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特許7447611赤外線センサ用カバー及び赤外線センサ用カバーの製造方法
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  • 特許-赤外線センサ用カバー及び赤外線センサ用カバーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】赤外線センサ用カバー及び赤外線センサ用カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/04 20060101AFI20240305BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240305BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01J1/04 Z
G01J1/02 C
B32B27/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020057717
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156753
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古川 欣史
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一和
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 洋介
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 康宏
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007776(JP,A)
【文献】特開2020-067291(JP,A)
【文献】特開2018-031888(JP,A)
【文献】特開2010-243436(JP,A)
【文献】特開2004-198617(JP,A)
【文献】特開2003-004942(JP,A)
【文献】特開昭55-062410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/02- G01J 1/04
G01J 1/42
G01J 5/02
G01J 5/04- G01J 5/0802
B29C 39/00- B29C 39/24
B29C 39/38- B29C 39/44
B29C 43/00- B29C 43/34
B29C 43/44- B29C 43/58
B32B 27/00
B60R 19/00- B60R 19/56
G01B 11/00- G01B 11/30
G01C 3/00- G01C 3/32
G01S 7/00- G01S 7/51
G01S 13/00- G01S 13/95
G01V 8/10- G01V 8/26
G02B 5/20- G02B 5/28
G08B 13/18- G08B 13/196
G08B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾層を有し、赤外線センサから照射される赤外線が透過可能なカバーであって、
樹脂成形体からなり、前記加飾層の一方の面に設けられるとともに可視光に対して透明な第1基材と、
樹脂成形体からなり、前記加飾層の前記一方の面とは反対の他方の面に設けられる第2基材と、を有し、
赤外線の波長における前記第1基材を形成する第1樹脂材料の屈折率と、赤外線の波長における前記第2基材を形成する第2樹脂材料の屈折率との差の絶対値が、0.05以下であり、
前記第1樹脂材料の荷重たわみ温度と、前記第2樹脂材料の荷重たわみ温度との差の絶対値が、15度以上であり、
前記第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート、または、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートであり、
前記第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーまたはエステル系モノマーとの共重合ポリカーボネートである、
赤外線センサ用カバー。
【請求項2】
前記第1基材は、前記加飾層の表面に設けられるものであり、
前記第2基材は、前記加飾層の裏面に設けられるものであり、
前記第1樹脂材料の荷重たわみ温度が、前記第2樹脂材料の荷重たわみ温度よりも高い、
請求項1に記載の赤外線センサ用カバー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の赤外線センサ用カバーを製造する方法であって、
前記第2樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度の前記第1樹脂材料を用いて前記第1基材を成形する第1基材成形工程と、
前記第1基材の裏面に前記加飾層を形成する加飾層形成工程と、
前記加飾層が形成された前記第1基材をインサートして前記加飾層の裏面に前記第2基材を成形する第2基材成形工程と、を備える、
赤外線センサ用カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサ用カバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、近赤外線センサ用カバー(以下、カバー)が開示されている。このカバーは、例えばポリカーボネート(PC)や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの透明な材着樹脂材料を主成分とした樹脂材料によって形成された有色半透明のカバー本体を有している。材着樹脂材料は、顔料などの着色材を樹脂材料に混合、あるいは光輝材を着色材とともに樹脂材料に混合することにより、樹脂自体を着色した材料である。
【0003】
また、こうしたカバーにおいては、金属材料からなる加飾層と、樹脂成形体からなり、加飾層の表面に設けられた透明な第1基材と、樹脂成形体からなり、加飾層の裏面に設けられた透明な第2基材とを有するものがある。こうしたカバーの製造に際しては、まず、第1基材を射出成形し、続いて、第1基材の裏面に加飾層を蒸着や塗装によって形成する。そして、加飾層が形成された第1基材をインサートして加飾層の裏面に第2基材を射出成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-31888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたカバー及びその製造方法においては、第2基材を成形する際に、第1基材が第2基材を形成する溶融樹脂の熱により変形することによって加飾層に皺が生じたり、加飾層が破れたりするおそれがある。
