(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車載の放電制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240305BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
B60R16/02 650S
(21)【出願番号】P 2020045423
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 史和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 翔平
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-290526(JP,A)
【文献】特開2017-192185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60R 16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ(2)の電圧が所定の遮断電圧よりも高い場合、前記バッテリと前記バッテリから電力を供給される負荷(6)側とを電気的に接続し、前記バッテリの電圧が前記遮断電圧以下の場合、前記バッテリと前記負荷側との電気的接続を遮断するように構成された遮断部(30)と、
前記遮断部と前記負荷側との間に接続し、オンになることにより前記負荷側から放電することを許可し、オフになることにより前記負荷側から放電することを禁止する放電スイッチ(24)と、
前記バッテリの電圧が前記遮断電圧よりも低圧の基準電圧以下の場合、前記放電スイッチがオンになることを許可し、前記バッテリの電圧が前記基準電圧よりも高い場合、前記放電スイッチがオンになることを禁止する第1の許可信号を出力するように構成された放電判定部(40)と、
前記放電スイッチがオンになることを許可する前記第1の許可信号を前記放電判定部が出力すると、所定の放電時間、前記放電スイッチがオンになることを許可する第2の許可信号を出力するように構成された放電保持部(60)と、
前記放電スイッチがオンになることを前記第1の許可信号と前記第2の許可信号との両方が許可する場合、前記放電スイッチをオンにし、前記放電スイッチがオンになることを前記第1の許可信号と前記第2の許可信号との少なくともいずれか一方が禁止する場合、前記放電スイッチをオフにするように構成された放電制御部(70)と、
を備える車載の放電制御装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の車載の放電制御装置であって、
前記遮断部が前記バッテリと前記負荷側との電気的接続を遮断してから所定の第1の遅延時間経過後に前記放電スイッチがオンになることを許可し、前記遮断部が前記バッテリと前記負荷側とを電気的に接続してから所定の第2の遅延時間経過後に前記放電スイッチがオンになることを禁止する第3の許可信号を出力するように構成された遅延部(50)をさらに備え、
前記放電制御部は、前記第1の許可信号と前記第2の許可信号と前記第3の許可信号とが全て前記放電スイッチがオンになることを許可する場合、前記放電スイッチをオンにし、前記第1の許可信号と前記第2の許可信号と前記第3の許可信号との少なくともいずれか一つが前記放電スイッチがオンになることを禁止する場合、前記放電スイッチをオフにするように構成されている、
車載の放電制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載の放電制御装置であって、
前記遅延部は、前記遮断部が前記バッテリと前記負荷側との電気的接続を遮断してからカウンタ(54)により前記第1の遅延時間をカウントし、前記遮断部が前記バッテリと前記負荷側とを電気的に接続してからカウンタ(54)により前記第2の遅延時間をカウントするように構成されている、
車載の放電制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車載の放電制御装置であって、
前記放電保持部は、前記放電スイッチがオンになることを許可する前記第1の許可信号を前記放電判定部が出力すると、カウンタ(64)により前記放電時間をカウントするように構成されている、
