフレーム(5)がシート前方に揺動する際に、第1段階よりもストッパ(101)への付勢力が大きくなるように第1段階にある弾性体(103)を変形させるように構成されてもよい。このような構成によれば、ロック機構(8)によって第1シートバック(3)の揺動が規制されている状態では、弾性体(103)がストッパ(101)に当接することで第1シートバック(3)の揺動をより的確に規制できる。また、第2シートバック(4)が前倒しされる際に、移動部(102)が弾性体(103)をシート前方に押すことで、第2シートバック(4)が前倒しされた状態で第1シートバック(3)をシート前方へリクライニングさせる際の弾性体(103)による抵抗を抑えることができる。
【0011】
本開示の一態様では、弾性体(103)は、中心軸が第1バックフレーム(5)の揺動中心軸と平行となるように配置されたスパイラルスプリングであってもよい。このような構成によれば、比較的簡潔な構成で、第1シートバック(3)と共にシート前方に揺動するストッパ(101)をシート後方へ向けて付勢することができる。
【0012】
本開示の一態様では、移動部(102)は、弾性体(103)のスパイラル外側の端部(103A)をシート前方に押すように構成されてもよい。このような構成によれば、第2シートバック(4)の前倒し時に、より的確に弾性体(103)をシート前方に押し込むことができる。
【0013】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態における乗物用シートを示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の乗物用シートのフレーム等を示す模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2における規制機構の状態を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、片側前倒し状態を説明する模式図である。
【
図7】
図7は、
図6における規制機構の状態を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、
図6の状態から第1バックフレームがシート前方に揺動した状態を説明する模式図である。
【
図9】
図9は、
図8における規制機構の状態を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、第1バックフレームが前倒しされた状態を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、第1シートバック3と、第2シートバック4とを備える。
【0016】
シートクッション2は、着席者の臀部等を支持するための部位である。第1シートバック3及び第2シートバック4は、それぞれ、着席者の背部を支持するための部位である。第1シートバック3及び第2シートバック4は、互いに分離してシートクッション2に対してシート前後方向に揺動可能である。
【0017】
本実施形態の乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0018】
乗物用シート1は、
図2に示される第1バックフレーム5と、第2バックフレーム6と、クッションフレーム7と、ロック機構8と、リクライニング機構9と、規制機構10とをさらに備える。
【0019】
<第1バックフレーム>
第1バックフレーム5は、第1シートバック3を支持する部材であり、第1シートバック3の内部に配置されている。第1バックフレーム5は、第1シートバック3と共に、シートクッション2に対して揺動する。
【0020】
第1バックフレーム5は、第1サイドフレーム51と、第2サイドフレーム52と、第1パイプ53と、第2パイプ54とを有する。
【0021】
第1サイドフレーム51と第2サイドフレーム52とは、シート幅方向に互いに離れて配置されている。第1サイドフレーム51は、第2サイドフレーム52よりも第2バックフレーム6の近く(本実施形態では左側)に配置されている。第1パイプ53及び第2パイプ54は、それぞれ、第1サイドフレーム51と第2サイドフレーム52とをシート幅方向に連結している。
【0022】
<第2バックフレーム>
第2バックフレーム6は、第2シートバック4を支持する部材であり、第2シートバック4の内部に配置されている。第2バックフレーム6は、第2シートバック4と共に、シートクッション2に対して揺動する。
