(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】遠隔操作支援サーバ、遠隔操作支援システムおよび遠隔操作支援方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20240305BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H04Q9/00 301Z
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2020025723
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 龍一
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208568(JP,A)
【文献】特開2013-064332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置との通信に基づき、前記遠隔操作装置の入力インターフェースを通じて前記作業機械のエンジン停止指令があったという第1条件、および、前記遠隔操作装置のオペレータの前記作業機械のエンジンを停止させる意思が前記エンジン停止指令に反映されている蓋然性が
低いという第2条件の充足性を認識する第1支援処理要素と、
前記第1支援処理要素により前記第1条件および前記第2条件が満たされていると認識された場合、前記作業機械との通信に基づき、前記作業機械のエンジンの動作を停止させずに作業機構の動作を停止させるための第1停止処理を実行する一方、前記第1支援処理要素により前記第1条件が満たされている一方で第2条件が満たされていないと認識された場合、前記作業機械との通信に基づき、前記作業機械の作業機構およびエンジンのそれぞれの動作を停止させるための第2停止処理を実行する第2支援処理要素と、を備えていることを特徴とする遠隔操作支援サーバ。
【請求項2】
請求項1記載の遠隔操作支援サーバにおいて、
前記第2条件は、
(a)オペレータが前記遠隔操作装置を操作する際の指定箇所に存在していないこと、
(b)前記遠隔操作装置に設けられた非常停止スイッチが操作されたこと、
(c)
前記遠隔操作装置または
前記遠隔操作支援サーバまたは
前記作業機械において動作の異常が発生したこと、および、
(d)
前記遠隔操作装置または
前記遠隔操作支援サーバまたは
前記作業機械において通信の途絶が発生したこと、のうち少なくともいずれか1つであることを特徴とする遠隔支援サーバ。
【請求項3】
請求項2記載の遠隔操作支援サーバにおいて、
前記第1支援処理要素が、前記遠隔操作装置において前記指定箇所に設けられた指定構造物に前記オペレータが接触しているまたは荷重をかけていることを検知するためのセンサからの出力信号に基づき、(a)前記遠隔操作装置においてオペレータが前記遠隔操作
装置を操作する際の指定箇所に存在していないという前記第2条件の充足性を認識することを特徴とする遠隔操作支援サーバ。
【請求項4】
請求項3記載の遠隔操作支援サーバにおいて、
前記第1支援処理要素が、前記指定構造物としてのシートに前記オペレータが着座して荷重をかけていることを検知するための前記センサからの出力信号に基づき、前記第2条件の充足性を認識することを特徴とする遠隔操作支援サーバ。
【請求項5】
請求項2記載の遠隔操作支援サーバにおいて、
前記第1支援処理要素が、前記遠隔操作装置において前記指定箇所に設けられたシートに着座した人間の顔または表情を認識するための撮像センサからの出力信号に基づき、(a)前記遠隔操作装置においてオペレータが前記遠隔操作
装置を操作する際の指定箇所に存在していないという前記第2条件の充足性を認識することを特徴とする遠隔操作支援サーバ。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の遠隔操作支援サーバと、前記作業機械と、により構成されている遠隔操作支援システム。
【請求項7】
作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置との通信に基づき、前記遠隔操作装置の入力インターフェースを通じて前記作業機械のエンジン停止指令があったという第1条件、および、前記遠隔操作装置のオペレータの前記作業機械のエンジンを停止させる意思が前記エンジン停止指令に反映されている蓋然性が
低いという第2条件の充足性を認識する第1支援処理と、
前記第1支援処理の実行により前記第1条件および第2条件が満たされていると認識された場合、前記作業機械との通信に基づき、前記作業機械のエンジンの動作を停止させずに作業機構の動作を停止させるための第1停止処理を実行する一方、前記第1支援処理の実行により前記第1条件が満たされている一方で第2条件が満たされていないと認識された場合、前記作業機械との通信に基づき、前記作業機械の作業機構およびエンジンのそれぞれの動作を停止させるための第2停止処理を実行する第2支援処理と、を実行することを特徴とする遠隔操作支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータによる遠隔操作装置を通じた作業機械の遠隔操作を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械において、ゲートロックレバーが操作されて作動停止装置による遮断が解除された後における誤動作を防止することができる作業機械の操作回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非常停止時にも機械の状況把握および非常停止か否かを判断できる建設機械の非常停止システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このシステムによれば、イグニッションスイッチが閉状態であれば各電子機器に電力が供給される。また、第2の電子機器は、各電子機器に電力が供給されたままの状態で、作業機停止手段に作業機の動作を停止させる作業機停止指令および第1の電子機器にエンジンを停止させるエンジン停止指令を行うことができる。
