(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2020045870
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 尋紀
(72)【発明者】
【氏名】杉野 瑞記
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-041191(JP,A)
【文献】特開2014-032342(JP,A)
【文献】特開平09-197864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体と共に回転し、該回転体との間に被加熱材を挟んで搬送しながら該被加熱材を加熱する加熱体と、
前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後の該間に該被加熱材が存在しない不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、
該加熱体に対して前記回転体を回転軸方向両端部で非接触にする動作を行う接触機構と、
を備える加熱装置。
【請求項2】
回転体と、
前記回転体と共に回転し、該回転体との間に被加熱材を挟んで搬送しながら該被加熱材を加熱する加熱体と、
前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後の該間に該被加熱材が存在しない不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、該回転体と該加熱体との回転軸方向両端部での間に空間を形成する動作を行う接触機構と、
を備える加熱装置。
【請求項3】
回転体と、
前記回転体と共に回転し、該回転体との間に被加熱材を挟んで搬送しながら該被加熱材を加熱する加熱体と、
前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後の該間に該被加熱材が存在しない不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、該回転体の回転軸方向両端部での前記加熱体への接触範囲を前記回転軸方向中央部での接触範囲よりも小さくする動作を行う接触機構と、
を備え、
前記加熱体は、
回転軸方向中央部で前記回転体側へ凸状に形成され、
前記接触機構は、
前記回転体と前記加熱体との間で前記被加熱材を加熱する加熱状態よりも、前記不存在状態において、前記回転体を前記加熱体から遠ざける
加熱装置。
【請求項4】
前記回転体は、回転軸方向の両端部で中央部よりも大径とされたロールであり、
前記加熱体の回転軸方向中央部での前記回転体側への突出寸法よりも、前記回転体の回転軸方向中央部での凹み寸法が小さい
請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
回転体と、
前記回転体と共に回転し、該回転体との間に被加熱材を挟んで搬送しながら該被加熱材を加熱する加熱体と、
前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後の該間に該被加熱材が存在しない不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、該回転体の回転軸方向両端部での前記加熱体への接触範囲を前記回転軸方向中央部での接触範囲よりも小さくする動作を行う接触機構と、
を備え、
前記接触機構は、
前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後に、該被加熱材よりも回転軸方向の寸法が大きい被加熱材が搬送される場合における被加熱材間の前記不存在状態において、前記動作を行う
加熱装置。
【請求項6】
前記回転体が加圧ロールとされ、
前記加圧ロールと前記加熱体との間に前記被加熱材としての記録媒体を挟んで搬送しながら、該記録媒体を加圧及び加熱して画像を該記録媒体に定着する
請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱装置としての定着装置。
【請求項7】
前記加熱体は、
回転軸方向中央部で前記回転体側へ凸状に形成され、
前記接触機構は、
前記加圧ロールと前記加熱体との間で記録媒体を加熱する加熱状態において、前記加圧ロールの回転軸方向両端部を前記加熱体側へ加圧して、前記加熱体の前記凸状に沿って撓ませ、
前記不存在状態において、前記回転体を前記加熱体から遠ざける
請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
記録媒体に画像を形成する形成部と、
請求項6又は7に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項9】
前記定着装置の接触機構は、
前記不存在状態としてのジョブ間において、前記動作を行う
請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱部材によって加熱される加熱回転体と、該加熱回転体に摺接して該加熱回転体との間に定着ニップ部を形成する加圧回転体と、を備え、未定着トナー像が転写された記録用紙を前記定着ニップ部にて挟持搬送しつつ加熱・加圧して前記記録用紙の表面に前記未定着トナー像を定着させる定着装置において、いずれか一方の前記回転体に対して離接可能な伝熱部材を設けたことを特徴とする定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加圧ロール等の回転体と加熱ベルト等の加熱体との回転軸方向中央部での間を、用紙等の被加熱材が通過すると、回転体の回転軸方向中央部の温度が、回転軸方向両端部の温度よりも低下する。これにより、回転体において回転軸方向での温度ムラが生じる場合がある。
【0005】
本発明は、回転体と加熱体との間を被加熱材が通過した後の該間に被加熱材が存在しない状態において、回転体と加熱体との接触範囲が回転軸方向中央部と回転軸方向両端部とで同じ構成に比べ、回転体と加熱体との回転軸方向中央部での間を被加熱材が通過した後に、短時間で、回転体における回転軸方向での温度ムラを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、回転体と、前記回転体と共に回転し、該回転体との間に被加熱材を挟んで搬送しながら該被加熱材を加熱する加熱体と、前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後の該間に該被加熱材が存在しない不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、該回転体の回転軸方向両端部での前記加熱体への接触範囲を前記回転軸方向中央部での接触範囲よりも小さくする接触機構と、を備える。
【0007】
