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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車両用ステップ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/02 20060101AFI20240305BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20240305BHJP
   A61G 3/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60R3/02
B60P1/43 A
A61G3/06 711
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020074625
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021172118
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智之
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-091128(JP,A)
【文献】実開平07-037808(JP,U)
【文献】特開2019-116112(JP,A)
【文献】特表2006-521234(JP,A)
【文献】特開2001-239888(JP,A)
【文献】特開2001-000480(JP,A)
【文献】特開平11-151980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
B60P 1/43
A61G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口部に設けられた可動ステップと、
前記可動ステップを駆動して展開及び格納方向に動作させる駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、
前記車両の走行路面に並行して設けられた歩道を検出する歩道検出部と、
前記可動ステップが格納された前記車両の側縁部と前記歩道との間の離間距離を検出する離間距離検出部と、
前記離間距離に基づいて前記車両の側縁部から前記走行路面の幅方向に延出する前記可動ステップの展開量を設定する展開量設定部と、
前記走行路面を基準とした前記歩道の高さを検出する高さ検出部と、を備え、
前記展開量設定部は、前記離間距離が大きいほど、より大きな前記可動ステップの展開量を設定するものであって、
前記展開量設定部は、前記可動ステップの最低地上高を基準に予め設定された干渉判定値よりも前記歩道の高さが低い場合には、前記離間距離よりも大きな前記可動ステップの展開量を設定し、前記歩道の高さが前記干渉判定値以上である場合には、前記離間距離よりも小さな前記可動ステップの展開量を設定する車両用ステップ装置。
【請求項2】
車両のドア開口部に設けられた可動ステップと、
前記可動ステップを駆動して展開及び格納方向に動作させる駆動制御部と、を備え、
前記可動ステップが前記ドア開口部の下方に傾斜路を形成するスロープ板として機能するスロープモードと、前記可動ステップとして利用するステップモードと、を選択可能に構成されており、
前記駆動制御部は、
前記車両の走行路面に並行して設けられた歩道を検出する歩道検出部と、
前記可動ステップが格納された前記車両の側縁部と前記歩道との間の離間距離を検出する離間距離検出部と、
前記離間距離に基づいて前記車両の側縁部から前記走行路面の幅方向に延出する前記可動ステップの展開量を設定する展開量設定部と、を備え、
前記ステップモードが選択された場合、前記展開量設定部は、前記離間距離が大きいほど、より大きな前記可動ステップの展開量を設定するとともに、
前記スロープモードが選択された場合、前記可動ステップは、該可動ステップとして利用することのできる最大ステップ展開量を超えて展開方向に動作することにより前記ドア開口部の下方に傾斜路を形成する前記スロープ板として機能する車両用ステップ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用ステップ装置であって、
前記展開量設定部は、予め定められた最大展開距離よりも近い位置に前記歩道が検出されない場合には、前記可動ステップの展開量を予め定められた基本展開量に設定すること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用ステップ装置であって、
前記展開量設定部は、予め定められた最小展開距離よりも前記離間距離が小さい場合には、前記可動ステップを展開させないこと、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用ステップ装置であって、
