(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
A61G 5/08 20060101AFI20240305BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20240305BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20240305BHJP
B62K 5/007 20130101ALI20240305BHJP
【FI】
A61G5/08 703
A61G5/12 701
A61G5/12 705
A61G5/10 703
B62K5/007
(21)【出願番号】P 2020051095
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐大
(72)【発明者】
【氏名】安池 重暁
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 清和
(72)【発明者】
【氏名】松浦 漠
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智哉
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-500115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00-5/14
B62K 5/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動駆動により走行可能に構成される移動ベースと、
前記移動ベース上に配置されるシートと
を備え、
前記移動ベースが、前輪を有する前側ベースと、後輪を有する後側ベースとを含み、
前記後側ベースが、前記前側ベースに対して車両後方に配置され、
前記移動ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側及び後側ベースを互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、
前記シートが、着座面を有する着座部を含む、電動車両であって、
前記前側ベースが、前記前側ベースの骨格を成す前側本体と、車両幅方向に沿って配置される補強部材と、車両上方から前記補強部材に重なるように配置される前側ボードとを有し、
前記前側本体が、前記補強部材及び前記前側ボードを支持し、
前記前側本体は、車両後方に向かって開口するように車両前後方向の後端に形成される後方開口部を有し、
前記後側ベースは、前記後側ベースの骨格を成す後側本体を有し、前記後側本体は、前記前側及び後側ベースの相対的な移動により、車両後方から前記前側本体の前記後方開口部を通って前記前側本体と車両前後方向にオーバーラップしながら、前記前側本体に対して車両前後方向にスライド移動可能になっており、
前記着座面が車両上方を向いた状態かつ前記移動ベースの拡大状態で、前記前側ボードの車両前後方向の前端及び前記補強部材が、前記着座部の車両前後方向の前端よりも車両前方に配置され、
前記補強部材が、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部と、前記補強部材の側方傾斜部から車両幅方向の外方に延びる腕部とを有し、
前記前側ボードが、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部を有しており、
前記補強部材及び前記前側ボードの側方傾斜部のそれぞれが、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜しており、
前記補強部材の側方傾斜部が前記前側ボードの側方傾斜部に沿って配置されており、
前記補強部材の腕部が、前記前側本体から車両幅方向の外方に向かって突出しており、
前記前輪が前記補強部材の腕部に取り付けられている、電動車両。
【請求項2】
電動駆動により走行可能に構成される移動ベースと、
前記移動ベース上に配置されるシートと
を備え、
前記移動ベースが、前輪を有する前側ベースと、後輪を有する後側ベースとを含み、
前記後側ベースが、前記前側ベースに対して車両後方に配置され、
前記移動ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側及び後側ベースを互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、
前記シートが、着座面を有する着座部を含む、電動車両であって、
前記前側ベースが、前記前側ベースの骨格を成す前側本体と、車両幅方向に沿って配置される補強部材と、車両上方から前記補強部材に重なるように配置される前側ボードとを有し、
前記前側本体が、前記補強部材及び前記前側ボードを支持し、
前記後側ベースが、前記移動ベースの縮小状態で、前記前側ボードに対して車両上方に位置し、かつ前記前側ボードを収容するように構成される後側ボードを有し、
前記着座面が車両上方を向いた状態かつ前記移動ベースの拡大状態で、前記前側ボードの車両前後方向の前端及び前記補強部材が、前記着座部の車両前後方向の前端よりも車両前方に配置され、
前記補強部材が、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部と、前記補強部材の側方傾斜部から車両幅方向の外方に延びる腕部とを有し、
前記前側ボードが、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部を有しており、
前記補強部材及び前記前側ボードの側方傾斜部のそれぞれが、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜しており、
前記補強部材の側方傾斜部が前記前側ボードの側方傾斜部に沿って配置されており、
前記補強部材の腕部が、前記前側本体から車両幅方向の外方に向かって突出しており、
前記前輪が前記補強部材の腕部に取り付けられている、電動車両。
【請求項3】
前記前側ボードの車両前後方向の長さが前記補強部材の車両前後方向の長さよりも長くなるように、前記前側ボードが前記補強部材から車両後方に延びている、請求項1
または2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記前側ボードが樹脂製となっている、請求項1
