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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】膨張弁の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240305BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240305BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240305BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
B60H1/32 613B
B60H1/32 624J
F25B1/00 321L
F16K27/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020067388
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021160680
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
(72)【発明者】
【氏名】水野 安浩
(72)【発明者】
【氏名】内山 雅貴
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027691(JP,A)
【文献】特開2014-163578(JP,A)
【文献】特開2015-068633(JP,A)
【文献】特開2003-301986(JP,A)
【文献】特開2013-139941(JP,A)
【文献】特開平03-168494(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021838(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/155805(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/32
F25B 1/00
F25B 41/31-41/36
F16K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる複数の膨張弁(13,17,22)の取付構造であって、
複数の前記膨張弁が取り付けられる筐体(40)を備え、
前記筐体には、前記車両の空調装置のヒートポンプサイクルを循環する熱媒体が流れ、前記膨張弁により開閉される流路が形成され、
複数の前記膨張弁が一列に並べて配置されるとともに、
複数の前記膨張弁のうちの2つの前記膨張弁を連通する内部流路(W20)と、前記筐体の外部から前記内部流路に熱媒体を流入させる分岐流路(W21)とが設けられ、
複数の前記膨張弁には、
前記内部流路の一端部を開閉する第1膨張弁(17)と、
前記内部流路の他端部を開閉する第2膨張弁(22)と、が含まれ
前記筐体の内部には、異なる2つの気液分離部を互いに接続する流路(W60)が更に形成されている
膨張弁の取付構造。
【請求項2】
車両に用いられる複数の膨張弁(13,17,22)の取付構造であって、
複数の前記膨張弁が取り付けられる筐体(40)を備え、
前記筐体には、前記車両の空調装置のヒートポンプサイクルを循環する熱媒体が流れ、前記膨張弁により開閉される流路が形成され、
複数の前記膨張弁が一列に並べて配置されるとともに、
複数の前記膨張弁のうちの2つの前記膨張弁を連通する内部流路(W20)と、前記筐体の外部から前記内部流路に熱媒体を流入させる分岐流路(W21)とが設けられ、
複数の前記膨張弁には、
前記内部流路の一端部を開閉する第1膨張弁(17)と、
前記内部流路の他端部を開閉する第2膨張弁(22)と、が含まれ、
前記第1膨張弁及び前記第2膨張弁は、まとまって前記筐体に配置されており、
前記第1膨張弁は、前記空調装置が冷房運転する際に前記ヒートポンプサイクルで用いられる膨張弁であり、
前記第2膨張弁は、前記車両のバッテリを冷却する回路で用いられる膨張弁であり、
複数の前記膨張弁には、前記空調装置が暖房運転する際に前記ヒートポンプサイクルで用いられる第3膨張弁(13)が更に含まれる
張弁の取付構造。
【請求項3】
車両に用いられる複数の膨張弁(13,17,22)の取付構造であって、
複数の前記膨張弁が取り付けられる筐体(40)と、
複数の前記膨張弁が固定される留め板(70)と、を備え、
前記筐体には、前記車両の空調装置のヒートポンプサイクルを循環する熱媒体が流れ、前記膨張弁により開閉される流路が形成され、
複数の前記膨張弁が一列に並べて配置されるとともに、
複数の前記膨張弁のうちの2つの前記膨張弁を連通する内部流路(W20)と、前記筐体の外部から前記内部流路に熱媒体を流入させる分岐流路(W21)とが設けられ、
複数の前記膨張弁には、
前記内部流路の一端部を開閉する第1膨張弁(17)と、
前記内部流路の他端部を開閉する第2膨張弁(22)と、が含まれ、
前記留め板が前記筐体に組み付けられることにより、複数の前記膨張弁が前記筐体に取り付けられている
張弁の取付構造。
【請求項4】
前記留め板には、前記留め板に対して前記膨張弁を位置決めする位置決め部(702)が形成されている
請求項に記載の膨張弁の取付構造。
【請求項5】
前記留め板において前記筐体に接触している接触面、及び前記筐体において前記留め板に接触している接触面の少なくとも一方には、前記留め板及び前記筐体のそれぞれの接触面の間に流入する流体を排出する排出溝(44,74)が形成されている
請求項又はに記載の膨張弁の取付構造。
【請求項6】
前記膨張弁は、弁体(81)と、前記弁体が着座及び離座する弁座(82)とを有している
請求項1~のいずれか一項に記載の膨張弁の取付構造。
【請求項7】
前記膨張弁は、弁体(81)を有し、
前記筐体には、前記弁体が着座及び離座する弁座(90)が設けられている
