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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光偏向器、光書込装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20240305BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020071761
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167925
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷山 彰
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 亮
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 崇
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-214558(JP,A)
【文献】特開平01-105907(JP,A)
【文献】特開平10-221630(JP,A)
【文献】実開平06-037818(JP,U)
【文献】特開2007-065312(JP,A)
【文献】特開平11-072739(JP,A)
【文献】特開2007-078999(JP,A)
【文献】特開昭54-108647(JP,A)
【文献】特開2017-116565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0086494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/12
B41J 2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に鏡面を有し、前記鏡面において光源から出射された光線を反射する回転多面鏡と、
前記回転多面鏡を回転駆動させる駆動部と、
透明な平板形状であり、前記回転多面鏡に入射する光線及び前記回転多面鏡により反射された光線を通過させるウインドウと、
底面、壁面及び天板を有し、前記壁面の開口部分に配置された前記ウインドウとともに前記回転多面鏡を格納する筐体と、
を備え、
前記壁面は、
前記回転多面鏡の回転方向において、前記ウインドウの上流側又は下流側の少なくとも一方に、前記回転多面鏡の回転による空気の流れに対する抵抗を発生させる抵抗発生部を備え、
前記抵抗発生部は、前記回転多面鏡の外接円との間の前記空気の流路における断面積である流路断面積を前記流路の幅方向及び高さ方向の少なくともいずれか一方に狭めるように設けられ、
前記抵抗発生部の前記回転方向下流側には、前記抵抗発生部から前記外接円との間の前記流路断面積が広がる領域と、前記回転方向下流に向けて前記外接円との間の前記流路断面積が狭まる領域とが順に設けられた流速緩和部が隣接し
前記壁面は、前記ウインドウと対向する面が、前記外接円との距離が一定となるように、曲面状に形成されていることを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
前記抵抗発生部は、前記ウインドウの前記上流側及び前記下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記回転方向において、
前記抵抗発生部の起点における前記流路断面積をA1とし、
前記抵抗発生部の終点における前記流路断面積をA2としたとき、
A1≧A2を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記抵抗発生部は、前記壁面を内側に曲げて形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項5】
前記抵抗発生部は、前記壁面の内側に凸部が設けられたものであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記抵抗発生部は、前記天板及び前記底面の少なくとも一方を内側に突出させたものであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項7】
前記抵抗発生部は、前記壁面、前記天板及び前記底面の少なくとも1つに複数の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項8】
前記流速緩和部は、前記流路断面積が変化するように、前記外接円との間の前記流路における幅である流路幅が調整されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項9】
前記流速緩和部は、平面状に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の光偏向器。
【請求項10】
前記流速緩和部は、前記流路断面積が変化するように、前記外接円との間の前記流路における高さである流路高さが調整されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項11】
前記ウインドウと前記回転多面鏡の回転中心との距離は、前記ウインドウと対向する面と前記回転多面鏡の回転中心との距離よりも長いことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項12】
前記ウインドウは、複数設けられていることを特徴とする請求項1~1のいずれか一項に記載の光偏向器。
【請求項13】
光源と、
前記光源から出射された光線を偏向させる請求項1~1のいずれか一項に記載の光偏向器と、
