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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】接合構造、及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240305BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240305BHJP
   C25D 5/26 20060101ALI20240305BHJP
   C25D 5/50 20060101ALI20240305BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240305BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20240305BHJP
【FI】
H05K3/34 501F
C25D7/00 J
C25D5/26 K
C25D5/50
H05K1/09 C
H01L33/62
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020028149
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2020136684
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】62/809,884
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】谷口 晋
(72)【発明者】
【氏名】小林 英之
(72)【発明者】
【氏名】折笠 誠
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/061428(WO,A1)
【文献】特開平10-303059(JP,A)
【文献】特開2008-042071(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115798(WO,A1)
【文献】特開2000-232119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
C25D 7/00
C25D 5/26
C25D 5/50
H05K 1/09
H01L 33/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と基板とを接合する接合構造であって、
前記発光素子に形成された第1の電極と、
前記基板に形成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有し、
前記接合層は、合金層を有し、
前記合金層は、下地金属成分と、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、
前記接合層は、略単一の金属成分で形成される金属層を有し、
前記金属層は、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の他方の接合金属成分で形成される、接合構造。
【請求項2】
前記接合層は、略単一の金属成分で形成される他の金属層を有し、
前記他の金属層は、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の一方の接合金属成分で形成され、
前記金属層及び前記他の金属層の一方は、他方の周囲に形成される、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
発光素子と基板とを接合する接合構造であって、
前記発光素子に形成された第1の電極と、
前記基板に形成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有し、
前記接合層は、略単一の金属成分で形成される金属層と、前記第1の接合金属成分と前記第2の接合金属成分とが混合した共晶層と、を有し、
前記金属層は、前記第1の接合金属成分と前記第2の接合金属成分の少なくとも一方の金属成分で形成され、
前記共晶層は、前記金属層の周囲に形成される、接合構造。
【請求項4】
前記接合層は、合金層を有し、
前記合金層は、下地金属成分と、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成される、請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記接合層は、前記発光素子側及び前記基板側に一対の前記合金層を有する、請求項1、2、4の何れか一項に記載の接合構造。
【請求項6】
発光素子と基板とを接合する接合構造であって、
前記発光素子に形成された第1の電極と、
前記基板に形成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有し、
前記接合層は、
前記発光素子側に形成された第1の下地層及び第1の合金層と、
前記基板側に形成された第2の下地層及び第2の合金層と、を有し、
前記第1の合金層は、前記第1の下地層の第1の下地金属成分と、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、
前記第2の合金層は、前記第2の下地層の第2の下地金属成分と、前記一方の接合金属成分との合金によって構成され、
前記第1の合金層及び前記第2の合金層の一方の合金層は、他方の合金層より薄い、接合構造。
【請求項7】
発光素子と基板とを接合する接合構造であって、
前記発光素子に形成された第1の電極と、
前記基板に形成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有し、
前記接合層は、
前記発光素子側に形成された第1の下地層及び第1の合金層と、
前記基板側に形成された第2の下地層及び第2の合金層と、を有し、
前記第1の合金層は、前記第1の下地層の第1の下地金属成分と、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、
前記第2の合金層は、前記第2の下地層の第2の下地金属成分と、前記一方の接合金属成分との合金によって構成され、
前記第1の合金層及び前記第2の合金層は、前記第1の下地層及び前記第2の下地層から放射状に形成される、接合構造。
【請求項8】
発光素子と基板とを接合する接合構造であって、
前記発光素子に形成された第1の電極と、
前記基板に形成された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを接合する接合層と、を備え、
前記接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有し、
前記接合層は、合金層を有し、
前記合金層は、下地金属成分と、前記第1の接合金属成分及び前記第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、
前記接合層は、前記発光素子側及び前記基板側に一対の前記合金層を有し、
前記接合層は、前記第1の接合金属成分と前記第2の接合金属成分とが混合した共晶層を有し、
前記共晶層は、前記基板側の前記合金層と、前記発光素子側の前記合金層との間の領域において、厚み方向の全域に及ぶ、接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品と基板とを接合する接合構造として、特許文献1に記載されたものが知られている。この接合構造は、電子部品の電極を覆うハンダと基板の電極を覆うハンダとを溶融させることで、電子部品と基板とを接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-74484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、発光素子と基板とを接合する場合、適切な状態で両者を接合することが求められる。従って、本発明の一側面は、適切な状態で発光素子と基板とを接合することができる接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る接合構造は、発光素子と基板とを接合する接合構造であって、発光素子に形成された第1の電極と、基板に形成された第2の電極と、第1の電極と第2の電極とを接合する接合層と、を備え、接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有する。