第2態様では、前記接触機構は、前記不存在状態において、前記回転体の前記加熱体への回転方向における接触幅を、前記回転軸方向中央部よりも前記回転軸方向両端部で小さくする。
【0008】
第3態様では、前記接触機構は、前記不存在状態において、前記回転体を、前記回転軸方向両端部で前記加熱体に対して非接触にする。
【0009】
第4態様は、回転体と、前記回転体と共に回転し、該回転体との間に被加熱材を挟んで搬送しながら該被加熱材を加熱する加熱体と、前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後の該間に該被加熱材が存在しない不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、該回転体と該加熱体との回転軸方向両端部での間に空間を形成する接触機構と、を備える。
【0010】
第5態様では、前記加熱体は、回転軸方向中央部で前記回転体側へ凸状に形成され、前記接触機構は、前記回転体と前記加熱体との間で前記被加熱材を加熱する加熱状態よりも、前記不存在状態において、前記回転体を前記加熱体から遠ざける。
【0011】
第6態様では、前記回転体は、回転軸方向の両端部で中央部よりも大径とされたロールであり、前記加熱体の回転軸方向中央部での前記回転体側への突出寸法よりも、前記回転体の回転軸方向中央部での凹み寸法が小さい。
【0012】
第7態様では、前記接触機構は、前記回転体と前記加熱体との間を前記被加熱材が通過した後に、該被加熱材よりも回転軸方向の寸法が大きい被加熱材が搬送される場合における被加熱材間の不存在状態において、前記回転体と共に回転しながら該回転体を加熱する加熱体に対して前記回転体を回転軸方向中央部で接触させ、該回転体の回転軸方向両端部での前記加熱体への接触範囲を前記回転軸方向中央部での接触範囲よりも小さくする。
【0013】
第8態様では、前記回転体が加圧ロールとされ、前記加圧ロールと前記加熱体との間に前記被加熱材としての記録媒体を挟んで搬送しながら、該記録媒体を加圧及び加熱して画像を該記録媒体に定着する。
【0014】
第9態様では、前記加熱体は、回転軸方向中央部で前記回転体側へ凸状に形成され、前記接触機構は、前記加圧ロールと前記加熱体との間で記録媒体を加熱する加熱状態において、前記加圧ロールの回転軸方向両端部を前記加熱体側へ加圧して、前記加熱体の前記凸状に沿って撓ませ、前記不存在状態において、前記回転体を前記加熱体から遠ざける。
【0015】
第10態様は、記録媒体に画像を形成する形成部と、第8態様又は第9態様に記載の定着装置と、を備える。
【0016】
第11態様では、前記定着装置の接触機構は、前記不存在状態としてのジョブ間において、前記加圧ロールと共に回転しながら該加圧ロールを加熱する加熱体に対して前記加圧ロールを回転軸方向中央部で接触させ、該加圧ロールの回転軸方向両端部での前記加熱体への接触範囲を前記回転軸方向中央部での接触範囲よりも小さくする。
【発明の効果】
【0017】
第1態様の構成によれば、不存在状態において、回転体と加熱体との接触範囲が回転軸方向中央部と回転軸方向両端部とで同じ構成に比べ、回転体と加熱体との回転軸方向中央部での間を被加熱材が通過した後に、短時間で、回転体における回転軸方向での温度ムラを小さくできる。
【0018】
第2態様の構成によれば、不存在状態において、回転体が回転軸方向両端部で加熱体に対して非接触となる構成に比べ、回転体及び加熱体の一方に対する他方の角度が変動しにくい。
【0019】
第3態様の構成によれば、不存在状態において、回転体が回転軸方向両端部で加熱体に対して接触する構成に比べ、回転体と加熱体との回転軸方向中央部での間を被加熱材が通過した後に、短時間で、回転体における回転軸方向での温度ムラを小さくできる。
【0020】
第4態様の構成によれば、不存在状態において、回転体が回転軸方向両端部で加熱体に対して接触する構成に比べ、回転体と加熱体との回転軸方向中央部での間を被加熱材が通過した後に、短時間で、回転体における回転軸方向での温度ムラを小さくできる。
【0021】
第5態様の構成によれば、回転体を加熱体から遠ざける距離によって、回転体の回転軸方向中央部での加熱体への接触範囲を調整できる。
【0022】
第6態様の構成によれば、突出寸法よりも凹み寸法が大きい構成に比べ、不存在状態において、回転体の回転軸方向両端部での加熱体への接触範囲を回転軸方向中央部での接触範囲よりも小さくしやすい。
【0023】
第7態様の構成によれば、回転体と加熱体との間を被加熱材が通過した後に、該被加熱材よりも回転軸方向の寸法が大きい被加熱材が搬送される場合における被加熱材間の不存在状態において、回転体と加熱体との接触範囲が回転軸方向中央部と回転軸方向両端部とで同じ構成に比べ、搬送される被加熱材のシワを抑制する効果が高い。
【0024】
第8態様の構成によれば、不存在状態において、加圧ロールと加熱体との接触範囲が回転軸方向中央部と回転軸方向両端部とで同じ構成に比べ、画像の定着ムラを抑制できる。
【0025】
第9態様の構成によれば、加圧ロールが回転軸方向に沿った状態を維持する構成に比べ、加熱体が回転軸方向中央部で回転体側へ凸状に形成された構成において、加熱状態における画像の定着ムラを抑制できる。
【0026】
第10態様の構成によれば、不存在状態において、加圧ロールと加熱体との接触範囲が回転軸方向中央部と回転軸方向両端部とで同じ構成に比べ、画像不良を抑制できる。
【0027】
第11態様の構成によれば、ジョブ間において、加圧ロールと加熱体との接触範囲が回転軸方向中央部と回転軸方向両端部とで同じ構成に比べ、画像不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態に係る加熱ベルトの構成を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態に係る加圧ロールの構成を示す概略図である。
【
図4】第1実施形態に係る加圧ロールがニップ位置に位置する状態を示す概略図である。
【
図5】第1実施形態に係る加圧ロールが中央接触位置に位置する状態を示す概略図である。
【
図6】第1実施形態に係る加圧ロールが離間位置に位置する状態を示す概略図である。
【
図7】第1実施形態に係る接触機構の構成を示す正面図である。
【
図8】第1実施形態に係る接触機構の構成を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係るカムの構成を示す概略図である。
【
図10】第1実施形態に係るカムの回転位置とカムフォロアに対する押し込み量との関係を示すグラフである。
【
図11】第1実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図12】第1実施形態に係る制御装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図13】第1実施形態に係る画像形成装置で複数のジョブが実行される場合における先行ジョブ、後続ジョブ及びジョブ間の概念を説明するための図である。
