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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020068225
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165772
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西埜植 一紀
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-44889(JP,A)
【文献】特開2008-9183(JP,A)
【文献】特開2009-75375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の回転体の間に記録媒体を通過させることにより、前記記録媒体上に形成された画像を定着させる定着部を備える画像形成装置であって、
前記回転体の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
異なる位置に配置され、前記加熱手段により加熱される前記回転体の温度を検知するための複数の温度検知手段と、
前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差を、過去の前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差と比較し、両者の差分が所定値を超えた場合に、前記複数の温度検知手段のいずれかの検知結果に異常があると判断する制御手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記複数の温度検知手段のうち少なくとも一つは非接触式の温度検知手段である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の温度検知手段は、前記回転体の軸方向の異なる位置に配置されている請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差を、過去の前記定着部の動作状態が同じときの前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差と比較する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、非通紙時の前記温度差を比較する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記複数の温度検知手段は、前記回転体の軸方向の同じ位置であって、前記回転体の回転方向の異なる位置に配置されている請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記回転体の少なくとも一方は、無端ベルトである請求項1~6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記差分が前記所定値を所定時間以上超えた場合に異常と判断する請求項1~7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記複数の温度検知手段のいずれかの検知結果に異常があると判断された場合に、異常である旨を使用者に通知する通知手段を備える請求項1~8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙にトナーを付着させて画像を形成する画像形成部と、画像が付着した用紙を通過させることにより加熱及び加圧して画像を用紙に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置が知られている。定着装置としては、加熱手段を内蔵した加熱ローラーを含むローラー対のニップ部で用紙を加熱及び加圧するものや、上記加熱ローラーに定着ベルトを張架し当該定着ベルトを介して用紙を加熱及び加圧するものがある。定着装置には、温度検知手段が設けられ、温度検知手段の検知温度に基づいて加熱手段の点灯制御が行われている。
【0003】
ところで、温度検知手段が加熱ローラーや定着ベルト等の定着部品の正確な温度を検知していない場合、定着温度制御不良が発生し、通紙不良、画像不良さらには定着部品が破損するなどの不具合が発生する。
そこで、例えば、特許文献1には、温度検知手段としてサーモパイル等の非接触の温度センサを用いた場合に、赤外線受光部が何らかの外因で汚れると温度検知が正しく働かなくなるため、温度検知手段の検知温度と回転体設置環境の雰囲気温度との温度差を比較して温度差が予め設定されている温度以上であったときに温度検知手段の検知部が汚れていると判断してユーザーに通知する技術が記載されている。
【0004】
また、定着装置に温度検知手段を複数備え、複数の温度検知手段の検知温度の差が所定値以上となったときに温度検知手段の検知温度が異常であると判断することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-41306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、サーモパイルが温度を検知してから判定を行うまで10分以上要する。そのため、加熱手段がその間点灯し続けることで定着部品の破損につながる。