【0006】
発光素子と基板とは、接合層を介して接合されている。また、発光素子の第1の電極と基板の第2の電極とは、接合層を介して電気的に接続されている。接合層は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有する。このように、接合層が、互いに異なる第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分を含有する場合、接合時における融点を低下させることができる。これにより、発光素子と基板とを低温で接合することができる。以上により、適切な状態で発光素子と基板とを接合することができる。
【0007】
接合層は、合金層を有し、合金層は、下地金属成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成されてよい。
【0008】
接合層は、発光素子側及び基板側に一対の合金層を有してよい。
【0009】
接合層は、略単一の金属成分で形成される金属層を有し、金属層は、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の他方の接合金属成分で形成されてよい。
【0010】
接合層は、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分とが混合した共晶層を有してよい。
【0011】
接合層は、略単一の金属成分で形成される金属層と、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分とが混合した共晶層と、を有し、金属層は、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分の少なくとも一方の金属成分で形成され、共晶層は、金属層の周囲に形成されてよい。
【0012】
接合層は、発光素子側に形成された第1の下地層及び第1の合金層と、基板側に形成された第2の下地層及び第2の合金層と、を有し、第1の合金層は、第1の下地層の第1の下地金属成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、第2の合金層は、第2の下地層の第2の下地金属成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、第1の合金層及び第2の合金層の一方の合金層は、他方の合金層より薄くてよい。
【0013】
接合層は、発光素子側に形成された第1の下地層及び第1の合金層と、基板側に形成された第2の下地層及び第2の合金層と、を有し、第1の合金層は、第1の下地層の第1の下地金属成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分との合金によって構成され、第2の合金層は、第2の下地層の第2の下地金属成分と、一方の接合金属成分との合金によって構成され、第1の合金層及び第2の合金層は、第1の下地層及び第2の下地層から放射状に形成されてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、適切な状態で発光素子と基板とを接合することができる接合構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る接合構造を示す概略側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る接合構造を示す概略平面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図4図4(a),4(b),4(c),4(d)は、発光素子側にバンプを形成するときの様子を示す工程図である。
図5図5(a),5(b),5(c),5(d)は、基板側にバンプを形成するときの様子を示す工程図である。
図6図6(a),6(b),6(c)は、基板に発光素子を接合するときの様子を示す工程図である。
図7図7は、第2実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図9図9は、第4実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図10図10は、第5実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図11図11は、第6実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図12図12は、第7実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図13図13は、第8実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
図14図14は、第9実施形態に係る接合構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分は、Sn、Bi、In、Pb、Znのいづれかひとつの金属でよく、Sn、Bi、In、Pb、Znのふたつ以上の金属で構成される合金または共晶でもよい。
【0017】
接合層中の第1の接合金属成分と第2の接合金属成分の濃度比が0.1~9.0であってよく、0.3~6.0であってよく、0.5~3.0であってよい。
【0018】
合金層の厚みは、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上であってよく、2.0μm以下、1.5μm以下、1.0μm以下であってよい。
【0019】
第1の合金層及び第2の合金層は、少なくともどちらか一方が、第1の下地層及び第2の下地層の周囲において放射状に形成されてもよい。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る接合構造の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る接合構造1を示す概略側面図である。図1に示すように、接合構造1は、基板2に対して発光素子3を接合することによって構成される。基板2には、複数の電極4(第2の電極)が形成されている。発光素子3には、電極6(第1の電極)が形成されている。基板2の電極4と発光素子3の電極6とは、接合層7を介して接合される。このように、接合構造1は、基板2に形成された電極4と、発光素子3に形成された電極6と、電極4と電極6とを接合する接合層7と、を備える。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る接合構造1を示す概略平面図である。図2に示すように、発光素子3は、基板2上にマトリクス状に配列されている。基板2には、予め定められた配列パターンにて、赤色の発光素子3Aと、緑色の発光素子3Bと、青色の発光素子3Cと、が固定される。基板2は、特に限定されないが、フレキシブル基板が用いられる場合がある。以上のように、基板2に複数の発光素子3を接合することで、LEDディスプレイの部品を構成することができる。例えば、LCD(液晶ディスプレイ)のようにバックライトの光を透過型液晶で制御する方法に対し、LED(発光素子ディスプレイ)は自然発光素子である発光素子で画素を構成している。これによりLEDディスプレイは高輝度、高寿命、高視野角といった特徴を持つ。このようなLEDディスプレイにおいて画素数を上げるために、発光素子3の小型化が図られている。
【0023】
接合層7は、基板2の電極4に形成されたバンプと、発光素子3の電極6に形成されたバンプとを重ね合わせ、加熱してバンプ同士を溶融させることで形成される。図6(a)に示すように、基板2の電極4に形成されたバンプ8は、電極4を覆う下地層41と、下地層41を覆う金属層42と、を有する。発光素子3の電極6に形成されたバンプ9は、電極6を覆う下地層31と、下地層31を覆う金属層32と、を有する。
【0024】
金属層32,42は、接続金属によって構成される。接続金属は、溶融した後に冷えて固まることで、互いに接合することができる金属である。また、金属層32と金属層42とは、互いに異なる接合金属によってそれぞれ構成される。金属層32は、第1の接合金属によって構成される。金属層42は、第1の接合金属とは異なる第2の接合金属によって構成される。このような異なる接合金属の組み合わせとして、SnとBiの組み合わせ、またはSnとInの組み合わせなどが採用される。
【0025】