前記駆動制御部は、前記ドア開口部に設けられたドアの開動作が開始される前に、前記可動ステップの展開動作を完了させること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示すように、車両のドア開口部に設けられた可動ステップと、この可動ステップを駆動して展開及び格納方向に動作させる駆動制御部と、を備えた車両用のステップ装置がある。このようなステップ装置を採用することで、車両の側縁部から走行路面の幅方向に突出する可動ステップの展開量を自在に設定することができる。そして、その動作タイミングについてもまた、自在に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-238978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、停留所に停車した車両に乗員が乗降する場合等、その乗員の乗降位置と車両との位置関係は必ずしも一定ではなく、走行路面及び歩道の形状や車両の停車位置によって変化する。このため、上記従来技術のようなステップ装置を設けるのみでは、必ずしも十分とは言えないのが実情であることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より乗降のしやすい車両用ステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、車両のドア開口部に設けられた可動ステップと、前記可動ステップを駆動して展開及び格納方向に動作させる駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記車両の走行路面に並行して設けられた歩道を検出する歩道検出部と、前記可動ステップが格納された前記車両の側縁部と前記歩道との間の離間距離を検出する離間距離検出部と、前記離間距離に基づいて前記車両の側縁部から前記走行路面の幅方向に延出する前記可動ステップの展開量を設定する展開量設定部と、前記走行路面を基準とした前記歩道の高さを検出する高さ検出部と、を備え、前記展開量設定部は、前記離間距離が大きいほど、より大きな前記可動ステップの展開量を設定するものであって、前記展開量設定部は、前記可動ステップの最低地上高を基準に予め設定された干渉判定値よりも前記歩道の高さが低い場合には、前記離間距離よりも大きな前記可動ステップの展開量を設定し、前記歩道の高さが前記干渉判定値以上である場合には、前記離間距離よりも小さな前記可動ステップの展開量を設定する。
【0007】
上記構成によれば、車両と歩道との位置関係に依らず、そのドア開口部を介して車両に乗降する乗員の乗降位置となる歩道に対して、より近い位置まで可動ステップを展開することができる。そして、これにより、その車両に対する乗降性を向上させることができる。
【0009】
上記構成によれば、歩道と可動ステップとの干渉を回避しつつ、この可動ステップを利用する乗員の乗降位置となる歩道に対して、より近い位置まで、その可動ステップを展開することができる。
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、車両のドア開口部に設けられた可動ステップと、前記可動ステップを駆動して展開及び格納方向に動作させる駆動制御部と、を備え、前記可動ステップが前記ドア開口部の下方に傾斜路を形成するスロープ板として機能するスロープモードと、前記可動ステップとして利用するステップモードと、を選択可能に構成されており、前記駆動制御部は、前記車両の走行路面に並行して設けられた歩道を検出する歩道検出部と、前記可動ステップが格納された前記車両の側縁部と前記歩道との間の離間距離を検出する離間距離検出部と、前記離間距離に基づいて前記車両の側縁部から前記走行路面の幅方向に延出する前記可動ステップの展開量を設定する展開量設定部と、を備え、前記ステップモードが選択された場合、前記展開量設定部は、前記離間距離が大きいほど、より大きな前記可動ステップの展開量を設定するとともに、前記スロープモードが選択された場合、前記可動ステップは、該可動ステップとして利用することのできる最大ステップ展開量を超えて展開方向に動作することにより前記ドア開口部の下方に傾斜路を形成する前記スロープ板として機能する。
上記構成によれば、車両と歩道との位置関係に依らず、そのドア開口部を介して車両に乗降する乗員の乗降位置となる歩道に対して、より近い位置まで可動ステップを展開することができる。そして、これにより、その車両に対する乗降性を向上させることができる。
上記構成によれば、乗員が、例えば、車椅子や車輪付きのキャリヤ、或いは自転車等の利用者である場合においても、その利便性を向上させることができる。
【0010】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記展開量設定部は、予め定められた最大展開距離よりも近い位置に前記歩道が検出されない場合には、前記可動ステップの展開量を予め定められた基本展開量に設定することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、その最大展開距離よりも近い位置、つまりは車両の側縁部との離間距離に応じて可動ステップの展開量を増加させることができる範囲内に歩道が検出されない場合であっても、その乗員が可動ステップを利用して走行路面に乗降することができる。そして、これにより、その乗降性を向上させることができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記展開量設定部は、予め定められた最小展開距離よりも前記離間距離が小さい場合には、前記可動ステップを展開させないことが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、ドア開口部の下方に展開された可動ステップが、その歩道を乗降位置として車両に乗降する乗員の邪魔にならないようにすることができる。そして、これにより、その乗降性を向上させることができる。
【0014】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記駆動制御部は、前記ドア開口部に設けられたドアの開動作が開始される前に、前記可動ステップの展開動作を完了させることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、高い安全性を確保することができる。加えて、その質感の向上を図ることができる
