IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許-パイプベンダー 図1
  • 特許-パイプベンダー 図2
  • 特許-パイプベンダー 図3
  • 特許-パイプベンダー 図4
  • 特許-パイプベンダー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】パイプベンダー
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/025 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
B21D7/025 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020060462
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154383
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 健
(72)【発明者】
【氏名】宝来 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】百々 泰
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183411(JP,A)
【文献】国際公開第2016/113992(WO,A1)
【文献】特開昭59-110426(JP,A)
【文献】特開昭57-142723(JP,A)
【文献】実開昭57-102425(JP,U)
【文献】実開昭57-056515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型と、
前記曲げ対象部分を前記曲げ型に押し付ける締め型と、
前記締め型に押し付けられている前記曲げ対象部分よりも前記パイプの曲げ加工後の側で、かつ、少なくとも曲げ外側から、前記パイプを支持するパイプ支持部と、
前記締め型と前記パイプ支持部とを設置し、前記曲げ型の回転軸と同軸で回転する回転テーブルと、を備え
前記パイプの曲げ加工後の側にある加工済み部が、曲げ加工前の前記曲げ対象部分と同列に延伸する第1パイプ部と、前記第1パイプ部と隣り合う第2パイプ部とを含む場合、
前記パイプ支持部の少なくとも一部は、前記第1パイプ部と前記第2パイプ部とに挟まれた空間領域の側から前記第1パイプ部を支持し、
前記空間領域における前記第1パイプ部と前記第2パイプ部との最小間隔は、前記パイプの径と同一であり、
前記パイプベンダーは、前記パイプ支持部の少なくとも一部を、前記パイプの曲げ方向が含まれる曲げ平面とは交差する方向に沿って、前記空間領域に進入させ、又は、前記空間領域から退出させる支持部駆動機構を備え、
前記パイプ支持部は、前記支持部駆動機構を介して前記回転テーブルに設置される、パイプベンダー。
【請求項2】
前記支持部駆動機構は、前記曲げ平面よりも鉛直方向の下方にある、請求項に記載のパイプベンダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パイプベンダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管等のパイプを所望の形状に曲げる装置として、パイプベンダーが存在する。特許文献1は、パイプを左方向に曲げるのに用いられる左曲げ型と、パイプを右方向に曲げるのに用いられる右曲げ型とを備えたパイプベンダーに関連する技術を開示している。このようなパイプベンダーは、直管状である加工前のパイプに対して、最終的に蛇行曲げ管のような複雑な形状となるように連続的に曲げ加工を施すことができる。
【0003】
ここで、蛇行曲げ管のような加工済み品では、曲げ部分における曲げ半径が小さいほど、隣り合う管同士の間隔を狭くすることができるので、結果として加工済み品全体における管の敷設を密にすることができる。パイプに曲げ半径が小さくなる曲げ部分を形成する例として、特許文献1に開示されているパイプベンダーでは、パイプの最小曲げ半径をパイプの径寸法と同等まで設定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-110426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、曲げ部分では、曲げ半径が小さいほどパイプの変形抵抗が大きくなるので、例えば曲げ型には、パイプの変形抵抗に伴う荷重が作用する。したがって、パイプベンダー側の構成要素には、パイプの変形抵抗に耐え得る剛性が要求される。
【0006】