前記光偏向器により偏向された光線を像担持体の被走査面上に結像させる結像光学系と、
を備えることを特徴とする光書込装置。
【請求項14】
像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部と、
前記帯電部により帯電された像担持体に対して光線を照射することで前記像担持体上に静電潜像を形成する請求項1に記載の光書込装置と、
前記光線を照射された像担持体にトナーを供給することで前記静電潜像をトナー像に顕像化する現像部と、
前記トナー像を用紙に転写する転写部と、
前記転写部により転写されたトナー像を前記用紙に定着させる定着部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転多面鏡による偏向走査に用いられる光偏向器、当該光偏向器を用いた光書込装置及び当該光書込装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙(記録媒体)上に画像を形成するプリンターや複写機が知られている。これらプリンターや複写機に代表される画像形成装置は、光書込装置を用いて静電潜像を形成し、形成された静電潜像によりトナー画像を作成し、そのトナー画像を定着部により加熱及び加圧して用紙上に定着させることで、用紙上に画像を形成する。
【0003】
一般に、この種の画像形成装置では、半導体レーザーなどの光源からの光線を、回転多面鏡を用いた光偏向器によって偏向走査し、帯電させた感光体などの像担持体上に走査レンズ系によって光スポットとして結像させ、静電潜像の書込みを行う。
回転多面鏡は、速度の速いものでは40000rpm程度で高速回転するため、それを用いた光偏向器において、回転多面鏡周辺の圧力分布が増大し、騒音や回転抵抗の増大が問題となることがある。回転抵抗が増大すると、回転に必要な駆動力が増えるため、発熱量が増大し、レンズ等の光学素子の性能変動や機械寿命の低下につながる。また、回転抵抗が増大すると、回転速度変動につながるため、画像品質の低下(濃度ムラ)につながる。
【0004】
そこで、回転多面鏡を用いた光偏向器の騒音を抑制する技術として、回転多面鏡の筐体と平板なウインドウとで囲まれる領域を略円形とし、空気の流れを滑らかにする構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ウインドウを突出させて回転多面鏡から離すとともに、空気の流路を滑らかにつなぐ構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-152573号号公報
【文献】特開2005-301081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の平板なウインドウを用いた構成(光偏向器3001)では、図18(A)~図18(C)に示すように、回転多面鏡31とウインドウ36の間の距離が狭くなる箇所(図中符号F)で圧力勾配が大きくなるため、騒音の要因になる。ここで、図18(A)に、従来の光偏向器の平面図(ただし筐体37の天板37cは省略している)を、図18(B)に、図18(A)中の符号Wが示す領域の拡大図を、図18(C)に、図18(A)中のT1-T1線の断面図(ただし筐体37の天板37cを記載している)を、それぞれ示す。そこで、上記の圧力勾配を抑制するための構成として、ウインドウを円弧状にする構成と、ウインドウを突出させて回転多面鏡から離す構成と、を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、ウインドウを円弧状にする構成では、ウインドウ近傍で流路の広さを一定にすることができるため、圧力勾配を抑制することができるが、ウインドウの材料であるガラスや樹脂等を円弧状に加工する必要があり、大幅なコストアップを招く。また、ウインドウを円弧状にすることで、ウインドウ表面が光学的にパワーを持つ(すなわち、光線を収束/発散させる)ため、ウインドウを精度よく加工しない限り、光書込装置の光学性能に影響を与えてしまい、焦点位置やビーム形状が崩れてしまうおそれがある。
【0008】
他方、ウインドウを突出させて回転多面鏡から離す構成では、ウインドウと回転多面鏡の間の距離の変化の割合を小さくすることができるため、距離が狭くなる箇所での騒音を低減することができるが、突出部近傍で空気が急激に膨張/圧縮されるため、突出部近傍が騒音の要因になるおそれがある。また、突出部をなくすように、ウインドウ以外の筐体壁面全体を回転多面鏡から離す構成も考えられるが、光偏向器が光書込装置内のスペースを圧迫し設計自由度を減少させる又は他部品と光偏向器の距離が近くなり組立にくくなるおそれがある。
【0009】
また、上記特許文献2記載の突出部(ウインドウ)と筐体壁面との間の空気の流路を滑らかにつなぐ構成では、突出部近傍における空気の急激な膨張/圧縮を抑制することができるので、ウインドウに近い空間部とウインドウから遠い空間部との圧力差を減少させることが可能となり、騒音の発生を低減させることができる。
【0010】
以下に、図19を参照して、特許文献2記載の光偏向器3002の構成(形状)におけるウインドウ36近傍の流体解析結果を説明する。図19(A)は、特許文献2記載の光偏向器3002の構成における空気の流れの一例を示す図である。図19(B)は、回転多面鏡31周辺の圧力分布の一例を示す図である。図19(C)は、回転多面鏡31周辺の流速分布の一例を示す図である。
流体解析には、ソフトウェアとして、SolidWorks(R) Flow Simulationを使用した。流体解析の条件は、回転数40150rpmであり、解析仕様で回転体は回転対称である必要があるため、回転多面鏡31の外接円柱C11を回転させるようにしている。
【0011】
