(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01G 19/03 20060101AFI20240305BHJP
E01D 2/00 20060101ALI20240305BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20240305BHJP
G08G 1/015 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01G19/03
E01D2/00
E01D19/02
G08G1/015 A
(21)【出願番号】P 2020047136
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥宏
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075821(JP,A)
【文献】特開2014-228480(JP,A)
【文献】特開2006-084404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0316426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/03
G08G 1/015
E01D 2/00
E01D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の整数Nに対して、移動体が構造物を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ前記構造物の第1~第Nの観測点を観測する少なくとも1つの観測装置による観測情報に基づいて、前記第1~第Nの観測点の物理量を取得する物理量取得ステップと、
1以上N以下の任意の整数i及び1以上N以下の任意の整数jに対して、前記第jの観測点の作用x
jと、前記作用x
jが前記第iの観測点に及ぼす作用との相関を示す関数をy
ijとしたとき、前記物理量取得ステップで取得した前記第iの観測点の前記物理量が、関数y
i1~y
iNの値の和に等しいものとして、前記物理量取得ステップで取得した前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記第1~第Nの観測点の前記作用x
1~x
Nを算出する作用算出ステップと、を含
み、
前記物理量取得ステップで取得する前記第1~第Nの観測点の前記物理量は、変位である、計測方法。
【請求項2】
前記移動体とは異なる既知の移動体が単独で前記構造物を移動したときの前記第1~第Nの観測点の物理量を取得し、前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記関数y
ijの係数の値を算出する係数値算出ステップを含む、請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記関数y
ijは、前記作用x
jの多項式関数である、請求項1又は2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記構造物は、前記移動体が移動し得る第1~第Nの経路を有し、
前記第1~第Nの観測点は、前記第1~第Nの経路と対応付けられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項5】
前記観測装置は、加速度センサーである、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項6】
前記観測装置は、接触式変位計、リング式変位計、レーザー変位計、感圧センサー、画像処理による変位計測機器又は光ファイバーによる変位計測機器である、請求項1乃至
4
のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項7】
前記物理量取得ステップで取得する前記第1~第Nの観測点の前記物理量は、前記第1方向及び前記第2方向とそれぞれ交差する第3方向の前記物理量である、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項8】
前記移動体は、鉄道車両、自動車、路面電車、建設車両、又は軍用車両である、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項9】
前記構造物は、橋梁の上部構造であって、
前記上部構造は、隣り合う橋台と橋脚、隣り合う2つの橋台、又は、隣り合う2つの橋脚のいずれか1つに渡された構造であり、
前記上部構造の両端部は、前記隣り合う橋台と橋脚の位置、前記隣り合う2つの橋台の位置、又は、前記隣り合う2つの橋脚の位置にあり、
前記橋梁は、道路橋又は鉄道橋である、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項10】
前記構造物は、BWIM(Bridge Weigh in Motion)が機能する構造である、請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の計測方法。
【請求項11】
2以上の整数Nに対して、移動体が構造物を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ前記構造物の第1~第Nの観測点を観測する少なくとも1つの観測装置による観測情報に基づいて、前記第1~第Nの観測点の物理量を取得する物理量取得部と、
1以上N以下の任意の整数i及び1以上N以下の任意の整数jに対して、前記第jの観測点の作用x
jと、前記作用x
jが前記第iの観測点に及ぼす作用との相関を示す関数をy
ijとしたとき、前記物理量取得部が取得した前記第iの観測点の前記物理量が、関数y
i1~y
iNの値の和に等しいものとして、前記物理量取得部が取得した前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記第1~第Nの観測点の前記作用x
1~x
Nを算出する作用算出部と、を含
み、
前記物理量取得部が取得する前記第1~第Nの観測点の前記物理量は、変位である、計測装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の計測装置と、
前記観測装置と、を備えた、計測システム。
【請求項13】
2以上の整数Nに対して、移動体が構造物を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ前記構造物の第1~第Nの観測点を観測する少なくとも1つの観測装置による観測情報に基づいて、前記第1~第Nの観測点の物理量を取得する物理量取得ステップと、
1以上N以下の任意の整数i及び1以上N以下の任意の整数jに対して、前記第jの観測点の作用x
jと、前記作用x
jが前記第iの観測点に及ぼす作用との相関を示す関数をy
ijとしたとき、前記物理量取得ステップで取得した前記第iの観測点の前記物理量が、関数y
i1~y
iNの値の和に等しいものとして、前記物理量取得ステップで取得した前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記第1~第Nの観測点の前記作用x
1~x
Nを算出する作用算出ステップと、をコンピューターに実行させ
、
