(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷媒体判定方法およびパッチ選択方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20240305BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240305BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240305BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240305BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240305BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B41J29/393 101
G01N21/27 Z
B41J29/38 302
G03G21/00 370
G03G21/00 386
G03G21/00 388
G03G15/01 Y
G03G15/01 R
B65H7/02
(21)【出願番号】P 2020056696
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】永原 敦示
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144725(JP,A)
【文献】特開2020-006628(JP,A)
【文献】特開2015-037224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
G01N 21/17 - 21/61
G03G 21/00
G03G 15/01
B65H 7/00 - 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部と、
測色を行う測色部と、
カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された、前記複数のカラーパッチのうちの一のカラーパッチのパッチデータを用いて、前記印刷部に前記印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、
前記印刷部が印刷したカラーパッチを前記測色部が測色して得た測色値に基づいて、前記印刷部がカラーパッチを印刷した前記印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定
し、
前記記憶部が記憶する前記パッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を印刷媒体において再現するための前記色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有し、
前記制御部は、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データを参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記所定の種別に対応する色材データを用いて前記印刷部にカラーパッチを印刷させ、前記測色値と、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記基準値と、の差分に応じて前記判定を行う、ことを特徴とする
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部と、
測色を行う測色部と、
カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶された、前記複数のカラーパッチのうちの一のカラーパッチのパッチデータを用いて、前記印刷部に前記印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、
前記印刷部が印刷したカラーパッチを前記測色部が測色して得た測色値に基づいて、前記印刷部がカラーパッチを印刷した前記印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定し、
前記記憶部が記憶する前記パッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を印刷媒体において再現するための前記色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有し、
前記制御部は、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記所定の種別に対応する色材データを用いて前記印刷部にカラーパッチを印刷させ、前記測色値と、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記基準値と、の差分に応じて前記判定を行い、
前記記憶部は、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データを記憶し、
前記制御部は、前記差分表データを参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択する、ことを特徴とす
る印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記所定の種別に対応する色材データを用いて他の種別の印刷媒体に印刷した場合に得られる測色値と、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記基準値との差分が、所定の差以内であれば、ユーザーに対する所定の警告を行う、ことを特徴とする
請求項2又は請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された色材データのうち更新対象とする色材データを選択し、選択した前記色材データを用いて、前記印刷部に、選択した前記色材データが対応する印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、印刷されたカラーパッチを前記測色部が測色して得た測色値と、選択した前記色材データが対応するカラーパッチの前記基準値との比較に基づいて、選択した前記色材データを調整し、調整後の色材データにより、選択した前記色材データを前記記憶部において更新する、ことを特徴とする
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部から、一のカラーパッチのパッチデータを取得するパッチ取得工程と、
前記一のカラーパッチのパッチデータを用いて、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部に、前記印刷媒体へのカラーパッチの印刷を実行させる印刷工程と、
前記印刷部が印刷したカラーパッチを測色部が測色して得た測色値に基づいて、前記印刷部がカラーパッチを印刷した前記印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定する判定工程と、を有
し、
前記記憶部が記憶する前記パッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を印刷媒体において再現するための前記色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有し、
前記判定工程では、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データを参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択する、ことを特徴とする印刷媒体判定方法。
【請求項7】
カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を基準種別の印刷媒体において再現するための色材の量を規定する色材データと、を取得する取得工程と、
前記色材データを用いて前記基準種別とは異なる比較種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と前記基準値との差分を算出する差分算出工程と、を備え、
前記取得工程および前記差分算出工程を、前記カラーパッチと前記基準種別との組み合わせを変更して繰り返し実行し、
前記取得工程および前記差分算出工程が繰り返し実行された後、算出された前記差分に基づいて、前記基準種別とした印刷媒体の種別毎に、前記比較種別の印刷媒体と判別するためのカラーパッチを選択する選択工
