(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20240305BHJP
A61F 13/493 20060101ALI20240305BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240305BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240305BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61F13/56 210
A61F13/493
A61F13/49 311A
A61F13/51
A61F13/533 100
(21)【出願番号】P 2020060526
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 笙子
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200372(JP,A)
【文献】特開昭63-196701(JP,A)
【文献】特開2015-181890(JP,A)
【文献】特開2018-166861(JP,A)
【文献】特開2011-234896(JP,A)
【文献】特開2007-143870(JP,A)
【文献】特開平01-132804(JP,A)
【文献】特開2007-061230(JP,A)
【文献】特開2008-012139(JP,A)
【文献】特開2004-141640(JP,A)
【文献】特開2004-215694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃部と、後身頃部と、前記前身頃部と前記後身頃部との間に位置する股下部と、前記前身頃部側から前記股下部を介して前記後身頃部側に亘る長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向と、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、
(i)前記後身頃部の左右両端縁部に設けられた一対の第1係合部材と、前記前身頃部に設けられ、前記一対の第1係合部材と係合することで前記吸収性物品の一対の脚周り開口部を形成する第2係合部材と、を備え、前記一対の第1係合部材は、前記吸収性物品のうち、前記一対の第1係合部材が取り付けられている周辺が有する第1の色とは異なる第2の色で着色されている、構成、およ
び、
(ii)前記裏面シートのうち、前記後身頃部のウエスト側端部に対応する領域には、前記幅方向に沿って延びるように配置され、ウエストギャザーを形成するための伸縮部材が伸張状態で設けられ、前記伸縮部材は、前記吸収性物品のうち、前記伸縮部材が取り付けられている周辺が有する第3の色とは異なる第4の色で着色されている、構成
の2つの構成のうち少なくとも前記(i)構成を備え
、
前記第1係合部材は、フック部と、その一方端部に前記フック部が配置され、その他方端部が前記吸収性物品の構成部材によって挟まれるように配置されたフックキャリア部と、で構成され、
前記フック部および/または前記フックキャリア部は、前記第2の色で着色されており、
前記フックキャリア部の他方端部を挟む前記構成部材の一方は、前記表面シートであり、
前記フックキャリア部の前記他方端部は、前記第2の色で着色されており、
前記フックキャリア部の前記他方端部および前記表面シートは、前記フックキャリア部の前記他方端部の前記着色が前記表面シートを介して視認可能に配置構成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記伸縮部材に着色された前記第4の色は、前記一対の第1係合部材に着色された前記第2の色と同系色であることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の色は、前記一対の第1係合部材が取り付けられている前記周辺のうち前記吸収性物品の肌面側が有する色であり、
前記第3の色は、前記伸縮部材が取り付けられている前記周辺のうち前記吸収性物品の肌面側が有する色であり、
前記第1の色および前記第3の色は、白色であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記伸縮部材は、シート状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記伸縮部材は、ウレタン製のシートであることを特徴とする請求項