前記物理量取得ステップで取得する前記第1~第Nの観測点の前記物理量は、変位である、計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、計測装置、計測システム及び計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、橋梁の維持管理をする上で、橋梁を通過する大型車両の車軸重量が、橋梁の損傷を予測するために重要な情報であって、この軸重測定ため、橋梁の主桁に設置したひずみ計から車両通過時のひずみ値を連続測定し、軸重を算出する手法Weight In Motionが提案されており、橋梁の主桁に配置されたひずみ計で計測したひずみ波形に基づいて、橋梁を通過する車両の車重を計測する橋梁通過車両監視システムが記載されている。詳細には、橋梁通過車両監視システムは、ひずみ計を配置して、ひずみ計で計測したひずみ波形から車軸の通過タイミングを検出して車両の軸間比率を算出し、算出した軸間比率と軸間距離データベースに登録された軸間距離から算出される軸間比率とを比較し、車両の軸間距離、車速および車種を特定する。また、橋梁通過車両監視システムは、車軸の通過タイミングに合わせて、基準軸重ひずみ波形を時間軸上に配置したひずみ波形を生成し、基準軸重ひずみ波形とひずみ計で計測したひずみ波形とを比較して各軸の軸重を算出する。そして、橋梁通過車両監視システムは、各軸の軸重を合計することにより車重を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が橋梁を走行すると、橋床は、車両の走行方向に沈降変位すると同時に、幅員方向に変位し傾く。これは、車両が観測点を通過すると、当該観測点に作用が生じるだけでなく、他の観測点にも作用が生じることを意味する。各観測点の作用は、橋梁を走行する車両の数、各車両の重量、各車両が走行する車線等の状況に応じて変わるため、精度の良い計測を行うためには、車両が各観測点を通過する時の当該観測点の作用を他の作用から分離して算出することが求められる。特許文献1に記載のシステムでは、車両の車重を計測することはできるが、車両等の移動体が橋梁等の構造物の各観測点を通過する時の当該観測点の作用を他の作用から分離して算出することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る計測方法の一態様は、
2以上の整数Nに対して、移動体が構造物を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ前記構造物の第1~第Nの観測点を観測する少なくとも1つの観測装置による観測情報に基づいて、前記第1~第Nの観測点の物理量を取得する物理量取得ステップと、
1以上N以下の任意の整数i及び1以上N以下の任意の整数jに対して、前記第jの観測点の作用xjと、前記作用xjが前記第iの観測点に及ぼす作用との相関を示す関数をyijとしたとき、前記物理量取得ステップで取得した前記第iの観測点の前記物理量が、関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、前記物理量取得ステップで取得した前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記第1~第Nの観測点の前記作用x1~xNを算出する作用算出ステップと、を含む。
【0006】
前記計測方法の一態様は、
前記移動体とは異なる既知の移動体が単独で前記構造物を移動したときの前記第1~第
Nの観測点の物理量を取得し、前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記関数yijの係数の値を算出する係数値算出ステップを含んでもよい。
【0007】
前記計測方法の一態様において、
前記関数yijは、前記作用xjの多項式関数であってもよい。
【0008】
前記計測方法の一態様において、
前記構造物は、前記移動体が移動し得る第1~第Nの経路を有し、
前記第1~第Nの観測点は、前記第1~第Nの経路と対応付けられてもよい。
【0009】
前記計測方法の一態様において、
前記物理量取得ステップで取得する前記第1~第Nの観測点の前記物理量は、変位、又は前記移動体による荷重であってもよい。
【0010】
前記計測方法の一態様において、
前記観測装置は、加速度センサーであってもよい。
【0011】
前記計測方法の一態様において、
前記観測装置は、接触式変位計、リング式変位計、レーザー変位計、感圧センサー、画像処理による変位計測機器又は光ファイバーによる変位計測機器であってもよい。
【0012】
前記計測方法の一態様において、
前記物理量取得ステップで取得する前記第1~第Nの観測点の前記物理量は、前記第1方向及び前記第2方向とそれぞれ交差する第3方向の前記物理量であってもよい。
【0013】
前記計測方法の一態様において、
前記移動体は、鉄道車両、自動車、路面電車、建設車両、又は軍用車両であってもよい。
【0014】
前記計測方法の一態様において、
前記構造物は、橋梁の上部構造であって、
前記上部構造は、隣り合う橋台と橋脚、隣り合う2つの橋台、又は、隣り合う2つの橋脚のいずれか1つに渡された構造であり、
前記上部構造の両端部は、前記隣り合う橋台と橋脚の位置、前記隣り合う2つの橋台の位置、又は、前記隣り合う2つの橋脚の位置にあり、
前記橋梁は、道路橋又は鉄道橋であってもよい。
【0015】
前記計測方法の一態様において、
前記構造物は、BWIM(Bridge Weigh in Motion)が機能する構造であってもよい。
【0016】
本発明に係る計測装置の一態様は、
2以上の整数Nに対して、移動体が構造物を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ前記構造物の第1~第Nの観測点を観測する少なくとも1つの観測装置による観測情報に基づいて、前記第1~第Nの観測点の物理量を取得する物理量取得部と、
1以上N以下の任意の整数i及び1以上N以下の任意の整数jに対して、前記第jの観測点の作用xjと、前記作用xjが前記第iの観測点に及ぼす作用との相関を示す関数をyijとしたとき、前記物理量取得部が取得した前記第iの観測点の前記物理量が、関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、前記物理量取得部が取得した前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記第1~第Nの観測点の前記作用x1~xNを算出する作用算出部と、を含む。
【0017】
本発明に係る計測システムの一態様は、
前記計測装置の一態様と、
前記観測装置と、を備える。
【0018】
本発明に係る計測プログラムの一態様は、
2以上の整数Nに対して、移動体が構造物を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ前記構造物の第1~第Nの観測点を観測する少なくとも1つの観測装置による観測情報に基づいて、前記第1~第Nの観測点の物理量を取得する物理量取得ステップと、
1以上N以下の任意の整数i及び1以上N以下の任意の整数jに対して、前記第jの観測点の作用xjと、前記作用xjが前記第iの観測点に及ぼす作用との相関を示す関数をyijとしたとき、前記物理量取得ステップで取得した前記第iの観測点の前記物理量が、関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、前記物理量取得ステップで取得した前記第1~第Nの観測点の前記物理量に基づいて、前記第1~第Nの観測点の前記作用x1~xNを算出する作用算出ステップと、をコンピューターに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図7】各センサーが検出する加速度の一例を示す図。
【
図8】観測点R
1の作用x
1と作用x
1が観測点R
2に及ぼす作用との相関の一例を示す図。
【
図9】車両が単独で走行した場合における観測点の変位の一例を示す図。
【
図10】
図9に対して作用から計算される観測点の変位の一例を示す図。
【
図11】2台の車両が並走した場合における観測点の変位の一例を示す図。
【
図12】
図11に対して作用から計算される観測点の変位の一例を示す図。
【
図13】第1実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図。
【
図14】係数値算出ステップの手順の一例を示すフローチャート図。
【
図16】第2実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0021】
1.第1実施形態
1-1.計測システム