程を備えることを特徴とするパッチ選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷媒体判定方法およびパッチ選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙の搬送路に予め設けられたメディアセンサーの検出結果と、予め設けられた紙種検出テーブルとに基づいて、搬送される用紙の紙種を検出する画像形成装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、プリンターにおいて、記録ヘッドを保持するキャリッジより搬送方向の下流位置に測色装置を設け、ロール紙に記録された測色用パターンを測色装置が測定して色校正用の補正値を得る構成が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016‐190707号公報
【文献】特開2009‐220290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記文献1によれば、用紙の紙種を検出するために、専用のメディアセンサーを装置内に設ける必要があるため、装置のコストが高くなる。そのため、コストを出来るだけ抑えつつ、印刷媒体の判定を適切に行うための改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
印刷装置は、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部と、測色を行う測色部と、カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された、前記複数のカラーパッチのうちの一のカラーパッチのパッチデータを用いて、前記印刷部に前記印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、前記印刷部が印刷したカラーパッチを前記測色部が測色して得た測色値に基づいて、前記印刷部がカラーパッチを印刷した前記印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定し、前記記憶部が記憶する前記パッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を印刷媒体において再現するための前記色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有し、前記制御部は、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データを参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択する。
また、印刷装置は、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部と、測色を行う測色部と、カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された、前記複数のカラーパッチのうちの一のカラーパッチのパッチデータを用いて、前記印刷部に前記印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、前記印刷部が印刷したカラーパッチを前記測色部が測色して得た測色値に基づいて、前記印刷部がカラーパッチを印刷した前記印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定し、前記記憶部が記憶する前記パッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を印刷媒体において再現するための前記色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有し、前記制御部は、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記所定の種別に対応する色材データを用いて前記印刷部にカラーパッチを印刷させ、前記測色値と、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける前記基準値と、の差分に応じて前記判定を行い、前記記憶部は、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データを記憶し、前記制御部は、前記差分表データを参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択してもよい。
【0007】
印刷媒体判定方法は、カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部から、一のカラーパッチのパッチデータを取得するパッチ取得工程と、前記一のカラーパッチのパッチデータを用いて、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部に、前記印刷媒体へのカラーパッチの印刷を実行させる印刷工程と、前記印刷部が印刷したカラーパッチを測色部が測色して得た測色値に基づいて、前記印刷部がカラーパッチを印刷した前記印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定する判定工程と、を有し、前記記憶部が記憶する前記パッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を印刷媒体において再現するための前記色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有し、前記判定工程では、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データを参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択する。
【0008】
パッチ選択方法は、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を基準種別の印刷媒体において再現するための色材の量を規定する色材データと、を取得する取得工程と、前記色材データを用いて前記基準種別とは異なる比較種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と前記基準値との差分を算出する差分算出工程と、を備え、前記取得工程および前記差分算出工程を、前記カラーパッチと前記基準種別との組み合わせを変更して繰り返し実行し、前記取得工程および前記差分算出工程が繰り返し実行された後、算出された前記差分に基づいて、前記基準種別とした印刷媒体の種別毎に、前記比較種別の印刷媒体と判別するためのカラーパッチを選択する選択工程を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】主に印刷部に該当する構成の具体例を示す図。
【
図5】
図5Aは特色DBの一例を示す図、
図5Bは媒体種別毎の特色パッチの選択結果を登録した特色DBの一例を示す図。
【
図6】ステップS200~S230の処理を具体例により説明する図。
【
図8】
図7の差分表データを別の表現形態で示す図。
【
図9】ステップS130の処理を具体例により説明する図。
【
図11】色材データ調整処理を示すフローチャート。
【
図12】情報の一部が更新された特色DBの一例を示す図。
【
図13】差分表データ更新処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。
印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、通信IF15、搬送部16、キャリッジ17、印刷ヘッド18、測色部19、記憶部20等を備える。IFは、インターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0012】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、パッチ選択処理部12a、印刷制御部12b、測色制御部12c、媒体判定部12d等の各種機能を実現する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0013】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。
【0014】
表示部13や操作受付部14は、印刷装置10の構成の一部であってもよいが、印刷装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。通信IF15は、印刷装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部と接続するための一つまたは複数のIFの総称である。
【0015】