また、パイプベンダーは、すでに曲げ加工が施された加工済み部も同時に旋回させながらパイプを曲げるので、曲げ加工の終盤の工程に近づくにつれて同時に旋回させる加工済み部の大きさや重量も増えていく。そのため、加工済み部の大きさや重量の増加に伴って、パイプの曲げ根元部分に相応の応力が作用し、パイプに意図しない変形が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本開示は、パイプの加工済み部の旋回時に生じる装置側での荷重やパイプ側での応力を低減するのに有利なパイプベンダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るパイプベンダーは、パイプの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型と、曲げ対象部分を曲げ型に押し付ける締め型と、締め型に押し付けられている曲げ対象部分よりもパイプの曲げ加工後の側で、かつ、少なくとも曲げ外側から、パイプを支持するパイプ支持部と、締め型とパイプ支持部とを設置し、曲げ型の回転軸と同軸で回転する回転テーブルと、を備え、パイプの曲げ加工後の側にある加工済み部が、曲げ加工前の曲げ対象部分と同列に延伸する第1パイプ部と、第1パイプ部と隣り合う第2パイプ部とを含む場合、パイプ支持部の少なくとも一部は、第1パイプ部と第2パイプ部とに挟まれた空間領域の側から第1パイプ部を支持し、空間領域における第1パイプ部と第2パイプ部との最小間隔は、パイプの径と同一であり、パイプベンダーは、パイプ支持部の少なくとも一部を、パイプの曲げ方向が含まれる曲げ平面とは交差する方向に沿って、空間領域に進入させ、又は、空間領域から退出させる支持部駆動機構を備え、パイプ支持部は、支持部駆動機構を介して回転テーブルに設置される。
【0009】
上記のパイプベンダーでは、持部駆動機構は、曲げ平面よりも鉛直方向の下方にあってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、パイプの加工済み部の旋回時に生じる装置側での荷重やパイプ側での応力を低減するのに有利なパイプベンダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るパイプベンダーの平面図である。
図2】回転テーブルに取り付けられたパイプ支持機構を示す斜視図である。
図3】一実施形態におけるパイプ支持機構が描画されたパイプベンダーの側面図である。
図4】一実施形態におけるパイプベンダーの作用を説明する図である。
図5図4のV-V部に相当するパイプとパイプ支持部との位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0013】
図1は、一実施形態に係るパイプベンダー1の概略構成を示す平面図である。パイプベンダー1は、ワークであるパイプPを曲げる装置である。パイプPは、例えば、各種規格に準じた一般的な鋼管である。以下の各図では、一例として、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な水平面内において、曲げ加工前のパイプPを曲げ加工部10へ搬送する搬送方向Fに並行となるX軸を取り、X軸に垂直な方向にY軸を取る。
【0014】
パイプベンダー1は、概略的に分類すると、パイプPに曲げ加工を施す曲げ加工部10と、曲げ加工部10に向けてパイプPを搬送する搬送部20とを備える。なお、曲げ加工部10と搬送部20とは、パイプベンダー1において必ずしも明確に分けられている必要はなく、一つに統合されていてもよい。また、曲げ加工部10及び搬送部20は、それぞれ、その上部をパイプPが通過するテーブルを備える。搬送部20が備えるテーブルが上流テーブル21であり、パイプPの搬送方向Fの上流側に位置する。一方、曲げ加工部10が備えるテーブルが下流テーブル11であり、搬送方向Fの下流側に位置する。
【0015】
曲げ加工部10は、曲げ型12と、締め型13と、締め型クランプ機構14と、圧力型15と、圧力型クランプ機構16と、バックブースター17と、回転テーブル19と、パイプ支持機構30とを備える。
【0016】
曲げ型12は、パイプPの曲げ対象部分が押し付けられた状態で回転することで、パイプPを曲げる型である。曲げ型12は、円柱又は円板状の外形を有し、下流テーブル11上で中心軸Oを回転軸として回転可能である。曲げ型12の外周には、パイプPの外周面を当接させる周溝12aが形成されている。周溝12aの断面形状は、パイプPの円形断面に対応した半円形である。周溝12aの周断面の曲率半径は、パイプPの所望の曲げ半径に対応している。本実施形態では、曲げ型12は、小曲げ半径の曲げ加工にも対応し、パイプPの曲げ半径がパイプPの径と同程度となる曲げ加工も可能とする。また、曲げ型12は、外周の一部に、直線状に延出されたクランプ部12bを有する。つまり、クランプ部12bでの周溝12aは、例外的に直線状である。図1において実線で示される曲げ型12の位置が初期回転位置である。初期回転位置では、クランプ部12bは搬送方向Fに沿って延出している。なお、曲げ型12は、小曲げ半径の曲げ加工を可能とするものに限らず、パイプPに対してより大きい曲げ半径の曲げ加工を施すものであってもよい。また、本実施形態における曲げ型12は、円柱又は円板状の外形を有するものとしているが、これに代えて、角が曲げられた四角柱又は四角板のような他の外形を有していてもよい。
【0017】