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両に対する乗降性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ステップ装置として機能するスロープ装置が搭載された車両の斜視図。
図2】ステップ装置として機能するスロープ装置が搭載された車両の斜視図。
図3】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図。
図4】ドア開口部の下方に設けられたスロープ装置の斜視図。
図5】スロープ装置の概略構成図。
図6】ステップ装置として機能するスロープ装置の動作説明図。
図7】(a)(b)ステップ装置として機能するスロープ装置の動作説明図。
図8】ステップ装置として機能するスロープ装置の動作説明図。
図9】ステップ装置として機能するスロープ装置の制御ブロック図。
図10】ステップ装置として機能するスロープ装置の展開制御について処理手順を示すフローチャート。
図11】可動ステップとして利用することのできるスロープ板の展開及びスライドドアの開作動の処理手順を示すフローチャート。
図12】ステップ展開制御の態様を示す説明図。
図13】可動ステップの展開量を設定する処理手順を示すフローチャート。
図14】可動ステップの展開量を設定する別例の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用ステップ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向に延在する四角略箱状の車体2を有している。また、車体2の側面2sには、乗員の乗降口となるドア開口部3が設けられている。そして、このドア開口部3には、車両前後方向、相反する方向に開閉動作する一対のスライドドア4f,4rが設けられている。
【0020】
即ち、車両前方側のスライドドア4fは、車両前方側に移動することにより開作動し、車両後方側に移動することにより閉作動する。一方、車両後方側のスライドドア4rは、車両後方側に移動することにより開作動し、車両前方側に移動することにより閉作動する。更に、これらの各スライドドア4f,4rは、それぞれ、図示しないアクチュエータの駆動力に基づき開閉動作するパワースライドドア装置としての構成を有している。そして、本実施形態の車両1は、これらの各スライドドア4f,4rが連動するかたちで、そのドア開口部3を開閉する構成になっている。
【0021】
また、本実施形態の車両1は、ドア開口部3が全開状態にある場合において、このドア開口部3の下端にスロープ板10を展開するスロープ装置11を備えている。そして、本実施形態の車両1は、このスロープ板10が形成する傾斜路Rを利用することで、その乗員が、例えば、車椅子や車輪付きのキャリヤ、或いは自転車等の利用者であっても、容易に、そのドア開口部3から乗降することが可能となっている。
【0022】
図3及び図4に示すように、本実施形態の車両1において、このスロープ装置11は、ドア開口部3の下方に設けられた格納ボックス12内に設置されている。具体的には、この格納ボックス12は、そのドア開口部3と同一方向に開口部12aを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この開口部12aを介することにより、その格納ボックス12に格納されたスロープ板10を車外に展開し、及び、その展開したスロープ板10を再び格納ボックス12内に格納する構成になっている。
【0023】
詳述すると、本実施形態のスロープ装置11は、その格納ボックス12からドア開口部3の下端に展開されるスロープ板10の展開及び格納方向、つまりは、その格納ボックス12内の奥行き方向に延びる一対のガイドレール20,20を備えている。
【0024】
図3図5に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、これらの各ガイドレール20,20は、格納ボックス12内のスロープ板10を幅方向両側から挟み込む態様で、略平行に配置されている。また、本実施形態のスロープ装置11は、これらの各ガイドレール20に係合する状態で、それぞれ、その係合する各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って摺動可能に設けられた移動体21,21を備えている。更に、このスロープ装置11は、これらの各移動体21,21に対して回動可能、且つスロープ板10の後端部10rに対して回動可能な状態で、その各移動体21,21とスロープ板10との間に介在された一対の支持アーム22,22を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、これらの各移動体21,21及び各支持アーム22,22とともに、そのスロープ板10が展開及び格納方向に移動する構成になっている。
【0025】