図19(B)及び図19(C)において、グラフの横軸は、回転多面鏡31の回転軸を中心として円周に沿って、真下を0°とし、時計回りに回転した角度で位置を表したものである。図19(B)において、グラフの縦軸は、0°点での圧力を0Pa基準とした圧力である(壁面と回転多面鏡31の全体的な距離によって圧力が全体にシフトするため)。図19(B)に示した圧力分布では、ウインドウ36(0°付近)よりも回転多面鏡31の回転方向上流側(270°付近)で圧力が急激に下がる箇所J1があり、圧力分布を抑制できていない。なお、圧力分布のMax-minは44.4Paであった。図19(C)において、グラフの縦軸は、流速[m/s]である。
【0012】
上記特許文献2記載の構成において、圧力が急激に下がる流れを説明する。まず、回転多面鏡31の回転方向に対して流路幅が拡大する箇所で、回転多面鏡31周りの空気の流速が変わらない場合、流路断面積が増えていく分、体積流量が増大していく。次に、回転多面鏡31の回転方向に対して流路幅が拡大しはじめる箇所で、体積流量が増大していく箇所に空気が引っ張られ、圧力が急激に下がる。
【0013】
本発明は、平板ウインドウ近傍での騒音/回転抵抗を低減することが可能な光偏向器、光書込装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
光偏向器において、
外周面に鏡面を有し、前記鏡面において光源から出射された光線を反射する回転多面鏡と、
前記回転多面鏡を回転駆動させる駆動部と、
透明な平板形状であり、前記回転多面鏡に入射する光線及び前記回転多面鏡により反射された光線を通過させるウインドウと、
底面、壁面及び天板を有し、前記壁面の開口部分に配置された前記ウインドウとともに前記回転多面鏡を格納する筐体と、
を備え、
前記壁面は、
前記回転多面鏡の回転方向において、前記ウインドウの上流側又は下流側の少なくとも一方に、前記回転多面鏡の回転による空気の流れに対する抵抗を発生させる抵抗発生部を備え、
前記抵抗発生部は、前記回転多面鏡の外接円との間の前記空気の流路における断面積である流路断面積を前記流路の幅方向及び高さ方向の少なくともいずれか一方に狭めるように設けられ、
前記抵抗発生部の前記回転方向下流側には、前記抵抗発生部から前記外接円との間の前記流路断面積が広がる領域と、前記回転方向下流に向けて前記外接円との間の前記流路断面積が狭まる領域とが順に設けられた流速緩和部が隣接し
前記壁面は、前記ウインドウと対向する面が、前記外接円との距離が一定となるように、曲面状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光偏向器において、
前記抵抗発生部は、前記ウインドウの前記上流側及び前記下流側に設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光偏向器において、
前記回転方向において、
前記抵抗発生部の起点における前記流路断面積をA1とし、
前記抵抗発生部の終点における前記流路断面積をA2としたとき、
A1≧A2を満たすことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記抵抗発生部は、前記壁面を内側に曲げて形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記抵抗発生部は、前記壁面の内側に凸部が設けられたものであることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記抵抗発生部は、前記天板及び前記底面の少なくとも一方を内側に突出させたものであることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記抵抗発生部は、前記壁面、前記天板及び前記底面の少なくとも1つに複数の凸部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1~7のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記流速緩和部は、前記流路断面積が変化するように、前記外接円との間の前記流路における幅である流路幅が調整されていることを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の光偏向器において、
前記流速緩和部は、平面状に形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項1~9のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記流速緩和部は、前記流路断面積が変化するように、前記外接円との間の前記流路における高さである流路高さが調整されていることを特徴とする。
【0025】
請求項1に記載の発明は、請求項1~10のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記ウインドウと前記回転多面鏡の回転中心との距離は、前記ウインドウと対向する面と前記回転多面鏡の回転中心との距離よりも長いことを特徴とする。
【0026】
請求項1に記載の発明は、請求項1~1のいずれか一項に記載の光偏向器において、
前記ウインドウは、複数設けられていることを特徴とする。
【0027】
請求項1に記載の発明は、
光書込装置において、
光源と、
前記光源から出射された光線を偏向させる請求項1~1のいずれか一項に記載の光偏向器と、
前記光偏向器により偏向された光線を像担持体の被走査面上に結像させる結像光学系と、
を備えることを特徴とする。
【0028】
請求項1に記載の発明は、
画像形成装置において、
像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部と、
前記帯電部により帯電された像担持体に対して光線を照射することで前記像担持体上に静電潜像を形成する請求項1に記載の光書込装置と、
