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特許7447520楽器用表示装置および楽器用表示装置の表示切替方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】楽器用表示装置および楽器用表示装置の表示切替方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20240305BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G10H1/32 Z
G10H1/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020019141
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124644
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】松野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】半田 崇
(72)【発明者】
【氏名】奥山 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】原田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】長山 昌弘
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181651(JP,A)
【文献】特開2010-164783(JP,A)
【文献】特開2005-331892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器の外観を構成する外装部材に隣接して配置されるタッチパネルと、
前記タッチパネルの外観を、第1の態様と、前記第1の態様よりも前記外装部材の外観に近い第2の態様との間で切り替える切替部とを備え
前記タッチパネルは、
発光部と、
前記発光部の上部に配置されるフィルムと、
を有し、
前記フィルムは前記外装部材の外観と近似した色または模様を有し、前記発光部による発光が停止されることにより、前記タッチパネルの外観が前記第2の態様に切り替わる、楽器用表示装置。
【請求項2】
前記切替部は、第1の条件が成立したとき、前記タッチパネルを前記第2の態様から前記第1の態様に切り替え、前記第1の条件は、前記タッチパネルに対する操作の検出を含む、請求項1に記載の楽器用表示装置。
【請求項3】
前記第1の条件は、前記楽器における所定機能の実行を含む、請求項2に記載の楽器用表示装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記第1の条件が成立しない状態が所定時間継続したとき、前記タッチパネルの外観を前記第1の態様から前記第2の態様に切り替える、請求項2または請求項3に記載の楽器用表示装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記楽器において演奏音が出力される間、前記タッチパネルの外観を前記第1の態様から前記第2の態様に切り替える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の楽器用表示装置。
【請求項6】
前記切替部は、前記タッチパネルが備える偏光板を含み、前記タッチパネルの外観は、観察者の位置により前記第1の態様と前記第2の態様が切り替わる、請求項1に記載の楽器用表示装置。
【請求項7】
前記第1の態様において、前記タッチパネルは、情報提示対象者に対して情報を視認可能に表示する、請求項1~6のいずれか一項に記載の楽器用表示装置。
【請求項8】
楽器の外観を構成する外装部材に隣接してタッチパネルを配置し、
前記タッチパネルの外観を、第1の態様と、前記第1の態様よりも前記外装部材の外観に近い第2の態様との間で切り替え、
前記タッチパネルは、発光部と、前記発光部の上部に配置されるフィルムとを有し、前記フィルムは前記外装部材の外観と近似した色または模様を有し、
前記切り替えることは、前記発光部の発光を停止させることにより、前記タッチパネルの外観を前記第2の態様に切り替える、楽器用表示装置の表示切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器の設定情報などを表示する楽器用表示装置および楽器用表示装置の表示切替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子オルガンなどの電子楽器は、操作ボタンなどが配列された操作パネルを有している。操作パネルは、例えば、操作ボタンやスイッチを備えており、電子楽器に対する各種の操作を受け付けることができる。演奏者は、操作パネルを操作することにより、電子楽器が備える様々な機能を利用することができる。