【0023】
本実施形態では、第2バックフレーム6は、第1バックフレーム5の左側に配置されている。第2バックフレーム6は、フレーム本体61と、第1パネル62と、第2パネル63とを有する。
【0024】
フレーム本体61は、シート幅方向及び上下方向に延伸するパネル状の部材である。第1パネル62は、フレーム本体61の右上部に取り付けられている。第2パネル63は、フレーム本体61の下部に取り付けられている。
【0025】
<クッションフレーム>
クッションフレーム7は、シートクッション2を支持する部材である。クッションフレーム7は、第1連結部71と、第2連結部72と、第3連結部73とを有する。
【0026】
第1連結部71は、第1バックフレーム5の第2サイドフレーム52に、後述する第2リクライナ92を介して揺動可能に連結されている。第2連結部72は、第1バックフレーム5の第1サイドフレーム51と第2バックフレーム6の第2パネル63とに、後述する第1リクライナ91及び規制機構10を介して揺動可能に連結されている。第3連結部73は、第2バックフレーム6の第2パネル63に揺動可能に連結されている。
【0027】
第1バックフレーム5及び第2バックフレーム6のクッションフレーム7に対する揺動軸は、シート幅方向と平行である。つまり、第1バックフレーム5及び第2バックフレーム6は、クッションフレーム7に対してシート前後方向に揺動する。
【0028】
<ロック機構>
ロック機構8は、第1バックフレーム5を第2バックフレーム6に対し連結することで、第1バックフレーム5のシート前方への揺動を規制するように構成されている。
図3A,3Bに示すように、ロック機構8は、ストライカ81と、係合部82とを有する。
【0029】
ストライカ81は、第1バックフレーム5の第1サイドフレーム51からシート幅方向(具体的には左方向)に突出している。ストライカ81は、シート幅方向に延伸する第1棒81Aと第2棒81Bとが左端部で連結されたU字状の部材である。第2棒81Bは、第1棒81Aよりも後方に位置する。
【0030】
係合部82は、第2バックフレーム6の第1パネル62に取り付けられると共に、ストライカ81が係合するように構成されている。係合部82は、凹部82Aと、ロック片82Bと、ロックバネ82Cとを有する。
【0031】
凹部82Aは、ストライカ81がシート前方に向かって進入可能に構成されている。ロック片82Bは、ストライカ81の第1棒81Aの移動を凹部82A内で規制するロック位置と、第1棒81Aの凹部82Aからの脱離を許容する解除位置とに移動可能に構成されている。
【0032】
ロック位置では、ロック片82Bは、凹部82Aを閉じる。解除位置では、ロック片82Bはロック位置よりも下方に存在する。ロック片82Bは、第2バックフレーム6に対しシート前後方向には移動しない。
【0033】
ロック片82Bは、ロックバネ82Cによってロック位置に向けて(つまり上方に向かって)付勢されている。ロックバネ82Cの付勢によって、ロック片82Bに力が加わっていない状態では、ロック片82Bは、ロック位置に保持される。
【0034】
ロック片82Bのうち、ロック位置において第1棒81Aに後方から当接する前方当接面82Dは、第2バックフレーム6の揺動方向と直交する。そのため、ロック片82Bは、凹部82A内にある第1棒81Aによってシート後方に押されても移動しない。
【0035】
ロック片82Bの前方当接面82Dは、ロック位置において、第1棒81Aを凹部82Aの内面と共にシート前後方向に挟む。その結果、ロック片82Bがロック位置にあるとき、第1棒81Aのシート前後方向の移動が規制される。これにより、第2バックフレーム6が第1バックフレーム5に対し固定される。
【0036】
ロック片82Bは、レバー又はワイヤーを用いたロック解除の操作によって解除位置に移動する。ロック片82Bが解除位置にあるときに第2バックフレーム6をシート前方に揺動させることで、凹部82A内にある第1棒81Aが凹部82Aの外に移動する。
【0037】
第1棒81Aが凹部82Aの外に移動することで、ストライカ81の係合部82への係合が解除される。ロック片82Bの解除位置への操作入力が解除されると、ロック片82Bは、ロックバネ82Cによってロック位置へと復元する。
【0038】