下地層31,41は、UBM(Under Bump Metal)と称される層である。下地層31,41は、電極6,4に金属層32,42を形成するときに、当該電極6,4と金属層32,42との間に介在する層である。下地層31,41として、Ni、NiP、NiB、Cuなどが採用される。なお、下地層31,41が省略され、金属層32,42が電極6,4に直接形成されてもよい。なお、電極6,4として、Cu、Ag、Al、Pd、Auなどが採用される。PdやAuは無電解めっきの触媒として機能するため、前処理工程を簡略化できるため電極材料として好適である。
【0026】
次に、図3を参照して、接合層7について詳細に説明する。図3は、接合構造1の概略断面図である。ここでは、基板2の電極4としてCu、下地層41としてNiP、金属層42の接合金属としてBi、発光素子3の電極6としてCu、下地層31としてNiP、及び金属層32の接合金属としてSnを採用した場合の接合構造1について説明する。
【0027】
接合層7は、発光素子3側の第1の接合金属としてSnを用い、基板2側の第2の接合金属としてBiを用いている。従って、接合層7は、第1の接合金属成分であるSn成分と、第1の接合金属成分とは異なる第2の接合金属成分であるBi成分と、を含有する。なお、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分とを含有する状態とは、第1の接合金属及び第2の接合金属が、共晶層として存在しているか、合金層として存在しているか、単一の金属層として存在しているかに関わらず、接合層7中に成分として存在している状態を示す。また、接合層7は、下地金属成分であるNiと、一方の接合金属成分であるSnとの合金によって構成される合金層を有する。
【0028】
具体的に、図3に示すように、接合層7は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順にNiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層7は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiSn合金層23と、を有する。また、接合層7は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiSn合金層23との間に、Sn金属層14及びBi金属層16を有する。
【0029】
発光素子3側のNiSn合金層13は、発光素子3の金属層32のSn成分と下地層31のNi成分とが反応することによって形成された合金層である。NiSn合金層13は、NiP下地層11の周囲において放射状に形成されている。すなわち、NiSn合金層13は、局所的に大きく突出した部分と、窪んだ部分とが形成される。NiSn合金層13のこのような放射状の形状は、予め発光素子3の金属層32と下地層31とをアニール処理することによって形成される(図4(d)参照)。P含有層12は、Sn成分とNiP成分との間で反応してNiSn合金層13が形成されることに伴って形成された層である。
【0030】
基板2側のNiSn合金層23は、基板2の下地層41のNi成分と、Sn成分とが反応することによって形成された合金層である。このときのSn成分は、発光素子3側のSn成分がBi成分内を基板2側まで拡散することによって、基板2側のNi成分と反応する。基板2側のSn成分は、発光素子3側よりも少ない。従って、基板2側のNiSn合金層23は、発光素子3側のNiSn合金層13よりも薄く形成される。また、基板2側のP含有層22も、発光素子3側のP含有層12より薄くなる。基板2側のNiSn合金層23は、均一で薄い層となるため、次のような効果が得られる。基板2がフレキシブル基板であった場合、基板2側の端子にかかる応力の影響によって合金層破断が起きやすくなる。しかし、NiSn合金層23が均一で薄いため、このような破断を起き難くすることができる。
【0031】
金属層は、略単一の金属成分で形成される層である。ここで、略単一の金属成分で形成されている状態とは、単位体積当たりの中に、金属成分が95質量%以上含まれている状態である。接合層7は、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分のうち、合金層とならなかった方の接合金属成分で形成される金属層を少なくとも有する。合金層としてNiSn合金層13,23が形成されたため、接合層7は、Bi金属層16を少なくとも有する。本実施形態では、接合層7は、合金層となったSn成分の金属層であるSn金属層14も有する。
【0032】
Sn金属層14及びBi金属層16は、次のような理由によって形成される。すなわち、予めアニール処理がなされることにより、接合開始の時点で、Snの金属層32にはNiSn合金層33が存在している。従って、接合を開始したとき、Sn成分とBi成分との反応は、Sn成分内に拡散したNi成分によって阻害される。従って、Sn成分とBi成分は均一に混ざり合わない。そして、部分的にSnリッチな部分が残り、当該部分がSn金属層14となる。また、部分的にBiリッチな部分が残り、当該部分がBi金属層16となる。
【0033】
なお、基板2と発光素子3との間のギャップが狭く、接合体の流動性が低いことも、Sn成分とBi成分が均一に混ざりにくい原因となる可能性がある。例えば、平面方向において隣合う電極6同士の間の距離が100μm以下であるため、基板2と発光素子3との間のギャップは、ショート防止の観点から50μm以下に抑えられる場合がある。
【0034】
次に、図4図6を参照して、接合構造1の製造方法について説明する。図4は、発光素子3側にバンプ9を形成するときの様子を示す工程図である。図5は、基板2側にバンプ8を形成するときの様子を示す工程図である。図6は、基板2に発光素子3を接合するときの様子を示す工程図である。
【0035】
図4(a),4(b)に示すように、発光素子3の電極6を覆うように、下地層31をめっき法などによって形成する。次に、図4(c)に示すように、下地層31を覆うように金属層32をめっき法などによって形成する。次に、図4(d)に示すように、アニール処理を行う。これにより、下地層31と金属層32とが反応し、合金層33が形成される。アニール処理は、100~300℃程度の温度で行われる。好ましくは表面の酸化を抑制するため、還元雰囲気または真空、N雰囲気等で行う。また、金属層32内に下地層31の下地金属成分の拡散が進む。
【0036】
アニール後の寸法について説明する。電極6の厚みは、0.5~10μmに設定される。下地層31の厚みは、0.5~10μmに設定される。バンプ9の厚みは、0.5~10μmに設定される。バンプ9の厚みは、めっき時間を変更することによって調整される。
【0037】
図5(a)に示すように、基板2の電極4が露出する。電極4は基材2a上に形成されており、被覆層2bの一部に溝を形成することで、当該溝から電極4が露出する。図5(b)に示すように、電極4を覆うように下地層41をめっき法などによって形成する。また、図5(c)に示すように、下地層41を覆うように金属層42をめっき法などによって形成する。以上により、基板2のバンプ8が形成される。次に、図5(d)に示すように、アニール処理を行う。これにより、下地層41と金属層42とが反応し、合金層43が形成される。アニール処理は、100~300℃程度の温度で行われる。好ましくは表面の酸化を抑制するため、還元雰囲気または真空、N雰囲気等で行う。また、金属層42内に下地層41の下地金属成分の拡散が進む。
【0038】
電極4の厚みは、0.5~10μmに設定される。下地層41の厚みは、0.5~10μmに設定される。バンプ8の厚みは、0.5~10μmに設定される。
【0039】
図6(a)に示すように、基板2のバンプ8と発光素子3のバンプ9とが対向するように、基板2及び発光素子3の位置合わせを行う。図6(b)に示すように、発光素子3のバンプ9にフラックス50を塗布する。次に、図6(c)に示すように、バンプ8,9同士を接触させて熱と圧力を付与することにより、基板2のバンプ8と発光素子3のバンプ9とを溶融させる。溶融したバンプが冷えて固化することで接合層7が形成される。
【0040】
次に、本実施形態に係る接合構造1の作用・効果について説明する。
【0041】
接合構造1は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造1であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層7と、を備える。接合層7は、第1の接合金属成分(ここではSn成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではBi成分)と、を含有する。
