(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び超音波診断装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020065745
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 薫
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022663(JP,A)
【文献】特開2010-000226(JP,A)
【文献】特開2012-223267(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045924(WO,A1)
【文献】特開2015-054006(JP,A)
【文献】国際公開第2009/131029(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0040187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定具を用いて、超音波プローブを被検体に対して押圧固定した状態で
、前記被検体に所定の関節運動を行わせ、前記被検体の前記所定の関節運動に伴って動く関節部の可動状態を検査する超音波検査に適用される超音波診断装置であって、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する圧力分布検出部と、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記被検体の断層画像に基づいて、
前記関節部の位置を検出する生体位置検出部と、
前記圧力分布検出部及び前記生体位置検出部それぞれの検出結果に基づいて、前記超音波プローブにより前記
関節部に対して作用する圧力が閾値を超えないように、検査者に対して前記超音波プローブの固定状態を適正化するための案内を行う案内部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記案内部は、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定される前に前記被検体の断層画像上で設定された前記被検体内の第2生体部分の位置と、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に前記被検体の断層画像上で検出された前記第2生体部分の位置と、に基づいて、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定されたことに伴う、前記超音波プローブの位置ずれ量及び位置ずれ方向を算出し、当該位置ずれ量及び位置ずれ方向に係る情報を含めて前記案内を行う、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第2生体部分は、
外表部分又は骨格部分である、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記生体位置検出部は、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記断層画像に基づいて、
前記断層画像内における前記
関節部の可動範囲を検出し、
前記案内部は、前記超音波プローブにより前記被検体に対して作用する圧力が、前記
関節部の前記可動範囲の各位置において、前記閾値を超えないように、前記案内を行う、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記生体位置検出部は、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記断層画像と、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定される前に撮影された前記断層画像上で設定された前記
関節部の画像と、に基づいて、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後の前記
関節部の位置を検出する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記圧力分布検出部は、前記超音波プローブの前記被検体と対向する面に配設された圧力センサ、前記超音波プローブの前記固定具と対向する面に配設された圧力センサ、又は、前記固定具の前記超音波プローブと対向する面に配設された圧力センサの少なくともいずれか一つから取得したセンサ信号に基づいて、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記圧力分布検出部は、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定される前に撮影された前記断層画像と、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記断層画像と、に基づいて、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定されたことに伴う、前記超音波プローブと前記被検体との間に配設された弾性部材の各位置における厚み変位量を算出し、
前記弾性部材の各位置における厚み変位量から、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記圧力分布検出部は、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定される前に撮影された弾性画像と、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された弾性画像と、に基づいて、前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定されたことに伴う、前記被検体内の各位置の組織の硬さ変化量又は厚み変位量を算出し、
前記被検体内の各位置の組織の硬さ変化量又は厚み変位量から、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記案内部は、前記超音波診断装置の本体のモニタの画面内に表示する画像にて、前記案内を行う、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記案内部は、前記超音波プローブに設けられた点灯装置の点灯態様にて、前記案内を行う、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
固定具を用いて、超音波プローブを被検体に対して押圧固定した状態で
、前記被検体に所定の関節運動を行わせ、前記被検体の前記所定の関節運動に伴って動く関節部の可動状態を検査する超音波検査に適用される超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する第1ステップと、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記被検体の断層画像に基づいて、前記
関節部の位置を検出する第2ステップと、
前記第1ステップ及び前記第2ステップそれぞれの検出結果に基づいて、前記超音波プローブにより前記
関節部に対して作用する圧力が閾値を超えないように、検査者に対して前記超音波プローブの固定状態を適正化するための案内を行う第3ステップと、
を備える、超音波診断装置の制御方法。