搬送部16は、印刷媒体を搬送するための手段であり、ローラーや、ローラー等を回転させるモーターを含む。印刷ヘッド18は、インクジェット方式によりインクを印刷媒体へ吐出して印刷を実行する。測色部19は、対象の色を測定する手段である。測色部19が測色結果として生成し出力する測色値のフォーマットは、例えば、CIE(国際照明委員会)が規定したL*a*b*色空間によるL*a*b*値であったり、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)毎の階調値の組み合わせであるRGB値であったりする。
【0016】
キャリッジ17は、不図示のキャリッジモーターによる動力を受けて第1方向に沿って往復移動可能な機構である。第1方向を、主走査方向とも呼ぶ。キャリッジ17は
図2に示すように印刷ヘッド18を搭載している。搬送部16やキャリッジ17や印刷ヘッド18を含む構成を、まとめて印刷部21と呼ぶ。印刷部21は、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を実行可能な手段であればよい。色材とは、インクやトナーである。印刷部21は、インクジェット方式を採用する以外にも、例えば、電子写真方式やサーマル方式により印刷を実現するものであってもよい。また、本実施形態において、印刷ヘッド18はキャリッジ17の移動に伴って移動するシリアル型の印刷ヘッドの例を記載したが、インクの吐出中は印刷ヘッドの移動を伴わないライン型の印刷ヘッドを用いてもよい。記憶部20は、不揮発性メモリーや、HDDや、その他の記憶装置により実現される。記憶部20は、制御部11の一部と解してもよいし、例えば、RAM11cを記憶部20の一部と解してもよい。
【0017】
図1に示す印刷装置10の構成は、一台のプリンターによって実現されてもよいし、通信可能に接続した複数の装置により実現されてもよい。
つまり、印刷装置10は、実態として印刷システム10であってもよい。印刷システム10は、例えば、制御部11として機能する情報処理装置と、記憶部20と、印刷部21や測色部19を含んだプリンターと、を含む。このような印刷装置10または印刷システム10により、本実施形態の印刷媒体判定方法やパッチ選択方法が実現される。
【0018】
図2は、印刷装置10の一部であって主に印刷部21の具体例を示している。
図2内の上段には、印刷媒体30の搬送方向Dfに直交する視点により前記具体例を示している。また、
図2内の下段には、前記具体例の一部分を上方からの視点により示している。
【0019】
搬送部16は、搬送の上流に繰出軸22を備え、かつ、搬送の下流に巻取軸25を備える。搬送の上流、下流を、単に、上流、下流と表記する。繰出軸22および巻取軸25にロール状に巻き付けられた長尺な印刷媒体30が、搬送方向Dfに沿って張架されている。印刷媒体30は搬送方向Dfへ搬送される。印刷媒体30は、用紙であってもよいし、紙以外の素材による媒体であってもよい。
【0020】
図2内の上段の例では、繰出軸22が時計回りに回転することで、繰出軸22に巻き付けられた印刷媒体30が下流へ繰り出される。繰出軸22の下流位置には、前駆動ローラー23が設けられ、巻取軸25の上流位置には、後駆動ローラー24が設けられている。前駆動ローラー23は、前記時計回りに回転することで、繰出部22から繰り出される印刷媒体30を下流へ搬送する。前駆動ローラー23に対してはニップローラー23nが設けられている。ニップローラー23nは、印刷媒体30に当接することにより、前駆動ローラー23との間で印刷媒体30を挟み込んでいる。
【0021】
後駆動ローラー24は、前記時計回りに回転することで、前駆動ローラー23により下流へ搬送される印刷媒体30を更に下流へ搬送する。後駆動ローラー24に対してはニップローラー24nが設けられている。ニップローラー24nは、印刷媒体30に当接することにより、後駆動ローラー24との間で印刷媒体30を挟み込んでいる。
【0022】
前駆動ローラー23と後駆動ローラー24との間には、印刷媒体30に対して上方からインクを吐出する印刷ヘッド18が配設されている。
図2から解るように、印刷ヘッド18は、キャリッジ17に搭載されている。印刷ヘッド18は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)といった複数色のインクを吐出可能である。図示は省略しているが、印刷ヘッド18は、CMYKのインク毎のノズル列を有する。1色のインクに対応するノズル列は、当該1色のインクを吐出する複数のノズルであって、第2方向D2におけるノズル間距離(ノズルピッチ)が一定である複数のノズルにより構成されている。
【0023】
印刷ヘッド18が有する各ノズルは、印刷ヘッド18の印刷媒体30に対向する対向面に開口しており、印刷ヘッド18は、印刷データに基づいてインクをノズルから吐出したり吐出しなかったりする。ノズルが吐出するインクを、インク滴と呼んだりドットと呼んだりもする。印刷ヘッド18を、印字ヘッド、インクジェットヘッド、液体吐出ヘッド、等と呼んでもよい。
【0024】
巻取軸25が前記時計回りに回転することにより、後駆動ローラー24により搬送される印刷後の印刷媒体30が巻取軸25に巻き取られる。
繰出軸22や、巻取軸25や、各ローラーや、これらを適宜回転させるための不図示のモーター等が、印刷媒体30を搬送する搬送部16の具体例である。印刷媒体30を搬送するために搬送経路の途中に設けられるローラーの数や配置は、
図2に示した態様に限定されない。また、印刷ヘッド18が吐出するインクの色も上述した色に限定されない。言うまでもなく、前駆動ローラー23と後駆動ローラー24との間には、印刷ヘッド18からのインク吐出を受ける印刷媒体30を下方から支持する平坦なプラテン等が設けられていてもよい。
【0025】
符号D1は、第1方向を示している。
図2の例では、前駆動ローラー23と後駆動ローラー24との間において、搬送方向Dfと第1方向D1とは平行である。
図2内の下段に示すように、第2方向D2は第1方向D1に交差している。上述したように第1方向D1を主走査方向と呼んだとき、第2方向D2を副走査方向と呼ぶ。第1方向D1と第2方向D2とは、直交していると解してよい。
図2の例では、前駆動ローラー23と後駆動ローラー24との間において、印刷媒体30の上方に、第1方向D1に長尺なガイドレール26が設けられており、キャリッジ17は、ガイドレール26に沿って移動可能である。むろん、キャリッジ17の姿勢を安定させるために、キャリッジ17を支持する部材はガイドレール26に限られない。
【0026】
また、キャリッジ17は、第2方向D2に沿って移動することができる。例えば、キャリッジ17およびガイドレール26を含むユニットを第2方向D2に沿って往復移動させるための別のガイドレール等の機構が設けられている。このようなキャリッジ17の第1方向D1や第2方向D2に沿った各移動は、制御部11によって制御される。つまり、印刷ヘッド18を搭載したキャリッジ17は、印刷媒体30の面に対して2次元的に移動することができる。
【0027】
第2方向D2に沿うキャリッジ17の移動は、第2方向D2におけるキャリッジ17と印刷媒体30との相対移動に該当する。第1方向D1に沿ったキャリッジ17の移動に伴い印刷ヘッド18がインクを吐出する動作を「主走査」と呼ぶ。主走査を「パス」とも呼ぶ。また、第2方向D2におけるキャリッジ17と印刷媒体30との相対移動を「副走査」と呼ぶ。
【0028】
図2の例では、測色部19は、キャリッジ17よりも下流の位置に設けられている。測色部19は、印刷ヘッド18により印刷がなされた印刷媒体30を測色する。ただし、測色部19は、印刷後の印刷媒体30を測色できればよく、例えば、キャリッジ17に搭載されていてもよい。
【0029】
2.特色DBの説明
図3は、本実施形態にかかる印刷測色処理をフローチャートにより示している。印刷測色処理は、印刷媒体判定方法を含んでいる。印刷測色処理は、制御部11がプログラム12に従った処理を行うことにより実現される。本実施形態における印刷媒体の判定とは、印刷部21が印刷に使用した印刷媒体30の種別が、ユーザーが指定した印刷媒体の種別であるか否かを判定する処理である。印刷媒体の種別は、例えば、普通紙、光沢紙、その他用紙以外の種別など、様々である。ユーザーが指定した印刷媒体の種別を「指定種別」と呼ぶ。指定種別を所定の種別とも言う。
【0030】
印刷測色処理のステップS120では、制御部11は、指定種別に応じた特色パッチを、特色DBから取得する。DBはデータベースの略である。特色DBには、印刷媒体の種別毎に、ステップS120で取得すべき特色パッチが登録されている。指定種別に応じた特色パッチは、印刷媒体の判定(ステップS170)を行うために、印刷媒体30に印刷し測色するパッチである。
【0031】
ここでは、
図3の印刷測色処理を説明する前に、特色DBについて説明する。
図4は、制御部11がプログラム12に従って実行する特色DB登録処理を、フローチャートにより示している。特色DB登録処理は、パッチ選択方法を含んでいる。