【0003】
また、電子機器などの操作パネルには、タッチパネル式のものがあり、タッチパネルに操作ボタンや現在の設定内容が表示される。下記特許文献1は、携帯型音楽プレーヤが備える操作入力装置を開示している。この携帯型音楽プレーヤは、タッチパネル操作部を備えることにより、携帯型音楽プレーヤに対する操作を受け付け可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-146701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、電子オルガンなどの電子楽器は、操作パネルを有することにより、演奏者からの操作を受け付けて各種の機能を実行することができる。例えば、電子オルガンは、アコースティックピアノには存在しなかった様々な機能を有している。一方で、アコースティックピアノなどの楽器の伝統的なデザインまたは佇まいに惹かれる演奏者も多い。電子楽器の持つ優れた機能と、旧来からの楽器の持つ美しさとを両立することができれば、演奏者が豊かな気持ちで電子楽器の持つ機能を楽しむことができると期待される。
【0006】
本発明の目的は、電子楽器の持つ機能と旧来からの楽器の持つ美しさとを両立することができる楽器用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う楽器用表示装置は、楽器の外観を構成する外装部材に隣接して配置されるタッチパネルと、タッチパネルの外観を、第1の態様と、第1の態様よりも外装部材の外観に近い第2の態様との間で切り替える切替部とを備える。
【0008】
切替部は、第1の条件が成立したとき、タッチパネルを第2の態様から第1の態様に切り替え、第1の条件は、タッチパネルに対する操作の検出を含んでもよい。
【0009】
第1の条件は、楽器における所定機能の実行を含んでもよい。
【0010】
切替部は、第1の条件が成立しない状態が所定時間継続したとき、タッチパネルの外観を第1の態様から第2の態様に切り替えてもよい。
【0011】
切替部は、楽器において演奏音が出力される間、タッチパネルの外観を第1の態様から第2の態様に切り替えてもよい。
【0012】
切替部は、第1の態様および第2の態様とで、タッチパネルの発光態様を変更してもよい。
【0013】
切替部は、タッチパネルが備える偏光板を含み、タッチパネルの外観は、観察者の位置により第1の態様と第2の態様が切り替わってもよい。
【0014】
第1の態様において、タッチパネルは、情報提示対象者に対して情報を視認可能に表示してもよい。
【0015】
本発明の他の局面に従う表示切替方法は、楽器の外観を構成する外装部材に隣接してタッチパネルを配置し、タッチパネルの外観を、第1の態様と、第1の態様よりも外装部材の外観に近い第2の態様との間で切り替える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子楽器の持つ機能と旧来からの楽器の持つ美しさとを両立することができる楽器用表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る電子楽器の外観図である。
図2】実施の形態に係る電子楽器の外観図である。
図3】タッチパネルの側面断面図である。
図4】実施の形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施の形態に係る表示切替方法を示すフローチャートである。
図6】第1の実施の形態に係る表示切替方法を示すフローチャートである。
図7】第1の実施の形態に係る表示切替方法を示すフローチャートである。
図8】第1の実施の形態に係る表示切替方法を示すフローチャートである。
図9】第2の実施の形態に係る楽器用表示装置の表示状態を示す図である。
図10】第3の実施の形態に係る電子楽器の外観図である。
図11】第4の実施の形態に係る電子楽器の外観図である。
図12】第3および第4の実施の形態に係るカバー開閉方法を示すフローチャートである。
図13】第3および第4の実施の形態に係るカバー開閉方法を示すフローチャートである。
図14】第3および第4の実施の形態に係るカバー開閉方法を示すフローチャートである。