【請求項12】
固定具を用いて、超音波プローブを被検体に対して押圧固定した状態で
、前記被検体に所定の関節運動を行わせ、前記被検体の前記所定の関節運動に伴って動く関節部の可動状態を検査する超音波検査に適用される超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する第1ステップと、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記被検体の断層画像に基づいて、前記
関節部の位置を検出する第2ステップと、
前記第1ステップ及び前記第2ステップそれぞれの検出結果に基づいて、前記超音波プローブにより前記
関節部に対して作用する圧力が閾値を超えないように、検査者に対して前記超音波プローブの固定状態を適正化するための案内を行う第3ステップと、
を備える、超音波診断装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び超音波診断装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を被検体内部に送信し、その超音波エコーを受信して解析することにより、被検体内の断層画像を生成する超音波診断装置が知られている。超音波診断装置は、特定方向に収束させた超音波を方位方向に対してスキャンすることにより、2次元又は3次元の超音波画像をリアルタイムで取得することができる。そして、超音波診断装置にて超音波画像を時間的に連続して生成することで、被検体の生体部分を動画像観察することが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願の発明者らは、かかる超音波診断装置を、関節部分や筋肉部分等、被検体内の生体部分のうち、被検体の動作に伴って動く生体部分(以下、「動生体部」と称する)の観察に適用することを検討している。例えば、被検体が動作した際(例えば、脚を上げる等)の関節部分の動きを、超音波診断装置にて観察することによって、関節部分の損傷状態(例えば、筋、腱又は皮膚等の収縮に伴う関節可動域制限)等を詳細に把握することが可能となる。
【0005】
超音波診断装置を動生体部の観察に適用する場合、被検体が動作した際にも、超音波プローブの被検体側面(超音波プローブの筐体の被検体と対向する側の面を表す。以下同じ)が検査対象の動生体部から位置ずれしないように固定されている必要がある。そのため、超音波診断装置を動生体部の観察に適用する場合には、固定具(例えば、バンド)にて、超音波プローブを被検体に固定した状態として、当該状態にて、被検体に動作してもらい、その際の当該動生体部の超音波画像を観察することになる。
【0006】
図1は、超音波診断装置にて動生体部(ここでは、膝関節)を観察するためのセッティング状態の一例を示す図である。
図1には、超音波プローブ200を被検体P1の膝の側面に押し当てた状態で、固定具(ここでは、バンド)B1にて、被検体P1の膝の側面に超音波プローブ200を固定する態様を示している。
【0007】
この際、超音波プローブ200は、被検体側面たる超音波送受信面が被検体P1と対向するように固定される。そして、かかる状態で、超音波プローブ200から超音波を送受信することで、被検体P1内の関節部分(例えば、半月板)の断層画像(後述する
図7を参照)が撮影される。尚、
図1のセッティング状態では、超音波プローブ200の被検体側面と曲面状の外形を有する被検体P1の観察部位との間に空気層が介在しないように、超音波プローブ200と被検体P1との間には、弾性部材(例えば、音響カプラ)C1が配設されている。
【0008】
但し、このような超音波プローブの固定作業は、微調整が必要となる等、熟練した検査者でなければ、煩雑で且つ困難である場合がある。特に、固定具B1が、超音波プローブ200を介して、検査対象の動生体部を圧迫し、当該動生体部の動きを拘束してしまうケースが多く、当該動生体部の超音波検査が適切に実施できていない場合もある。又、固定具B1で超音波プローブ200を固定した際に、検査対象の動生体部の位置ずれが生じてしまう場合もある。
【0009】
尚、
図1のセッティング態様を例にとると、被検体P1が脚を上げる動作を行った場合、関節部分は、上方に動くため、超音波プローブ200は、膝関節の位置の下部側でしっかりと固定され、膝関節の位置の上部側では緩く固定されるのが好ましい。
【0010】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、検査者による超音波プローブの固定作業を支援することを可能とする超音波診断装置、超音波診断装置の制御方法、及び超音波診断装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
固定具を用いて、超音波プローブを被検体に対して押圧固定した状態で実施する超音波検査に適用される超音波診断装置であって、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する圧力分布検出部と、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記被検体の断層画像に基づいて、前記被検体内の生体部分のうち、前記被検体の動作に伴って動く動生体部の位置を検出する生体位置検出部と、
前記圧力分布検出部及び前記生体位置検出部それぞれの検出結果に基づいて、前記超音波プローブにより前記動生体部に対して作用する圧力が閾値を超えないように、検査者に対して前記超音波プローブの固定状態を適正化するための案内を行う案内部と、
を備える、超音波診断装置である。
【0012】
又、他の局面では、
固定具を用いて、超音波プローブを被検体に対して押圧固定した状態で実施する超音波検査に適用される超音波診断装置の制御方法であって、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する第1ステップと、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記被検体の断層画像に基づいて、前記被検体内の生体部分のうち、前記被検体の動作に伴って動く動生体部の位置を検出する第2ステップと、
前記第1ステップ及び前記第2ステップそれぞれの検出結果に基づいて、前記超音波プローブにより前記動生体部に対して作用する圧力が閾値を超えないように、検査者に対して前記超音波プローブの固定状態を適正化するための案内を行う第3ステップと、
を備える、超音波診断装置の制御方法である。
【0013】
又、他の局面では、
固定具を用いて、超音波プローブを被検体に対して押圧固定した状態で実施する超音波検査に適用される超音波診断装置の制御プログラムであって、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に、前記超音波プローブの被検体側面の各位置が、前記被検体に対して作用する圧力を検出する第1ステップと、
前記超音波プローブが前記固定具にて前記被検体に固定された後に撮影された前記被検体の断層画像に基づいて、前記被検体内の生体部分のうち、前記被検体の動作に伴って動く動生体部の位置を検出する第2ステップと、
前記第1ステップ及び前記第2ステップそれぞれの検出結果に基づいて、前記超音波プローブにより前記動生体部に対して作用する圧力が閾値を超えないように、検査者に対して前記超音波プローブの固定状態を適正化するための案内を行う第3ステップと、