ステップS200では、パッチ選択処理部12aは、特色DB40から1つの特色を取得する。特色DB40は、予め記憶部20に記憶されている。
【0032】
図5Aは、特色DB40の一例を示している。特色DB40は、特色パッチの色、つまり特色と、特色を印刷媒体において再現するためのCMYK値であって印刷媒体の種別毎のCMYK値との対応関係を、複数の特色パッチP1,P2,P3,P4,P5について規定している。特色パッチP1,P2,P3,P4,P5は、互いに異なる特色のカラーパッチである。
【0033】
特色DB40では、特色を、所定の色空間で定義している。具体的には、L*a*b*色空間によるL*a*b*値で特色を定義している。「*」の記載は適宜省略する。例えば、特色パッチP1は、(L,a,b)=(56,66,36)であり、レッドあるいはレッドに近い色である。また、特色パッチP2は、(L,a,b)=(47,-2,-43)であり、ブルーあるいはブルーに近い色である。このようなLab値は、特色パッチの色の「基準値」と言える。ただし、基準値を定義する色空間は、L*C*h*色空間やXYZ色空間など他の色空間であってもよい。
【0034】
特色DB40では、特色を印刷媒体において再現するためのCMYK値を、印刷媒体の複数の媒体種別α,β,γ毎に規定している。CMYK値は、CMYK毎のインク量を示す階調値の組み合わせである。階調値は、例えば、0~255の256階調範囲で表される。CMYK値は「色材データ」に該当する。例えば、特色パッチP1のLab値を媒体種別αの印刷媒体で再現するために必要なCMYK値は、(C,M,Y,K)=(1,84,71,0)である。また、特色パッチP2のLab値を媒体種別βの印刷媒体で再現するために必要なCMYK値は、(C,M,Y,K)=(95,61,6,0)である。
【0035】
特色DB40が規定するCMYK値は、いわゆるICCプロファイルを用いて算出できる。つまり、CMYK値と、CMYK値によって媒体種別αの印刷媒体で再現されるパッチの測色値としてのLab値との変換関係を規定した、媒体種別α用のICCプロファイル50αが予め用意される。同様に、CMYK値とCMYK値によって媒体種別βの印刷媒体で再現されるパッチの測色値(Lab値)との変換関係を規定した媒体種別β用のICCプロファイル50βと、CMYK値とCMYK値によって媒体種別γの印刷媒体で再現される測色値(Lab値)との変換関係を規定した媒体種別γ用のICCプロファイル50γと、が予め用意される。特色DB40が特色パッチ毎かつ媒体種別毎に規定するCMYK値は、特色パッチのLab値と、このようなICCプロファイルとを用いて算出されたデータである。このように特色パッチ毎に基準値としてのLab値やCMYK値を有する特色DB40は、カラーパッチの色を規定するパッチデータをカラーパッチ毎に規定していると言える。
【0036】
ステップS200では、パッチ選択処理部12aは特色DB40から1つの特色、例えば、特色パッチP1のLab値を取得する。
ステップS210では、パッチ選択処理部12aは、特色DB40から、ステップS200で取得した特色に対応するCMYK値であって1つの媒体種別に対応するCMYK値を取得する。例えば、特色パッチP1および媒体種別αに対応するCMYK値を取得する。
【0037】
ステップS210で取得するCMYK値が対応する媒体種別を、便宜上「基準種別」と呼ぶ。
このようなステップS200,S210は、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、基準値を基準種別の印刷媒体において再現するための色材データと、を取得する取得工程に該当する。
【0038】
ステップS220では、パッチ選択処理部12aは、ステップS210で取得したCMYK値と、媒体種別毎のICCプロファイルとを用いて媒体種別毎のLab値を算出する。
ステップS230では、パッチ選択処理部12aは、ステップS220で算出した媒体種別毎のLab値と、ステップS200で取得した特色とを比較して、媒体種別毎の色差を算出する。
このようなステップS220,S230は、取得工程で取得した色材データを用いて基準種別とは異なる比較種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、取得工程で取得した基準値と、の差分を算出する差分算出工程を含む。
【0039】
図6は、ステップS200~S230の処理を具体例により説明する図である。
図6の例では、ステップS200で、特色パッチP1の特色を取得し、ステップS210で、特色パッチP1を媒体種別αの印刷媒体で再現するためのCMYK値、(C,M,Y,K)=(1,84,71,0)を取得したとする。つまり、
図6の例では、媒体種別αが基準種別である。ステップS220では、パッチ選択処理部12aは、この(C,M,Y,K)=(1,84,71,0)を、ICCプロファイル50α、ICCプロファイル50β、ICCプロファイル50γの夫々に入力して、ICCプロファイル50α,50β,50γ夫々による変換結果としてのLab値を算出する。ICCプロファイル50α,50β,50γは、記憶部20に記憶されている。
【0040】
図6の例では、パッチ選択処理部12aはステップS220において、ICCプロファイル50αによる変換結果として(L,a,b)=(56,66,36)を算出し、ICCプロファイル50βによる変換結果として(L,a,b)=(61,55,34)を算出し、ICCプロファイル50γによる変換結果として(L,a,b)=(52,57,37)を算出する。パッチ選択処理部12aは、ステップS230において、これら変換結果としてのLab値と、特色パッチP1の特色とを比較して、色差を算出する。
【0041】
なお、特色パッチP1を媒体種別αの印刷媒体で再現するためのCMYK値をICCプロファイル50αで変換して得られるLab値は、特色パッチP1の特色であるため、これについての色差は
図6に示すように0である。
図6の例によれば、特色パッチP1を媒体種別αの印刷媒体で再現するためのCMYK値をICCプロファイル50βで変換して得られるLab値と、特色パッチP1の特色との色差は、3.3である。これは、特色パッチP1を媒体種別αの印刷媒体で再現するためのCMYK値により、誤って媒体種別βの印刷媒体へ印刷した場合に、特色パッチP1の本来の色から3.3の色差があるパッチが印刷されることを意味する。
図6の例によれば、特色パッチP1を媒体種別αの印刷媒体で再現するためのCMYK値をICCプロファイル50γで変換して得られるLab値と、特色パッチP1の特色との色差は、3.4である。これは、特色パッチP1を媒体種別αの印刷媒体で再現するためのCMYK値により、誤って媒体種別γの印刷媒体へ印刷した場合に、特色パッチP1の本来の色から3.4の色差があるパッチが印刷されることを意味する。
【0042】
ステップS240では、パッチ選択処理部12aは、ステップS200で取得した特色に対応するCMYK値であって媒体種別毎のCMYK値を、特色DB40から全てステップS210で取得し終えたか否かを判定する。そして、未取得のCMYK値が残っていれば、ステップS240の“No”の判定からステップS210へ戻り、それまでとは別の1つの媒体種別に対応するCMYK値を取得して、ステップS220,S230を実行する。一方、ステップS200で取得した特色に対応するCMYK値であって媒体種別毎のCMYK値を、特色DB40から全てステップS210で取得し終えた場合、ステップS240の“Yes”の判定からステップS250へ進む。
【0043】
ステップS250では、パッチ選択処理部12aは、ステップS200において特色DB40から全ての特色パッチの特色を取得し終えたか否かを判定する。そして、未取得の特色が残っていれば、ステップS250の“No”の判定からステップS200へ戻り、それまでとは別の1つの特色を取得して、ステップS210以下を実行する。一方、ステップS200において特色DB40から全ての特色パッチの特色を取得し終えた場合、ステップS250の“Yes”の判定からステップS260へ進む。
【0044】
ステップS240,S250の各判定の結果、取得工程(ステップS200,S210)および差分算出工程(ステップS220,S230)が、カラーパッチと基準種別との組み合わせを変更して繰り返し実行される。
ステップS250で“Yes”と判定した時点で、パッチ選択処理部12aは、特色DB40に規定された全てのCMYK値について媒体種別毎の色差を算出したことになる。
ステップS260では、パッチ選択処理部12aは、ステップS230で算出した媒体種別毎の色差を表形式で示す差分表データ60を生成し、差分表データ60を記憶部20に記憶させる。
【0045】
図7は、差分表データ60の一例を示している。
図7に示すように、差分表データ60は、特色パッチP1,P2,P3,P4,P5毎に色差をまとめた差分表60P1,60P2,60P3,60P4,60P5により構成されている。