【0006】
これに対して、例えば第1基材を形成する樹脂材料として、第2基材を形成する樹脂材料よりも耐熱性の高いものを選定することが考えられる。しかしながらこの場合には、第1基材を形成する樹脂材料と第2基材を形成する樹脂材料とが異なるために、赤外線センサから照射される赤外線が、第1基材と第2基材との間の界面において屈折しやすくなる。その結果、検出対象の検出位置が大きくずれることとなり、赤外線センサによる検出精度が悪化するという背反が生じる。
【0007】
本発明の目的は、赤外線センサによる検出精度の悪化を抑制しつつ、加飾層の熱損傷を抑制できる赤外線センサ用カバー及び赤外線センサ用カバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための赤外線センサ用カバーは、加飾層を有し、赤外線センサから照射される赤外線が透過可能なカバーであって、樹脂成形体からなり、前記加飾層の一方の面に設けられる透明な第1基材と、樹脂成形体からなり、前記加飾層の前記一方の面とは反対の他方の面に設けられる透明な第2基材と、を有し、前記第1基材を形成する第1樹脂材料の屈折率と、前記第2基材を形成する第2樹脂材料の屈折率との差の絶対値が、0.05以下であり、前記第1樹脂材料の荷重たわみ温度と、前記第2樹脂材料の荷重たわみ温度との差の絶対値が、15度以上である。
【0009】
第1基材を形成する第1樹脂材料の屈折率と第2基材を形成する第2樹脂材料の屈折率との差が大きくなるほど、赤外線が第1基材と第2基材との間の界面において屈折する際の角度(以下、屈折角度α)が大きくなる。このとき、赤外線センサから照射される赤外線の入射方向と上記界面とのなす角度が大きくなるほど、屈折角度αは大きくなる。
【0010】
上記構成によれば、第1樹脂材料の屈折率と、第2樹脂材料の屈折率との差の絶対値が、0.05以下である。このため、赤外線の入射角5度において、100m先の検出対象の位置ずれを1m以下にすることが可能となる。
【0011】
また、樹脂材料を成形する際の温度(以下、成形温度)は、その樹脂材料の荷重たわみ温度に略比例する。上記構成によれば、第1樹脂材料の荷重たわみ温度と第2樹脂材料の荷重たわみ温度との差の絶対値が15度以上である。このため、第1基材及び第2基材のうち荷重たわみ温度の高い一方の基材を先に成形し、続いて当該一方の基材に加飾層を形成し、続いて加飾層に対して当該一方の基材とは反対側から他方の基材を成形すれば、他方の基材の成形温度を低く抑えることが可能となる。これにより、他方の基材を成形する際に、加飾層に熱損傷を与えることを抑制できる。
【0012】
したがって、赤外線センサによる検出精度の悪化を抑制しつつ、加飾層の熱損傷を抑制できる。
上記赤外線センサ用カバーにおいて、前記第1基材は、前記加飾層の表面に設けられるものであり、前記第2基材は、前記加飾層の裏面に設けられるものであり、前記第1樹脂材料の荷重たわみ温度が、前記第2樹脂材料の荷重たわみ温度よりも高いことが好ましい。
【0013】
赤外線センサ用カバーにおいては、通常、加飾層の裏面に設けられる一方の基材に取付部などが設けられることから、当該一方の基材の形状が複雑になりやすい。このため、加飾層の裏面に設けられる一方の基材を先に成形すると、当該一方の基材を成形型から取り外す工程や、当該一方の基材に対して加飾層を形成する工程、加飾層に対して当該一方の基材とは反対側から他方の基材を成形する工程が煩雑となる。
【0014】
この点、上記構成によれば、加飾層の表面に設けられる第1基材が、加飾層の裏面に設けられる第2樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度の第1樹脂材料によって成形される。このため、取付部などが設けられない比較的単純な形状を有する第1基材が先に成形されることとなる。これにより、上述した不都合の発生を抑制できる。
【0015】
上記赤外線センサ用カバーにおいて、前記第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート、または、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートであり、前記第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーまたはエステル系モノマーとの共重合ポリカーボネートであることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、第1樹脂材料及び第2樹脂材料が共にポリカーボネートとされるため、第1樹脂材料の屈折率と第2樹脂材料の屈折率とを容易に近づけることができる。
一方、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートでは、融点の高いイミド系モノマーを含有させることによって、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートに比べて荷重たわみ温度を容易に上げることができる。
【0017】
他方、ビスフェノールAと脂肪族モノマーまたはエステル系モノマーとの共重合ポリカーボネートでは、融点の低い脂肪族モノマーやエステル系モノマーを含有させることによって、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートに比べて荷重たわみ温度を容易に下げることができる。
【0018】
特に、第2樹脂材料の荷重たわみ温度を大きく下げることによって、第1樹脂材料については、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートを採用することができる。
また、上記目的を達成するための赤外線センサ用カバーの製造方法は、前記第2樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度の第1樹脂材料を用いて前記第1基材を成形する第1基材成形工程と、前記第1基材の裏面に前記加飾層を形成する加飾層形成工程と、前記加飾層が形成された前記第1基材をインサートして前記加飾層の裏面に前記第2基材を成形する第2基材成形工程と、を備える。
【0019】