また、複数の温度検知手段の検知温度の差が所定値以上であるか否かにより異常を判定する技術では、例えば、ユーザーが設定可能な温度調整範囲(例えば、±30℃)や、用紙種類や用紙サイズによる温度設定変化幅(例えば、±20℃)などを考慮するため、最低でも50℃以上の差がでないと異常と判断できない。そのため、異常と判断した時点ではすでに定着部品が破損している場合もある。
【0007】
本発明の課題は、温度検知手段の検知結果の異常を早期に判定できるようにし、通紙不良、画像不良、定着部品の破損等の不具合を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
一対の回転体の間に記録媒体を通過させることにより、前記記録媒体上に形成された画像を定着させる定着部を備える画像形成装置であって、
前記回転体の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
異なる位置に配置され、前記加熱手段により加熱される前記回転体の温度を検知するための複数の温度検知手段と、
前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差を、過去の前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差と比較し、両者の差分が所定値を超えた場合に、前記複数の温度検知手段のいずれかの検知結果に異常があると判断する制御手段と、
を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記複数の温度検知手段のうち少なくとも一つは非接触式の温度検知手段である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記複数の温度検知手段は、前記回転体の軸方向の異なる位置に配置されている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記制御手段は、前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差を、過去の前記定着部の動作状態が同じときの前記複数の温度検知手段間の検知温度の温度差と比較する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記制御手段は、非通紙時の前記温度差を比較する。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記複数の温度検知手段は、前記回転体の軸方向の同じ位置であって、前記回転体の回転方向の異なる位置に配置されている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の発明において、
前記回転体の少なくとも一方は、無端ベルトである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の発明において、
前記制御手段は、前記差分が前記所定値を所定時間以上超えた場合に異常と判断する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1~8のいずれか一項に記載の発明において、
前記複数の温度検知手段のいずれかの検知結果に異常があると判断された場合に、異常である旨を使用者に通知する通知手段を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度検知手段の検知結果の異常を早期に判定することができるので、通紙不良、画像不良、定着部品の破損等の不具合を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
図3】複数の温度検知部が定着ベルトの軸方向の異なる位置に配置されている場合の定着部の構成を示す模式図である。
図4】(a)は、ジャム発生時の定着部の正面図であり、(b)は、ジャム発生時の定着部の側面図である。
図5図2の制御部により実行される異常検出処理の流れを示すフローチャートである。
図6】複数の温度検知部が定着ベルトの軸方向の異なる位置に配置されている場合に使用される、定着部の動作状態ごとの所定値を示す図である。
図7】複数の温度検知部が定着ベルトの回転方向の異なる位置に配置されている場合の定着部の構成を示す模式図である。
図8】複数の温度検知部が定着ベルトの回転方向の異なる位置に配置されている場合に使用される、定着部の動作状態ごとの所定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す図である。図2は、画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0021】
画像形成装置1は、CPU101(Central Processing Unit)、RAM102(Random Access Memory)及びROM103(Read Only Memory)を有する制御部10、記憶部11、操作部12、表示部13、インターフェース14、スキャナー15、画像処理部16、画像形成部17、定着部18及び搬送部19等を備える。制御部10は、バス21を介して記憶部11、操作部12、表示部13、インターフェース14、スキャナー15、画像処理部16、画像形成部17、定着部18及び搬送部19と接続されている。