【
図14】第1実施形態に係る加圧ロールの軸方向位置と温度との関係を示すグラフである。
【
図15】第2実施形態に係る加圧ロールが中央接触位置に位置する場合において、軸方向両端部での加熱ベルトとの接触状態を示す概略図である。
【
図16】第2実施形態に係る加圧ロールが中央接触位置に位置する場合において、軸方向中央部での加熱ベルトとの接触状態を示す概略図である。
【
図17】第3実施形態に係る画像形成装置における先行ジョブと後続ジョブとの記録媒体の寸法差を示すための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
《第1実施形態》
(画像形成装置10)
まず、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0030】
画像形成装置10は、
図1に示されるように、第一搬送部11と、第二搬送部12と、形成部14と、定着装置16と、を有している。第一搬送部11は、記録媒体P1を搬送する機能を有している。具体的には、第一搬送部11は、
図1に示されるように、巻出ロール22と、巻取ロール24と、巻掛ロール26と、を有している。
【0031】
巻出ロール22には、記録媒体P1が予め巻き付けられている。巻出ロール22は、回転することで、巻き付けられた記録媒体P1を巻き出す。巻掛ロール26は、巻出ロール22と巻取ロール24との間で記録媒体P1に巻き掛けられている。これにより、巻出ロール22から巻取ロール24までの記録媒体P1の搬送経路が定められている。巻取ロール24は、記録媒体P1を巻き取るロールである。この巻取ロール24は、駆動部(図示省略)によって回転駆動される。これにより、巻取ロール24が記録媒体P1を巻き取ると共に、巻出ロール22が記録媒体P1を巻き出す。これにより、記録媒体P1が巻出ロール22から巻取ロール24へ搬送される。なお、記録媒体P1としては、一例として、ホットスタンプ箔が用いられる。
【0032】
形成部14は、記録媒体P1に画像を形成する機能を有している。具体的には、形成部14は、液滴を吐出する吐出部である。さらに具体的には、形成部14は、液滴としてのインク滴を吐出する吐出部としての吐出ヘッドで構成されている。
【0033】
第二搬送部12は、被加熱材の一例としての記録媒体P2を搬送する機能を有している。この第二搬送部12は、例えば、搬送ロール対13を有している。第二搬送部12では、記録媒体P1に形成された画像が定着装置16(具体的には後述の接触領域50S)へ搬送されるタイミングに合わせて、記録媒体P2を定着装置16へ搬送する。記録媒体P2としては、一例として、用紙が用いられる。ここで、記録媒体P1はロール紙であったが、記録媒体P2はカット紙である。また記録媒体P1は定着装置16の温度(具体的には加圧ロール40の温度)にあまり影響せず、被加熱材により定着装置16の温度が下がったりする影響は、主に記録媒体P2によるところのものである。
【0034】
定着装置16は、記録媒体P1に形成された画像を、記録媒体P2に対して転写及び定着を行う。定着装置16の具体的な構成については、後述する。
【0035】
なお、形成部14としては、画像としてのトナー像を形成する電子写真式の画像形成部であってもよい。電子写真式の画像形成部では、例えば、帯電、露光、現像、及び転写等の各工程を経てトナー像を記録媒体P2に形成する。
【0036】
また、形成部14は、記録媒体P2に画像を直接形成してもよい。この場合では、例えば、定着装置16が、記録媒体P2に形成された画像を記録媒体P2に定着する。
【0037】
(定着装置16)
図1に示される定着装置16は、加熱装置の一例である。定着装置16は、
図1に示されるように、加圧ロール40と加熱ベルト60とを有し、加圧ロール40と加熱ベルト60との間に記録媒体P1及び記録媒体P2を挟んで搬送しながら、記録媒体P1及び記録媒体P2を加圧及び加熱して、記録媒体P1の画像を記録媒体P2に定着する。
【0038】
このように、定着装置16は、被加熱材の一例としての記録媒体P2を加熱する加熱装置として機能する。さらに具体的には、定着装置16は、加圧ロール40及び加熱ベルト60に加えて、接触機構70(
図7参照)と、制御装置50(
図7参照)と、を有している。以下に、定着装置16の各部の具体的な構成について説明する。
【0039】
(加圧ロール40及び加熱ベルト60)
図1に示される加熱ベルト60は、加熱体の一例である。
図1に示される加圧ロール40は、回転体の一例である。加圧ロール40及び加熱ベルト60は互いに対向して配置されている。本実施形態では、
図1に示されるように、一例として、加熱ベルト60が加圧ロール40に対する下方側に配置されている。
【0040】
加熱ベルト60は、環状、具体的には、無端状に形成されている。加熱ベルト60の内周側及び外周側の少なくとも一方には、加熱ベルト60を加熱する加熱部(図示省略)が設けられている。該加熱部としては、例えば、内部抵抗によるジュール熱で発熱する発熱体によって加熱ベルト60を加熱する加熱部、及び、輻射熱によって加熱ベルト60を加熱するランプ等の加熱部などが用いられる。
【0041】
加熱ベルト60の内周における加圧ロール40側には、
図1に示されるように、支持部としてのパッド66が設けられている。パッド66は、
図2に示されるように、加熱ベルト60のベルト幅方向に沿って長さを有している。パッド66は、加圧ロール40側(すなわち上方側)を向く支持面66Aを有している。この支持面66Aは、加熱ベルト60の内周面を支持している。さらに、パッド66は、ベルト幅方向の中央部で加圧ロール40側へ凸状に形成されている。これにより、加熱ベルト60全体が、ベルト幅方向の中央部で加圧ロール40側(すなわち、上方側)へ凸状に形成される。
【0042】
なお、ベルト幅方向は、加熱ベルト60が回転する回転方向に対して交差する方向(具体的には、直交する方向)である。このベルト幅方向は、加圧ロール40の回転軸方向(以下、軸方向という)に沿った方向ともいえる。
【0043】
加圧ロール40は、
図3に示されるように、軸方向の両端部で中央部よりも大径とされたロールである。具体的には、加圧ロール40は、軸方向の中央部から両端部へ向けて徐々に外径が大きくなっている。さらに言えば、加圧ロール40は、軸方向の中央部から両端部へ向けて連続的に外径が大きくなっている。このように、加圧ロール40の軸方向の両端部で中央部よりも大径とすることで、加圧ロール40による記録媒体P2の送り速度が幅方向の両端部で中央部よりも速くなる。これにより、記録媒体P2の幅方向の中央から両端側へ向けて張力が作用し、記録媒体P2のシワが抑制される。
【0044】
さらに、加圧ロール40の軸方向中央部での凹み寸法(
図3参照)は、加熱ベルト60の軸方向中央部での加圧ロール40側への突出寸法(