同方法によれば、加飾層の表面に設けられる第1基材が、加飾層の裏面に設けられる第2基材の樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度の樹脂材料によって成形される。次に、第1基材の裏面に加飾層が形成される。そして、加飾層が形成された第1基材をインサートして加飾層の裏面に第2基材が成形される。このように取付部などが設けられない比較的単純な形状を有する第1基材が先に成形されることとなる。これにより、第1基材を成形型から取り外す工程などが煩雑になることを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、赤外線センサによる検出精度の悪化を抑制しつつ、加飾層の熱損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】赤外線センサ用カバーの一実施形態について、赤外線センサ及びカバーを示す図。
図2】(a)~(d)は、同実施形態のカバーの製造工程を順に示す断面図。
図3】実施例及び比較例について、第1基材及び第2基材の荷重たわみ温度の差と、第1基材及び第2基材の屈折率の差の絶対値との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1図3を参照して、赤外線センサ用カバー及びその製造方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両には、赤外線センサ20及び赤外線センサ用カバー(以下、カバー10)が搭載されている。カバー10は、赤外線センサ20から送信される近赤外線(以下、単に赤外線)の送信方向の前方に配置され、赤外線が透過可能である。
【0023】
なお、以降において、カバー10において、赤外線センサ20から送信される赤外線の送信方向の前側及び後側をそれぞれ表側及び裏側として説明する。
カバー10は、樹脂成形体からなる透明な板状の第1基材11と、金属材料からなり、第1基材11の裏面に設けられる加飾層13と、樹脂成形体からなり、加飾層13の裏面に設けられる透明な板状の第2基材12とを有している。すなわち、第1基材11は、加飾層13の一方の面(本実施形態では表面)に設けられ、第2基材12は、加飾層13の上記一方の面とは反対の他方の面(本実施形態では裏面)に設けられる。
【0024】
第1基材11の裏面には、複数の凹部11aが形成されている。なお、第1基材11の表面には、ハードコート層(図示略)が形成されていてもよい。
加飾層13は、第1基材11の凹部11aを含む裏面に形成されている。
【0025】
第2基材12の表面には、第1基材11の凹部11a内に充填される凸部12aが形成されている。
第2基材12の裏面には、複数の取付部12bが突設されている。なお、第2基材12の裏面には、通電によって発熱することでカバー10を加熱して表面に付着した雪を融かすためのヒータ層が形成されていてもよい。
【0026】
ここで、赤外線の波長における第1基材11を形成する第1樹脂材料の屈折率n1と、第2基材12を形成する第2樹脂材料の屈折率n2との差の絶対値|n1-n2|は、0.05以下である。
【0027】
第1樹脂材料の荷重たわみ温度T1は、第2樹脂材料の荷重たわみ温度T2よりも高く、その差ΔT(=T1-T2)は、15度以上である。
第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート、または、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートである。
【0028】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーまたはエステル系モノマーとの共重合ポリカーボネートである。
次に、図2を参照して、カバー10の製造方法について説明する。
【0029】
図2(a)に示すように、カバー10の製造においては、まず、第1固定型31と第1可動型41とによって形成されるキャビティ内に溶融状態の第1樹脂材料を射出することにより、第1基材11を成形する(第1基材成形工程)。
【0030】
次に、図2(b)に示すように、第1固定型31及び第1可動型41から第1基材11を取り出し、第1基材11の裏面に加飾層13を形成する(加飾層形成工程)。なお、加飾層13は、蒸着または塗布によって形成することができる。
【0031】
次に、図2(c)に示すように、加飾層13が形成された第1基材11を第2可動型42の内部にインサートする。
そして、図2(d)に示すように、第2固定型32と第2可動型42とによって形成されるキャビティ内に溶融状態の第2樹脂材料を射出することにより、第2基材12を成形する(第2基材成形工程)。
【0032】
次に、図3及び表1~表3を参照して、実施例及び比較例について説明する。
【0033】
【表1】
<第1実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート(PC)である。具体的には、SABIC社製の商品名123Rである。
【0034】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーの共重合ポリカーボネート(共重合PC)である。具体的には、SABIC社製の商品名HFD1930である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.004であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、18℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0035】
<第2実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートである。具体的には、SABIC社製の商品名CXT19である。
【0036】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーの共重合ポリカーボネートであり、第1実施例の第2樹脂材料と同一である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.031であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、60℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0037】
<第3実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートであり、第2実施例の第1樹脂材料と同一である。