締め型13は、パイプPの曲げ対象部分よりも先端側の部分を曲げ型12に押し付けて曲げ型12とともに回転する型である。なお、締め型は、クランプ型とも呼ばれる。締め型13は、曲げ型12の回転軸と同軸で回転可能な回転テーブル19上に設置される。つまり、締め型13は、中心軸O周りの回転テーブル19の回転駆動に伴って回転する。締め型13は、曲げ型12のクランプ部12bとの対向面に、パイプPの円形断面に対応する半円形断面の押圧溝13bを有する。締め型13は、曲げ型12に対して近づいたり離れたりすることが可能である。図1において実線で示される締め型13の位置が初期位置である。
【0018】
締め型クランプ機構14は、回転テーブル19上に設置され、曲げ型12に向かう方向に締め型13を移動させる。つまり、締め型13は、締め型クランプ機構14を介して回転テーブル19に設置されている。締め型クランプ機構14は、曲げ型12の周溝12aと締め型13の押圧溝13bとの間にパイプPが存在するときに締め型13を移動させることでパイプPを加圧し、パイプPを曲げ型12と締め型13とでクランプさせることができる。
【0019】
圧力型15は、下流テーブル11上で、かつ、締め型13の上流側に設置され、パイプPの曲げ外側と接触し、曲げ加工によるパイプPからの反力を受け止める型である。圧力型15は、パイプPとの接触面に、パイプPの円形断面に対応する半円形断面の直線溝15aを有する。圧力型15は、パイプPに対して近づいたり離れたりすることが可能である。また、圧力型15は、パイプPの移動に追従して、搬送方向Fに移動可能である。
【0020】
圧力型クランプ機構16は、下流テーブル11上に設置され、パイプPに向かう方向に圧力型15を移動させる。圧力型クランプ機構16は、曲げ型12の中心軸O及び搬送方向Fの双方に対して直角な押圧方向に圧力型15を押し出し、圧力型15にパイプPの反力を受け止めさせることができる。圧力型クランプ機構16が設けられていることで、圧力型15は、曲げ加工によりパイプPが軸方向に引かれるのと一体で搬送方向Fに移動可能である。
【0021】
バックブースター17は、下流テーブル11上で、かつ、圧力型15の上流側に設置され、曲げ加工時にパイプPをクランプしながら搬送方向Fに押し出すことで、パイプPに軸圧縮力を作用させる。バックブースター17は、例えば、パイプPを挟み込むことが可能な一対のクランパである。クランパ同士の対向面には、それぞれ、パイプPの円形断面に対応する半円形断面のクランプ溝17aが形成されている。
【0022】
図2は、回転テーブル19と、回転テーブル19に取り付けられた状態のパイプ支持機構30とを概略的に示す斜視図である。
【0023】
回転テーブル19は、曲げ型12の回転軸である中心軸Oと同軸で回転可能である。回転テーブル19は、環状部19aと、テーブル本体19bとを備える。環状部19aは、テーブル本体19bを支持し、曲げ型12の回転軸部12c(図3参照)に係合してテーブル本体19bに回転力を与える。テーブル本体19bは、例えばその上面19cに、締め型クランプ機構14を取り付け可能である。なお、回転テーブルは、締め型クランプ機構14を介して締め型13を設置することから、クランプ台とも呼ばれる。また、テーブル本体19bは、例えばその側面19dに、パイプ支持機構30を取り付け可能である。
【0024】
パイプ支持機構30は、回転テーブル19に設置され、締め型13の下流側でパイプPを支持する。パイプ支持機構30は、パイプ支持部31と、支持部駆動機構32と、固定枠33とを備える。
【0025】
図3は、曲げ加工動作が開始される直前の、パイプ支持機構30が含まれる一部位が拡大されたパイプベンダー1の側面図である。図3では、パイプPは、曲げ型12と締め型13とに挟み込まれて保持されているとともに、パイプ支持機構30のパイプ支持部31に支持されている。また、曲げ型12の回転軸部12cは、回転駆動部12dにより回転される。
【0026】
パイプ支持部31は、パイプPを直接的に支持する部材である。パイプ支持部31は、締め型13に押し付けられている曲げ対象部分よりもパイプPの曲げ加工後の側で、かつ、少なくとも曲げ外側から、パイプPを支持する。
【0027】
本実施形態では、パイプ支持部31は、それぞれパイプPと接触する2つの接触平面を含む。このうち、一方の第1接触平面31aは、パイプPの軸方向と、例えば鉛直方向とで形成される平面である。第1接触平面31aは、曲げ外側からパイプPに接触する。図3に示すパイプベンダー1の状態の例では、パイプPの軸方向はX方向であり、鉛直方向はZ方向であるので、第1接触平面31aは、XZ平面である。他方の第2接触平面31bは、例えば水平面であり、鉛直方向の下方からパイプPに接触する。図3に示すパイプベンダー1の状態の例では、第2接触平面31bは、XY平面である。第1接触平面31aと第2接触平面31bとは、パイプPの軸方向とおおよそ平行な一辺で互いに交わるか、又は近接する。
【0028】
その他、パイプ支持部31の具体的な形状については後述する。
【0029】
支持部駆動機構32は、一端でパイプ支持部31を支持し、パイプPに向かう方向にパイプ支持部31を移動させる。つまり、パイプ支持部31は、支持部駆動機構32を介して回転テーブル19に設置される。支持部駆動機構32は、例えば直動機構であってもよい。この場合、支持部駆動機構32は、可動部34と、直動式アクチュエーター35と、基台36と、リニアガイド37とを備える。