請求項1~のいずれか一項に記載の膨張弁の取付構造。
【請求項8】
前記筐体には、複数の前記膨張弁がそれぞれ挿入される複数の挿入穴(41,42,43)が形成され、
前記挿入穴には、内径が異なる複数の挿入部(411,412,421,422,431,432)が形成され、
複数の前記挿入部のそれぞれと前記膨張弁の外周面との間の隙間をシールする複数のシール部材(83,84)を更に備える
請求項1~のいずれか一項に記載の膨張弁の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膨張弁の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両用空調装置がある。特許文献1に記載の空調装置は、冷房運転及び暖房運転を行う熱サイクルとして機能するヒートポンプサイクルを備えている。ヒートポンプサイクルは、電動圧縮機、水冷媒熱交換器、室外熱交換器、蒸発器、第1膨張弁、及び第2膨張弁等を備えている。
【0003】
ヒートポンプサイクルは、空調装置が冷房運転を行う場合、電動圧縮機、凝縮器として動作する室外熱交換器、第1膨張弁、及び蒸発器の順で冷媒を循環させる。この際、蒸発器では、その内部を流れる冷媒と、空調ダクトを流れる空調空気との間で熱交換が行われることにより、空調空気が冷却される。冷却された空調空気が空調ダクトを通じて車室内に送風されることにより車室内の冷房が行われる。
【0004】
一方、ヒートポンプサイクルは、空調装置が暖房運転を行う場合、電動圧縮機、水冷媒熱交換器、第2膨張弁、及び蒸発器として動作する室外熱交換器の順で冷媒を循環させる。この際、水冷媒熱交換器では、その内部を流れる冷媒と、ヒータコアを循環する冷却水との間で熱交換が行われることにより冷却水が加熱される。ヒータコアでは、その内部を流れる冷却水と、空調ダクトを流れる空調空気との間で熱交換が行われることにより空調空気が加熱される。加熱された空調空気が空調ダクトを通じて車室内に送風されることにより車室内の暖房が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-15382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空調装置は、通常、車両のエンジンルーム内に配置されている。そのため、特許文献1に記載の空調装置のように複数の膨張弁が必要な場合、エンジンルームの異なる箇所に膨張弁が点在することとなる。したがって、複数の膨張弁を設置するためのスペースや、膨張弁と他の構成要素とを接続する配管を設置するためのスペース等をエンジンルーム内に複数確保する必要がある。これが膨張弁の搭載性を悪化させる要因となっている。
【0007】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の膨張弁を搭載する際に省スペース化が可能な膨張弁の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する膨張弁の取付構造は、車両に用いられる複数の膨張弁(13,17,22)の取付構造であって、複数の膨張弁が取り付けられる筐体(40)を備え、筐体には、車両の空調装置のヒートポンプサイクルを循環する熱媒体が流れ、膨張弁により開閉される流路が形成されている。複数の膨張弁が一列に並べて配置される。膨張弁の取付構造には、複数の膨張弁のうちの2つの膨張弁を連通する内部流路(W20)と、筐体の外部から内部流路に熱媒体を流入させる分岐流路(W21)とが設けられる。複数の膨張弁には、内部流路の一端部を開閉する第1膨張弁(17)と、内部流路の他端部を開閉する第2膨張弁(22)と、が含まれている。筐体の内部には、異なる2つの気液分離部を互いに接続する流路(W60)が更に形成されている。
上記課題を解決する他の膨張弁の取付構造は、車両に用いられる複数の膨張弁(13,17,22)の取付構造であって、複数の膨張弁が取り付けられる筐体(40)を備え、筐体には、車両の空調装置のヒートポンプサイクルを循環する熱媒体が流れ、膨張弁により開閉される流路が形成されている。複数の膨張弁が一列に並べて配置される。膨張弁の取付構造には、複数の膨張弁のうちの2つの膨張弁を連通する内部流路(W20)と、筐体の外部から内部流路に熱媒体を流入させる分岐流路(W21)とが設けられる。複数の膨張弁には、内部流路の一端部を開閉する第1膨張弁(17)と、内部流路の他端部を開閉する第2膨張弁(22)と、が含まれている。第1膨張弁及び第2膨張弁は、まとまって筐体に配置されている。第1膨張弁は、空調装置が冷房運転する際にヒートポンプサイクルで用いられる膨張弁である。第2膨張弁は、車両のバッテリを冷却する回路で用いられる膨張弁である。複数の膨張弁には、空調装置が暖房運転する際にヒートポンプサイクルで用いられる第3膨張弁(13)が更に含まれる。
上記課題を解決する他の膨張弁の取付構造は、車両に用いられる複数の膨張弁(13,17,22)の取付構造であって、複数の膨張弁が取り付けられる筐体(40)と、複数の膨張弁が固定される留め板(70)と、を備え、筐体には、車両の空調装置のヒートポンプサイクルを循環する熱媒体が流れ、膨張弁により開閉される流路が形成され、複数の膨張弁が一列に並べて配置されるとともに、複数の膨張弁のうちの2つの膨張弁を連通する内部流路(W20)と、筐体の外部から内部流路に熱媒体を流入させる分岐流路(W21)とが設けられる。複数の膨張弁には、内部流路の一端部を開閉する第1膨張弁(17)と、内部流路の他端部を開閉する第2膨張弁(22)と、が含まれる。留め板が筐体に組み付けられることにより、複数の膨張弁が筐体に取り付けられている。
【0009】
この構成によれば、複数の膨張弁が筐体にまとめて配置されているため、複数の膨張弁が点在して配置されている場合と比較すると、膨張弁の設置スペースを小さくすることができる。また、膨張弁により開閉される流路も筐体の内部に配置されているため、膨張弁と他の要素とを接続する流路を短くすることもできる。よって、複数の膨張弁を搭載する際に省スペース化が可能となる。