車載の放電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、負荷側に電力を供給する車載のバッテリの電圧が瞬断しても、負荷側からの放電を適切に制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車載のバッテリから電力を消費する負荷側への電力供給を遮断するときに、負荷側に蓄積された電荷を放電させる技術が知られている。
例えば、下記の特許文献1に記載の技術では、低圧のバッテリの電圧がオフになると、メインリレー部をオフにして高圧の主電源から負荷側への電力供給を遮断する。そして、特許文献1に記載の技術では、バッテリの電圧がオフになり、メインリレー部がオフになると、放電スイッチをオンにして負荷側の電荷を放電抵抗に流して放電する。
【0003】
さらに、特許文献1に記載の技術では、バッテリの電圧がオフになってから所定の放電時間が経過すると、放電スイッチをオフにする。
したがって、特許文献1に記載の技術では、バッテリの電圧がオフになったときに、メインリレー部が故障のためにオフにならずにオンのままであっても、放電時間が経過すれば放電スイッチはオフになる。これにより、特許文献1に記載の技術では、メインリレー部がオンの状態であっても、主電源の電力が放電抵抗と放電スイッチとに流れ続けることを抑制しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、バッテリの電圧が瞬断してバッテリの電圧がオンからオフになると、バッテリの電圧が正常にオンからオフになるときと同様に、放電時間の間、放電スイッチはオンになる。そして、バッテリの電圧は、瞬断時にオンからオフになってから放電時間が経過する前に、放電スイッチがオンの状態でオフからオンになる。
【0006】
発明者の詳細な検討の結果、放電スイッチがオンの状態でバッテリの電圧がオンになると、メインリレー部がオンになるので、主電源の電力が放電側に放電され、放電抵抗と放電スイッチに流れるという課題が見出された。
【0007】
本開示の1つの局面は、負荷側に電力を供給するバッテリの電圧が瞬断しても、バッテリの電力が放電側に放電されることを抑制する技術を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様による車載の放電制御装置(10)は、遮断部(30)と、放電スイッチ(24)と、放電判定部(40)と、放電保持部(60)と、放電制御部(70)と、を備える。
【0009】
遮断部は、バッテリの電圧が所定の遮断電圧よりも高い場合、バッテリとバッテリから電力を供給される負荷側とを電気的に接続し、バッテリの電圧が遮断電圧以下の場合、バッテリと負荷側との電気的接続を遮断する。放電スイッチは、遮断部と負荷側との間に接続し、オンになることにより負荷側から放電することを許可し、オフになることにより負荷側から放電することを禁止する。
【0010】
放電判定部は、バッテリの電圧が遮断電圧よりも低圧の基準電圧以下の場合、放電スイッチがオンになることを許可し、バッテリの電圧が基準電圧よりも高い場合、放電スイッチがオンになることを禁止する第1の許可信号を出力する。
【0011】
放電保持部は、放電スイッチがオンになることを許可する第1の許可信号を放電判定部が出力すると、所定の放電時間、放電スイッチがオンになることを許可する第2の許可信号を出力する。
【0012】
放電制御部は、放電スイッチがオンになることを第1の許可信号と第2の許可信号との両方が許可する場合、放電スイッチをオンにし、放電スイッチがオンになることを第1の許可信号と第2の許可信号との少なくともいずれか一方が禁止する場合、放電スイッチをオフにする。
【0013】
このような構成によれば、バッテリの電圧が正常に遮断され、基準電圧以下になると、放電スイッチがオンになることを第1の許可信号と第2の許可信号との両方が許可するので、放電スイッチはオンになる。第2の許可信号は、バッテリの電圧が基準電圧以下の状態で、所定の放電時間が経過すると放電スイッチがオンになることを禁止する。
【0014】
したがって、放電時間の間、負荷側に蓄積された電荷が放電スイッチを通って放電され、放電時間が経過すると負荷側からの放電は停止する。