【0042】
発光素子3と基板2とは、接合層7を介して接合されている。また、発光素子3の電極6と基板2の電極4とは、接合層7を介して電気的に接続されている。接合層7は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有する。このように、接合層7が、互いに異なる第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分を含有する場合、接合時における融点を低下させることができる。これにより、発光素子3と基板2とを低温で接合することができる。以上により、適切な状態で発光素子3と基板2とを接合することができる。
【0043】
発光素子3は基板2に比して部品のサイズが非常に小さい。また、発光素子3が実装される基板2は有機基板である場合がある。従って、熱による反りや歪みによって、部品実装部にストレスがかかる事を抑制することが求められる。すなわち、発光素子3と基板2とは、低温での接合が求められる。本実施形態の接合構造1を採用すると、発光素子3と基板2とを低温で接合することができる。
【0044】
接合層7は、NiSn合金層13,23を有する。NiSn合金層13,23は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分であるSn成分との合金によって構成されている。このように、接合層7がNiSn合金層13,23を有することは、接合層7の接合時に、Sn金属層の中にNi成分が拡散されることを示す。この場合、Sn成分とBi成分が混ざり合うことを抑制し、Sn金属層14及びBi金属層16を形成し易くなる。
【0045】
特に、接合層7は、発光素子3側及び基板2側に一対の合金層13,23を有する。これは、接合時には、Sn成分の金属層32を有していない基板2側へSn成分が移動し、NiSn合金層23が形成されたことを意味する。この場合、基板2側のNi成分もSn成分中に拡散することで、Sn成分とBi成分が混ざり合うことを更に抑制できる。また、基板2側では、Sn成分とBi成分が混ざり合って共晶層が形成される事に代えて、Sn成分及びNi成分によってNiSn合金層23が形成される。これにより、接合層7は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。
【0046】
ここで、発光素子3が実装された基板2は、リペアや他部品の実装などのために再度リフローが行われる場合がある。リペアとは、不良のある発光素子3を他の発光素子3に入れ替えることである。この場合に、接合層7が再溶融すると、発光素子3の位置ズレが生じる。
【0047】
これに対し、接合層7は、略単一の金属成分で形成される金属層を有する。この金属層は、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の他方の接合金属成分であるBi成分で形成されるBi金属層16である。また、本実施形態では、接合層7は、Sn金属層14も有している。略単一の金属成分で形成される金属層は、接合時における反応開始温度以上の融点を有する。従って、接合層7は、リペアや他部品の実装などのために再度リフローが行われた場合に、再溶融することを抑制できる。
【0048】
接合層7は、発光素子3側に形成されたNiP下地層11及びNiSn合金層13と、基板2側に形成されたNiP下地層21及びNiSn合金層23と、を有し、NiSn合金層13は、NiP下地層11のNiと、Snとの合金によって構成され、NiSn合金層23は、NiP下地層21のNiと、Snとの合金によって構成され、NiSn合金層23は、NiSn合金層13より薄い。基板2がフレキシブル基板であった場合、基板2側の端子にかかる応力の影響によって合金層破断が起きやすくなる。しかし、NiSn合金層23が均一で薄いため、このような破断を起き難くすることができる。このような、基板2側のNiSn合金層23は、1μm以下の厚みにて連続的に広がるという特徴的な層構造を有している。
【0049】
上述の実施形態に係る接合構造1を実施例1として製造した。当該実施例に係る接合構造を得るための実験条件について説明する。まず、発光素子のφ15μmの大きさの電極に対し、無電解めっきという方法により、1μmの厚さのNiPの下地層及び6μmの厚さのSnの金属層を形成した。また、当該バンプをギ酸リフロー炉により加熱することでアニール処理を行った。基板の15×20μmの大きさの電極に対し、無電解めっきという方法により、1μmの厚さのNiPの下地層及び4μmの厚さのBiの金属層を形成した。発光素子と基板を各バンプの位置で重ね合わせ、180℃で加熱しながら圧力を付与した。
【0050】
実施例1として同じ条件で二つの接合構造を製造したが、いずれの接合構造においても、Sn金属層14及びBi金属層16が確認された。また、放射状に広がるNiSn合金層13が確認された。また、基板側のNiSn合金層23が確認された。
【0051】
[第2実施形態]
図7を参照して、第2実施形態に係る接合構造100について説明する。図7は、第2実施形態に係る接合構造の概略断面図である。接合層107は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層107は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiSn合金層23と、を有する。また、接合層107は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiSn合金層23との間に、SnBi共晶層60を有する。
【0052】
SnBi共晶層60は、Sn成分とBi成分とが混合した層である。接合時において、Sn成分とBi成分とが互いに略均一に混ざり合うことで、SnBi共晶層60が形成される。SnBi共晶層60の融点は、Sn金属層14及びBi金属層16(図3参照)の融点よりも低い。
【0053】
このようなSnBi共晶層60は、発光素子3のバンプ9の形成時において、図4(d)に示すようなアニール処理を行わずに発光素子3と基板2とを接合することで、形成される。すなわち、図4(c)に示すように、Snの金属層32にNiSn合金層33が存在していない状態で、発光素子3のバンプ9と基板2のバンプ8とを接合する。この場合、接合中のNi成分のSn成分に対する拡散性は、予めNiSn合金層33が存在している第1実施形態に比して、低い。従って、Sn成分とBi成分とが混ざり合い、SnBi共晶層60が形成される。
【0054】
SnBi共晶層60が形成されるため、Bi成分と混ざり合ったSn成分は、基板2側へも移動する。一方、Bi成分とNiP下地層21との間では合金化の反応が進まない。従って、基板2側のNiP下地層21とSn成分との間で合金化の反応が進む。基板2側のNiP下地層21を覆う様に、NiSn合金層23が形成され、且つ、P含有層22が形成される。第2実施形態に係る接合構造100においても、基板2側のNiSn合金層23は、発光素子3側のNiSn合金層13に比して、均一で薄い層となる。BiがSnと置き換わってからNiとSnの合金層が形成されるためである。従って、基板2がフレキシブル基板であった場合であっても、NiSn合金層23が均一で薄いため、応力による破断を起き難くすることができる。
【0055】
以上のように、接合構造100は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造100であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層107と、を備える。接合層107は、第1の接合金属成分(ここではSn成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではBi成分)と、を含有する。
【0056】
接合層107が、互いに異なる第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分を含有する場合、接合時における融点を低下させることができる。これにより、発光素子3と基板2とを低温で接合することができる。以上により、適切な状態で発光素子3と基板2とを接合することができる。
【0057】