【0038】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAとエステル系モノマーの共重合ポリカーボネートである。具体的には、SABIC社製の商品名SLX1432である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.015であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、52℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0039】
<第4実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートであり、第2、第3実施例の第1樹脂材料と同一である。
【0040】
第2樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートであり、第1実施例の第1樹脂材料と同一である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.027であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、42℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0041】
【表2】
<第5実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートである。具体的には、SABIC社製の商品名CXT17である。
【0042】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーの共重合ポリカーボネートであり、第1実施例の第2樹脂材料と同一である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.027であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、40℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0043】
<第6実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートであり、第5実施例の第1樹脂材料と同一である。
【0044】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーの共重合ポリカーボネート(共重合PC)である。具体的には、SABIC社製の商品名HFD1830である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.025であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、35℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0045】
<第7実施例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートであり、第5、第6実施例の第1樹脂材料と同一である。
【0046】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAとエステル系モノマーの共重合ポリカーボネートであり、第3実施例の第2樹脂材料と同一である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.011であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、32℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0047】
【表3】
<第1比較例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート(PC)であり、第1実施例の第1樹脂材料と同一である。
【0048】
第2樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート(PC)であり、第1実施例の第1樹脂材料と同一である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、0℃である。加飾層13に熱損傷が生じた。
【0049】
<第2比較例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート(PC)であり、第1実施例及び第1比較例の第1樹脂材料と同一である。
【0050】
第2樹脂材料は、ビスフェノールAとエステル系モノマーの共重合ポリカーボネートであり、第3実施例及び第7実施例の第2樹脂材料と同一である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.012であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、10℃である。加飾層13に熱損傷が生じた。
【0051】
<第3比較例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート(PC)であり、第1実施例、第1、第2比較例の第1樹脂材料と同一である。
【0052】
第2樹脂材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。具体的には、三菱ケミカル社製の商品名VH001である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.100であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、28℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0053】
<第4比較例>
第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート(PC)であり、第1実施例、第1~第3比較例の第1樹脂材料と同一である。
【0054】
第2樹脂材料は、透明ABS樹脂である。具体的には、ダイセルポリマー社製の商品名セビアンV-T500である。
波長905nmにおける屈折率の差の絶対値|n1-n2|は、0.076であり、荷重たわみ温度の差ΔTは、60℃である。加飾層13には熱損傷が生じなかった。
【0055】
次に、本実施形態の作用について説明する。
第1樹脂材料の屈折率n1と第2樹脂材料の屈折率n2との差の絶対値|n1-n2|が大きくなるほど、赤外線が第1基材11と第2基材12との間の界面において屈折する際の角度(以下、屈折角度α)が大きくなる(図1参照)。このとき、赤外線センサ20から照射される赤外線の入射方向と、上記界面とのなす角度が大きくなるほど、屈折角度αは大きくなる。