図2参照)よりも小さい。加圧ロール40の凹み寸法は、加圧ロール40の軸方向端部の外周面から軸方向中央部の外周面までの径方向に沿った寸法である(
図3参照)。換言すれば、加圧ロール40の凹み寸法は、加圧ロール40の最大半径と最小半径との半径差である。加熱ベルト60の突出寸法は、加熱ベルト60のベルト幅方向端部の外周面からベルト幅方向中央部の外周面までの径方向に沿った寸法である。この加熱ベルト60の突出寸法は、パッド66の支持面66Aでのベルト幅方向端部とベルト幅方向中央部との高低差と把握してもよい。
【0045】
加圧ロール40は、
図1及び
図4に示されるように、加熱ベルト60に対して押し付けられている。これにより、加熱ベルト60と加圧ロール40とが接触する接触領域50S(すなわち、定着ニップ)が形成される。換言すれば、接触領域50Sは、加熱ベルト60と加圧ロール40との間に形成される領域である。
【0046】
なお、加圧ロール40は、後述するように、接触機構70によって、
図1及び
図4に示される接触位置(以下、ニップ位置という)と、
図5に示される接触位置(以下、中央接触位置という)と、
図6に示される離間位置と、に移動する。加圧ロール40は、
図4に示されるニップ位置において、加熱ベルト60に対して押し付けられる。
【0047】
さらに、加圧ロール40は、駆動部42(
図7参照)によって回転駆動される。加熱ベルト60は加圧ロール40に従動して回転する。これにより、加熱ベルト60は、加圧ロール40と共に回転し、加圧ロール40との間に記録媒体P2を挟んで搬送しながら記録媒体P2を加熱する。
【0048】
すなわち、定着装置16では、接触領域50Sに導入された記録媒体P2を加熱ベルト60と加圧ロール40とで挟んで加圧しながら搬送し、加圧力及び加熱ベルト60による熱によって、記録媒体P1の画像を記録媒体P2に定着する。このように、本実施形態では、記録媒体P2は、接触領域50S(すなわち、加熱ベルト60と加圧ロール40との間)を通過することで、記録媒体P1の画像が定着される。
【0049】
なお、加圧ロール40の軸方向中央と、加熱ベルト60のベルト幅方向中央とは、略一致している。さらに、記録媒体P2は、幅方向中央が、加圧ロール40の軸方向中央及び加熱ベルト60のベルト幅方向中央と略一致した状態(すなわち、センタレジ)にて、加熱ベルト60及び加圧ロール40によって搬送される。
【0050】
(接触機構70)
図7及び
図8に示される接触機構70は、加圧ロール40を加熱ベルト60に対して接触させる機構である。具体的には、接触機構70は、
図1、
図4、
図7及び
図8に示されるニップ位置と、
図5に示される中央接触位置と、
図6に示される離間位置と、に加圧ロール40を移動させる。
【0051】
さらに具体的には、接触機構70は、
図7及び
図8に示されるように、一対のレバー部80と、一対のカム72と、カムシャフト74と、カムシャフトギヤ76と、伝達ギヤ78と、駆動部79(
図7参照)と、を有している。なお、
図7及び
図8では、一対のレバー部80のうち、一方のレバー部80を示し、一対のカム72のうち、一方のカム72を示している。
【0052】
一対のレバー部80は、加圧ロール40を変位させる変位部である。この一対のレバー部80の各々は、加圧ロール40の軸方向の一端側及び他端側の各々に配置されている。具体的には、レバー部80の各々は、
図7に示されるように、レバー82と、支持部材84と、バネ部86と、カムフォロア88と、を有している。
【0053】
レバー82は、一端部が、加圧ロール40に対する搬送方向上流側(
図7における右方側)に配置された支点82Aによって回転可能に定着装置16の装置本体に支持されている。
【0054】
このレバー82は、支点82Aから搬送方向下流側(
図7における左方側)へ向けて斜め上方側に延びると共に、加圧ロール40の上方側で屈曲し、この屈曲部分82Bから搬送方向下流(
図7における左方)へ延びている。カムフォロア88は、ロール状に形成されており、レバー82の屈曲部分82Bに回転可能に取り付けられている。
【0055】
支持部材84は、加圧ロール40を回転可能に支持している。この支持部材84は、加圧ロール40が加熱ベルト60に対して近接する近接方向(
図7における下方)及びその反対方向(
図7における上方)へ予め定められた範囲で移動可能にレバー82の他端部に設けられている。
【0056】
バネ部86は、コイルばねで構成されており、レバー82と支持部材84との間に設けられている。このバネ部86は、その弾性力により、支持部材84を近接方向へ押している。
【0057】
カムシャフト74は、加圧ロール40及びレバー82の上方側で、加圧ロール40の軸方向に沿って延びる回転軸である。このカムシャフト74は、定着装置16の装置本体に回転可能に支持されている。
【0058】
一対のカム72の各々は、カムシャフト74の軸方向の一端部側及び他端部側の各々に固定されている。このカム72の各々は、
図9に示されるように、短径部90と、カムシャフト74(すなわち回転中心)からの径方向長さが短径部90よりも長い第一長径部91と、カムシャフト74からの径方向長さが短径部90よりも長く且つ第一長径部91よりも短い第二長径部92と、を有している。
【0059】
図7に示されるように、カム72の各々が、カムフォロア88の各々に接触しており、カムシャフト74の回転角度により、カムフォロア88に対するカム72の接触位置が変化する。なお、一対のカム72の各々は、同じ形状をしている。
【0060】
カムシャフトギヤ76は、カムシャフト74の軸方向一端部に固定されている。伝達ギヤ78は、カムシャフトギヤ76と噛み合った状態で、定着装置16の装置本体に回転可能に支持されている。
【0061】
駆動部79は、伝達ギヤ78を回転駆動する。具体的には、駆動部79は、一例として、伝達ギヤ78を正転及び逆転させるステッピングモータで構成されている。
【0062】
そして、接触機構70では、駆動部79が伝達ギヤ78を回転(具体的には正転及び逆転)させることで、その該駆動力がカムシャフトギヤ76を介してカムシャフト74に伝達され、カムシャフト74及びカム72が回転する。
【0063】
カム72が回転することにより、カムフォロア88に対する接触位置が、短径部90、第一長径部91及び第二長径部92の間で変化する。カム72の短径部90がカムフォロア88に接触することで、加圧ロール40は、
図6に示される離間位置に位置する。加圧ロール40は、離間位置において、軸方向一端部から軸方向他端部にわたって加熱ベルト60に対して非接触となる。
【0064】
なお、カム72の短径部90がカムフォロア88に接触する場合では、
図10に示されるように、カムフォロア88に対するカム72の押し込み量Aは、最少となる。
【0065】
カム72が回転し、カム72の第一長径部91がカムフォロア88に接触すると、レバー82が支点82Aを中心に回転し、加圧ロール40は、