図7の差分表は、対応する特色パッチを基準種別に印刷したときのLab値と比較種別に印刷したときのLab値との色差を表現している。例えば、特色パッチP1に対応する差分表60P1は、特色パッチP1を基準種別に印刷したときのLab値と比較種別に印刷したときのLab値との色差を表している。なお、“印刷したときのLab値”とは、印刷して測色すれば得られるはずの測色値であり、ステップS220では、そのような測色値を、ICCプロファイルを用いて計算で出している。比較種別とは、ステップS220で算出する各Lab値が対応する媒体種別である。比較種別には基準種別が含まれると解してもよいし含まれないと解してもよい。差分表60P1には、例えば、基準種別=媒体種別αと比較種別=媒体種別βとの関係に対して色差=3.3が規定されており、基準種別=媒体種別αと比較種別=媒体種別γとの関係に対して色差=3.4が規定されており、これら色差は、
図6に示した色差である。
【0046】
図8は、差分表データ60を別の表現形態により示している。
図8では、差分表データ60は、基準種別(媒体種別α,β,γ)毎に色差をまとめた差分表60α,60β,60γにより構成されている。
図7に示した差分表データ60と
図8に示した差分表データ60とは、表現形態が異なるだけで内容は同じである。例えば、差分表60αは、差分表60P1,60P2,60P3,60P4,60P5の夫々から、基準種別=媒体種別αに対応する色差を抽出して表にしたものである。本実施形態において、
図7,8に示した両方の表現形態の差分表データ60が必ずしも必要な訳ではなく、どちらか一方があればよい。理解を容易にするために、
図7,8それぞれで差分表データ60を示している。
【0047】
ステップS270では、パッチ選択処理部12aは、差分表データ60を参照して、媒体種別α,β,γ毎に特色パッチを選択し、選択した結果を特色DB40に登録する。ステップS270は、ステップS200~S250の結果算出された差分に基づいて、基準種別とした印刷媒体の種別毎に、比較種別の印刷媒体と判別するためのカラーパッチを選択する選択工程、に該当する。パッチ選択処理部12aは、例えば、色差が平均的により大きいパッチを選択する。ここでいう平均的な色差とは、基準種別に対する比較種別毎の色差の平均値である。例えば、差分表60αにおける特色パッチP1については、基準種別αと比較種別βとの色差である3.3と基準種別αと比較種別γとの色差である3.4との平均値3.35である。
図8の差分表60αによれば、比較種別との色差が平均的に最も大きいのは特色パッチP1である。つまり、特色パッチP1を媒体種別αへ印刷するためのCMYK値で誤って媒体種別βや媒体種別γに印刷したときに得られるLab値と、特色パッチP1の特色とには、明確な色差が生じる。そのため、パッチ選択処理部12aは、媒体種別αに対しては特色パッチP1,P2,P3,P4,P5の中で特色パッチP1を選択する。
【0048】
また、差分表60βによれば、比較種別との色差が平均的に最も大きいのは特色パッチP5である。つまり、特色パッチP5を媒体種別βへ印刷するためのCMYK値で誤って媒体種別αや媒体種別γに印刷したときに得られるLab値と、特色パッチP5の特色とには、明確な色差が生じる。そのため、パッチ選択処理部12aは、媒体種別βに対しては特色パッチP5を選択する。同様に、差分表60γによれば、比較種別との色差が平均的に最も大きいのは特色パッチP1である。つまり、特色パッチP1を媒体種別γへ印刷するためのCMYK値で誤って媒体種別αや媒体種別βに印刷したときに得られるLab値と、特色パッチP1の特色とには、明確な色差が生じる。そのため、パッチ選択処理部12aは、媒体種別γに対しては特色パッチP1を選択する。
【0049】
図5Bには、このような媒体種別毎のパッチの選択結果を登録した後の特色DB40を記載している。
図5Bによれば、特色DB40には、媒体種別αに対しては特色パッチP1を選択したことが登録されている。同様に、
図5Bによれば、媒体種別βに対しては特色パッチP5を、媒体種別γに対しては特色パッチP1を、夫々選択したことが登録されている。
以上で、
図4の特色DB登録処理が終了する。
【0050】
3.印刷測色処理:
次に、特色DB登録処理が実行済みであることを前提として、
図3の印刷測色処理を説明する。
ステップS100では、印刷制御部12bは、印刷対象の画像を取得する。つまり、印刷制御部12bは、ユーザーによる操作受付部14の操作を通じて指定された、前記画像を表現する画像データを、所定の保存元から入力する。ステップS100で取得する画像データは、例えば、各画素の色をRGB値で表現したビットマップデータである。
【0051】
ステップS110では、印刷制御部12bは、画像の印刷条件を取得する。印刷条件も、ユーザーによる操作受付部14の操作を通じて指定された情報として取得する。あるいは、印刷条件は、ステップS100で取得した画像データに紐づいて予め設定等されている情報であってもよい。印刷条件とは、印刷媒体の種別や、1回分の印刷に関する印刷媒体サイズやパス回数や副走査量、等を含んだ情報である。印刷条件における印刷媒体の種別が、指定種別である。印刷媒体サイズは、媒体幅×媒体長さで示される。
図2の例では、媒体長さは第1方向D1における長さであり、媒体幅は、第2方向D2における長さである。本実施形態では、1回分の印刷を1フレーム分の印刷とも言い、印刷媒体サイズをフレームサイズとも言う。
【0052】
パス回数は、1フレーム分の印刷に必要なパスの回数である。副走査量は、1フレーム分の印刷に必要なパスとパスとの間に実行する副走査の距離である。
なお、ステップS100,S110の順番は、
図3に示す通りでなくてもよく、ステップS100,S110は、実質的に同時に実行する処理であってもよいし、
図3に示す順番とは逆順で実行する処理であってもよい。
【0053】
ステップS120では、印刷制御部12bは、記憶部20に記憶されている特色DB40から、指定種別に応じた特色パッチを取得する。
図5Bの例によれば、印刷制御部12bは、指定種別が媒体種別αであれば、特色パッチP1の情報を取得する。また、指定種別が媒体種別βであれば、特色パッチP5の情報を取得し、指定種別が媒体種別γであれば、特色パッチP1の情報を取得すればよい。ステップS120は、記憶部20から一のカラーパッチのパッチデータを取得するパッチ取得工程に該当する。
【0054】
ステップS130では、印刷制御部12bは、ステップS120で取得した特色パッチを追加した画像データを生成する。具体的には、印刷制御部12bは、先ずフレームサイズに従い画像を配置する。つまり、ステップS100で取得した画像データを、ステップS110で取得した印刷条件におけるフレームサイズに従って配列させることにより、1フレーム分の印刷に使用する画像データを生成する。そして、印刷制御部12bは、フレームサイズの画像データ内の所定位置に、特色パッチを合成する。
【0055】
図9は、ステップS130の処理を、具体例を用いて説明する図である。
図9内の上段における符号70は、ステップS100で取得した画像データを示している。画像データ70は、ある色で塗られた星型の画像71を表現している。画像71の内容はユーザーが任意に決定する。
図9の例では、画像データ70は、縦が13インチ、横が9インチのサイズの画像データである。
図9では、画像データと方向D1,D2との対応関係も併せて示している。
【0056】
ステップS110で取得する印刷条件の内容は様々であるが、ここでは
図9を説明するために、フレームサイズ=媒体幅13インチ×媒体長さ36インチであると仮定する。この場合、ステップS130では、印刷制御部12bは、画像データ70をコピーして第1方向D1に対応させて4つ連続して配置することにより、
図9内の中段に示すような、1フレーム分の印刷に使用する画像データ72を生成する。ステップS130では、印刷制御部12bは、必要に応じて画像データ70を拡大したり縮小したりしてもよい。
【0057】
さらに、ステップS130では、印刷制御部12bは、画像データ72内の所定位置に、特色パッチ73を合成することにより、
図9内の下段に示すような画像データ74を生成する。ここで言う所定位置とは、例えば、測色部19が特色パッチを測色するための予め決められた位置であり、画像データ72内において、できるだけ下流の位置である。また、印刷制御部12bは、画像データ72内において画像71と重ならない位置に特色パッチ73を合成する。ここで、指定種別=媒体種別αと仮定すると、特色パッチ73は、特色パッチP1である。つまり、印刷制御部12bは、特色DB40から特色パッチP1の媒体種別αに対応するCMYK値を取得し、この取得したCMYK値を有する画素が集合した画像領域としての特色パッチ73を画像データ72内に合成する。
【0058】