図15】第3および第4の実施の形態に係るカバー開閉方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1]第1の実施の形態
(1)電子楽器の構成
以下、本発明の第1の実施の形態に係る楽器用表示装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る電子楽器1の外観図である。電子楽器1は、本実施の形態においては電子オルガンである。電子楽器1は、鍵盤10およびタッチパネル20を備える。鍵盤10およびタッチパネル20の周囲において、外装部材5によって電子楽器1の外観が構成されている。外装部材5は、例えば、ダークブラウンや黒などの落ち着いた色合いの部材である。あるいは、外装部材5として、白などの明るい色合いの部材が用いられることもある。また、例えば、外装部材5は、木目調の外観を有する部材である。タッチパネル20は、外装部材5に隣接して配置されている。
【0019】
タッチパネル20は、電子楽器1に対する各種の設定操作を行うための操作ボタンを表示する。タッチパネル20は、また、電子楽器1で動作中の機能やモードなどの情報を表示する。タッチパネル20は、鍵盤10の側部に位置している。つまり、タッチパネル20は、アコースティックピアノであれば、拍子木に対応する場所に配置されている。図1においては、タッチパネル20は各種の情報を表示しており、演奏者または電子楽器1の近くにいる人は、電子楽器1に対する操作を入力することや、電子楽器1の動作状態などを確認することができる。タッチパネル20が点灯し、タッチパネル20が各種の情報を表示している図1の状態を第1の態様とする。
【0020】
図2は、タッチパネル20が情報を表示していない状態の外観図である。タッチパネル20は、バックライトの発光が停止し、タッチパネル20の外観は、外装部材5と近似した外観に遷移している。つまり、タッチパネル20において、情報が非表示となり、外観は、アコースティックピアノの拍子木と同様の外観となっている。タッチパネル20が消灯し、タッチパネル20が情報を表示していない図2の状態を第2の態様とする。タッチパネル20の外観は、第2の態様においては、第1の態様と比べて外装部材5の外観に近似した外観となっている。
【0021】
タッチパネル20の第2の態様における外観が、第1の態様と比べて外装部材5の外観に近似しているとは、次の例が挙げられる。一つの例としては、図1および図2に示したように、第1の態様においては情報が表示され、第2の態様においては情報が表示されないことである。あるいは、第2の態様においては第1の態様に比べて情報の表示範囲を狭くするようにしてもよい。他の例としては、第1の態様におけるタッチパネル20の色の外装部材5の色への溶け込む具合よりも、第2の態様におけるタッチパネル20の色の外装部材5の色への溶け込み具合の方が高いことである。言い換えると、第1の態様におけるタッチパネル20の色と外装部材5の色との相関度よりも、第2の態様におけるタッチパネル20の色と外装部材5の色との相関度の方が高いことである。また、別の他の例としては、第1の態様におけるタッチパネル20の模様の外装部材5の模様への溶け込み具合よりも、第2の態様におけるタッチパネル20の模様の外装部材5の模様への溶け込み具合の方が高いことである。言い換えると、第1の態様におけるタッチパネル20の模様と外装部材5の模様との相関度よりも、第2の態様におけるタッチパネル20の模様と外装部材5の模様との相関度の方が高いことである。例えば、外装部材5が木目調であるときに、第2の態様においてタッチパネル20を木目調で表示することが考えられる。
【0022】
(2)タッチパネルの構成
図3は、タッチパネル20の側面断面図である。本実施の形態においては、タッチパネル20が、抵抗膜方式である場合を例に説明するが、タッチパネル20は、静電容量方式であってもよい。図3に示すように、タッチパネル20は、LCD・ガラス積層体21の上方にフィルム22が配置されている。フィルム22は、例えば黒色フィルムであり、文字、記号などをくり抜いた開放部22Aが形成されている。LCD・ガラス積層体21の下部には、複数のリブ23が設けられ、リブ23によって区切られた空間にバックライト用のLED24が配置されている。
【0023】
タッチパネル20は、このような構成を有することにより、LED24を点灯させることによって、開放部22Aによって形成された文字、記号などを情報として提示可能である。また、開放部22Aによって形成される文字、記号などは、リブ23によって仕切られている。したがって、一部のLED24を点灯させたとき、隣接する開放部22Aによって形成された文字、記号などにLED24の光が漏れないため、点灯させたLED24に対応する文字、記号だけを鮮明に表示させることができる。