【0022】
CPU101は、ROM103又は記憶部11に記憶されている制御用プログラムを読み出して実行し、各種演算処理を行う。
【0023】
RAM102は、CPU101に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。
【0024】
ROM103は、CPU101により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM103に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0025】
これらのCPU101、RAM102及びROM103を備える制御部10は、上述の各種制御用プログラムに従って画像形成装置1の各部を統括制御する。例えば、制御部10は、ジョブの実行指令に基づいて、ジョブを実行する。すなわち、制御部10は、画像処理部16に画像データに対する所定の画像処理を行わせて記憶部11に記憶させる。また、制御部10は、搬送部19に用紙を搬送させ、記憶部11に記憶された画像データに基づいて画像形成部17により用紙に画像を形成させ、定着部18により用紙に画像を定着させる。また、制御部10は、温度検知部186の検知結果に基づいて、加熱手段182の点灯制御を行う。また、制御部10は、電源ONの間、後述する異常検出処理を実行し、定着部18における温度検知部186の検知結果の異常を判断する。
【0026】
記憶部11は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、スキャナー15により取得された画像データや、インターフェース14を介して外部から入力された画像データ等が記憶される。なお、これらの画像データ等はRAM102に記憶されても良い。
記憶部11は、複数の温度検知部186の検知結果の温度差(絶対値)を記憶するための温度検知結果記憶部111を有する。
【0027】
操作部12は、操作キーや表示部13の画面に重ねられて配置されたタッチパネル等の入力デバイスを備え、これらの入力デバイスに対する入力操作を操作信号に変換して制御部10に出力する。
【0028】
表示部13は、LCD(Liquid crystal display)等の表示装置を備え、画像形成装置1の状態や、タッチパネルへの入力操作の内容を示す操作画面等を表示する。
【0029】
インターフェース14は、外部のコンピューター、他の画像形成装置などとの間でデータの送受信を行う手段であり、例えば各種シリアルインターフェースのいずれかにより構成される。
【0030】
スキャナー15は、用紙に形成された画像を読み取り、R(赤)、G(緑)及びB(青)の色成分ごとの単色画像データを含む画像データを生成して記憶部11に記憶させる。
【0031】
画像処理部16は、例えばラスタライズ処理部、色変換部、階調補正部、ハーフトーン処理部を備え、記憶部11に記憶された画像データに各種画像処理を施して記憶部11に記憶させる。
【0032】
画像形成部17は、記憶部11に記憶された画像データに基づき、用紙に画像を形成する。画像形成部17は、C(シアン)、M(マジェンタ)、Y(イエロー)及びK(黒)の色成分に各々対応する4組の露光部171、感光体172及び現像部173を備えている。また、画像形成部17は、転写体174及び2次転写ローラー175を備えている。
【0033】
露光部171は、発光素子としてのLD(Laser Diode)を備えている。露光部171
は、画像データに基づいてLDを駆動し、帯電する感光体172上にレーザー光を照射、露光して感光体172上に静電潜像を形成する。現像部173は、露光された感光体172上に帯電する現像ローラーにより所定の色(C、M、Y及びKのいずれか)のトナー(色材)を供給して、感光体172上に形成された静電潜像を現像する。
C、M、Y及びKに対応する4つの感光体172上に各々C、M、Y及びKのトナーで形成された画像(単色画像)は、各感光体172から転写体174上に順次重ねられて転写される。これにより、転写体174上にC、M、Y及びKを色成分とするカラー画像が形成される。転写体174は、複数の転写体搬送ローラーに巻き回された無端ベルトであり、各転写体搬送ローラーの回転に従って回転する。
2次転写ローラー175は、転写体174上のカラー画像を、給紙トレイ22又は外部に設けられる給紙装置から給紙された用紙上に転写する。詳しくは、用紙及び転写体174を挟持する2次転写ローラー175に所定の転写電圧が印加されることにより、転写体174上においてカラー画像を形成しているトナーが用紙側に引き寄せられて用紙に画像が転写される。
【0034】
定着部18は、画像が転写された用紙を加熱及び加圧して用紙に画像を定着させる定着処理を行う。
【0035】
搬送部19は、用紙を挟持した状態で回転することで用紙を搬送する用紙搬送ローラーを複数備え、所定の搬送経路で用紙を搬送する。搬送部19は、定着部18により定着処理が行われた用紙の表裏を反転させて2次転写ローラー175へ搬送する反転機構191を備えている。画像形成装置1では、用紙の両面に画像を形成する場合に反転機構191による用紙の表裏の反転が行われて両面に画像が形成された後に用紙が排紙トレイ23に排出される。用紙の片面にのみ画像を形成する場合には、反転機構191による用紙の表裏の反転が行われることなく片面に画像が形成された用紙が排紙トレイ23に排出される。