4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品の前記長手方向において、前記伸縮部材と前記吸収体との間に、前記伸縮部材の厚みおよび前記吸収体の厚みよりも薄い第1薄肉領域が設けられることを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記第1薄肉領域の前記吸収性物品の前記長手方向における長さは、5mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項
6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記表面シートには、肌面側に向かって突出する凸形状を有するエンボスパターンが前記長手方向に延在するように設けられることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品の前記長手方向において、前記吸収性物品の前記前身頃部側の前記長手方向端部と前記吸収体との間に、前記伸縮部材の厚みおよび前記吸収体の厚みよりも薄い第2薄肉領域が設けられ、
前記吸収性物品の前記長手方向において、前記吸収性物品の前記後身頃部側の前記長手方向端部と前記伸縮部材との間に、前記伸縮部材の厚みおよび前記吸収体の厚みよりも薄い第3薄肉領域が設けられ、
前記第2薄肉領域の前記長手方向における長さと、前記第3薄肉領域の前記長手方向における長さとは異なることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記第2薄肉領域の前記長手方向における長さと、前記第3薄肉領域の前記長手方向における長さとは、それぞれ30mm以下であることを特徴とする請求項
9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収性物品の前記第2薄肉領域および/または前記第3薄肉領域を構成する部材数について、前記吸収性物品のウエスト側の部材数は、前記吸収性物品の股下側の部材数よりも少ないことを特徴とする請求項
9または請求項1
0に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記裏面シートの非肌面側にはカバーシートが配置され、
前記カバーシートには、通気可能な複数の孔部が縦縞状且つ間欠的に前記長手方向に沿って形成されることを特徴とする請求項1から請求項1
1のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体には、凹部が格子状に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項1
2のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置される吸収体とを有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排出された体液(以下、単に「体液」とも言う)を吸収体に誘導して吸収させる使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」とも言う)等の吸収性物品が広く知られている。当該吸収性物品は、通常の衣類と同様に、前身頃および後身頃を有するものであり、どちらが前身頃側(腹側)か後身頃側(背側)であるか迅速に把握できることが、着用しやすさの観点から要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、どちらが前身頃側か後身頃側であるかを速やかに認識することが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による吸収性物品は、前身頃部と、後身頃部と、前記前身頃部と前記後身頃部との間に位置する股下部と、前記前身頃部側から前記股下部を介して前記後身頃部側に亘る長手方向と、前記長手方向と直交する幅方向と、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収性物品は、(i)前記後身頃部の左右両端縁部に設けられた一対の第1係合部材と、前記前身頃部に設けられ、前記一対の第1係合部材と係合することで前記吸収性物品の一対の脚周り開口部を形成する第2係合部材と、を備え、前記一対の第1係合部材は、前記吸収性物品のうち、前記一対の第1係合部材が取り付けられている周辺が有する第1の色とは異なる第2の色で着色されている、構成、および/または、(ii)前記裏面シートのうち、前記後身頃部のウエスト側端部に対応する領域には、前記幅方向に沿って延びるように配置され、ウエストギャザーを形成するための伸縮部材が伸張状態で設けられ、前記伸縮