これに対し、バッテリの電圧が正常に遮断するのではなく瞬断する場合、バッテリの電圧は短時間の間に低下してから上昇する。
【0015】
この場合、バッテリの電圧が遮断電圧以下になり遮断部がバッテリと負荷側との電気的接続を遮断してから、バッテリの電圧が基準電圧以下になると放電スイッチはオフからオンになる。そして、バッテリの電圧が瞬断し、放電時間が経過する前にバッテリの電圧が遮断電圧よりも低い基準電圧よりも高くなると、バッテリの電圧が遮断電圧よりも高くなり遮断部がバッテリと負荷側とを電気的に接続する前に放電スイッチはオンからオフになる。
【0016】
つまり、放電時間が経過するか否かに拘わらず、少なくとも遮断部がバッテリと負荷側とを電気的に接続しているときは放電スイッチはオフであるから、バッテリの電圧が瞬断しても、瞬断の前後でバッテリの電力が放電されることを抑制できる。
【0017】
そして、バッテリの電圧の瞬断後にバッテリの電圧が遮断電圧よりも上昇し負荷側に電力を供給する正常電圧に復帰したときには、放電スイッチはオフになっておりバッテリの電力は放電側に流れないので、バッテリから負荷側に適切な電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】バッテリの電圧が正常に遮断されるときの作動を示すタイムチャート。
【
図3】バッテリの電圧が瞬断されるときの作動を示すタイムチャート。
【
図4】バッテリの電圧が瞬断されるときの他の作動を示すタイムチャート。
【
図5】バッテリの電圧が瞬断されるときの比較例の作動を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
図1に示す車載の放電制御装置10は、バッテリ2の電圧が遮断されるときに、電源回路6側と平滑コンデンサ20とに蓄積されている電荷の放電制御を行う。放電制御装置10は、平滑コンデンサ20と、放電抵抗22と、放電MOS24と、遮断部30と、放電判定部40と、遅延部50と、放電保持部60と、放電制御部70と、を備える。以下、バッテリ2の電圧を単にバッテリ電圧とも言う。
【0020】
バッテリ2は、例えば、正常電圧として12Vのバッテリ電圧を加える。バッテリ2の電力は、リレー4、遮断部30、電源回路6を介して、点火、照明、オーディオ等の車載の負荷に供給される。
【0021】
リレー4は、エンジンのスタートスイッチがオンになるとオンになり、スタートスイッチがオフになるとオフになる。電源回路6は、バッテリ2の電圧を車載の各負荷の作動電圧に調整する。
【0022】
平滑コンデンサ20は、バッテリ2から電源回路6に加わるバッテリ電圧を平滑化する。平滑コンデンサ20には、バッテリ2から電源回路6に供給される電力によって電荷が蓄積される。
【0023】
放電抵抗22は、放電MOS24がオンになると、負荷側と平滑コンデンサ20とに蓄積されている電荷を消費しながら放電側であるグランド等の低電位側に放電させる。放電MOS24は、放電制御部70の出力信号がオンになるとオンになり、放電制御部70の出力信号がオフになるとオフになる。
【0024】
遮断部30は、遮断制御部32と遮断MOS34とを備えている。遮断制御部32は、バッテリ2のバッテリ電圧をモニタしている。遮断制御部32は、バッテリ電圧が所定の遮断電圧よりも高くなると制御信号により遮断MOS34をオンにしてバッテリ2と電源回路6とを電気的に接続し、バッテリ電圧が遮断電圧以下になると、制御信号により遮断MOS34をオフにしてバッテリ2と電源回路6との電気的接続を遮断する。
【0025】
放電判定部40は、比較器42を備えている。比較器42はバッテリ電圧と基準電圧44とを比較する。基準電圧44は、遮断制御部32が遮断MOS34のオンとオフとを切り換える前述した遮断電圧よりも低圧に設定されている。
【0026】
放電判定部40は、バッテリ電圧が基準電圧44以下の場合、放電制御部70に出力する許可信号をオンにして放電MOS24がオンになることを許可し、バッテリ電圧が基準電圧44よりも高い場合、放電制御部70に出力する許可信号をオフにして放電MOS24がオンになることを禁止する。
【0027】
遅延部50は、監視部52とカウンタ54とを備えている。監視部52は、遮断制御部32が遮断MOS34をオン、オフする制御信号に基づいて、遮断MOS34がオンであるかオフであるかを監視する。
【0028】