以下では、構造物が橋梁の上部構造であり、移動体が車両である場合を例に挙げ、本実施形態の計測方法を実現するための計測システムについて説明する。本実施形態に係る橋梁を通過する車両は、鉄道車両、自動車、路面電車、建設車両、又は軍用車両等の重量が大きく、BWIM(Bridge Weigh in Motion)で計測可能な車両である。BWIMは、橋梁を「はかり」に見立て、橋梁の変形を計測することにより、橋梁を通行する車両の重量、軸数などを測定する技術である。変形やひずみなどの応答から通行する車両の重量を解析可能な橋梁の上部構造は、BWIMが機能する構造物であり、橋梁の上部構造への作用と応答の間の物理的なプロセスを応用するBWIMシステムが通行する車両の重量の計測
を可能にする。
【0022】
図1は、本実施形態に係る計測システムの一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る計測システム10は、計測装置1と、橋梁5の上部構造7に設けられる複数のセンサー23と、を有している。また、計測システム10は、サーバー2を有してもよい。
【0023】
橋梁5は上部構造7と下部構造8からなり、上部構造7は、床板F、主桁G、不図示の横桁等からなる橋床7aと、支承7bと、を含む。下部構造8は、橋脚8aと、橋台8bと、を含む。上部構造7は、隣り合う橋台8bと橋脚8a、隣り合う2つの橋台8b、又は、隣り合う2つの橋脚8aのいずれか1つに渡された構造である。上部構造7の両端部は、隣り合う橋台8bと橋脚8aの位置、隣り合う2つの橋台8bの位置、又は、隣り合う2つの橋脚8aの位置にある。
【0024】
計測装置1と各センサー23とは、例えば、不図示のケーブルで接続され、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークを介して通信を行う。あるいは、計測装置1と各センサー23とは、無線ネットワークを介して通信を行ってもよい。
【0025】
例えば、各センサー23は、移動体である車両6の移動による上部構造7の変位を算出するためのデータを出力する。本実施形態では、各センサー23は加速度センサーであり、例えば、水晶加速度センサーであってもよいし、MEMS(Micro Electro Mechanical
Systems)加速度センサーであってもよい。
【0026】
本実施形態では、各センサー23は上部構造7の長手方向の中央部に設置されている。ただし、各センサー23は、上部構造7の変位を算出するための加速度を検出することができればよく、その設置位置は上部構造7の中央部に限定されない。
【0027】
上部構造7の床板Fや主桁G等は、上部構造7を走行する車両6による荷重によって、垂直方向下方に撓む。各センサー23は、上部構造7を走行する車両6の荷重による床板Fや主桁Gの撓みの加速度を検出する。
【0028】
計測装置1は、各センサー23から出力される加速度データに基づいて、車両6の走行による上部構造7の撓みの変位を算出する。また、計測装置1は、算出した変位から、上部構造7を走行する車両6による荷重を算出する。
【0029】
計測装置1とサーバー2とは、例えば、携帯電話の無線ネットワーク及びインターネット等の通信ネットワーク4を介して、通信を行うことができる。計測装置1は、車両6が上部構造7を走行した時刻や車両6の走行による上部構造7の変位等の情報をサーバー2に送信する。サーバー2は、当該情報を不図示の記憶装置に記憶し、例えば、当該情報に基づいて過積載の車両の監視や上部構造7の異常判定等の処理を行ってもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、橋梁5は、道路橋であり、例えば、鋼橋や桁橋、RC(Reinforced-Concrete)橋等である。
【0031】
図2及び
図3は、各センサー23の上部構造7への設置例を示す図である。なお、
図2は、上部構造7をその上方から見た図であり、
図3は、
図2をA-A線で切断した断面図である。
【0032】
図2及び
図3に示すように、上部構造7は、移動体である車両6が移動し得る第1~第Nの経路としてのN個のレーンL
1~L
N、及びK個の主桁G
1~G
Kを有している。こ
こで、Nは2以上の整数であり、Kは1以上の整数である。なお、
図2及び
図3の例では、主桁G
1~G
Kの各位置がレーンL
1~L
Nの各境界の位置と一致しており、N=K-1であるが、主桁G
1~G
Kの各位置がレーンL
1~L
Nの各境界の位置と一致している必要はなく、N≠K-1であってもよい。
【0033】
図2及び
図3の例では、上部構造7の長手方向の中央部CAにおいて、主桁G
1~G
K-1のそれぞれにセンサー23が設けられている。
図2及び
図3の例では、N=K-1であり、主桁G
Kにセンサー23が設けられていないが、主桁G
Kにセンサー23が設けられ、主桁G
1~G
K-1のいずれか1つにセンサー23が設けられていなくてもよい。あるいは、N=Kであり、主桁G
1~G
Kのそれぞれにセンサー23が設けられていてもよい。
【0034】
なお、各センサー23を上部構造7の床板Fに設けると、走行車両によって破壊するおそれがあり、また橋床7aの局部的な変形により測定精度が影響を受けるおそれがあるため、
図2及び
図3の例では、各センサー23は上部構造7の主桁G
1~G
K-1に設けられている。
【0035】
本実施形態では、N個のセンサー23に対応付けてN個の観測点R
1~R
Nがそれぞれ設定されている。観測点R
1~R
Nは、車両6が上部構造7を移動する第1方向と交差する第2方向に沿って並ぶ上部構造7のN個の観測点である。
図2及び
図3の例では、1以上N以下の各整数jに対して、観測点R
jは、中央部CAにおいて、主桁G
jに設けられたセンサー23の鉛直上方向にある床板Fの表面の位置に設定されている。すなわち、主桁G
jに設けられたセンサー23は、観測点R
jを観測する観測装置である。観測点R
jを観測するセンサー23は、車両6の走行により観測点R
jに生じる加速度を検出可能な位置に設けられていればよいが、観測点R
jに近い位置に設けられることが望ましい。このように、観測点R
1~R
NはN個のセンサー23と1対1の関係にある。
【0036】
本実施形態では、N個の観測点R
1~R
Nは、それぞれレーンL
1~L
Nに対応付けられている。
図2及び
図3の例では、第1方向は、上部構造7のレーンL
1~L
Nに沿うX方向、すなわち、上部構造7の長手方向である。また、第2方向は、車両6が走行する上部構造7の面内においてX方向と直交するY方向、すなわち、上部構造7の幅員方向である。ただし、第2方向は、第1方向と直交していなくてもよい。例えば、上部構造7の一方の端から観測点R
1~R
Nまでの距離が異なっていてもよい。なお、観測点R
1~R
Nは、それぞれ「第1の観測点」~「第Nの観測点」の一例である。
【0037】
なお、センサー23の数及び設置位置は、
図2及び
図3に示した例には限定されず種々の変形実施が可能である。
【0038】
計測装置1は、各センサー23から出力される加速度データに基づいて、第1方向であるX方向と第2方向であるY方向とそれぞれ交差する第3方向の加速度を取得する。観測点R1~RNは、X方向及びY方向と直交する方向に撓むので、計測装置1は、撓みの加速度の大きさを正確に算出するために、X方向及びY方向と直交する第3方向、すなわち、床板Fの法線方向の加速度を取得するのが望ましい。
【0039】
図4は、センサー23が検出する加速度を説明する図である。センサー23は、互いに直交する3軸の各軸方向に生じる加速度を検出する加速度センサーである。
【0040】
車両6の走行による観測点R
1~R
Nの撓みの加速度を検出するために、各センサー23は、3つの検出軸であるx軸、y軸、z軸のうち、1軸が第1方向及び第2方向と交差する方向となるように設置される。
図2及び
図3の例では、第1方向はX方向であり、第
2方向はY方向であるから、各センサー23は、1軸がX方向及びY方向と交差する方向となるように設置される。観測点R
1~R
Nは、X方向及びY方向と直交する方向に撓むので、撓みの加速度を正確に検出するために、理想的には、各センサー23は、1軸をX方向及びY方向と直交する方向、すなわち、床板Fの法線方向に合わせて設置される。
【0041】