【0036】
以下、定着部18について詳細に説明する。
図3は、定着部18の構成を示す模式図である。図3に示すように、定着部18は、加熱手段182を有する加熱ローラー181と、上加圧ローラー183と、加熱ローラー181と上加圧ローラー183との間に架け渡される無端状のベルトからなる定着ベルト184(回転体)と、下加圧ローラー185(回転体)と、温度検知部186と、を備えている。定着部18の各構成要素は、図3に示すx方向を長手方向(軸方向)としている。加熱ローラー181~定着ベルト184、温度検知部186は、搬送されてくる用紙の定着面側に設けられ、下加圧ローラー185は、搬送経路192を挟んで定着ベルト184に対向して(すなわち、用紙の裏面側に)設けられている。下加圧ローラー185を加熱する加熱手段があっても良い。
【0037】
下加圧ローラー185は移動可能に構成されており、図示しない圧着駆動機構の駆動により、上加圧ローラー183と下加圧ローラー185の圧着および離間が可能になっている。上加圧ローラー183と下加圧ローラー185を圧着、離間することによって、定着ベルト184と下加圧ローラー185の圧着、離間が可能となる。定着ベルト184と下加圧ローラー185が圧着、回転することにより、画像が形成された用紙を挟持して搬送する定着ニップが形成される。用紙は、加熱手段182によって加熱された状態の定着ベルト184と下加圧ローラー185による定着ニップを通過する際に加熱及び加圧され、用紙にトナー画像が定着される。
【0038】
加熱手段182は、ハロゲンランプ、抵抗発熱体、IH(Induction Heating)等により構成された1以上のヒーターにより構成されている。本実施形態では、加熱手段182が4つのハロゲンランプヒーターにより構成されている場合を例にとり説明する。
【0039】
加熱手段182は、定着ベルト184を加熱するものであり、例えば、中央ヒーター182a、中央ヒーター182b、端部ヒーター182c、端部ヒーター182dを備える。中央ヒーター182a、182bは、定着ベルト184の軸方向中央部を加熱するためのヒーターである。端部ヒーター182c及び182dは、定着ベルト184の軸方向の両端部を加熱するためのヒーターである。端部ヒーター182c及び182dは使用される用紙の幅に応じて使いわけが行われる。用紙の幅がB4サイズより小さいときは端部ヒーター182cが使用され、B4サイズを超える場合は端部ヒーター182dが使用される。
なお、加熱手段182に備えられているヒーターの数は一例であり、特に限定されない。
【0040】
温度検知部186は、定着ベルト184の軸方向中央部に設けられ、定着ベルト184の中央部の温度を検知する第1の温度検知部186aと、定着ベルト184の軸方向の端部に設けられ、定着ベルト184の端部の温度を検知するための第2の温度検知部186bを備えて構成されている(図4(b)参照)。
温度検知部186としては、例えば、サーミスター等を用いることができる。定着ベルト184は画像面と直接接触する定着部品であるため、温度検知部186としては非接触式を用いることが好ましい。
【0041】
温度検知部186は、制御部10に接続されている。制御部10は、第1の温度検知部186aの検知結果に基づいて、中央ヒーター182a、182bの点灯を制御することにより、定着ベルト184の中央部の温度が目標温度となるように制御する。また、制御部10は、第2の温度検知部186bの検知結果に基づいて、端部ヒーター182c、182dの点灯を制御することにより、定着ベルト184の端部の温度が目標温度となるように制御する。
なお、加熱手段182の各ヒーターの点灯制御はON/OFF制御よりもデューティー制御(HCD(Half Cycle Duty)制御)で行うほうが温度が安定しているため好ましい。
【0042】
ここで、図4(a)に、ジャム発生時の定着部18の正面図を示す。図4(b)に、ジャム発生時の定着部18の側面図(右側面図)を示す。図4(a)に示すように、定着ベルト184に用紙が巻き付いてジャム(紙詰まり)が発生した場合、ジャムとなった用紙が使用者には見えずに定着部18内部に残留してしまうことがある。この場合、残留用紙RPが非接触の温度検知部186と定着ベルト184との間をふさいでしまうと、定着ベルト184の温度検知が正しく行われず(実際より低く検知してしまうため、定着ベルト184の温度が目標より高くなるように制御される)、定着温度制御不良となり、通紙不良(用紙の巻き付き等)、画像不良(光沢度が意図しているよりも高くなる等)、さらには定着ベルト184等が破損してしまうことがある。そこで、従来、図4(b)に示すように、定着ベルト184の軸方向に複数の温度検知部(第1の温度検知部186a、第2の温度検知部186b)を設け、それらの検知温度の温度差が予め決められた値を超えたら異常であると判定することを行ってきた。ただし、この場合は、あらゆる状況を考慮する必要があるため、上述のように、温度差は最低でも50℃以上に設定する必要があり、異常が判定された時点ですでに定着ベルト184などが破損してしまうことがあった。