を備える、超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る超音波診断装置によれば、検査者による超音波プローブの固定作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】超音波診断装置にて動生体部を観察するためのセッティング状態の一例を示す図
【
図5】超音波検査時の超音波プローブのセッティング状態の一例を示す図
【
図7】事前情報設定部の処理の一例について、説明する図
【
図8】生体位置検出部の処理の一例について、説明する図
【
図9】圧力分布検出部により検出された圧力分布の一例を示す図
【
図11A】案内部が第1ガイド機能及び第2ガイド機能において、圧力の大きさや位置ずれ量の大きさを表す際の種々の態様を示す図
【
図11B】案内部が第1ガイド機能及び第2ガイド機能において、圧力の大きさや位置ずれ量の大きさを表す際の種々の態様を示す図
【
図11C】案内部が第1ガイド機能及び第2ガイド機能において、圧力の大きさや位置ずれ量の大きさを表す際の種々の態様を示す図
【
図11D】案内部が第1ガイド機能及び第2ガイド機能において、圧力の大きさや位置ずれ量の大きさを表す際の種々の態様を示す図
【
図12】制御装置の動作の一例を示すフローチャート
【
図13】圧力分布検出部による圧力検出手法の変形例を示す図
【
図14】圧力分布検出部による圧力検出手法の他の変形例を示す図
【
図15】圧力分布検出部による圧力検出手法の他の変形例を示す図
【
図16】圧力分布検出部による圧力検出手法の他の変形例を示す図
【
図17】圧力分布検出部による圧力検出手法の他の変形例を示す図
【
図19A】案内部による案内手法の他の変形例を示す図
【
図19B】案内部による案内手法の他の変形例を示す図
【
図19C】案内部による案内手法の他の変形例を示す図
【
図20】案内部による案内手法の他の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
[超音波診断装置の構成]
以下、
図2~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。
【0018】
図2は、超音波診断装置Aの外観の一例を示す図である。
図3は、超音波診断装置Aの全体構成の一例を示す図である。
【0019】
図4は、超音波プローブ200の外観の一例を示す図である。
図5は、超音波検査時の超音波プローブ200のセッティング状態の一例を示す図である。
【0020】
超音波診断装置Aは、
図2に示すように、超音波診断装置本体100及び超音波プローブ200を備える。超音波診断装置本体100と超音波プローブ200とは、ケーブルを介して接続されている。
【0021】
超音波プローブ200は、超音波ビーム(ここでは、1~30MHz程度)を被検体P1(例えば、人体)内に対して送信するとともに、送信した超音波ビームのうち被検体P1内で反射された超音波エコーを受信して電気信号に変換する音響センサとして機能する。
【0022】
超音波プローブ200は、例えば、アレー状に配設された振動子列(例えば、圧電振動子列)200aaと、当該振動子列の各振動子の駆動状態のオンオフを個別に又はブロック単位で切替制御するためのチャンネル切替部(例えば、マルチプレクサ)を含んで構成される。超音波プローブ200の各振動子は、超音波診断装置本体100(送信部1)で発生された電圧パルスを超音波ビームに変換して被検体P1内へ送信し、被検体P1内で反射した超音波エコーを受信して電気信号(以下、「受信信号」と称する)に変換し、超音波診断装置本体100(受信部2)へ出力する。そして、超音波プローブ200の駆動対象の振動子が、走査方向に沿って順に切り替えられることにより、被検体内の超音波走査が実行される。
【0023】
超音波プローブ200は、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力(以下、「超音波プローブ200の押し付け圧」とも称する)を検出し得るように、複数の圧力センサ201を有している。
図4では、10個の圧力センサ201が、超音波プローブ200の被検体側面200aの振動子列200aaの両側に、振動子列200aaの振動子の配列方向(以下、横方向とも称する)に沿って設けられた態様を示している。
【0024】
複数の圧力センサ201それぞれのセンサ信号は、各別に、制御装置10に送信され、制御装置10にて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置の押し付け圧を示すものとして、別個に記憶される。これにより、制御装置10にて、超音波プローブ200の押し付け圧の圧力分布が検出されることになる。尚、本実施形態では、10個の圧力センサ201により、超音波プローブ200の被検体側面200aの横方向及び縦方向(振動子列200aaの振動子の配列方向に直交する方向を表す。以下同じ)の二次元面内の各位置の押し付け圧の圧力分布を検出するように構成されている。
【0025】
圧力センサ201は、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置の押し付け圧を検出し得るものであれば、任意の態様であってよい。本実施形態では、圧力センサ201として、ダイアフラムが外部から受ける圧力を、当該ダイアフラムの変位量として検出するMEMS式の圧力センサ(例えば、本出願人の先願である特開2011-255017号を参照)が用いられている。
【0026】
超音波プローブ200は、超音波検査時には、例えば、
図1に示したように、被検体側面200aが被検体P1と対向するように配設され、被検体側面200aを被検体P1に押し当てた状態で、固定具B1にて、被検体P1の動生体部の位置に固定される。尚、
図1、
図5では、超音波プローブ200を被検体P1に固定する固定具B1の一例として、バンドを示したが、固定具B1としては、バンド以外にも、テープ、サポータ又は弾性ストッキング等が用いられてもよい。
【0027】
超音波診断装置本体100は、送信部1、受信部2、断層画像生成部3、表示処理部4、モニタ5、操作入力部6、及び、制御装置10を備えている。
【0028】
送信部1は、超音波プローブ200に対して駆動信号たる電圧パルスを送出する送信器である。送信部1は、例えば、高周波パルス発振器、パルス設定部等を含んで構成される。送信部1は、高周波パルス発振器で生成した電圧パルスを、パルス設定部で設定した電圧振幅、パルス幅及び送出タイミングに調整して、超音波プローブ200のチャンネルごとに送出する。
【0029】
受信部2は、超音波プローブ200で生成された超音波エコーに係る受信信号を受信処理する受信器である。受信部2は、プリアンプ、AD変換部、及び、受信ビームフォーマーを含んで構成される。受信部2は、プリアンプにて、チャンネルごとに微弱な超音波エコーに係る受信信号を増幅し、AD変換部にて、受信信号を、デジタル信号に変換する。そして、受信部2は、受信ビームフォーマーにて、各チャンネルの受信信号を整相加算することで複数チャンネルの受信信号を1つにまとめて、音響線データとする。
【0030】
断層画像生成部3は、受信部2から受信信号を取得して、被検体P1の内部の断層画像を生成する。断層画像生成部3は、例えば、超音波プローブ200が深度方向に向けてパルス状の超音波ビームを送信した際に、その後に検出される超音波エコーの信号強度(Intensity)を順次ラインメモリに蓄積する。そして、断層画像生成部3は、超音波プローブ200からの超音波ビームが被検体P1内を走査するに応じて、各走査位置での超音波エコーの信号強度を各別のラインメモリに順次蓄積し、フレーム単位となる二次元データを生成する。そして、断層画像生成部3は、被検体P1の内部の各位置で検出される超音波エコーの信号強度を輝度値に変換することによって、断層画像を生成する。