また、本実施形態のスロープ装置11は、モータ23を駆動源としたアクチュエータ25を備えている。本実施形態のスロープ装置11において、このアクチュエータ25は、各ガイドレール20,20の後端部20rよりも奥側において、その格納ボックス12内に配置されている。更に、本実施形態のスロープ装置11は、そのアクチュエータ25と各ガイドレール20,20の後端部20rとを接続するケーシングパイプ27,27と、これらの各ケーシングパイプ27,27及びガイドレール20,20の延伸方向に沿って配索される一対の駆動ケーブル30,30と、を備えている。そして、本実施形態のスロープ装置11においては、これらの各駆動ケーブル30,30を介して伝達されるアクチュエータ25の駆動力に基づいて、その各移動体21,21が各ガイドレール20,20の延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0026】
詳述すると、図6及び図7(a)に示すように、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10は、ガイドレール20に対する移動体21及び支持アーム22の係合力に基づいて、略水平な姿勢が保持された状態で格納ボックス12内に収容されている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、この略水平な姿勢を保持したまま、そのガイドレール20の延伸方向に沿って、移動体21及び支持アーム22と一体にスロープ板10が展開及び格納方向に移動する構成となっている。
【0027】
また、図7(b)に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、格納ボックス12が設けられた車両1の側縁部1sから車幅方向外側に延出する態様で車外に展開するスロープ板10について、このスロープ板10の延出が完了する位置を超えて、その移動体21及び支持アーム22が展開方向に移動するように構成されている。更に、本実施形態のスロープ装置11においては、これにより、そのガイドレール20に対する係合関係に基づいて、これらの移動体21及び支持アーム22が、スロープ板10の後端部10rを上方に持ち上げるリフト機構31として機能する。具体的には、その支持アーム22が、スロープ板10の後端部10rに対する連結点X1及び移動体21に対する連結点X2周りに回動することで、そのスロープ板10の後端部10rが持ち上がる。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、車両フロア32に後端部10rを近づける態様で、そのスロープ板10が傾斜路Rを形成する構成になっている。
【0028】
尚、本実施形態のスロープ装置11において、スロープ板10の後端部10rには、フロア係合部33が設けられている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、このフロア係合部33が車両フロア32の縁部32eに係合することで、そのスロープ板10の荷重を車両フロア32が支える構成になっている。
【0029】
また、図7(a)及び図8に示すように、本実施形態のスロープ装置11は、上記のように、スロープ板10を展開する際、その車幅方向外側への延出が完了する前に、このスロープ板10の展開動作を停止させることができる。更に、本実施形態のスロープ装置11は、この状態で、そのスロープ板10に足を載せた乗員35の荷重、即ちドア開口部3を介して車両1に乗降する乗員35の荷重を支えることが可能となっている。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、そのスロープ板10を可動ステップ40として、この可動ステップ40を展開及び格納動作させるステップ装置41として機能する構成となっている。
【0030】
尚、本実施形態のスロープ装置11は、格納ボックス12の開口部12a近傍において、その延出途中のスロープ板10を支える荷重支持装置43を備えている。具体的には、この荷重支持装置43は、その展開及び格納方向に移動するスロープ板10に対して下方から摺接する回転体43xを有している。そして、本実施形態のスロープ装置11は、これにより、その円滑なスロープ板10の展開及び格納動作を担保しつつ、安定的に、このスロープ板10を可動ステップ40に用いた乗員35の荷重を支えることが可能となっている。
【0031】
また、図9に示すように、本実施形態の車両1において、スロープ装置11のアクチュエータ25は、パワースライドドア装置としての構成を有するスライドドア4f,4rのアクチュエータ45とともに、制御装置50によって、その作動が制御されている。
【0032】
具体的には、本実施形態の制御装置50には、例えば、図示しない運転席等、車両1に設けられた操作入力部51に対する操作入力信号Scrが入力される。即ち、本実施形態の車両1において、この制御装置50には、その操作入力信号Scrとして、車両1の運転者によるスライドドア4f,4rの作動要求、及びスロープ装置11の作動要求が入力される。そして、本実施形態の制御装置50は、これらの作動要求に基づいて、そのスライドドア4f,4rの開閉動作を制御するドア制御部52と、スロープ装置11の展開及び格納動作を制御するスロープ制御部53と、を備えている。
【0033】
更に、本実施形態の車両1においては、操作入力部51に対する操作入力に基づいて、その車両1の側縁部1sから車幅方向外側に延出する態様で展開したスロープ板10が傾斜路Rを形成するスロープモードと、このスロープ板10を可動ステップ40に用いるステップモードと、を選択することが可能となっている。そして、本実施形態の制御装置50は、ステップモードが選択された場合に、そのスロープ装置11をステップ装置41として作動させるステップ制御部54を備えている。
【0034】