部材は、前記吸収性物品のうち、前記伸縮部材が取り付けられている周辺が有する第3の色とは異なる第4の色で着色されている、構成を備えることを特徴とするとするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、吸収性物品の後身頃部の左右両端縁部に設けられた一対の第1係合部材および/または裏面シートのうち、吸収性物品の後身頃部のウエスト側端部に対応する領域に伸張状態で設けられた伸縮部材が、それが取り付けられている周辺が有する色とは異なる色で着色されている構成によって、一見してどちらが吸収性物品の前身頃部または後身頃部であるか認識することができる結果、吸収性物品を着用する手間を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係るおむつの一例の外観において、正面側から見た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、伸張状態のおむつをトップシート側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明による吸収性物品の実施形態について、
図1から
図5を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0008】
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、「長手方向」とは、吸収性物品の前身頃部側から股下部を介して後身頃部側に亘る方向を指すものとして参照され、「幅方向」とは、当該長手方向と直交する方向を指すものとして参照される。
【0009】
先ず、本発明を展開型使い捨ておむつに応用した実施形態を以下に説明する。
【0010】
<おむつの主な構成>
図1に本発明の一実施形態に係るおむつの一例の外観において、正面側から見た斜視図を示す。本実施形態に係るおむつ10は、展開型使い捨ておむつであり、前身頃部10Fと、後身頃部10Rと、これら前身頃部10Fおよび後身頃部10Rをつなぐ股下部10Cとを有する。また、着用時に前身頃部10Fと後身頃部10Rとで着用者のウエストの部分を取り囲むウエスト周り開口部10Wが形成されている。同様に、前身頃部10Fおよび後身頃部10Rの下端部と股下部10Cとで着用者の両脚の太股部分を取り囲む左右一対の脚周り開口部10Lが形成されている。
【0011】
着用時に前身頃部10Fは、着用者の腹側に位置し、後身頃部10Rは着用者の背側に位置する。そして、着用時に股下部10Cは、着用者の股下を覆い、左右一対の脚周り開口部10Lに、着用者の脚がそれぞれ通された形となる。したがって、脚周り開口部10Lは、着用者の両脚の付け根から太股あたりのいずれかに位置することとなる。
【0012】
仮想線Pは、おむつ中央部において腹側から背側に向かって、股下部分を通って延びるものである。具体的には、仮想線Pは、例えば、おむつのウエスト側を上、股下側を下として定義すると、おむつ表面に沿って、かつ上下方向に延びると共に、股下部分を経由して、背側においても上下方向に延びるものである。
【0013】
おむつ10の外側に位置するカバーシート11の後身頃部10Rの左右両端縁部には、着用時に前身頃部10Fの左右両端縁部に重ね合わせてこれらをつなぎ、脚周り開口部10Lを形成し得る左右一対のファスニングテープ(第1係合部材)10Aが接着されている。このファスニングテープ10Aは、前身頃部10Fのカバーシート11上に接着されたフロントパッチシート(第2係合部材)10Bに対して繰り返し剥離可能に接合される。本発明では、ファスニングテープ10Aおよびフロントパッチシート10Bは、メカニカルファスナーとして機能しうる。フロントパッチシート10Bの股下部10C側の端縁部は、
図3に示すように、吸収体13の前身頃部10F側の端部に近接して配置されている。本発明では、吸収体13の長手方向端部をおむつ10の前身頃部10F側の端部付近まで延在させ、フロントパッチシート10Bおよび吸収体13を、おむつ10の厚み方向において重なるように配置してもよい。この構成により、腹漏れを減少させることができる。本発明では、一対のファスニングテープ10Aは、おむつ10のうち、一対のファスニングテープ10Aが取り付けられている周辺が有する第1の色とは異なる第2の色で着色されている。この着色によってユーザーがおむつ10のどちらが背側かを認識することが容易になっており、おむつ10の前後見分けが迅速に行うことが可能になっている。詳細は後述する。
【0014】