【0010】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の膨張弁の取付構造によれば、複数の膨張弁を搭載する際に省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態のヒートポンプシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態のヒートポンプシステムの動作例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態の膨張弁の取付構造の斜視構造を示す斜視図である。
図4図4は、第1実施形態の筐体の斜視構造を示す斜視図である。
図5図5は、第1実施形態の筐体の斜視構造を示す斜視図である。
図6図6は、第1実施形態の筐体の第1プレート部材の斜視構造を示す斜視図である。
図7図7は、第1実施形態の筐体の第2プレート部材の斜視構造を示す斜視図である。
図8図8は、第1実施形態の膨張弁及び留め板の斜視構造を示す斜視図である。
図9図9は、第1実施形態の膨張弁及び留め板周辺の筐体の断面構造を示す断面図である。
図10図10は、第2実施形態の膨張弁及び留め板の底面構造を示す底面図である。
図11図11は、第3実施形態の膨張弁及び留め板周辺の筐体の斜視構造を示す斜視図である。
図12図12は、第4実施形態の膨張弁周辺の筐体の断面構造を示す断面図である。
図13図13は、第5実施形態の膨張弁及び筐体の斜視構造を示す斜視図である。
図14図14は、第6実施形態の膨張弁及び筐体の正面構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、膨張弁の取付構造の実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態の膨張弁の取付構造が用いられるヒートポンプサイクルの概略構成について説明する。
【0014】
図1に示されるヒートポンプサイクル10は、車両の空調装置の構成要素の一つであって、サイクル内を循環する熱媒体と、空調ダクト内を流れる空調空気との間で熱交換を行うことにより空調空気を冷却又は加熱する熱システムである。空調装置は、ヒートポンプサイクル10により冷却又は加熱された空調空気を、空調ダクトを通じて車室内に送風することにより車室内の冷房又は暖房を行う。また、ヒートポンプサイクル10は、空調装置が冷房運転しているときに車両に搭載されるバッテリの冷却も行う。なお、ヒートポンプサイクル10が冷却対象とするバッテリは、例えば電動車両やハイブリッド車両において走行用のモータに電力を供給するために用いられるバッテリである。
【0015】
ヒートポンプサイクル10は、空調装置が冷房運転する際に、図1に矢印で示されるような第1循環回路で動作する。すなわち、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、水熱媒体熱交換器12、暖房用膨張弁13、暖房用気液分離部14、室外熱交換器15、逆止弁16、冷房用膨張弁17、冷房用気液分離部18、蒸発器19、アキュームレータ20の順で熱媒体が流れた後、熱媒体が圧縮機11に再び吸入される熱媒体回路が形成される。
【0016】
圧縮機11は、アキュームレータ20に貯留されている気相熱媒体を吸入して圧縮するとともに、圧縮された高温及び高圧の気相熱媒体を吐出する。ヒートポンプサイクル10が図1に示される第1循環回路を形成している場合、水熱媒体熱交換器12及び暖房用膨張弁13は作動していない。そのため、圧縮機11から吐出される高温及び高圧の気相熱媒体は暖房用気液分離部14にそのまま流入する。
【0017】
暖房用気液分離部14は、流入ポート140と、第1流出ポート141と、第2流出ポート142とを有している。流入ポート140には暖房用膨張弁13が接続されている。第1流出ポート141には室外熱交換器15が接続されている。第2流出ポート142には流路W13を介して圧縮機11が接続されている。ヒートポンプサイクル10が図1に示される第1循環回路で動作している場合、暖房用気液分離部14の流入ポート140及び第1流出ポート141は開放状態になっており、第2流出ポート142は閉塞状態になっている。このとき、暖房用気液分離部14は、圧縮機11から吐出される高温及び高圧の気相熱媒体が第1流出ポート141に流入すると、その気相熱媒体をそのまま第1流出ポート141を通じて室外熱交換器15に吐出する。
【0018】
室外熱交換器15は、暖房用気液分離部14を通過した高温及び高圧の気相熱媒体と空気との間で熱交換を行うことにより熱媒体の熱を空気に吸収させて熱媒体を冷却する。これにより、高温及び高圧の気相熱媒体は高圧の液相熱媒体に凝縮する。このように室外熱交換器15は凝縮器として機能する。
【0019】
室外熱交換器15から吐出される熱媒体は、逆止弁16を通じて冷房用膨張弁17及びバッテリ冷却用膨張弁22に繋がる流路W10、又はアキュームレータ20に繋がる流路W11に流れる。流路W10は、その途中の分岐部P10において、冷房用膨張弁17が設けられる流路W101と、バッテリ冷却用膨張弁22が設けられる流路W102とに分岐している。流路W11には電磁弁24が配置されている。ヒートポンプサイクル10が図1に示される第1循環回路で動作している場合、電磁弁24は閉弁状態になっている。したがって、室外熱交換器15から吐出される熱媒体は逆止弁16を通じて冷房用膨張弁17及びバッテリ冷却用膨張弁22にそれぞれ流入する。
【0020】
冷房用膨張弁17は、室外熱交換器15から吐出される高圧の液相熱媒体を減圧させて、低圧の液相熱媒体を吐出する。冷房用膨張弁17から吐出される低圧の液相熱媒体は流路W103を介して冷房用気液分離部18に流入する。