【0030】
可動部34は、パイプ支持部31を支持し、一方向に沿って直動可能である。可動部34は、図3に示すように複数の部材を組み合わせて構成されてもよいし、1つの部材で形成されるものであってもよい。一例として、可動部34は、パイプ支持部31を着脱可能に保持する保持部材34aと、直動式アクチュエーター35の可動シャフト35aに接続される可動部本体34bと、保持部材34aを可動部本体34bに固定する固定部材34cとを備える。パイプ支持部31は、例えば、不図示の複数のボルトを介して保持部材34aに取り付けられる。したがって、作業者は、パイプ支持部31を容易に交換可能である。
【0031】
直動式アクチュエーター35は、例えば、油圧式のシリンダーである。ただし、直動式アクチュエーター35は、これに限定されるものではなく、電動式のシリンダー等であってもよい。
【0032】
基台36は、直動式アクチュエーター35の本体を固定する。また、基台36は、固定枠33に固定される。つまり、支持部駆動機構32は、基台36を介して固定枠33に取り付けられる。ここで、基台36は、図2に例示されているような位置決め機構38を介して固定枠33に固定されてもよい。位置決め機構38は、曲げ型12と締め型13とに挟み込まれて保持されているパイプPに対するパイプ支持部31及び支持部駆動機構32の位置を調整することができる。
【0033】
リニアガイド37は、ガイドレール37aと、ガイドレール37a上を移動するスライドブロック37bとを備える。ガイドレール37aは、基台36の表面に固定されている。スライドブロック37bは、可動部本体34bに接続されている。これにより、パイプ支持部31は、直動式アクチュエーター35の直進運動に合わせて滑らかに移動することができる。
【0034】
固定枠33は、支持部駆動機構32を回転テーブル19に固定する。固定枠33の形状は、適切な剛性が維持されるものであるならば、限定されるものではない。本実施形態では、一例として、支持部駆動機構32が位置決め機構38を介して固定枠33に固定されるものとしている。ここで、位置決め機構38が採用されない場合には、支持部駆動機構32は、固定枠33に直接固定されてもよい。
【0035】
その他、パイプ支持部31の移動方向や、支持部駆動機構32の設置姿勢などについては後述する。
【0036】
搬送部20は、図1に示すように、上流テーブル21上に、搬送方向Fに沿ってパイプPを曲げ加工部10に搬送するパイプ搬送装置22を備える。また、パイプ搬送装置22は、パイプPをその中心軸回りに回転させることができるものであってもよい。パイプPをその中心軸回りに所望の量だけ回転させることで、パイプPの曲げ方向を所望の方向に調整することができる。
【0037】
そして、パイプベンダー1は、不図示の制御部を含む。制御部は、作業者の指示に基づいて、曲げ加工部10における曲げ加工動作や、搬送部20におけるパイプ搬送装置22によるパイプ搬送動作などを制御する。ここで、曲げ加工部10における曲げ加工動作には、パイプ支持機構30における支持部駆動機構32の駆動動作も含まれる。
【0038】
次に、パイプベンダー1における基本的な曲げ加工動作について説明する。
【0039】
加工対象であるパイプPは、予め、パイプ搬送装置22により曲げ加工部10に搬送され、パイプPの曲げ対象部分が曲げ型12に対して適切な位置に配置される。曲げ型12及び締め型13、並びに、バックブースター17は、図1に示される初期位置においてパイプPを把持する。また、パイプ支持機構30のパイプ支持部31は、図3に示すように、第1接触平面31aと第2接触平面31bとがそれぞれパイプPに接触する状態で、パイプPを支持する。
【0040】
次に、曲げ型12及び締め型13は、パイプPの一部を把持したまま、中心軸O回りに一体的に回転移動する。パイプPは、曲げ型12及び締め型13の回転により、搬送方向Fに引かれつつ、周溝12aに巻き付けられて曲げられる。このとき、曲げ型12及び締め型13の回転移動に伴ってパイプPに作用する引張力を相殺するために、バックブースター17は、曲げ型12及び締め型13の回転移動に同期させてパイプPを搬送方向Fに繰り出し、パイプPに軸圧縮力を発生させる。バックブースター17は、この軸圧縮力を制御することで、パイプPの扁平化や曲げ外側の薄肉化を抑えることができる。なお、図1では、回転移動した曲げ型12、締め型13、締め型クランプ機構14、回転テーブル19及びパイプ支持機構30、並びに、曲げられたパイプPの一例を二点鎖線で示している。
【0041】
同時に、パイプPを側方から押圧している圧力型15は、パイプPの軸方向の移動に追従して移動する。
【0042】
パイプベンダー1は、曲げ加工部10における曲げ加工動作と、搬送部20におけるパイプ搬送装置22によるパイプPの搬送動作とを組み合わせた連続曲げ加工を行うことで、最終的には、蛇行曲げ管(図4参照)等の連続曲げ管を製作することができる。
【0043】