前記光線を照射された像担持体にトナーを供給することで前記静電潜像をトナー像に顕像化する現像部と、
前記トナー像を用紙に転写する転写部と、
前記転写部により転写されたトナー像を前記用紙に定着させる定着部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、平板ウインドウ近傍での騒音/回転抵抗を、簡易な構成で低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】光書込装置の構成を示す斜視図である。
図3】光偏向器の構成を示す側面断面図である。
図4】光偏向器の構成におけるウインドウ近傍の流体解析結果を説明する図である。
図5】ウインドウ下流側のみに抵抗発生部を設けた構成を示す平面図である。
図6】圧力分布に係る流体解析結果を説明する図である。
図7】圧力分布が最も小さくなる条件における流速ベクトル図を説明する図である。
図8】圧力分布が最も小さくなる条件における圧力分布コンター図を説明する図である。
図9】圧力分布が大きくなる条件における圧力分布コンター図を説明する図である。
図10】変形例1に係る光偏向器の構成におけるウインドウ近傍の流体解析結果を説明する図である。
図11】変形例2に係る光偏向器の構成におけるウインドウ近傍の流体解析結果を説明する図である。
図12】抵抗発生部を、壁面の内側に凸部を設けた構成とした変形例3を示す図である。
図13】抵抗発生部を、底面を内側に突出させた構成とした変形例4を示す図である。
図14】抵抗発生部を、壁面に複数の凸部を設けた構成とした変形例5を示す図である。
図15】流速緩和部において、底面を内側に突出させて流路高さを調整した構成とした変形例6を示す図である。
図16】ウインドウを、対向する壁面において1つずつ計2つ設けた構成とした変形例7を示す図である。
図17】ウインドウを、配置角度を変えて2つ隣接させる構成とした変形例8を示す図である。
図18】特許文献1記載の光偏向器において、回転多面鏡とウインドウの間の距離が狭くなる箇所で圧力勾配が大きくなる様子の一例を示す図である。
図19】特許文献2記載の光偏向器の構成におけるウインドウ近傍の流体解析結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、図4(A)に示す左右方向をX方向、上下方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0032】
まず、本実施形態に係る画像形成装置1000の構成について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置1000は、例えば、レーザープリンターやデジタル複写機等として用いられ、図1に示すように、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色ごとに設けられた複数の光書込装置100と、光書込装置100に対応して設けられた感光体などの像担持体200と、像担持体200を帯電させる帯電部210と、光線を照射された像担持体200にトナーを供給することで静電潜像をトナー像に顕像化する現像部220と、中間転写ベルト300と、トナー像を用紙Pに転写する転写部400と、転写部400により転写されたトナー像を用紙Pに定着する定着部500と、を備えて構成されている。
【0033】
画像形成装置1000は、光書込装置100より照射されるレーザー光によって感光された像担持体200でトナー像を形成し、中間転写ベルト300上に当該トナー像を転写させる。次に、画像形成装置1000は、中間転写ベルト300に転写されたトナー像を転写部400によって用紙Pに押圧して転写させ、定着部500によって当該用紙Pを加熱及び加圧することで、トナー像を用紙P上に定着する。そして、画像形成装置1000は、用紙Pを排紙ローラー(図示省略)等により搬送してトレイ(図示省略)に排紙することで画像形成処理を行う。
【0034】
光書込装置100は、図2に示すように、帯電部210により帯電された像担持体200に対してレーザー光(光線)Lを主走査方向に照射し、像担持体200を感光させる装置である。
光書込装置100は、レーザー光Lを出射させる半導体レーザーなどの光源1と、光源1より出射されたレーザー光Lを整形し光偏向器3へ導く光源光学系2と、側面(外周面)が鏡面からなる多角柱形状をした回転多面鏡31(図3参照)を用いてレーザー光Lを偏向させる光偏向器3と、光偏向器3により偏向されたレーザー光Lを像担持体200の被走査面上に集光・走査させる走査光学系4と、上記の各素子を保持するハウジング5と、ハウジング5に被せて周囲環境からの防塵を行うカバー部材6と、を備えて構成されている。
【0035】
光偏向器3は、図3に示すように、外周面に鏡面を有し、鏡面において光源1から出射されたレーザー光Lを反射する回転多面鏡31と、回転多面鏡31に接合されたマグネット32と、回転多面鏡31を電磁力により高速回転駆動させるコイル33a、画像形成装置1000からの電力/制御信号を受け付けるコネクター33b及び制御IC33cを保持し、コイル33aに電力供給/制御を行う駆動基板33と、回転多面鏡31の回転軸34と、回転多面鏡31を滑らかに回転させるための軸受35と、透明な平板形状であり、回転多面鏡31に入射するレーザー光L及び回転多面鏡31により反射されたレーザー光Lを通過させるガラス製のウインドウ36と、上記の各素子を格納する筐体37と、を備えて構成されている。マグネット32及び駆動基板33(コイル33a、コネクター33b、制御IC33c)は、回転多面鏡31を回転駆動させる本発明の駆動部として機能する。
【0036】