【0031】
断層画像生成部3は、例えば、包絡線検波回路、ダイナミックフィルター及び対数圧縮回路を含んで構成される。包絡線検波回路は、受信信号を包絡線検波して、信号強度を検出する。対数圧縮回路は、包絡線検波回路で検出された受信信号の信号強度に対して対数圧縮を行う。ダイナミックフィルターは、深度に応じて周波数特性を変化させたバンドパスフィルターであって、受信信号に含まれるノイズ成分を除去する。
【0032】
表示処理部4は、断層画像生成部3から出力される断層画像を取得して、モニタ5に表示させる表示画像を生成する。尚、表示処理部4は、断層画像生成部3から出力される断層画像に対して、座標変換処理やデータ補間処理等の所定の画像処理を施してもよい。
【0033】
又、表示処理部4は、制御装置10(案内部14)から超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内画像の表示指令を受けた場合、当該案内画像を、断層画像に重畳して、又は断層画像と異なる領域に付加して表示画像を生成する(後述する
図10を参照)。
【0034】
モニタ5は、例えば、液晶ディスプレイであって、表示処理部4に生成された表示画像を表示する。
【0035】
操作入力部6は、ユーザが入力操作を行うためのユーザインターフェイスであり、例えば、押しボタンスイッチ、キーボード、及びマウス等で構成される。操作入力部6は、ユーザが行った入力操作を操作信号に変換し、制御装置10に入力する。
【0036】
制御装置10は、超音波プローブ200、送信部1、受信部2、断層画像生成部3、表示処理部4、モニタ5、及び、操作入力部6と信号を相互にやり取りし、これらを統括制御する。尚、制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。そして、制御装置10の各機能は、CPUがROMやRAMに格納された制御プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、制御装置10の機能の一部又は全部は、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア回路、又はこれらの組み合わせによっても実現できることは勿論である。
【0037】
[制御装置の構成]
図6は、制御装置10の機能構成の一例を示す図である。
【0038】
制御装置10は、事前情報設定部11、生体位置検出部12、圧力分布検出部13、及び、案内部14を有している。
【0039】
<事前情報設定部11について>
事前情報設定部11は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定される前に撮影された被検体P1の断層画像(以下、「固定前画像」と称する)上において、検査対象の動生体部に係る情報を設定する。事前情報設定部11の動作は、典型的には、検査者が、超音波プローブ200を固定具B1にて被検体P1に固定する前に実行される。より詳細には、事前情報設定部11の動作は、超音波プローブ200を被検体P1の目標固定位置に押し当てた状態で、当該目標固定位置における固定前画像が撮影された後に実行される。
【0040】
図7は、事前情報設定部11の処理の一例について、説明する図である。尚、
図7は、
図1のセッティング状態で撮影された断層画像の一例を示しており、
図7の左方向が被検体P1の脚部の上方向に相当し、
図7の右方向が被検体P1の脚部の下方向に相当する。
図7中のP1aは被検体P1の動生体部(ここでは、関節部分)を表し、P1bは被検体P1の動生体部の可動範囲を表し、P1cは被検体P1の不動生体部(被検体P1が動作した際にも動かない生体部分を意味する。以下同じ)を表している。
【0041】
事前情報設定部11は、例えば、ユーザの入力操作に基づいて、検査対象の動生体部(
図7のP1a)に係る情報を設定する。この際、事前情報設定部11は、例えば、ユーザから、固定前画像に映る動生体部の領域を選択する操作を受け付け、ユーザが、固定前画像を視認しながら、当該動生体部の領域を選択する操作を行ったことを契機として、制御装置10のメモリに検査対象の動生体部に係る情報を設定する。
【0042】
事前情報設定部11に設定される検査対象の動生体部に係る情報は、例えば、検査対象の動生体部の画像情報、及び検査対象の動生体部の位置情報(例えば、座標及び範囲)を含んでよい。尚、検査対象の動生体部の画像情報は、例えば、後述する生体位置検出部12にて、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後に、断層画像内において、当該動生体部が存在する位置を検出するために用いられる。又、検査対象の動生体部の位置情報は、後述する案内部14にて、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後に、当該動生体部の初期位置からの位置ずれ量及び位置ずれ方向を算出するために用いられてもよい。
【0043】
尚、事前情報設定部11は、検査対象の動生体部に係る情報を設定する際、固定前画像に対してパターン認識処理(例えば、テンプレートマッチングや学習済みのCNN等)を施して、当該固定前画像内に映る動生体部の位置を検出する手法を用いてもよい。
【0044】
ここで、事前情報設定部11は、検査対象の動生体部の情報として、更に、当該動生体部の可動範囲(
図7のP1b)の情報についても設定するのが好ましい。上記したように、超音波検査を実行する際には、動生体部の動きが拘束されないようにする必要があるため、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された際には、動生体部の位置のみならず、動生体部の可動範囲についても、超音波プローブ200から作用する圧力により圧迫されないようにするのが好ましい。この点、検査対象の動生体部の情報として、当該動生体部の可動範囲についても設定しておくことにより、後述する生体位置検出部12にて、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後に、動生体部の位置に加えて、動生体部の可動範囲についても検出可能となる。
【0045】
事前情報設定部11の動生体部の可動範囲の設定処理は、ユーザによる入力操作に基づくものでもよいが、好ましくは、事前情報設定部11は、固定前画像の動画(例えば、被検体P1が関節部を実際に動かした際に撮影された固定前画像の動画)から、動生体部の可動範囲を検出し、検出された可動範囲を設定情報として用いる。固定前画像の動画から動生体部の可動範囲を検出する際には、事前情報設定部11は、例えば、フレーム間差分法を用いて、固定前画像の動画中で動きがある領域を、可動範囲として検出すればよい。
【0046】
又、事前情報設定部11は、更に、検査対象の動生体部に係る情報とは別に、固定前画像内における不動生体部(
図7のP1c)の情報についても設定するのが好ましい。不動生体部は、検査対象ではないが、外力が作用した場合にも、動生体部と比較して被検体P1内における移動量が小さいため、不動生体部の位置は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された際に、超音波プローブ200が目標固定位置からどの程度位置ずれしているかを算出するための有効な参考情報となる。かかる観点から、事前情報設定部11は、例えば、ユーザから指定された不動生体部の位置情報及び画像情報を、固定前画像内における不動生体部の情報として設定するのが好ましい。尚、不動生体部としては、被検体P1の外表部分や骨格部分等が挙げられる。