~3のいずれか一項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記後側ベースが、前記移動ベースの縮小状態で、前記前側ボードに対して車両上方に位置し、かつ前記前側ボードを収容するように構成される後側ボードを有する、請求項
1に記載の電動車両。
【請求項6】
前記後側ボードが、前記後側ベースの車両水平方向の中央領域に配置される底部と、車両水平方向にて前記後側ベースの中央領域の周囲に位置する周縁領域に配置される周縁傾斜部とを有し、前記周縁傾斜部が、車両水平方向にて前記後側ベースの中央領域から離れるに従って車両上方に立ち上がるように傾斜している、請求項
2または5に記載の電動車両。
【請求項7】
前記前側ボードが、前記前側本体の車両幅方向の中央領域に配置される底部と、前記前側本体の車両前後方向の前縁領域に配置される前方傾斜部とを有し、
前記前方傾斜部が、車両前方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜している、請求項1~
6のいずれか一項に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動により走行可能な移動ベースと、着座部を有するシートとを備え、移動ベースがその前輪及び後輪間のホイールベースを拡縮可能とするように構成される、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者、要介護者等のユーザの移動手段として、モータ等の駆動手段によって走行可能な電動車椅子、電動カート等の電動車両が普及してきている。このような電動車両は、「シニアカー」と呼ばれることもある。典型的に、電動車両は、電動駆動により走行可能な移動ベースと、着座部を有するシートとを備えていて、ユーザは電動車両のシートの着座部に着座した状態で移動することができる。
【0003】
さらに、電動車両は折り畳み可能に構成されることがある。この場合、電動車両の移動ベースがその前輪及び後輪間のホイールベースを拡縮可能とするように構成される。具体的には、電動車両は、移動ベースのホイールベースを拡大した展開状態と、ホイールベースを展開状態よりも縮小した折り畳み状態とに変形可能に構成される。電動車両は、展開状態では、ユーザを搭乗可能とすると共に走行時の安定性を得ることができ、かつ電動車両は、折り畳み状態では、電動車両の後方からの手押しによる移動に適するように小回り可能となる。
【0004】
このような電動車両は、その展開状態において、シートに着座するユーザの足を載せるフットレストを必要とする。フットレストを有する電動車両の一例としては、前輪及び後輪間のホイールベースを拡縮可能とするように構成された車体と、着座部を有し、かつ車体上に配置されるシートと、車両水平方向に沿って平坦に形成されるフロア(フットレストに相当)とを備え、フロアが、車体の拡大状態でシートの着座部に着座するユーザの足を載せることができるように車体の前部に配置され、前輪がフロアの下面に取り付けられている、小型電動車両が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電動車両のコーナーリングによって横加速度が作用する場合、ユーザは、横加速度に対抗するために、その足をフットレスト上で踏ん張らせる。しかしながら、上記電動車両の一例においては、平坦に形成されたフロアがフットレストに相当する。そのため、横加速度によってユーザの足はフットレスト上で車両幅方向に横滑りし易い。すなわち、ユーザが横加速度に対抗するようにその足をフットレスト上で踏ん張らせることが難しくなっている。さらには、このような電動車両に搭乗するユーザの姿勢は不安定になる。また、フットレストにはユーザの体重及び横加速度に基づく負荷が掛かるので、フットレストを補強することもまた重要となる。
【0007】
上記電動車両の一例において、ユーザが高齢者、要介護者等である場合を考慮すると、ユーザの乗り降りをし易くするためには、フットレストの高さを低くすることが望ましい。しかしながら、フットレストの高さが低くなるに従って、フットレストの下面に取り付けられた前輪の径が小さくなる。前輪の径が小さくなると、電動車両がその前進時に段差を乗り越えることが難しくなる。すなわち、電動車両の走行性能が十分に得られなくなるおそれがある。
【0008】
上記電動車両の一例において、電動車両は買い物籠等の荷物の載置スペースを確保することが要求される。そのため、電動車両を、小回り可能とするように小型化するためには、フットレストの設置スペース及び荷物の載置スペースを効率的に確保することが望まれる。
【0009】
このような実情を勘案すると、電動車両においては、電動車両に搭乗するユーザの姿勢の安定性を向上可能とし、電動車両の走行性能の低下を防ぐことを可能とし、フットレストの強度を効率的に向上可能とし、かつフットレストの設置スペース及び荷物の載置スペースを効率的に確保可能とすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、一態様に係る電動車両は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベースと、前記移動ベース上に配置されるシートとを備え、前記移動ベースが、前輪を有する前側ベースと、後輪を有する後側ベースとを含み、前記後側ベースが、前記前側ベースに対して車両後方に配置され、前記移動ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側及び後側ベースを互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、前記シートが、着座面を有する着座部を含む、電動車両であって、前記前側ベースが、前記前側ベースの骨格を成す前側本体と、車両幅方向に沿って配置される補強部材と、車両上方から前記補強部材に重なるように配置される前側ボードとを有し、前記前側本体が、前記補強部材及び前記前側ボードを支持し、前記前側本体は、車両後方に向かって開口するように車両前後方向の後端に形成される後方開口部を有し、前記後側ベースは、前記後側ベースの骨格を成す後側本体を有し、前記後側本体は、前記前側及び後側ベースの相対的な移動により、車両後方から前記前側本体の前記後方開口部を通って前記前側本体と車両前後方向にオーバーラップしながら、前記前側本体に対して車両前後方向にスライド移動可能になっており