次に、パイプ支持機構30を採用したことによる曲げ加工時のパイプベンダー1の作用について説明する。
【0044】
図4は、曲げ加工の例えば中盤や終盤の工程を行うときのパイプベンダー1の作用を説明する平面図である。ここで、中盤や終盤の工程とは、すでに複数回の曲げ加工が施されていることで加工済み部P1が蛇行曲げ管となっているパイプPに対して、さらに曲げ加工を施す工程をいう。特に終盤の工程では、加工済み部P1は、最終の製品形状に近い形になっている。また、加工済み部P1は、不図示の床面に載置されており、曲げ加工時には床面上を移動する。
【0045】
まず、比較のために、パイプ支持機構30がパイプベンダー1に設置されていない場合を想定する。このとき、本実施形態のような小曲げ半径の曲げ加工を行う場合には、曲げ半径が比較的大きい場合に比べて、パイプPの曲げ対象部分で変形抵抗が大きくなる。そのため、曲げ対象部分近傍にある、例えば、曲げ型12や締め型13等の金型類、又は、曲げ型12の回転駆動部12dや締め型クランプ機構14等の駆動機構類には、過剰な荷重が作用することもあり得る。このような過剰な荷重に耐え得るようにするために、上記の金型類や駆動機構類に要求される剛性は、より大きくなる。
【0046】
また、パイプベンダー1は、加工済み部P1も同時に旋回させながらパイプPを曲げるので、曲げ加工の終盤の工程に近づくにつれて、同時に旋回させる加工済み部P1の大きさや重量も増えていく。そのため、加工済み部P1の旋回により慣性抵抗や摩擦抵抗などの抵抗が生じ、その抵抗に起因して、パイプPの曲げ対象部分には曲げ荷重が作用する。つまり、パイプ支持機構30が設置されていない場合には、パイプPは、曲げ型12と締め型13とで挟まれた部分の端部を固定端とし、かつ、曲げ荷重Mが加工済み部P1の旋回方向とは反対の方向に作用するような片持ち梁に類似した状態にある。この状態では、固定端にあるパイプPの根元部分には、曲げ荷重Mに相応の応力が作用する。
【0047】
これに対して、本実施形態では、パイプベンダー1がパイプ支持機構30を設置している。パイプ支持機構30に含まれるパイプ支持部31は、第1の支持条件として、締め型13に押し付けられている曲げ対象部分よりもパイプPの曲げ加工後の側でパイプPを支持する。具体的には、パイプ支持部31によるパイプPの支持位置は、曲げ型12と締め型13とで挟まれた部分の端部を固定端として、固定端から距離Lだけ軸方向の前方に離間した位置となる。ここで、固定端は、本実施形態では、クランプ部12bにおける最も加工済み部P1側に近い端面12eに接する位置に相当する。
【0048】
また、パイプ支持部31は、第2の支持条件として、少なくとも曲げ外側からパイプPを支持する。図4に示す曲げ加工の例では、曲げ方向は、白抜きの矢印で表されている加工済み部P1の旋回方向に相当する。曲げ外側は、この曲げ方向に基づいて規定される。本実施形態では、パイプ支持部31において曲げ外側からパイプPを支持する部位は、第1接触平面31aである。つまり、パイプ支持部31は、少なくとも、旋回方向に沿って加工済み部P1を押圧することができる。また、パイプ支持部31は、少なくとも、旋回方向とは反対の方向に沿って生じる加工済み部P1の曲げ荷重Mを受け止めることができる。
【0049】
ここで、図4では、パイプ支持部31が第1の支持条件と第2の支持条件とを満足してパイプPを支持する位置が、便宜的に三角形で描画した支点Sで表されている。つまり、本実施形態では、パイプPでは、曲げ型12と締め型13とで挟まれた部分の端部を固定端とし、かつ、曲げ荷重Mが加工済み部P1の旋回方向とは反対の方向に作用する点については、パイプ支持機構30を採用しない場合と同様である。これに対して、本実施形態では、パイプPは、さらに固定端から距離Lだけ離間した支点Sでも支持されることになる。そのため、加工済み部P1の旋回により生じた曲げ荷重Mを、直接的には、固定端が受けるのではなく、固定端から離間したパイプ支持部31が受けることになる。
【0050】
したがって、小曲げ半径の曲げ加工が行われる場合であっても、パイプPが受ける変形抵抗は、パイプPの曲げ対象部分だけでなく、パイプPのパイプ支持部31上の部分にもかかる。そのため、パイプPの曲げ対象部分近傍にある金型類や駆動機構類に作用する荷重が、パイプ支持機構30を採用しない場合よりも抑制される。
【0051】
また、加工済み部P1の旋回により生じた曲げ荷重Mに相応の応力は、固定端にあるパイプPの根元部分だけでなく、当該根元部分から離間したパイプ支持部31にもかかる。つまり、固定端にあるパイプPの根元部分にかかる応力が、パイプ支持機構30を採用しない場合よりも緩和される。
【0052】
次に、パイプ支持部31の形状や移動方向、及び、支持部駆動機構32の設置姿勢について具体的に説明する。
【0053】
図5は、図4のV-V部に相当するパイプPとパイプ支持部31との位置関係を示す一部拡大図である。図5では、蛇行曲げ管状の加工済み部P1のうち、曲げ加工前の曲げ対象部分と同列に延伸する第1パイプ部P11と、第1パイプ部P11と隣り合う第2パイプ部P12との断面が描画されている。第2パイプ部P12は、第1パイプ部P11から折り返して、かつ、第1パイプ部P11と平行に延伸している。また、図5では、曲げ型12及び締め型13の側面と、第1パイプ部P11及び第2パイプ部P12近傍でのパイプ支持部31の側面が描画されている。