詳述すると、図10のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置50は、車両1が停車状態にある場合(ステップ101:YES)に、そのスライドドア4f,4rの開作動要求を受け付ける(ステップ102:YES)。更に、本実施形態の車両1においては、このスライドドア4f,4rの開作動要求とともに、そのスロープ装置11のモード選択操作が行われる(ステップ103)。そして、本実施形態の制御装置50は、スロープモードを選択する旨の操作入力信号Scrが検出された場合(ステップ104:YES)に、そのドア開口部3の下方に展開したスロープ板10に傾斜路Rを形成させるべく、そのスロープ装置11の作動を制御する(スロープ展開制御、ステップ105)。
【0035】
即ち、本実施形態の制御装置50は、この場合、そのスロープ展開制御として、スロープ板10の後端部10rが車外に配置されるまで、このスロープ板10を全延出させる。そして、その後端部10rをリフトアップさせることで、このスロープ板10が傾斜路Rを形成するように制御する。
【0036】
また、本実施形態の制御装置50は、上記ステップ103において、ステップモードが選択された場合(ステップ104:NO及びステップ106:YES)には、そのドア開口部3の下方に展開するスロープ板10をステップ装置41の可動ステップ40として用いるべく、スロープ装置11の作動を制御する(ステップ展開制御、ステップ107)。そして、この場合、制御装置50は、ステップ展開制御として、その可動ステップ40に用いるスロープ板10を略水平な姿勢に維持したまま、このスロープ板10を、そのドア開口部3を介して車両1に乗降する乗員35が足を載せやすい位置、即ち上記全延出の途中まで、延出させる構成となっている。
【0037】
更に、本実施形態の車両1においては、上記ステップ103において、そのスロープモード及びステップモードの何れも選択しないことができる(ステップ104:NO及びステップ106:NO)。そして、本実施形態の制御装置50は、この場合、非展開モードが選択されたものとして(ステップ108)、そのスロープ板10の展開を行わない構成となっている。
【0038】
また、図11のフローチャートに示すように、本実施形態の制御装置50は、上記ステップ105又は上記ステップ107の実行によりスロープ板10をドア開口部3の下方に展開する際には、車両1の周辺を監視することにより、そのドア開口部3近傍の安全確認を実行する(ステップ201)。更に、制御装置50は、ドア開口部3近傍の安全が確認された状態で(ステップ202:YES)に、そのスロープ板10を車両1の側縁部1sから車幅方向外側に延出させる(ステップ203)。そして、本実施形態の制御装置50は、これにより、スロープ板10の展開が完了した状態で(ステップ204:YES)、そのスライドドア4f,4rの開作動制御を実行する構成になっている(ステップ205)。
【0039】
即ち、本実施形態の車両1は、スロープモードが選択された場合(図10参照、ステップ104:YES)には、その車両1の側縁部1sから延出したスロープ板10がドア開口部3の下方に傾斜路Rを形成する状態で、そのスライドドア4f,4rの開動作が開始される。そして、ステップモードが選択された場合(図10参照、ステップ106:YES)も同様に、そのスロープ板10が可動ステップ40としての延出位置に展開された状態で、スライドドア4f,4rの開動作が開始される構成となっている。
【0040】
更に、本実施形態の制御装置50は、上記スロープモード及びステップモードの実行によりドア開口部3の下方に展開したスロープ板10を格納ボックス12に格納する場合、そのスライドドア4f,4rの閉動作が完了した後に、スロープ板10の格納動作を開始する。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、そのスロープ板10が形成する傾斜路R、及び、このスロープ板10をステップ装置41の可動ステップ40に用いて車両1に乗降する乗員35の安全を確保する構成となっている。
【0041】
さらに詳述すると、図9に示すように、本実施形態の制御装置50には、車両1に設けられたカメラ55が映す車外の撮影画像Vd、及び同じく車両1に設けられたソナー56の出力信号Ssdが入力される。尚、本実施形態の車両1において、カメラ55は、例えば、ドア開口部3の上方に設けられている(図1及び図2参照)。また、ソナー56は、例えば、スライドドア4f,4rの下端部分に設けられている。更に、本実施形態の制御装置50は、これらのカメラ55の撮影画像Vd及びソナー56の出力信号Ssdを解析することにより、車両1の周辺を監視する周辺監視部57を備えている。そして、本実施形態の制御装置50は、これにより、そのスライドドア4f,4rの作動制御、及びスロープ装置11の作動制御時におけるドア開口部3近傍の安全確認を実行する構成となっている(図11参照、ステップ201)。
【0042】
具体的には、本実施形態の制御装置50は、スライドドア4f,4rの開閉動作させる場合には、その開閉軌跡上に障害物があるか否かを判定する。また、スロープ装置11の作動を制御する場合も同様に、制御装置50は、そのスロープ板10の展開及び格納軌跡上に障害物があるか否かを判定する。更に、本実施形態の制御装置50は、ドア開口部3の近傍に検出された障害物が人である場合に、この人に退避を促す報知出力を実行する報知制御部58を備えている。本実施形態の車両1において、この場合の報知出力は、車両1に設けられたスピーカー59を用いた音声ガイダンスや警告音の出力と、ディスプレーや警告灯等の表示装置60を用いた視覚的な警告出力との組み合わせにより行われる。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、ドア開口部3近傍の安全が確認された状態で、そのスライドドア4f,4r及びスロープ装置11の作動制御が実行される構成となっている。