筐体37は、底面37a、壁面37b及び天板37cを有し、壁面37bの開口部分に配置されたウインドウ36とともに回転多面鏡31を密閉している。本実施形態では、駆動基板33が天板37cを兼ねているが、駆動基板33と天板37cを別体として天板37cが駆動基板33を保持する構成としてもよい。壁面37bは、平面視で略円形状に形成され、円の中心は回転多面鏡31の回転中心(回転軸34)と同じ位置にある。底面37a及び壁面37bは、アルミダイカスト(金型を用いた射出成形と切削加工)により作製される。
【0037】
図4は、光偏向器3の構成(形状)におけるウインドウ36近傍の流体解析結果を説明する。図4(A)は、光偏向器3の構成を示す平面図である。図4(B)は、回転多面鏡31周辺の圧力分布の一例を示す図である。図4(C)は、回転多面鏡31周辺の流速分布の一例を示す図である。
【0038】
壁面37bは、図4(A)に示すように、回転多面鏡31の回転方向において、ウインドウ36(0°付近)の上流側に、回転多面鏡31の回転による空気の流れに対する抵抗を発生させる抵抗発生部371を備えている。抵抗発生部371は、回転多面鏡31の外接円C1との間の空気の流路における断面積である流路断面積を狭めるように設けられている(図4(A)の符号E1参照)。ここでは、抵抗発生部371は、壁面37bを内側に曲げて形成されている。抵抗発生部371の下流側には、下流に向けて外接円C1との間の流路断面積が広がる領域E2と狭まる領域E3とが順に設けられた流速緩和部372が隣接している。上記の構成とすることで、抵抗発生部371から流速緩和部372にかけて、流路幅が狭まる(E1)→広がる(E2)→狭まる(E3)となり、流路断面積が変化するようになっている。すなわち、図4(A)に示す例では、流速緩和部372は、外接円C1との間の流路における幅である流路幅が調整されている。図4(A)に示す例では、流速緩和部372の壁面37bが平面状(直線的)に形成されているので、設計・解析・寸法管理を簡素にすることができる。
なお、図4(A)に示す例では、抵抗発生部371(及び流速緩和部372)が、ウインドウ36の上流側に設けられている構成を例示して説明しているが、ウインドウ36の下流側に設けられている構成としてもよい。
【0039】
また、壁面37bは、図4(A)に示すように、ウインドウ36と対向する面(180°付近)が、外接円C1との距離が一定となるように、曲面状に形成されている。これにより、ウインドウ36と対向する面側における流路断面積を一定とすることができるので、圧力分布の発生を抑制することができる。
【0040】
また、図4(A)に示すように、ウインドウ36と回転多面鏡31の回転中心(回転軸34)との距離D1は、ウインドウ36と対向する面と回転多面鏡31の回転中心(回転軸34)との距離D2よりも長くなっている。これにより、ウインドウ36近傍における流路断面積の減少部分での圧力低下を抑制することができる。
【0041】
本実施形態に係る光偏向器3の構成において、圧力分布のMax-minは41.4Paであり、従来技術に係る光偏向器3002(図19(A)参照)の構成(44.4Pa)と比べ、小さくなっている。特に、圧力分布のminが、従来技術(図19(B)参照):-35Pa→本実施形態(図4(B)参照):-25Paとなっており、流路断面積拡大部(270°~360°の領域)における圧力の低下を抑制することができている。
【0042】
また、本実施形態に係る光偏向器3の構成では、流路断面積拡大部(270°~360°の領域)における流速が、従来技術(図19(C)参照):8m/s以上→本実施形態(図4(C)の矢印R1参照):2m/sまで落ちている。これにより、流路幅が広がりはじめる部分で空気が引っ張られることが抑制されるので、270°付近における圧力の低下を抑制することができている。
【0043】
(実施例)
以下に、本実施形態の光偏向器3において抵抗発生部371を設けたことによる効果に係る流体解析結果を説明する。流体解析には、ソフトウェアとして、SolidWorks(R) Flow Simulationを使用した。流体解析(コンピューターシミュレーション)のモデル形状は、ウインドウ36下流側のみに抵抗発生部371を設けた構成(図5参照)とした。上記の構成として、パラメーターを減らすことで、パラメーターと圧力分布の変化の関係が見えやすくなるようにした。パラメーターは、「(回転多面鏡31の)回転中心-斜め壁(抵抗発生部371)の距離(図中符号G1)」及び「(抵抗発生部371の)上流(ウインドウ36)と斜め壁(抵抗発生部371)の角度(図中符号G2)」である。出力は、回転多面鏡31周りの斜め壁(抵抗発生部371)近傍における圧力及び流速とした。
【0044】
圧力分布に係る流体解析結果を図6に示す。
図6に示すように、「回転中心-斜め壁の距離G1」が27.5mm、「上流と斜め壁の角度G2」が129°で圧力分布(Max-min:単位[Pa])が最も小さくなった。
【0045】
次に、圧力分布が最も小さくなる条件における流速ベクトル図を図7に、圧力分布コンター図を図8に、それぞれ示す。また、圧力分布が大きくなる条件における圧力分布コンター図を図9に示す。
図7に示す例では、流速が相対的に速い箇所を符号H1の矢印で示し、流速が相対的に遅い箇所を符号H2の矢印で示している。図7に示す速度分布から、流路幅が狭い箇所(図中符号H3)で流速が速くなっていることがわかる。また、流路幅が狭い箇所(図中符号H3)を出た空気の流れは、回転多面鏡31につられて回る流速が遅い流れ(符号H2の矢印参照)の他、主に壁面37bに沿って流れ、斜め壁(抵抗発生部371)に吹き付ける流速が速い流れ(符号H1の矢印参照)があることがわかる。
また、図8に示す圧力分布から、流速が速い流路断面積が小さい箇所(流路幅が狭い箇所:図中符号H3)で圧力が低下していることがわかる。また、斜め壁(抵抗発生部371)に吹き付けた空気が壁面37bの曲がり角(抵抗発生部371の起点付近:図中符号H4)で吹き溜まっていることが分かる。