一般に、吸収性物品は清潔感を与える等から全体的に白色を有しているが、この場合の吸収性物品の視覚的な前後見分けは容易ではないことが理解できる。特に、吸収性物品の肌面側は、白色を有する多数の部材が設けられているため、さらに判別しにくいと考えられる。本実施形態では、おむつ10のうち、ファスニングテープ10Aおよび後述の伸縮部材10D以外の部位については、同様の色(例えば白色)を有しており、ファスニングテープ10Aおよび後述の伸縮部材10Dは、当該部位の色と異なる色で着色されている。よって、ユーザーは、おむつ10全体を肌面側から見た場合であっても、カバーシート11やトップシート14からファスニングテープ10Aおよび伸縮部材10Dが透けて見えるので、おむつ10の背側を一見して把握できるようになっている。
【0015】
図2は、
図1に示すおむつ10の模式的な分解斜視図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係る、伸張状態のおむつ10をトップシート14側から見た平面図である。
図2の吸収体13および
図3のおむつ10については、説明の便宜上、部分的に破断した状態をそれぞれ示している。
【0016】
図2に示すように、本実施形態におけるおむつ10は、外側(非肌面側)から順に、良好な手触りを得るために薄い不織布にて形成されるカバーシート11と、液不透過性を有するバックシート(裏面シート)12と、吸収体13と、液透過性を有するトップシート(表面シート)14と、一対のサイドシート15と、を重ねた積層構造を有しているものである。
【0017】
図4は、
図3におけるIV-IV方向断面図であり、
図5は、
図3におけるV-V方向断面図である。
【0018】
本実施形態では、
図3から
図5に示すように、吸収体13には、圧縮して形成された複数の凹部20が形成される領域が存在する。すなわち、凹部形成領域の一部において凹部20が複数形成されている。本実施形態では、吸収体13には、凹部20が格子状に形成されている。
図3から
図5に示すように、凹部20が形成されることで、凹部20において折れ曲がりやすくなって、おむつ10のフィット感を向上させることが可能となる。また、凹部20が連続的に形成されることで、空気が腹側または背側に通り抜けることができるようになり、通気性を確保することが可能となる。加えて、排出された体液を、迅速に拡散させて、吸収体13を全体的に使用して効率よく吸収体13に吸収させることが可能となる。
【0019】
なお、本発明において、複数の凹部20とは、各々が物理的に連続していない複数の個別の凹部20、に加えて、複数の構成単位としての凹部20が重なりあって形成される物理的に連続したものをも包含する概念である。前記構成単位としては、直線、およびその途中に屈曲(角)を有しない連続した曲線などが挙げられるがこれらに限られない。
【0020】
例えば、トップシート14と吸収体13とが接する面には接着剤が塗布され、凹部20は、吸収体13とトップシート14の積層体(以下、「吸収部分」とも言う)を圧搾することで設けられる。この圧搾は、例えば、エンボスロールによって行われる。これにより、凹部20の底面(底壁)から壁面(側壁)にわたる凹部20全体において、トップシート14と吸収体13が咬み合い、一体的に接合される。凹部20の底部分におけるトップシート14と吸収体13とからなる厚み(吸収部分の厚み)は、圧搾しない場合の厚みの約1/2~1/7程度が好ましい。更に好ましくは約1/4~1/7程度である。この構成により、トップシート14と吸収体13とを一体的に形成するので、トップシート14と吸収体13がしっかりと接合しトップシート14が剥がれにくく、排尿後で吸収体13が膨らんだ場合でも、トップシート14が溝に沿った状態になり、溝が維持される。
【0021】
また、本実施形態では、吸収体13には、圧縮して形成された複数の凹部20が形成された凹部形成領域と、凹部20が形成されていない凹部非形成領域が設けられている。この構成により、凹部非形成領域が堰の役割を果たし、凹部20を伝ってきた体液を堰き止め(または体液の勢いを弱め)ることができるため、横漏れすることを抑止することが可能となる。なお、本実施形態に係る吸収性物品10では、吸収体13には、凹部20が格子状に形成されているが、本発明に係る吸収性物品ではこの限りではなく、吸収体13に凹部20が全く形成されていない態様も許容するものである。また、本発明に係る吸収性物品では、吸収体13に形成される凹部20は格子状のものに限られず、長手方向に縦縞状に形成されるもの、幅方向に横縞状に形成されるもの、間欠的に設けられるもの等、本発明の効果を奏する限り、様々な形状を有するものが採用されうる。
【0022】
図2および