【0054】
上記のとおり、本実施形態の例では、パイプベンダー1は、小曲げ半径の曲げ加工を行う。この場合、加工済み部P1では、隣り合うパイプ部同士が互いに近接している。図5に示すように、パイプ支持機構30が支持対象とする第1パイプ部P11と、第1パイプ部P11と隣り合う第2パイプ部P12との間隔は、パイプPの径Dの大きさと同等である。このような隣り合うパイプ部同士の間隔が比較的狭い場合でもパイプ支持機構30をパイプベンダー1に適用させるために、パイプ支持部31の形状や移動方向等は、以下のように設定される。
【0055】
まず、締め型13に押し付けられる側のパイプPの側面に隣接する空間領域VSが存在すると仮定する。空間領域VSの断面範囲として、パイプPの断面と同一平面上にある矩形断面を想定すると、当該矩形断面の辺寸法は、パイプPの径Dと同一である。図5に示す例では、空間領域VSの矩形断面が一点鎖線で表されている。締め型13に押し付けられる側のパイプPは、この場合、第1パイプ部P11に相当する。空間領域VSのパイプPの軸方向に沿った長さ方向の範囲は、加工済み部P1の具体的形状にもよるため、任意である。ただし、空間領域VSは、締め型13には接触しない。これらの条件に基づいて仮定された空間領域VSによれば、加工済み部P1が小曲げ半径の曲げ加工で形成された場合でも、第1パイプ部P11と隣り合う第2パイプ部P12が空間領域VS内に大きく進入することは、ほぼない。すなわち、空間領域VSは、本実施形態における加工済み部P1に限らず、様々な形状形態の加工済み部に設定可能である。
【0056】
そして、パイプ支持部31は、その少なくとも一部が空間領域VSの側からパイプPを支持することが可能な形状を有する。本実施形態では、パイプ支持部31は、第1接触平面31aによって少なくとも曲げ外側からパイプPを支持する必要があるため、一部に第1接触平面31aを有する壁部31cを含む。壁部31cは、図5に示すように、第1接触平面31aが第1パイプ部P11に接触している状態で、空間領域VSに収容される形状を有する。壁部31cが空間領域VSに収容されているということは、壁部31cすなわちパイプ支持部31が第2パイプ部P12には接触していないということを意味する。
【0057】
一方、一連の曲げ加工の工程では、1つ1つの曲げ加工動作に合わせて、図4に示すような加工済み部P1を旋回させる動作が繰り返されるとともに、パイプ支持部31が支持対象とするパイプ部もその都度変更される。つまり、パイプ支持部31を常時、1つの空間領域VSに収容させておくことができないので、パイプ支持機構30は、空間領域VSにパイプ支持部31を進入させるとともに、その空間領域VSからパイプ支持部31を退出させるという動作を要する。そこで、パイプ支持機構30は、パイプ支持部31の少なくとも一部である壁部31cを、空間領域VSに進入させ、又は、空間領域VSから退出させる支持部駆動機構32を備える。
【0058】
ここで、図5に示すように、パイプPの曲げ方向が含まれる曲げ平面BPを想定する。曲げ方向とは、曲げ型12に形成されている周溝12aの形状に依存し、パイプPが曲げ型12によって曲げられる方向をいう。ただし、加工済み部P1の局所によっては、パイプ搬送装置22が、パイプPをその中心軸回りに所望の量だけ回転させることで、パイプPの曲げ方向を曲げ型12の周溝12aの形状とは異なる方向に調整することができる。また、曲げ平面BPは、加工済み部P1を構成する各パイプ部が並ぶ平面とも表現可能である。図5では、曲げ平面BPは、曲げ型12の周溝12aの最小周断面と、第1パイプ部P11の中心軸と、第2パイプ部P12の中心軸とをそれぞれ含む1つの平面として例示されている。
【0059】
この場合、支持部駆動機構32は、曲げ平面BPとは交差する方向に沿ってパイプ支持部31を移動させる。つまり、パイプ支持部31の移動方向、すなわち、壁部31cが空間領域VSへの進入又は退出を行う方向は、曲げ平面BPとは交差する方向に沿うことになる。曲げ平面BPに交差する方向は、曲げ平面BPに対して垂直に交差する方向であってもよいし、曲げ平面BPに対して90°以外の角度θを持って交差する方向であってもよい。パイプ支持部31の移動方向をこのように規定することで、例えば、壁部31cが空間領域VSに進入するときに、第2パイプ部P12に接触しづらくなる。
【0060】
また、支持部駆動機構32は、曲げ平面BPよりも鉛直方向の下方からパイプ支持部31の壁部31cを空間領域VSに進入可能とする。つまり、支持部駆動機構32は、曲げ平面BPよりも鉛直方向の下方にある。上記のとおり、パイプベンダー1は、パイプPの曲げ方向を、曲げ型12の形状により規定される方向以外の方向に調整することができる。したがって、加工済み部P1の所望の形状によっては、曲げ加工時に、加工済み部P1の大部分が床面に載置されている状態であっても、局所的には床面から浮き上がっている部分が存在することもあり得る。このとき、もし壁部31cが曲げ平面BPよりも鉛直方向の上方から空間領域VSに進入させられるとすると、パイプ支持部31が、床面から浮き上がっている加工済み部P1の一部と干渉するおそれがある。これに対して、本実施形態のように、壁部31cが曲げ平面BPよりも鉛直方向の下方から空間領域VSに進入するものとすれば、パイプ支持部31が、床面から浮き上がっている加工済み部P1の一部に干渉することを予め回避させることができる。