【0047】
<生体位置検出部12について>
生体位置検出部12は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後に撮影された被検体P1の断層画像(以下、「固定後画像」と称する)から、当該固定後画像内における検査対象の動生体部の位置を検出する。生体位置検出部12の動作は、検査者が、超音波プローブ200を固定具B1にて被検体P1に固定し、当該状態で断層画像が撮影された後に実行される。
【0048】
図8は、生体位置検出部12の処理の一例について、説明する図である。尚、
図8の上図が固定前画像の撮影領域(R1の領域)を表し、
図8の下図が固定後画像の撮影領域(R1の領域)を表す。
【0049】
生体位置検出部12は、例えば、固定後画像に対して、パターン認識処理を施して、当該固定後画像内に映る検査対象の動生体部の位置を検出する。この際、生体位置検出部12は、例えば、事前情報設定部11で設定された検査対象の動生体部の画像を用いて、テンプレートマッチングにより、固定後画像から当該動生体部を検出する。そして、生体位置検出部12は、固定後画像内で検出された動生体部の位置を、制御装置10のメモリに格納する。
【0050】
固定後画像内に映る検査対象の動生体部の位置情報は、例えば、後述する案内部14にて、検査対象の動生体部に作用する圧力を認識するために用いられる。
【0051】
ここで、生体位置検出部12は、更に、検査対象の動生体部の可動範囲についても検出するのが好ましい。この際、生体位置検出部12は、例えば、事前情報設定部11で設定された検査対象の動生体部の可動範囲の情報を参照して、検査対象の動生体部の位置を基準として、固定後画像内における検査対象の動生体部の可動範囲を検出する。
【0052】
又、生体位置検出部12は、更に、固定後画像内に映る不動生体部の位置を検出するのが好ましい。この際、生体位置検出部12は、例えば、事前情報設定部11で設定された不動生体部の画像を用いて、テンプレートマッチングにより、固定後画像から当該不動生体部を検出する。そして、生体位置検出部12は、固定後画像内で検出された不動生体部の位置を、制御装置10のメモリに格納する。上記したように、これによって、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された際に、超音波プローブ200が目標固定位置から位置ずれしているかを算出するための参考情報を得ることができる。
【0053】
<圧力分布検出部13について>
圧力分布検出部13は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が、被検体P1に対して作用する圧力を検出する。圧力分布検出部13の動作は、検査者が、超音波プローブ200を固定具B1にて被検体P1に固定した後に実行される。
【0054】
図9は、圧力分布検出部13により検出された圧力分布の一例を示す図である。
図9では、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力ps、及び、検査対象の動生体部に対して作用させる圧力の許容限度ptの一例を示している。尚、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力psと、検査対象の動生体部に対して作用させる圧力の許容限度(以下、「閾値」と称する)ptと、の比較処理は、後述する案内部14により実行される。尚、閾値ptは、規定値であってもよいし、ユーザによって設定可能としてもよい。
【0055】
圧力分布検出部13は、例えば、超音波プローブ200に設けられた複数の圧力センサ201(
図4、
図5を参照)それぞれから、センサ信号を取得し、当該センサ信号に基づいて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置(より詳細には、超音波プローブ200の被検体側面200aの走査方向における各位置)が、被検体P1に対して作用する圧力を検出する。
【0056】
複数の圧力センサ201それぞれの位置は、生体位置検出部12に検出された断層画像の位置(即ち、振動子列200aaの配列方向における位置)と対応付けられている。そして、圧力分布検出部13の検出結果は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置から被検体P1の動生体部に対して作用する圧力が、閾値を超えていないか否かを判定するための判定材料となる。
図9では、複数の圧力センサ201により検出される超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力のうち、被検体P1内の動生体部の可動範囲に作用する圧力のみを示している。尚、表示画像内には、被検体P1内の動生体部の可動範囲外に作用する圧力も、表示されてもよい。
【0057】
尚、
図9では、振動子列200aaの配列方向に相当する一次元方向においてのみ、超音波プローブ200の被検体側面200aが被検体P1に対して作用する圧力の分布が検出され、閾値ptと比較される構成としている。しかしながら、より好ましくは、超音波プローブ200の被検体側面200aの二次元面内の各位置(即ち、超音波プローブ200の被検体側面200aの横方向と縦方向の各位置)において、超音波プローブ200の被検体側面200aが被検体P1に対して作用する圧力の分布が検出され、閾値ptと比較される構成とする。これによって、後述する案内画像にて、超音波プローブ200の縦方向においても、超音波プローブ200が被検体P1に対して、適切に固定されているかどうかを案内することが可能となる。
【0058】
<案内部14について>
案内部14は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された後、生体位置検出部12及び圧力分布検出部13それぞれの検出結果に基づいて、検査者に対して超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内を行う。
【0059】
案内部14は、例えば、超音波プローブ200の被検体側面200aが動生体部に対して作用する圧力が閾値を超えないようにするための超音波プローブ200の固定状態の案内を行う第1ガイド機能と、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定されたことに伴って、超音波プローブ200の固定位置が目標固定位置から位置ずれしていることを報知する第2ガイド機能と、を有する。
【0060】
図10は、案内部14による案内態様の一例を示す図である。
図10では、モニタ5に生成される画面Rall中に表示する案内画像R2により、超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内を行う態様を示している。尚、
図10に示す案内画像R2は、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された際に、超音波プローブ200において
図8に示した位置ずれが生じ、且つ、動生体部において
図9に示した圧力分布が生じた場合を想定している。
【0061】