ステップS140では、印刷制御部12bは、ステップS130で生成した画像データ74に必要な画像処理を施すことにより、印刷部21が印刷を実行するための印刷データを生成する。印刷制御部12bは、例えば、画像データ74に色変換処理を施す。つまり、画像データ74を構成する各画素のRGB値を、予め生成された色変換LUTを参照して、CMYK値に変換する。LUTは、ルックアップテーブルの略である。色変換LUTは、RGB値とCMYK値との対応関係を規定したテーブルである。なお、画像データ74のうち特色パッチ73に該当する領域に対しては、このような色変換処理は不要である。
【0059】
印刷制御部12bは、さらに、画像データ74に対してハーフトーン処理を行う。色変換処理により、画像データ74は各画素がCMYK値を有する状態となっている。ハーフトーン処理により、画像データ74は、画素毎かつCMYK毎に、インクの吐出(ドットオン)またはインクの非吐出(ドットオフ)を規定した印刷データとなる。むろん、印刷データにおけるドットオンの情報は、例えば大ドット、中ドット、小ドットというような複数サイズのドットのうちのどれを吐出するかを規定する情報であってもよい。ハーフトーン処理は、例えば、ディザ法や誤差拡散法により実行可能である。
【0060】
ステップS150では、印刷制御部12bは、印刷部21に印刷データおよび印刷条件に基づく1フレーム分の印刷を実行させる。つまり、印刷制御部12bは、印刷条件におけるパス回数および副走査量に従って、キャリッジ17の第1方向D1や第2方向D2への移動を制御しつつ、印刷データに従ったインクの吐出を印刷ヘッド18に実行させる。印刷ヘッド18は、各パスにおいて、印刷データが画素毎に規定するドットオン・ドットオフの情報に基づいて各ノズルからCMYK各色のインクを吐出したりしなかったりする。この結果、印刷媒体30における1フレームサイズ分の範囲に、画像データ74が表現する画像71や特色パッチ73が印刷される。ステップS150は、印刷部21に印刷媒体30へのカラーパッチの印刷を実行させる印刷工程に該当する。ステップS150による1フレーム分の印刷期間中、搬送部16は印刷媒体30の搬送を行わない。つまり、ステップS150では、静止した状態の印刷媒体30に対してパスおよび副走査が実行される。
【0061】
ステップS160では、測色制御部12cは、測色部19を制御して、印刷媒体30に印刷された特色パッチの測色を実行させる。測色部19は、
図9の例によれば、印刷媒体30に印刷された特色パッチ73を測色し、測色により得た測色値を制御部11へ出力する。むろん、搬送部16は、特色パッチ73を測色部19に測色させるために必要な距離の印刷媒体30の搬送を、ステップS150の後であってステップS160の前に実行する。
【0062】
ステップS170では、媒体判定部12dは、ステップS160の特色パッチの測色により得られた測色値に基づいて、印刷部21が特色パッチを印刷した印刷媒体30の種別が指定種別であるか否かを判定する。ステップS170,S180は、判定工程に該当する。この場合、媒体判定部12dは、特色パッチの測色値と、指定種別に応じた特色との色差を算出する。上述したように指定種別=媒体種別αと仮定すると、ステップS120において、特色DB40から特色パッチP1の情報が取得されているため、媒体判定部12dは、特色パッチP1の色を示すLab値(56,66,36)を、ステップS160で得られた特色パッチの測色値と比較して色差を算出すればよい。
【0063】
そして、媒体判定部12dは、このように算出した色差と、色差に関する所定のしきい値とを比較し、色差<しきい値であるか、色差≧しきい値であるかを判定する。ステップS170の判定に用いる色差に関するしきい値は、
図8を参照すると、例えば2.0程度が適当である。このしきい値については、ユーザーが任意に設定可能であるとしてもよい。
【0064】
ステップS180では、媒体判定部12dは、ステップS170の判定結果に応じて処理を分岐する。媒体判定部12dは、色差<しきい値であれば、印刷部21が特色パッチを印刷した印刷媒体30の種別は指定種別である、つまり印刷媒体30は適正(ステップS180:Yes)と判定し、
図3の印刷測色処理を終了する。一方、媒体判定部12dは、色差≧しきい値であれば、印刷媒体30の種別は指定種別ではない、つまり印刷媒体30は適正でない(ステップS180:No)と判定し、ステップS190へ進む。
図3では示していないが、制御部11は、ステップS180のYesの判定で印刷測色処理を終了した後は、言うまでもなく、次の1フレーム分の印刷のために印刷部21の制御を継続すればよい。
【0065】
ステップS190では、制御部11は、媒体エラー処理を実行して
図3のフローチャートを終える。媒体エラー処理とは、例えば、印刷に関わる動作を停止する処理である。つまり、ユーザーが意図する種別とは異なる種別の印刷媒体30が現在印刷部21にセットされて使用されているため、制御部11は、印刷部21の駆動を停止させて
図3のフローチャートを終える。これにより、印刷媒体30やインクがこれ以上無駄に消費されることを止めることができる。また、媒体エラー処理の1つとして、制御部11は、印刷媒体30が適正でない旨をユーザーに通知する警告画面を、表示部13に表示させるとしてもよい。
【0066】
図9の例では、画像データ74における画像71と特色パッチ73とは、同じ色で表現されている。つまり、
図3の印刷測色処理において、ステップS100で取得した画像とステップS130で追加する特色パッチとを、同じ色で印刷してもよい。この場合、印刷制御部12bは、ステップS130において、ステップS120で指定種別に応じて特色DB40から取得した特色パッチのCMYK値と同じCMYK値で各画素の色を表現した画像71と、特色パッチ73とを含んだ画像データ74を生成すればよい。このように画像71と、特色パッチ73とを同じ色で印刷媒体30へ印刷することにより、ステップS160の測色でパッチ73の測色値を得た制御部11は、ステップS170,S180の判定を行うだけでなく、印刷結果における画像71の色が適正であるか否かを併せて判定することができる。制御部11は、特色パッチ73の測色値に基づいて、印刷結果における画像71の色が適正であるか否かを判定することにより、この判定結果をユーザーに通知したり、必要に応じて画像71の色校正等を実行したりすることができる。
【0067】
4.パッチ印刷の他の例:
図10Aは、ステップS130において生成される画像データ74であって、
図9に示す例とは異なる例を示している。
図10Aに示す画像データ74は、複数の特色パッチ73,75を含んでいる。つまり、印刷制御部12bは、画像71とともに複数の特色パッチを印刷媒体30に印刷してもよい。
【0068】
図10Aを説明するにあたっては、指定種別=媒体種別βであるとする。また、これまでに説明した特色DB40において、特色パッチP5は定義されておらず、特色パッチP1~P4が定義されているものとする。従って、
図8に示す差分表データ60においても、各差分表60α,60β,60γに特色パッチP5に対応する色差の情報は存在しない。このような場合、特色DB登録処理(
図4)におけるステップS270では、パッチ選択処理部12aは、媒体種別βについては、特色パッチP1および特色パッチP4を選択して特色DB40に登録する。つまり、差分表60βによれば、特色パッチP5が存在しない場合、媒体種別α,γのいずれとの色差も十分に大きい特色パッチが無い。色差が十分に大きいとは、ステップS170の判定に用いるしきい値以上という意味である。そのため、パッチ選択処理部12aは媒体種別βを媒体種別αと判別するための特色パッチとして特色パッチP1を選択し、媒体種別βを媒体種別γと判別するための特色パッチとして特色パッチP4を選択する。
【0069】
このような状況で、指定種別=媒体種別βであるとき、
図3のステップS120では、印刷制御部12bは、特色DB40から特色パッチP1および特色パッチP4の情報を取得する。そして、ステップS130では、印刷制御部12bは、特色パッチP1の媒体種別βに対応するCMYK値を各画素が有する特色パッチ73と、特色パッチP4の媒体種別βに対応するCMYK値を各画素が有する特色パッチ75と、を追加した画像データ74を生成する。この結果、画像71と共に特色パッチ73および特色パッチ75が印刷媒体30に印刷され、媒体判定部12dは、特色パッチ73の測色値および特色パッチ75の測色値を用いてステップS170,S180の判定を行う。この場合、媒体判定部12dは、特色パッチ73の測色値と特色DB40に規定されている特色パッチP1のLab値との色差、特色パッチ75の測色値と特色DB40に規定されている特色パッチP4のLab値との色差、の夫々をしきい値と比較し、どちらか一方の色差がしきい値以上であれば、ステップS180で“No”と判定すればよい。
【0070】
図10Bは、ステップS130において生成される画像データ74であって、