【0046】
次に、圧力分布が最も小さくなる条件(図8参照)と圧力分布が大きくなる条件(図9参照)とを比較した。なお、圧力分布が最も小さくなる条件(図8参照)において、流路断面積が狭い箇所から曲がり角までの壁面寸法(図中符号H5)は、11.76mmであり、圧力分布が大きくなる条件(図9参照)において、流路断面積が狭い箇所から曲がり角までの壁面寸法(図中符号H6)は、14.77mmである。圧力分布が最も小さくなる条件(図8参照)の流速(10.3m/s)は、圧力分布が大きくなる条件(図9参照)の流速(11.3m/s)と比べ、低くなっている。これは、圧力分布が最も小さくなる条件(図8参照)の場合、圧力分布が大きくなる条件(図9参照)よりも、流路断面積が狭い箇所から曲がり角までの壁面寸法(図中符号H5)が短く、空気の吹き溜まりの発生個所(図中符号H4)が流路断面積の狭い箇所(図中符号H3)に近くなるため、流路断面積が狭い箇所の速度がより減少することで、圧力低下がより減少したものと考えられるからである。
【0047】
以上から、流路断面積が狭い箇所の下流に、壁面37bを内側に曲げて形成された抵抗発生部371を設けることで、空気の吹き溜まりが形成され、流路断面積が狭い箇所の流速を抑えることが可能となり、圧力低下を抑えることができる。特に、吹き溜まりの発生箇所を流路断面積の狭い箇所に近くすることで、圧力低下を抑える効果を高めることができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1000の光偏向器3は、外周面に鏡面を有し、鏡面において光源1から出射された光線(レーザー光L)を反射する回転多面鏡31と、回転多面鏡31を回転駆動させる駆動部(駆動基板33)と、透明な平板形状であり、回転多面鏡31に入射する光線及び回転多面鏡31により反射された光線を通過させるウインドウ36と、底面37a、壁面37b及び天板37cを有し、壁面37bの開口部分に配置されたウインドウ36とともに回転多面鏡31を格納する筐体37と、を備える。また、壁面37bは、回転多面鏡31の回転方向において、ウインドウ36の上流側又は下流側の少なくとも一方に、回転多面鏡31の回転による空気の流れに対する抵抗を発生させる抵抗発生部371を備える。また、抵抗発生部371は、回転多面鏡31の外接円C1との間の空気の流路における断面積である流路断面積を狭めるように設けられ、抵抗発生部371の下流側には、下流に向けて外接円C1との間の流路断面積が広がる領域と狭まる領域とが順に設けられた流速緩和部372が隣接している。
したがって、本実施形態に係る光偏向器3によれば、流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を抑制することができるので、回転多面鏡31周辺の圧力分布を抑えることが可能となり、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を低減することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る光偏向器3によれば、抵抗発生部371は、壁面37bを内側に曲げて形成されている。
したがって、本実施形態に係る光偏向器3によれば、簡易な構成で流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を簡易な構成で低減することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る光偏向器3によれば、流速緩和部372は、外接円C1との間の流路における幅である流路幅が調整されている。
したがって、本実施形態に係る光偏向器3によれば、流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を容易に抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を容易に低減することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る光偏向器3によれば、流速緩和部372は、平面状に形成されている。
したがって、本実施形態に係る光偏向器3によれば、壁面37bを曲面にする場合に比べ、設計・解析・寸法管理を簡素化することができるので、成形を容易にすることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る光偏向器3によれば、壁面37bは、ウインドウ36と対向する面が、外接円C1との距離が一定となるように、曲面状に形成されている。
したがって、本実施形態に係る光偏向器3によれば、ウインドウ36の反対側で流路断面積を一定にすることができるので、圧力分布の生じる要因を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る光偏向器3によれば、ウインドウ36と回転多面鏡31の回転中心との距離は、ウインドウ36と対向する面と回転多面鏡31の回転中心との距離よりも長い。
したがって、本実施形態に係る光偏向器3によれば、ウインドウ36を回転多面鏡31から離すことができるので、ウインドウ36近傍の流路断面積減少部における圧力低下を抑制することができる。
【0054】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0055】
(変形例1)
例えば、上記実施形態では、図4(A)に示すように、抵抗発生部371(及び流速緩和部372)が、ウインドウ36の上流側に設けられている構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、抵抗発生部371は、ウインドウ36の上流側又は下流側の少なくとも一方に設けられていればよく、特に、図10に示すように、抵抗発生部371がウインドウ36の上流側及び下流側に設けられている構成が望ましい。