【0043】
そこで、本実施形態では、制御部10は、電源がONである間、図5に示す異常検出処理を実行することにより、第1の温度検知部186aと第2の温度検知部186bのそれぞれの温度(又は温度差)を定期的に記憶部11に記憶し、第1の温度検知部186aと第2の温度検知部186bの温度差を過去の温度差と比較演算し、比較結果に基づいて検知温度に異常があるか否かを判断する。
【0044】
図5に、異常検出処理の流れを示す。異常検出処理は、制御部10のCPU101とROM103に記憶されたプログラムとの協働により実行される。
【0045】
まず、制御部10は、複数の温度検知部186(第1の温度検知部186aと第2の温度検知部186b。以下同じ。)の検知温度を取得する(ステップS1)。
【0046】
次いで、制御部10は、複数の温度検知部186の検知結果の温度差(絶対値)を算出し、記憶部11の温度検知結果記憶部111に記憶させる(ステップS2)。
例えば、制御部10は、算出した温度差を定着部18の動作状態(例えば、ウォーミングアップ中、アイドリング中、通紙中(大サイズ(所定サイズ以上))、通紙中(小サイズ(所定サイズ未満))や日時に対応付けて温度検知結果記憶部111に記憶させる。なお、大サイズ、小サイズは、使用される用紙のサイズを表す。
なお、本実施形態では、温度検知部186が第1の温度検知部186a、第2の温度検知部186bの2つにより構成される場合を例にとり説明しているが、3つ以上により構成されていてもよい。この場合は、例えば、2つの温度検知部間の温度差(絶対値)をそれぞれ算出してそれらの代表値(平均値、中央値、最大値等)を複数の温度検知部186の検知結果の温度差としてもよい。
【0047】
次いで、制御部10は、定着部18においてジャムが発生したか否かを判断する(ステップS3)。
定着部18においてジャムが発生したか否かは、例えば、搬送経路192上の定着部18の上流側と下流側にセンサーを設け、上流側センサーが用紙を検知してから所定時間以内に下流側センサーが用紙を検知しなかった場合(または、所定時間以上検知し続けた場合)に、ジャムが発生したと判断する。
【0048】
定着部18においてジャムが発生していないと判断した場合(ステップS3;NO)、制御部10は、温度検知結果記憶部111を参照し、複数の温度検知部186の検知温度の温度差を、過去の定着部18が同じ動作状態のときの温度差(過去の温度差)と比較する(ステップS4)。
例えば、制御部10は、ステップS2で算出した温度差を、温度検知結果記憶部111に記憶されている、過去の定着部18が同じ動作状態のときの複数の温度検知部186の温度差と比較する。具体的には、ステップS2で算出した温度差と過去の定着部18が同じ動作状態のときの温度差の差分(絶対値)を算出する。
【0049】
次いで、制御部10は、算出された過去の温度差との差分が所定値を超えたか否かを判断する(ステップS5)。
ここでいう所定値は、第1の温度検知部186a又は第2の温度検知部186bの検知結果に異常があるか否かを判断するための基準となる値であり、実験的に求められ、記憶部11に予め記憶されている。
【0050】
図6は、記憶部11に記憶されている所定値の一例を示す図である。本実施形態のように、定着ベルト184の軸方向に複数の温度検知部186が設けられている場合、加熱手段182の各ヒーターの加熱時の昇温や温度リップルのばらつきにより各温度検知部が検知する温度に誤差(ムラ)があるため、それらを加味して所定値が設定されている。また、通紙中は、各温度検知部が通紙範囲か否かによって通紙による影響の大小が異なり、その影響も用紙の坪量や保管状態によって異なるため、非通紙時(ウォーミングアップ中、アイドリング中)よりも大きい所定値が設定されている。
なお、所定値を一瞬でも超えたら異常と判断してしまうとノイズなどによる誤検知も含めてしまうため、ステップS5においては、上記差分が所定値を所定時間以上(例えば、1秒以上)超えた場合に異常であると判断することが好ましい。
【0051】
ステップS5において、過去の温度差との差分が所定値を超えていないと判断した場合(ステップS5;NO)、制御部10は、ステップS1に戻る。
【0052】
過去の温度差との差分が所定値を超えていると判断した場合(ステップS5;YES)、制御部10は、第1の温度検知部186a、又は第2の温度検知部186bのいずれかの検知結果が異常であると判断し、異常である(残留用紙RPがある)ことを示す通知を表示部13に表示させ(ステップS6)、ステップS10に移行する。
例えば、給紙時に2枚の用紙が一度に給紙されて定着部18に到達し、1枚が定着ベルト184に巻き付き、もう一枚が定着部18から出てきた場合、ステップS3においてジャムとは判断されず、定着部18に残留用紙RPが残った状態でジョブがそのまま継続されることがある。ステップS5~6では、このようなジャムと判断されない残留用紙RPによる第1の温度検知部186a又は第2の温度検知部186bの検知結果の異常を検知することができる。
【0053】
ステップS10において、制御部10は、残留用紙RPが除去されたか否かを判断する(ステップS10)。例えば、第1の温度検知部186aと第2の温度検知部186bの検知温度差が所定の閾値を下回った場合に、残留用紙RPが除去されたと判断する。