図4に示されるニップ位置に移動する。加圧ロール40は、ニップ位置において、バネ部86の弾性力によって、軸方向の両端部が加熱ベルト60側へ加圧される。これにより、加圧ロール40は、加熱ベルト60の凸状の形状に沿って撓む。この結果、加圧ロール40は、ニップ位置において、軸方向一端部から軸方向他端部にわたって加熱ベルト60に接触し、接触領域50Sが形成される。
【0066】
なお、カム72の第一長径部91がカムフォロア88に接触する場合では、
図10に示されるように、カムフォロア88に対するカム72の押し込み量Cは、最大となる。
【0067】
さらに、カム72が回転し、カム72の第二長径部92がカムフォロア88に接触すると、レバー82が支点82Aを中心に回転し、加圧ロール40が、
図5に示される中央接触位置に移動する。加圧ロール40は、中央接触位置において、軸方向中央部で加熱ベルト60に接触し、軸方向両端部での加熱ベルト60への接触範囲が軸方向中央部での接触範囲よりも小さくなる。具体的には、加圧ロール40は、中央接触位置において、軸方向中央部で加熱ベルト60に接触し、軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触となる。
【0068】
換言すれば、加圧ロール40は、中央接触位置において、軸方向中央部で加熱ベルト60に接触し、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向両端部での間に空間46が形成される。
【0069】
なお、カム72の第二長径部92がカムフォロア88に接触する場合では、
図10に示されるように、カムフォロア88に対するカム72の押し込み量Bは、前述の押し込み量Aと押し込み量Cとの中間の値となる。したがって、加圧ロール40は、中央接触位置において、加熱ベルト60に対してニップ位置よりも遠ざかり、離間位置によりも近づく。
【0070】
なお、軸方向両端部での加熱ベルト60への接触範囲が軸方向中央部での接触範囲よりも小さい構成は、前述のように、接触範囲が0(ゼロ)である構成を含む概念である。
【0071】
以上のように、接触機構70は、加圧ロール40を加熱ベルト60に対して、接触及び離間させる。換言すれば、接触機構70は、加圧ロール40の回転軸と、加熱ベルト60の回転軸との距離が変わるように加圧ロール40を変位させる機構ともいえる。
【0072】
(制御装置50)
制御装置50は、定着装置16における駆動部79を含む各部の動作を制御する装置である。本実施形態では、制御装置50は、画像形成装置10の各部の動作を制御する装置として構成されている。なお、制御装置50としては、少なくとも駆動部79の動作を制御する装置として構成されていればよい。
図11には、制御装置50のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。
【0073】
図11に示されるように、制御装置50は、コンピュータとしての機能を備え、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、ストレージ54、ユーザインタフェース55、通信インタフェース56及びI/O57を有している。制御装置50の各部は、バス59を介して相互に通信可能に接続されている。
【0074】
CPU51は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU51は、ROM52又はストレージ54からプログラムを読み出し、RAM53を作業領域としてプログラムを実行する。CPU51は、ROM52又はストレージ54に記録されているプログラムに従って、画像形成装置10の各部の制御および各種の演算処理を行う。
【0075】
ROM52は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM53は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ54は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶部により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0076】
ユーザインタフェース55は、ユーザが画像形成装置10を使用する際のインタフェースである。ユーザインタフェース55は、例えば、ボタンやタッチパネル等の入力部及び液晶ディスプレイ等の表示部を有している。ユーザは、ジョブの実行を指示する指示者である。
【0077】
通信インタフェース56は、パソコン等のユーザ端末と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース56の通信方式としては、有線又は無線が用いられる。通信インタフェース56の通信規格としては、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等が用いられる。I/O部57は、CPU51を画像形成装置10の各部と接続する。
【0078】
上記のプログラムを実行する際に、制御装置50は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。制御装置50が実現する機能構成について説明する。
図12は、制御装置50の機能構成の例を示すブロック図である。
【0079】
図12に示されるように、制御装置50は、機能構成として、取得部50Aと、制御部50Bと、を有している。各機能構成は、CPU51がROM52又はストレージ54に記憶された制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0080】
取得部50Aは、ジョブを実行する実行指示と、該ジョブに関するジョブ情報と、を取得する。取得部50Aは、ジョブに関するジョブ情報として、ジョブにおいて指定された記録媒体P2のサイズ(具体的には搬送方向及び幅方向の寸法)、枚数、及び搬送速度等の情報を取得する。なお、ジョブとは、指示者による一回の指示によって実行される画像形成動作の処理単位をいう。また、指示者によって、ジョブにおいて、記録媒体P2のサイズ、枚数、及び搬送速度等が指定される。
【0081】
なお、ジョブの実行指示は、一例として、通信インタフェース56により通信可能なユーザ端末を通じて入力され、当該ジョブの実行指示を取得部50Aが取得する。また、原稿を読取装置(具体的にはスキャナ)で読み取ることでジョブが生成され、当該ジョブの実行指示を取得部50Aが取得してもよい。
【0082】
制御部50Bは、取得部50Aがジョブの実行指示を取得した場合に、ジョブを実行させる制御を、定着装置16を含む画像形成装置10の各部に対して行う。このとき、駆動部42を含む定着装置16の各部に対しては、制御部50Bは、加熱ベルト60を加熱し、加圧ロール40を回転させる制御を行う。さらに、定着装置16における接触機構70の駆動部79(