図3に示すように、カバーシート11の股下部10Cの左右両側には、それぞれ脚周り開口部10Lとなる一対の切欠き部11Nが形成されている。カバーシート11と一対のサイドシート15との間には、脚周りギャザーを形成するための一対の糸ゴム16がそれぞれ伸張状態で接着されている。なお、本発明では、カバーシート11には、通気可能な複数の孔部が形成されてもよい。この態様によって、おむつ10を非肌面側から見たときに、複数の孔部によって、着色されたファスニングテープ10Aおよび伸縮部材10Dが視認し易くなる。当該複数の孔部の態様としては、複数の孔部が縦縞状且つ間欠的に、おむつ10の長手方向に沿って、カバーシート11に形成される態様が採用されうる。また、本発明では、カバーシート11の透光度を上げてもよく、この構成によって、上記効果と同様に、着色されたファスニングテープ10Aおよび伸縮部材10Dが視認し易くなるという効果を得ることが可能となる。
【0023】
トップシート14は、液透過性を有する不織布などで構成される。バックシート12は、透湿性を有し、カバーシート11の肌面側に接合され、吸収体13は、このバックシート12とトップシート14との間に配置され、この吸収体13を介してトップシート14がバックシート12に接合される。
【0024】
また、バックシート12のうち、後身頃部10Rの上端部に対応する領域には、バックシート12の幅方向に沿って延び、着用者に対してウエスト周りに適度な着用感を与えるウエストギャザーを形成するための伸縮部材10Dが伸張状態で接合されている。本発明では、伸縮部材10Dは、吸収性物品10のうち、伸縮部材10Dが取り付けられている周辺が有する第3の色(例えば白色)とは異なる第4の色(例えば緑色)で着色されている。詳細は後述する。伸縮部材10Dは、例えば、糸ゴム、伸縮フィルム、ウレタンフォームから形成された弾性シート等が挙げられる。本発明では、伸縮部材10Dは、シート状のものであることが好ましく、この構成により、着色される面積が広くなり、ウエストギャザー全域を視認させることが可能になるため、おむつ10の前後見分けを迅速に行うことが可能になる。本実施形態では、伸縮部材10Dは、ウレタンフォームをシート状にすることで形成されたウレタン製の弾性シートであり、吸収体13の厚みと同じぐらいの厚みを有するものである。この着色や厚みによってユーザーがおむつ10のどちらが背側か腹側かを認識することが容易になっている。詳細は後述する。伸縮部材10Dを構成するウレタンの例としては、軟質ウレタンフォームである。
【0025】
本実施形態では、
図3に示すように、おむつ10の幅方向に沿って、着色された一対のファスニングテープ10Aおよび着色された伸縮部材10Dが並んでいる。つまり、おむつ10の後身頃部10Rにおいて、伸縮部材10Dの延在方向に一対のファスニングテープ10Aが配置されている。この構成により、ユーザーは、着色された伸縮部材10Dを視認すると、そのまま視線をおむつ10の幅方向にずらすと、着色された一対のファスニングテープ10Aを迅速に見つけることができるので、おむつ10の着用に掛ける時間を短縮することが可能となる。
【0026】
トップシート14の下に位置する本実施形態の吸収体13は、主にパルプとSAPとからなる吸収性コア17を、ティシュや不織布等の被覆部材(コアラップ)18によって被覆したものである。吸収性コア17を被覆部材18により包むことで形成される継ぎ目は、例えば、
図2に示すように、吸収体13の上面であって長手方向に延びるように形成される。本発明では、継ぎ目の形成の態様はこれに限られない。本実施形態の吸収体13は、前身頃、股下、後身頃に亘るように、細長い形状をしている。そして、吸収体13は、後身頃部分、股下部分、前身頃部分に三区分されている。ここで、前身頃部分から後身頃部分を前後(上下)方向とし、それに直交する方向を左右方向とすると、本実施形態の吸収体13は、前後(上下)左右の長さが異なる矩形のものである(
図2および
図3では、前後(上下)の長さが左右の長さより長くなっている)。なお、本実施形態の吸収体13の形状はこれに限らず、例えば、前後(上下)左右の長さが同程度の略正方形のもの、前後(上下)端の角が丸く落とされているもの、前後(上下)に延びる楕円形のもの、円形のもの等、さまざまな形状を含む。また、吸収体13の股下部分には、一対の脚周り開口部10Lに対応するように、円弧状をなす一対の切欠き部が形成されても良い。なお、本実施形態に係るおむつ10では、被覆部材18で包まれた吸収体13を用いているが、本発明に係る吸収性物品は、被覆部材18で包まれていない吸収性コア17を用いてもよい。
【0027】