【0056】
図10は、変形例1に係る光偏向器3Aの構成(形状)におけるウインドウ36近傍の流体解析結果を説明する図である。図10(A)は、光偏向器3Aの構成を示す平面図である。図10(B)は、回転多面鏡31周辺の圧力分布の一例を示す図である。図10(C)は、回転多面鏡31周辺の流速分布の一例を示す図である。
【0057】
壁面37bは、図10(A)に示すように、回転多面鏡31の回転方向において、ウインドウ36の上流側及び下流側に、抵抗発生部371を備えている。また、ウインドウ36の上流側及び下流側にそれぞれ備えられた抵抗発生部371の下流側に、それぞれ流速緩和部372が隣接している。
【0058】
変形例1に係る光偏向器3Aの構成において、圧力分布のMax-minは36.7Paであり、従来技術に係る光偏向器3002(図19(A)参照)の構成(44.4Pa)と比べ、小さくなっている。特に、圧力分布のminが、従来技術(図19(B)参照):-35Pa→変形例1(図10(B)参照):-22Paとなっており、流路断面積拡大部(270°~360°の領域)における圧力の低下を抑制することができている。
【0059】
また、変形例1に係る光偏向器3Aの構成では、流路断面積拡大部(270°~360°の領域)における流速が、従来技術(図19(C)参照):8m/s→変形例1(図10(C)の矢印R1参照):2m/sまで落ちている。また、他の流路断面積拡大部(0°~90°の領域)における流速が、従来技術(図19(C)参照):7m/s→変形例1(図10(C)の矢印R2参照):3m/sまで落ちている。また、流路が拡大しはじめる部分における流速が、従来技術(図19(C)参照):9m/s→変形例1(図10(C)の矢印R3参照):7m/sまで落ちている。また、他の流路が拡大しはじめる部分における流速が、従来技術(図19(C)参照):12.8m/s→変形例1(図10(C)の矢印R4参照):8m/sまで落ちている。上記の構成とすることで、流速の変化が緩やかになり、流路幅が広がりはじめる部分で空気が引っ張られることが抑制されるので、0°、270°付近における圧力の低下を抑制することができている。
【0060】
上記のように、抵抗発生部371を、ウインドウ36の上流側及び下流側に設けることで、流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化をより効果的に抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗をより効果的に低減することができる。
【0061】
(変形例2)
また、図11に示すように、回転多面鏡31の回転方向において、抵抗発生部371の起点における流路断面積をA1とし、抵抗発生部371の終点における流路断面積をA2としたとき、A1≧A2を満たす構成が望ましい。
【0062】
図11は、変形例2に係る光偏向器3Bの構成(形状)におけるウインドウ36近傍の流体解析結果を説明する図である。図11(A)は、光偏向器3Bの構成を示す平面図である。図11(B)は、回転多面鏡31周辺の圧力分布の一例を示す図である。図11(C)は、回転多面鏡31周辺の流速分布の一例を示す図である。
【0063】
変形例2に係る光偏向器3Bの構成において、圧力分布のMax-minは11.2Paであり、従来技術に係る光偏向器3002(図19(A)参照)の構成(44.4Pa)と比べ、小さくなっている。特に、圧力分布のminが、従来技術(図19(B)参照):-35Pa→変形例2(図11(B)参照):-4.4Paとなっており、流路断面積拡大部における圧力の低下を抑制することができている。
【0064】
また、変形例2に係る光偏向器3Bの構成では、流路断面積拡大部(270°~360°の領域)における流速が、従来技術(図19(C)参照):8m/s→変形例2(図11(C)の矢印R1参照):1.2m/sまで落ちている。また、他の流路断面積拡大部(0°~90°の領域)における流速が、従来技術(図19(C)参照):7m/s→変形例2(図11(C)の矢印R2参照):2.3m/sまで落ちている。また、流路が拡大しはじめる部分における流速が、従来技術(図19(C)参照):9m/s→変形例2(図11(C)の矢印R3参照):3m/sまで落ちている。また、他の流路が拡大しはじめる部分における流速が、従来技術(図19(C)参照):12.8m/s→変形例2(図11(C)の矢印R4参照):5m/sまで落ちている。上記のように、流速緩和部372の流路断面積を適切に調整することで、さらに流速の変化が緩やかになり、流速が急に落ちる(すなわち、空気が滞留して圧力が上昇する)ことが抑制されるので、0°、270°付近における圧力の低下をさらに抑制することができている。
【0065】
上記のように、回転方向において、抵抗発生部371の起点における流路断面積をA1とし、抵抗発生部371の終点における流路断面積をA2としたとき、A1≧A2を満たすことで、抵抗発生部371の下流で流路断面積が広がりすぎて空気の流速が遅くなりすぎることによる圧力増大を抑制することができるので、より効果的に騒音/回転抵抗を低減することができる。
【0066】
(変形例3)
また、上記実施形態では、抵抗発生部371を、壁面37bを内側に曲げて形成する構成としているが、これに限定されるものではない。例えば、変形例3に係る光偏向器3C(図12参照)のように、抵抗発生部371Cを、壁面37bの内側に凸部を設けた構成としてもよい。
上記のように、抵抗発生部371Cを、壁面37bの内側に凸部が設けられたものとすることで、簡易な構成で流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を簡易な構成で低減することができる。
【0067】