図7参照)に対しては、制御部50Bは、加圧ロール40をニップ位置(
図4参照)に位置させる制御を行う。
【0083】
なお、制御部50Bは、ジョブの実行が完了した場合に、加圧ロール40を離間位置に位置させるように、駆動部79の駆動を制御する。このとき、制御部50Bは、加熱ベルト60の加熱及び加圧ロール40の回転を停止させる制御を、駆動部42を含む定着装置16の各部に対して行う。
【0084】
さらに、制御部50Bは、取得部50Aが複数のジョブを連続して取得した場合に、ジョブ間において、加圧ロール40が中央接触位置(
図5参照)に位置するように、駆動部79の駆動を制御する。このとき、制御部50Bは、ジョブ間において、加熱ベルト60の加熱及び加圧ロール40の回転を維持する制御を、駆動部42を含む定着装置16の各部に対して行う。
【0085】
なお、ジョブを連続して取得した場合は、例えば、一のジョブの実行が完了する前に、他のジョブを取得した場合が該当する。なお、
図13に示されるように、取得部50Aが連続して取得した複数のジョブのうち、先に実行されるジョブを先行ジョブといい、該先行ジョブの次に実行されるジョブを後続ジョブという。また、先行ジョブと後続ジョブとの間の期間をジョブ間という。
【0086】
ここで、ジョブ間は、接触領域50Sに記録媒体P2が存在しない状態となっている。すなわち、制御部50Bは、加圧ロール40と加熱ベルト60との間を記録媒体P2が通過した後の該間に記録媒体P2が存在しない状態(以下、不存在状態という)において、加圧ロール40を中央接触位置に位置させる制御を駆動部79に対して行う。
【0087】
(第1実施形態に係る作用)
次に、第1実施形態に係る作用を説明する。
【0088】
第1実施形態に係る画像形成装置10によれば、制御装置50の制御部50B(
図12参照)は、取得部50Aがジョブの実行指示を取得した場合に、ジョブを実行させる制御を画像形成装置10の各部に対して行う。このとき、駆動部42を含む定着装置16の各部に対しては、制御部50Bは、加熱ベルト60を加熱し、加圧ロール40を回転させる制御を行う。さらに、定着装置16における接触機構70の駆動部79に対しては、制御部50Bは、加圧ロール40をニップ位置(
図4参照)に位置させる制御を行う。
【0089】
これにより、接触機構70は、加圧ロール40を離間位置からニップ位置に移動させる。この結果、加圧ロール40の軸方向両端部が加熱ベルト60側へ加圧され、加熱ベルト60の凸状に沿って加圧ロール40が撓む。これにより、加圧ロール40と加熱ベルト60との間に接触領域50Sが形成される。
【0090】
さらに、
図1に示される第一搬送部11が搬送する記録媒体P1に対して、形成部14が画像を形成する。画像が形成された記録媒体P1は、第一搬送部11によって接触領域50Sに搬送される。
【0091】
記録媒体P1に形成された画像が接触領域50Sに搬送されるタイミングに合わせて、記録媒体P2が、第二搬送部12によって、接触領域50Sに搬送される。
【0092】
そして、定着装置16が、加圧ロール40と加熱ベルト60との間に記録媒体P1及び記録媒体P2を挟んで搬送しながら、記録媒体P1及び記録媒体P2を加圧及び加熱して、記録媒体P1の画像を記録媒体P2に定着する。
【0093】
なお、加圧ロール40と加熱ベルト60との間で記録媒体P2が加熱される際に、加圧ロール40が加熱ベルト60の凸状に沿って撓んだまま、加熱ベルト60に接触する状態が維持される。すなわち、本実施形態では、接触機構70は、加圧ロール40と加熱ベルト60との間で記録媒体P2を加熱する加熱状態において、加圧ロール40の軸方向両端部を加熱ベルト60側へ加圧して、加熱ベルト60の凸状に沿って加圧ロール40を撓ませる。
【0094】
そして、本実施形態では、制御部50Bは、取得部50Aが複数のジョブを連続して取得した場合に、先行ジョブと後続ジョブとの間のジョブ間において、加圧ロール40が中央接触位置(
図5参照)に位置するように、接触機構70の駆動部79の駆動を制御する。このとき、制御部50Bは、ジョブ間において、加熱ベルト60の加熱及び加圧ロール40の回転を維持する制御を、駆動部42を含む定着装置16の各部に対して行う。
【0095】
これにより、接触機構70は、不存在状態において、加圧ロール40を加熱する加熱ベルト60に対して、加圧ロール40を軸方向中央部で接触させ、加圧ロール40の軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触とする(以下、該動作を回復動作という)。これにより、加圧ロール40の軸方向中央部が加熱ベルト60によって加熱され、加圧ロール40の軸方向両端部は加熱されない。
【0096】
ここで、複数のジョブが連続する場合では、先行ジョブにおいて、接触領域50Sのベルト幅方向の寸法よりも幅方向の寸法が小さい記録媒体P2(以下、小サイズの記録媒体P2という)を用い、後続ジョブにおいて、先行ジョブで用いられる記録媒体P2の幅方向の寸法よりも幅方向の寸法が大きい記録媒体P2(以下、大サイズの記録媒体P2という)を用いる場合が考えられる(
図17参照)。後続ジョブで用いられる記録媒体P2の幅方向寸法は、一例として、接触領域50Sのベルト幅方向の寸法と同等(具体的には、接触領域50Sのベルト幅方向の寸法より若干小さい寸法)とされる。
【0097】
先行ジョブにおいて、小サイズの記録媒体P2が、接触領域50Sを通過すると、加熱ベルト60の熱は、ベルト幅方向中央部において記録媒体P2を介して加圧ロール40に伝わる。一方、加熱ベルト60のベルト幅方向両端部では、加熱ベルト60の熱は、記録媒体P2を介さずに加圧ロール40に伝わる。このため、
図14の破線で示されるように、加圧ロール40の軸方向中央部で軸方向両端部よりも温度が低下した状態となる。
【0098】
そして、不存在状態において(すなわち、ジョブ間において)、加圧ロール40と加熱ベルト60の接触範囲が軸方向中央部と軸方向両端部とで同じ構成(以下、第一構成という)では、加圧ロール40の軸方向中央部で軸方向両端部よりも温度が低下した状態(
図14の破線で示される状態)が後続ジョブにおいても維持される。
【0099】
このように、加圧ロール40の軸方向において温度ムラが生じることで、加圧ロール40の軸方向両端部での熱膨張により、加圧ロール40の軸方向両端部での軸方向中央部に対する外径差が大きくなる。この結果、後続ジョブにおいて、大サイズの記録媒体P2が接触領域50Sを通過すると、記録媒体P2の送り速度が幅方向の両端部で中央部よりも速くなり過ぎて、記録媒体P2にシワが発生する場合がある。
【0100】
また、加圧ロール40における軸方向での温度ムラが生じることで、後続ジョブにおいて、記録媒体P2の幅方向に画像の定着ムラが発生する場合がある。
【0101】