【0004】
通信手段に異常が発生した場合、その異常発生箇所を迅速かつ容易に特定できる新規な作業機械の遠隔操縦システムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。このシステムによれば、異常が発生したと診断された機器が油圧システムおよびエンジンシステムの動作に影響を与えない機器である場合、作業機械を待機状態に制御する。このため、当該機器が映像音声機器である場合、映像を見ることができない状態でオペレータが作業機械を操作するような事態が回避される。さらに、待機状態が所定時間経過した場合、作業機械のエンジンが停止されため、待機状態が長期間にわたり継続する可能性がある状況で不測の事態が発生することが回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-233615号公報
【文献】特開2008-248627号公報
【文献】特開2015-192163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、オペレータが作業機械の遠隔操作を継続する意思があるにもかかわらず、予期せぬ理由でエンジン停止指令があり、作業機械のエンジンが停止された場合、オペレータがエンジンを再始動させる必要があり、その分だけ作業効率が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、遠隔操作装置を通じてオペレータにより遠隔操作される作業機械の作業効率の向上を図りうる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遠隔操作支援サーバは、作業機械を遠隔操作するための遠隔操作装置との通信に基づき、前記遠隔操作装置の入力インターフェースを通じて前記作業機械のエンジン停止指令があったという第1条件、および、前記遠隔操作装置のオペレータの前記作業機械のエンジンを停止させる意思が前記エンジン停止指令に反映されている蓋然性が低いという第2条件の充足性を認識する第1支援処理要素と、前記第1支援処理要素により前記第1条件および前記第2条件が満たされていると認識された場合、前記作業機械との通信に基づき、前記作業機械のエンジンの動作を停止させずに作業機構の動作を停止させるための第1停止処理を実行する一方、前記第1支援処理要素により前記第1条件が満たされている一方で第2条件が満たされていないと認識された場合、前記作業機械との通信に基づき、前記作業機械の作業機構およびエンジンのそれぞれの動作を停止させるための第2停止処理を実行する第2支援処理要素と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
当該構成の遠隔操作支援サーバによれば、第1条件が満たされている場合、すなわち、遠隔操作装置の入力インターフェースを通じて前記作業機械のエンジン停止指令があった場合、原則的にはエンジンの動作が停止されるものの、例外的にエンジンの動作は停止されない。
【0010】
具体的には、第2条件が満たされていない場合、すなわち、当該オペレータによりエンジンを停止させる意思、ひいては、遠隔操作を中断する意思がエンジン停止指令に反映されている蓋然性が高い場合、エンジン停止指令にしたがってエンジンの動作が停止される。この観点から、前記第2条件は、
(a)オペレータが前記遠隔操作装置を操作する際の指定箇所に存在していないこと、
(b)前記遠隔操作装置に設けられた非常停止スイッチが操作されたこと、
(c)前記遠隔操作装置または前記遠隔操作支援サーバまたは前記作業機械において動作の異常が発生したこと、および、
(d)前記遠隔操作装置または前記遠隔操作支援サーバまたは前記作業機械において通信の途絶が発生したこと、のうち少なくともいずれか1つであることが好ましい。これにより、オペレータ以外の第三者により誤って作業機構の動作停止状態が解除され、作業機械による作業が再開される事態が確実に回避される。
【0011】
その一方、第2条件が満たされている場合、すなわち、当該オペレータによりエンジンを停止させる意思、ひいては、遠隔操作を中断する意思がエンジン停止指令に反映されている蓋然性が低い場合、エンジン停止指令があったにもかかわらず、エンジンの動作が停止されずに継続される。これにより、その状態でオペレータにより作業機構の動作停止状態が解除され、作業機械による作業が迅速に再開されうるので、作業機械を用いた作業効率の向上が図られる。
【0012】
本発明の遠隔操作支援サーバにおいて、前記第1支援処理要素が、前記遠隔操作装置において前記指定箇所に設けられた指定構造物に前記オペレータが接触しているまたは荷重をかけていることを検知するためのセンサからの出力信号に基づき、前記遠隔操作装置においてオペレータが前記遠隔操作装置を操作する際の指定箇所に存在していないという前記第2条件の充足性を認識することが好ましい。
【0013】
当該構成の遠隔操作支援サーバによれば、遠隔操作装置においてオペレータが遠隔操作機構を操作する際の指定箇所に設けられた指定構造物に接触しているまたは荷重をかけている場合、当該オペレータによりエンジンを停止させる意思、ひいては、遠隔操作を中断する意思がエンジン停止指令に反映されている蓋然性が低い。よって、この場合、エンジン停止指令があったにもかかわらず、エンジンの動作が停止されずに継続されることにより、その状態でオペレータにより作業機構の動作停止状態が解除され、作業機械による作業が迅速に再開されうるので、作業機械を用いた作業効率の向上が図られる。
【0014】