接合層107は、NiSn合金層13,23を有する。NiSn合金層13,23は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分であるSn成分との合金によって構成されている。このようにNiSn合金層13,23が形成されることで、接合層107は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。特に、接合層107は、発光素子3側及び基板2側に一対の合金層13,23を有する。これは、接合時には、Sn成分の金属層32を有していない基板2側へSn成分が移動し、NiSn合金層23が形成されたことを意味する。このように、基板2側では、Sn成分とBi成分が混ざり合って共晶層が形成される事に代えて、Sn成分及びNi成分によってNiSn合金層23が形成される。これにより、接合層107は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。
【0058】
接合層107は、Sn成分とBi成分とが混合したSnBi共晶層60を有する。
【0059】
第2の実施形態に係る接合構造100を実施例2として製造した。ここでは、発光素子のバンプ形成時にアニール処理を行わない点以外は、第1の実施形態に対応する実施例1と同様の条件とした。なお、基板2に対する発光素子3の押し付けの荷重は、1チップ当たり0.05gである。
【0060】
実施例2では、SnBi共晶層60が形成されることが確認された。また、発光素子3側においてSnBi共晶層6の境界に放射状に広がるNiSn合金層13が形成されることが確認された。また、基板2側においてSnBi共晶層6の境界にNiSn合金層23が形成されることが確認された。
【0061】
[第3実施形態]
図8を参照して、第3実施形態に係る接合構造200について説明する。図8は、第3実施形態に係る接合構造200の概略断面図である。接合層207は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層207は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiSn合金層23と、を有する。また、接合層207は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiSn合金層23との間に、Sn金属層14と、SnBi共晶層60と、を有する。
【0062】
電極4と電極6とが対向する領域には、Sn金属層14が主に形成されている。そして、SnBi共晶層60は、Sn金属層14の周囲に形成される。すなわち、SnBi共晶層60は、Sn金属層14によって接合層207の外周部へ押し出されるような態様で配置されている。なお、図8に示す形態では、Sn成分が支配的であるため、Sn金属層14が形成されている。ただし、Sn成分とBi成分の量の関係性などから、Sn金属層14に代えてBi金属層16が形成されてもよく、あるいは、Sn金属層14とBi金属層16が両方形成されてもよい。
【0063】
このような接合層207は、第2実施形態に係る接合構造100の製造条件に対し、基板2に対する発光素子3の押し付け圧力を増加させることによって、形成される。例えば、第2実施形態の1チップ当たりの押し付けの荷重が0.001~1g、好ましくは0.01~0.06gである一方、第3実施形態の1チップ当たりの押し付けの荷重は1~10g、好ましくは2~8gに設定される。これにより、接合時には、Sn成分とBi成分が混ざり合った液層部分は、Bi成分と混ざり合う前のSn金属層に押されることで、外周部へ押し出される。接合層207が冷えて固化することで、Sn金属層14の周囲にSnBi共晶層60が形成される。なお、発光素子3と基板2の間に予め定められた厚みのスペーサーを入れることで発光素子3と基板2との間の距離を一定に制御してもよい。スペーサーの材料はSi、SUS、樹脂(PEEK等)などの耐熱性と寸法加工精度の高い材料が好ましい。
【0064】
以上のように、接合構造200は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造200であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層207と、を備える。接合層207は、第1の接合金属成分(ここではSn成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではBi成分)と、を含有する。
【0065】
接合層207が、互いに異なる第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分を含有する場合、接合時における融点を低下させることができる。これにより、発光素子3と基板2とを低温で接合することができる。以上により、適切な状態で発光素子3と基板2とを接合することができる。
【0066】
接合層207は、NiSn合金層13,23を有する。NiSn合金層13,23は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分であるSn成分との合金によって構成されている。第3実施形態に係る接合構造200においても、基板2側のNiSn合金層23は、発光素子3側のNiSn合金層13に比して、均一で薄い層となる。これは、BiがSnと置き換わってからNiとSnの合金層が形成されるためである。従って、基板2がフレキシブル基板であった場合であっても、NiSn合金層23が均一で薄いため、応力による破断を起き難くすることができる。
【0067】
接合層207は、略単一の金属成分で形成される金属層と、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分とが混合した共晶層と、を有する。金属層は、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分の少なくとも一方の金属成分であるSn成分によってSn金属層14として形成される。SnBi共晶層60は、Sn金属層14の周囲に形成される。この場合、接合層207は、融点が低く脆いSnBi共晶層60を外周側へ配置しておき、融点が高く強度の高いSn金属層14を本体部として中央側へ配置しておくことができる。このように、接合層207は、Sn金属層14を本体部として有しているため、リペアや他部品の実装などのために再度リフローが行われた場合に、再溶融することを抑制でき、且つ、構造体としての信頼性を高めることができる。
【0068】
第3の実施形態に係る接合構造200を実施例3として製造した。ここでは、基板2に対する発光素子3の押し付けの荷重が1チップ当たり4gである点以外は、実施例2の接合構造を形成するときと同様の条件とした。
【0069】
実施例3では、中央付近にSn金属層14が形成され、その周囲にSnBi共晶層60が形成されていることが確認された。また、放射状に広がるNiSn合金層13が確認された。また、基板2側のNiSn合金層23が確認された。
【0070】
[第4実施形態]
図9を参照して、第4実施形態に係る接合構造300について説明する。図9は、発光素子3側の第1の接合金属としてBiを用い、基板2側の接合金属としてSnを用いた場合の第4実施形態に係る接合構造の概略断面図である。接合層7は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層7は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiSn合金層23と、を有する。NiSn合金層23は、NiP下地層21の周囲において放射状に形成されている。すなわち、NiSn合金層23は、局所的に大きく突出した部分と、窪んだ部分とが形成される。NiSn合金層23のこのような放射状の形状は、予め基板2の金属層42と下地層41とをアニール処理することによって形成される(図5(d)参照)。P含有層22は、Sn成分とNiP成分との間で反応してNiSn合金層23が形成されることに伴って形成された層である。
【0071】
発光素子3側のNiSn合金層13は、発光素子3の下地層31のNi成分と、Sn成分とが反応することによって形成された合金層である。このときのSn成分は、基板2側のSn成分がBi成分内を発光素子3側まで拡散することによって、発光素子3側のNi成分と反応する。発光素子3側のSn成分は、基板2側よりも少ない。従って、発光素子3側のNiSn合金層13は、基板2側のNiSn合金層23よりも薄く形成される。また、発光素子3側のP含有層12も、基板2側のP含有層22より薄くなる。発光素子3側のNiSn合金層13は、均一で薄い層となるため、次のような効果が得られる。基板2がフレキシブル基板であった場合、基板2側の端子にかかる応力の影響によって合金層破断が起きやすくなる。しかし、NiSn合金層13が均一で薄いため、このような破断を起き難くすることができる。
