(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】冷却装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20240305BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240305BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G03G21/16 104
H05K7/20 H
G03G21/20
(21)【出願番号】P 2020037512
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】木内 賢二
(72)【発明者】
【氏名】深田 聡
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224886(JP,A)
【文献】特開2007-111908(JP,A)
【文献】特開2016-224399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0109290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/16 -21/18
G03G 21/20
B41J 2/385- 2/415
B41J 2/43 - 2/465
B41J 2/47
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹き出し口を有する複数の送風ファンと、
前記複数の送風ファンを一方向に長い冷却対象物の長手方向に沿って横一列に配置して収納し、前記冷却対象物の長手方向と向き合う対向面に前記複数の送風ファンの吹き出し口が個別に接続される複数の開口部が設けられた筐体と、
を備え、
前記複数の送風ファンの
うち横一列の一方の端部又は両端部に配置された送風ファンは、前記吹き出し口を
、それ以外の他の送風ファンの吹き出し口とは異なる方向
であって前記一方の端部の外側又は前記両端部の各外側に向けて設置されて
おり、
前記他の送風ファンは、前記吹き出し口を前記冷却対象物の長手方向の部分と正対する方向に向けて配置されている冷却装置。
【請求項2】
前記複数の送風ファンがシロッコファンである請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記複数の送風ファンのうち
前記吹き出し口を前記異なる方向に向けて配置された送風ファンの横に配置された1つの送風ファンが、残りの他の送風ファンよりも冷却対象物から離れて後退した位置に配置されている請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記複数の送風ファンのうち前記後退した位置に配置される送風ファンの吹き出し口が接続される開口部は、前記横一列の方向に沿う開口幅が、残りの他の送風ファンの吹き出し口が接続される他の開口部の開口幅よりも広い請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記筐体の前記対向面に、前記冷却対象物に接近して空気を吹き付けるよう配置されるとともに前記開口部から排出される空気を通す通気空間に整流板が設けられた接続ダクトを備え、
前記接続ダクトの通気空間のうち前記吹き出し口を前記異なる方向に向けて配置される送風ファンと重なる空間領域に前記整流板を設けていない請求項1乃至4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
一方向に長い冷却対象物と、前記冷却対象物を冷却する冷却装置とを備え、
前記冷却装置が請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷却装置で構成されている画像形成装置。
【請求項7】
前記冷却対象物は、トナー像を定着する定着装置において回転する回転体であり、
前記冷却装置は、前記複数の送風ファンを前記回転体の回転軸方向に沿って横一列に配置している請求項
6に記載の
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷却装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空冷式の冷却装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、軸方向の両側から空気を吸い込む3つのシロッコファンを収納するよう横一列に設けられた3つの収納部と、互いに異なる位置に形成された3つの吹出口と、3つの収容部と3つの吹出口とを個別に接続する3つの通気路、3つの収容部と対向する面部分にそれぞれ形成される第1吸気口および第2吸気口等を有するケースを備え、そのケースにおける3つの収納部に収納した上記シロッコファンが回転して軸方向の両側にある第1吸気口と第2吸気口からそれぞれ吸気した空気を、3つの通気路をそれぞれ通して3つの吹出口からそれぞれ吐出させて被冷却体に突き当てることにより、その被冷却体(投影型画像表示装置の空間光変調素子)を冷却する冷却装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-26422号公報(段落0033-0037、0042、
図1-10など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、冷却対象物の長手方向に沿って横一列に並べるよう配置され、吹き出し口を有する複数の送風ファンについて、その吹き出し口のすべてを互いに同じ方向に向けて配置する場合に比べて、その長手方向に沿う風速分布の不足部分を容易に補足することができる冷却装置および画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(1)は、