本発明の遠隔操作支援サーバにおいて、前記第1支援処理要素が、前記指定構造物としてのシートに前記オペレータが着座して荷重をかけていることを検知するための前記センサからの出力信号に基づき、前記第2条件の充足性を認識することが好ましい。本発明の遠隔操作支援サーバにおいて、前記第1支援処理要素が、前記遠隔操作装置において前記指定箇所に設けられたシートに着座した人間の顔または表情を認識するための撮像センサからの出力信号に基づき、前記遠隔操作装置においてオペレータが前記遠隔操作装置を操作する際の指定箇所に存在していないという前記第2条件の充足性を認識することが好ましい。
【0015】
当該構成の遠隔操作支援サーバによれば、遠隔操作装置においてオペレータがシートに着座していない場合、当該オペレータによりエンジンを停止させる意思、ひいては、遠隔操作を中断する意思がエンジン停止指令に反映されている蓋然性が低い。よって、この場合、エンジン停止指令があったにもかかわらず、エンジンの動作が停止されずに継続されることにより、その状態でオペレータにより作業機構の動作停止状態が解除され、作業機械による作業が迅速に再開されうるので、作業機械を用いた作業効率の向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態としての遠隔操作支援システムの構成に関する説明図。
【
図4】遠隔操作支援システムの第1機能に関する説明図。
【
図5】遠隔操作支援システムの第2機能に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(遠隔操作支援システムの構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての遠隔操作支援システムは、遠隔操作支援サーバ10と、作業機械40と、により構成されている。作業機械40を遠隔操作するための遠隔操作装置20(クライアント)が遠隔操作
支援システムの構成要素であってもよい。遠隔操作支援サーバ10、遠隔操作装置20および作業機械40は相互にネットワーク通信可能に構成されている。遠隔操作支援サーバ10および遠隔操作装置20の相互通信ネットワークと、遠隔操作支援サーバ10および作業機械40の相互通信ネットワークと、は同一であってもよく相違していてもよい。
【0018】
(遠隔操作支援サーバの構成)
遠隔操作支援サーバ10は、データベース102と、第1支援処理要素121と、第2支援処理要素122と、を備えている。データベース102は、撮像画像データ等を記憶保持する。データベース102は、遠隔操作支援サーバ10とは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。各支援処理要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。遠隔操作支援サーバ10が、遠隔操作装置20により構成されていてもよい。この場合、遠隔制御装置200が、第1支援処理要素121および第2支援処理要素122を備えている。
【0019】
(遠隔操作装置の構成)
遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、を備えている。遠隔操作装置20は、「第1クライアント」および「第2クライアント」のうち少なくとも一方として機能する。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211と、オペレータ状態センサ212と、を備えている。遠隔出力インターフェース220は、画像出力装置221と、遠隔無線通信機器222と、を備えている。
【0020】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0021】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、
図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0022】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一の操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、
図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、
図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0023】
シートStの左側フレームの前方において左側操作レバー2111の下方に設けられている遮断レバー2113は、上げられた場合に各操作レバー2110、2111、2112が操作されても作業機械40が動かないようにロックする一方、下げられた場合に当該ロックを解除するための操作レバーとして機能する。
【0024】
オペレータ状態センサ212は、本実施形態では、シートStの一部(例えば、着座部、ひじ掛けもしくは背もたれ)またはシートStの支持部材に設けられた荷重センサ(例えば、ひずみゲージ)により構成されている。当該荷重センサにより検知される荷重の大小または有無に応じてオペレータがシートStに着席しているか離席しているかが判定されうる。そのほか、遠隔操作機構211を構成する各操作レバーのうち少なくとも一部に設けられた接触センサまたは荷重センサによりオペレータ状態センサ212が構成されていてもよい。シートStに着座した人間の顔または表情を認識するための撮像センサによりオペレータ状態センサ212が構成されていてもよい。
【0025】
画像出力装置221は、例えば
図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212により構成されている。中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。
【0026】