本実施形態に係る案内部14は、表示処理部4に対して、案内画像表示指令を送出することで、かかる案内を行っている。このとき、表示処理部4は、案内部14から取得した案内画像表示指令に応じた案内画像を表示画像内に付加することによって、
図10に示すような表示画像を生成する。尚、案内画像に係る画像データは、例えば、予め表示処理部4が有するメモリに記憶されている。
【0062】
第1ガイド機能を実現する際、案内部14は、例えば、予め制御装置10のメモリに記憶された超音波プローブ200が有する複数の圧力センサ201それぞれの位置と、断層画像内の各位置との位置関係を示すセンサ位置データを用いて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が、生体位置検出部12に検出された検査対象の動生体部に対して作用する押し付け圧を特定する。そして、案内部14は、超音波プローブ200の被検体側面200aが動生体部の各位置に対して作用する押し付け圧が、閾値を超えているか否かを判定する(
図9を参照)。そして、案内部14は、超音波プローブ200の被検体側面200aのいずれの位置においても検査対象の動生体部に対して作用する押し付け圧が、閾値を超えていない場合には、特に案内を行わず、超音波プローブ200の被検体側面200aのいずれかの位置において検査対象の動生体部に対して作用する押し付け圧が、閾値を超えている場合には、検査者に対して、超音波プローブ200の固定状態の変更を促すための案内を行う。
【0063】
尚、超音波プローブ200の被検体側面200aのいずれかの位置において検査対象の動生体部に対して作用する押し付け圧が、閾値を超えている場合には、案内部14は、その押し付け圧が、どの程度閾値を超えているかを識別可能に案内するのが好ましい。
【0064】
又、このとき、案内部14は、検査対象の動生体部の位置に加えて、検査対象の動生体部の可動範囲においても、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置からの押し付け圧が、閾値以下となるように、検査者に対して案内を行うのが好ましい。尚、
図9では、比較対象の閾値が、検査対象の動生体部の位置、及び、当該動生体部の可動範囲に亘って、一様に設定された態様を示しているが、比較対象の閾値は、部分毎に変更されてもよい。例えば、動生体部の可動範囲のうち、現時点で動生体部が存在しない位置に設定する閾値は、現時点で動生体部が存在する動生体部に設定する閾値よりも大きくしてもよい。
【0065】
第1ガイド機能において、案内部14が行う案内は、例えば、
図10の矢印画像R2a1及びコメント画像R2a2のように、検査対象の動生体部に対して作用する圧力が閾値以下となるようにするために、超音波プローブ200をどのように傾けるのがよいか、又は、超音波プローブ200を固定する固定具B1をどのように緩めるのがよいかを示唆するものである。尚、
図10の案内画像では、例えば、検査対象の動生体部の下部側(断層画像上では右側)において、検査対象の動生体部に対して作用する押し付け圧が閾値を超えている状態を解消するために、超音波プローブ200の基端側の固定態様を緩めるように示唆されている。
【0066】
尚、
図10の案内画像では、振動子列200aaの配列方向に相当する一次元方向(即ち、超音波プローブ200の被検体側面200aの横方向)においてのみ、超音波プローブ200の固定態様を案内する態様となっているが、案内部14は、超音波プローブ200の被検体側面200aの縦方向の圧力分布によっては、超音波プローブ200の被検体側面200aの縦方向に沿った傾きを変化させる等の示唆を行ってもよい。
【0067】
第2ガイド機能を実現する際、案内部14は、例えば、事前情報設定部11に設定された不動生体部の位置と、生体位置検出部12に検出された不動生体部の位置とを参照して、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定されたことによる、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ方向及び位置ずれ量を算出する。そして、案内部14は、例えば、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ方向及び位置ずれ量に基づいて、超音波プローブ200の移動を促すための案内を行う。
【0068】
第2ガイド機能において、案内部14が行う案内は、例えば、
図10の矢印画像R2b1及びコメント画像R2b2のように、超音波プローブ200をいずれの方向に、どの程度の距離だけ移動させれば、超音波プローブ200が目標固定位置に戻るか示唆するものである。尚、
図10の案内画像では、例えば、超音波プローブ200が固定具B1にて被検体P1に固定された際に、超音波プローブ200が目標固定位置から上方側(断層画像上では左側)にずれたため、当該状態を目標固定位置に戻すために、超音波プローブ200を基端側に移動させるように示唆されている。
【0069】
図11A~
図11Dは、案内部14が第1ガイド機能及び第2ガイド機能において、圧力の大きさや位置ずれ量の大きさを表す際の種々の態様を示す図である。案内部14は、例えば、
図11A~
図11Dのように、矢印の色、矢印の長さ、矢印の太さ、又は矢印の個数にて、圧力の大きさや位置ずれ量の大きさを表現してもよい。
【0070】
[制御装置の動作フロー]
図12は、制御装置10の動作の一例を示すフローチャートである。尚、
図12に示すフローチャートは、例えば、制御装置10がコンピュータプログラムに従って、所定間隔(例えば、100ms間隔)で繰り返し実行する処理である。
【0071】
ステップS1において、制御装置10は、ユーザから、準備モード(ここでは、動生体部の超音波検査を行うための準備モードを意味する)の実行指令があった否かを判定する。ここで、制御装置10は、準備モードの実行指令があった場合(S1:YES)、ステップS2に処理を進め、準備モードの実行指令がない場合(S1:NO)、特に処理を実行することなく、
図12のフローチャートの処理を終了する。
【0072】
ステップS2において、制御装置10は、超音波プローブ200において超音波の送受信を実行させ、被検体P1の断層画像を生成する。尚、この際、制御装置10は、ユーザの操作に基づいて、被検体P1の断層画像の生成処理を実行してもよい。
【0073】
尚、制御装置10は、超音波プローブ200が被検体P1に固定される前に、圧力センサ201の初期値を測定し、圧力センサ201のセンサ値のキャリブレーションを行ってもよい。これは、圧力センサ201のセンサ値は、種々の要因に起因して、固定前の状態においても、ゼロを示さない場合があるためである。
【0074】
ステップS3において、制御装置10は、ステップS2で生成された断層画像内において、ユーザの選択操作のもと、検査対象の動生体部(可動範囲含む)の領域と、検査対象ではない不動生体部の領域とを、自身のメモリ(例えば、RAM)に設定する。
【0075】
ステップS4において、制御装置10は、ユーザから、固定具B1の締め付けが完了したこと(即ち、超音波プローブ200を固定具B1にて被検体P1に固定したこと)を示す入力操作を待ち受け(S4:NO)、固定具B1の締め付けが完了したことを示す入力操作があった場合(S4:YES)、ステップS5に処理を進める。
【0076】
ステップS5において、制御装置10は、超音波プローブ200において超音波の送受信を実行させ、被検体P1の断層画像を生成する。尚、この際、制御装置10は、ユーザの操作に基づいて、被検体P1の断層画像の生成処理を実行してもよい。
【0077】