吹き出し口を有する複数の送風ファンと、
前記複数の送風ファンを一方向に長い冷却対象物の長手方向に沿って横一列に配置して収納し、前記冷却対象物の長手方向と向き合う対向面に前記複数の送風ファンの吹き出し口が個別に接続される複数の開口部が設けられた筐体と、
を備え、
前記複数の送風ファンのうち横一列の一方の端部又は両端部に配置された送風ファンは、前記吹き出し口を、それ以外の他の送風ファンの吹き出し口とは異なる方向であって前記一方の端部の外側又は前記両端部の各外側に向けて設置されており、
前記他の送風ファンは、前記吹き出し口を前記冷却対象物の長手方向の部分と正対する方向に向けて配置されている冷却装置である。
【0007】
この発明(2)は、上記発明(1)の冷却装置において、前記複数の送風ファンがシロッコファンであるものである。
【0010】
この発明(3)は、上記発明(1)又は(2)の冷却装置において、前記複数の送風ファンのうち前記吹き出し口を前記異なる方向に向けて配置された送風ファンの横に配置された1つの送風ファンが、残りの他の送風ファンよりも冷却対象物から離れて後退した位置に配置されているものである。
【0011】
この発明(4)は、上記発明(3)の冷却装置において、前記複数の送風ファンのうち前記後退した位置に配置される送風ファンの吹き出し口が接続される開口部は、前記横一列の方向に沿う開口幅が、残りの他の送風ファンの吹き出し口が接続される他の開口部の開口幅よりも広いものである。
【0012】
この発明(5)は、上記発明(1)から(4)のいずれかの冷却装置において、前記筐体の前記対向面に、前記冷却対象物に接近して空気を吹き付けるよう配置されるとともに前記開口部から排出される空気を通す通気空間に整流板が設けられた接続ダクトを備え、
前記接続ダクトの通気空間のうち前記吹き出し口を前記異なる方向に向けて配置される送風ファンと重なる空間領域に前記整流板を設けていないものである。
【0013】
また、この発明(6)は、一方向に長い冷却対象物と、前記冷却対象物を冷却する冷却装置とを備え、前記冷却装置が上記発明(1)から(5)のいずれかの冷却装置で構成されている画像形成装置である。
【0014】
この発明(7)は、上記発明(6)の画像形成装置において、前記冷却対象物が、トナー像を定着する定着装置において回転する回転体であり、前記冷却装置は、前記複数の送風ファンを前記回転体の回転軸方向に沿って横一列に配置しているものである。
【発明の効果】
【0015】
上記発明(1)の冷却装置によれば、冷却対象物の長手方向に沿って横一列に並べるよう配置され、吹き出し口を有する複数の送風ファンについて、その吹き出し口のすべてを互いに同じ方向に向けて配置する場合に比べて、その長手方向に沿う風速分布の不足部分を容易に補足することができる。
【0016】
上記発明(2)によれば、軸流ファンである場合に比べて、回転動作時の騒音を低減させつつ上記風速分布の不足部分を容易に補足することができる。
【0019】
上記発明(3)によれば、横に配置された1つの送風ファンを後退した位置に配置しない場合に比べて、異なる方向に向けた送風ファンにより生じる風速分布の不足部分を補足することができる。
【0020】
上記発明(4)によれば、後退した位置に配置される送風ファンの吹き出し口が接続される開口部の開口幅を他の開口部と同じ幅にした場合に比べて、異なる方向に向けた送風ファンにより生じる風速分布の不足部分をより確実に補足することができる。
【0021】
上記発明(5)によれば、接続ダクトの通気空間のうち吹き出し口を異なる方向に向けて配置される送風ファンと重なる空間領域に整流板を設けた場合に比べて、その整流板を設けることによる風速分布の乱れが発生することを回避することができる。
【0022】
上記発明(6)の画像形成装置によれば、冷却対象物の長手方向に沿って横一列に並べるよう配置され、吹き出し口を有する複数の送風ファンが吹き出し口のすべてを互いに同じ方向に向けて配置した冷却装置を備えた場合に比べて、冷却装置において冷却対象物の長手方向に沿う風速分布の不足部分を容易に補足した冷却を行うことができる。
【0023】
上記発明(7)によれば、定着装置の回転体を冷却するための冷却装置を設置する際に余裕のある設置スペースを確保できない場合であっても、定着装置の回転体をその回転軸方向に沿う風速分布の不足部分を容易に補足して冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1に係る画像形成装置の全体を示す概要図である。
【
図2】
図1の画像形成装置の一部(定着装置、冷却装置等)を示す概要図である。
【
図3】(A)は実施の形態1に係る冷却装置を示す概略斜視図、(B)は(A)の冷却装置の一部を示す概略側面図である。
【
図4】
図2の冷却装置のQ-Q線に沿う概略断面図である。
【
図5】
図2の冷却装置の風速分布の結果を示す簡略の風速コンター図である。
【
図6】実施の形態2に係る冷却装置と定着装置を示す概要図である。
【
図7】(A)は
図6の冷却装置を示す概略斜視図、(B)は(A)の冷却装置の一部を示す概略側面図である。
【
図8】
図6の冷却装置のQ-Q線に沿う概略断面図である。
【
図9】
図6の冷却装置の風速分布の結果を示す簡略の風速コンター図である。
【
図10】比較参考例1の冷却装置における風速分布の結果を示す簡略の風速コンター図である。
【
図11】比較参考例2の冷却装置における風速分布の結果を示す簡略の風速コンター図である。
【
図12】比較参考例1の冷却装置と比較参考例2の冷却装置との風速分布の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
実施の形態1.
図1と
図2は、この発明の実施の形態1を示す図面である。
図1には実施の形態1に係る画像形成装置1の全体が示され、
図2にはその画像形成装置1の一部(定着装置、冷却装置等)が示されている。
【0027】
<画像形成装置>