ただし、各センサー23を上部構造7に設置する場合、設置場所が傾いている場合もある。計測装置1は、各センサー23の3つの検出軸の1軸が、床板Fの法線方向に合わせて設置されなくても、概ね法線方向に向いていることで誤差は小さく無視できる。また、計測装置1は、各センサー23の3つの検出軸の1軸が、床板Fの法線方向に合わせて設置されなくても、x軸、y軸、z軸の加速度を合成した3軸合成加速度によって、各センサー23の傾斜による検出誤差の補正を行うことができる。また、各センサー23は、少なくとも鉛直方向にほぼ平行な方向に生ずる加速度、あるいは、床板Fの法線方向の加速度を検出する1軸加速度センサーであってもよい。
【0042】
以下、計測装置1が実行する本実施形態の計測方法の詳細について説明する。
【0043】
1-2.作用の算出
車両6がレーンL1を走行した時、車両6による荷重により、観測点R1に作用x1が生じる。そのため、観測点R1は作用x1によって変位する。この時、車両6が単独で上部構造7を走行していれば、レーンL2~LNを走行する車両による荷重によって観測点R2~RNに生じる作用はゼロである。しかしながら、作用x1が観測点R2~RNに及ぼす作用が生じるため、各観測点R2~RNも変位することになる。そのため、観測点R1を観測するセンサー23だけでなく、観測点R2~RNをそれぞれ観測するN-1個のセンサー23も、レーンL1を走行した車両によって生じる加速度を検出することになる。
【0044】
一例として、
図5及び
図6に、N=2の場合の各センサー23及び観測点R
1,R
2の配置例を示し、
図7に、
図5及び
図6に示す配置例の場合に、各センサー23が検出する加速度の一例を示す。
【0045】
図5は、上部構造7をその上方から見た図であり、
図6は、
図5をA-A線で切断した断面図である。
図5及び
図6の例では、2個のセンサー23が、上部構造7の中央部CAにおいて主桁G
1,G
3にそれぞれ設けられている。また、レーンL
1に対応する観測点R
1が、主桁G
1に設けられたセンサー23の鉛直上方向にある床板Fの表面の位置に設定され、レーンL
2に対応する観測点R
2が、主桁G
3に設けられたセンサー23の鉛直上方向にある床板Fの表面の位置に設定されている。主桁G
1に設けられたセンサー23は観測点R
1を観測し、主桁G
3に設けられたセンサー23は観測点R
2を観測する。
【0046】
図7は、車両6がレーンL
1を単独で走行した場合に各センサー23から出力される加速度データの一例を示す図である。なお、
図7の各波形は、ピークを明瞭化するために各加速度データに対してフィルター処理を施した波形である。
【0047】
観測点R1を観測するセンサー23から出力される加速度データのピークPK1は、車両6の車軸の通過を示している。
【0048】
観測点R1を観測するセンサー23から出力される加速度データのピークPK1は、車両6による観測点R1の作用x1に対応する。一方、観測点R2を観測するセンサー23から出力される加速度データのピークPK2は、車両6による観測点R1の作用x1が観測点R2に及ぼす作用に対応する。車両6がレーンL1を単独で走行するので、ピークPK1は、ピークPK2よりも大きい。
【0049】
仮に、車両6がレーンL
1を走行する時に他の車両6がレーンL
2を並走した場合、観測点R
1を観測するセンサー23は、レーンL
1を走行する車両6による観測点R
1の作用x
1と、レーンL
2を走行する他の車両6による観測点R
2の作用x
2が観測点R
1に及ぼす作用との和に対応する加速度を検出することになる。同様に、観測点R
2を観測するセンサー23は、レーンL
2を走行する他の車両6による観測点R
2の作用x
2と、レーンL
1を走行する車両6による観測点R
1の作用x
1が観測点R
2に及ぼす作用との和に対応する加速度を検出することになる。そのため、2台の車両6が並走する場合は、
図7の例に対して、ピークPK1,PK2はすべて大きくなるが、ピークPK1とピークPK2の大小関係が変わらない場合もある。しかも、車両6の重量によってピークPK1,PK2の大きさが変わるため、ピークPK1とピークPK2を単純に比較しただけでは、1台の車両6が単独で走行したのか2台の車両6が並走したのかを区別することができない。
【0050】
一方、
図7の例のように車両6が単独で走行する場合、各センサー23が検出する加速度の波形は互いにピークが異なるものの近似している。すなわち、1以上N以下の任意の整数j,iに対して、車両6がレーンL
jを走行した時の観測点R
jの作用x
jと、作用x
jが観測点R
iに及ぼす作用との間には相関がある。そこで、本実施形態では、計測装置1は、この相関を利用して、作用x
1~x
Nを算出し、作用x
1~x
Nによる上部構造7の変位や、レーンL
1~L
Nを走行した車両6による荷重を算出する。
【0051】
まず、車両6がレーンLjを走行した時の観測点Rjの作用xjと、観測点Rjの作用xjが観測点Riに及ぼす作用との相関を示す関数yijを、式(1)のように定義する。j,iは、それぞれ、1以上N以下の任意の整数である。式(1)において、aijは1次係数であり、bijは0次係数である。式(1)に示すように、関数yijは、作用xjの多項式関数であり、具体的には1次多項式関数である。
【0052】
例えば、一例として、
図5及び
図6に示した配置例のように、N=2の場合を例に挙げる。車両6がレーンL
1を走行した時、レーンL
1の観測点R
jに作用x
1が作用して観測された物理量とレーンL
1の作用x
1がレーンL
2の観測点R
2に作用して観測された物理量との相関は
図8のように1次多項式関数で示される。
【0053】
【0054】
一例として、観測点R1の作用x1と、作用x1が観測点Riに及ぼす作用との相関を示す関数yi1は式(2)のように定義される。
【0055】
【0056】
より具体的には、作用x1と、作用x1が観測点R1~RNに及ぼす作用との相関を示す関数y11~yN1はそれぞれ式(3)のようになる。
【0057】
【0058】
次に、式(4)に示すように、観測点Riの変位giは、関数yi1~yiNの値の和に等しいものとする。
【0059】
【0060】
このとき、式(1)及び式(4)より、観測点R1~RNの変位g1~gNを要素とする変位ベクトルgは、式(5)のように表される。
【0061】
【0062】
式(5)において、ベクトルYの各要素ykは式(6)のように定義される。kは1以上N以下の任意の整数である。
【0063】
【0064】
実際に観測される観測点R1~RNのそれぞれの変位u1~uNを要素とする変位ベクトルuが、変位ベクトルgと等しいものとすると、式(7)が得られる。変位u1~uNは、例えば、観測点R1~RNに対応するN個のセンサー23が検出する加速度をそれぞれ2回積分することによって得られる。
【0065】
【0066】
式(7)を変形し、式(8)が得られる。
【0067】
【0068】
1次係数行列A及び0次係数行列Bが既知であれば、観測によって得られる変位ベクトルuを式(8)に代入することにより、未知である作用x1~xNを要素とする作用ベクトルXが算出される。
【0069】
一例として、
図5及び
図6に示した配置例のように、N=2の場合を例に挙げて、式(8)から作用x
1,x
2を導出する過程を詳細に説明する。N=2であるから、式(8)より式(9)が得られる。
【0070】
【0071】
式(9)を変形し、式(10)が得られる。
【0072】
【0073】
式(10)より、作用x1,x2は、それぞれ式(11)及び式(12)のように計算される。
【0074】
【0075】
【0076】
図9に、
図5及び
図6に示した配置例の場合に、車両6が単独でレーンL
1を走行した場合に観測される観測点R
1,R
2の変位の一例を示す。また、
図10に、
図9に示す観測点R
1,R
2の変位に対して式(11)及び式(12)によって得られる作用x
1,x
2から計算される観測点R
1,R
2の変位の一例を示す。
図9及び
図10において、横軸は時間であり、縦軸は変位である。実線は観測点R
1の変位を示し、破線は観測点R
2の変位を示す。
【0077】
図9に示すように、車両6が単独でレーンL
1を走行するため、観測点R
1の変位は観測点R