【0043】
尚、本実施形態の制御装置50は、予め制限時間を設定して、このようなドア開口部3近傍の安全確認を実行する。そして、その設定した制限時間内にドア開口部3近傍の安全が確認されない場合、つまりタイムオーバー時には、そのスロープ装置11の展開及び格納制御、並びにスライドドア4f,4rの開閉制御を実行することなく、再び、その作動要求を受け付ける待機状態に移行する構成となっている。
【0044】
また、図8及び図9に示すように、本実施形態の制御装置50は、カメラ55の撮影画像Vd及びソナー56の出力信号Ssdを解析することにより、車両1の走行路面70に並行して設けられた歩道71を検出する歩道検出部72を備えている。更に、本実施形態の制御装置50は、これにより、そのドア開口部3を介して車両1に乗降する乗員35の乗降位置Pとなる歩道71と、車両1の側縁部1sから走行路面70の幅方向に延出する態様で展開される可動ステップ40との位置関係を特定する。そして、本実施形態の制御装置50は、この特定した可動ステップ40と歩道71との位置関係に基づいて、そのスロープ装置11のスロープ板10をステップ装置41の可動ステップ40に用いる上記ステップ展開制御を実行する(図10参照、ステップ107)。
【0045】
(ステップ展開制御)
次に、本実施形態の制御装置50が実行するステップ展開制御の態様について説明する。尚、以下、ステップ展開制御の説明においては、便宜上、ステップ装置41として作動するスロープ装置11を、単にステップ装置41と記載し、及び、その可動ステップ40として用いるスロープ板10を、単に可動ステップ40と記載するものとする。
【0046】
図9及び図12に示すように、本実施形態の制御装置50は、その可動ステップ40が格納された車両1の側縁部1sと検出された歩道71との離間距離Dを検出する離間距離検出部73を備えている。更に、この制御装置50は、車両1の走行路面70を基準とした歩道71の高さHを検出する高さ検出部74を備えている。そして、本実施形態の制御装置50は、これにより検出された車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離D及び歩道71の高さHに基づいて、その格納ボックス12が設けられた車両1の側縁部1sから走行路面70の幅方向に延出する可動ステップ40の展開量Lを設定する展開量設定部75を備えている。
【0047】
詳述すると、図13のフローチャートに示すように、本実施形態の展開量設定部75は、先ず、その車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離Dを、予め定められた最小展開距離D1と比較する(ステップ301)。更に、展開量設定部75は、その歩道71との離間距離Dが最小展開距離D1以上である場合と判定した場合(D≧D1、ステップ301:YES)には、続いて、この歩道71との離間距離Dを、予め定められた最大展開距離D2と比較する(ステップ302)。尚、本実施形態のステップ装置41において、最小展開距離D1は、例えば、20cm程度に設定される。また、最大展開距離D2は、可動ステップ40が略水平な姿勢を維持したまま、つまりは乗員35が利用できる状態で、その可動ステップ40を車両1の側縁部1sから車幅方向外側、走行路面70の幅方向に延出することのできる最大ステップ展開量Lmよりも小さな値に設定される(D2<Lm)。即ち、本実施形態のステップ装置41は、上記のように、この最大ステップ展開量Lmを超えて展開方向に動作することにより、その可動ステップ40が、ドア開口部3の下方に傾斜路Rを形成するスロープ装置11のスロープ板10として機能する(図7(b)参照)。そして、本実施形態の制御装置50は、これらの最小展開距離D1及び最大展開距離D2を、その図示しない記憶領域に保持する構成となっている。
【0048】
また、本実施形態の展開量設定部75は、歩道71との離間距離Dが最大展開距離D2以下である場合と判定した場合(D≦D2、ステップ302:YES)には、その検出された歩道71の高さHを、可動ステップ40の最低地上高h0を基準に予め設定された干渉判定値H0と比較する(ステップ303)。更に、展開量設定部75は、その歩道71の高さHが干渉判定値H0よりも低い場合と判定した場合(H<H0、ステップ303:YES)には、その可動ステップ40の展開量Lを、検出された車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離Dに所定値αを加えた値に設定する(L=D+α、ステップ304)。そして、本実施形態の展開量設定部75は、上記ステップ303において、歩道71の高さHが干渉判定値H0以上であると判定した場合(H≧H0、ステップ303:NO)には、可動ステップ40の展開量Lを、その歩道71との離間距離Dから所定値βを減じた値に設定する構成になっている(L=D-β、ステップ305)。
【0049】