【0024】
フィルム22は、上述したように黒色フィルムである。他にもフィルム22は、ダークブラウン色であってもよいし、木目調であってもよい。あるいは、フィルム22は、白などの明るい色であってもよい。フィルム22は、外装部材5に近似した色を有していることが好ましい。あるいは、フィルム22は、外装部材5に近似した模様を有していることが好ましい。LED24が消えることによりタッチパネル20が消灯したとき、フィルム22の外観は、タッチパネル20の外観となる。
【0025】
(3)電子楽器の機能構成
次に、電子楽器1の機能構成について説明する。図4は、電子楽器1の機能構成を示すブロック図である。電子楽器1は、図4に示すように、鍵盤10、タッチパネル20、演奏入力部101、音源104、サウンドシステム105、CPU(中央演算処理装置)106、RAM(ランダムアクセスメモリ)107、ROM(リードオンリメモリ)108およびタイマー109を備える。タッチパネル20は、操作入力部102および表示部103を備える。
【0026】
演奏入力部101は、鍵盤10から演奏操作情報を入力する。演奏入力部101は、演奏操作情報に基づいて演奏内容を表す演奏データを出力する。演奏データは、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データまたはオーディオデータからなる。操作入力部102は、例えば、演奏音の調整、自動伴奏音の選択および音量の調整、デモ演奏音の再生、電源のオンオフおよび各種設定の操作を入力する。表示部103は、例えば、演奏または設定等に関する各種情報を表示する。操作入力部102および表示部103により、タッチパネル20が構成されている。演奏入力部101、操作入力部102および表示部103は、バス120に接続される。
【0027】
RAM107は、例えば揮発性メモリからなり、CPU106がプログラムを実行するときの作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。ROM108は、例えば不揮発性メモリからなり、切替プログラムP1等のコンピュータプログラムおよび各種データを記憶する。ROM108としては、例えばEEPROMなどのフラッシュメモリが用いられる。CPU106は、RAM107を作業領域として利用しつつ、ROM108に記憶された切替プログラムP1を実行することにより、後述する表示切替方法を実行する。CPU106、RAM107およびROM108はバス120に接続される。CPU106、RAM107およびROM108が切替部110を構成する。タッチパネル20および切替部110が楽器用表示装置100を構成する。
【0028】
音源104はバス120に接続され、サウンドシステム105は音源104に接続される。音源104は、演奏入力部101から入力される演奏データに基づいて楽音信号を生成する。サウンドシステム105は、デジタルアナログ(D/A)変換回路、増幅器およびスピーカを含む。このサウンドシステム105は、音源104から与えられる楽音信号をアナログ音信号に変換し、アナログ音信号に基づく音を発生する。それにより、楽音信号が再生される。タイマー109はバス120に接続され、切替部110の指示により、時間の計測を行う。
【0029】
(4)表示切替方法
図5図8は、第1の実施の形態に係る表示切替方法を示すフローチャートである。図5図8の表示切替方法は、図4に示した切替部110により実行される。まず、図5を参照する。ステップS101において、切替部110は、操作入力部102において電源ONの操作が検出されたか否かを判定する。電源ONの操作が検出された場合、切替部110は、タッチパネル20を点灯させる(ステップS102)。そして、切替部110は、タイマー109を起動させる(ステップS103)。これにより、タイマー109は、タッチパネル20の点灯状態を維持するための時間の計測を開始する。
【0030】
ステップS101において電源ONの操作が検出されない場合、ステップS104において、切替部110は、操作入力部102において電源OFFの操作が検出されたか否かを判定する。電源OFFの操作が検出された場合、切替部110は、タッチパネル20を消灯させる(ステップS105)。そして、切替部110は、タイマー109を停止させる(ステップS106)。さらに、切替部110は、実行中の動作を停止させる(ステップS107)。例えば、デモ演奏の再生や自動伴奏音の再生が停止される。
【0031】