2の変位よりも大きい。また、レーンL
2を走行する車両は存在しないが、作用x
1が観測点R
2に及ぼす作用のために、観測点R
2の変位はゼロになっていない。そして、観測点R
1の変位が最大となる時間と観測点R
2の変位が最大となる時間が一致している。これに対して、
図10に示すように、作用x
1から計算される観測点R
1の変位は、
図9に示す観測点R
1の変位とほぼ同じであり、作用x
2から計算される観測点R
2の変位はゼロである。そして、
図10に示す観測点R
1の変位がピークを持つ一方、観測点R
2の変位はピークを持たないので、車両6が単独でレーンL
1を走行したことが特定されるとともに、作用x
1による観測点R
1の変位から車両6による荷重を算出することができる。
【0078】
これに対して、
図11に、
図5及び
図6に示した配置例の場合に、2台の異なる車両6がレーンL
1,L
2を並走した場合に観測される観測点R
1,R
2の変位の一例を示す。また、
図12に、
図11に示す観測点R
1,R
2の変位から式(11)及び式(12)によって得られる作用x
1,x
2から計算される観測点R
1,R
2の変位の一例を示す。
図11及び
図12において、横軸は時間であり、縦軸は変位である。実線は観測点R
1の変位を示し、破線は観測点R
2の変位を示す。
【0079】
図11に示すように、2台の車両6がレーンL
1,L
2を並走するため、観測点R
1の変位は、レーンL
1を走行する一方の車両6の荷重によって生じる作用x
1と、レーンL
2を走行する他方の車両6の荷重によって生じる作用x
2が観測点R
1に及ぼす作用との和に応じた変位となる。同様に、観測点R
2の変位は、作用x
2と、作用x
1が観測点R
2に及ぼす作用との和に応じた変位となる。そして、2台の車両6がレーンL
1,L
2をそれぞれ走行する時間が異なるため、観測点R
1の変位が最大となる時間と観測点R
2の変位が最大となる時間が一致していない。これに対して、
図12に示すように、作用x
1から計算される観測点R
1の変位の最大値は、
図11に示す観測点R
1の変位の最大値よりも小さく、作用x
2から計算される観測点R
2の変位の最大値は、
図11に示す観測点R
2の変位の最大値よりも小さくなっている。そして、
図12に示す観測点R
1,R
2の変位がともにピークを持つので、2台の車両6がレーンL
1,L
2を並走したことが特定されるとともに、観測点R
1,R
2の変位から、レーンL
1を走行した車両6によるレーンL
1への荷重や、レーンL
2を走行した車両6によるレーンL
2への荷重を算出することができる。
【0080】
1-3.計測方法
図13は、第1実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図である。本実施形態では、計測装置1が
図13に示す手順を実行する。
【0081】
図13に示すように、まず、計測装置1は、車両が単独で上部構造7を走行したときの観測点R
1~R
Nの変位u
1~u
Nを取得し、変位u
1~u
Nに基づいて、関数y
ijの係数a
ij,b
ijの値を算出する(ステップS1)。i,jは1以上N以下の任意の整数である。車両は、未知の移動体である車両6とは異なる既知の移動体である。既知の移動体とは、荷重、寸法、軸数等の情報がわかっている移動体であり、未知の移動体とは当該情報がわかっていない移動体である。具体的には、計測装置1は、前述の式(8)に含まれる1次係数行列Aの逆行列A
-1及び0次係数行列Bを算出する。このステップS1は係数値算出ステップである。
【0082】
次に、計測装置1は、観測点R1~RNを観測するN個のセンサー23による観測情報に基づいて、車両6が上部構造7を移動するときの観測点R1~RNの物理量として変位u1~uNを取得する(ステップS2)。前述の通り、N個のセンサー23はそれぞれ加速度センサーであり、N個のセンサー23による観測情報は、観測点R1~RNに生じた加速度の検出情報である。そして、この加速度は、第1方向であるX方向と第2方向であるY方向とそれぞれ交差する第3方向の加速度である。計測装置1は、N個のセンサー23がそれぞれ検出した第3方向の加速度を2回積分して前述の式(8)に含まれる変位ベクトルuを算出する。したがって、物理量取得ステップで計測装置1が取得する観測点R1~RNの物理量としての変位u1~uNは、X方向及びY方向とそれぞれ交差する第3方向の変位、例えば、X方向及びY方向とそれぞれ直交する第3方向の変位である。このステップS2は物理量取得ステップである。
【0083】
次に、計測装置1は、観測点Riの変位uiが関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、ステップS2で取得した変位u1~uNに基づいて、観測点R1~RNの作用x1~xNを算出する(ステップS3)。iは1以上N以下の任意の整数である。具体的には、計測装置1は、前述の式(8)に、ステップS1で算出した1次係数行列Aの逆行列A-1及び0次係数行列B及びステップS2で算出した変位ベクトルuを代入して作用ベクトルXを算出する。このステップS3は作用算出ステップである。
【0084】
次に、計測装置1は、ステップS3で算出した作用x1~xNに基づいて、観測点R1~RNの変位u’1~u’Nを算出する(ステップS4)。例えば、1以上N以下の各整数jに対して、前述の式(5)の右辺において、作用x1~xNのうちの作用xjを除くすべての作用をゼロとして算出される変位gjを変位u’jとする。このステップS4は変位算出ステップである。
【0085】
次に、計測装置1は、ステップS4で算出した変位u’1~u’Nに基づいて、レーンL1~LNのそれぞれを走行した車両6による荷重を算出する(ステップS5)。1以上N以下の各整数jに対して、変位u’jとレーンLjを走行した車両6による荷重との間には相関があるので、あらかじめ車両による荷重試験において、この相関式の係数を算出しておく。計測装置1は、当該相関式に変位u’jを代入してレーンLjを走行した車両6による荷重を算出することができる。このステップS5は荷重算出ステップである。
【0086】
次に、計測装置1は、ステップS5で算出したレーンL1~LNを走行した車両6の荷重をサーバー2に出力する(ステップS6)。このステップS6は、出力ステップである。
【0087】
計測装置1は、計測を終了するまで(ステップS7のN)、ステップS2~S6の処理を繰り返し行う。
【0088】
図14は、
図13のステップS1である係数値算出ステップの手順の一例を示すフローチャート図である。
【0089】
図14に示すように、まず、計測装置1は、整数jを1に設定し(ステップS11)、観測点R
1~R
Nを観測するN個のセンサー23が、車両が単独でレーンL
jを走行した時に検出した加速度を取得する(ステップS12)。
【0090】
次に、計測装置1は、ステップS12で取得した観測点Rjの加速度と観測点R1~RNのそれぞれの加速度との相関を1次近似し、1次係数a1j~aNjの値及び0次係数b1j~bNjの値を算出する(ステップS13)。
【0091】
計測装置1は、整数jがNでない場合は(ステップS14のN)、整数jに1を加算し(ステップS15)、ステップS11~S13の処理を繰り返し行う。
【0092】
そして、整数jがNになると(ステップS14のY)、計測装置1は、ステップS13で算出した1次係数a11~aNNを要素とする1次係数行列A及びステップS13で算出した0次係数b11~bNNを要素とする0次係数行列Bを生成する(ステップS16)。1次係数行列A及び0次係数行列Bは前述の式(5)に含まれる各行列である。
【0093】
最後に、計測装置1は、1次係数行列Aの逆行列A-1を生成し(ステップS17)、係数値算出ステップの処理を終了する。
【0094】
1-4.計測装置の構成
図15は、本実施形態における計測装置1の構成例を示す図である。
図15に示すように、計測装置1は、制御部110と、第1通信部120と、記憶部130と、第2通信部140と、操作部150と、を有している。
【0095】
制御部110は、上部構造7に設置された各センサー23から出力される加速度データに基づいて、上部構造7の変位等を算出する。