冷房用気液分離部18は、流入ポート180と、第1流出ポート181と、第2流出ポート182とを有している。流入ポート180には冷房用膨張弁17が接続されている。第1流出ポート181には蒸発器19が接続されている。第2流出ポート182には流路W12,W13を介して圧縮機11が接続されている。流路W13は、暖房用気液分離部14の第2流出ポート142と圧縮機11とを接続するための流路である。流路W12は、流路W13の途中の合流部P11に接続されている。流路W12には逆止弁21が設けられている。ヒートポンプサイクル10が図1に示される第1循環回路で動作している場合、冷房用気液分離部18の流入ポート180、第1流出ポート181、及び第2流出ポート182の全てが開放状態になっている。冷房用膨張弁17から冷房用気液分離部18の流入ポート180に流入する熱媒体は、液相だけでなく気相を含む2相熱媒体である。冷房用気液分離部18は2相熱媒体を液相熱媒体と気相熱媒体とに分離する。冷房用気液分離部18において分離された液相熱媒体は第1流出ポート181を通じて蒸発器19に流入する。また、冷房用気液分離部18において分離された気相熱媒体は第2流出ポート182から逆止弁21を通じて圧縮機11に吸入される。
【0021】
蒸発器19は、冷房用気液分離部18から吐出される低圧の液相熱媒体と、空調ダクト内を流れる空調空気との間で熱交換を行うことにより空調空気の熱を熱媒体に吸収させて空調空気を冷却する。これにより低圧の液相熱媒体が低圧の気相熱媒体に蒸発する。空調装置では、この蒸発器19により冷却された空調空気が車室内に送風されることにより車室内の冷房が行われる。蒸発器19から吐出される低圧の気相熱媒体はアキュームレータ20に流入する。
【0022】
蒸発器19からアキュームレータ20に流れる熱媒体は、気相だけでなく液相を含む2相熱媒体である。アキュームレータ20は、2相熱媒体を液相熱媒体と気相熱媒体とに分離するとともに、余剰分の液相熱媒体を一時的に蓄える。アキュームレータ20において分離された気相熱媒体のみが圧縮機11に吸入される。
【0023】
また、ヒートポンプサイクル10が図1に示される第1循環回路を形成している場合、室外熱交換器15から吐出される高圧の液相熱媒体の一部が流路W102を介してバッテリ冷却用膨張弁22に流入する。バッテリ冷却用膨張弁22は、室外熱交換器15から吐出される高圧の液相熱媒体を減圧させて、低圧の液相熱媒体を吐出する。バッテリ冷却用膨張弁22から吐出される低圧の液相熱媒体は流路W104を介して冷却水循環器23に流入する。
【0024】
冷却水循環器23は、バッテリ冷却用膨張弁22から吐出される低圧の液相熱媒体と、車両のバッテリを循環する冷却水との間で熱交換を行うことにより冷却水の熱を熱媒体に吸収させて冷却水を冷却する。この冷却された冷却水がバッテリを循環することによりバッテリが冷却される。冷却水の熱を吸収することにより蒸発した気相熱媒体は冷却水循環器23からアキュームレータ20へと流れる。冷却水循環器23からアキュームレータ20に流れる熱媒体は気相だけでなく液相を含む2相熱媒体である。この2相熱媒体はアキュームレータ20で気相熱媒体と液相熱媒体とに分離された後、気相熱媒体のみが圧縮機11に吸入される。
【0025】
このように、ヒートポンプサイクル10が図1に示される第1循環回路で動作することにより、車室内の冷房及びバッテリの冷却が可能となる。
一方、ヒートポンプサイクル10は、空調装置が暖房運転する際に、図2に矢印で示されるような第2循環回路で動作する。すなわち、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11、水熱媒体熱交換器12、暖房用膨張弁13、暖房用気液分離部14、室外熱交換器15、アキュームレータ20の順で熱媒体が流れた後、熱媒体が圧縮機11に再び吸入される熱媒体回路が形成される。
【0026】
圧縮機11は、アキュームレータ20に貯留されている気相熱媒体を吸入して圧縮するとともに、圧縮された高温及び高圧の気相熱媒体を吐出する。圧縮機11から吐出される高温及び高圧の気相熱媒体は水熱媒体熱交換器12に流入する。
水熱媒体熱交換器12は、圧縮機11から吐出される高温及び高圧の気相熱媒体と、空調装置のヒータコアを循環する冷却水との間で熱交換を行うことにより、熱媒体の熱を冷却水に吸収させて冷却水を加熱する。ヒータコアは、水熱媒体熱交換器12において加熱された冷却水と、空調ダクト内を流れる空調空気との間で熱交換を行うことにより空調空気を加熱する。この加熱された空調空気が車室内に送風されることにより車室内の暖房が行われる。水熱媒体熱交換器12では、高温及び高圧の気相熱媒体が冷却水との熱交換により冷却されて高圧の液相熱媒体に凝縮する。水熱媒体熱交換器12から吐出される高圧の液相熱媒体は流路W14を介して暖房用膨張弁13に流入する。
【0027】
暖房用膨張弁13は、水熱媒体熱交換器12から吐出される高圧の液相熱媒体を減圧させて、低圧の液相熱媒体を吐出する。暖房用膨張弁13から吐出される低圧の液相熱媒体は流路W15を介して暖房用気液分離部14の流入ポート140に流入する。
ヒートポンプサイクル10が図2に示される第2循環回路で動作している場合、暖房用気液分離部14の流入ポート140、第1流出ポート141、及び第2流出ポート142の全てが開放状態になっている。暖房用膨張弁13から暖房用気液分離部14に流入する熱媒体は、液相だけでなく気相を含む2相熱媒体である。暖房用気液分離部14は2相熱媒体を液相熱媒体と気相熱媒体とに分離する。暖房用気液分離部14において分離された液相熱媒体は第1流出ポート141を通じて室外熱交換器15に流入する。また、暖房用気液分離部14において分離される気相熱媒体は第2流出ポート142を通じて圧縮機11に吸入される。
【0028】