ステップS6において、制御装置10は、ステップS5で生成された断層画像内において、ステップS3で設定された動生体部(可動範囲含む)と不動生体部とを検出し、断層画像内におけるこれらの位置を、自身のメモリ(例えば、RAM)に記憶する。
【0078】
ステップS7において、制御装置10は、ステップS3で設定された超音波プローブ200を被検体P1に固定する前の不動生体部の位置と、ステップS6で検出された超音波プローブ200を被検体P1に固定した後の不動生体部の位置と、に基づいて、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ方向及び位置ずれ量を算出する。
【0079】
ステップS8において、制御装置10は、超音波プローブ200の複数の圧力センサ201それぞれからのセンサ信号に基づいて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力(即ち、被検体P1に作用する圧力分布)を検出する。
【0080】
ステップS9において、制御装置10は、ステップS6~S8の処理結果から、検査者に対して超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内を行う。この際、制御装置10は、例えば、ステップS8で検出された超音波プローブ200の被検体側面200aが被検体P1の動生体部(及び可動範囲)の位置に対して作用する押し付け圧が閾値を超えないようにするための超音波プローブ200の固定態様(超音波プローブ200の傾きの変更、固定具B1の固定方法の変更)の案内を行う。又、この際、制御装置10は、例えば、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ方向及び位置ずれ量に基づいて、断層画像生成部3に表示する画面にて、超音波プローブ200を目標固定位置に戻すための移動を促す案内を行う。
【0081】
ステップS10において、制御装置10は、超音波プローブ200の固定状態が適正であるか否かを判定する。そして、制御装置10は、超音波プローブ200の固定状態が適正でない場合(S10:NO)、再度、ステップS4に戻ってステップS4~S9の処理を実行し、超音波プローブ200の固定状態が適正である場合(S10:YES)、
図12のフローチャートの処理を終了する。尚、超音波プローブ200の固定状態が適正であるか否かの判定基準は、例えば、被検体P1の動生体部(及び可動範囲)の各位置に対して作用する押し付け圧が閾値以下であるか否か、及び、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ量が所定値以下であるか否かである。
【0082】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置Aによれば、検査者に対して、超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内を行うことが可能である。つまり、これによって、超音波プローブ200にて、検査対象の動生体部(及びその可動範囲)が拘束されることを抑制することができる。又、これによって、検査対象の動生体部の超音波検査を行う際に、超音波プローブ200の固定位置が目標固定位置から位置ずれして、検査対象の動生体部の動きの状態を全体として把握できなくなることを抑制することができる。
【0083】
(変形例1-1)
図13は、圧力分布検出部13による圧力検出手法の変形例を示す図である。
【0084】
図13に示す変形例は、超音波プローブ200の被検体側面200aとは反対側の面200bに設けられた複数の圧力センサ201を用いて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1の動生体部に対して作用する圧力を検出する手法を示している。本変形例においては、圧力分布検出部13は、超音波プローブ200と固定具B1との間に作用する圧力を検出し、検出された圧力から、間接的に、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出することになる。
【0085】
(変形例1-2)
図14は、圧力分布検出部13による圧力検出手法の他の変形例を示す図である。
【0086】
図14に示す変形例は、固定具B1の超音波プローブ200との接触面B1aに設けられた複数の圧力センサ201を用いて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出する手法を示している。本変形例においては、圧力分布検出部13は、超音波プローブ200と固定具B1との間に作用する圧力を検出し、検出された圧力から、間接的に、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出することになる。
【0087】
(変形例1-3)
図15、
図16は、圧力分布検出部13による圧力検出手法の他の変形例を示す図である。
【0088】
図15、
図16に示す変形例は、超音波プローブ200と被検体P1の間に設けられた弾性部材(例えば、音響カプラ)C1の厚みの変化を用いて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出する手法を示している。
【0089】
弾性部材C1の厚みは、超音波プローブ200の被検体側面200aが被検体P1に対して作用する圧力に応じて変化し、その厚みは、断層画像内に映り込んだ弾性部材C1の領域(
図16を参照)から検出することが可能である。従って、本変形例においては、圧力分布検出部13は、断層画像に映る弾性部材C1の走査方向における各位置の厚みを算出し、弾性部材C1の各位置の厚みに基づいて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力(但し、圧力=弾性部材C1の厚さ方向の歪み×弾性部材C1の弾性率)を検出する。
【0090】
(変形例1-4)
図17は、圧力分布検出部13による圧力検出手法の他の変形例を示す図である。
【0091】
図17に示す変形例は、超音波プローブ200を被検体P1に固定する前後の被検体P1内の生体部位の硬さの変化を用いて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出する手法を示している。
【0092】
超音波プローブ200を押し付けられた際には、被検体P1内の生体部位は、一般に、その圧力に応じた硬さに変化する。本変形例においては、圧力分布検出部13は、弾性画像撮像モード(エラストグラフィ撮像モードとも称される)で、超音波プローブ200を被検体P1に固定する前の状態における被検体P1内の各部の硬さを検出しておき、超音波プローブ200を被検体P1に固定した後、再度、弾性画像撮像モードで、被検体P1内の各位置に存在する組織P1dの硬さを検出する。そして、圧力分布検出部13は、超音波プローブ200を被検体P1に固定する前後の弾性画像に基づいて、被検体P1内の各位置に存在する組織の硬さの変化を検出し、これにより、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出する。
【0093】
尚、この際、圧力分布検出部13は、超音波プローブ200を被検体P1に固定する前後における、被検体P1内の各位置に存在する組織の硬さの変化に代えて、超音波プローブ200を被検体P1に固定する前後における、被検体P1内の各位置に存在する組織の厚さの変化を用いて、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出してもよい。