(変形例4)
また、変形例4に係る光偏向器3D(図13参照)のように、抵抗発生部371Dを、底面37aを内側に突出させた構成としてもよい。なお、変形例4では、底面37aを内側に突出させた構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、底面37aの代わりに、又は底面37aに加えて、天板37cを内側に突出させた構成としてもよい。
上記のように、抵抗発生部371Dを、天板37c及び底面37aの少なくとも一方を内側に突出させたものとすることで、簡易な構成で流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を簡易な構成で低減することができる。
【0068】
(変形例5)
また、変形例5に係る光偏向器3E(図14参照)のように、抵抗発生部371Eを、壁面37bに複数の凸部(例えば、点字、リブ等)を設けた構成としてもよい。図14(A)は、変形例5に係る光偏向器3Eの構成を示す平面図である。図14(B)は、図14(A)のQ-Q線における断面図である。なお、変形例5では、壁面37bに複数の凸部を設けた構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、壁面37bの代わりに、又は壁面37bに加えて、天板37c及び底面37aの少なくとも1つに複数の凸部を設けた構成としてもよい。
上記のように、抵抗発生部371Eを、壁面37b、天板37c及び底面37aの少なくとも1つに複数の凸部が設けられたものとすることで、簡易な構成で流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を簡易な構成で低減することができる。
【0069】
(変形例6)
また、図15に示すように、変形例6に係る光偏向器3Fの流速緩和部372Fは、流路における高さである流路高さが調整されている。具体的には、図15に示す例では、抵抗発生部371Fにおいて、流路高さが狭まり(E4)、流速緩和部372Fにおいて、流路高さが広がる(E5)→狭まる(E6)となり、流路断面積が変化するようになっている。流路高さが狭まる領域E4、E6においては、流路高さが広がる領域E5と比べて、底面37aが内側に突出する構成となっている。
上記のように、流速緩和部372Fが、外接円C1との間の流路における高さである流路高さが調整されていることで、流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を容易に抑制することができるので、平板ウインドウ36近傍での騒音/回転抵抗を容易に低減することができる。
【0070】
(変形例7、8)
また、上記実施形態では、ウインドウ36を1つ設ける構成を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、ウインドウ36を複数設ける構成としてもよい。例えば、変形例7に係る光偏向器3G(図16参照)のように、ウインドウ36Gを、対向する壁面37bにおいて1つずつ計2つ設けるようにし、それぞれで光の入射/出射を行うことで、1つの回転多面鏡31で同時に2面以上を用いて走査する構成(両側偏向方式)としてもよい。また、変形例8に係る光偏向器3H(図17参照)のように、ウインドウ36Hを、配置角度を変えて2つ隣接させるようにし、入射光用のウインドウ361Hと出射光用のウインドウ362Hとを分けることで、平板ウインドウ36Hの広さを抑えつつ、偏向角度を広げる構成(片側偏向方式)としてもよい。この場合、入射光用のウインドウ361Hが、抵抗発生部371Hを兼ねる構成となっている。なお、図16及び図17の符号Lは、レーザー光を示している。
上記のように、ウインドウ36G、36Hが、複数設けられていることで、平板のウインドウ36G、36Hが複数設けられて圧力分布の発生箇所が複数生じることにより、ウインドウ一つの場合よりも騒音/回転抵抗が増大する場合であっても、流路断面積が変化する部分における流速及び流速変化を抑制することができるので、回転多面鏡31周辺の圧力分布を抑えることが可能となり、平板ウインドウ36G、36H近傍での騒音/回転抵抗を低減することができる。したがって、両側偏向方式の場合や、片側偏向方式で入射光用のウインドウ361Hと出射光用のウインドウ362Hを分けて偏向角度を広げる場合についても、平板ウインドウ36H近傍での騒音/回転抵抗を低減することができる。
【0071】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、筐体37をアルミダイカストにより作製する構成を例示して説明しているが、他の材料としてもよく、例えば、樹脂成形により作製するようにしてもよい。また、ウインドウ36をガラスにより作製する構成を例示して説明しているが、他の材料としてもよく、透明な樹脂材料により作製するようにしてもよい。
【0072】
その他、画像形成装置を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1000 画像形成装置
100 光書込装置
1 光源
2 光源光学系
3、3A~3H 光偏向器
31 回転多面鏡
32 マグネット(駆動部)
33 駆動基板(駆動部)
33a コイル
33b コネクター
33c 制御IC
34 回転軸
35 軸受
36、36G、36H ウインドウ
37 筐体
37a 底面
37b 壁面
37c 天板
371、371C~371F、371H 抵抗発生部
372、372F 流速緩和部
4 走査光学系
5 ハウジング
6 カバー部材
200 像担持体
210 帯電部
220 現像部
300 中間転写ベルト
400 転写部
500 定着部
L レーザー光(光線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19