これに対して、本実施形態の回復動作では、ジョブ間において、加圧ロール40の軸方向中央部が加熱ベルト60によって加熱され、加圧ロール40の軸方向両端部は加熱されないので、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向中央部での間を記録媒体P2が通過した後、第一構成に比べ、短時間で、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラが小さくなる。すなわち、短時間で、
図14の実線で示す温度分布に復帰する。
【0102】
このように、本実施形態の構成によれば、短時間で、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラが小さくなるので、第一構成に比べ、後続ジョブにおいて、加圧ロール40の軸方向両端部の軸方向中央部に対する外径差による記録媒体P2のシワが抑制される。さらに、本実施形態の構成によれば、第一構成に比べ、後続ジョブにおいて、記録媒体P2の幅方向において生じる画像の定着ムラが抑制される。これにより、本実施形態の構成によれば、第一構成に比べ、後続ジョブにおいて、記録媒体P2に形成される画像の不良が抑制される。
【0103】
特に、本実施形態の回復動作では、加圧ロール40は、ジョブ間において、軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触となる。このため、ジョブ間において、加圧ロール40が加熱ベルト60に対して接触する構成(以下、第二構成という)に比べ、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向中央部での間を記録媒体P2が通過した後、短時間で、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラが小さくなる。
【0104】
さらに言うと、本実施形態の回復動作では、ジョブ間において、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向両端部での間に空間46(
図5参照)が形成される。このため、第二構成に比べ、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向両端部での間で空気が流れやすく、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向中央部での間を記録媒体P2が通過した後、短時間で、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラが小さくなる。
【0105】
また、本実施形態では、加熱ベルト60全体が、ベルト幅方向の中央部で加圧ロール40側(すなわち、上方側)へ凸状に形成される。加圧ロール40は、中央接触位置において、加熱ベルト60に対してニップ位置よりも遠ざかることで、軸方向中央部での加熱ベルト60との接触を維持しつつ、軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触となる。
【0106】
このように、本実施形態では、加熱ベルト60が、ベルト幅方向の中央部で加圧ロール40側へ凸状に形成されているので、加圧ロール40を加熱ベルト60から遠ざける距離によって、加圧ロール40の軸方向中央部での加熱ベルト60への接触範囲を調整可能となる。
【0107】
また、本実施形態では、加圧ロール40の軸方向中央部での凹み寸法(
図3参照)は、加熱ベルト60の軸方向中央部での加圧ロール40側への突出寸法(
図2参照)よりも小さい。このため、突出寸法よりも凹み寸法が大きい構成に比べ、ジョブ間において、加圧ロール40の軸方向両端部での加熱ベルト60への接触範囲を軸方向中央部での接触範囲よりも小さくしやすい。
【0108】
また、本実施形態では、加圧ロール40と加熱ベルト60との間で記録媒体P2を加熱する加熱状態において、接触機構70が加圧ロール40の軸方向両端部を加熱ベルト60側へ加圧して、加熱ベルト60の凸状に沿って加圧ロール40を撓ませる。
【0109】
このため、加圧ロール40が軸方向に沿った状態を維持する構成に比べ、加熱ベルト60が軸方向中央部で加圧ロール40側へ凸状に形成された構成において、加熱状態における記録媒体への画像の定着ムラが抑制される。
【0110】
《第2実施形態》
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一に構成された部分については、同一符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0111】
第1実施形態では、加圧ロール40は、中央接触位置(
図5参照)において、軸方向中央部で加熱ベルト60に接触し、軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触となっていたのに対して、第2実施形態では以下のように構成される。
【0112】
すなわち、第2実施形態では、加圧ロール40は、中央接触位置において、軸方向中央部で加熱ベルト60に接触し、加熱ベルト60への接触範囲が軸方向中央部での接触範囲よりも小さくなるように、軸方向両端部で加熱ベルト60に接触する。具体的には、加圧ロール40は、中央接触位置において、加熱ベルト60への回転方向(すなわち周方向)における軸方向両端部での接触幅W1(
図15参照)が、軸方向中央部での接触幅W2(
図16参照)よりも小さくなる。
【0113】
以下、第2実施形態の作用について説明する。
【0114】
本実施形態では、制御部50Bは、取得部50Aが複数のジョブを連続して取得した場合に、ジョブ間において、加圧ロール40が中央接触位置に位置するように、接触機構70の駆動部79の駆動を制御する。このとき、制御部50Bは、ジョブ間において、加熱ベルト60の加熱及び加圧ロール40の回転を維持する制御を、駆動部42を含む定着装置16の各部に対して行う。
【0115】
これにより、接触機構70は、不存在状態において、加圧ロール40を加熱する加熱ベルト60に対して、加圧ロール40を軸方向中央部で接触させ、加圧ロール40の加熱ベルト60への回転方向における接触幅を、軸方向中央部よりも軸方向両端部で小さくする。
【0116】
これにより、加圧ロール40の軸方向両端部での加熱量が、加圧ロール40の軸方向中央部での加熱量よりも少なくなる。
【0117】
このため、加圧ロール40と加熱ベルト60との軸方向中央部での間を記録媒体P2が通過した後、前述の第一構成に比べ、短時間で、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラが小さくなる。
【0118】