室外熱交換器15は、暖房用気液分離部14から吐出される低圧の液相熱媒体と空気との間で熱交換を行うことにより空気の熱を熱媒体に吸収させて熱媒体を蒸発させる。したがって、室外熱交換器15は蒸発器として機能する。ヒートポンプサイクル10が図2に示される第2循環回路を形成している場合、冷房用気液分離部18の全ポート180~182が閉塞状態になっている一方、電磁弁24が開弁状態になっている。したがって、室外熱交換器15から吐出される低圧の気相熱媒体は流路W11を通じてアキュームレータ20に流入する。
【0029】
室外熱交換器15からアキュームレータ20に流れる熱媒体は、気相だけでなく液相を含む2相熱媒体である。アキュームレータ20は、2相熱媒体を液相熱媒体と気相熱媒体とに分離するとともに、余剰分の液相熱媒体を一時的に蓄える部分である。アキュームレータ20において分離された気相熱媒体のみが圧縮機11に吸入される。
【0030】
このように、ヒートポンプサイクル10が図2に示される第2循環回路で動作することにより、車室内の暖房が可能となる。
ところで、図1及び図2に示されるように、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、空調装置の冷房及び暖房、並びにバッテリの冷却を実現するために、暖房用膨張弁13、冷房用膨張弁17、及びバッテリ冷却用膨張弁22の3つの膨張弁が必要となる。これらの3つの膨張弁13,17,22が車両のエンジンルーム内に点在して配置されている場合、それらの設置スペースをエンジンルーム内に個別に確保する必要がある。これは膨張弁13,17,22の搭載性を悪化させる要因となる。
【0031】
そこで、図3に示されるように、本実施形態の膨張弁の取付構造30では、3つの膨張弁13,17,22を筐体40にまとめて取り付けることとしている。これにより、筐体40をエンジンルーム内に固定するだけで、エンジンルームの一スペースに3つの膨張弁13,17,22をまとめて設置できるため、それらの搭載性を向上させることができる。
【0032】
次に、本実施形態の膨張弁13,17,22の取付構造30について詳しく説明する。
図4及び図5に示されるように、筐体40は、2つのプレート部材50,60により構成されている。第1プレート部材50は、図6に示されるような構造を有している。第2プレート部材60は、図7に示されるような構造を有している。図6に示される第1プレート部材50の外面51と、図7に示される第2プレート部材60の外面61とを当接させるようにして各プレート部材50,60が組み付けられることにより、筐体40が形成される。図6及び図7に示されるように、各プレート部材50,60には、筐体40の挿入穴41~43及び内部流路W20,W30,W40,W50,W60を構成するための複数の溝がそれぞれ形成されている。
【0033】
挿入穴41~43は筐体40の上面400に一列状に並べて配置されている。各挿入穴41~43は、筐体40の上面400に開口するように凹状に形成されている。中心軸に直交する各挿入穴41~43の断面形状は円形状に形成されている。各挿入穴41~43の下部411,421,431の直径は、各挿入穴41~43の上部412,422,432の直径よりも小さくなっている。
【0034】
筐体40の内部には、第1挿入穴41の底面と第2挿入穴42の底面とを連通させる内部流路W20が形成されている。図6に示されるように、内部流路W20の途中部分には分岐流路W21が形成されている。分岐流路W21は、内部流路W20の途中部分から分岐して、図5に示されるように筐体40の背面402に貫通するように形成されている。
【0035】
図6及び図7に示されるように、内部流路W30は、筐体40の内部において第1挿入穴41の側面から延びるように形成されている流路である。図7に示されるように、内部流路W30の先端部分には分岐流路W31が形成されている。分岐流路W31は、内部流路W30の先端部分から、図4に示されるように筐体40の正面401に貫通するように形成されている。
【0036】
図6及び図7に示されるように、内部流路W40は、筐体40の内部において第3挿入穴43の底面から延びるように形成されている流路である。図6に示されるように、内部流路W40の途中部分には分岐流路W41が形成されている。分岐流路W41は、内部流路W40の途中部分から分岐して、図5に示されるように筐体40の背面402に貫通するように形成されている。図7に示されるように、内部流路W40の途中部分及び先端部分には分岐流路W42,W43がそれぞれ形成されている。分岐流路W42,W43は、内部流路W40の途中部分及び先端部分からそれぞれ分岐して、図4に示されるように筐体40の正面401に貫通するように形成されている。なお、本実施形態の筐体40では、分岐流路W43は閉塞されている。
【0037】
図6及び図7に示されるように、内部流路W50は、第3挿入穴43の側面から延びるように形成されている流路である。図7に示されるように、内部流路W50の先端部分には分岐流路W51が形成されている。分岐流路W51は、内部流路W50の先端部から分岐して、図4に示されるように筐体40の正面401に貫通するように形成されている。
【0038】
図6及び図7に示されるように、内部流路W60は、筐体40の内部において挿入穴41~43とは独立して形成されている流路である。図6に示されるように、内部流路W60の一端部に分岐流路W61が形成されている。分岐流路W61は、内部流路W60の一端部から分岐して、図5に示されるように筐体40の背面402に貫通するように形成されている。図7に示されるように、内部流路W60の両端部には分岐流路W62,W63がそれぞれ形成されている。分岐流路W62は、図6に示される分岐流路W61に対向するように配置されている。分岐流路W62,W63は、内部流路W60の両端部からそれぞれ分岐して、図4に示されるように筐体40の正面401に貫通するように形成されている。
【0039】
図6に示されるように、第2挿入穴42の側面には分岐流路W70が形成されている。分岐流路W70は、第2挿入穴42から、図5に示されるように筐体40の背面402に貫通するように形成されている。