即ち、本実施形態の展開量設定部75は、車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離Dに応じて、その値が大きいほど、より大きな可動ステップ40の展開量Lを設定する。また、本実施形態のステップ装置41において、干渉判定値H0は、略平板状の外形を有した可動ステップ40の最低地上高h0よりも小さな値に設定される(H0<h0)。つまり、本実施形態の展開量設定部75は、この干渉判定値H0と歩道71の高さHとを比較することで、走行路面70の幅方向に延出された可動ステップ40が、その歩道71に干渉するか否かを判定する。尚、本実施形態の制御装置50において、車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離Dに基づいた展開量Lの演算に用いる各所定値α,βは、例えば、数cm程度に設定される。更に、これらの各所定値α,β及び干渉判定値H0もまた、図示しない制御装置50の記憶領域に保持されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、歩道71と可動ステップ40との干渉を回避しつつ、この可動ステップ40を利用する乗員35の乗降位置Pとなる歩道71に対して、より近い位置まで、その可動ステップ40を展開することができる構成となっている。
【0050】
また、本実施形態の展開量設定部75は、上記ステップ302において、歩道71との離間距離Dが最大展開距離D2より大きいと判定した場合(D>D2、ステップ302:NO)には、その可動ステップ40の展開量Lを、予め定められた基本展開量L0に設定する(L=L0、ステップ306)。尚、本実施形態のステップ装置41において、この基本展開量L0は、例えば、30cm程度に設定される。また、本実施形態の制御装置50は、その図示しない記憶領域に、この基本展開量L0を保持する。更に、本実施形態の制御装置50においては、その歩道検出部72が歩道71を検出できなかった場合も、その歩道71との離間距離Dが最大展開距離D2より大きいものとみなされる。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、その最大展開距離D2よりも近い位置、つまりは車両1の側縁部1sとの離間距離Dに応じて可動ステップ40の展開量Lを増加させることができる範囲内に歩道71が検出されない場合であっても、乗員35が可動ステップ40を利用して走行路面70に乗降することが可能となっている。
【0051】
更に、本実施形態の展開量設定部75は、上記ステップ301において、歩道71との離間距離Dが最小展開距離D1より小さいと判定した場合(D<D1、ステップ301:NO)には、その可動ステップ40の展開量Lを「0」として、この可動ステップ40を展開させない(L=0、ステップ306)。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、ドア開口部3の下方に展開された可動ステップ40が、その歩道71を乗降位置Pとして車両1に乗降する乗員35の邪魔にならない構成になっている。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のステップ装置41においては、格納ボックス12が設けられた車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離Dに応じて、その値が大きいほど、より大きな可動ステップ40の展開量Lが設定される。このため、車両1と歩道71との位置関係に依らず、その可動ステップ40を利用する乗員35の乗降位置Pとなる歩道71に近い位置まで、可動ステップ40が展開される。そして、これにより、その車両1に対する乗降性が向上する。
【0053】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)ステップ装置41は、車両1のドア開口部3に設けられた可動ステップ40と、この可動ステップ40を駆動して展開及び格納方向に動作させるアクチュエータ25と、を備える。また、そのアクチュエータ25の作動を制御することにより駆動制御部を構成する制御装置50は、車両1の走行路面70に並行して設けられた歩道71を検出する歩道検出部72を備える。更に、制御装置50は、可動ステップ40が格納された車両1の側縁部1sと歩道71との間の離間距離Dを検出する離間距離検出部73と、この離間距離Dに基づいて、その車両1の側縁部1sから走行路面70の幅方向に延出する可動ステップ40の展開量Lを設定する展開量設定部75と、を備える。そして、展開量設定部75は、その車両1の側縁部1sと歩道71との間の離間距離Dが大きいほど、より大きな可動ステップ40の展開量Lを設定する。
【0054】
上記構成によれば、車両1と歩道71との位置関係に依らず、そのドア開口部3を介して車両1に乗降する乗員35の乗降位置Pとなる歩道71に対して、より近い位置まで可動ステップ40を展開することができる。そして、これにより、その車両1に対する乗降性を向上させることができる。
【0055】
(2)制御装置50は、車両1の走行路面70を基準とした歩道71の高さHを検出する高さ検出部74を備える。更に、展開量設定部75は、その検出された歩道71の高さHを、可動ステップ40の最低地上高h0を基準に予め設定された干渉判定値H0と比較する。そして、展開量設定部75は、その干渉判定値H0よりも歩道71の高さHが低い場合には、その車両1の側縁部1sと歩道71との間の離間距離Dよりも大きな可動ステップ40の展開量Lを設定し、歩道71の高さHが干渉判定値H0以上である場合には、その離間距離よりも小さな可動ステップ40の展開量Lを設定する。
【0056】
上記構成によれば、歩道71と可動ステップ40との干渉を回避しつつ、この可動ステップ40を利用する乗員35の乗降位置Pとなる歩道71に対して、より近い位置まで、その可動ステップ40を展開することができる。
【0057】
(3)展開量設定部75は、予め定められた最大展開距離D2よりも近い位置に歩道71が検出されない場合には、その可動ステップ40の展開量Lを、予め定められた基本展開量L0に設定する。