【0072】
金属層は、略単一の金属成分で形成される層である。ここで、略単一の金属成分で形成されている状態とは、単位体積当たりの中に、金属成分が95質量%以上含まれている状態である。接合層7は、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分のうち、合金層とならなかった方の接合金属成分で形成される金属層を少なくとも有する。合金層としてNiSn合金層13,23が形成されたため、接合層7は、Bi金属層16を少なくとも有する。本実施形態では、接合層7は、合金層となったSn成分の金属層であるSn金属層14も有する。
【0073】
Sn金属層14及びBi金属層16は、次のような理由によって形成される。すなわち、基板2が予めアニール処理がなされることにより、接合開始の時点で、Snの金属層42にはNiSnの合金層43が存在している。従って、接合を開始したとき、Sn成分とBi成分との反応は、Sn成分内に拡散したNi成分によって阻害される。従って、Sn成分とBi成分は均一に混ざり合わない。そして、部分的にSnリッチな部分が残り、当該部分がSn金属層14となる。また、部分的にBiリッチな部分が残り、当該部分がBi金属層16となる。
【0074】
なお、基板2と発光素子3との間のギャップが狭く、接合体の流動性が低いことも、Sn成分とBi成分が均一に混ざりにくい原因となる可能性がある。例えば、平面方向において隣合う電極6同士の間の距離が100μm以下であるため、基板2と発光素子3との間のギャップは、ショート防止の観点から50μm以下に抑えられる場合がある。
【0075】
発光素子3と基板2とは、接合層7を介して接合されている。また、発光素子3の電極6と基板2の電極4とは、接合層7を介して電気的に接続されている。接合層7は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有する。このように、接合層7が、互いに異なる第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分を含有する場合、接合時における融点を低下させることができる。これにより、発光素子3と基板2とを低温で接合することができる。以上により、適切な状態で発光素子3と基板2とを接合することができる。
【0076】
接合層7は、NiSn合金層13,23を有する。NiSn合金層13,23は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分であるSn成分との合金によって構成されている。このように、接合層7がNiSn合金層13,23を有することは、接合層7の接合時に、Sn金属層の中にNi成分が拡散されることを示す。この場合、Sn成分とBi成分が混ざり合うことを抑制し、Sn金属層14及びBi金属層16を形成し易くなる。
【0077】
特に、接合層7は、発光素子3側及び基板2側に一対の合金層13,23を有する。これは、接合時には、Sn成分の金属層42を有していない発光素子3側へSn成分が移動し、NiSn合金層13が形成されたことを意味する。この場合、発光素子3側のNi成分もSn成分中に拡散することで、Sn成分とBi成分が混ざり合うことを更に抑制できる。また、発光素子3側では、Sn成分とBi成分が混ざり合って共晶層が形成される事に代えて、Sn成分及びNi成分によってNiSn合金層13が形成される。これにより、接合層7は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。
【0078】
第4の実施形態に係る接合構造300を実施例4として製造した。発光素子のφ15μmの大きさの電極に対し、無電解めっきという方法により、1μmの厚さのNiPの下地層及び4μmの厚さのBiの金属層を形成した。基板の15×20μmの大きさの電極に対し、無電解めっきという方法により、1μmの厚さのNiPの下地層及び6μmの厚さのSnの金属層を形成した。また、当該バンプをギ酸リフロー炉により加熱することでアニール処理を行った。発光素子と基板を各バンプの位置で重ね合わせ、180℃で加熱しながら圧力を付与した。
【0079】
実施例4では、いずれの接合構造においても、Sn金属層14及びBi金属層16が確認された。また、放射状に広がるNiSn合金層23が確認された。また、発光素子側のNiSn合金層13が確認された。
【0080】
[第5実施形態]
図10を参照して、第5実施形態に係る接合構造400について説明する。図10は、発光素子3側の第1の接合金属としてSnを用い、基板2側の接合金属としてInを用いた場合の第5実施形態に係る接合構造の概略断面図である。接合層7は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層7は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiIn合金層423と、を有する。NiSn合金層13は、NiP下地層11の周囲において放射状に形成されている。すなわち、NiSn合金層13は、局所的に大きく突出した部分と、窪んだ部分とが形成される。NiSn合金層13のような放射状の形状は、予め発光素子3の金属層32と下地層31とをアニール処理することによって形成される。(図4(d)参照)。NiIn合金層423は、NiP下地層21の周囲において放射状に形成されている。すなわち、NiIn合金層423は、局所的に大きく突出した部分と、窪んだ部分とが形成される。NiIn合金層423のような放射状の形状は、予め基板2の金属層42と下地層41とをアニール処理することによって形成される(図5(d)参照)。P含有層12は、Sn成分とNiP成分との間で反応してNiSn合金層13が形成されることに伴って形成された層である。P含有層22は、In成分とNiP成分との間で反応してNiIn合金層423が形成されることに伴って形成された層である。
【0081】
金属層は、略単一の金属成分で形成される層である。ここで、略単一の金属成分で形成されている状態とは、単位体積当たりの中に、金属成分が95質量%以上含まれている状態である。接合層7は、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分のうち、合金層とならなかった方の接合金属成分で形成される金属層を少なくとも有する。合金層としてNiSn合金層13、NiIn合金層423が形成されたため、接合層7は、In金属層416を少なくとも有する。本実施形態では、接合層7は、合金層となったSn成分の金属層であるSn金属層14も有する。
【0082】
Sn金属層14及びIn金属層416は、次のような理由によって形成される。すなわち、発光素子3と基板2が予めアニール処理がなされることにより、接合開始の時点で、発光素子3のSnの金属層32にはNiSnの合金層33が存在し、基板2のInの金属層42にはNiIn合金層(図5(d)のNiSnの合金層43と同趣旨の合金層)が存在している。従って、接合を開始したとき、Sn成分とIn成分の反応は、Sn成分内およびIn成分内に拡散したNiによって阻害される。従って、Sn成分とIn成分は均一に混ざり合わない。そして、部分的にInリッチな部分が残り、当該部分がIn金属層416となる。
【0083】
なお、基板2と発光素子3との間のギャップが狭く、接合体の流動性が低いことも、Sn成分とIn成分が均一に混ざりにくい原因となる可能性がある。例えば、平面方向において隣合う電極6同士の間の距離が100μm以下であるため、基板2と発光素子3との間のギャップは、ショート防止の観点から50μm以下に抑えられる場合がある。
【0084】
発光素子3と基板2とは、接合層7を介して接合されている。また、発光素子3の電極6と基板2の電極4とは、接合層7を介して電気的に接続されている。接合層7は、第1の接合金属成分と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分と、を含有する。このように、接合層7が、互いに異なる第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分を含有する場合、接合時における融点を低下させることができる。これにより、発光素子3と基板2とを低温で接合することができる。以上により、適切な状態で発光素子3と基板2とを接合することができる。