残留用紙RPが除去されたと判断した場合(ステップS10;YES)、制御部10は、ステップS1に戻る。制御部10は、画像形成装置1の電源がONである間、ステップS1~ステップS10の処理を繰り返し実行する。
【0054】
一方、ステップS3において、ジャムが発生したと判断した場合(ステップS3;YES)、制御部10は、温度検知結果記憶部111を参照し、複数の温度検知部186間の検知温度の温度差をジャムの発生前後で比較する(ステップS7)。
例えば、制御部10は、定着部18においてジャムが発生すると、ジャムとなった用紙を取り除くよう、表示部13にガイダンスを表示する。使用者は、ガイダンスを見て、画像形成装置1の前扉を開けて定着部18から用紙を取り除く作業を行う。例えば、定着部18がもとの位置に戻されたことを検知して、使用者の作業が終了したと判断すると、制御部10は、ウォームアップ状態に移行し、複数の温度検知部186の検知温度(ジャム発生後の検知温度)を取得して温度差を算出し、温度検知結果記憶部111に記憶されているジャム発生前の、ウォームアップ状態の温度差と比較する。具体的には、ジャム発生前後の温度差の差分を算出する。
【0055】
次いで、制御部10は、ジャム発生前後の複数の温度検知部186間の温度差(絶対値)の差分が所定値を超えたか否かを判断する(ステップS8)。
ここでいう所定値は、第1の温度検知部186a又は第2の温度検知部186bの検知結果の異常があるか否かを判断するための基準となる値であり、例えば、実験的に求められ、定着部18の動作状態ごとに記憶部11に予め記憶された値(図6参照)である。
【0056】
例えば、図4(a)、(b)に示すように、第1の温度検知部186aと定着ベルト184の間にジャムとなった用紙が残留してしまった場合、残留用紙RPに遮られて第1の温度検知部186aの検知温度は実際の定着ベルト184の温度より低くなる。そのため、第1の温度検知部186aと第2の温度検知部186bの検知温度の温度差は、ジャム発生前より大きくなる。そこで、制御部10は、ジャム発生前後の複数の温度検知部の温度差の差分が所定値を超えた場合に、定着部18内に残留用紙RPが存在すると判断する。
【0057】
ジャム発生前後の複数の温度検知部の温度差の差分が所定値を超えていないと判断した場合(ステップS8;NO)、制御部10は、ステップS1に戻る。
【0058】
ジャム発生前後の複数の温度検知部の温度差の差分が所定値を超えたと判断した場合(ステップS8;YES)、制御部10は、第1の温度検知部186a、又は第2の温度検知部186bのいずれかの検知結果が異常である(すなわち、定着制御不良が起きている)と判断し、異常であること(残留用紙RPがあること)を示す通知を表示部13に表示させ(ステップS9)、ステップS10に移行する。
ここで、上述のように、非通紙時のほうが通紙時よりも所定値が小さいため、ステップS7において、ジャム発生前のウォームアップ状態で算出した温度差と、ジャム発生後のウォームアップ状態の温度差とを比較することで、小さい温度差で異常を判定することができる。
【0059】
ステップS10において、制御部10は、残留用紙RPが除去されか否かを判断する(ステップS10)。例えば、第1の温度検知部186aと第2の温度検知部186bの検知温度差が所定の閾値を下回った場合に、残留用紙RPが除去されたと判断する。
残留用紙RPが除去されたと判断した場合(ステップS10;YES)、制御部10は、ステップS1に戻る。制御部10は、画像形成装置1の電源がONである間、ステップS1~ステップS10の処理を繰り返し実行する。
【0060】
上記実施形態の画像形成装置1では、定着ベルト184の軸方向の異なる位置に配置された複数の温度検知部186の検知温度の温度差を、過去の定着部18の動作状態が同じときの過去の複数の温度検知部186の検知温度の温度差と比較し、両者の差分が所定値を超えた場合に、複数の温度検知部のいずれかの検知結果に異常があると判断する。
したがって、従来に比べて、異常を判断するための所定値を大幅に小さくすることができるため、定着温度制御不良を早期に判定することができ、通紙不良、画像不良、定着部品の破損等の不具合を低減することである。
【0061】
(変形例)
上記実施形態では、図4(b)に示すように、定着ベルト184の軸方向の異なる位置に複数の温度検知部186を配置することとして説明したが、図7に示すように、定着ベルト184の軸方向が同じで定着ベルト184の回転方向の異なる位置に複数の温度検知部186を配置して、同様に異常検出処理を実施し、異常の検知を行うこととしてもよい。この場合、異常がなければ複数の温度検知部186の温度は、定着部18がどのような動作状態でもほぼ同じとなるため、ステップS5、S8で用いる所定値は、極力小さくてよく、また、定着部18の動作状態で異なる所定値を設ける必要もない。図8に、定着ベルト184の軸方向が同じで定着ベルト184の回転方向の異なる位置に複数の温度検知部を配置した場合の所定値の一例を示す。また、現在の複数の温度検知部186の温度差と比較する過去の温度差も、定着部18の動作状態が同じであるときの温度差に限る必要もない。そのため、より早期に異常を検知することが可能となる。