、前記着座面が車両上方を向いた状態かつ前記移動ベースの拡大状態で、前記前側ボードの車両前後方向の前端及び前記補強部材が、前記着座部の車両前後方向の前端よりも車両前方に配置され、前記補強部材が、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部と、前記補強部材の側方傾斜部から車両幅方向の外方に延びる腕部とを有し、前記前側ボードが、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部を有しており、前記補強部材及び前記前側ボードの側方傾斜部のそれぞれが、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜しており、前記補強部材の側方傾斜部が前記前側ボードの側方傾斜部に沿って配置されており、前記補強部材の腕部が、前記前側本体から車両幅方向の外方に向かって突出しており、前記前輪が前記補強部材の腕部に取り付けられている。
他の態様に係る電動車両は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベースと、前記移動ベース上に配置されるシートとを備え、前記移動ベースが、前輪を有する前側ベースと、後輪を有する後側ベースとを含み、前記後側ベースが、前記前側ベースに対して車両後方に配置され、前記移動ベースが、前記前輪及び前記後輪間のホイールベースを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側及び後側ベースを互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、
前記シートが、着座面を有する着座部を含む、電動車両であって、前記前側ベースが、前記前側ベースの骨格を成す前側本体と、車両幅方向に沿って配置される補強部材と、車両上方から前記補強部材に重なるように配置される前側ボードとを有し、前記前側本体が、前記補強部材及び前記前側ボードを支持し、前記後側ベースが、前記移動ベースの縮小状態で、前記前側ボードに対して車両上方に位置し、かつ前記前側ボードを収容するように構成される後側ボードを有し、前記着座面が車両上方を向いた状態かつ前記移動ベースの拡大状態で、前記前側ボードの車両前後方向の前端及び前記補強部材が、前記着座部の車両前後方向の前端よりも車両前方に配置され、前記補強部材が、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部と、前記補強部材の側方傾斜部から車両幅方向の外方に延びる腕部とを有し、前記前側ボードが、前記前側本体の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部を有しており、前記補強部材及び前記前側ボードの側方傾斜部のそれぞれが、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜しており、前記補強部材の側方傾斜部が前記前側ボードの側方傾斜部に沿って配置されており、前記補強部材の腕部が、前記前側本体から車両幅方向の外方に向かって突出しており、前記前輪が前記補強部材の腕部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0011】
一態様に係る電動車両においては、電動車両に搭乗するユーザの姿勢の安定性を向上させることができ、電動車両の走行性能の低下を防ぐことができ、フットレストの強度を効率的に向上させることができ、かつフットレストの設置スペース及び荷物の載置スペースを効率的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る電動車両を展開状態で概略的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る電動車両を折り畳み状態で概略的に示す正面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る電動車両の下方部分を、電動車両の展開状態、かつ前側ベースの前側カバーを省略した状態で概略的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7の電動車両の前方部分を、
図7のA-A線に沿って切断した状態で概略的に示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態に係る電動車両について以下に説明する。本実施形態に係る電動車両1は、
図1~
図3に示すように電動車椅子として用いられるドライブモードと、
図4~
図6に示すように電動歩行補助者として用いられるプッシュモードとに変形可能である。このような電動車両1は、電動車椅子の機能を備えた電動歩行補助車と呼ぶこともできる。特に、
図1~
図3に示すように、電動車両1は、ドライブモードにて1人乗り電動車椅子として用いられるように構成することができる。
【0014】
しかしながら、電動車両はこれに限定されない。例えば、電動車両は、プッシュモードにてショッピングカート、台車等として用いられるように構成することができる。電動車両は、ドライブモードにて電動カート等として用いられるように構成することができる。電動車両は、プッシュモード及びドライブモードの一方のみで用いられるように構成することもできる。以下においては、電動車両を必要に応じて単に「車両」と呼ぶ。
【0015】
本実施形態の説明に用いられる図面においては、車両を基準とした方向を次のように示す。
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、及び
図8においては、車両前方及び車両後方を、それぞれ片側矢印F及び片側矢印Bによって示す。
図1、
図3、
図4、及び
図6~
図8においては、車両前方を向いた場合の左側及び右側を、それぞれ片側矢印L及び片側矢印Rによって示す。車両幅方向は、片側矢印L及び片側矢印Rによって示される。なお、以下の説明において、左側及び右側は、このように車両前方を向いた場合の左側及び右側をそれぞれ指す。さらに、
図1~
図8においては、車両上方及び車両下方を、それぞれ片側矢印U及び片側矢印Dによって示す。なお、車両水平方向は、車両前後方向かつ車両幅方向に沿った面内方向である。
【0016】
「電動車両の概略」
図1~
図8を参照して、本実施形態に係る電動車両1の概略について説明する。すなわち、電動車両1は、概略的には次のように構成することができる。