画像形成装置1は、
図1に示されるように、所要の外観形状からなる筐体10の内部空間に、画像情報に基づくトナー像を形成する像形成装置2と、像形成装置2で形成されるトナー像を一時的に保持して搬送した後に用紙9に二次転写させる中間転写装置3と、中間転写装置3の二次転写を行う位置に供給すべき用紙9を収容して送り出す給紙装置4と、中間転写装置3で二次転写されたトナー像を用紙9に定着させる定着装置5等が配置されている。
【0028】
像形成装置2は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの像形成装置2Y,2M,2C,2Kにて構成されている。
【0029】
4つの像形成装置2(Y,M,C,K)は、ほぼ水平の方向に間隔をあけて配置された状態で、矢印Aで示す方向にそれぞれ回転する感光ドラム21を有している。
また像形成装置2(Y,M,C,K)はいずれも、その感光ドラム21の周囲に、使用するトナーの色が異なる以外は以下の機器を同様に配置して構成されている。その機器とは、感光ドラム21の外周面の像形成面を帯電させる帯電装置22、感光ドラム21の帯電後の像形成面に画像情報に応じた色成分の光を露光して静電潜像を形成する露光装置23、静電潜像を対応する色のトナーで現像してトナー像にする現像装置24(Y,M,C,K)、感光ドラム21の像形成面を清掃するドラム清掃装置26等である。
図1では、符号21から24,26をブラック(K)の像形成装置2Kのみに全部記載し、他の色の像形成装置2(Y,M,C)にはその一部を記載している。
【0030】
中間転写装置3は、筐体10の内部で像形成装置2(Y,M,C,K)の下方側に配置されている。中間転写装置3は、例えば、その像形成装置2(Y,M,C,K)における各感光ドラム21からトナー像がそれぞれ一次転写されて保持する無端状の中間転写ベルト31を備えている。
【0031】
中間転写ベルト31は、その内周面側に配置される複数の支持ロール32a~32fにより、像形成装置2(Y,M,C,K)の各一次転写位置を順次通過して矢印Bで示す方向に回転するよう支持されている。支持ロール32aは、例えば駆動ロールとして構成される。
また、中間転写ベルト31は、その内周面側のうち像形成装置2(Y,M,C,K)の各感光ドラム21と対向する外周面の位置(一次転写位置TP1)に対応する部分に、一次転写ロール等からなる一次転写装置33が配置されている。
【0032】
さらに、中間転写ベルト31は、その外周面側のうちバックアップロールとして機能する支持ロール32eと対向する位置(二次転写位置TP2)に二次転写ロール等からなる二次転写装置35が配置されている。また、中間転写ベルト31の支持ロール32aに支持される部分の外周面には、中間転写ベルト31の外周面を清掃するベルト清掃装置36が配置されている。
【0033】
給紙装置4は、筐体10の内部のうち下部側に配置されている。この給紙装置4は、例えば、複数枚の用紙9を所要の向きで積載して収容する積載板42を有する引き出し可能な収容体41と、収容体41の積載板42上に積載されている用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置43等で構成されている。
用紙9は、筐体10内での搬送が可能であってトナー像の転写および定着が可能な普通紙、コート紙、厚紙、薄紙等の記録媒体であればよく、その材質、形態等については特に制約されない。
【0034】
定着装置5は、筐体10の内部で中間転写装置3の二次転写位置TP2から用紙9の搬送方向下流側になる下方の位置に配置されている。定着装置5は、例えば、用紙9の導入口50aやその排出口50bが設けられた筐体50の内部空間に、加熱用回転体51、加圧用回転体52等の機器を配置して構成されている。
【0035】
加熱用回転体51は、例えば
図2等に示されるように、ベルト-パット形態の回転体として構成されており、具体的には無端状の定着ベルト53と、定着ベルト53の内周面側に、定着ベルト53の外周面を加圧用回転体52に押し当てる押当て体54、定着ベルト53を回転可能に押当て体54と協働して支持する複数の支持ロール55,56等で構成されている。押当て体54と支持ロール55,56は、その各内部に配置される加熱手段によりそれぞれ所要の温度に加熱されて維持される。また、支持ロール55は、図示しない駆動装置から動力を得て駆動する駆動ロールとして構成されており、定着ベルト53を矢印で示す方向に回転させる。
【0036】
加圧用回転体52は、例えばロール形態の加圧ロール57で構成されており、図示しない加圧機構により定着ベルト53を押当て体54に所要の圧力で押し付けるよう配置されている。また加圧ロール57は、図示しない駆動装置から動力を得て矢印で示す方向に回転駆動するよう構成されている。さらに加圧ロール57は、その表面温度が温度計測機58で測定されるようになっている。
【0037】
この定着装置5では、加熱用回転体51と加圧用回転体52が接触し合う部分(本例では定着ベルト53と加圧ロール57とが接触する部分)が、未定着像のトナー像を用紙9に定着させるための加熱、加圧等の処理をする定着処理部(ニップ部)FNとして構成されている。
【0038】
また、画像形成装置1においては、筐体10の内部に給紙搬送路Rt1、中継搬送路Rt2、排出搬送路Rt3等の用紙搬送路が配置されている。
【0039】
給紙搬送路Rt1は、給紙装置4にある用紙9を二次転写位置TP2に所要のタイミングで供給するよう搬送する用紙搬送路であり、例えば、用紙9を挟持して搬送する複数の搬送ロール44a~44cや、用紙9の搬送空間を確保して用紙9の搬送を案内する図示しない複数の案内部材等を配置して構成されている。
中継搬送路Rt2は、二次転写が終了した後の用紙9を定着装置5に導入させるよう中継して搬送する用紙搬送路であり、例えば、吸引式のベルト搬送装置46等を配置して構成されている。排出搬送路Rt3は、定着終了後の用紙9を筐体10における用紙9の排出口13まで搬送した後に図示しない収容部に排出させるよう搬送する用紙搬送路であり、複数の搬送ロール47a、47bや複数の案内部材等を配置して構成されている。