第1バックフレーム5との連結が解除された第2バックフレーム6を第1バックフレーム5と同じ位置に向かってシート後方に揺動させると、ロック片82Bがストライカ81の第1棒81Aにシート前方から当接する。
【0039】
ロック片82Bは、シート後方上部に第2バックフレーム6の揺動方向と交差する後方当接面82Eを有する。ロック片82Bの後方当接面82Eが第1棒81Aにシート前方から当接すると、第1棒81Aから受ける反力によってロック片82Bは下方に移動し、解除位置に到達する。
【0040】
ロック片82Bが解除位置に到達した後、第1棒81Aが凹部82Aの内部に進入する。その後、ロック片82Bがロックバネ82Cによってロック位置に復元することで、再び第2バックフレーム6が第1バックフレーム5に対し固定される。
【0041】
<リクライニング機構>
図2に示すリクライニング機構9は、第1バックフレーム5及び第2バックフレーム6をクッションフレーム7に対しシート前後方向に揺動させるように構成されている。
【0042】
リクライニング機構9は、第1リクライナ91と、第2リクライナ92とを有する。第1リクライナ91は、第1バックフレーム5の第1サイドフレーム51の下端部に取り付けられている。第2リクライナ92は、第2サイドフレーム52の下端部に取り付けられている。
【0043】
第1リクライナ91及び第2リクライナ92は、協働して第1バックフレーム5のシート前後方向のリクライニングを行う。第1リクライナ91及び第2リクライナ92は、例えば、電動モータ、スパイラルスプリング等によって揺動力を発生させる。
【0044】
<規制機構>
規制機構10は、第1バックフレーム5のシート前方への揺動を規制するように構成されている。
【0045】
図4に示すように、規制機構10は、ストッパ101と、移動部102と、弾性体103と、弾性体支持部104とを有する。
【0046】
ストッパ101は、第1バックフレーム5の第1サイドフレーム51に取り付けられると共に、第1バックフレーム5と共にシート前後方向に揺動する板状のブラケットである。ストッパ101は、第1当接部101Aと、第1取付部101Bとを有する。
【0047】
第1当接部101Aは、第1バックフレーム5が前倒しされる際に、弾性体103の第1端部103Aをシート前方に押すように構成されている。第1当接部101Aは、第1サイドフレーム51よりも左側に配置されている。
【0048】
第1取付部101Bは、第1サイドフレーム51の左側面に、例えばボルトの締結によって取り付けられている。第1当接部101Aは、第1取付部101Bから左方向に突出し、弾性体103とシート前後方向又は上下方向に重なっている。
【0049】
移動部102は、第2バックフレーム6の第2パネル63に取り付けられると共に、第2バックフレーム6と共にシート前後方向に揺動する板状のブラケットである。移動部102は、第2当接部102Aと、第2取付部102Bとを有する。
【0050】
第2当接部102Aは、第2バックフレーム6が前倒しされる際に、弾性体103の第1端部103Aをシート前方に押すように構成されている。第2当接部102Aは、第2パネル63よりも右側に配置されている。
【0051】
第2取付部102Bは、第2パネル63の右側面に、例えば溶接によって取り付けられている。第2当接部102Aは、第2取付部102Bから左方向に突出し、弾性体103とシート前後方向又は上下方向に重なっている。
【0052】
また、第2当接部102Aは、ストッパ101の第1当接部101Aよりも弾性体103の中心軸(つまり、第1バックフレーム5の揺動中心軸L)に近い位置に配置されている。そのため、第2当接部102Aと第1当接部101Aとは、第2バックフレーム6の前倒し、又は第1バックフレーム5の前倒し時に互いに干渉しない。
【0053】
弾性体103は、ストッパ101及び移動部102の揺動に伴って変形することで、ストッパ101をシート後方に向けて付勢するように構成されている。本実施形態では、弾性体103は、第1端部103Aと第2端部103Bとを有するスパイラルスプリングである。
【0054】
弾性体103を構成するスパイラルスプリングの中心軸は、第1バックフレーム5の揺動中心軸Lと平行となるように配置されている。具体的には、弾性体103の中心軸は、第1バックフレーム5の揺動中心軸Lと一致している。
【0055】