図2に示されているように、中央画像出力装置2210の画面および左側画像出力装置2211の画面が傾斜角度θ1(例えば、120°≦θ1≦150°)をなすように、左側画像出力装置2211の右縁が、中央画像出力装置2210の左縁に隣接している。
図2に示されているように、中央画像出力装置2210の画面および右側画像出力装置2212の画面が傾斜角度θ2(例えば、120°≦θ2≦150°)をなすように、右側画像出力装置2212の左縁が、中央画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度θ1およびθ2は同じであっても相違していてもよい。
【0027】
中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する一対の画像出力装置により構成されていてもよい。画像出力装置2210~2212は、スピーカ(音声出力装置)をさらに備えていてもよい。
【0028】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース41と、実機出力インターフェース42と、作業機構440と、エンジン460と、を備えている。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0029】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、
図2に示されているように、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。上部旋回体420の前方左側部にはキャブ424(運転室)が設けられている。上部旋回体420の前方中央部には作業機構440が設けられている。
【0030】
実機入力インターフェース41は、実機操作機構411と、実機撮像装置412と、測位装置414と、を備えている。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。実機撮像装置412は、例えばキャブ424の内部に設置され、フロントウィンドウおよび左右一対のサイドウィンドウ越しに作業機構440の少なくとも一部を含む環境を撮像する。フロントウィンドウおよびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。測位装置414は、GPSおよび必要に応じてジャイロセンサ等により構成されている。
【0031】
実機出力インターフェース42は、実機無線通信機器422を備えている。
【0032】
作業機構440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0033】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0034】
エンジン460がONである状態で、メインポンプから複数の方向制御弁に対して作動油が供給され、かつ、パイロットポンプから一次圧油が実機操作機構411に供給されうる。実機操作機構411の遠隔操作指令に応じた動きに応じて二次圧油が方向制御弁に対して供給され、当該方向制御弁の動作に応じた油圧シリンダに対して作動油が供給されることにより、旋回機構430および作業機構440が動作する。
【0035】
(第1機能)
前記構成の遠隔操作支援システムの第1機能について
図4に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0036】
遠隔操作装置20において、オペレータによ
る遠隔入力インターフェース210を通じた指定操作の有無が判定される(
図4/STEP210)。「指定操作」は、例えば、オペレータが遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。当該判定結果が否定的である場合(
図4/STEP210‥NO)、
処理は終了する。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図4/STEP210‥YES)、遠隔無線通信機器222を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して環境確認要求が送信される(
図4/STEP212)。
【0037】
遠隔操作支援サーバ10において、環境確認要求が受信された場合、第1支援処理要素121により当該環境確認要求が該当する作業機械40に対して送信される(
図4/C110)。
【0038】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて環境確認要求が受信された場合(
図4/C410)、実機制御装置400が実機撮像装置412を通じて撮像画像を取得する(
図4/STEP410)。実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて、当該撮像画像を表わす撮像画像データが遠隔操作装置20に対して送信される(
図4/STEP412)。
【0039】
遠隔操作支援サーバ10において、第1支援処理要素121により撮像画像データが受信された場合(
図4/C111)、第2支援処理要素122により撮像画像に応じた環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信される(
図4/STEP110)。環境画像データは、撮像画像データそのもののほか、撮像画像に基づいて生成された模擬的な環境画像を表わす画像データである。
【0040】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器222を通じて環境画像データが受信された場合(
図4/C210)、遠隔制御装置200により、環境画像データに応じた環境画像が画像出力装置221に出力される(
図4/STEP214)。
【0041】
これにより、例えば、
図6に示されているように、作業機構440の一部であるブーム441、アーム443およびバケット445が映り込んでいる環境画像が画像出力装置221に出力される。