ステップS104において電源OFFの操作が検出されない場合、切替部110は、タイマー109が起動中であり、タイマー109の計測時間が所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS108)。所定時間が経過している場合、切替部110は、タッチパネル20を消灯する(ステップS109)。そして、切替部110は、タイマー109を停止させる(ステップS110)。ステップS108において、タイマー109が起動していないか、または、タイマー109が起動しているが所定時間を経過していない場合、処理は、図6のステップS201に遷移する。また、ステップS103、S107またはS110の後、処理は、ステップS101に戻る。
【0032】
次に、図6を参照する。ステップS201において、切替部110は、所定機能の実行開始を検出したか否かを判定する。所定機能とは、常時タッチパネル20を点灯させた状態で実行する機能である。例えば、所定機能として、デモ演奏の再生、録音などが設定される。所定機能の実行開始が検出された場合、切替部110は、タイマー109を停止させる(ステップS202)。そして、切替部110は、タッチパネル20を点灯させる(ステップS203)。さらに、切替部110は、所定機能が実行されていることを示す実行フラグをONに設定する(ステップS204)。
【0033】
ステップS201において、所定機能の実行開始が検出されない場合、切替部110は、所定機能の実行終了が検出されたか否かを判定する(ステップS205)。所定機能の実行終了が検出された場合、切替部110は、タイマー109を起動する(ステップS206)。つまり、所定機能の実行が終了したため、所定機能の実行終了から所定時間経過後にタッチパネル20を消灯するためにタイマー109が起動される。さらに、切替部110は、所定機能が実行されていることを示す実行フラグをOFFに設定する(ステップS207)。ステップS205において、所定機能の実行終了が検出されない場合、処理は、図7のステップS301に遷移する。また、ステップS204またはS207の後、処理は、ステップS101に戻る。
【0034】
次に、図7を参照する。ステップS301において、切替部110は、タッチパネル20に対するパネル操作が検出されたか否かを判定する。つまり、切替部110は、操作入力部102に対する操作入力が検出されたか否かを判定する。パネル操作が検出された場合、切替部110は、所定機能の実行フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS302)。実行フラグがOFFである場合、切替部110は、タッチパネル20が消灯されているか否かを判定する(ステップS303)。タッチパネル20が消灯されている場合、切替部110は、タッチパネル20を点灯させる(ステップS304)。つまり、実行フラグがOFFの状態でパネル操作がされた場合であって、タッチパネル20が消灯していれば、タッチパネル20が点灯される。そして、切替部110は、タイマー109を起動させる(ステップS305)。これにより、タッチパネル20を点灯させた時点からの所定時間の計測が開始される。ステップS303において、タッチパネル20が点灯されていると判定された場合、切替部110は、タイマー109をリセットする(ステップS306)。つまり、タッチパネル20は点灯しているが、新たにパネル操作が行われたため、所定時間の計測がリセットされる(0から計測が開始される)。
【0035】
ステップS305およびS306において所定時間の計測が開始された後、切替部110による処理は、図8のステップS401に遷移する。また、ステップS301において、パネル操作が検出されない場合、図8のステップS401に遷移する。また、切替部110によるステップS305およびS306の後、CPU106は、ステップSA1~SA3の処理を実行する。まず、CPU106は、タッチパネル20に対する操作位置を検出する(ステップSA1)。続いて、CPU106は、操作位置に応じた機能あるいは設定を特定する(ステップSA2)。そして、CPU106は、特定した機能を実行可能である場合は、特定した機能を実行し、あるいは、特定した設定が設定可能であれば、特定した設定を行う(ステップSA3)。
【0036】