本実施形態におけるトップシート14の幅方向の左右両側縁部には、立体ギャザーを形成する疎水性の一対のサイドシート15が備えられている。一対のサイドシート15は、着用時に吸収体13の左右両側縁部に沿って起立し、排出された体液の横漏れを防止するための部材である。一対のサイドシート15の外側端縁部には、カバーシート11の一対の切欠き部11Nと同様の形状に切欠き部15Nが形成されている。一対のサイドシート15のそれぞれには、その内側端縁部を吸収体13側に折り返して把持させる形で立体ギャザー伸縮材としての糸ゴム19が伸張状態で配置される。一対のサイドシート15は、糸ゴム19が収縮した際に、着用者の肌当接方向に向かって立ち上がる。立体ギャザーは従来の使い捨ておむつに用いられている公知の構成を採用することができる。例えば、撥水性シートの層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材を挟み込んで固定することにより、形成することができる。
【0028】
<ファスニングテープの色>
本発明では、上述したように、一対のファスニングテープ10Aは、おむつ10のうち、一対のファスニングテープ10Aが取り付けられている周辺が有する第1の色(例えば白色)とは異なる第2の色(例えば緑色)で着色されている。ファスニングテープ10Aは、
図3に示すように、フック部101と、その一方端部102aにフック部101が配置され、その他方端部102bがおむつ10の構成部材(本実施形態では、サイドシート15およびカバーシート11)によって挟まれるように配置されたフックキャリア部102と、で構成され、フック部101および/またはフックキャリア部102は、第2の色で着色されている。この構成により、一見してどちらがおむつ10の前身頃部10Fまたは後身頃部10Rであるか、つまりどちらがおむつ10の腹側か背側であるか、認識することができる結果、おむつ10を着用する手間を低減することが可能となる。また、フロントパッチシート10Bに接合するフック部101が、おむつ10のどの位置に取り付けられているか迅速に把握することができるので、おむつ10を手早く着用する(または着用させる)ことが可能となっている。
【0029】
また、本実施形態では、フックキャリア部102の他方端部102bを挟む構成部材の一方は、サイドシート15であり、フックキャリア部102の他方端部102bは、第2の色で着色されており、フックキャリア部102の他方端部102bおよびサイドシート15は、フックキャリア部102の他方端部102bの着色がサイドシート15を介して視認可能に配置構成されている。この構成により、着用する直前に、おむつ10を肌面側から見たときに、どちらが腹側か背側かを迅速に認識することができるので、手早くおむつ10を着用する(または着用させる)ことが可能となる。なお、本発明では、上記構成のサイドシート15の代わりにトップシート14を使用して、フックキャリア部102の他方端部102bを挟む構成部材の一方が、トップシート14であって、フックキャリア部102の他方端部102bおよびトップシート14が、フックキャリア部102の他方端部102bの着色がトップシート14を介して視認可能に配置構成されていても、同様の効果を奏するものである。
【0030】
<伸縮部材の色>
本発明では、上述したように、伸縮部材10Dは、吸収性物品10のうち、伸縮部材10Dが取り付けられている周辺が有する第3の色(例えば白色)とは異なる第4の色(例えば緑色)で着色されている。この構成により、一見してどちらがおむつ10の前身頃部10Fまたは後身頃部10Rであるか、つまりどちらがおむつ10の腹側か背側であるか、認識することができる結果、おむつ10を着用する手間を低減することが可能となる。
【0031】
本実施形態では、伸縮部材10Dに着色された第4の色は、ファスニングテープ10Aに着色された第2の色と同系色である。この構成により、伸縮部材10Dとそれの近傍に位置するファスニングテープ10Aとが一体となって視認されうるので、瞬時におむつ10の前後見分けを行うことが可能となる。
【0032】
本実施形態では、上記第1の色は、一対の第1係合部材10Aが取り付けられている周辺のうちおむつ10の肌面側が有する色であり、上記第3の色は、伸縮部材10Dが取り付けられている周辺のうちおむつ10の肌面側が有する色であり、第1の色および第3の色は、白色である。この構成により、上記第2の色を有するファスニングテープ10Aや、上記第4の色を有する伸縮部材10Dの存在が明確に把握することができる。
【0033】
<薄肉領域>