【0096】
第1通信部120は、各センサー23から、加速度データを受信する。各センサー23から出力される加速度データは、例えば、デジタル信号である。第1通信部120は、各センサー23から受信した加速度データを制御部110に出力する。
【0097】
記憶部130は、制御部110が計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶するメモリーである。また、記憶部130は、制御部110が所定のアプリケーション機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶している。記憶部130は、例えば、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の各種IC(Integrated Circuit)メモリーやハードディスク、メモリーカードなどの記録媒体等により構成される。
【0098】
記憶部130は、コンピューターにより読み取り可能な装置や媒体である不揮発性の情報記憶装置を含み、各種のプログラムやデータ等は当該情報記憶装置に記憶されていてもよい。情報記憶装置は、光ディスクDVD、CD等の光ディスク、ハードディスクドライブ、或いはカード型メモリーやROM等の各種のメモリー等であってもよい。また、制御部110が通信ネットワーク4を介して各種のプログラムやデータ等を受信して記憶部130に記憶させてもよい。
【0099】
第2通信部140は、通信ネットワーク4を介して、制御部110の計算結果等の情報をサーバー2に送信する。
【0100】
操作部150は、ユーザーからの操作データを取得し、制御部110に送信する処理を行う。
【0101】
制御部110は、物理量取得部111と、作用算出部112と、変位算出部113と、荷重算出部114と、係数値算出部115と、出力処理部116と、を備えている。
【0102】
物理量取得部111は、観測点R
1~R
Nを観測するN個のセンサー23による観測情報に基づいて、車両6が上部構造7を移動するときの観測点R
1~R
Nの物理量として変位u
1~u
Nを取得する。すなわち、物理量取得部111は、
図13における物理量取得ステップの処理を行う。物理量取得部111が取得した変位u
1~u
Nは、記憶部130
に記憶される。
【0103】
作用算出部112は、1以上N以下の任意の整数iに対して、観測点R
iの変位u
iが関数y
i1~y
iNの値の和に等しいものとして、物理量取得部111が取得した変位u
1~u
Nに基づいて、観測点R
1~R
Nの作用x
1~x
Nを算出する。すなわち、作用算出部112は、
図13における作用算出ステップの処理を行う。作用算出部112が算出した作用x
1~x
Nは、記憶部130に記憶される。
【0104】
変位算出部113は、作用算出部112が算出した作用x
1~x
Nに基づいて、観測点R
1~R
Nの変位u’
1~u’
Nを算出する。すなわち、変位算出部113は、
図13における変位算出ステップの処理を行う。変位算出部113が算出した変位u’
1~u’
Nは、記憶部130に記憶される。
【0105】
荷重算出部114は、変位算出部113が算出した変位u’
1~u’
Nに基づいて、レーンL
1~L
Nのそれぞれを走行した車両6による荷重を算出する。すなわち、荷重算出部114は、
図13における荷重算出ステップの処理を行う。荷重算出部114が算出したレーンL
1~L
Nのそれぞれを走行した車両6による荷重は、記憶部130に記憶される。
【0106】
係数値算出部115は、1以上N以下の任意の整数i,jに対して、車両が単独で上部構造7を走行したときの観測点R
1~R
Nの変位u
1~u
Nを取得し、変位u
1~u
Nに基づいて、関数y
ijの係数a
ij,b
ijの値を算出する。すなわち、係数値算出部115は、
図13における係数値算出ステップの処理を行う。係数値算出部115が算出した1次係数a
11~a
NNの値及び0次係数b
11~b
NNの値は、記憶部130に記憶される。
【0107】
出力処理部116は、荷重算出部114が算出したレーンL
1~L
Nを走行した車両6の荷重を、第2通信部140を介してサーバー2に出力する処理を行う。すなわち、出力処理部116は、
図13における出力ステップの処理を行う。
【0108】
例えば、制御部110は、操作部150からの操作データに基づいて、未知の車両6による上部構造7の変位等を算出する第1モードと、1次係数a11~aNN及び0次係数b11~bNNを算出する第2モードとを切り替える。例えば、N個のセンサー23が上部構造7に設置された後、制御部110が第2モードに設定された状態で複数の車両による荷重試験が行われ、荷重試験の終了後、制御部110は第1モードに設定される。
【0109】
本実施形態では、制御部110は、記憶部130に記憶された各種のプログラムを実行するプロセッサーであり、記憶部130に記憶された計測プログラム131を実行することにより、物理量取得部111、作用算出部112、変位算出部113、荷重算出部114、係数値算出部115、出力処理部116の各機能を実現する。換言すれば、計測プログラム131は、
図13に示したフローチャートの各手順を、コンピューターである計測装置1に実行させるプログラムである。
【0110】
プロセッサーは、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、そのハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。プロセッサーは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いはDSP(Digital Signal Processor)等であってもよい。ただし、制御部110は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのカスタムIC(Integrated Circuit)として構成され
、各部の機能を実現してもよいし、CPUとASICとによって各部の機能を実現してもよい。
【0111】
なお、制御部110は荷重算出部114を含まなくてもよい。また、制御部110は係数値算出部115を含まなくてもよい。例えば、サーバー2あるいは他の装置が、1次係数a11~aNNの値及び0次係数b11~bNNの値を算出する処理を行い、これらの値を計測装置1の記憶部130に記憶させてもよい。
【0112】
1-5.作用効果
以上に説明した第1実施形態の計測方法では、計測装置1は、観測点R1~RNを観測するN個のセンサー23による観測情報に基づいて、観測点R1~RNの物理量として変位u1~uNを取得する。そして、観測点Rjの作用xjと、作用xjが観測点Riに及ぼす作用との相関を示す関数をyijとしたとき、計測装置1は、変位uiが、関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、式(8)により、変位u1~uNに基づいて、観測点R1~RNの作用x1~xNを算出する。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、移動体である車両6が構造物である上部構造7の観測点Rjを通過する時の作用xjを他の作用から分離して算出することができる。例えば、複数の車両6が複数のレーンを並走する場合でも、計測装置1は、レーンLiを走行する車両6による観測点Riの作用xiが観測点Rjに及ぼす作用の影響を排除して、レーンLjを走行する車両6による観測点Rjの作用xjを算出することができる。
【0113】
また、第1実施形態の計測方法では、計測装置1は、観測点R1~RNの作用x1~xNに基づいて、観測点R1~RNの変位u’1~u’Nを算出し、変位u’1~u’Nに基づいて、観測点R1~RNの車両6による荷重を算出する。したがって、第1実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、他の作用から分離して算出された観測点Rjの作用xjに基づいて、車両6の走行による観測点Rjの変位や荷重を精度良く算出することができる。例えば、複数の車両6が複数のレーンを並走する場合でも、計測装置1は、レーンLjを移動した車両6によるレーンLjの変位や荷重を精度良く算出することができる。この変位や荷重の情報により、例えば、計測装置1あるいはサーバー2は、過積載の車両の監視や上部構造7の異常判定等の処理を精度良く行うことができる。