【0056】
本実施形態によれば、第1樹脂材料の屈折率n1と、第2樹脂材料の屈折率n2との差が、0.05以下である。このため、赤外線の入射角5度において、100m先の検出対象の位置ずれを1m以下にすることが可能となる。
【0057】
また、樹脂材料を成形する際の温度(以下、成形温度)は、その樹脂材料の荷重たわみ温度に略比例する。本実施形態によれば、第1樹脂材料の荷重たわみ温度T1と第2樹脂材料の荷重たわみ温度T2との差ΔT(=T1-T2)が15度以上である。このため、第1基材11及び第2基材12のうち荷重たわみ温度の高い第1基材11を先に成形し、続いて第1基材11に加飾層13を形成し、続いて加飾層13に対して第1基材11とは反対側から第2基材12を成形することにより、第2基材12の成形温度を低く抑えることが可能となる。これにより、第2基材12を成形する際に、加飾層13に熱損傷を与えることを抑制できる。
【0058】
以上説明した本実施形態に係る赤外線センサ用カバー及び赤外線センサ用カバーの製造方法によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)第1樹脂材料の屈折率n1と、第2樹脂材料の屈折率n2との差の絶対値|n1-n2|が、0.05以下である。また、第1樹脂材料の荷重たわみ温度T1と、第2樹脂材料の荷重たわみ温度T2との差の絶対値|T1-T2|が、15度以上である。
【0059】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、赤外線センサ20による検出精度の悪化を抑制しつつ、加飾層13の熱損傷を抑制できる。
(2)第1基材11は、加飾層13の表面に設けられるものである。第2基材12は、加飾層13の裏面に設けられるものである。第1樹脂材料の荷重たわみ温度T1が、第2樹脂材料の荷重たわみ温度T2よりも高い(T1>T2)。
【0060】
赤外線センサ用カバー10においては、通常、加飾層13の裏面に設けられる第2基材12に車両への取付部12bなどが設けられることから、第2基材12の形状が複雑になりやすい。このため、第2基材12を先に成形すると、第2基材12を成形型から取り外す工程や、第2基材12に対して加飾層13を形成する工程、加飾層13に対して当該一方の層とは反対側から他方の層を成形する工程が煩雑となる。
【0061】
この点、上記構成によれば、加飾層13の表面に設けられる第1基材11が、加飾層13の裏面に設けられる第2樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度T1の第1樹脂材料によって成形される。このため、取付部12bなどが設けられない比較的単純な形状を有する第1基材11が先に成形されることとなる。これにより、上述した不都合の発生を抑制できる。
【0062】
(3)第1樹脂材料は、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネート、または、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートである。第2樹脂材料は、ビスフェノールAと脂肪族モノマーまたはエステル系モノマーとの共重合ポリカーボネートである。
【0063】
こうした構成によれば、第1樹脂材料及び第2樹脂材料が共にポリカーボネートとされるため、第1樹脂材料の屈折率n1と第2樹脂材料の屈折率n2とを容易に近づけることができる。
【0064】
一方、ビスフェノールAとイミド系モノマーとの共重合ポリカーボネートでは、融点の高いイミド系モノマーを含有させることによって、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートに比べて荷重たわみ温度T1を容易に上げることができる。
【0065】
他方、ビスフェノールAと脂肪族モノマーまたはエステル系モノマーとの共重合ポリカーボネートでは、融点の低い脂肪族モノマーやエステル系モノマーを含有させることによって、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートに比べて荷重たわみ温度T2を容易に下げることができる。
【0066】
特に、第2樹脂材料の荷重たわみ温度T2を大きく下げることによって、第1樹脂材料については、ビスフェノールA単一構造のポリカーボネートを採用することができる。
(4)カバー10の製造方法は、第2樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度T1の第1樹脂材料を用いて第1基材11を成形する第1基材成形工程と、第1基材11の裏面に加飾層13を形成する加飾層形成工程と、加飾層13が形成された第1基材11をインサートして加飾層13の裏面に第2基材12を成形する第2基材成形工程とを備える。
【0067】
こうした方法によれば、加飾層13の表面に設けられる第1基材11が、加飾層13の裏面に設けられる第2基材12を形成する樹脂材料よりも高い荷重たわみ温度T1の樹脂材料によって成形される。次に、第1基材11の裏面に加飾層13が形成される。そして、加飾層13が形成された第1基材11をインサートして加飾層13の裏面に第2基材12が成形される。このように取付部12bなどが設けられない比較的単純な形状を有する第1基材11が先に成形されることとなる。これにより、第1基材11を成形型から取り外す工程などが煩雑になることを抑制できる。
【0068】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・例えば取付部12bを第2基材12とは別体にて形成することもできる。この場合、第1基材11を加飾層13の裏面に形成するとともに、第2基材12を加飾層13の表面に設けることができる。
【0070】
・本発明に係る第1樹脂材料及び第2樹脂材料は、上記実施形態において例示したものに限定されない。第1樹脂材料及び第2樹脂材料は、第1樹脂材料の屈折率n1と第2樹脂材料の屈折率n2との差の絶対値|n1-n2|が、0.05以下であり、第1樹脂材料の荷重たわみ温度T1と、第2樹脂材料の荷重たわみ温度T2との差の絶対値|T1-T2|が、15度以上であれば任意の樹脂材料から選択することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…カバー
11…第1基材
11a…凹部
12…第2基材
12a…凸部
12b…取付部
13…加飾層
20…赤外線センサ
31…第1固定型
32…第2固定型
41…第1可動型
42…第2可動型
図1
図2
図3