【0040】
<冷却装置>
さらに、画像形成装置1においては、
図1、
図2等に示されるように、筐体10の内部に、定着装置5における加圧ロール57を冷却するための冷却装置6が配置されている。
【0041】
冷却装置6は、
図3、
図4等に示されるように、吹き出し口65(65A,65B,65C)を有する3つの送風ファン60(60A,60B,60C)と、その送風ファン60A,60B,60Cを一方向に長い冷却対象物の一例である加圧ロール57の回転軸方向J(長手方向Dの一例)に沿って横一列に配置して収納する筐体70とを備えている。
【0042】
送風ファン60A,60B,60Cとしては、そのいずれも同じ種類からなるシロッコファン61を採用している。シロッコファン61は、遠心送風機の一種で多翼送風機ともいわれるものである。
【0043】
実施の形態1におけるシロッコファン61は、多数枚の羽根が円筒をなすよう配置される一方で中央部が吸気用空間として形成された構造からなる羽根車62を有し、その羽根車62が、上下面の一方(片面)に形成された円形等の開口形状からなる吸気口64と円筒状に曲がる側面の一部に突出するよう形成された矩形等の開口形状からなる吹き出し口65とを有する渦巻き型の筐体(ケーシング)63内に設置されたものである。またシロッコファン61は、羽根車62が筐体63内に配置された図示しない小型モータにより回転駆動されるようになっている。
【0044】
このシロッコファン61は、羽根車62が回転すると、筐体63の片面にある吸気口64から空気を吸気用空間に取り込んだ後にその空気を羽根車62の羽根により接線方向等に送って最終的に吹き出し口65から筐体63の外に排出させるよう作動する、片吸い込み型のものである。また、このシロッコファン61は、その吹き出し口65が、筐体63の側面において羽根車62の回転軸部の中心にして左右対称に存在することなく、その回転軸部の中心から左右一方の側にずれて片寄った状態で存在する開口になっている(
図4等を参照)。
【0045】
筐体70は、3つのシロッコファン61からなる送風ファン60A,60B,60Cを収納する長方体状の本体部71と、本体部71の長手方向Dに沿う側面のうち加圧ロール57の回転軸方向Jに沿って向き合う対向面72に設けられる複数の開口部73(73A,73B,73C)と、本体部71の長手方向Dにおける両端部の一方の側面部に設けられる空気取り入れ口74とを有している。
【0046】
本体部71は、3つの送風ファン60A,60B,60Cを加圧ロール57の回転軸方向Jに沿って横一列に配置して収納することが可能な最低限の収納スペースを確保することが可能な部分である。
その一方で、この本体部71は、収納スペースにおける冷却対象物の一例である加圧ロール57の回転軸方向Jに沿う幅寸法について、その加圧ロール57の少なくとも回転軸方向Jの冷却を要する部分の寸法と同じ寸法か又はそれ以下の寸法にせざるを得ない寸法上の制約を強いられるものである。換言すれば、この本体部71は、収納スペースにおける上記幅寸法について加圧ロール57の少なくとも回転軸方向Jの冷却を要する部分の寸法を超える余裕のある寸法に設定することができない部分になっている。
【0047】
また、実施の形態1における筐体70は、例えば冷却装置6の周囲に配置される他の装置や部品の存在により収納スペースを縮小させるような形状に変更させざるを得ない縮小用変形部71eを有している。実施の形態1における縮小用変形部71eは、他の部分(例えば背面部)に比べて窪んだ形状の変形部としている。
また、この筐体70は、シロッコファン61が上面に吸気口64を形成してなる上面側の片吸い込み型のシロッコファンであるため、送風ファン60A,60B,60Cの上方に吸気用の空間を確保することが可能な高さ寸法に設定されている。
【0048】
対向面72は、送風ファン60A,60B,60Cの各吹き出し口65A,65B,65Cが向き合う部分を有する大きさおよび形状からなる面部分である。実施の形態1における対向面72は、シロッコファン61の筐体63の高さ付近に接近した状態になるよう本体部71よりも先細り状に傾斜して絞られた端部の側面部として構成されている(
図2参照)。
【0049】
複数の開口部73A,73B,73Cは、送風ファン60A,60B,60Cの各吹き出し口65A,65B,65Cが個別に接続される開口部である。このため、開口部73A,73B,73Cは、吹き出し口65A,65B,65Cが互いに同じものであることに合わせて、原則として開口が同じ形状(例えば矩形)および面積からなるものであって同じ間隔をあけて設けられるものである。しかし、実施の形態1における開口部73A,73B,73Cは、後述する送風ファン60に関する特別な構成を採用することから、その少なくとも1つが異なる面積で構成されている。
【0050】
空気取り入れ口74は、
図4に二点鎖線で例示されるように、画像形成装置1の筐体10の側面等に設けられる吸気口から延びるよう配置された吸気ダクト81と接続されている。
【0051】
また、冷却装置6においては、
図3、
図4等に示されるように、筐体70の対向面72に、加圧ロール57に接近して空気を吹き付けるよう配置されるとともに開口部73A,73B,73Cから排出される空気を通す通気空間に整流板78が設けられた接続ダクト77を備えている。
【0052】
実施の形態1における接続ダクト77は、
図2,
図3等に示されるように、筐体70の対向面72における開口部73A,73B,73Cの高さ寸法と対向面72の長手方向Dの幅寸法とほぼ同じ高さおよび幅の寸法からなる細長い矩形状の接続口77aと、加圧ロール57の下部に向き合ってその回転軸方向Jにわたって細長い矩形状からなる空気の吹き出し口77bとを有している。この接続ダクト77は、その接続口77aと吹き出し口77bをほぼ平行して接続する通気空間が形成された、全体として長手方向Dに沿って一方向に長い形態の管状部材として構成されている。