【0017】
図1~
図8に示すように、電動車両1は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース10を有する。移動ベース10は、前側ベース20を有する。前側ベース20は前輪21を有する。移動ベース10は、前側ベース20に対して車両後方に配置される後側ベース30を有する。後側ベース30は後輪31を有する。移動ベース10は、
図1~
図3に示すように、前輪21及び後輪31間のホイールベースHを拡大した拡大状態と、
図4~
図6に示すように、ホイールベースHをこの拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前側及び後側ベース20,30を互いに対して相対的に移動可能とするように構成されている。前側及び後側ベース20,30の相対的な移動は、相対的な車両前後方向のスライド移動である。
【0018】
図1~
図6に示すように、車両1は、移動ベース10上に配置されるシート40を有する。シート40は、ユーザが着座可能となるように構成される着座部41を有する。着座部41は、ユーザの着座に用いられる着座面42を有する。
【0019】
図1~
図8に示すように、前側ベース20は、その骨格を成す前側本体22を有する。前側ベース20は、車両幅方向に沿って配置される補強部材50を有する。前側ベース20は、車両上方から補強部材50に重なるように配置される前側ボード60を有する。前側本体22は、補強部材50及び前側ボード60を支持する。
【0020】
図1~
図3に示すように、シート40の着座部41の着座面42が車両上方を向いた状態、かつ移動ベース10の拡大状態において、前側ボード60の車両前後方向の前端及び補強部材50は、着座部41の車両前後方向の前端よりも車両前方に配置される。
【0021】
図1~
図8に示すように、補強部材50は、前側本体22の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部51を有する。補強部材50の側方傾斜部51は、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。補強部材50は、その側方傾斜部51から車両幅方向の外方に延びる腕部52を有する。補強部材50の腕部52は、車両幅方向にて前側本体22から突出する。前輪21は補強部材50の腕部52に取り付けられる。
【0022】
前側ボード60は、前側本体22の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部61を有する。前側ボード60の側方傾斜部61もまた、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。補強部材50の側方傾斜部51は、この前側ボード60の側方傾斜部61に沿って配置される。
【0023】
さらに、電動車両1は、概略的には次のように構成することができる。
図1、
図2、
図4、
図5、
図7、及び
図8に示すように、前側ボード60の車両前後方向の長さが補強部材50の車両前後方向の長さよりも長くなるように、前側ボード60が補強部材50から車両後方に延びている。前側ボード60は樹脂製となっている
【0024】
図1~
図8に示すように、後側ベース30は、荷台として用いることができる後側ボード70を有する。
図4~
図6に示すように、後側ボード70は、移動ベース10の縮小状態で、前側ボード60に対して車両上方に位置する。後側ボード70はまた、移動ベース10の縮小状態で、前側ボード60を収容するように構成される。
図1~
図8に示すように、後側ボード70は、後側ベース30の車両水平方向の中央領域に配置される底部71を有する。後側ボード70は、車両水平方向にて後側ベース30の中央領域の周囲に位置する周縁領域に配置される周縁傾斜部72を有する。周縁傾斜部72は、車両水平方向にて後側ベース30の中央領域から離れるに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。
【0025】
さらに、
図1~
図3、
図7、及び
図8に示すように、前側ボード60は、前側本体22の車両幅方向の中央領域に配置される底部62を有する。
図1、
図4、
図7、及び
図8に示すように、前側ボード60は、前側本体22の車両前後方向の前縁領域に配置される前方傾斜部63を有する。前方傾斜部63は、車両前方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。
【0026】
「電動車両の詳細」
図1~
図6を参照すると、電動車両1は、詳細には次のように構成することができる。
図1~
図5に示すように、電動車両1において、シート40の着座部41は、着座面42とは反対側を向く裏面43を有する。
図1~
図3及び
図5に示すように、車両1は、電動駆動に用いられる電力を供給可能に構成されるバッテリ2を有する。バッテリ2はシート40の着座部41の裏面43に配置される。かかるシート40は、
図1~
図3に示すように、着座面42を車両上方に向けるように配置した着座位置と、
図4~
図6に示すように、着座部41を着座位置から車両前方に退避させた退避位置との間で移動可能に構成される。
【0027】
図1~
図3に示すように、車両1のドライブモードでは、移動ベース10を拡大状態とすることができ、かつシート40を着座位置に配置することができる。このようなドライブモードは、展開状態と呼ぶこともできる。ドライブモードでは、車両上下方向にて後側ベース30と、シート40の着座部41に配置されたバッテリ2との間に、荷物の載置スペースが確保される。この荷物の載置スペースにおいて、後側ベース30上に荷台として構成される後側ボード70を設置することができる。
【0028】
図4~
図6に示すように、車両1のプッシュモードでは、移動ベース10を縮小状態とすることができ、かつシート40を退避位置に配置することができる。このようなプッシュモードは、折り畳み状態と呼ぶこともできる。プッシュモードでは、後側ベース30に対して車両上方、かつシート40の着座部41の裏面43に配置されたバッテリ2に対して車両後方に、ドライブモードと同様の荷物の載置スペースが確保される。特に、車両1がこのようなドライブモード及びプッシュモード間で変化するときに、拡大状態及び縮小状態間における移動ベース10の変化と、着座位置及び退避位置間におけるシート40との移動とが連動するとよい。