図5及び図6に示される筐体40には、図8に示されるような膨張弁13,17,22が留め板70と共に組み付けられる。留め板70は平板状に形成されている。留め板70には膨張弁13,17,22が一列状に配置されている。膨張弁13,17,22は、ブラケット71a~71c及びボルト72a~72cにより留め板70に固定されている。図3に示されるように留め板70が筐体40に固定されることにより膨張弁13,17,22が筐体40に取り付けられる。この際、図4に示される筐体40の第1挿入穴41には冷房用膨張弁17が挿入され、筐体40の第2挿入穴42にはバッテリ冷却用膨張弁22が挿入され、筐体40の第3挿入穴43には暖房用膨張弁13が挿入される。
【0040】
暖房用膨張弁13は、図9に示されるように筐体40の第3挿入穴43に挿入されている。図9に示されるように、膨張弁13は、ボディ80と、弁体81と、弁座82とを備えている。膨張弁13は、電力の供給に基づき弁体81が動作することにより弁開度を変更可能な電動式の膨張弁である。
【0041】
ボディ80は、軸線m10を中心に有底円筒状に形成されている。ボディ80には、挿入穴43の下部431に挿入される部分となる縮径部800と、挿入穴43の上部432に挿入される部分となる拡径部801とを有している。拡径部801の外径は縮径部800より外径が大きい。
【0042】
縮径部800には、Oリング83が挿入される円環状の挿入溝802が形成されている。Oリング83は、ボディ80の縮径部800の外周面と挿入穴43の下部431の内周面との間に形成される隙間をシールしている。
拡径部801にも、同様に、Oリング84が挿入される円環状の挿入溝803が形成されている。Oリング84は、ボディ80の拡径部801の外周面と挿入穴43の上部432の内周面との間に形成される隙間をシールしている。
【0043】
なお、本実施形態では、Oリング83,84がシール部材に相当する。
拡径部801において挿入溝803が形成されている部分よりも上方にはフランジ部804が形成されている。フランジ部804は、留め板70の底面700に形成される溝701に挿入されている。フランジ部804は、留め板70の溝701と筐体40の上面400との間に挟み込まれている。
【0044】
ボディ80の底壁部805には、その内面から外面に貫通するように底部貫通孔806が形成されている。ボディ80の側壁部807には、その内面から外面に貫通するように側部貫通孔808が形成されている。ボディ80の内部空間S10は、底部貫通孔806を通じて筐体40の内部流路W40に連通されるとともに、側部貫通孔808を通じて筐体40の内部流路W50に連通されている。
【0045】
弁座82は、底壁部805に接触するようにボディ80の内部に収容されている。弁座82は筒状の部材からなる。ボディ80の内部空間S10は、弁座82の中央に形成される連通孔820を通じてボディ80の底部貫通孔806に連通されている。
弁体81はボディ80の内部空間S10に収容されている。図9に示されるように弁体81が弁座82に着座している場合、すなわち膨張弁13が閉弁状態である場合、筐体40の内部流路W40と内部流路W50とが遮断された状態となっている。膨張弁13への電力の供給に基づき弁体81が弁座82から離座することにより、筐体40の内部流路W40がボディ80の内部空間S10を通じて筐体の内部流路W50に連通される。この際、膨張弁13は、内部流路W40を流れる流体を減圧させて内部流路W50に流入させる。
【0046】
なお、第1挿入穴41に対する冷房用膨張弁17の取付構造、及び第2挿入穴42に対するバッテリ冷却用膨張弁22の取付構造は、図9に示される第3挿入穴43に対する暖房用膨張弁13の取付構造と類似の構造であるため、それらの詳細な説明は割愛する。
次に、図3図9に示される膨張弁13,17,22の取付構造30と、図1及び図2に示されるヒートポンプサイクル10との対応関係について説明する。
【0047】
図6に示される筐体40の分岐流路W21は、図1及び図2に示される流路W10に接続される。また、第2挿入穴42に形成される分岐流路W70は、図1及び図2に示される流路W104に接続される。これにより、筐体40の内部流路W20のうち、分岐流路W21から第2挿入穴42までの流路部分が、図1及び図2に示される流路W10の分岐部P10からバッテリ冷却用膨張弁22までの流路W102の少なくとも一部を形成する。また、筐体40の内部流路W20のうち、分岐流路W21から第1挿入穴41までの流路部分が、図1及び図2に示される流路W10の分岐部P10から冷房用膨張弁17までの流路W101の少なくとも一部を形成する。なお、筐体40において内部流路W20と分岐流路W21との合流部分が、図1及び図2に示される流路W10の分岐部P10に相当する。
【0048】
図7に示される筐体40の分岐流路W31は、図1及び図2に示される冷房用気液分離部18の流入ポート180に接続される。これにより、筐体40の内部流路W30は、図1及び図2に示される冷房用膨張弁17から冷房用気液分離部18の流入ポート180までの流路W103の少なくとも一部を形成する。
【0049】
図6及び図7に示される分岐流路W41,W42は、図1及び図2に示される水熱媒体熱交換器12に接続される。これにより、筐体40の内部流路W40のうち、分岐流路W41,W42から第3挿入穴43までの流路部分が、図1及び図2に示される流路W14の少なくとも一部を形成する。なお、内部流路W40の分岐流路W43は閉塞されているため、分岐流路W41,W42に流入する熱媒体は内部流路W40を通じて第3挿入穴43のみに向かって流れる。
【0050】
図7に示される分岐流路W51は、図1及び図2に示される暖房用気液分離部14の流入ポート140に接続される。これにより、筐体40の内部流路W50は、図1及び図2に示される流路W15の少なくとも一部を形成する。