上述したように、本実施形態では、おむつ10の後身頃部10Rにおいて、周囲とは色が異なるファスニングテープ10Aや伸縮部材10Dを視覚によって判別できることによって、おむつ10の前後見分けを容易にすることが可能となっている。本実施形態では、さらに、触覚によるおむつ10の前後見分けを容易にする構成として、前身頃部10Fおよび後身頃部10Rに、吸収体13の厚みおよび伸縮部材10Dの厚みよりも薄い厚みを有する薄肉領域をそれぞれに設け、(1)薄肉領域が配置されている場所や、(2)おむつ10の長手方向における薄肉領域の寸法や構成を前身頃部10F側と後身頃部10R側で異ならせること、によって、ユーザーが触覚により上記(1)や(2)の態様を把握することができる結果、触覚によるおむつ10の前後見分けを容易にすることが可能となっている。
【0034】
<第1薄肉領域>
本実施形態では、
図5に示すように、おむつ10の長手方向において、伸縮部材10Dと吸収体13との間に、伸縮部材10Dの厚みdeおよび吸収体13の厚みdaよりも薄い厚みd1を有する第1薄肉領域T1が設けられる。この構成により、おむつ10の後身頃部10R側において、厚みのある伸縮部材10Dと、厚みのある吸収体13との間に第1薄肉領域T1が存在すると、ユーザーが把握することができるので、おむつ10の前後見分けを容易に行うことが可能となっている。すなわち、おむつ10の長手方向両端部付近を指でつまみ、指を吸収体13の両端部側に互いに移動させていった際、背側に引っかかりができ(伸縮部材10Dと吸収体13との間にできる谷間、つまり第1薄肉領域T1で指が引っかかるため)、おむつ10の前後の相違があることを容易に把握できる。
【0035】
なお、本発明では、トップシート14には、肌面側に向かって突出する凸形状を有するエンボスパターンが長手方向に延在するように設けられてもよい。この構成により、おむつ10を触る際、トップシート14の当該3Dエンボスに沿って指を動かしやすくなり、上記の谷間に到達しやすくなり、指で谷間を把握しやすくなる。
【0036】
また、本発明では、上述したように、カバーシート11には、通気可能な複数の孔部が縦縞状且つ間欠的に、おむつ10の長手方向に沿って形成されてもよく、この構成により、上記3Dエンボスと同様に、おむつ10を触る際、トップシート14の当該長手方向に沿って形成されている複数の孔部に沿って指を動かしやすくなり、上記の谷間に到達しやすくなり、指で谷間を把握しやすくなる。
【0037】
さらに、本実施形態では、第1薄肉領域T1は、
図5に示すように、トップシート14、バックシート12、およびカバーシート11の3層のシートだけの構成であるが、本発明ではこれに限られず、吸収体13とは別の、吸収体13の厚みより薄い厚みを有する吸収体を備えてもよい。
【0038】
本発明では、第1薄肉領域T1の吸収性物品10の長手方向における長さL1は、5mm以上20mm以下であることが、発明の効果を奏する上で好ましい。長さL1が5mmより小さいと指で把握することが難しくなり、長さL1が20mmより大きいと、上述したような谷間として指で認識することが難しくなる。
【0039】
吸収体13の厚みdaは1.5mm以上4.0mm以下、伸縮部材10Dの厚みdeは0.5mm以上1.5mm以下、第1薄肉領域の厚みd1は0.3mm以上0.5mm以下であることが、本発明の効果を奏する上で好ましい。
【0040】
<第2および第3薄肉領域>
また、本実施形態では、
図5に示すように、おむつ10の長手方向において、おむつ10の前身頃部10F側の長手方向端部と吸収体13との間に、伸縮部材10Dの厚みdeおよび吸収体13の厚みdaよりも薄い厚みd2を有する第2薄肉領域T2が設けられ、おむつ10の長手方向において、おむつ10の後身頃部10R側の長手方向端部と伸縮部材10Dとの間に、伸縮部材10Dの厚みdeおよび吸収体13の厚みdaよりも薄い厚みd31、d32を有する第3薄肉領域T3が設けられ、第2薄肉領域T2の長手方向における長さL2と、第3薄肉領域T3の長手方向における長さL3とは異なる。本実施形態では、
図5に示すように、第2薄肉領域T2の長手方向における長さL2は、第3薄肉領域T3の長手方向における長さL3よりも短くなっている。ユーザーは、この長さL2と長さL3との間に明らかな違いがあることを触覚、例えば、親指と人差し指とで第2薄肉領域T2および第3薄肉領域T3を摘むことでその薄さを認識することができるので、おむつ10の前後見分けを容易に行うことが可能となっている。すなわち、おむつ10を広げる際につまむことが多い端部において長さの異なる領域を設けることで、前後に差がある(前後の相違がある)ことを認識させることが可能となる。本発明では、第2薄肉領域T2の長手方向における長さL2の平均値と、第3薄肉領域T3の長手方向における長さL3の平均値とが異なる態様も許容するものである。
【0041】