監視部52は、遮断MOS34がオフになりバッテリ2と電源回路6との電気的接続が遮断されると、カウンタ54にカウントを開始させる。監視部52は、カウンタ54のカウント値が所定の第1の遅延値に達すると、つまり遮断MOS34がオフになってから所定の第1の遅延時間が経過すると、放電制御部70に出力する許可信号をオンにして放電MOS24がオンになることを許可する。
【0029】
また、監視部52は、遮断MOS34がオンになりバッテリ2と電源回路6とが電気的に接続されると、カウンタ54にカウントを開始させる。監視部52は、カウンタ54のカウント値が所定の第2の遅延値に達すると、つまり遮断MOS34がオンになってから所定の第2の遅延時間が経過すると、放電制御部70に出力する許可信号をオフにして放電MOS24がオンになることを禁止する。第1の遅延時間と第2の遅延時間とは、同じ値でもよいし異なる値でもよい。
【0030】
放電保持部60は、監視部62とカウンタ64とを備えている。監視部62は、放電判定部40が出力する許可信号がオンであるか否かを監視する。監視部62は、放電判定部40が出力する許可信号がオンになると、放電制御部70に出力する許可信号をオンにして放電MOS24がオンになることを許可する。
【0031】
監視部62は、放電制御部70に出力する許可信号をオンにすると、カウンタ64にカウントを開始させる。カウンタ64のカウント値が所定のオフ値に達すると、つまり所定の放電時間が経過すると、監視部62は、放電制御部70に出力する許可信号をオフにして放電MOS24がオンになることを禁止する。
【0032】
放電制御部70はANDゲートで構成されている。放電制御部70は、放電判定部40と遅延部50と放電保持部60との3個が出力する許可信号が全てオンになると、放電MOS24をオンにするので、負荷側と平滑コンデンサ20とに蓄積されていた電荷が、放電抵抗22、放電MOS24を通り放電される。
【0033】
[2.放電処理]
次に、放電制御装置10が実行する放電処理について、
図2~
図4のタイムチャートに基づいて説明する。尚、
図2~
図4、さらに
図5において、タイムチャートで示されるバッテリ電圧の正常電圧、遮断電圧、基準電圧の大きさは、互いの大小関係を示すために例示されているのであり、実際の電圧値の大きさの割合を示しているものではない。
【0034】
(1)正常時
図2に示すように、リレー4がオフされることによりバッテリ電圧が正常に遮断する場合、遮断制御部32は、バッテリ電圧が遮断電圧以下になると、遮断MOS34をオフにする。
【0035】
バッテリ電圧が遮断電圧以下になると、遅延部50のカウンタ54はカウントを開始する。カウンタ54のカウント値が第1の遅延値に達すると、遅延部50は放電制御部70に出力する許可信号をオンにする。
【0036】
バッテリ電圧がさらに低下し、遮断電圧よりも低い基準電圧以下になると、放電判定部40は放電制御部70に出力する許可信号をオンにする。放電判定部40が出力する許可信号がオンになると、放電保持部60は所定の放電時間の間、放電制御部70に出力する許可信号をオンにする。
【0037】
そして、放電判定部40と遅延部50と放電保持部60との3個が出力する許可信号が全てオンになると、放電制御部70が出力する許可信号はオンになるので、放電MOS24はオンになる。これにより、負荷側と平滑コンデンサ20とに蓄積されていた電荷が放電抵抗22、放電MOS24を通って放電される。
【0038】
放電保持部60のカウンタ64のカウント値が所定のオフ値に達すると、放電保持部60の許可信号はオフになるので、放電判定部40と遅延部50とが出力する許可信号がオンであっても、放電制御部70が出力する許可信号はオフになる。
【0039】
これにより、放電MOS24はオフになるので、負荷側と平滑コンデンサ20とに蓄積されていた電荷が放電抵抗22、放電MOS24を通って放電されることが禁止される。
(2)瞬断時
図3に示すように、一時的な電気的接続不良または負荷側での消費電力の急激な上昇等により、バッテリ電圧が瞬断されることがある。この場合、バッテリ電圧は、遮断電圧から低下して基準電圧以下になってから、短時間で基準電圧よりも高くなり、さらに遮断電圧よりも高くなり、電源回路6に供給する適切な正常電圧に復帰する。
【0040】