図6に示される分岐流路W61は、図1及び図2に示される圧縮機11に接続される。図7に示される分岐流路W62は、図1及び図2に示される冷房用気液分離部18の第2流出ポート182に接続される。図7に示される分岐流路W63は、暖房用気液分離部14の第2流出ポート142に接続される。これにより、筐体40の内部流路W60及び分岐流路W61が、図1及び図2に示される流路W12の少なくとも一部を形成する。また、分岐流路W62が、流路W13のうち、冷房用気液分離部18の第2流出ポート182から合流部P11までの流路部分の少なくとも一部を形成する。さらに、分岐流路W63が、流路W13のうち、合流部P11から圧縮機11までの流路部分の少なくとも一部を形成する。
【0051】
以上説明した本実施形態の膨張弁13,17,22の取付構造30によれば、以下の(1)~(6)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)複数の膨張弁13,17,22が筐体40にまとめて配置されているため、膨張弁13,17,22が点在して配置されている場合と比較すると、膨張弁13,17,22の設置スペースを小さくすることができる。また、膨張弁13,17,22により開閉される流路W20,W30,W40,W50も筐体40の内部に配置されているため、膨張弁13,17,22と、ヒートポンプサイクル10の他の要素とを接続する流路を短くすることもできる。よって、膨張弁13,17,22を搭載する際に省スペース化が可能となる。
【0052】
(2)筐体40には、複数の膨張弁13,17,22が一列に並べて配置されている。この構成によれば、図3に示されるように、膨張弁13,17,22が並べて配置されている方向をX方向とするとき、X方向に直交するY方向における筐体40の大型化を回避することができる。
【0053】
(3)図1に示されるようにヒートポンプサイクル10が空調装置の冷房運転に対応した回路で動作している場合、暖房用膨張弁13を通過する熱媒体の温度と比較すると、冷房用膨張弁17及びバッテリ冷却用膨張弁22を流れる熱媒体の温度の方が低い。したがって、暖房用膨張弁13が、より高温の熱媒体が流れる高温側膨張弁となり、冷房用膨張弁17及びバッテリ冷却用膨張弁22が、より低温の熱媒体が流れる低温側膨張弁となっている。この場合、筐体40において、仮に冷房用膨張弁17とバッテリ冷却用膨張弁22との間に暖房用膨張弁13を配置した場合、冷房用膨張弁17及びバッテリ冷却用膨張弁22を流れる熱媒体と、暖房用膨張弁13を通過する熱媒体との間で熱交換が行われることにより、ヒートポンプサイクル10の熱交換効率が低下するおそれがある。この点、本実施形態の筐体40では、冷房用膨張弁17とバッテリ冷却用膨張弁22とがまとまって配置されている。この構成によれば、冷房用膨張弁17とバッテリ冷却用膨張弁22との間に暖房用膨張弁13が配置されている構造と比較すると、冷房用膨張弁17及びバッテリ冷却用膨張弁22を流れる熱媒体と、暖房用膨張弁13を通過する熱媒体との間で熱交換が行われ難くなる。よって、ヒートポンプサイクル10の熱交換効率の低下を抑制することができる。なお、本実施形態では、暖房用膨張弁13が第1膨張弁に相当し、冷房用膨張弁17が第2膨張弁に相当し、バッテリ冷却用膨張弁22が第3膨張弁に相当する。
【0054】
(4)留め板70が筐体40に組み付けられることにより、複数の膨張弁13,17,22が筐体40に取り付けられている。この構成によれば、膨張弁13,17,22を個別に筐体40に組み付ける場合と比較すると、組み付け工数を低減することができる。また、組み付けに係るコストを低減することもできる。
【0055】
(5)膨張弁13には弁体81及び弁座82が設けられている。この構成によれば、筐体40には、膨張弁13を挿入する挿入穴43を形成するだけでよいため、筐体40の構造を簡素化することができる。
(6)筐体40には、膨張弁13,17,22がそれぞれ挿入される挿入穴41~43が形成されている。挿入穴41~43には、内径が異なる下部411,421,431及び上部412,422,432が形成されている。縮径部800及び拡径部801のそれぞれと膨張弁13,17,22の外周面との間の隙間はOリング83,84によりシールされている。この構成によれば、筐体40の内部で熱媒体が漏れる、いわゆる内部リークを抑制することができる。なお、本実施形態では、挿入穴41~43の下部411,421,431及び上部412,422,432それぞれが、内径の異なる挿入部に相当する。
【0056】
<第2実施形態>
次に、膨張弁13,17,22の取付構造30の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の取付構造30との相違点を中心に説明する。
図10に示されるように、本実施形態の膨張弁13の外周面には突出部809が形成されている。留め板70の底面73には、膨張弁13の突出部809が嵌合する嵌合穴702が形成されている。
【0057】
以上説明した本実施形態の取付構造30によれば、以下の(7)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(7)膨張弁13の突出部809と留め板70の嵌合穴702とが互いに嵌合することにより、膨張弁13の周方向において膨張弁13が留め板70に対して位置決めされる。このように、本実施形態の取付構造30では、留め板70の嵌合穴702が、留め板70に対して膨張弁13を位置決めする位置決め部に相当する。この構成によれば、留め板70に対する膨張弁13の位置決めが容易となる。
【0058】
<第3実施形態>
次に、膨張弁13,17,22の取付構造30の第3実施形態について説明する。以下、第1実施形態の取付構造30との相違点を中心に説明する。
図11に示されるように、本実施形態の留め板70の底面73には凹状の排出溝74が形成されている。また、筐体40の上面400にも、同様に、凹状の排出溝44が形成されている。本実施形態では、留め板70の底面73が、留め板70において筐体40に接触している接触面に相当する。また、筐体40の上面400が、筐体40において留め板70に接触している接触面に相当する。