【0061】
上記のとおり、パイプ支持部31の移動方向は、曲げ平面BPとは交差する方向に沿って、かつ、壁部31cが曲げ平面BPよりも鉛直方向の下方から空間領域VSに向かうような方向である。また、曲げ平面BPに交差する方向は、曲げ平面BPに対して垂直に交差する方向に限らないので、ここでいう鉛直方向の下方とは、必ずしも鉛直方向に沿った真下だけを意味するのではない。この点、本実施形態では、支持部駆動機構32は、曲げ平面BPに対して角度θ分傾斜した、鉛直方向の斜め下方から壁部31cを空間領域VSに進入させる。そして、支持部駆動機構32は、本実施形態では、直動式アクチュエーター35の直進運動に合わせてパイプ支持部31を移動させる構成を有する。この場合、支持部駆動機構32は、図3図5に示すように、パイプ支持部31が支持している部分のパイプPの断面と同一平面で見たときに、角度θの傾きに合わせて傾斜した姿勢で固定枠33又は回転テーブル19に対して設置されることになる。このような設置姿勢によれば、水平方向で考えた場合、パイプ支持部31が支持している部分のパイプPに対する支持部駆動機構32の各部からの距離は、上部のパイプ支持部31で最も近く、下部に行くにつれて遠くなる。したがって、パイプ支持機構30では、パイプ支持部31の真下の領域が空間領域とあるので、例えば、回転テーブル19の側面19dにパイプ支持機構30を取り付けたとしても、回転テーブル19の回転時に曲げ型12の回転駆動部12dに干渉しづらい。
【0062】
また、本実施形態では、パイプ支持部31は、壁部31cに設けられている第1接触平面31aに加えて、第1接触平面31aに対して垂直な第2接触平面31bを含む。したがって、支持部駆動機構32がパイプ支持部31を第1パイプ部P11に向けて移動させると、パイプ支持部31は、第1接触平面31aと第2接触平面31bとの2つの面で接触することになる。これにより、パイプ支持部31は、第1パイプ部P11を容易にかつ安定した姿勢で支持することができる。
【0063】
なお、パイプ支持部31における第1パイプ部P11と接触する部位の形状は、上記例示したような第1接触平面31a及び第2接触平面31bで構成されるものに限られない。パイプ支持部31における第1パイプ部P11と接触する部位の形状は、少なくとも曲げ外側からパイプPを支持することができるのであれば、例えば、一部がパイプPの外周形状に近似した曲面で構成されるものであってもよい。
【0064】
一方、本実施形態のように、支持部駆動機構32がパイプ支持部31を曲げ平面BPに対して角度θ分傾斜した方向で移動させる場合、壁部31cの形状によっては、移動時に第2パイプ部P12と干渉することも考えられる。そこで、壁部31cにおける第2パイプ部P12に面する側の面を傾斜外面31dとしてもよい。本実施形態では、傾斜外面31dの傾斜角度は、一例として、パイプ支持部31の移動方向の角度θと同一である。このようなパイプ支持部31の形状によれば、図5に示すように、支持部駆動機構32が鉛直方向の斜め下方から壁部31cを空間領域VSに進入させるときに、壁部31cが第2パイプ部P12と干渉することが回避される。
【0065】
なお、本実施形態では、傾斜外面31dを単なる平面として表しているが、例えば、第2パイプ部P12との接触を回避するのに好適な曲面を含むものであってもよい。
【0066】
次に、本実施形態に係るパイプベンダー1による効果について説明する。
【0067】
本実施形態に係るパイプベンダー1は、パイプPの曲げ対象部分を巻き付けて回転する曲げ型12と、曲げ対象部分を曲げ型12に押し付ける締め型13とを備える。パイプベンダー1は、締め型13に押し付けられている曲げ対象部分よりもパイプPの曲げ加工後の側で、かつ、少なくとも曲げ外側から、パイプPを支持するパイプ支持部31を備える。また、パイプベンダー1は、締め型13とパイプ支持部31とを設置し、曲げ型12の回転軸と同軸で回転する回転テーブル19を備える。
【0068】
このようなパイプベンダー1によれば、上記例示したように、小曲げ半径の曲げ加工が行われる場合であっても、パイプPが受ける変形抵抗が、パイプPの曲げ対象部分だけでなくパイプ支持部31上の部分にもかかる。したがって、パイプPの曲げ対象部分近傍にある装置側の金型類や駆動機構類に作用する荷重を、パイプ支持部31を含むパイプ支持機構30を採用しない場合よりも抑制させることができる。これにより、上記の金型類や駆動機構類に要求される剛性が大きくなることを抑えることができるので、例えば、パイプベンダー1の大型化を抑えつつ、旋回能力を向上させることができる。
【0069】