次に、図8を参照する。ステップS401において、切替部110は、演奏音の出力中であるか否かを判定する。切替部110は、演奏入力部101が、演奏操作情報を入力しているか否かに基づいて演奏音の出力状態を判定する。演奏音の出力中である場合、切替部110は、所定の機能の実行フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS402)。実行フラグがOFFの場合、切替部110は、タッチパネル20が点灯されているか否かを判定する(ステップS403)。タッチパネル20が点灯されている場合、切替部110は、タッチパネル20を消灯する(ステップS404)。つまり、実行フラグがOFFの状態で演奏音の出力が行われた場合には、タッチパネル20は消灯される。そして、切替部110は、タイマー109を停止させる(ステップS405)。ステップS405の後、処理は、図5のステップS101に戻る。ステップS401において演奏音が出力中でない場合、ステップS402において実行フラグがONである場合、または、ステップS403において、タッチパネル20が消灯されていると判定された場合、処理は、図5のステップS101に戻る。
【0037】
(5)第1の実施の形態の効果
以上説明したように、本実施の形態に係る楽器用表示装置100は、電子楽器1の外観を構成する外装部材5に隣接して配置されるタッチパネル20を備える。そして、楽器用表示装置100が備える切替部110は、タッチパネル20の外観を、第1の態様と、第1の態様よりも外装部材5の外観に近い第2の態様との間で切り替える。これにより、第2の態様においては、タッチパネル20は、電子楽器1の外装部材5と一体となった美しい外観となる。演奏者は、アコースティックピアノを演奏しているときと同様の感覚で電子楽器1を操作することができる。
【0038】
また、切替部110は、図7のステップS301~S306に示したように、タッチパネル20に対する操作を検出したとき、タッチパネル20の外観を第2の態様から第1の態様に切り替える。演奏者がタッチパネル20の操作を行うときには、タッチパネル20が点灯するので、演奏者はタッチパネル20の操作を行い易い。
【0039】
また、図6のステップS201~S207に示したように、電子楽器1における特定の機能の実行中には、タッチパネル20の外観が第2の態様から第1の態様に切り替えられる。タッチパネル20において情報を表示することが必要な特定の機能の実行中には、タッチパネル20が点灯される。演奏者は、特定の機能の実行状態をタッチパネル20において確認することができる。
【0040】
また、切替部110は、図5のステップS108~S110に示したように、タッチパネル20の操作を検出しない状態が所定時間継続したとき、または、特定の機能の実行が終了してから所定時間が経過したとき、タッチパネル20の外観を第1の態様から第2の態様に切り替える。演奏者がタッチパネル20の操作を必要としていないとき、または、特定の機能を実行していないときにはタッチパネル20の外観が電子楽器1の外装部材5に近い外観となる。演奏者は、アコースティックピアノを演奏しているときと同様の感覚で、美しい外観を有する電子楽器1を操作することができる。
【0041】
また、切替部110は、図8のステップS401~S405に示すように、電子楽器1において演奏音が出力される間、タッチパネル20の外観を第1の態様から第2の態様に切り替える。演奏中においては、タッチパネル20の外観が外装部材5の外観と近い状態となるので、演奏者は、アコースティックピアノを演奏しているときと同様の感覚で、演奏を楽しむことができる。
【0042】
また、切替部110は、第1の態様においてはタッチパネル20を点灯し、第2の態様では、タッチパネル20を消灯する。このように、タッチパネル20の発光態様を変更することで、タッチパネル20の外観を外装部材5と近い状態に遷移させることができる。
【0043】
また、電子楽器1のタッチパネル20は、第1の態様において、情報提示対象者に対して情報を視認可能に表示する。ここで情報提示対象者とは、電子楽器1を演奏する演奏者あるいは電子楽器1の演奏音を視聴する見物人である。このようにタッチパネル20は、第1の態様においては情報提示対象者に対する情報の提示を行い、第2の態様においては、外装部材5に近い外観を有するように切り替えられる。
【0044】
[2]第2の実施の形態
(1)偏光板による表示切替
次に、本発明の第2の実施の形態に係る楽器用表示装置100について説明する。第2の実施の形態に係る楽器用表示装置100は、タッチパネル20が偏光板を備える。それ以外の楽器用表示装置100の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0045】