【0114】
また、第1実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、上部構造7を通過する車両6の車軸重量による上部構造7の変位や車両6の荷重を算出することができるため、上部構造7の損傷を予測するための橋梁5の維持管理のために十分な情報を提供することができる。
【0115】
2.第2実施形態
第1実施形態の計測方法では、物理量取得ステップにおいて、計測装置1は、観測点R1~RNの物理量として観測点R1~RNの変位u1~uNを取得する。これに対して、第2実施形態の計測方法では、物理量取得ステップにおいて、計測装置1は、観測点R1~RNの物理量として観測点R1~RNの車両6による荷重w1~wNを取得する。以下、第2実施形態について、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して第1実施形態と重複する説明を省略又は簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0116】
式(13)に示すように、観測点Riの車両6による荷重fiは、前述の関数yi1~yiNの値の和に等しいものとする。
【0117】
【0118】
このとき、前述の式(1)及び式(13)より、観測点R1~RNの車両6による荷重f1~fNを要素とする荷重ベクトルfは、式(14)のように表される。
【0119】
【0120】
式(14)において、ベクトルYの各要素ykは式(15)のように定義される。kは1以上N以下の任意の整数である。
【0121】
【0122】
実際に観測される観測点R1~RNのそれぞれの車両6による荷重w1~wNを要素とする荷重ベクトルwが、荷重ベクトルfと等しいものとすると、式(16)が得られる。
【0123】
【0124】
式(16)を変形し、式(17)が得られる。
【0125】
【0126】
1次係数行列A及び0次係数行列Bが既知であれば、観測によって得られる荷重ベクトルwを式(17)に代入することにより、未知である作用x1~xNを要素とする作用ベクトルXが算出される。
【0127】
一例として、前述の
図5及び
図6に示した配置例のように、N=2の場合を例に挙げて、式(17)から作用x
1,x
2を導出する過程を詳細に説明する。N=2であるから、式(17)より式(18)が得られる。
【0128】
【0129】
式(18)を変形し、式(19)が得られる。
【0130】
【0131】
式(19)より、作用x1,x2は、それぞれ式(20)及び式(21)のように計算される。
【0132】
【0133】
【0134】
図16は、第2実施形態の計測方法の手順の一例を示すフローチャート図である。本実施形態では、計測装置1が
図16に示す手順を実行する。
【0135】
図16に示すように、まず、計測装置1は、車両が単独で上部構造7を走行したときの観測点R
1~R
Nの車両による荷重w
1~w
Nを取得し、荷重w
1~w
Nに基づいて、関数y
ijの係数a
ij,b
ijの値を算出する(ステップS101)。iは1以上N以下の任意の整数であり、jは1以上N以下の任意の整数である。車両は、未知の移動体である車両6とは異なる既知の移動体である。具体的には、計測装置1は、式(17)に含まれる1次係数行列Aの逆行列A
-1及び0次係数行列Bを算出する。このステップS101は係数値算出ステップである。
【0136】
次に、計測装置1は、観測点R1~RNを観測するN個のセンサー23による観測情報に基づいて、車両6が上部構造7を移動するときの観測点R1~RNの物理量として車両6による荷重w1~wNを取得する(ステップS102)。前述の通り、N個のセンサー23はそれぞれ加速度センサーであり、N個のセンサー23による観測情報は、観測点R1~RNに生じた加速度の検出情報である。そして、この加速度は、第1方向であるX方向と第2方向であるY方向とそれぞれ交差する第3方向の加速度である。計測装置1は、N個のセンサー23がそれぞれ検出した第3方向の加速度に基づいて式(17)に含まれる荷重ベクトルwを算出する。したがって、物理量取得ステップで計測装置1が取得する観測点R1~RNの物理量としての荷重w1~wNは、X方向及びY方向とそれぞれ交差する第3方向の荷重、例えば、X方向及びY方向とそれぞれ直交する第3方向の荷重である。このステップS102は物理量取得ステップである。
【0137】
次に、計測装置1は、観測点Riの車両6による荷重wiが関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、ステップS102で取得した荷重w1~wNに基づいて、観測点R1~RNの作用x1~xNを算出する(ステップS103)。iは1以上N以下の任意の整数である。具体的には、計測装置1は、式(17)に、ステップS101で算出した1次係数行列Aの逆行列A-1及び0次係数行列B及びステップS102で算出した荷重ベクトルwを代入して作用ベクトルXを算出する。このステップS103は作用算出ステップである。
【0138】
次に、計測装置1は、ステップS103で算出した作用x1~xNに基づいて、観測点R1~RNの車両6による荷重w’1~w’Nを算出する(ステップS104)。例えば、1以上N以下の各整数jに対して、式(14)の右辺において、作用x1~xNのうちの作用xjを除くすべての作用をゼロとして算出される荷重fjを荷重w’jとする。このステップS104は荷重算出ステップである。
【0139】
次に、計測装置1は、ステップS104で算出した荷重w’1~w’Nに基づいて、車両6の走行によるレーンL1~LNのそれぞれの変位を算出する(ステップS105)。1以上N以下の各整数jに対して、荷重w’jとレーンLjの変位との間には相関があるので、あらかじめ車両による荷重試験において、この相関式の係数を算出しておく。計測装置1は、当該相関式に荷重w’jを代入してレーンLjの変位を算出することができる。このステップS105は変位算出ステップである。
【0140】
次に、計測装置1は、ステップS105で算出したレーンL1~LNの変位をサーバー2に出力する(ステップS106)。このステップS106は、出力ステップである。
【0141】
計測装置1は、計測を終了するまで(ステップS107のN)、ステップS102~S106の処理を繰り返し行う。
【0142】
第2実施形態における計測装置1の構成は、
図15と同様であるため、その図示を省略する。第1実施形態と同様、計測装置1は、制御部110と、第1通信部120と、記憶部130と、第2通信部140と、操作部150と、を有している。
【0143】
第1通信部120、記憶部130、第2通信部140及び操作部150がそれぞれ行う処理は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0144】
制御部110は、上部構造7に設置された各センサー23から出力される加速度データに基づいて、車両6による荷重等を算出する。第1実施形態と同様、制御部110は、物理量取得部111と、作用算出部112と、変位算出部113と、荷重算出部114と、係数値算出部115と、出力処理部116と、を備えている。
【0145】
物理量取得部111は、観測点R
1~R
Nを観測するN個のセンサー23による観測情報に基づいて、車両6が上部構造7を移動するときの観測点R
1~R
Nの物理量として車両6による荷重w
1~w
Nを取得する。すなわち、物理量取得部111は、
図16における物理量取得ステップの処理を行う。物理量取得部111が取得した荷重w
1~w
Nは、記憶部130に記憶される。
【0146】
作用算出部112は、1以上N以下の任意の整数iに対して、観測点R
iの車両6による荷重w
iが関数y
i1~y
iNの値の和に等しいものとして、物理量取得部111が取得した荷重w
1~w