【0042】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され(
図4/STEP216)、かつ、遠隔無線通信機器222を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が遠隔操作支援サーバ10に対して送信される(
図4/STEP218)。
【0043】
遠隔操作支援サーバ10において、第2支援処理要素122により当該遠隔操作指令が受信された場合、第1支援処理要素121により、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(
図4/C112)。
【0044】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて遠隔操作指令が受信された場合(
図4/C412)、作業機構440等の動作が制御される(
図4/STEP414)。これにより、作業機械40の遠隔操作が開始される。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体420を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0045】
(第2機能)
前記構成の遠隔操作支援システムの第2機能について
図5に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。
【0046】
遠隔操作装置20において、オペレータによ
る遠隔入力インターフェース210を通じた第1指定操作の有無が判定される(
図5/STEP22
1)。「第1指定操作」は、例えば、IGNスイッチをOFFからONに切り替えるなど、作業機械40のエンジン460を始動させるための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。当該判定結果が否定的である場合(
図5/STEP22
1‥NO)、第1指定操作の有無の判定以降の処理が繰り返される。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図5/STEP22
1‥YES)、遠隔無線通信機器222を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対してエンジン動作指令が送信される(
図5/STEP222)。当該エンジン動作指令には、遠隔入力インターフェース210を通じて指定された作業機械40を識別するための作業機械識別子が含まれている。
【0047】
遠隔操作支援サーバ10において、エンジン動作指令が受信された場合、第1支援処理要素121により当該作業機械識別子により識別される作業機械40に対してエンジン動作指令が送信される(
図5/C120)。
【0048】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じてエンジン動作指令が受信された場合(
図5/C420)、実機制御装置400により、当該作業機械40のエンジン460がONからOFFに切り替えられ、かつ、作業機構440が動作指令に応じて動作不可能なロック状態から動作可能なロック解除状態に切り替えられる(
図5/STEP420)。これにより、例えば、パイロットポンプから供給される一次圧油が、遠隔操作指令に応じて(実機操作機構411の操作態様がアクチュエータにより調節されることにより)二次圧油として方向制御弁に供給されうるので、前記のように作業機構440が動作可能な状態になる(
図4/STEP216→STEP218→‥→STEP412および
図6参照)。
【0049】
遠隔操作装置20において、オペレータによ
る遠隔入力インターフェース210を通じた第2指定操作の有無が判定される(
図5/STEP223)。「第2指定操作」は、例えば、IGNスイッチをONからOFFに切り替えるなど、作業機械40のエンジン460の動作を停止させるための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。当該判定結果が否定的である場合(
図5/STEP223‥NO)、第
2指定操作の有無の判定以降の処理が繰り返される。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図5/STEP223‥YES)、遠隔無線通信機器222を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対してエンジン停止指令が送信される(
図5/STEP224)。当該エンジン
停止指令には、遠隔入力インターフェース210を通じて指定された作業機械40を識別するための作業機械識別子が含まれている。
【0050】
遠隔操作支援サーバ10において、エンジン停止指令が受信された場合(
図5/C121)、第1支援処理要素121により遠隔操作装置20に対してオペレータ状態要求が送信される(
図5/STEP121)。エンジン停止指令が受信されたことは、第1条件が満たされていることと同義である。
【0051】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器222を通じてオペレータ状態要求が受信された場合(
図5/C221)、遠隔制御装置200により、オペレータ状態センサ212の出力信号に基づき、オペレータ状態が検知される(
図5/STEP225)。例えば、オペレータがシートStに着座しているか否か等、オペレータが遠隔操作機構211を操作する際に存在すべき指定箇所に存在しているか否かがオペレータ状態として検知される。そして、遠隔無線通信機器222を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して検知されたオペレータ状態が送信される(
図5/STEP226)。