【0029】
図1~
図6に示すように、車両1は、移動ベース10の電動駆動に用いられる電動機3を有する。電動機3は、2つの後輪31をそれぞれ駆動可能とするように構成される2つのモータ3aとすることができる。車両1は、この車両1の制御に用いられる制御装置4を有する。制御装置4は、電動機3を制御可能とするように構成される。車両1は、特にドライブモードにて、シート40に着座したユーザが操作可能となるように構成される前側操作装置5を有する。車両1は、特にプッシュモードにて、車両1の後方に位置するユーザが操作可能となるように構成される後側操作装置6を有する。
【0030】
特に明確に図示はしないが、バッテリ2は、電動機3の2つのモータ3a、制御装置4、並びに前側及び後側操作装置5,6に電気的に接続される。バッテリ2は、電動機3の2つのモータ3a、制御装置4、並びに前側及び後側操作装置5,6に電力を供給可能になっている。
【0031】
さらに、制御装置4は、バッテリ2に加えて、電動機3の2つのモータ3a、前側操作装置5、及び後側操作装置6に電気的に接続されている。制御装置4は、前側又は後側操作装置5,6からの入力に応じて2つのモータ3aを制御可能とするように構成される。
【0032】
さらに
図1~
図3に示すように、シート40は、着座位置にある状態で、着座部41の着座面42を実質的に車両水平方向に沿わせるように配置される。
図4~
図6に示すように、シート40は、退避位置にある状態で、着座部41の着座面42を、車両上下方向及び車両幅方向に広がる平面に対して所定の角度に向けるように配置されるとよい。かかる角度は絶対値で約30°以下であるとよい。しかしながら、着座面の角度は、これに限定されない。さらに、
図1~
図6に示すように、シート40が着座位置及び退避位置のいずれにある状態でも、着座部41の前端区域41aは、着座部41のシート前後方向の後端区域41bに対して車両前方に位置する。
【0033】
ここで、本実施形態においては、シート40を基準とした方向を次のように定義する。シート前方及びシート後方は、シート40が着座位置にある状態で、それぞれ車両前方及び車両後方に略一致する。シート左側及びシート右側は、それぞれ車両左側及び車両右側と略一致する。シート幅方向は、シート左側及びシート右側によって定義される。着座部41の着座面42及び裏面43の向く方向を、それぞれシート上方及びシート下方と定義する。シート上方及びシート下方は、シート40が着座位置にある状態で、それぞれ車両上方及び車両下方に略一致する。
【0034】
図1~
図6に示すように、車両1において、シート40は、着座部41を支持可能に構成される脚部44を有する。本実施形態においては、シート40は、シート幅方向に互いに間隔を空けた2つの脚部44を有する。以下において、特に、2つの脚部44について言及しない限り、2つの脚部44の一方を代表的に説明するものとする。なお、シートは、2つの脚部のうち一方のみを有することもできる。
【0035】
2つの脚部44は、車両幅方向にて略対称となるように構成することができる。各脚部44は、シート40を着座位置と退避位置との間で移動可能とするように、前側ベース20とフレーム90とに取り付けられている。
【0036】
各脚部44は、この脚部44をフレーム90に対して旋回可能とするように、フレーム90に取り付けられるフレーム取付区域44aを有する。各脚部44は、前側ベース20に取り付けられるベース取付区域44bを有する。より具体的には、各脚部44のベース取付区域44bは、この脚部44をフレーム90に対して旋回可能とし、かつこの脚部44を後側ベース30に対する前側ベース20の前後移動に追従可能とするように、前側ベース20に取り付けられている。
【0037】
各脚部44のフレーム取付区域44aは、この脚部44のシート上下方向の中間に位置する。各脚部44のベース取付区域44bは、この脚部44のシート上下方向の下端に位置する。各脚部44のフレーム取付区域44aは、着座部41と、この脚部44のベース取付区域44bとの間に位置する。
【0038】
図1~
図6に示すように、車両1は、着座面42に対して車両幅方向の外方寄りかつ車両上方寄りに位置するアームレスト本体81を有するアームレスト80を含む。本実施形態においては、車両1は、着座面42に対して車両幅方向の両外方寄りにそれぞれ位置する2つのアームレスト80を有する。なお、車両は、2つのアームレストのうち一方のみを有することもできる。
【0039】
2つのアームレスト80は、車両幅方向にて略対称となるように構成することができる。各アームレスト80のアームレスト本体81は、シート40が着座位置にあるときに着座部41に着座するユーザの肘を載せることができるように構成される。アームレスト本体81は、車両前方を向く先端部82を有する。各アームレスト80は、そのアームレスト本体81の先端部82から突出するグリップ83を有する。各アームレスト80のグリップ83は、このアームレスト80のアームレスト本体81の先端部82から車両上方に突出する。
【0040】
2つのグリップ83の一方は、前側操作装置5として構成される。ユーザは、このような前側操作装置5を操作することによって車両1を操縦することができる。前側操作装置5は、ジョイスティックとして構成することができる。この場合、2つのグリップ83の一方は、アームレスト本体81に対して移動可能となる。また、2つのグリップ83の他方は、アームレスト本体81に対して移動可能とするか、又はアームレスト本体81に対して固定することができる。なお、2つのグリップの両方を、ユーザによって操作可能な前側操作装置として構成することもできる。この場合、2つのグリップは、それらのいずらかを前側操作装置として用いるかを選択可能とするように構成することができる。
【0041】
図1~
図6に示すように、車両1は、後側ベース30に取り付けられるフレーム90を有する。フレーム90は、シート40を着座位置に配置した状態で、シート40の着座部41の後端区域41bに対して車両後方に離れるか又は隣接するように位置する。フレーム90はアームレスト80を支持する。フレーム90はまた、後側操作装置6を車両下方から支持する。さらに、後側操作装置6は、フレーム90の車両上下方向の上端に取り付けることができる。
【0042】