図9、
図10Aに示す例とは異なる例を示している。印刷媒体30に印刷すべき画像の色と、この画像と共に印刷する特色パッチの色とが異なることは当然にある。
図10Bの例では、画像データ74が含む画像76と、特色パッチ73とは色が異なる。このような場合に、印刷制御部12bは、画像76と同じ色の評価用パッチ77を、画像データ74内に画像76や特色パッチ73とともに含めるとしてもよい。この結果、画像76と共に特色パッチ73および評価用パッチ77が印刷媒体30に印刷され、媒体判定部12dは、特色パッチ73の測色値を用いてステップS170,S180の判定を行う。また、制御部11は、評価用パッチ77の測色値に基づいて、印刷結果における画像76の色が適正であるか否かを判定すればよい。
【0071】
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、印刷装置10は、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部21と、測色を行う測色部19と、カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部20と、制御部11と、を備える。制御部11は、記憶部20に記憶された、複数のカラーパッチのうちの一のカラーパッチのパッチデータを用いて、印刷部21に印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、印刷部21が印刷したカラーパッチを測色部19が測色して得た測色値に基づいて、印刷部21がカラーパッチを印刷した印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定する。
前記構成によれば、紙種を検出する専用のメディアセンサーを必要とせず、画像やパッチの測色に使用する測色部19を用いて、印刷部21が使用する印刷媒体の種別が指定種別であるか否かを判定することができる。これにより、コストを抑えて、印刷媒体の判定を行うことができる。また、測色部19が測色したカラーパッチの測色値を用いて、印刷媒体の判定だけでなく、印刷結果の色に対する評価や判定を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、記憶部20が記憶するパッチデータは、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、基準値を印刷媒体において再現するための色材の量を規定する色材データであって印刷媒体の種別毎の色材データと、を有する。
前記構成によれば、制御部11は、記憶部20に記憶された前記一のカラーパッチの基準値を再現するための色材データを用いて、印刷部21に印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、カラーパッチの測色値と、基準値とに基づいて、前記指定種別であるか否かの判定をすることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、制御部11は、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける所定の種別に対応する色材データを用いて印刷部21にカラーパッチを印刷させ、前記測色値と、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける基準値と、の差分に応じて前記判定を行う。
前記構成によれば、印刷部21が指定種別の印刷媒体を使用していれば理論上一致するはずの測色値と基準値との差分を評価することにより、前記指定種別であるか否かの判定を正確に行うことができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、記憶部20は、前記基準値を前記所定の種別の印刷媒体において再現するための色材データを用いて他の種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と、前記基準値との差分を、前記複数のカラーパッチの夫々について表した差分表データ60を記憶する。そして、制御部11は、差分表データ60を参照して、前記複数のカラーパッチの中から前記一のカラーパッチを選択する。
前記構成によれば、制御部11は、前記指定種別であるか否かの判定に最適なカラーパッチを、前記複数のカラーパッチの中から選択することができる。
【0075】
また、本実施形態は、印刷装置10以外にも、方法やプログラムといった各カテゴリーの発明を開示する。印刷媒体判定方法は、カラーパッチの色を規定するパッチデータを複数のカラーパッチについて記憶する記憶部20から、一のカラーパッチのパッチデータを取得するパッチ取得工程と、前記一のカラーパッチのパッチデータを用いて、色材を印刷媒体へ付着させて印刷を行う印刷部21に、印刷媒体へのカラーパッチの印刷を実行させる印刷工程と、印刷部21が印刷したカラーパッチを測色部19が測色して得た測色値に基づいて、印刷部21がカラーパッチを印刷した印刷媒体の種別が所定の種別であるか否かを判定する判定工程と、を有する。
【0076】
また、本実施形態によれば、パッチ選択方法は、カラーパッチの色を所定の色空間で示す基準値と、前記基準値を基準種別の印刷媒体において再現するための色材の量を規定する色材データと、を取得する取得工程と、前記色材データを用いて前記基準種別とは異なる比較種別の各印刷媒体に印刷をした場合に得られる各測色値と前記基準値との差分を算出する差分算出工程と、を備える。そして、前記取得工程および前記差分算出工程を、前記カラーパッチと前記基準種別との組み合わせを変更して繰り返し実行する。さらに、前記取得工程および前記差分算出工程が繰り返し実行された後、算出された前記差分に基づいて、前記基準種別とした印刷媒体の種別毎に、前記比較種別の印刷媒体と判別するためのカラーパッチを選択する選択工程を備える。
パッチ選択方法によれば、印刷媒体の種別毎に、他の種別の印刷媒体と判別するために最適なカラーパッチを選択することができる。従って、このように選択したカラーパッチを用いることにより、印刷媒体の判定を正確に行うことが可能となる。
【0077】
6.変形例:
本実施形態に含まれる変形例について、更に説明する。
第1変形例:
制御部11は、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける所定の種別に対応する色材データを用いて他の種別の印刷媒体に印刷した場合に得られる測色値と、前記一のカラーパッチのパッチデータにおける基準値との差分が、所定の差以内であれば、ユーザーに対する所定の警告を行う、としてもよい。
【0078】
図7,8に示した差分表データ60の例によれば、媒体種別α,β,γ毎に、比較種別との色差が平均的に3.0を上回るような特色パッチを選択することができた。しかし、
図4の特色DB登録処理におけるステップS260までの結果次第では、比較種別との色差が十分な特色パッチを媒体種別α,β,γ毎に選択できるとは限らない。例えば、媒体種別βに関しては、全ての特色パッチで、比較種別である媒体種別α,γそれぞれとの色差の平均が所定差「2.0」を下回っているとする。このような場合でも、制御部11は、比較種別との色差が平均的にできるだけ大きい特色パッチを、媒体種別βに対して選択し、登録する必要がある。制御部11は、ステップS270において、媒体種別βに関し、比較種別である媒体種別α,γそれぞれとの色差の平均が、例えば「1.8」である特色パッチP3を選択したとする。
【0079】
このような場合に、
図3の印刷測色処理において仮に、指定種別=媒体種別βであれば、制御部11は、ステップS120で指定種別に応じて特色DB40から特色パッチP3の情報を取得したとき、ユーザーへ所定の警告を行う。ここで言う警告とは、指定種別が媒体種別βであることに応じて印刷媒体30へ印刷する特色パッチP3による、指定種別であるか否かの判定精度が低い旨の警告である。また、このような警告とともに、制御部11は、ステップS190と同様に印刷部21の駆動を停止させてもよい。ユーザーは、特色パッチによる判定精度が低い状況を理解した上で、ステップS130以降の処理の続行か中止かを制御部11へ指示することができる。かかる構成によれば、特色パッチによる判定精度が低い状況を認識しないまま印刷を続行することによる不利益から、ユーザーを守ることができる。
【0080】
第2変形例:
図5A,5Bの特色DB40における、特色パッチおよび媒体種別に対応するCMYK値は、特色パッチのLab値と、媒体種別毎のICCプロファイルとに基づいて算出した値である。制御部11は、このような特色DB40におけるCMYK値を、実際の印刷および測色に基づいて調整してもよい。つまり、制御部11は、記憶部20に記憶された色材データのうち更新対象とする色材データを選択し、選択した色材データを用いて、印刷部21に、選択した色材データが対応する印刷媒体へカラーパッチを印刷させ、印刷されたカラーパッチを測色部19が測色して得た測色値と、選択した色材データが対応するカラーパッチの基準値との比較に基づいて、選択した色材データを調整し、調整後の色材データにより、選択した色材データを記憶部20において更新する。