図9は、第2の実施の形態に係るタッチパネル20の外観の状態を示す図である。第2の実施の形態に係るタッチパネル20は偏光板を備えることにより、タッチパネル20を見る観察者の位置によってその外観の状態が変化する。図9において、「黒」と表示されているのは、観察者にとってタッチパネル20が外装部材5の外観と近い状態、つまり第2の態様になっていることを示す。図9において、「文字」と表示されているのは、観察者にとってタッチパネル20が情報を視認可能に表示している状態、つまり第1の態様になっていることを示す。
【0046】
図9の例では、演奏者が左寄りに座っている場合、および、見物人がタッチパネル20の付近に立った場合は、タッチパネル20の外観の状態は、第1の実施の形態と同様である。つまり、電源OFFのとき、電源ONから所定時間経過後、演奏中、および、パネル操作から所定時間経過後において、タッチパネル20の外観が、観察者にとって第2の態様となっている。また、電源ON検出時、パネル操作検出時、および、パネル操作から所定時間以内は、タッチパネル20の外観が、観察者にとって第1の態様となっている。
【0047】
これに対して、演奏者が中央付近または右寄りに座っている場合、および、見物人が電子楽器1の中央付近または右側付近に立っているときには、偏光板の作用により、タッチパネル20の外観は、観察者にとって第2の態様となる。観察者は、アコースティックピアノを観察しているときと同様の感覚で、電子楽器1を演奏することや、電子楽器1の演奏を視聴することができる。
【0048】
(2)第2の実施の形態の効果
以上説明したように、第2の実施の形態の楽器用表示装置100は、タッチパネル20が偏光板を備えることにより、観察者の位置によってタッチパネル20を常に第2の態様とすることができる。図9で示した例では、演奏者が中央付近または右寄りに座って演奏している間は、楽器用表示装置100は、タッチパネル20を常に第2の態様とすることができる。また、図9で示した例では、見物人が電子楽器1の中央付近または右側付近に立っている間は、楽器用表示装置100は、タッチパネル20を常に第2の態様とすることができる。
【0049】
[3]第3および第4の実施の形態
(1)電子楽器の構成
図10は、第3の実施の形態の電子楽器1Aの外観図である。図11は、第4の実施の形態の電子楽器1Bの外観図である。図10(A)に示すように、電子楽器1Aにおいては、タッチパネル20にカバー30Aが取り付けられている。図10(A)では、タッチパネル20は、カバー30Aによって隠されている。カバー30Aの外観は、外装部材5の外観と近い第2の態様となっている。図10(B)に示すように、カバー30Aがオープンすることでタッチパネル20が露出する。第3の実施の形態においては、タッチパネル20は、カバー30Aがオープンすることで第1の態様となり、カバー30Aがクローズすることで第2の態様となる。
【0050】
図11(A)に示すように、第4の実施の形態の電子楽器1Bもタッチパネル20は、カバー30Bによって隠されている。図11(B)に示すように、カバー30Bがオープンすることでタッチパネル20が露出する。第4の実施の形態においても、タッチパネル20は、カバー30Bがオープンすることで第1の態様となり、カバー30Bがクローズすることで第2の態様となる。
【0051】
第3および第4の実施の形態の電子楽器1Aおよび1Bの構成も、図4で示した第1の実施の形態の電子楽器1と同様である。ただし、電子楽器1Aまたは1Bの切替部110は、カバー30Aまたは30Bを開閉することで、タッチパネル20の外観を第1の態様と第2の態様との間で切り替える。
【0052】
(2)カバー開閉方法
図12図15は、第3および第4の実施の形態に係るカバー開閉方法を示すフローチャートである。以下の説明は、第3および第4の実施の形態に共通であるため、カバー30Aおよび30Bをカバー30と総称する。図12図15のカバー開閉方法は、図4に示した切替部110により実行される。図12のステップS501において、切替部110は、電源ONの操作が検出されたか否かを判定する。電源ONの操作が検出された場合、切替部110は、タッチパネル20を点灯させ(ステップS502)、カバー30をオープンし(ステップS503)、および、タイマー109を起動させる(ステップS504)。
【0053】
ステップS501において電源ONの操作が検出されない場合、ステップS505において、切替部110は、電源OFFの操作が検出されたか否かを判定する。電源OFFの操作が検出された場合、切替部110は、タッチパネル20を消灯させ(ステップS506)、タイマー109を停止させる(ステップS507)。さらに、切替部110は、カバー30をクローズし(ステップS508)、実行中の動作を停止させる(ステップS509)。