【0059】
以上説明した本実施形態の取付構造30によれば、以下の(8)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(8)仮に筐体40の上面400と留め板70の底面73との間に水が溜まった場合、その水が排出されずに、それらの間に滞在し続ける可能性がある。この場合、その水により筐体40及び留め板70が腐食する懸念がある。この点、本実施形態の取付構造30では、仮に筐体40の上面400と留め板70の底面73との間に水が溜まった場合であっても、その水が排出溝44,74を通じて外部に排出される。そのため、水の滞留に起因する筐体40及び留め板70の腐食を抑制することができる。
【0060】
<第4実施形態>
次に、膨張弁13,17,22の取付構造30の第4実施形態について説明する。以下、第1実施形態の取付構造30との相違点を中心に説明する。
図12に示されるように、本実施形態の筐体40の内部には弁座90が設けられている。膨張弁13は、弁座90に対して着座及び離座する弁体81を有している。
【0061】
以上説明した本実施形態の取付構造30によれば、以下の(9)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(9)膨張弁13に弁座を設ける必要がないため、膨張弁13の構造を簡素化することができる。
【0062】
<第5実施形態>
次に、膨張弁13,17,22の取付構造30の第5実施形態について説明する。以下、第1実施形態の取付構造30との相違点を中心に説明する。
図13に示されるように、本実施形態の取付構造30では、膨張弁13,17,22が筐体40の上面400に設けられている。図13では、筐体40の上面400内の直交する2軸方向がX方向及びY方向で示されている。本実施形態では、X方向が第1軸方向に相当し、Y方向が第2軸方向に相当する。膨張弁13,17,22は、筐体40の上面400においてX方向及びY方向に互いにずれて配置されている。
【0063】
以上説明した本実施形態の取付構造30によれば、以下の(10)に示される作用及び効果を得ることができる。
(10)本実施形態の取付構造30では、第1実施形態の取付構造30のように筐体40の上面400に一列状に膨張弁13,17,22が配置されている構造と比較すると、筐体40の内部に形成される複数の流路を、より三次元的に配置できる。これにより、例えば筐体40の内部に形成される流路の長さを最短にすることができるなど、筐体40の内部流路に関する設計の自由度を向上させることができる。
【0064】
<第6実施形態>
次に、膨張弁13,17,22の取付構造30の第6実施形態について説明する。以下、第1実施形態の取付構造30との相違点を中心に説明する。
図14に示されるように、本実施形態の取付構造30では、筐体40の上面400に膨張弁17,22が設けられ、筐体40の側面403に膨張弁13が設けられている。
【0065】
以上説明した本実施形態の取付構造30によれば、以下の(11)に示される作用及び効果を得ることができる。
(11)本実施形態の取付構造30でも、第5実施形態の取付構造30と同様に、筐体40の内部に形成される複数の流路を、より三次元的に配置できるため、筐体40の内部流路に関する設計の自由度を向上させることができる。
【0066】
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・筐体40に設けられる膨張弁の数は任意に変更可能である。
・各実施形態の筐体40が搭載される車両は、バッテリの温度が上昇することによりバッテリの冷却が要求されている場合には、空調装置が冷房運転している場合に限らず、空調装置が暖房運転している場合においてバッテリの冷却を行うものであってもよい。例えば、空調装置の冷房運転及び暖房運転に対応して動作するヒートポンプサイクルと、バッテリの冷却を単独で行うことが可能なバッテリ冷却回路とが別々に車両に設けられていれば、空調装置が冷房運転及び暖房運転のいずれを行っている場合であっても、バッテリ冷却回路を作動させることでバッテリの冷却が可能となる。この場合、図3等に示されるバッテリ冷却用膨張弁22は、バッテリ冷却回路に設けられ、その回路において低圧の熱媒体を生成するために用いられることとなる。なお、バッテリを冷却する方法としては、図1及び図2に示されるような冷却水循環器23を利用するという方法の他、バッテリ冷却用膨張弁22で生成された低圧の熱媒体とバッテリとを直接熱交換させることによりバッテリを冷却する方法等を採用することができる。
【0067】
・各実施形態の筐体40は、高温側膨張弁に対応する一つの膨張弁13と、低温側膨張弁に対応する二つの膨張弁17,22とを有するものであったが、例えば高温側膨張弁に対応する膨張弁を複数有し、且つ低温側膨張弁に対応する膨張弁を単数有するものであってもよい。この場合、筐体40には、複数設けられる高温側膨張弁がまとまって配置されていれば、上記の(3)に類似の作用及び効果を得ることができる。
【0068】
・各実施形態の取付構造30は、図1及び図2に示されるヒートポンプサイクル10に限らず、任意のヒートポンプサイクルに用いることが可能である。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0069】
10:ヒートポンプサイクル
13:暖房用膨張弁(高温側膨張弁、第1膨張弁)
17:冷房用膨張弁(低温側膨張弁、第2膨張弁)
22:バッテリ冷却用膨張弁(低温側膨張弁、第3膨張弁)
30:取付構造
40:筐体
41,42,43:挿入穴
44,74:排出溝
70:留め板
81:弁体
82:弁座
83,84:Oリング(シール部材)
90:弁座
702:嵌合穴(位置決め部)
411,421,431:下部(挿入部)
412,422,432:上部(挿入部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14