このように、本実施形態の構成によれば、短時間で、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラが小さくなるので、第一構成に比べ、後続ジョブにおいて、加圧ロール40の軸方向両端部の軸方向中央部に対する外径差による記録媒体P2のシワが抑制される。さらに、本実施形態の構成によれば、第一構成に比べ、後続ジョブにおいて、記録媒体P2の幅方向において生じる画像の定着ムラが抑制される。これにより、本実施形態の構成によれば、第一構成に比べ、後続ジョブにおいて、記録媒体P2に形成される画像の不良が抑制される。
【0119】
また、本実施形態の回復動作では、ジョブ間において、加圧ロール40は、軸方向の中央部及び両端部で加熱ベルト60に接触した状態となるので、加圧ロール40及び加熱ベルト60の一方が他方に支持される。このため、ジョブ間において、加圧ロール40が軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触となる構成に比べ、加圧ロール40及び加熱ベルト60の一方に対する他方の角度が変動しにくい。
【0120】
また、本実施形態の回復動作では、ジョブ間において、加圧ロール40は、軸方向の中央部及び両端部で加熱ベルト60に接触した状態となるので、ジョブ間において、加圧ロール40が軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触となる構成に比べ、加熱ベルト60を加圧ロール40に安定して従動回転させられる。
【0121】
《第3実施形態》
次に、第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一に構成された部分については、同一符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0122】
第1実施形態では、前述のように、制御部50Bは、取得部50Aが複数のジョブを連続して取得した場合に、ジョブ間において、加圧ロール40を中央接触位置に位置させる制御を駆動部79に対して行っていたのに対して、第3実施形態では以下のように構成される。
【0123】
すなわち、第3実施形態では、制御部50Bは、取得部50Aが複数のジョブを連続して取得した場合に、
図17に示されるように、後続ジョブで用いられる記録媒体P2の幅方向の寸法が先行ジョブで用いられる記録媒体P2の幅方向の寸法よりも大きい場合(以下、「後続媒体の寸法が大きい場合」という)におけるジョブ間において、加圧ロール40を中央接触位置に位置させる制御を駆動部79に対して行う。
【0124】
換言すれば、接触領域50Sを記録媒体P2が通過した後に、該記録媒体P2よりも幅方向の寸法が大きい記録媒体P2が搬送される場合における記録媒体P2間の不存在状態において、回復動作を行う。
【0125】
これにより、接触機構70は、該不存在状態において、加圧ロール40を加熱する加熱ベルト60に対して、加圧ロール40を軸方向中央部で接触させ、加圧ロール40の軸方向両端部で加熱ベルト60に対して非接触とする。これにより、加圧ロール40の軸方向中央部が加熱ベルト60によって加熱され、加圧ロール40の軸方向両端部は加熱されない。
【0126】
なお、本実施形態では、後続ジョブで用いられる記録媒体P2の幅方向の寸法が先行ジョブで用いられる記録媒体P2の幅方向の寸法よりも小さい場合には、そのジョブ間において、回復動作は実行しない。具体的には、例えば、制御部50Bは、加圧ロール40を離間位置に位置させる制御を駆動部79に対して行う。
【0127】
また、制御部50Bは、例えば、記録媒体P2の幅方向の寸法をジョブ情報に特定する。また、制御部50Bは、センサ等の検知部の検知結果に基づいて、記録媒体P2の幅方向の寸法を特定してもよい。
【0128】
ここで、後続媒体の寸法が大きい場合では、加圧ロール40は、後続ジョブにおいて、先行ジョブにおける場合よりも軸方向両端側の部分で記録媒体P2に接触する。これにより、加圧ロール40の軸方向両端部での熱膨張により、加圧ロール40の軸方向両端部での軸方向中央部に対する外径差が大きくなると、記録媒体P2の送り速度が幅方向の両端部で中央部よりも速くなりやすい。
【0129】
このため、後続媒体の寸法が大きい場合において、加圧ロール40と加熱ベルト60の接触範囲が軸方向中央部と軸方向両端部とで同じ構成加圧ロール40を中央接触位置に位置させる制御を行う構成(以下、第三構成という)では、後続ジョブにおいて、記録媒体P2にシワが発生しやすい。
【0130】
これに対して、本実施形態では、後続媒体の寸法が大きい場合におけるジョブ間において、加圧ロール40を中央接触位置に位置させる制御を駆動部79に対して行うので、第三構成に比べ、搬送される記録媒体P2のシワを抑制する効果が高い。
【0131】
前述の第3実施形態では、後続媒体の寸法が大きい場合において、回復動作を実行したが、これに限られない。例えば、先行ジョブを実行した結果、加圧ロール40の軸方向の中央部と両端部の少なくとも一方との温度差が予め定められた閾値以上である場合において、回復動作を実行する構成であってもよい。この場合では、例えば、温度センサ等の検知部によって加圧ロール40の軸方向の中央部及び両端部の温度を測定した情報に基づき、回復動作が実行される。また、先行ジョブにおいてジョブが実行された記録媒体P2の枚数によって加圧ロール40の温度差を予測し、その情報に基づき、回復動作が実行してもよい。
【0132】
(他の実施形態)
前述の実施形態では、複数のジョブを実行する場合に、ジョブ間において、接触機構70が加圧ロール40を中央接触位置(
図5参照)に位置させることで回復動作を行っていたが、これに限られない。例えば、単一のジョブを実行する場合に、ジョブの実行終了後に回復動作を行ってから、接触機構70が、加圧ロール40を離間位置に位置させる構成であってもよい。この構成では、当該単一のジョブの実行を完了した直後に、ジョブが実行される場合において、加圧ロールにおける軸方向での温度ムラの影響が抑制される。
【0133】
また、ジョブの実行が完了した直後において、ジョブを実行する場合に、ジョブの実行前に回復動作を行ってからジョブを実行する構成であってもよい。
【0134】
さらに、単一のジョブの中の記録媒体P2間において、回復動作を実行する構成であってもよい。
【0135】
前述の実施形態では、回転体の一例として、加圧ロール40を用いたが、これに限られない。例えば、回転体の一例としては、加圧ベルトなどあってもよい。
【0136】
また、前述の実施形態では、加熱体の一例として、加熱ベルト60を用いたが、これに限られない。例えば、加熱体の一例としては、加熱ロールなどあってもよい。
【0137】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0138】
10 画像形成装置
14 形成部
16 定着装置(加熱装置の一例)
40 加圧ロール(回転体の一例)
46 空間
60 加熱ベルト(加熱体の一例)
70 接触機構
P2 記録媒体(被加熱材の一例)