【0081】
図11は、特色DB40のCMYK値を調整する色材データ調整処理を、フローチャートにより示している。ここでは、媒体種別αに対応するCMYK値を調整する場面を例に採り、色材データ調整処理を説明する。
【0082】
ステップS300では、制御部11は、1つの媒体種別、つまり媒体種別αに対応する、特色パッチP1,P2,P3,P4,P5毎の各CMYK値を、現在の特色DB40から取得する。ステップS300は、更新対象とする色材データを選択する処理に該当する。制御部11は、媒体種別αに関して色材データ調整処理を初めて実行する場合は、ステップS300では、デフォルト値としてのCMYK値を取得すればよい。CMYK値のデフォルト値とは、特色パッチのLab値と媒体種別毎のICCプロファイルとに基づいて算出した値であり、
図5A,5Bの特色DB40に示すCMYK値のことである。
【0083】
ステップS310では、ステップS300で取得した特色パッチ毎のCMYK値を基にして、カラーチャートを生成する。カラーチャートとは、互いに色が異なる複数のカラーパッチを表現する画像データである。制御部11は、ステップS300で取得した1つの特色パッチのCMYK値のカラーパッチと、このCMYK値からCMYKの少なくとも1インク色の階調値を変化させた複数のCMYK値に対応する複数のカラーパッチとを生成する。制御部11は、このように1つの特色パッチのCMYK値から色が微妙に異なるカラーパッチを増殖させる処理を、特色パッチ毎に繰り返すことにより、カラーチャートを生成する。
【0084】
ステップS320では、制御部11は、ステップS310で生成したカラーチャートに必要な画像処理を行って、カラーチャートを印刷するための印刷データを生成する。
ステップS330では、制御部11は、ステップS320で生成した印刷データに基づく、対応する媒体種別の印刷媒体へのカラーチャートの印刷を、印刷部21に実行させる。対応する媒体種別とは、当然この場面では媒体種別αである。ユーザーは、媒体種別αに関する色材データ調整処理を印刷装置10に実行させる場合には、媒体種別αの印刷媒体30を印刷部21にセットしておく。
【0085】
ステップS340では、制御部11は、ステップS330で媒体種別αの印刷媒体30に印刷されたカラーチャートを測色部19に測色させることにより、カラーチャートの各カラーパッチの測色値を取得する。
ステップS350では、制御部11は、ステップS340の測色により取得した各カラーパッチの測色値と、特色DB40に規定されている各特色パッチのLab値との比較に基づいて、各特色パッチのLab値に対応する新たなCMYK値を算出する。ステップS350が、CMYK値を調整する処理である。ステップS350は、公知の手法を含めて様々な手法を採用可能である。例えば、制御部11は、各カラーパッチの測色値をLab空間にマッピングし、各特色パッチのLab値と、各カラーパッチのLab値との位置関係に基づき、特色パッチのLab値に、より高精度に対応するCMYK値を補間演算等で算出すればよい。このように算出したCMYK値が、特色パッチのLab値に対応する新たなCMYK値である。
【0086】
ステップS360では、制御部11は、ステップS350において特色パッチ毎に算出した新たなCMYK値により、現在の特色DB40で媒体種別αに対応して規定されている特色パッチ毎のCMYK値を更新する。この結果、媒体種別αの印刷媒体において各特色をより高い精度で再現する各CMYK値が、特色DB40に規定されたことになる。
以上で、媒体種別αに関する色材データ調整処理が1回終了する。
図11の破線の矢印で示すように、制御部11は、媒体種別αに関する色材データ調整処理を、繰り返し実行してもよい。これを繰り返すことにより、特色DB40が規定するCMYK値による特色の再現精度を、より高めることができる。
【0087】
図12は、媒体種別αに関する色材データ調整処理の結果、情報の一部が更新された特色DB40を示している。
図12の特色DB40を、
図5A,5Bの特色DB40と比較すると、破線の枠で囲った媒体種別αに対応する特色パッチP1,P2,P3,P4,P5毎のCMYK値が更新されている。言うまでもなく、制御部11は、媒体種別αに関する色材データ調整処理と同様に、媒体種別βに関する色材データ調整処理や、媒体種別γに関する色材データ調整処理を実行することができる。
【0088】
そして、制御部11は、このようにCMYK値を更新した特色DB40を参照して、
図4の特色DB登録処理を行うことも可能である。更新後の特色DB40を参照して行う特色DB登録処理によれば、更新前の特色DB40を参照して行う特色DB登録処理と比較して、ステップS230で算出される色差の値が異なる。そのため、ステップS270で媒体種別毎に選択する特色パッチも、それまでの特色DB登録処理で選択した特色パッチと異なる可能性があり、結果的に、特色DB40における媒体種別毎の特色パッチの登録も更新され得る。
【0089】
第3変形例:
図3の印刷測色処理において、ステップS180で“No”と判定した場合に、制御部11は、媒体エラー処理(ステップS190)の一種として、
図13に示す処理を実行してもよい。
図13は、差分表データ更新処理をフローチャートにより示している。
ステップS400では、制御部11は、警告画面により、印刷媒体30が適正でない旨のエラー通知を表示するとともに、使用種別の入力要求を表示する。使用種別とは、現在、印刷部21にセットされており、ステップS150の印刷に使用された印刷媒体の種別である。
【0090】
ステップS410では、制御部11は、使用種別の入力をユーザーから受け付ける。ステップS400による警告画面を視認したユーザーは、指定種別と使用種別とが異なるため使用種別を入力すべきことを認識する。ユーザーは、印刷部21を確認して使用種別を認識し、操作受付部14を操作することにより、使用種別の入力を行う。
【0091】
ユーザーの入力により使用種別を認識した制御部11は、使用種別と、ステップS170の判定で算出した色差、つまり指定種別に応じた特色とステップS160の測色により得られた特色パッチの測色値との色差と、に基づいて差分表データ60を更新する(ステップS420)。例えば、指定種別=媒体種別αであり、制御部11は、媒体種別αに応じた特色パッチP1をステップS150で印刷媒体30へ印刷した結果、ステップS170で算出した色差が「2.8」であり、ステップS180で“No”と判定したとする。また、ステップS410で受け付けた使用種別は、媒体種別γであったとする。この場合、ステップS420では、制御部11は、
図7,8に示す差分表データ60において特色パッチP1と、基準種別=媒体種別αと、比較種別=媒体種別γとの関係に対して規定されている色差「3.4」を色差「2.8」に更新する。
【0092】
このように、特色パッチの実際の測色結果からステップS170で算出した色差と、使用種別との情報に基づいて、差分表データ60を更新することにより、差分表データ60の正確性を向上させることができる。制御部11は、ステップS420で差分表データ60を更新した後、
図4のステップS270を実行することができる。つまり、更新により正確性が向上した差分表データ60を参照して、媒体種別毎の特色パッチの選択および特色DB40への登録をやり直す。この結果、他の種別の印刷媒体と判別するために適した特色パッチを媒体種別毎に、より的確に選択することができる。
【0093】
その他の例:
キャリッジ17と印刷媒体30との第2方向D2における相対移動である副走査は、キャリッジ17を第2方向D2に沿って移動させるのではなく、印刷媒体30の搬送により実現する構成であってもよい。つまり、搬送部16による印刷媒体30の搬送方向Dfは、
図2に示すような第1方向D1と平行な向きではなく、第2方向D2と平行な向きであってもよい。この場合、パスとパスとの間に、搬送部16が副走査量に応じた印刷媒体30の搬送を行えばよい。
印刷媒体30は、ロール紙のような長尺な媒体に限定されず、ページ単位で予め切断された単票紙等であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…印刷装置、11…制御部、11a…CPU、11b…ROM、11c…RAM、12…プログラム、12a…パッチ選択処理部、12b…印刷制御部、12c…測色制御部、12d…媒体判定部、16…搬送部、17…キャリッジ、18…印刷ヘッド、19…測色部、20…記憶部、21…印刷部、30…印刷媒体、40…特色DB、50α,50β,50γ…ICCプロファイル、60…差分表データ、73,75…特色パッチ、77…評価用パッチ