フレーム90は、後側ベース30に対して車両上方に配置される。フレーム90は、車両幅方向に互いに間隔を空けた2つの側方部91を有する。2つの側方部91は、後述する後側ベース30の後側本体32に取り付けられる。
【0043】
「移動ベースの詳細」
図1~
図6を参照すると、移動ベース10は、詳細には次のように構成することができる。移動ベース10の前側ベース20は、車両幅方向に間隔を空けた2つの前輪21を有する。前側ベース20の前端は、各前輪21よりも車両前方に配置される。移動ベース10の後側ベース30は、車両幅方向に間隔を空けた2つの後輪31を有する。
【0044】
しかしながら、移動ベースは、前側ベースが1つ以上の前輪を有し、かつ後側ベースが2つ以上の後輪を有するように構成することができる。また、移動ベースは、前側ベースが2つ以上の前輪を有し、かつ後側ベースが1つ以上の後輪を有するように構成することもできる。
【0045】
後側ベース30には電動機3及び制御装置4が配置される。2つの後輪31は、制御装置4の制御に応じて、2つのモータ3aによってそれぞれ独立して駆動可能になっている。車両1は、2つのモータ3aがそれらの回転を防ぐように停止した状態で、ブレーキを掛けられるようになっている。すなわち、各後輪31は駆動輪31となっている。その一方で、各前輪21は従動輪21となっている。
【0046】
「前側ベースの詳細」
図1~
図8を参照すると、前側ベース20は、詳細には次のように構成することができる。
図1~
図8に示すように、前側ベース20は、各前輪21と、この前輪21を支持するフォーク23とを有する前輪組立体24を含む。前側ベース20が2つの前輪21を有する場合、前側ベース20は2つの前輪組立体24を有することとなる。
【0047】
各前輪組立体24において、フォーク23は、前輪21をその回転軸線21a周りに回転可能とするように前輪21を支持する。また、フォーク23は、その旋回軸線23a周りに旋回可能となるように前側ベース20にて支持される。旋回軸線23aは、実質的に車両上下方向に沿って延びる。このような前側組立体24は、いわゆるキャスタとして構成することができる。
【0048】
前側ベース20の前側本体22は、車両幅方向にて2つの前輪21の間に配置される。前側本体22はまた、車両幅方向にてフレーム90における2つの側方部91間に配置される。前側本体22は、車両前後方向に延びるように形成される。補強部材50及び前側ボード60は、前側本体22上に配置される。さらに、補強部材50及び前側ボード60は、前側本体22の車両前後方向の前縁領域上に配置することができる。
【0049】
図7及び
図8に示すように、前側本体22は、中空に形成される骨格部材22aを有する。骨格部材22aは、その車両幅方向の両外方端にそれぞれ配置される2つの側方壁22bを有する。シート40における2つの脚部44のベース取付区域44bは、それぞれ前側本体22の2つの側方壁22bに取り付けられる。
【0050】
骨格部材22aは、車両後方に向かって開口するように骨格部材22aの車両前後方向の後端に形成される後方開口部22cを有する。
図1~
図6に示すように、前側本体22は、骨格部材22aを車両前方から覆うように形成される前側カバー22dを有する。
【0051】
図1~
図8に示すように、補強部材50において、各腕部52は、前側本体22よりも車両上方に位置する。前側ベース20は、2つの側方傾斜部51と2つの腕部52とを有する1つの補強部材50を含む。2つの側方傾斜部51は車両幅方向にて略対称である。2つの腕部52もまた車両幅方向にて略対称である。しかしながら、前側ベースは、それぞれが1つの側方傾斜部と1つの腕部とを有する、2つの補強部材を含むこともできる。
【0052】
各腕部52は片持ち状に形成されている。2つの前輪21は、それぞれ2つの腕部52に取り付けられている。具体的には、2つのフォーク23が、それらの旋回軸線23a周りにそれぞれ旋回可能となるように2つの腕部52にそれぞれ取り付けられている。2つのフォーク23は、それぞれ車両下方から2つの腕部52に取り付けられている。2つの前輪組立体24は、それぞれ2つの腕部52に対して車両下方に配置されている。
【0053】
前側ボード60において、2つの側方傾斜部61は、それぞれ底部62から車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。前側ボード60は、車両1のドライブモードにて、シート40に着座するユーザが足を載せることができるように配置される。前側ボード60は、車両幅方向にてフレーム90における2つの側方部91間に配置される。前側ボード60は、車両上方に向かって開口する略皿形状に形成されている。
図7及び
図8に示すように、前側ボード60は、車両後方に向かって開口するように前側ボード60の車両前後方向の後端に形成される後方開口部64を有する。
【0054】
前側本体22の前縁領域においては、2つの側方傾斜部61及び前方傾斜部63が車両幅方向に並んでおり、かつ前方傾斜部63が車両幅方向にて2つの側方傾斜部61間に位置する。しかしながら、前側本体の前縁領域においては、この配置関係の代わりに、2つの側方傾斜部及び底部を車両幅方向に並べて、かつ底部を車両幅方向にて2つの側方傾斜部間に配置することもできる。前側本体22の前縁領域よりも車両後方に位置する主領域においては、2つの側方傾斜部61及び底部62が車両幅方向に並んでおり、かつ底部62が車両幅方向にて2つの側方傾斜部61間に位置する。
【0055】
さらに、底部62は、前側本体22の前縁領域及び主領域にわたって車両前後方向に延ばすことができる。この場合、前側本体22の前縁領域においては、底部62は、前方傾斜部63に対して車両下方に位置し、かつ底部62は、車両幅方向にて2つの側方傾斜部61間に位置する。この場合、補強部材50は、車両上下方向にて前側本体22の前縁領域と底部62との間に挟まれることもできる。
【0056】
「後側ベースの詳細」
図1~
図8を参照すると、後側ベース30は、詳細には次のように構成することができる。
図1~
図8に示すように、後側ベース30は、その骨格を成す後側本体32を有する。後側本体32は、車両幅方向にて2つの後輪31の間に配置される。2つの後輪31は、後側本体32に対してそれらの回転軸線31a周りにそれぞれ回転可能となるように後側本体32によって支持されている。
図3及び
図6に示すように、2つの後輪31は、2つの前輪21よりも車両幅方向の中央寄りに位置することができる。
【0057】
図1、
図3、
図4、及び