【0094】
圧力分布検出部13は、上記実施形態に係る圧力検出手法(超音波プローブ200の被検体側面200aに設けられた圧力センサ201を用いる手法)に代えて、又は、これと共に、上記した変形例の圧力検出手法の一つ又は複数を用いてもよい。
【0095】
尚、変形例1-3及び変形例1-4は、超音波プローブ200に圧力センサ201を設けることなく、超音波プローブ200の被検体側面200aの各位置が被検体P1に対して作用する圧力を検出することが可能である点で、有用である。
【0096】
(変形例2-1)
図18は、案内部14による案内手法の変形例を示す図である。
【0097】
図18に示す変形例は、モニタ5に断層画像と重畳するように、超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内画像を表示する案内態様を示している。本変形例によれば、モニタ5に表示する表示画像内で案内画像を表示する領域が不要となるため、断層画像を拡大表示することが可能となる。
【0098】
(変形例2-2)
図19A~
図19Cは、案内部14による案内手法の他の変形例を示す図である。
【0099】
図19A~
図19Cに示す変形例は、超音波プローブ200に設けられたLEDランプ202、203にて、超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内を行う態様を示している。尚、
図19Bは、
図19Aに示す超音波プローブ200の構成において、LEDランプ202にて、動生体部に作用する圧力状態の表現方法の一例を示す図であり、
図19Cは、
図19Aに示す超音波プローブ200の構成において、LEDランプ203にて、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ状態の表現方法の一例を示す図である。
【0100】
本変形例において、LEDランプ202は、被検体P1の動生体部に作用する圧力状態に応じて点灯するランプであり、超音波プローブ200の側面に、超音波プローブ200の長手方向(振動子列の配列方向)に沿って、複数個(ここでは、5個)設けられている。そして、複数個のLEDランプ202は、各別に点灯制御される。又、本変形例において、LEDランプ203は、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ方向及び位置ずれ量に応じて点灯するランプであり、超音波プローブ200の側面に、超音波プローブ200の長手方向(振動子列の配列方向)に沿って、複数個(ここでは、5個)設けられている。
【0101】
本変形例において、案内部14は、動生体部に作用する圧力が閾値よりも大きい位置が存在することが検出された場合、例えば、複数個のLEDランプ202のうち、動生体部に作用する圧力が閾値よりも大きい位置のLEDランプ202を点灯する(
図19Bを参照)。又、この際、案内部14は、例えば、点灯させるLEDランプ202の発光量により、動生体部に作用する圧力が閾値よりどの程度大きいかを表現する。これによって、検査者は、LEDランプ202の点灯位置から、動生体部に作用する圧力が閾値以下とするために、超音波プローブ200の固定状態をどのように変化させればよいかを把握することが可能となる。
【0102】
又、案内部14は、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれが検出された場合、例えば、複数個のLEDランプ203のうち、位置ずれ方向に対応する方向に存在する位置のLEDランプ203を点灯する(
図19Cを参照)。又、この際、案内部14は、例えば、点灯させるLEDランプ203の発光量により、位置ずれ量を表現する。これによって、検査者は、LEDランプ203の点灯位置から、超音波プローブ200を目標固定位置に近づけるために、超音波プローブ200の固定状態をどのように変化させればよいかを把握することが可能となる。
【0103】
(変形例2-3)
図20は、案内部14による案内手法の他の変形例を示す図である。
【0104】
図20に示す変形例は、超音波プローブ200に設けられたLEDランプ204、及び切替スイッチ205にて、超音波プローブ200の固定状態を適正化するための案内を行う態様を示している。本変形例において、LEDランプ204は、被検体P1の動生体部に作用する圧力状態を表現するため、且つ、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ状態を表現するために設けられたランプであり、超音波プローブ200の側面に、超音波プローブ200の長手方向(振動子列の配列方向)に沿って、複数個(ここでは、5個)設けられている。そして、複数個のLEDランプ204は、各別に点灯制御される。又、本変形例において、切替スイッチ205は、LEDランプ204にて表現する案内を、被検体P1の動生体部に作用する圧力状態とするか、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ状態とするか、を切り替えるためのユーザが操作するスイッチである。
【0105】
本変形例において、動生体部に作用する圧力状態の表現方法、及び、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ状態の表現方法は、それぞれ、
図19B及び
図19Cと同様である。本変形例においては、案内部14は、切替スイッチ205にて選択されたモードが、被検体P1の動生体部に作用する圧力状態を表現するモードである場合には、複数個のLEDランプ204にて、被検体P1の動生体部に作用する圧力状態を表現する。又、本変形例においては、案内部14は、切替スイッチ205にて選択されたモードが、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ状態を表現するモードである場合には、複数個のLEDランプ204にて、超音波プローブ200の目標固定位置からの位置ずれ状態を表現する。
【0106】
尚、LEDランプ204にて表現する案内内容の切り替え制御は、ユーザの操作に代えて、時分割で自動的に行われてもよい。その場合、現時点でLEDランプ204にて表現する案内内容を識別可能にするための識別ランプを設けるのが好ましい。
【0107】
尚、
図19~
図20の変形例では、LEDランプ202、203、204の発光量により、動生体部に作用する圧力の大きさ、又は位置ずれ量を表現する態様を示したが、これらは、例えば、LEDランプの点灯個数等によって表現されてもよい。
【0108】
案内部14は、上記実施形態に係る案内手法(モニタ5に表示する案内画像により、検査者に固定状態を適正化するための案内を行う手法)に代えて、又は、これと共に、上記した変形例の案内手法の一つ又は複数を用いてもよい。
【0109】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本開示に係る超音波診断装置によれば、検査者による超音波プローブの固定作業を支援することができる。
【符号の説明】
【0111】
A 超音波診断装置
100 超音波診断装置本体
1 送信部
2 受信部
3 断層画像生成部
4 表示処理部
5 モニタ
6 操作入力部
10 制御装置
11 事前情報設定部
12 生体位置検出部
13 圧力分布検出部
14 案内部
200 超音波プローブ
200a 被検体側面
200aa 振動子列
201 圧力センサ
P1 被検体
B1 固定具
C1 弾性部材