また、この接続ダクト77は、
図4に示されるように、長手方向Dにおける端部の側面が、冷却対象の加圧ロール57の回転軸方向Jにおける冷却対象域の端部まで空気を吹き出すことが可能になるよう外側に開拡する形状の側面になっている。
【0053】
さらに、この接続ダクト77は、定着装置5の筐体50の内部に配置されており、その接続口77aを冷却装置6の筐体70における対向面72と接続している(
図2参照)。
図3(A)では、便宜上、接続ダクト77が筐体70における対向面72と離れた状態で示されている。また、この接続ダクト77は、その空気の吹き出し口が、定着装置5の筐体50の底面部に設置された気流ガイド部材59の入口側に接続されている。気流ガイド部材59は、加圧ロール57の下面部と対向する上面部に、加圧ロール57の下面部と所要の間隔をあけた円筒曲面状のガイド面59aが形成されている。
【0054】
また、この接続ダクト77においては、整流板78として、
図4に示されるように送風ファン60A,60Bの吹き出し口65A,65Bの片側の端部とほぼ向き合う位置に、2つの整流板78a,78bを配置している。整流板78a,78bは、通気空間を長手方向Dにおいて区切るように設けられている。
図4における符号79は、接続ダクト77の上面部と下面部を組み立て時に接続して支持する支柱部を示している。
【0055】
そして、この冷却装置6は、
図3(A)や
図4に示されるように、3つの送風ファン60A,60B,60Cのうちの1つの送風ファン60Cについて、その吹き出し口65Cが他の送風ファン60A,60Bの吹き出し口65A,65Bとは異なる方向に向くように設置している。
【0056】
つまり、この冷却装置6においては、送風ファン60A,60B,60Cのうち長手方向Dに沿う横一列の一方の端部に配置された送風ファン60Cの吹き出し口65Cを異なる方向に向けている。より具体的には、送風ファン60Cの吹き出し口65Cを横一列の一方の端部における外側に所要の角度で向けている一方で、それ以外の残りの送風ファン60A,60Bの吹き出し口65A,65Bを加圧ロール57と正対する方向に向けて配置している。
【0057】
ここで正対する方向とは、吹き出し口65A,65Bの開口の横方向の縁部が加圧ロール57の回転軸方向Jとほぼ平行する方向である。また、外側に向けるときの所要の角度とは、冷却装置6から吹き出される空気の長手方向Dにおける風速分布のうち不足する部分に空気を吹き付けるよう修正するために必要な角度であり、例えば、
図4に示されるように正対する方向(長手方向D)に対する交差角度(傾斜角度)αが18~22°の範囲内になる角度に設定される。
【0058】
また、この冷却装置6においては、
図3(A)や
図4に示されるように、異なる方向に向けて配置された送風ファン60Cの横に配置された1つの送風ファン60Bについて、他の送風ファン60A,60Cよりも加圧ロール57から所定の距離Lだけ離れて後退した位置に配置している。後退させる距離Lは、後退して配置する送風ファン60Bの吹き出し口65Bから排出される空気を特に長手方向Dに広げる必要な量に応じて設定されるが、実際には筐体70の収納スペースの制約がある下で任意の値に設定される。
【0059】
さらに、この冷却装置6においては、
図3(B)に示されるように、後退した位置に配置する送風ファン60Bの吹き出し口65Bが接続される開口部73Bについて、横一列の方向(長手方向D)に沿う開口幅Wbが他の開口部73A,73Cの開口幅Wa,Wcよりも広くなるよう構成されている。
【0060】
この場合、開口部73Bのうち特に吹き出し口65Cが外側に向けられた送風ファン60C寄りの端部を可能な範囲内でより多く広げるように構成するとよい。
またこの場合、後退配置させる送風ファン60Bの吹き出し口65Bと開口幅Wbを広げる開口部73Bとの端部どうしの隙間がそれぞれ発生するが、
図4に示されるように、その各隙間に接続用の側面板75a,75bをそれぞれ配置して接続した状態にしている。なお、送風ファン60Cの吹き出し口65Cにおける外側の端部と開口部73Cにおける外側の端部との間に生じる隙間についても、接続用の側面板75cを配置することで接続した状態にしている。
【0061】
ちなみに、この冷却装置6においては、
図3(A)や
図4に示されるように、接続ダクト77の通気空間のうち吹き出し口65Cを異なる方向に向けて配置される送風ファン60Cと長手方向Dにおいて位置的に重なる空間領域には、整流板78を設けていない。その重なる空間領域は、具体的には、接続ダクト77の送風ファン60Cに近い支柱部79のある位置から長手方向Dの端部に至るまでの範囲である。
【0062】
以上のように構成された冷却装置6は、画像形成動作の時期等の予め定めた所定の作動時期になると始動して、定着装置5における加圧ロール57を空冷により冷却する。
【0063】
すなわち、冷却装置6は、作動時期になると、3つのシロッコファン61からなる送風ファン60A,60B,60Cが回転始動して吸気作用と送風作用が発生する。
これにより、冷却装置6では、空気(
図2の矢付き破線)が筐体70の空気取り入れ口74から取り込まれて各送風ファン60A,60B,60Cの吸気口64をそれぞれ通して導入された後に各吹き出し口65A,65B,65Cからほぼ同じ風速でそれぞれ吹き出され(送風され)、最後に筐体70の開口部73A,73B,73Cをそれぞれ通して排出される。
続いて、筐体70の開口部73A,73B,73Cから排出された空気は、接続ダクト77に導入されて通過した後、接続ダクト77の吹き出し口77bから吹き出され、加圧ロール57の下部の回転軸方向Jに沿う全域に吹き付けられる。
【0064】