また、定着ベルト184の軸方向が同じで定着ベルト184の回転方向の異なる位置に配置した複数の温度検知部のセットを、定着ベルト184の軸方向に複数備える構成として、同様に異常検出処理を実施してもよい。これにより、異常の検知精度を向上させることができる。
【0062】
以上説明したように、画像形成装置1によれば、制御部10は、異なる位置に配置され、定着ベルト184の温度を検知するための複数の温度検知部186と、複数の温度検知部186間の検知温度の温度差を、過去の定着部18の複数の温度検知部186間の検知温度の温度差と比較し、両者の差分が所定値を超えた場合に、複数の温度検知部186のいずれかの検知結果に異常があると判断する。
したがって、従来に比べて、異常を判断するための所定値を大幅に小さくすることができるため、温度検知部186の検知結果の異常を早期に判定することができ、通紙不良、画像不良、定着部品の破損等の不具合を低減することができる。
【0063】
また、例えば、複数の温度検知部186のうち少なくとも一つが非接触式の温度検知部である場合、温度検知部186と定着ベルト184の間に残留用紙RPが入り込む等の異常が発生しやすいが、このような異常による温度検知部186の検知結果の異常を早期に判定することができる。
【0064】
また、例えば、複数の温度検知部186が定着ベルト184の軸方向の異なる位置に配置されている場合、複数の温度検知部186間の検知温度の温度差を、過去の定着部18の動作状態が同じときの複数の温度検知部186間の検知温度の温度差と比較することで、温度検知部186の検知結果の異常を早期に判定することができる。特に、非通紙時の温度を比較することで、小さい温度差でも異常を判定することができ、より早期に異常を判定することができる。
【0065】
また、例えば、複数の温度検知部186を、定着ベルト184の軸方向の同じ位置であって定着ベルト184の回転方向に異なる位置に配置することで、異常であるか否かを判断するための所定値をより一層小さくすることができるため、温度検知部186の検知結果の異常をより早期に判定することができる。
【0066】
また、過去の温度差との差分が所定値を所定時間以上(例えば、1秒以上)超えた場合に異常と判断するようにすることで、ノイズ等の誤検知を防止することができる。
【0067】
また、複数の温度検知部186のいずれかの検知結果に異常があると判断された場合に、異常である旨を使用者に通知するようにすることで、使用者が異常を認識して対処することが可能となる。
【0068】
なお、上記実施形態及び変形例における記述は、本発明に係る画像形成装置の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、温度検知部186の異常判断を常時行うこととしたが、ジャムが発生した場合にのみ行うこととしてもよい。
【0069】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、定着部18が定着ベルト184を用いる構成である場合を例にとり説明したが、本発明は、定着ベルトを用いずに、加熱ローラー及び下加圧ローラーを直接圧着させる構成の定着部に適用することとしてもよい。又は、下加圧ローラー側にも定着ベルトを備える構成としてもよい。
【0070】
また、上記した実施形態では、画像形成装置1が、感光体上のトナー像を転写体に順次転写するカラー画像形成装置であるものとしたが、各色ごとの複数像担持体を中間転写体上に直列配置させたタンデム型カラー画像形成装置であっても良いし、単色のトナーで画像形成を行うモノクロ画像形成装置であっても良い。
【0071】
また、上記した実施形態では、記録媒体として用紙を用いる例を挙げて説明したが、記録媒体としては、普通紙や塗工紙といった用紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に付着した色材を定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0072】
また、以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてHDDや半導体メモリーを使用した例を開示したが、この例に限定されない。
その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリー等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0073】
その他、画像形成装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 画像形成装置
10 制御部
11 記憶部
111 温度検知結果記憶部
12 操作部
13 表示部
14 インターフェース
15 スキャナー
16 画像処理部
17 画像形成部
18 定着部
181 加熱ローラー
182 加熱手段
182a 中央ヒーター
182b 中央ヒーター
182c 端部ヒーター
182d 端部ヒーター
183 上加圧ローラー
184 定着ベルト
185 下加圧ローラー
186 温度検知部
186a 第1の温度検知部
186b 第2の温度検知部
19 搬送部
21 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8