本発明では、第2薄肉領域T2の長手方向における長さL2と、第3薄肉領域T3の長手方向における長さL3とは、それぞれ30mm以下であることが好ましく、この構成により、親指の第1関節以内の長さとすることができ、親指の腹で腹側端部または背側端部をつまみやすくなり、第2薄肉領域T2と第3薄肉領域T3との構成の違いを認識し易くなっている。
【0042】
本発明では、おむつ10の第2薄肉領域T2および/または第3薄肉領域T3を構成する部材において、おむつ10のウエスト側の部材数は、吸収性物品10の股下側の部材数よりも少なくてもよい。本実施形態では、
図5に示すように、おむつ10の第3薄肉領域T3を構成する部材において、おむつ10のウエスト側の部材数が1枚(カバーシート11のみ)であり厚みがd32であることに対して、おむつ10の股下側の部材数が3枚(カバーシート11、バックシート12、トップシート14)であって厚みがd31であり、おむつ10のウエスト側の部材数が股下側の部材数よりも少なくなっており厚みも薄くなっている。一方、本実施形態では、
図5に示すように、おむつ10の第2薄肉領域T2を構成する部材において、おむつ10のウエスト側の部材数と股下側の部材数がどちらも1枚(カバーシート11のみ)であり、おむつ10のウエスト側の部材数と股下側の部材数とが等しくなっている。これらの構成により、ユーザーは触覚にて第2薄肉領域T2を構成する部材数(または部材の厚み)と第3薄肉領域T3を構成する部材数(または部材の厚み)との違いを把握できるので、おむつ10の前後見分けを容易に行うことが可能となっている。また、厚い部分(固い部分)の長さが、
図5に示すように、第2薄肉領域T2、第3薄肉領域T3とで異ならせることで、両者の相違をより確実に認識させることが可能となる。
【0043】
第2薄肉領域T2の長手方向における長さL2と、第3薄肉領域T3の長手方向における長さL3との差は、10mm以上30mm以下であることが、本発明の効果を奏する上で好ましい。また、第2薄肉領域の厚みd2は0.2mm以上0.3mm以下、第3薄肉領域の厚みd31は0.3mm以上0.5mm以下、第3薄肉領域の厚みd32は0.2mm以上0.3mm以下であることが、本発明の効果を奏する上で好ましい。
【0044】
<その他>
本発明は、上述した実施形態や、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態またはその変形例に係るおむつの構造は、上述したような展開型に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に規定された吸収性物品でありさえすれば、どのような構成であってもよい。例えば、尿パッド等であっても本発明を適用可能である。
【0046】
加えて、上記実施形態またはその変形例は、乳幼児向けのおむつに限らず、成人向けのおむつ、尿パッドなど、各種吸収性物品に適用可能である。
【0047】
また、上記実施形態またはその変形例は、ファスニングテープ10Aに着色する構成、および伸縮部材10Dに着色する構成の両方の構成を含んでいるが、本発明では、両方の構成のうちいずれかの構成を含むものも許容されうる。当該いずれかの構成を含んでいれば、吸収性物品の前後見分けを迅速に行えるという本発明の効果を発現できる。
【0048】
さらに、上記実施形態またはその変形例に係るおむつ10では、第1薄肉領域T1、第2薄肉領域T2、および第3薄肉領域T3がそれぞれ設けられているが、本発明に係る吸収性物品では、第1薄肉領域T1を設ける態様、並びに第2薄肉領域T2および第3薄肉領域T3を設ける態様、のいずれかの態様を採用してもよいし、これら第1薄肉領域T1、第2薄肉領域T2、および第3薄肉領域T3を設けない態様も許容するものである。
【符号の説明】
【0049】
10 おむつ
10A ファスニングテープ(第1係合部材)
10B フロントパッチシート(第2係合部材)
10F 前身頃部
10R 後身頃部
10C 股下部
10W ウエスト周り開口部
10L 脚周り開口部
11 カバーシート
11N、15N 切欠き部
12 バックシート(裏面シート)
13 吸収体
14 トップシート(表面シート)
15 サイドシート
16、19 糸ゴム
17 吸収性コア
18 被覆部材
20 凹部
101 フック部
102 フックキャリア部
102a フックキャリア部の一方端部
102b フックキャリア部の他方端部
da 吸収体の厚み
de 伸縮部材の厚み
d1 第1薄肉領域の厚み
d2 第2薄肉領域の厚み
d31、d32 第3薄肉領域の厚み
L1 第1薄肉領域の長さ
L2 第2薄肉領域の長さ
L3 第3薄肉領域の長さ
T1 第1薄肉領域
T2 第2薄肉領域
T3 第3薄肉領域