【0052】
第2指定操作が
あったと判定された場合(
図5/STEP223‥YES)、オペレータ状態要求がなくても、遠隔制御装置200により、オペレータ状態センサ212の出力信号に基づき、オペレータ状態が検知され(
図5/STEP225)、遠隔無線通信機器222を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して検知されたオペレータ状態が、エンジン停止指令とともに送信されてもよい(
図5/STEP226)
【0053】
遠隔操作支援サーバ10において、オペレータ状態が受信された場合(
図5/C122)、当該オペレータ状態に基づき、第1支援処理要素121により第2条件が満たされているか否かが判定される(
図5/STEP122)。すなわち、オペレータが遠隔操作機構211を操作する際に存在すべき指定箇所に存在していないか否かが判定される。
【0054】
当該判定結果が肯定的である場合、すなわち、第1条件および第2条件が満たされている場合(
図5/STEP122‥YES)、第2支援処理要素122により、第1停止指令が作業機械40に対して送信される(
図5/STEP124)。
【0055】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて第1停止指令が受信された場合(
図5/C421)、実機制御装置400により、当該作業機械40のエンジン460がONに維持される一方、作業機構440がロック解除状態からロック状態に切り替えられる(
図5/STEP421)。これにより、パイロットポンプから一次圧油が実機操作機構411に対して供給されることが該当する油圧回路の遮断によって禁止されるので、遠隔操作指令があったとしても作業機構440が動作不可能な状態になる。
【0056】
当該判定結果が否定的である場合、すなわち、第1条件が満たされている一方で第2条件が満たされていない場合(
図5/STEP122‥NO)、第2支援処理要素122により、第1停止指令が作業機械40に対して送信される(
図5/STEP126)。
【0057】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて第2停止指令が受信された場合(
図5/C422)、実機制御装置400により、当該作業機械40のエンジン460がONからOFFに切り替えられ、かつ、作業機構440がロック解除状態からロック状態に切り替えられる(
図5/STEP422)。これにより、パイロットポンプから一次圧油が実機操作機構411に対して供給されなくなり、遠隔操作指令に応じて実機操作機構411が動かされたとしても作業機構440(および旋回機構430)が動作不可能な状態になる。
【0058】
(効果)
当該構成の遠隔操作支援サーバ10によれば、第1条件が満たされている場合、すなわち、遠隔操作装置20の遠隔入力インターフェース210を通じて作業機械40のエンジン停止指令があった場合、原則的にはエンジン460の動作が停止されるものの、例外的にエンジン460の動作は停止されない。
【0059】
具体的には、第2条件が満たされていない場合、すなわち、遠隔操作装置20においてオペレータが遠隔操作機構211を操作する際の指定箇所に存在している場合、当該オペレータによりエンジン460を停止させる意思、ひいては、遠隔操作を中断する意思がエンジン停止指令に反映されている蓋然性が高い。よって、この場合、エンジン停止指令にしたがってエンジン460の動作が停止されることにより、オペレータ以外の第三者により誤って作業機構440(旋回機構430を含む。)の動作停止状態が解除され、作業機械40による作業が再開される事態が確実に回避される(
図5/STEP122‥NO→STEP126→‥STEP422参照)。
【0060】
その一方、第2条件が満たされている場合、すなわち、遠隔操作装置20においてオペレータが遠隔操作機構211を操作する際の指定箇所に存在していない場合、当該オペレータによりエンジン460を停止させる意思、ひいては、遠隔操作を中断する意思がエンジン停止指令に反映されている蓋然性が低い。よって、この場合、エンジン
停止指令があったにもかかわらず、エンジン460の動作が停止されずに継続されることにより、その状態でオペレータにより作業機械40の動作停止状態が解除され、作業機械40による作業が迅速に再開されうるので、作業機械40を用いた作業効率の向上が図られる(
図5/STEP122‥YES→STEP124→‥STEP421参照)。
【0061】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、(a)遠隔操作装置20においてオペレータが遠隔操作機構211を操作する際の指定箇所に存在していないことが第2条件として定義されていたが、他の実施形態として、(b)代替的または付加的に、遠隔操作装置20に設けられた非常停止スイッチが操作されたこと、(c)遠隔操作装置20または遠隔操作支援サーバ10または作業機械40において動作の異常が発生したこと、および、(d)遠隔操作装置20または遠隔操作支援サーバ10または作業機械40において通信の途絶が発生したことのうち少なくとも1つが第2条件として定義されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10‥遠隔操作支援サーバ、20‥遠隔操作装置、40‥作業機械、41‥実機入力インターフェース、42‥実機出力インターフェース、102‥データベース、121‥第1支援処理要素、122‥第2支援処理要素、200‥遠隔制御装置、210‥遠隔入力インターフェース、211‥遠隔操作機構、212‥オペレータ状態センサ、220‥遠隔出力インターフェース、221‥画像出力装置、400‥実機制御装置、410‥下部走行体、420‥上部旋回体、424‥キャブ(運転室)、440‥作業機構(作業アタッチメント)、445‥バケット(作業部)、460‥エンジン。