この結果、加圧ロール57が冷却される。加圧ロール57の下部に吹き付けられた空気は、定着装置5の筐体50内において加圧ロール57の下部と気流ガイド部材59の間の隙間を通過して加圧ロール57の後方に放出された後、例えば定着装置5等に配置される図示しない排気装置の排気作用により画像形成装置1の外部に排気される。
【0065】
そして、この冷却装置6の長手方向Dにおける風速分布をシミュレーションにより調べたところ、
図5に示されるような結果が得られた。このときのシミュレーションでは送風ファン60A,60B,60Cであるシロッコファン61の風量を約16m/秒の条件に設定した。また、
図5では、最も風速の早い分布の結果が得られた部分のみを、破線で囲むとともに網点を付した状態で簡略して示している。
【0066】
なお、
図5において上記破線で囲むとともに網点を付した状態で示した部分以外の部分(白色の部分)については、その状態で示した部分に比べて風速が遅くなっているものの送風の空気が回り込んで存在している。また、接続ダクト77では、支柱部79の気流の下流側になる部分における風速が支柱部79という物理的障害物がある関係でその支柱部79のない部分における風速に比べて遅い分布領域になるが、支柱部79が接続ダクト77の通気空間の占有容積が少なくかつ円柱状の構造物であるため、気流の回り込みが発生しやすく全体の冷却性能に大きな支障をおよぼすおそれが少ない。
【0067】
また比較のため、
図10に示されるように、送風ファン60Cの吹き出し口65Cを異なる方向に向けず、3つの送風ファン60A,60B,60Cの吹き出し口65A,65B,65Cをすべて加圧ロール57に正対する方向に向けて配置した比較参考例1の冷却装置600を用意した。この比較参考例1の冷却装置600は、送風ファン60Cの吹き出し口65Cの向きを変更した以外は実施の形態1に係る上記冷却装置6と同じ構成になっている。
また、この比較参考例1の冷却装置600についても、その長手方向Dにおける風速分布を同様に調べた。その結果は、
図5の図示内容と同様に簡略したうえで
図10に併せて示した。
【0068】
以上の風速分布の測定結果から、比較参考例1の冷却装置600では、3つの送風ファン60A,60B,60Cのうち横一列の端部に配置した送風ファン60Cからの送風による風速分布が他に比べて遅い風速分布の部分(不足部分)Epが存在しているのに対し(
図10)、実施の形態1に係る冷却装置6では、上記風速分布の不足部分Epが解消されて補足されていることがわかる(
図5)。
【0069】
したがって、上記冷却装置6によれば、加圧ロール57の回転軸方向J(長手方向D)に沿って横一列に並べるよう配置されて吹き出し口65A,65B,65Cを有する3つの送風ファン60A,60B,60Cについて吹き出し口65A,65B,65Cのすべてを互いに同じ方向(例えば正対する方向)に向けて配置する場合に比べて、その長手方向Dに沿う風速分布の不足部分が補足される。
【0070】
このときの風速分布の不足部分の補足は、加圧ロール57の回転軸方向Jに沿う横一列に配置されていた3つの送風ファン60A,60B,60Cのうちの一端に配置された送風ファン60Cについて吹き出し口65Cを他の送風ファン60A,60Bの吹き出し口65A,65Bとは異なる方向に向けるよう配置することで容易になされる。
しかも、このときの他の送風ファン60A,60Bについては、その吹き出し口65A,65Bを正対する方向に向けるよう配置しているので、上記横一列の一端部(風速の不足部分)以外の部分の風速分布を安定させたうえで、その一端部における風速分布の不足部分が確実に補足されるようになる。
【0071】
そして、画像形成装置1においては、この冷却装置6により加圧ロール57の回転軸方向Jにおいてほぼむらなく冷却される。このため、例えば上記風速分布の不足部分に起因して加圧ロール57の回転軸方向Jにおいて冷却不足による相対的な冷却むらが生じた場合には、その定着装置5における定着処理部FNを通過する用紙9にしわが発生しやすくなる等の不具合が起こるおそれがあるが、画像形成装置1ではそのような不具合の発生が予防される。
【0072】
ちなみに、冷却装置6では、送風ファン60A,60B,60Cとして同じシロッコファン61を適用したので、例えば軸流ファン(プロペラファン)を適用した場合に比べると、回転動作時の騒音が低減されつつ上記風速分布の不足部分の補足が容易になされる。
【0073】
また、冷却装置6では、吹き出し口65Cを他とは異なる向きに向けた送風ファン60Cの横に配置された、送風ファン60Bを後退させた位置に配置したので、その送風ファン60Bを後退させた位置に配置しない場合に比べると、送風ファン60Bの吹き出し口65Bから吹き出される空気が長手方向Dに少し拡散されて送風されるようになる。
この結果、冷却装置6では、その送風ファン60Bを後退した位置に配置しない場合に比べると、特に送風ファン60Cの吹き出し口65Cが正対する方向に対して向かなくなった部分の風速分布が不足することがあるが、その不足部分が送風ファン60Bから拡散されて送られる風速の空気(Er:
図5)で補足される。
【0074】
しかも、この場合、冷却装置6では、
図3(B)に示されるように後退配置した送風ファン60Bの吹き出し口65Bが接続される対向面72における開口部73Bの開口幅Wbを他の開口部73A,73Cの各開口幅Wa,Wcよりも広くしているので、その開口幅Wbを他の開口部73A,73Cの各開口幅Wa,Wcと同じにした場合に比べると、送風ファン60Bの吹き出し口65Bから吹き出される空気が長手方向Dにさらに拡散されて送風されやすくなる。このことによっても、冷却装置6では、上記風速分布の不足部分もより確実に補足される。
【0075】
さらに、冷却装置6では、
図4に示されるように、接続ダクト77において送風ファン60Cと重なる空間領域に整流板78を設けていないので、その重なる空間領域に整流板78を設けた場合に比べると、その整流板78を設けることによる風速分布の乱れが発生することが回避される。
【0076】
実施の形態2.