Nに基づいて、観測点R
1~R
Nの作用x
1~x
Nを算出する。すなわち、作用算出部112は、
図16における作用算出ステップの処理を行う。作用算出部112が算出した作用x
1~x
Nは、記憶部130に記憶される。
【0147】
変位算出部113は、荷重算出部114が算出した荷重w’
1~w’
Nに基づいて、車両6の走行によるレーンL
1~L
Nのそれぞれの変位を算出する。すなわち、変位算出部113は、
図16における変位算出ステップの処理を行う。変位算出部113が算出した車両6の走行によるレーンL
1~L
Nのそれぞれの変位は、記憶部130に記憶される。
【0148】
荷重算出部114は、作用算出部112が算出した作用x
1~x
Nに基づいて、観測点R
1~R
Nの車両6による荷重w’
1~w’
Nを算出する。すなわち、荷重算出部114は、
図16における荷重算出ステップの処理を行う。荷重算出部114が算出した荷重w’
1~w’
Nは、記憶部130に記憶される。
【0149】
係数値算出部115は、1以上N以下の任意の整数i,jに対して、車両が単独で上部構造7を走行したときの観測点R
1~R
Nの車両による荷重w
1~w
Nを取得し、荷重w
1~w
Nに基づいて、関数y
ijの係数a
ij,b
ijの値を算出する。すなわち、係数値算出部115は、
図16における係数値算出ステップの処理を行う。係数値算出部115が算出した1次係数a
11~a
NNの値及び0次係数b
11~b
NNの値は、記憶部130に記憶される。
【0150】
出力処理部116は、変位算出部113が算出したレーンL
1~L
Nの変位を、第2通信部140を介してサーバー2に出力する処理を行う。すなわち、出力処理部116は、
図16における出力ステップの処理を行う。
【0151】
例えば、制御部110は、操作部150からの操作データに基づいて、未知の車両6による荷重等を算出する第1モードと、1次係数a11~aNN及び0次係数b11~bNNを算出する第2モードとを切り替える。例えば、N個のセンサー23が上部構造7に設置された後、制御部110が第2モードに設定された状態で複数の車両による荷重試験が行われ、荷重試験の終了後、制御部110は第1モードに設定される。
【0152】
第1実施形態と同様、制御部110は、記憶部130に記憶された各種のプログラムを実行するプロセッサーであり、記憶部130に記憶された計測プログラム131を実行することにより、物理量取得部111、作用算出部112、変位算出部113、荷重算出部114、係数値算出部115、出力処理部116の各機能を実現する。換言すれば、計測プログラム131は、
図16に示したフローチャートの各手順を、コンピューターである計測装置1に実行させるプログラムである。ただし、制御部110は、ASICなどのカスタムICとして構成され、各部の機能を実現してもよいし、CPUとASICとによって各部の機能を実現してもよい。
【0153】
なお、制御部110は変位算出部113を含まなくてもよい。また、制御部110は係数値算出部115を含まなくてもよい。例えば、サーバー2あるいは他の装置が、1次係数a11~aNNの値及び0次係数b11~bNNの値を算出する処理を行い、これらの値を計測装置1の記憶部130に記憶させてもよい。
【0154】
以上に説明した第2実施形態の計測方法では、計測装置1は、観測点R1~RNを観測するN個のセンサー23による観測情報に基づいて、観測点R1~RNの物理量として車両6による荷重w1~wNを取得する。そして、観測点Rjの作用xjと、作用xjが観測点Riに及ぼす作用との相関を示す関数をyijとしたとき、計測装置1は、荷重wiが、関数yi1~yiNの値の和に等しいものとして、式(17)により、荷重w1~wNに基づいて、観測点R1~RNの作用x1~xNを算出する。したがって、第2実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、移動体である車両6が構造物である上部構造7の観測点Rjを通過する時の作用xjを他の作用から分離して算出することができる。例え
ば、複数の車両6が複数のレーンを並走する場合でも、計測装置1は、レーンLiを走行する車両6による観測点Riの作用xiが観測点Rjに及ぼす作用の影響を排除して、レーンLjを走行する車両6による観測点Rjの作用xjを算出することができる。
【0155】
また、第2実施形態の計測方法では、計測装置1は、観測点R1~RNの作用x1~xNに基づいて、観測点R1~RNの車両6による荷重w’1~w’Nを算出し、荷重w’1~w’Nに基づいて、観測点R1~RNの変位を算出する。したがって、第2実施形態の計測方法によれば、計測装置1は、他の作用から分離して算出された観測点Rjの作用xjに基づいて、車両6の走行による観測点Rjの荷重や変位を精度良く算出することができる。例えば、複数の車両6が複数のレーンを並走する場合でも、計測装置1は、レーンLjを移動した車両6によるレーンLjの荷重や変位を精度良く算出することができる。この荷重や変位の情報により、例えば、計測装置1あるいはサーバー2は、過積載の車両の監視や上部構造7の異常判定等の処理を精度良く行うことができる。
【0156】
3.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0157】
上記の各実施形態では、車両6がレーンLjを走行した時の観測点Rjの作用xjと、観測点Rjの作用xjが観測点Riに及ぼす作用との相関を示す関数yijは、式(1)に示す1次多項式関数であるものとしたが、相関が直線でない場合は、関数yijは、式(22)に示すようなm次多項式関数であってもよい。
【0158】
【0159】
また、上記の各実施形態では、観測点R1~RNを観測する観測装置は、それぞれ加速度センサーであるが、これに限られず、例えば、接触式変位計、リング式変位計、レーザー変位計、感圧センサー、画像処理による変位計測機器又は光ファイバーによる変位計測機器であってもよい。観測装置と観測点が1対1に対応している必要はなく、1つの観測装置が観測点R1~RNの一部又は全部を観測してもよい。
【0160】
接触式変位計、リング式変位計、レーザー変位計、画像処理による変位計測機器、光ファイバーによる変位計測機器は、車両6の観測点R1~RNの作用に対する応答として変位を計測する。計測装置1は、観測点R1~RNの変位に基づいて、観測点R1~RNの物理量としての変位又は車両6による荷重を算出する。感圧センサーは、車両6の観測点R1~RNへの作用に対する応答として応力変化を検出する。計測装置1は、観測点R1~RNの応力変化に基づいて、観測点R1~RNの物理量としての変位又は車両6による荷重を算出する。
【0161】
また、上記の各実施形態では、車両6がレーンL1~LNを走行する方向はすべて同じであるが、レーンL1~LNのうちの少なくとも1つのレーンと他のレーンとは車両6の走行方向が異なっていてもよい。
【0162】
また、上記の各実施形態では、各センサー23は、それぞれ上部構造7の主桁Gに設けられているが、上部構造7の表面や内部、床板Fの下面、橋脚8a等に設けられていてもよい。また、上記の各実施形態では、橋梁5として道路橋を例に挙げたが、これに限られず、例えば、橋梁5は鉄道橋であってもよい。また、上記の各実施形態では、構造物として橋梁の上部構造を例に挙げたが、これに限られず、構造物は移動体の移動によって変形
するものであればよい。
【0163】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0164】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0165】
1…計測装置、2…サーバー、4…通信ネットワーク、5…橋梁、6…車両、7…上部構造、7a…橋床、7b…支承、G…主桁、F…床板、8…下部構造、8a…橋脚、8b…橋台、10…計測システム、23…センサー、110…制御部、111…物理量取得部、112…作用算出部、113…変位算出部、114…荷重算出部、115…係数値算出部、116…出力処理部、120…第1通信部、130…記憶部、131…計測プログラム、140…第2通信部、150…操作部