図6に示すように、後側本体32はまた、車両幅方向にてフレーム90における2つの側方部91間に配置される。
図7及び
図8に示すように、後側本体32は、車両前後方向に延びるように形成される。後側本体32は、車両前後方向に延びる骨格部材32aを有する。骨格部材32aは、中空に形成することができる。骨格部材32aは、その車両幅方向の両外方端にそれぞれ配置される2つの側方壁32bを有する。後側本体32における2つの側方壁32bは、それぞれ前側本体22における2つの側方壁22bに対して車両幅方向の中央側に隣接するように配置される。フレーム90における2つの側方部91は、それぞれ後側本体32における2つの側方壁32bに取り付けられる。
【0058】
図8に示すように、後側本体32が、車両後方から前側本体22の後方開口部22cを通って前側本体22と車両前後方向にオーバーラップしながら、前側本体22に対して車両前後方向にスライド移動可能になっている。このような前側及び後側本体22,32における車両前後方向の相対的なスライド移動は、前側及び後側ベース20,30における車両前後方向の相対的なスライド移動によってもたらされる。
【0059】
後側ベース30の後側本体32、特に、その骨格部材32aは、その少なくとも一部を車両後方から前側ベース20の前側本体22の後方開口部22cを通って前側本体22の内部、特に、その骨格部材22aの内部に収容した状態で配置される。移動ベース10の縮小状態における前側及び後側本体22,32の車両前後方向のオーバーラップ量は、移動ベース10の拡大状態における前側及び後側本体22,32の車両前後方向のオーバーラップ量よりも大きくなる。
【0060】
図1~
図8に示すように、このような前側及び後側本体22,32によって、前側及び後側ベース20,30が車両前後方向にて相対的にスライド移動可能になっている。
図7及び
図8に示すように、前側及び後側ベース20,30の車両前後方向の相対的なスライド移動時においては、前側本体22における2つの側方壁22bは、後側本体32における2つの側方壁32bに対してそれぞれ摺動するように構成される。
【0061】
図1~
図8に示すように、後側ボード70は、フレーム90における2つの側方部91間に配置される。後側ボード70は、後側本体32に対して車両上方に間隔を空けて配置されている。後側ボード70は、フレーム90における2つの側方部91によって支持されることができる。しかしながら、後側ボードは、フレームにおける2つの側方部以外の部材によって支持することもできる。車両上下方向にて後側本体32及び後側ボード70間には隙間Gが形成される。前側及び後側ベース20,30の車両前後方向の相対的なスライド移動時においては、前側ボード60が隙間Gを通過する。
【0062】
後側ボード70の周縁傾斜部72は、後側ベース30の車両幅方向の両側方縁領域にそれぞれ位置する2つの側方傾斜部73を有する。後側ボード70において、2つの側方傾斜部73は、それぞれ底部71から車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。後側ボード70における2つの側方傾斜部73は、前側ボード60における2つの側方傾斜部61に対して車両前後方向に摺動することができる。
【0063】
図1、
図4、
図7、及び
図8に示すように、後側ボード70の周縁傾斜部72は、後側ベース30の車両前後方向の前縁領域に位置する前方傾斜部74を有する。後側ボード70において、前方傾斜部74は、底部71から車両前方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。移動ベース10の縮小状態では、後側ベース30における前方傾斜部74の車両前後方向の前端を、前側ボード60における前方傾斜部63の車両前後方向の前端を車両前後方向にて略一致するように配置することができる。
【0064】
図1、
図2、
図4、及び
図5に示すように、後側ボード70の周縁傾斜部72は、後側ベース30の車両前後方向の後縁領域に位置する後方傾斜部75を有する。後側ボード70において、後方傾斜部75は、底部71から車両後方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する。後側ボード70の後方傾斜部75は、後側本体32の車両前後方向の後端に対して車両後方に配置することができる。移動ベース10の縮小状態では、後側ボード70の後方傾斜部75は、前側ボード60の後方開口部64に対して車両後方に配置することができる。
【0065】
図8に示すように、後側ボード70が、車両後方から前側ボード60の後方開口部64を通って前側ボード60に対して車両前後方向にオーバーラップしながら、前側ボード60に対して車両前後方向にスライド移動可能になっている。このような前側及び後側ボード60,70における車両前後方向の相対的なスライド移動は、前側及び後側ベース20,30における車両前後方向の相対的なスライド移動によってもたらされる。
【0066】
そのため、移動ベース10の縮小状態で、後側ボード70は、前側ボード60に対して車両上方に位置しながら、前側ボード60を収容することができる。移動ベース10の縮小状態における前側及び後側ボード60,70の車両前後方向のオーバーラップ量は、移動ベース10の拡大状態における前側及び後側ボード60,70の車両前後方向のオーバーラップ量よりも大きくなる。
【0067】
以上、本実施形態に係る電動車両1は、電動駆動により走行可能に構成される移動ベース10と、前記移動ベース10上に配置されるシート40とを備え、前記移動ベース10が、前輪21を有する前側ベース20と、後輪31を有する後側ベース30とを含み、前記後側ベース30が、前記前側ベース20に対して車両後方に配置され、前記移動ベース10が、前記前輪21及び前記後輪31間のホイールベースHを拡大した拡大状態と、前記ホイールベースHを前記拡大状態よりも縮小した縮小状態との間で変形可能とすべく、前記前側及び後側ベース20,30を互いに対して相対的に移動可能とするように構成され、前記シート40が、着座面42を有する着座部41を含んでおり、前記前側ベース20が、前記前側ベース20の骨格を成す前側本体22と、車両幅方向に沿って配置される補強部材50と、車両上方から前記補強部材50に重なるように配置される前側ボード60とを有し、前記前側本体22は、前記補強部材50及び前記前側ボード60を支持し、前記着座面42が車両上方を向いた状態かつ前記移動