弾性体103のスパイラル内側に配置された第2端部103Bは、弾性体支持部104を介して第1バックフレーム5に固定されている。また、弾性体103は、左方向から視て反時計回りに弾性体支持部104に巻回されている。
【0056】
弾性体103のスパイラル外側に配置された第1端部103Aは、弾性体103の径方向外側に向かって突出している。第1端部103Aには、ストッパ101の第1当接部101Aと、移動部102の第2当接部102Aとがシート後方から当接する。
【0057】
弾性体103は、第1端部103Aがシート前方に押されることで、周方向に引張力が発生するように配置されている。そのため、第1端部103Aがシート前方に押されるに連れて、ストッパ101の第1当接部101Aに対する付勢力が徐々に増加する。
【0058】
弾性体支持部104は、第1リクライナ91の軸部91Aを径方向外側から覆うように配置された四角筒状の部材である。弾性体支持部104は、クッションフレーム7の第2連結部72に固定されており、第1バックフレーム5の揺動に伴って回転しない。弾性体支持部104の外周面には、弾性体103の第2端部103Bが固定されている。
【0059】
軸部91Aは、弾性体103の中心部、移動部102、及び第2バックフレーム6の第2パネル63を貫通している。弾性体支持部104は、シート幅方向において第1バックフレーム5と第2バックフレーム6との間に配置されている。
【0060】
<規制機構の作用>
規制機構10は、以下のように作用する。まず、第1バックフレーム5及び第2バックフレーム6のいずれもが前倒しされていない通常状態では、
図5に示すように、ストッパ101の第1当接部101Aは、シート後方から弾性体103の第1端部103Aに当接している。また、通常状態では、移動部102の第2当接部102Aは、第1端部103Aから離れた位置にある。
【0061】
通常状態では、ロック機構8によって第2バックフレーム6が第1バックフレーム5に固定されている。つまり、弾性体103は、ロック機構8によって第1バックフレーム5の揺動が規制された状態でストッパ101と当接するように構成されている。
【0062】
移動部102は、第2バックフレーム6のリクライニングによってシート前後方向に揺動するが、通常のリクライニングの範囲では、弾性体103の第1端部103Aには当接しない。
【0063】
次に、
図6に示すようにロック機構8のロックが解除され、通常のリクライニングの範囲を超えて第2バックフレーム6が前倒しされた片側前倒し状態では、
図7に示すように移動部102の第2当接部102Aが弾性体103の第1端部103Aを通常状態の位置よりもシート前方に押し込む。
【0064】
つまり、移動部102は、第2バックフレーム6が前倒しによってシート前方に揺動する際に、弾性体103の第1端部103Aをシート前方に押すことで第1段階まで変形させる。第2バックフレーム6は、前倒し位置に到達した時点で、図示しないロック装置等によって位置が固定される。
【0065】
なお、「バックフレームの前倒し」とは、通常のリクライニングの範囲を超えて、バックシートがシートクッションの上方に重なるように揺動し、シートが折り畳まれることを意味する。
【0066】
片側前倒し状態では、ストッパ101は弾性体103と離れているため、第1シートバック3をシート前方へリクライニングさせる際に、第1バックフレーム5が弾性体103の付勢力によって抵抗を受けない。
【0067】
一方、片側前倒し状態では、ロック機構8のロックが解除されているため、第1バックフレーム5が自重によって意図せずに前倒し状態に移行し得る。
図8に示すように第1バックフレーム5がリクライニングの範囲を超えてシート前方に揺動すると、
図9に示すようにストッパ101の第1当接部101Aが第1段階にある弾性体103の第1端部103Aにシート後方から当接する。
【0068】
第1段階における弾性体103がストッパ101をシート後方に押す付勢力が第1バックフレーム5の自重よりも小さい場合、第1バックフレーム5がシート前方へ揺動するが、ストッパ101による第1端部103Aのシート前方への押圧に伴って弾性体103の付勢力は徐々に大きくなる。そのため、第1バックフレーム5のシート前方への揺動は、第1バックフレーム5の自重と弾性体103の付勢力とが釣り合った位置で停止する。
【0069】
第1バックフレーム5に弾性体103の付勢力よりも大きいシート前方への力を加えることで、弾性体103を変形させながら、第1バックフレーム5を