【0085】
接合層7は、NiSn合金層13、NiIn合金層423を有する。NiSn合金層13、NiIn合金層423は、それぞれ、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分であるSn、第2の接合金属成分であるIn成分との合金によって構成されている。このように、接合層7がNiSn合金層13、NiIn合金層423を有することは、接合層7の接合時に、Sn金属層の中にNi成分が拡散されることを示す。この場合、Sn成分とIn成分が混ざり合うことを抑制し、Sn金属層14及びIn金属層416を形成し易くなる。
【0086】
第5の実施形態に係る接合構造400を実施例5として製造した。発光素子のφ15μmの大きさの電極に対し、無電解めっきという方法により、1μmの厚さのNiPの下地層及び6μmの厚さのSnの金属層を形成した。基板の15×20μmの大きさの電極に対し、無電解めっきという方法により、1μmの厚さのNiPの下地層及び4μmの厚さのInの金属層を形成した。また、発光素子及び基板のバンプをギ酸リフロー炉により加熱することでアニール処理を行った。発光素子と基板を各バンプの位置で重ね合わせ、150℃で加熱しながら圧力を付与した。
【0087】
実施例5では、いずれの接合構造においても、Sn金属層14及びIn金属層416が確認された。また、発光素体側に放射状に広がるNiSn合金層13が確認された。また、基板側に放射状に広がるNiIn合金層423が確認された。
【0088】
[第6実施形態]
図11を参照して、第6実施形態に係る接合構造500について説明する。図11は、発光素子3側の第1の接合金属としてBiを用い、基板2側の第2の接合金属としてSnを用いた場合の第6実施形態に係る接合構造の概略断面図である。第6実施形態に係る接合構造500は、基板2側のNiSn合金層23が放射状に広がり、発光素子3側のNiSn合金層13が放射状に広がっていない点で、第2実施形態に係る接合構造100と異なっている。なお、第6実施形態についての説明のうち、第2実施形態と共通する箇所については省略する。接合層107は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層107は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiSn合金層23と、を有する。また、接合層107は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiSn合金層23との間に、SnBi共晶層60を有する。
【0089】
このようなSnBi共晶層60は、基板2のバンプ8の形成時において、図5(d)に示すようなアニール処理を行わずに発光素子3と基板2とを接合することで、形成される。すなわち、図5(c)に示すように、Snの金属層42に合金層43が存在していない状態で、発光素子3のバンプ9と基板2のバンプ8とを接合する。この場合、接合中のNi成分のSn成分に対する拡散性は、予め合金層43が存在している第4実施形態に比して、低い。従って、Sn成分とBi成分とが混ざり合い、SnBi共晶層60が形成される。
【0090】
SnBi共晶層60が形成されるため、Bi成分と混ざり合ったSn成分は、発光素子3側へも移動する。一方、Bi成分とNiP下地層11との間では合金化の反応が進まない。従って、発光素子3側のNiP下地層11とSn成分との間で合金化の反応が進む。発光素子3側のNiP下地層11を覆う様に、NiSn合金層13が形成され、且つ、P含有層12が形成される。第6実施形態に係る接合構造500においても、発光素子3側のNiSn合金層13は、基板2側のNiSn合金層23に比して、均一で薄い層となる。BiがSnと置き換わってからNiとSnの合金層が形成されるためである。
【0091】
以上のように、接合構造500は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造500であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層107と、を備える。接合層107は、第1の接合金属成分(ここではBi成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではSn成分)と、を含有する。
【0092】
接合層107は、NiSn合金層13,23を有する。NiSn合金層13,23は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分であるSn成分との合金によって構成されている。このようにNiSn合金層13,23が形成されることで、接合層107は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。特に、接合層107は、発光素子3側及び基板2側に一対の合金層13,23を有する。これは、接合時には、Sn成分の金属層42を有していない発光素子3側へSn成分が移動し、NiSn合金層13が形成されたことを意味する。このように、発光素子3側では、Sn成分とBi成分が混ざり合って共晶層が形成される事に代えて、Sn成分及びNi成分によってNiSn合金層13が形成される。これにより、接合層107は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。
【0093】
接合層107は、Sn成分とBi成分とが混合したSnBi共晶層60を有する。
【0094】
[第7実施形態]
図12を参照して、第7実施形態に係る接合構造600について説明する。図12は、発光素子3側の第1の接合金属としてSnを用い、基板2側の第2の接合金属としてInを用いた場合の第7実施形態に係る接合構造の概略断面図である。第7実施形態に係る接合構造600は、発光素子3側のNiSn合金層13が放射状に広がり、基板2側にNiIn合金層423が放射状に広がるように形成されている点で、第2実施形態に係る接合構造100と異なっている。なお、第7実施形態についての説明のうち、第2実施形態と共通する箇所については省略する。接合層107は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層107は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiIn合金層423と、を有する。また、接合層107は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiIn合金層423との間に、SnIn共晶層460を有する。
【0095】
SnIn共晶層460は、Sn成分とIn成分とが混合した層である。接合時において、Sn成分とIn成分とが互いに略均一に混ざり合うことで、SnIn共晶層460が形成される。SnIn共晶層460の融点は、Sn金属層14及びIn金属層416(図10参照)の融点よりも低い。
【0096】
このようなSnIn共晶層460は、発光素子3のバンプ9及び基板2のバンプ8の形成時において、図4(d)及び図5(d)に示すようなアニール処理を行わずに発光素子3と基板2とを接合することで、形成される。すなわち、図4(c)及び図5(d)に示すように、Snの金属層32,42にNiSn合金層33及び合金層43が存在していない状態で、発光素子3のバンプ9と基板2のバンプ8とを接合する。この場合、接合中のNi成分のSn成分に対する拡散性は、予めNiSn合金層33及び合金層43が存在している第5実施形態に比して、低い。従って、Sn成分とIn成分とが混ざり合い、SnIn共晶層460が形成される。
【0097】
SnIn共晶層460が形成されるため、In成分と混ざり合ったSn成分は、基板2側へも移動する。Sn成分と混ざり合ったIn成分は、発光素子3側へも移動する。基板2側のNiP下地層21とIn成分との間で合金化の反応が進む。基板2側のNiP下地層21を覆う様に、NiIn合金層423が形成され、且つ、P含有層22が形成される。第7実施形態に係る接合構造600では、NiIn合金層423は、発光素子3側のNiSn合金層13と同様に放射状に広がるような形状を有する。
【0098】