ベース10の拡大状態で、前記前側ボード60の車両前後方向の前端及び前記補強部材50が、前記着座部41の車両前後方向の前端よりも車両前方に配置され、前記補強部材50が、前記前側本体22の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部51と、前記補強部材50の側方傾斜部51から車両幅方向の外方に延びる腕部52とを有し、前記前側ボード60が、前記前側本体22の車両幅方向の側方領域に配置される側方傾斜部61を有しており、前記補強部材50及び前記前側ボード60の側方傾斜部51,61のそれぞれが、車両幅方向の外方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜しており、前記補強部材50の側方傾斜部51が前記前側ボード60の側方傾斜部61に沿って配置されており、前記補強部材50の腕部52が、前記前側本体22から車両幅方向の外方に向かって突出しており、前記前輪21が前記補強部材50の腕部52に取り付けられている。
【0068】
このような電動車両1においては、移動ベース10の拡大状態で前側ボード60をフットレストとして用いることができる。そして、車両1のコーナーリング等によって横加速度が作用する場合であっても、シート40に着座するユーザは、横加速度に対抗するように、その足を前側ボード60の側方傾斜部61上で踏ん張らせることができる。すなわち、前側ボード60の側方傾斜部61によって、横加速度に起因するユーザの足の横滑りを効率的に防止できる。そのため、車両1に搭乗するユーザの姿勢の安定性を向上させることができる。
【0069】
上記電動車両1においては、前側ボード60の側方傾斜部61に沿って配置される補強部材50の側方傾斜部61によって、前側ボード60を効率的に補強することができる。すなわち、フットレストの強度を効率的に向上させることができる。上記電動車両1においては、車両幅方向にて前側本体22から突出する補強部材50の腕部52に前輪21が取り付けられている。そのため、ユーザの乗り降りをし易くするために前側ボード60の高さを低くした場合であっても、前側ボード60の高さに合わせて前輪21の径を小さくする必要がない。例えば、車両1がその前進時に段差を乗り越えることができるように、前輪21の径を設定することができる。よって、電動車両1の走行性能の低下を防ぐことができる。
【0070】
上記電動車両1においては、特に、移動ベース10の拡大状態にてシート40の着座部41及び後側ベース30間に荷物の載置スペースを確保でき、かつシート40及び荷物の載置スペースに対して車両前方に、フットレストの設置スペースを確保できる。そのため、フットレストの設置スペース及び荷物の載置スペースを効率的に確保することができる。
【0071】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記前側ボード60の車両前後方向の長さが前記補強部材50の車両前後方向の長さよりも長くなるように、前記前側ボード60が前記補強部材50から車両後方に延びている。このような電動車両1においては、ユーザが、前側ボード60の車両前後方向の広い範囲に足を載せることができる。そのため、車両1に搭乗するユーザの姿勢の安定性を向上させることができる。
【0072】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記前側ボード60が樹脂製となっている。このような電動車両1においては、ユーザの足が前側ボード60上で滑り難くなる。そのため、車両1に搭乗するユーザの姿勢の安定性を向上させることができる。
【0073】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記後側ベース30が、前記移動ベース10の縮小状態で、前記前側ボード60に対して車両上方に位置し、かつ前記前側ボード60を収容するように構成される後側ボード70を有する。典型的に、移動ベースの縮小状態では、ユーザが車両に搭乗しないので、車両を小回り可能とするように小型化する観点においては、フットレストが邪魔になる。これに対して、上記電動車両1においては、前側ボード60が後側ボード70に対して車両下方に位置するように収容され、かつ後側ボード60上に荷物の載置スペースを確保することができる。そのため、フットレストの設置スペース及び荷物の載置スペースを効率的に確保することができる。
【0074】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記後側ボード70が、前記後側ベース30の車両水平方向の中央領域にて配置される底部71と、車両水平方向にて前記後側ベース30の中央領域の周囲に位置する周縁領域に配置される周縁傾斜部72を有し、前記周縁傾斜部72が、車両水平方向にて前記後側ベース30の中央領域から離れるに従って車両上方に立ち上がるように傾斜する周縁傾斜部72とを有する。このような電動車両1において、後側ボード70上に載置される荷物が車両水平方向に移動した場合であっても、荷物が後側ボード70から脱落することを、後側ボード70の周縁傾斜部72によって防止できる。よって、荷物を安定的に載置可能とするように荷物の載置スペースを効率的に確保することができる。
【0075】
本実施形態に係る電動車両1においては、前記前側ボード60が、前記前側本体22の車両幅方向の中央領域に配置される底部62と、前記前側本体22の車両前後方向の前縁領域に配置される前方傾斜部63とを有し、前記前方傾斜部63が、車両前方に向かうに従って車両上方に立ち上がるように傾斜している。このような電動車両1においては、急ブレーキ等によって車両前方に向かう慣性力が作用した場合であっても、シート40に着座するユーザは、慣性力に対抗するように、その足を前側ボード60の前方傾斜部63上で踏ん張らせることができる。そのため、車両1に搭乗するユーザの姿勢の安定性を向上させることができる。
【0076】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…電動車両、車両
10…移動ベース
20…前側ベース、21…前輪、22…前側本体
30…後側ベース、31…後輪
40…シート、41…着座部、42…着座面
50…補強部材、51…側方傾斜部、52…腕部
60…前側ボード、61…側方傾斜部、62…底部、63…前方傾斜部
70…後側ボード、71…底部、72…周縁傾斜部
H…ホイールベース