図10に示す前倒し位置に移動させることができる。
【0070】
つまり、
図11に示すように、ストッパ101は、第1バックフレーム5がシート前方に揺動する際に、第1段階よりもストッパ101への付勢力が大きくなるように第1段階にある弾性体103を変形させるように構成されている。
【0071】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ストッパ101を介して第1バックフレーム5が弾性体103からシート後方に向けて付勢されるため、第1シートバック3が自重で前方に倒れようとする際に、第1シートバック3のシート前方への揺動が弾性体103の付勢力によって抑制される。その結果、ロック機構8により第1シートバック3と連結されていた第2シートバック4の前倒しによる第1シートバック3の予期せぬ揺動を抑制できる。
【0072】
(1b)ロック機構8によって第1シートバック3の揺動が規制されている状態では、弾性体103がストッパ101に当接することで第1シートバック3の揺動をより的確に規制できる。また、第2シートバック4が前倒しされる際に、移動部102が弾性体103をシート前方に押すことで、第2シートバック4が前倒しされた状態で第1シートバック3をシート前方へリクライニングさせる際の弾性体103による抵抗を抑えることができる。
【0073】
(1c)弾性体103としてスパイラルスプリングを用いることで、比較的簡潔な構成で、第1シートバック3と共にシート前方に揺動するストッパ101をシート後方へ向けて付勢することができる。
【0074】
(1d)移動部102が弾性体103の第1端部103Aをシート前方に押すことで、第2シートバック4の前倒し時に、より的確に弾性体103をシート前方に押し込むことができる。
【0075】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0076】
(2a)上記実施形態の乗物用シート1において、ストッパ101及び移動部102は、必ずしも弾性体103の第1端部103Aを押さなくてもよい。ストッパ101及び移動部102は、弾性体103の第1端部103A以外の部位を押すことで弾性体103を変形させてもよい。
【0077】
さらに、ストッパ101及び移動部102は、必ずしも弾性体103をシート前方に押さなくてもよい。例えば、ストッパ101及び移動部102は、弾性体103の一部をシート後方に引張することで弾性体103を変形させてもよい。
【0078】
(2b)上記実施形態の乗物用シート1において、弾性体103は、スパイラルスプリングに限定されない。例えば、弾性体103は、トーションスプリング(つまり、ねじりコイルバネ)であってもよい。
【0079】
(2c)上記実施形態の乗物用シート1において、弾性体103は、必ずしも第1バックフレーム5に固定されなくてもよい。弾性体103は、第2バックフレーム6に固定されてもよい。
【0080】
(2d)上記実施形態の乗物用シート1において、規制機構10は、必ずしも移動部102を有しなくてもよい。つまり、規制機構10は、ストッパ101のみが弾性体103を変形させるように構成されてもよい。また、弾性体103は、ロック機構8によって第1バックフレーム5の揺動が規制された状態でストッパ101と離れていてもよい。
【0081】
(2e)上記実施形態の乗物用シート1は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【0082】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0083】
1…乗物用シート、2…シートクッション、3…第1シートバック、
4…第2シートバック、5…第1バックフレーム、6…第2バックフレーム、
7…クッションフレーム、8…ロック機構、9…リクライニング機構、
10…規制機構、51…第1サイドフレーム、52…第2サイドフレーム、
61…フレーム本体、62…第1パネル、63…第2パネル、
71,72,73…連結部、81…ストライカ、81A,81B…棒、82…係合部、
82A…凹部、82B…ロック片、82C…ロックバネ、91,92…リクライナ、
91A…軸部、101…ストッパ、101A…第1当接部、101B…第1取付部、
102…移動部、102A…第2当接部、102B…第2取付部、103…弾性体、
103A…第1端部、103B…第2端部、104…弾性体支持部。