【0054】
ステップS505において電源OFFの操作が検出されない場合、切替部110は、タイマー109が起動中であり、タイマー109の計測時間が所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS510)。所定時間が経過している場合、切替部110は、カバー30をクローズし(ステップS511)、タイマー109を停止させる(ステップS512)。ステップS510において、タイマー109が起動していないか、または、タイマー109が起動しているが所定時間を経過していない場合、処理は、図13のステップS601に遷移する。
【0055】
図13のステップS601において、切替部110は、所定機能の実行開始を検出したか否かを判定する。所定機能の実行開始が検出された場合、切替部110は、タイマー109を停止させ(ステップS602)、カバー30がクローズしている場合には、カバー30をオープンし(ステップS603)、実行フラグをONに設定する(ステップS604)。ステップS601において、所定機能の実行開始が検出されない場合、切替部110は、所定機能の実行終了が検出されたか否かを判定する(ステップS605)。所定機能の実行終了が検出された場合、切替部110は、タイマー109を起動し(ステップS606)、実行フラグをOFFに設定する(ステップS607)。ステップS605において、所定機能の実行終了が検出されない場合、処理は、図14のステップS701に遷移する。
【0056】
図14のステップS701において、切替部110は、カバー30のオープン操作を検出したか否かを判定する。カバー30のオープン操作を検出したとき、切替部110は、カバー30をオープンし(ステップS702)、タイマー109を起動する(ステップS703)。例えば、演奏者が、カバー30の所定の部位を押圧することにより、切替部110は、オープン操作を検出する。カバー30は図示しない駆動部を備えており、切替部110の制御により開閉動作を行う。次に、切替部110は、タッチパネル20に対するパネル操作が検出されたか否かを判定する(ステップS704)。パネル操作が検出された場合、切替部110は、所定機能の実行フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS705)。実行フラグがOFFである場合、切替部110は、タイマー109をリセットする(ステップS706)。ステップS705およびS706の後、切替部110による処理は、図15のステップS801に遷移する。また、切替部110によるステップS705およびS706の後、CPU106は、タッチパネル20に対する操作位置を検出し(ステップSB1)、操作位置に応じた機能あるいは設定を特定し(ステップSB2)、そして、特定した機能を実行可能である場合は、特定した機能を実行し、あるいは、特定した設定が設定可能であれば、特定した設定を行う(ステップSB3)。
【0057】
図15のステップS801において、切替部110は、演奏音の出力中であるか否かを判定する。演奏音の出力中である場合、切替部110は、所定機能の実行フラグがOFFであるか否かを判定する(ステップS802)。実行フラグがOFFの場合、切替部110は、カバー30がオープンされているか否かを判定する(ステップS803)。カバー30がオープンされている場合、切替部110は、カバー30をクローズし(ステップS804)、タイマー109を停止させる(ステップS805)。
【0058】
(3)第3および第4の実施の形態の効果
第3の実施の形態の電子楽器1Aまたは1Bによれば、カバー30Aまたは30Bがクローズすることにより、タッチパネル20は、電子楽器1の外装部材5と一体となった美しい外観となる。演奏者は、アコースティックピアノを演奏しているときと同様の感覚で電子楽器1Aまたは1Bを操作することができる。
【0059】
[4]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。上記の実施の形態では、タッチパネル20に対する操作を検出すること、あるいは、特定の機能が実行されることが第1の条件の例である。上記の実施の形態では、デモ演奏の再生、録音などが所定機能の例である。
【符号の説明】
【0060】
1,1A,1B…電子楽器、10…鍵盤、20…タッチパネル、100…楽器用表示装置、110…切替部、30A,30B…カバー、106…CPU、107…RAM、108…ROM
図1
図2
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図15