また、上記例示したように、加工済み部P1の旋回により生じた曲げ荷重Mに相応の応力は、固定端にあるパイプPの根元部分だけでなく、当該根元部分から離間したパイプ支持部31にもかかる。したがって、固定端にあるパイプPの根元部分にかかる応力を、パイプ支持部31を含むパイプ支持機構30を採用しない場合よりも緩和することができる。これにより、例えば、曲げ加工時にパイプPが破損することを予め回避させることができる。
【0070】
このように、本実施形態によれば、パイプPの加工済み部P1の旋回時に生じる装置側での荷重やパイプP側での応力を低減するのに有利なパイプベンダー1を提供することができる。
【0071】
また、パイプPの曲げ加工後の側にある加工済み部P1が、曲げ加工前の曲げ対象部分と同列に延伸する第1パイプ部P11と、第1パイプ部P11と隣り合う第2パイプ部P12とを含む場合を想定する。この場合、パイプベンダー1では、パイプ支持部31の少なくとも一部は、第1パイプ部P11と第2パイプ部P12とに挟まれた空間領域VSの側から第1パイプ部P11を支持してもよい。また、空間領域VSにおける第1パイプ部P11と第2パイプ部P12との最小間隔は、パイプPの径Dと同一であってもよい。
【0072】
ここで、パイプ支持部31の少なくとも一部とは、例えば、上記例示でいう壁部31cに相当する。このようなパイプベンダー1によれば、壁部31cが空間領域VSの側からパイプPを支持するため、小曲げ半径の曲げ加工を実施する場合であっても、パイプ支持部31が加工済み部P1の意図しない部位に接触することを回避させることができる。
【0073】
なお、図5では、矩形断面の四辺の各寸法がそれぞれパイプPの径Dと同一となる空間領域VSを例示した。図5に示すような実施形態が、空間領域VSにおける第1パイプ部P11と第2パイプ部P12との最小間隔がパイプPの径Dと同一となる場合の一例に相当する。これに対して、少なくとも空間領域VSにおける上記の最小間隔がパイプPの径Dと同一であればよいので、パイプベンダー1は、第1パイプ部P11と第2パイプ部P12との間隔がパイプPの径D以上となるような曲げ加工にも当然に対応することができる。例えば、パイプベンダー1は、一般的に小曲げ半径に分類されるような、パイプPの曲げ半径がパイプPの径Dの1.5~2倍程度となる曲げ加工も実施することができる。また、パイプベンダー1は、一般的に小曲げ半径に分類されないような大きな曲げ半径となる曲げ加工も実施することができる。さらに、パイプベンダー1は、曲げ加工時に第2パイプ部P12が局所的に床面から浮き上がっているような場合でも、同様に曲げ加工を実施することができる。
【0074】
また、パイプベンダー1は、パイプ支持部31の少なくとも一部を、パイプPの曲げ方向が含まれる曲げ平面BPとは交差する方向に沿って、空間領域VSに進入させ、又は、空間領域VSから退出させる支持部駆動機構32を備えてもよい。ここで、パイプ支持部31は、支持部駆動機構32を介して回転テーブル19に設置されてもよい。
【0075】
このようなパイプベンダー1によれば、支持部駆動機構32を備えるので、曲げ加工時にパイプ支持部31を空間領域VSに進入させ、曲げ加工時以外の時には、パイプ支持部31を空間領域VSから退出させることができる。そして、支持部駆動機構32は、回転テーブル19に設置されている。したがって、パイプ支持部31が締め型13から必要以上に離間することがなく、結果としてパイプベンダー1の大きさをコンパクトにしながら、上記の荷重の低減等の効果を好適に奏するものとすることができる。また、パイプ支持部31の回転動作は、締め型13を回転させる回転テーブル19により行われるので、パイプ支持部31すなわち支持部駆動機構32を回転させるための別の回転テーブルを準備する必要がなく、パイプベンダー1の構成の簡略化に有利となる。
【0076】
さらに、パイプベンダー1では、支持部駆動機構32は、曲げ平面BPよりも鉛直方向の下方にあってもよい。
【0077】
上記例示のとおり、加工済み部P1の所望の形状によっては、曲げ加工時に局所的に床面から浮き上がっている部分が存在することもあり得る。これに対して、パイプベンダー1によれば、支持部駆動機構32は、曲げ平面BPよりも鉛直方向の下方からパイプ支持部31を移動させるので、パイプ支持部31が、床面から浮き上がっている加工済み部P1の一部に干渉することを予め回避させることができる。
【0078】
なお、上記の実施形態では、パイプ支持機構30において、支持部駆動機構32が直動式アクチュエーター35の直進運動に合わせてパイプ支持部31を移動させる、いわゆる直動案内方式が採用されるものとした。しかし、本開示では、パイプ支持機構30に採用される案内方式は、これに限られるものではなく、例えば、四節リンク機構を用いてパイプ支持部31を移動させるものなど、他の案内方式が採用されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 パイプベンダー
12 曲げ型
13 締め型
19 回転テーブル
31 パイプ支持部
31c 壁部
32 支持部駆動機構
BP 曲げ平面
D 径
O 中心軸
P パイプ
P1 加工済み部
P11 第1パイプ部
P12 第2パイプ部
VS 空間領域
図1
図2
図3
図4
図5