【0058】
上記構成によれば、その最大展開距離D2よりも近い位置、つまりは車両1の側縁部1sとの離間距離Dに応じて可動ステップ40の展開量Lを増加させることができる範囲内に歩道71が検出されない場合であっても、その乗員35が可動ステップ40を利用して走行路面70に乗降することができる。そして、これにより、その乗降性を向上させることができる。特に、高い位置にドア開口部3を有する車種においては、より顕著な効果を得ることができる。
【0059】
(4)展開量設定部75は、予め定められた最小展開距離D1よりも、その車両1の側縁部1sとの離間距離Dが小さい場合には、可動ステップ40を展開させない。
上記構成によれば、ドア開口部3の下方に展開された可動ステップ40が、その歩道71を乗降位置Pとして車両1に乗降する乗員35の邪魔にならないようにすることができる。そして、これにより、その乗降性を向上させることができる。
【0060】
(5)制御装置50は、ドア開口部3に設けられたスライドドア4f,4rの開動作が開始される前に、可動ステップ40の展開動作を完了させる。これにより、高い安全性を確保することができる。加えて、その質感の向上を図ることができる。
【0061】
(6)制御装置50は、スライドドア4f,4rの閉動作が完了した後に、可動ステップ40の格納動作を開始する。これにより、高い安全性を確保することができる。加えて、その質感の向上を図ることができる。
【0062】
(7)可動ステップ40は、この可動ステップ40を乗員35が利用することのできる最大ステップ展開量Lmを超えて展開方向に動作することにより、そのドア開口部3の下方に傾斜路Rを形成するスロープ板10として機能する。これにより、その乗員35が、例えば、車椅子や車輪付きのキャリヤ、或いは自転車等の利用者である場合においても、その利便性を向上させることができる。
【0063】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・上記実施形態では、操作入力部51に対する操作入力に基づいて、その車両1の側縁部1sから車幅方向外側に延出する態様で展開したスロープ板10が傾斜路Rを形成するスロープモードと、スロープ板10を可動ステップ40に用いるステップモードと、を選択することとした。しかし、これに限らず、例えば、カメラ55の撮影画像Vdを解析する等により、乗員35が車椅子の利用者である等、傾斜路Rの必要性を制御装置50が判断する。そして、これにより、そのスロープモードとステップモードとの選択が自動的に行われる構成としてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、そのスロープ板10をステップ装置41の可動ステップ40として用いることのできるスロープ装置11を搭載する車両1に具体化した。しかし、これに限らず、可動ステップ40の展開量Lを任意に設定することのできる構成であれば、スロープ装置11としての機能を有しないステップ装置41を備える車両に適用してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、検出された車両1の側縁部1sと歩道71との離間距離Dに対して所定値αを加算、又は所定値βを減ずることにより、その離間距離Dが大きいほど、より大きな可動ステップ40の展開量Lを設定することとした。しかし、これに限らず、例えば、検出された離間距離Dに所定の係数を乗ずる等、その離間距離Dに応じた展開量Lの演算方法は、任意に変更してもよい。更に、予め、その離間距離Dと展開量Lとが規定されたマップやテーブルを保持する構成を採用してもよい。そして、その離間距離Dと可動ステップ40の展開量Lとが、必ずしも比例関係になくともよい。
【0067】
・また、図14のフローチャートに示すように、検出された歩道71の高さHが車両1の走行路面70の高さ(H=0)以下であるか否かを判定する(ステップ401)。そして、歩道71の高さHが走行路面70の高さ以下である場合(H≦0、ステップ401:YES)には、その可動ステップ40を展開させない構成としてもよい(L=0、ステップ402)。これにより、ドア開口部3の下方に展開された可動ステップ40が、その走行路面70を乗降位置Pとして車両1に乗降する乗員35の邪魔にならないようにすることができる。
【0068】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記駆動制御部は、前記ドア開口部に設けられたドアの閉動作が完了した後に、前記可動ステップの格納動作を開始すること、を特徴とする車両用ステップ装置。これにより、高い安全性を確保することができる。加えて、その質感の向上を図ることができる。
【0069】
(ロ)前記走行路面を基準とした前記歩道の高さを検出する高さ検出部を備え、前記展開量設定部は、前記歩道の高さが前記走行路面の高さ以下である場合には、前記可動ステップを展開させないこと、を特徴とする車両用ステップ装置。これにより、ドア開口部の下方に展開された可動ステップが、その走行路面を乗降位置として車両に乗降する乗員の邪魔にならないようにすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1…車両
1s…側縁部
3…ドア開口部
25…アクチュエータ
40…可動ステップ
41…ステップ装置
50…制御装置(駆動制御部)
70…走行路面
71…歩道
72…歩道検出部
73…離間距離検出部
75…展開量設定部
D…離間距離
L…展開量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14