このとき、放電判定部40の許可信号は、バッテリ電圧が基準電圧以下の短時間だけオンになり、それ以外ではオフになる。
遅延部50の許可信号は、バッテリ電圧が遮断電圧以下になってから第1の遅延時間が経過するとオンになり、バッテリ電圧が遮断電圧よりも高くなってから第2の遅延時間が経過するとオフになる。放電保持部60の許可信号は、バッテリ電圧が正常に遮断するか、瞬断するかに拘わらず、バッテリ電圧が基準電圧以下になると、放電時間の間オンになる。
【0041】
放電MOS24は、放電判定部40と遅延部50と放電保持部60との3個が出力する許可信号の少なくとも1個でもオフになるとオフになる。したがって、放電MOS24は、バッテリ電圧が基準電圧以下の短時間だけ、つまり放電判定部40の許可信号がオンのときにはオンになるが、それ以外の放電判定部40の許可信号がオフのときにはオフになる。
【0042】
尚、
図4に示すように、バッテリ電圧の瞬断時間が非常に短い場合、バッテリ電圧が遮断電圧以下になってから遅延部50のカウンタ54が第1の遅延時間をカウントしている間に、バッテリ電圧が基準電圧よりも高くなり、放電判定部40の許可信号がオンからオフになることがある。
【0043】
この場合、遅延部50の許可信号がオンになる前に、放電判定部40の許可信号がオフになるので、放電MOS24がオンにならないこともある。
上記実施形態では、放電MOS24が放電スイッチに対応する。また、放電判定部40が出力する許可信号が第1の許可信号に対応し、放電保持部60が出力する許可信号が第2の許可信号に対応し、遅延部50が出力する許可信号が第3の許可信号に対応する。
【0044】
[3.効果]
以上説明した上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態と比較するために、例えば、放電判定部40と遅延部50とを備えず、バッテリ電圧が遮断電圧以下になると放電保持部60が放電制御部70に出力する許可信号をオフからオンにし、所定の放電時間の間、放電保持部60が放電制御部70に出力する許可信号をオンに保持する比較例の構成を考えてみる。
【0045】
この構成では、
図5に示すように、バッテリ電圧が遮断電圧以下になってから所定の放電時間が経過する間、放電MOS24はオンになる。すると、バッテリ電圧が瞬断し、バッテリ電圧が遮断電圧以下に低下してから上昇し、遮断電圧より高くなっても、所定の放電時間が経過するまで、放電MOS24はオンのままである。
【0046】
放電MOS24がオンの間、バッテリ2の電力、または負荷側と平滑コンデンサ20とに蓄積されていた電荷が放電抵抗22と放電MOS24とを流れるので、放電抵抗22と放電MOS24とが損傷する遅れがある。
【0047】
これに対し、上記実施形態では、放電判定部40と遅延部50と放電保持部60との3個が出力する許可信号が全てオンになっている期間だけ放電MOS24がオンになり、負荷側と平滑コンデンサ20とに蓄積されていた電荷が、放電抵抗22、放電MOS24を通り放電される。
【0048】
さらに、放電判定部40が出力する許可信号は、バッテリ電圧が遮断電圧よりも低圧の基準電圧以下の場合にオンになり、バッテリ電圧が基準電圧よりも高い場合にオフになる。
したがって、上記実施形態では、バッテリ電圧が遮断電圧以下になり遮断部30がバッテリ2と負荷側との電気的接続を遮断してから放電MOS24はオンになる。そして、放電保持部60の放電時間が経過する前にバッテリ電圧が遮断電圧よりも高くなっても、遮断部30がバッテリ2と負荷側とを電気的に接続する前に放電MOS24はオンからオフになる。
【0049】
つまり、少なくとも遮断部30がバッテリ2と負荷側とを電気的に接続している間、放電MOS24はオフであるから、バッテリ電圧が瞬断しても、瞬断の前後でバッテリ2の電力が放電側に流れることを抑制できる。
【0050】
そして、バッテリ電圧の瞬断後にバッテリ電圧が負荷側に電力を供給する正常電圧に復帰したときに、バッテリ2の電力が放電側に流れることを抑制するので、バッテリ2から負荷側に適切な電力を供給できる。
【0051】
(2)上記実施形態では、放電判定部40がバッテリ電圧と基準電圧とを比較するときの作動誤差またはばらつき、放電判定部40が出力する許可信号に基づいて放電保持部60が許可信号をオンにするときの作動誤差または作動ばらつきを考慮し、バッテリ電圧が遮断電圧以下になってから所定の第1の遅延時間が経過すると、遅延部50は放電MOS24がオンになることを許可する許可信号を出力する。