図6および
図7には、この発明の実施の形態2に係る冷却装置6Bと定着装置5が示されている。
実施の形態2に係る冷却装置6Bは、3つの送風ファン60A,60B,60Cとして同じ種類の軸流ファン67A,67B,67Cを適用して変更するとともに、その変更をした関係により一部が異なる構成からなる筐体70Bを適用して変更した以外は実施の形態1に係る冷却装置6と同じ構成からなるものである。
【0077】
実施の形態2における軸流ファン67は、
図6等に示されるように、送風方向に沿って配置される回転軸68aの周囲に多数枚のプロペラ状の羽根68bが放射状に設けられてなる回転翼68を有し、その回転翼68が、送風方向の前後の面(上流側面と下流側面)に形成された円形等の開口形状からなる吸気口64と円形等の開口形状からなる吹き出し口65とを有する箱型の筐体(ケーシング)63内に設置されたものである。また軸流ファン67は、回転翼68が筐体63内に配置された図示しない小型モータにより回転駆動されるようになっている。
【0078】
この軸流ファン67は、回転翼68が回転すると、筐体63の上流側面にある吸気口64から空気を取り込んだ後にその空気を回転翼68の羽根68bにより回転軸68aにほぼ沿って螺旋状に送って吹き出し口65から筐体63の外に排出させるよう作動するものである。また、この軸流ファン67は、その吹き出し口65が、筐体63の側面において回転翼68の回転軸68aを中心にして左右対称に存在する開口になっている(
図7参照)。
【0079】
筐体70Bは、
図6、
図7等に示されるように、3つの軸流ファン67からなる送風ファン60A,60B,60Cを収納する長方体状の本体収納部71aと、本体収納部71aの長手方向Dに沿う側面から加圧ロール57側に先細りの状態で絞られるよう突出する本体突出部71bと、本体突出部71bの先細り先端であり加圧ロール57の回転軸方向Jに沿って向き合う対向面72に設けられる複数の開口部73(73D,73E,73F)と、本体収納部71aの長手方向Dにおける両端部の一方の側面部に設けられる空気取り入れ口74とを有している。
【0080】
本体収納部71aは、3つの送風ファン60A,60B,60Cを加圧ロール57の回転軸方向Jに沿って横一列に配置して収納することが可能な最低限の収納スペースを確保することが可能な部分である。
その一方で、この本体収納部71aは、実施の形態1に係る冷却装置6における筐体70の本体部71の場合と同様に寸法上の制約を強いられるものである。換言すれば、この本体収納部71aについても、収納スペースにおける幅寸法について加圧ロール57の少なくとも回転軸方向Jの冷却を要する部分の寸法を超える余裕のある寸法に設定することができない部分になっている。
また、この本体収納部71aも、実施の形態1における筐体70の本体部71の場合と同様に縮小用変形部71eを有した構造になっている。
【0081】
本体突出部71bは、本体収納部71aの上面の高さから接続ダクト77の接続口77aと接続が可能な高さまで傾斜して、全体として先細りの形状で突出した構造になっている部分である。
この本体突出部71bは、本体収納部71aとの間を仕切る隔壁を有するとともに、その隔壁に軸流ファン67における吹き出し口65と向き合う同じ形状および寸法からなる3つの開口部71dが長手方向Dに沿う横並びの状態で設けられている。
【0082】
対向面72は、接続ダクト77の接続口77aと対向して接続し得る面部分である。この対向面72には、3つの送風ファン60A,60B,60Cの各吹き出し口65A,65B,65Cと接続される上記3つの開口部73D,73E,73Fが設けられている。
開口部73D,73E,73Fは、
図7(B)等に示されるように、開口が同じ形状(例えば矩形)および面積(開口幅Wと高さが同じ)からなるものであって同じ間隔をあけて設けられている。実施の形態2における開口部73D,73E,73Fは、その開口幅Wd,We、Wfがいずれも同じ寸法であり、その開口高さも同じ寸法になっている。また開口部73D,73E,73Fの開口幅Wd,We、Wfは、上記3つの開口部71dの開口幅よりも広くなっている。
また、実施の形態2における本体突出部71bの内部には、
図7、
図8等に示されるように、開口部73D,73E,73Fに対応する通気空間を形成するための複数の仕切り板71gが設けられている。
【0083】
そして、この冷却装置6Bにおいては、
図7(A)や
図8に示されるように、3つの軸流ファン67からなる送風ファン60A,60B,60Cのうちの1つの送風ファン60Cについて、実施の形態1に係る冷却装置6の場合とほぼ同様に、その吹き出し口65Cが他の送風ファン60A,60Bの吹き出し口65A,65Bとは異なる方向に向くように設置している。
【0084】
つまり、この冷却装置6Bにおいても、送風ファン60A,60B,60Cのうち長手方向Dに沿う横一列の一方の端部に配置された送風ファン60Cの吹き出し口65Cを横一列の一方の端部における外側に所要の角度で向けている一方で、それ以外の残りの送風ファン60A,60Bの吹き出し口65A,65Bを加圧ロール57と正対する方向に向けて配置している。この場合、外側に向けるときの所要の角度は、例えば、
図8に示されるように正対する方向(長手方向D)に対する交差角度(傾斜角度)βが実施の形態1における交差角度αと同じ角度範囲内で設定することができるが、その交差角度βも長手方向Dに沿う風速分布の不足部分を補足できる観点から適切な角度に設定される。
【0085】
ちなみに、この冷却装置6Bにおいては、
図8に示されるように、異なる方向に向けて配置された送風ファン60Cの横に配置された1つの送風ファン60Bについて、実施の形態1に係る冷却装置6の場合(送風ファン60B)のように送風ファン60A,60Cよりも加圧ロール57から所定の距離Lだけ離れて後退した位置に配置しておらず、横一列に並べた状態で配置している。
【0086】
また、この冷却装置6Bにおいても、実施の形態1に係る冷却装置6の場合と同様に、
図8に示されるように、接続ダクト77の通気空間のうち吹き出し口65Cを異なる方向に向けて配置される送風ファン60Cと長手方向Dにおいて位置的に重なる空間領域には、整流板78を設けていない。
【0087】
以上のように構成された冷却装置6Bは、予め定めた所定の作動時期になると始動して、定着装置5における加圧ロール57を空冷により冷却する。
【0088】