以上のように、接合構造600は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造600であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層107と、を備える。接合層107は、第1の接合金属成分(ここではSn成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではIn成分)と、を含有する。
【0099】
接合層107は、NiSn合金層13及びNiIn合金層423を有する。NiSn合金層13及びNiIn合金層423は、それぞれ、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分であるSn成分及び第2の接合金属成分であるIn成分との合金によって構成されている。このようにNiSn合金層13及びNiIn合金層423が形成されることで、接合層107は、構造体として脆い共晶層の割合を減らすことができる。
【0100】
接合層107は、Sn成分とIn成分とが混合したSnIn共晶層460を有する。
【0101】
[第8実施形態]
図13を参照して、第8実施形態に係る接合構造700について説明する。図13は、発光素子3側の第1の接合金属としてBiを用い、基板2側の第2の接合金属としてSnを用いた場合の第8実施形態に係る接合構造700の概略断面図である。第8実施形態に係る接合構造700は、基板2側のNiSn合金層23が放射状に広がり、発光素子3側のNiSn合金層13が放射状に広がっていない点で、第3実施形態に係る接合構造200と異なっている。なお、第8実施形態についての説明のうち、第3実施形態と共通する箇所については省略する。接合層207は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層207は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiSn合金層23と、を有する。また、接合層207は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiSn合金層23との間に、Sn金属層14と、SnBi共晶層60と、を有する。
【0102】
電極4と電極6とが対向する領域には、Sn金属層14が主に形成されている。そして、SnBi共晶層60は、Sn金属層14の周囲に形成される。すなわち、SnBi共晶層60は、Sn金属層14によって接合層207の外周部へ押し出されるような態様で配置されている。なお、図13に示す形態では、Sn成分が支配的であるため、Sn金属層14が形成されている。ただし、Sn成分とBi成分の量の関係性などから、Sn金属層14に代えてBi金属層16が形成されてもよく、あるいは、Sn金属層14とBi金属層16が両方形成されてもよい。
【0103】
このような接合層207は、第4実施形態に係る接合構造300の製造条件に対し、基板2に対する発光素子3の押し付け圧力を増加させることによって、形成される。なお、押し付けの荷重は、第3実施形態と同様である。
【0104】
以上のように、接合構造700は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造700であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層207と、を備える。接合層207は、第1の接合金属成分(ここではBi成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではSn成分)と、を含有する。
【0105】
接合層207は、NiSn合金層13,23を有する。NiSn合金層13,23は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分及び第2の接合金属成分の一方の接合金属成分であるSn成分との合金によって構成されている。第8実施形態に係る接合構造700においても、発光素子3側のNiSn合金層13は、基板2側のNiSn合金層23に比して、均一で薄い層となる。
【0106】
[第9実施形態]
図14を参照して、第9実施形態に係る接合構造800について説明する。図14は、発光素子3側の第1の接合金属としてSnを用い、基板2側の第2の接合金属としてInを用いた場合の第9実施形態に係る接合構造800の概略断面図である。第9実施形態に係る接合構造800は、発光素子3側のNiSn合金層13が放射状に広がり、基板2側にNiIn合金層423が放射状に広がるように形成されている点で、第3実施形態に係る接合構造200と異なっている。なお、第9実施形態についての説明のうち、第3実施形態と共通する箇所については省略する。接合層207は、発光素子3側の電極6を覆うように、当該電極6側から順に、NiP下地層11と、P含有層12と、NiSn合金層13と、を有する。また、接合層207は、基板2側の電極4を覆うように、当該電極4側から順に、NiP下地層21と、P含有層22と、NiIn合金層423と、を有する。また、接合層207は、発光素子3側のNiSn合金層13と、基板2側のNiIn合金層423との間に、Sn金属層14と、SnIn共晶層460と、を有する。
【0107】
電極4と電極6とが対向する領域には、Sn金属層14が主に形成されている。そして、SnIn共晶層460は、Sn金属層14の周囲に形成される。すなわち、SnIn共晶層460は、Sn金属層14によって接合層207の外周部へ押し出されるような態様で配置されている。なお、図14に示す形態では、Sn成分が支配的であるため、Sn金属層14が形成されている。ただし、Sn成分とBi成分の量の関係性などから、Sn金属層14に代えてBi金属層16が形成されてもよく、あるいは、Sn金属層14とBi金属層16が両方形成されてもよい。
【0108】
このような接合層207は、第5実施形態に係る接合構造400の製造条件に対し、基板2に対する発光素子3の押し付け圧力を増加させることによって、形成される。なお、押し付けの荷重は、第3実施形態と同様である。
【0109】
以上のように、接合構造800は、発光素子3と基板2とを接合する接合構造800であって、発光素子3に形成された電極6と、基板2に形成された電極4と、電極6と電極4とを接合する接合層207と、を備える。接合層207は、第1の接合金属成分(ここではSn成分)と、当該第1の接合金属成分と異なる第2の接合金属成分(ここではIn成分)と、を含有する。
【0110】
接合層207は、NiSn合金層13及びNiIn合金層423を有する。NiSn合金層13及びNiIn合金層423は、下地金属成分であるNi成分と、第1の接合金属成分であるSn成分、及び第2の接合金属成分であるIn成分との合金によって構成されている。第9実施形態に係る接合構造800においても、NiSn合金層13及びNiIn合金層423は、両方とも放射状に広がる。
【0111】
接合層207は、略単一の金属成分で形成される金属層と、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分とが混合した共晶層と、を有する。金属層は、第1の接合金属成分と第2の接合金属成分の少なくとも一方の金属成分であるSn成分によってSn金属層14として形成される。SnIn共晶層460は、Sn金属層14の周囲に形成される。この場合、接合層207は、融点が低く脆いSnIn共晶層460を外周側へ配置しておき、融点が高く強度の高いSn金属層14を本体部として中央側へ配置しておくことができる。このように、接合層207は、Sn金属層14を本体部として有しているため、リペアや他部品の実装などのために再度リフローが行われた場合に、再溶融することを抑制でき、且つ、構造体としての信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0112】
1,100,200,300,400,500,600,700,800…接合構造、2…基板、3…発光素子、4…電極(第2の電極)、6…電極(第1の電極)、7,107,207…接合層、8,9…バンプ、11…NiP下地層(第1の下地層)、12,22…P含有層、21…NiP下地層(第2の下地層)、13…NiSn合金層(合金層、第1の合金層)、23…NiSn合金層(合金層、第2の合金層)、14…Sn金属層(金属層)、16…Bi金属層(金属層)、31,41…下地層、32,42…金属層、33,43…合金層、50…フラックス、60…SnBi共晶層(共晶層)、416…In合金層(金属層)、423…NiIn合金層(合金層、第2の合金層)、460…SnIn共晶層(共晶層)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14