【0052】
これにより、放電判定部40または放電保持部60に作動誤差または作動ばらつきがあっても、バッテリ電圧が基準電圧以下になってから放電MOS24をオンにすることができる。
【0053】
(3)遅延部50は、カウンタ54により、バッテリ電圧が遮断電圧以下になってから遅延部50の許可信号をオンにするまでの第1の遅延時間をカウントするので、第1の遅延時間を高精度に設定できる。さらに、カウンタ54のカウントを容易に変更できるので、遅延時間の変更が容易である。
【0054】
(4)放電保持部60は、カウンタ64により、放電保持部60の許可信号をオンにする放電時間をカウントするので、放電時間を高精度に設定できる。さらに、カウンタ64のカウントを容易に変更できるので、放電時間の変更が容易である。
【0055】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0056】
(1)上記実施形態では、放電判定部40と遅延部50と放電保持部60との3個が出力する許可信号が全てオンになると、放電MOS24をオンにした。これに対し、遅延部50を設置せず、放電判定部40と放電保持部60との2個が出力する許可信号が両方共にオンになると、放電MOS24をオンしてもよい。
【0057】
(2)上記実施形態では、バッテリ2の正常電圧を12Vとして説明したが、これに限るものではない。正常電圧が48Vまたは電気自動車用の数百Vのバッテリが使用されてもよい。
【0058】
(3)上記実施形態では、遅延部50の監視部52は、遮断制御部32の制御信号に基づいて、遮断MOS34がオン、オフのいずれであるかを監視した。これに対し、監視部52は、遮断MOS34がオフになっていることを判定するための基準電圧と遮断MOS34の出力側の電圧とを比較器等で比較し、遮断MOS34がオン、オフのいずれであるかを監視してもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、放電保持部60の監視部62は、放電判定部40の出力に基づいてバッテリ電圧が基準電圧以下であるか否かを監視した。これに対し、監視部62は、放電判定部40と同様に、バッテリ電圧と基準電圧とを比較器等で比較し、バッテリ電圧が基準電圧以下であるか否かを監視してもよい。
【0060】
(5)上記実施形態では、遅延部50はカウンタ54を使用して第1の遅延時間と第2の遅延時間とをカウントし、放電保持部60はカウンタ64を使用して放電時間をカウントした。これに対し、例えばRC回路を使用して遅延時間または放電時間をカウントしてもよい。
【0061】
(6)本開示に記載の放電制御装置10およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の放電制御装置10およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理部によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の放電制御装置10およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理部によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。放電制御装置10に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0062】
(7)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0063】
(8)上述した放電制御装置10の他、当該放電制御装置10を構成要素とするシステム、当該放電制御装置10としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、電子制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0064】
2:バッテリ、6:電源回路(負荷側)、10:放電制御装置、24:放電MOS(放電スイッチ)、30:遮断部、40:放電判定部、50:遅延部、60:放電保持部、70:放電制御部