すなわち、冷却装置6Bは、作動時期になると、3つの軸流ファン67からなる送風ファン60A,60B,60Cが回転始動して吸気作用と送風作用が発生する。
これにより、冷却装置6では、空気(
図6の矢付き破線)が筐体70Bの本体収納部71aにおける空気取り入れ口74から取り込まれて各送風ファン60A,60B,60Cの吸気口64をそれぞれ通して導入された後に各吹き出し口65A,65B,65Cからほぼ同じ風速でそれぞれ吹き出され(送風され)、筐体70Bの本体突出部71bを通過した後に筐体70Bの開口部73D,73E,73Fをそれぞれ通して排出される。
続いて、筐体70Bの開口部73D,73E,73Fから排出された空気は、接続ダクト77に導入されて通過した後、接続ダクト77の吹き出し口77bから吹き出され、加圧ロール57の下部の回転軸方向Jに沿う全域に吹き付けられる。
この結果、冷却装置6Bによって加圧ロール57が冷却される。
【0089】
そして、この冷却装置6Bの長手方向Dにおける風速分布をシミュレーションにより調べたところ、
図9に示されるような結果が得られた。このときのシミュレーションでは送風ファン60A,60B,60Cである軸流ファン67の風量を約14m/秒の条件に設定した。また、
図9においても、最も風速の早い分布の結果が得られた部分のみを、破線で囲むとともに網点を付した状態で簡略して示している。また
図9においては、風速が3番目に早い分布の結果が得られた部分についても、点線で囲むとともに粗目の網点を付した状態で簡略して示している。
【0090】
また比較のため、
図11に示されるように、送風ファン60Cの吹き出し口65Cを異なる方向に向けず、3つの軸流ファン67からなる送風ファン60A,60B,60Cの吹き出し口65A,65B,65Cをすべて加圧ロール57に正対する方向に向けて配置した比較参考例2の冷却装置600Bを用意した。この比較参考例2の冷却装置600Bは、送風ファン60Cの吹き出し口65Cの向きを変更するとともに、接続ダクト77の通気空間のうち送風ファン60Cと長手方向Dにおいて位置的に重なる空間領域に速度分布を均一化するため2つの整流板78c,78dを設けて変更した以外は実施の形態2に係る上記冷却装置6Bと同じ構成になっている。
この比較参考例2の冷却装置600Bについても、その長手方向Dにおける風速分布を同様に調べた。その結果は、
図9の図示内容と同様に簡略したうえで
図11に併せて示した。
【0091】
以上の風速分布の測定結果から、比較参考例2の冷却装置600Bでは、3つの送風ファン60A,60B,60Cのうち横一列の端部に配置した送風ファン60Cからの送風による風速分布が他の送風ファン60A,60Bからの送風による風速分布に比べて遅くなる風速分布の部分(不足部分)が目立って存在していない(
図11)。
しかし、比較参考例2の冷却装置600Bでは、送風ファン60Cからの送風について接続ダクト77の通気空間に設けた2つの整流板78c,78dにより気流の一部を調整することで長手方向Dにおける端部への風量を補っている。
これに対して、実施の形態2に係る冷却装置6Bでは、比較用の冷却装置600Bのように接続ダクト77に2つの整流板78c,78dを設けることなく、上記長手方向Dにおける端部にも風速の早い空気が送風され、その端部への相対的に遅い風速の分布が生じないよう補足されることがわかる(
図9)。
【0092】
したがって、この冷却装置6Bによっても、加圧ロール57の回転軸方向J(長手方向D)に沿って横一列に並べるよう配置された3つの軸流ファン67からなる送風ファン60A,60B,60Cについてその吹き出し口65A,65B,65Cのすべてを互いに同じ方向(例えば正対する方向)に向けて配置する場合に比べて、接続ダクト77に整流板78c,78dを追加して設けることをしなくても、長手方向Dに沿う端部における風速分布の不足部分が容易に補足される。
【0093】
なお、冷却装置6Bにおいても、吹き出し口65Cを異なる方向に向けて配置する送風ファン60Cの横に配置される送風ファン60Bを後退した位置に配置してもよい。この場合は、後退配置した送風ファン60Bの吹き出し口65Bと接続される開口部73Eの開口幅Weを他の開口部73D,73Fの開口幅Wd,Wfよりも広くしてもよい。
【0094】
また参考までに、上記比較参考例1の冷却装置600と比較参考例2の冷却装置600Bによる風速分布を比較した結果を
図12に示す。
図12に示す結果から、3つの送風ファン60A,60B,60Cとして、比較参考例2の冷却装置600Bにおける軸流ファン67を比較参考例1の冷却装置600におけるシロッコファン61に変更しただけでは、その吹き出し口65をすべて正対配置している限り、加圧ロール57の回転軸方向Jにおける一端部(一点鎖線で囲む部分)の風速が遅くなる部分が生じることがわかる。
【0095】
変形例.
この発明は、上記実施の形態1、2で例示した内容に何ら限定されるものではなく、例えば、以下に挙げるような変形例も含むものである。
【0096】
冷却装置で使用する送風ファンの数については、3つに限定されず、2つでもあるいは4つ以上であってもよい。また、送風ファンの種類については、吹き出し口を有するものであれば、他の種類の送風ファンであっても構わない。
【0097】
吹き出し口を異ならせる送風ファンは、横一列の一方の端部に配置する送風ファンに限らず、例えば横一列の両端部に配置する送風ファンであっても、あるいは、横一列の内側に配置する送風ファンであってもよい。
接続ダクト77は、対向面からの空気の吹き付けが可能であれば、省略することができる。
【0098】
この発明の冷却装置は、一方向に長い冷却対象物を有し、その長手方向においてむらなく空冷により冷却することを要求する装置であれば、採用することができる。また、この発明の冷却装置は、画像形成装置における定着装置以外の部分にも適用してもよい。
【0099】
この発明の冷却装置を採用する画像形成装置についても、その冷却装置の適用が可能であれば、他の形式や種類のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 …画像形成装置
5 …定着装置
6 …冷却装置
57…加圧ロール(冷却対象物の一例)
60…送風ファン
61…シロッコファン
65…吹き出し口
72…対向面
73…開口部
77…接続ダクト
78…整流板
D …長手方向
J …回転軸方向(長手方向の一例)
W …開口幅